(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112854
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ケーブル支持具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/05 20060101AFI20230807BHJP
H02G 7/02 20060101ALI20230807BHJP
F16L 3/08 20060101ALI20230807BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20230807BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20230807BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H02G7/05 030
H02G7/02
F16L3/08 C
F16L3/10 A
F16B7/04 301G
F16B2/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014824
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219820
【氏名又は名称】株式会社トーエネック
(71)【出願人】
【識別番号】000243939
【氏名又は名称】名伸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】武内 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】黒井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓
【テーマコード(参考)】
3H023
3J022
3J039
5G367
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AC35
3H023AD22
3H023AD38
3J022EA33
3J022EB14
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA12
3J022GB23
3J022GB25
3J039AA05
3J039BB01
3J039CA03
3J039CA16
5G367DA03
5G367DB16
5G367DB17
5G367DC01
5G367EA02
5G367EF02
(57)【要約】
【課題】外径が異なる複数本のケーブルを支持するケーブル支持具を提供する。
【解決手段】本発明は、外径が最小径から最大径までの所定の範囲内である複数本のケーブルを、基準平面P内で互いに平行に支持可能なケーブル支持具1であって、ケーブル支持具1に支持されたときのケーブルの軸に平行な平面を基準平面Pとしたとき、基準平面Pに沿って分割して形成された一対の支持ユニット21、22を備える。各支持ユニット21、22は各ケーブルに対応する半筒状の収容部3を有し、また一対の支持ユニット21、22の一方は突起部5を有し、他方は突起部5が嵌合可能な受け部6を有する。収容部3には、内壁から基準平面Pに向かって突出し、ケーブルが収容されたときに弾性変形してケーブルの側面に当接する、ヒダ状の複数の弾性片4が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径が最小径から最大径までの所定の範囲内である複数本のケーブル(91、92)を、基準平面(P)内で互いに平行に支持可能なケーブル支持具(1)であって、
前記ケーブル支持具に支持されたときの前記ケーブルの軸に平行な平面を前記基準平面としたとき、前記基準平面に沿って分割して形成された一対の支持ユニット(21、22)を備え、
各前記支持ユニットは各前記ケーブルに対応する半筒状の収容部(3)を有し、
前記一対の支持ユニットの一方は突起部(5)を有し、他方は前記突起部が嵌合可能な受け部(6)を有し、
前記収容部には、内壁から前記基準平面に向かって突出し、前記ケーブルが収容されたときに弾性変形して前記ケーブルの側面に当接する、ヒダ状の複数の弾性片(4)が形成されており、
互いに対向するように組み合わされた一対の前記収容部の内側に、前記ケーブルを収容した状態で前記突起部を前記受け部に嵌着させると、前記一対の支持ユニットが一体に固定されて前記ケーブルを支持するケーブル支持具。
【請求項2】
前記一対の支持ユニットは、前記ケーブルと平行な方向に開閉可能にヒンジ(7)を介して接続されている、請求項1に記載のケーブル支持具。
【請求項3】
樹脂で一体に形成されている、請求項2に記載のケーブル支持具。
【請求項4】
同一平面に配列された複数の短冊状の前記弾性片を含む列が、前記ケーブルの軸方向に複数列設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のケーブル支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ケーブルなどを鉄塔の支柱に沿って固定する作業が簡単に行なえる樹脂製の固定具が知られている。これは組み合わされて筒状となる1組の部材を用いて、ケーブルを挟持して固定するもので、特定の外径のケーブルを固定するためのものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、軽量で構造が簡単であって支持固定作業の能率化が図られると共に安全性の向上が図られるようにした「電力又は通信ケーブル用固定具」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年の技術向上に伴い、例えば移動体通信の基地局設置に必要なケーブル類にしても種類が多様化し、またシステム更新のたびにケーブルの本数や径が変更になることも多い。また、地域によって異なる規格が採用されることも少なくない。このため、多種多様なケーブル類に柔軟に対応できる支持具が求められている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、径の異なる複数のケーブルに対応できるケーブル支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、外径が最小径から最大径までの所定の範囲内である複数本のケーブル(91、92)を、基準平面(P)内で互いに平行に支持可能なケーブル支持具(1)であって、ケーブル支持具に支持されたときのケーブルの軸に平行な平面を基準平面としたとき、基準平面に沿って分割して形成された一対の支持ユニット(21、22)を備える。
【0008】
各支持ユニットは各ケーブルに対応する半筒状の収容部(3)を有し、また一対の支持ユニットの一方は突起部(5)を有し、他方は前記突起部が嵌合可能な受け部(6)を有する。収容部には、内壁から基準平面に向かって突出し、ケーブルが収容されたときに弾性変形してケーブルの側面に当接する、ヒダ状の複数の弾性片(4)が形成されている。
【0009】
上記構成により、互いに対向するように組み合わされた一対の収容部の内側に、ケーブルを収容した状態で突起部を受け部に嵌着させると、一対の支持ユニットが一体に固定されてケーブルを支持する。
【0010】
本発明のケーブル支持具によれば、径の異なる複数のケーブル類をまとめて固定できるため、収容されるケーブルの種類や規格が変更になっても柔軟に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例によるケーブル支持具を、ヒンジを開いた状態で内側(基準平面側)から見た図。
【
図2】
図1のケーブル支持具を、ヒンジを開いた状態で外側から見た図。
【
図3】ヒンジを閉じた状態の
図1のIII-III線断面図。
【
図4】ヒンジを閉じた状態の
図1のIV方向矢視図。
【
図5】ケーブル類が収容部に収容されたときの正面図(ボルトは断面図)。
【
図7】ケーブル類が収容部に収容されるときの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例によるケーブル支持具について、図面に基づいて説明する。このケーブル支持具は、移動体通信の基地局において、高所に設置された電波通信部と低所に設置された制御部とを略鉛直方向に接続するケーブルを支持する部材として用いられる。なお、低所とは地表近くに限らず、例えばビルの屋上に塔を建てる場合、屋上の床面を低所と表す。
【0013】
このとき、低所から立設された柱に沿って、相対的に太い電源ケーブルと、相対的に細い信号線ケーブルとが平行に配線される。高さ方向の数か所で、2本のケーブルを支持したケーブル支持具が柱に固定される。ケーブル支持具の取り付けには高所作業を伴うため、軽量で容易に取り付け可能な支持具が求められる。
【0014】
(一実施例)
本発明の一実施例によるケーブル支持具1は、2本のケーブル91、92を基準平面P内で互いに平行に支持する。ケーブル91は例えば信号線ケーブルであり、外径が相対的に小さい。ケーブル92は例えば電源ケーブルであり、外径が相対的に大きい。ケーブル91、92の外径はいずれもケーブル支持具1に適用可能な最小径から最大径までの所定の範囲内に含まれる。
【0015】
ケーブル支持具1に支持されたときのケーブル91、92の軸に平行な平面を「基準平面」Pとする。このとき、基準平面Pに沿って分割して形成された一対の支持ユニット21、22を備える。本実施例のケーブル支持具1は、後述するように、ポリエチレンやエラストマー系の樹脂で一体に形成されている。
【0016】
一対の支持ユニット21、22はケーブル91、92に対応する半筒状の収容部3をそれぞれ有し、一対の支持ユニット21、22の一方には突起部5が形成され、他方には受け部6が形成されている。
【0017】
収容部3の内壁からは、ヒダ状の複数の弾性片4が基準平面Pに向かって突出するように形成されている。この例では、各収容部3の内壁において、ケーブル91、92の軸方向に弾性片4の列が四列設けられている。その一列は、同一平面に配列された複数(例えば四個)の短冊状の弾性片4を含む。収容部3がケーブル91、92を収容するとき、弾性片4は弾性変形しながらケーブル91、92の側面に当接する。一実施例では、各弾性片4の上端が鋭角にならないように緩やかなアールが付けられている。
【0018】
互いに対向するように組み合わされた一対の収容部3の内側に、ケーブル91、92を収容した状態で突起部5を受け部6に嵌着させると、一対の支持ユニット21、22が一体に固定されてケーブル91、92を支持する。
【0019】
図1と
図2にケーブル支持具1の一実施例の平面図を示す。ケーブル91、92を収容したときにこれらに当接する側を「内側」、反対側を「外側」とすると、
図1は内側に、
図2は外側に、それぞれ対応する。
図2の左右方向は
図1の逆である。このように、本実施例のケーブル支持具2は樹脂材料により一体成形されており、支持ユニット21と支持ユニット22がヒンジ7によって接続されている。
【0020】
支持ユニット21、22には各2箇所に収容部3が設けられ、また支持ユニット21には突起部5が、支持ユニット22には受け部6が設けられている。このケーブル支持具2を、ヒンジ7を中心に内側に折り曲げ、支持ユニット21、22の収容部3同士を対向させると、ケーブル91、92を収容可能な円筒状を呈する。また突起部5が受け部6に嵌合することにより、折り曲げ構造を維持する。
【0021】
また収容部3と収容部3の間には、ケーブル91、92を収容した状態のケーブル支持具2を柱状物にボルト固定するための空隙8が設けられている。空隙8は鍵穴状に形成されている(
図1-
図3及び
図5)。ここでは便宜上、空隙8を、突き当りにある略円柱状の空間「ボルト孔」と、ボルト孔に通じる「接続空間」とに分けて説明する。
【0022】
ボルト孔にはヒンジ7で折り曲げられた状態のケーブル支持具1を柱状物に固定するときにボルトB(
図5及び
図6)が挿入される。ボルト孔に通じる接続空間の幅は、ボルト孔の径より小さい。ボルト締め作業の際、接続空間はボルトBをボルトBの径方向からボルト孔に導き、ボルトBが最終的にボルト孔出入口に引っかかってボルト孔内部に留まるようにするための経路として機能する。
【0023】
ヒンジ部を閉じた状態の断面図と底面図を
図3、
図4に示す。突起部5が受け部6に嵌合して折り曲げ状態を維持し、また各収容部3からは一群の弾性片4が基準平面Pに向かって突出し、反対側の一群の弾性片4に対向し、互いに当接している。
図4では空隙8において、接続空間を通して突き当りのボルト孔の内側が見える。
【0024】
本発明のケーブル支持具2がケーブル91、92を収容する方式を
図5-
図7により説明する。
図5では、径の小さいケーブル91も径の大きなケーブル92も同じように収容可能なことが例示されている。各収容部3から突出する一群の弾性片4はケーブル91、92の径の大きさに応じて弾性変形し、ケーブル91、92を略固定する。弾性片4のうちでもケーブル91、92に接触する弾性片4のみが変形するため、径の大小にかかわらずケーブル91、92を略固定可能である。
【0025】
なお、ここでいう「略固定」とは、「弾性片が自身の弾性力でケーブル類の周囲に当接して収容部の内側に留め置き、“ほぼ”固定する(柔軟に固定する)」といった意味である。同時に、例えば特許文献1の「電力又は通信ケーブル用固定具」のように柔軟性のない強固な柱状空間内部に特定径のケーブルをがっちり把持して動かないようにするような方式ではないことをも含意している。
【0026】
図6に示すように、各弾性片4がケーブル92の側面に当接し、弾性力で押し付け合うことによってケーブル92を収容部3の内部に略固定している。また、ケーブル92を挟持する支持ユニット21と支持ユニット22は、突起部5が受け部6に嵌合して折り曲げ構造を維持しながら(
図3)、ボルトBにより柱状物に固定される。なお
図6のケーブル92は略記した模式断面図であって正確ではない。
【0027】
図7は、
図5のケーブル91が収容部3に収容されるときの様子を示す斜視図である。弾性片4は収容部3から直立しているが、ケーブル91に接触すると弾性変形し、ケーブル91の側面に沿うように接する。このように、収容部3の径(幅)に収まる範囲内であればケーブルの径にかかわらず収容可能である。また、細いケーブルであれば、複数本のケーブルを一つの収容部3に収容することも可能である。
【0028】
(本発明の効果)
本発明のケーブル支持具は、上記の従来技術の課題に対し、以下の効果を奏する。
(1)径の異なる複数のケーブル類であってもまとめて固定することができる。
(2)収容するケーブルの径が変更になっても、ケーブル支持具を別のものに交換することなく、変更後のケーブルも変更前と同じように収容できる。
【0029】
(3)弾性片はケーブルの軸方向に複数列設けられているため、ケーブルを安定して支持することができる。
(4)弾性片の弾性変形による略固定方式により、ケーブル支持具に対してケーブル位置をラフにセットできる。よってケーブル設置後にケーブルを移動させる必要が生じた場合でも、位置をずらしての調整が容易で、作業上の自由度が高い。
【0030】
(5)左右2つの支持ユニットがヒンジで接続されているため、ばらばらにならない。よって高所での作業時に誤って支持ユニットを落下させる事故を回避しやすい。作業現場等における個数管理も容易である。
(6)樹脂で一体に成形されているため軽量で持ち運びやすく、高所作業が容易である。一体成形方式のため、生産性もよい。
【0031】
(その他の実施例)
上記の実施例は移動体基地局のケーブル固定を想定した設計となっているが、本発明はこれに限定されない。移動体基地局に限らずどのような配線工事等に使用されてもよい。
【0032】
上記の実施例はヒンジ接続された一体品であるが、本発明はこれに限定されない。よってヒンジ接続されていない2つの別体の支持ユニットを組み合わせる構成としてもよい。
【0033】
上記の実施例は一体成形品であるが、本発明は樹脂で一体成形されるものに限らない。例えば、各弾性片は、本体とは別体に板バネ等の金属で形成されていてもよい。
【0034】
ケーブル軸方向の弾性片の列の数や一列を構成する弾性片の数は、上記の実施例で例示したものに限らず、適宜変更してよい。また、弾性片の形状は上記実施例の形状に限らず任意に変更可能である。
【0035】
なお、外径が収容部の最大径までの範囲内のケーブルを安定に支持可能なことが本発明の優れた特長の一つである。よって、一つの収容部にケーブルを単独で略固定してもよいし、複数本を略固定してもよい。同様に、異なる径のケーブルを収容部にそれぞれ略固定してもよいし、同じ径のケーブル2本を一つの収容部にまとめて略固定してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ・・・ケーブル支持具
21、22・・・支持ユニット
3 ・・・収容部
4 ・・・弾性片
5 ・・・突起部
6 ・・・受け部
7 ・・・ヒンジ
8 ・・・空隙
91、92・・・ケーブル
B ・・・ボルト
P ・・・基準平面