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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112857
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】部品溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20230807BHJP
   B23K 11/14 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
B23K11/24 336
B23K11/14 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014829
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(71)【出願人】
【識別番号】507204785
【氏名又は名称】三刀屋金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 一
(72)【発明者】
【氏名】田部 和行
(57)【要約】
【課題】ワークや溶接部品の不具合を容易に判別する。
【解決手段】上部電極20を昇降させるエアシリンダ11と、先端にピニオン42が取り付けられたロータリーエンコーダ43と、ピニオン42と噛み合い、上部電極20の昇降動作に伴いピニオン42を回転させるラック41と、ロータリーエンコーダ43からの電気信号を受信するコントローラ50と、を備え、コントローラ50は、電気信号に基づいて、ワーク及び溶接部品の少なくとも一方の不具合を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動電極と固定電極の間に、ワークと溶接部品とを挟んだ状態で、通電による抵抗溶接によって、前記ワークと前記溶接部品とを接合する部品溶接装置であって、
前記可動電極を昇降させる流体圧シリンダと、
先端にピニオンが取り付けられたロータリーエンコーダと、
前記ピニオンと噛み合い、該可動電極の昇降動作に伴い前記ピニオンを回転させる噛合部と、
前記ロータリーエンコーダからの前記ピニオンの回転角を表す電気信号を受信するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記電気信号に基づいて、前記ワーク及び前記溶接部品の少なくとも一方の不具合を判定することを特徴とする部品溶接装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品溶接装置において、
前記噛合部は、前記可動電極に設けられたラックであり、
前記可動電極の昇降動作により前記ラックが昇降することで、前記ピニオンが回転することを特徴とする部品溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、部品溶接装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プロジェクションナットやプロジェクションボルトなどの溶接部品をワークに抵抗溶接する部品溶接装置が知られている。このタイプの部品溶接装置は、可動電極と固定電極の間に、ワークと溶接部品とを挟んだ状態で、通電による抵抗溶接によって、ワークと溶接部品とを接合する。
【0003】
例えば、特許文献1には、可動電極を含む可動部の自重による下降動作の開始から溶接が完了するまでの可動電極の移動速度及び/又は移動距離をセンサで監視して、センサにより検出した値が可動電極の移動中に異物を挟み込んだときの安全を確保するための基準値と溶接品質を確保するための基準値との設定可能なしきい値を超えたときに可動電極の動作を停止及び/又は開放動作に切り換えるようにした部品溶接装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、センサとしてワイヤ式のリニアエンコーダを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-205197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、溶接部品には種々の規格があり、同一の溶接装置で種々の規格の溶接部品が溶接可能であるときには、溶接部品が所望規格の溶接部品であるかを判別する必要がある。また、ワークについても、誤って二枚重ねで供給されたときに、それを判別する必要がある。
【0007】
従来は、可動電極と固定電極とでワークと溶接部品とを挟持した状態における可動電極の位置に対応する高さに目標物を配置して、該目標物を可動電極に取り付けた近接センサが検知するか否かにより、ワーク及び溶接部品の不具合の有無を判別していた。しかしながら、溶接部品の規格には僅かな違いしかないものがあり、この場合には、目標物をかなり小さくするとともに、目標物の位置を厳密に設定しなくてはならず、装置の設定にかなりの手間が必要となる。
【0008】
特許文献1のように、ワイヤ式のリニアエンコーダを利用して、可動電極の位置を検出する方法もある。しかしながら、ワイヤ式の場合、熱によるワイヤの線膨張やワイヤに荷重が繰り返しかかることによるワイヤの延びを考慮しなければならず面倒である。特に、稼働電極をシリンダにより移動させるものの場合は、ワイヤに比較的大きな荷重が入力されるため、特に注意が必要になってしまう。また、可動電極の移動方向に対してワイヤが真っ直ぐに移動するように正確に位置合わせをしなければならず、設置が面倒である。
【0009】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークや溶接部品の不具合を容易に判別することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、可動電極と固定電極の間に、ワークと溶接部品とを挟んだ状態で、通電による抵抗溶接によって、前記ワークと前記溶接部品とを接合する部品溶接装置を対象として、前記可動電極を昇降させる流体圧シリンダと、先端にピニオンが取り付けられたロータリーエンコーダと、前記ピニオンと噛み合い、該可動電極の昇降動作に伴い前記ピニオンを回転させる噛合部と、前記ロータリーエンコーダからの前記ピニオンの回転角を表す電気信号を受信するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記電気信号に基づいて、前記ワーク及び前記溶接部品の少なくとも一方の不具合を判定する、ことを特徴とする。
【0011】
ここに開示された技術の第2の態様は、第1の態様において、前記噛合部は、前記可動電極に設けられたラックであり、前記可動電極の昇降動作により前記ラックが昇降することで、前記ピニオンが回転する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
ここに開示された技術の第1の態様によると、ワークが2重になっていたり、溶接部品が他の規格の部品になっていたりしたときには、ロータリーエンコーダにより検出されるピニオンの回転角が所望の回転角から変化する。これにより、コントローラは、ワーク及び溶接部品の少なくとも一方の不具合を判定することができる。ワイヤを用いることなく、ロータリーエンコーダに取り付けられたピニオンを回転させるため、熱による膨張や可動電極からの荷重による変形の影響が、ワイヤと比較して小さい。また、ピニオンが噛合部と噛み合っていればよく、ピニオンの回転軸が可動電極の移動方向に対して厳密に直交していなくてもよい。このため、設置が容易である。したがって、ワークや溶接部品の不具合を容易に判別することができる。
【0013】
ここに開示された技術の第2の態様によると、既存の可動電極にラックを設ければよくなるため、簡単な構成で、ワークや溶接部品の不具合を容易に判別することができるようになる。また、ピニオン付きのロータリーエンコーダは、位置を固定させておけばよいため、ロータリーエンコーダとコントローラとの通信を良好な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、例示的な実施形態に係る部品溶接装置の概略図である。
図2図2は、判別機構を拡大して示す拡大斜視図である。
図3図3は、部品溶接装置の動作図であって、ワーク及びプロジェクションナットに不具合がない場合を示す。
図4図4は、部品溶接装置の動作図であって、ワークが二枚重ねになっている場合を示す。
図5図5は、部品溶接装置の動作図であって、ナットが二個投入された場合を示す。
図6図6は、部品溶接装置の動作図であって、ナットが逆向きである場合を示す。
図7図7は、部品溶接装置の動作図であって、プロジェクションボルトを溶接する場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、使用時における正面側を前側といい、その反対側を後側という。また、左右方向は、前側から後側を見たときの左側を左側といい、右側を右側という。
【0016】
(溶接装置の構成)
図1は、本実施形態に係る部品溶接装置1を概略的に示す。この部品溶接装置1は、上部電極20と下部電極30の間に、ワークW(図3参照)と溶接部品P(図3参照)とを挟んだ状態で、通電による抵抗溶接によって、ワークWと溶接部品Pとを接合する溶接装置である。ワークWは例えば鋼板である。溶接部品Pは、例えば、プロジェクションナットやプロジェクションボルトである。
【0017】
部品溶接装置1は、床面Fに載置される装置本体10を有する。装置本体10は、上部電極20を昇降させるためのエアシリンダ11を有する。
【0018】
エアシリンダ11は、シリンダロッド(図示省略)を有している。該シリンダロッドの下端には、上部電極20を支持する上側支持部12が設けられている。
【0019】
上部電極20は、電極本体21と、電極本体21を上側支持部12に取付固定するための上側取付部22とを有する。上部電極20の電極本体21は、エアシリンダ11により、上側支持部12が昇降されることにより、昇降する。上部電極20は、可動電極に相当する。
【0020】
下部電極30は、装置本体10に対して固定されている。具体的には、装置本体10には、前側に向かって延びる下側支持部13が設けられており、下部電極30は、下側支持部13の先端に固定されている。下部電極は30、電極本体31と、電極本体31を下側支持部13に取付固定するための下側取付部32とを有する。下部電極30の電極本体31は、下側支持部13に支持された状態で、装置本体10に対して相対移動しないようになっている。下部電極30は、固定電極に相当する。
【0021】
図示は省略するが、下部電極30の電極本体31には、プロジェクションナットを位置決めするためのガイドピンが挿入されていたり、プロジェクションボルトの先端が挿入される孔が形成されていたりする。
【0022】
部品溶接装置1は、上部電極20の移動量を検出することで、ワークW及び溶接部品Pに不具合がないか否かを判別する判別機構40が設けられている。ここでいう、不具合とは、例えば、ワークWが複数枚重なっている場合や、電極間に供給された溶接部品Pが所望の規格の溶接部品とは別の溶接部品である場合のことを示す。
【0023】
判別機構40は、図1及び図2に示すように、上部電極20に取り付けられたラック41と、ラック41により回転するピニオン42と、該ピニオン42が取り付けられたロータリーエンコーダ43と、を有する。ラック41とピニオン42とは同じ材質で構成されている。
【0024】
ラック41は、ラック支持部41aを介して上部電極20に取付支持されている。ラック支持部41aは、上部電極20の昇降方向、すなわちエアシリンダ11の進退方向に真っ直ぐに延びている。ラック41は、ラック支持部41aに沿って、該ラック支持部41aに取り付けられている。これにより、ラック41は、その長手方向が、上部電極20の昇降方向に対して平行になるように設置される。
【0025】
ピニオン42は、ロータリーエンコーダ43の先端に取り付けられている。つまり、ピニオン42は、ロータリーエンコーダ43に取付支持されている。ピニオン42は、上部電極20の昇降動作に伴って、ラック41が昇降することで回転する。
【0026】
ロータリーエンコーダ43は、装置本体10に固定されている。ロータリーエンコーダ43は、ピニオン42の回転角を電気信号に変換する。ロータリーエンコーダ43は、ピニオン42が所定の回転角だけ回転する毎にパルス信号を出力する。このパルス数をカウントすることでピニオン42の回転角が分かる。前述したように、ピニオン42は、ラック41が昇降することで回転するため、ピニオン42の回転角が分かればラック41の移動量、すなわち上部電極20の移動量が分かる。
【0027】
部品溶接装置1は、エアシリンダ11、上部電極20、下部電極30、及びロータリーエンコーダ43と電気的に接続されたコントローラ50を有する。また、コントローラ50は、部品溶接装置1に設けられかつ作業者により踏まれる操作ペダル60と電気的に接続されている。コントローラ50は、操作ペダル60が踏まれたときには、エアシリンダ11に電気信号を出力して、上部電極20を下降させる。コントローラ50は、ワークWと溶接部品Pとが、上部電極20と下部電極30との間に挟持されたときには、上部電極20と下部電極30との間で通電させる。コントローラ50は、操作ペダル60が解放されたときには、エアシリンダ11に電気信号を出力して、上部電極20を上昇させる。
【0028】
コントローラ50は、ロータリーエンコーダ43から受信した電気信号に基づいて、ワークW及び溶接部品Pの不具合を判定する。具体的には、ロータリーエンコーダ43から出力されたパルス数が所定範囲内であるか否かを判定する。コントローラ50は、パルス数が所定範囲内であるときには、ワークW及び溶接部品Pのいずれにも不具合がないと判定する一方で、パルス数が所定範囲よりも大きい又は所定範囲よりも小さいときには、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方に不具合があると判定する。所定範囲は、ワークWの厚み及び溶接部品Pの規格に応じて設定することができる。
【0029】
コントローラ50は、表示部51と電気的に接続されている。表示部51は、ロータリーエンコーダ43が検出したパルス数を表示する。表示部51は、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方に不具合があるときには、不具合があることを表示して、作業者に報知する。
【0030】
(不具合の検出)
図3図6は、部品溶接装置1の動作を概略的に示す。ここでは、溶接部品PとしてプロジェクションナットをワークWに溶接する場合について説明する。また、図3は、ワークW及び溶接部品Pのいずれにも不具合がない場合を示す。
【0031】
ワークWと溶接部品Pとが上部電極20と下部電極30との間に配置された状態で、作業者が操作ペダル60を踏み込むと、エアシリンダ11が作動する。これにより、図3に示すように、上部電極20が下降して、上部電極20と下部電極30とでワークW及び溶接部品Pが挟持される。
【0032】
このとき、上部電極20とともにラック41が下降する。これにより、ピニオン42が時計回りに回転する。そして、ピニオン42の回転角度は、ロータリーエンコーダ43により検出される。ロータリーエンコーダ43は、ピニオン42の回転角に応じてパルス信号をコントローラ50に送信する。
【0033】
コントローラ50は、この時点でロータリーエンコーダ43からのパルス数に基づいて、ワークW及び溶接部品Pの不具合の有無を判定する。図3に示すように、ワークW及び溶接部品Pのいずれにも不具合がないときには、コントローラ50は、上部電極20及び下部電極30に通電して、溶接部品PをワークWに溶接させる。
【0034】
図4は、ワークWが二枚重ねになっている場合、すなわち、ワークWに不具合がある場合を示す。
【0035】
このときには、ワークWの厚みの分だけ、上部電極20の下降量が減少する。このため、ラック41の下降量も減少して、ピニオン42の回転角が小さくなる。これにより、上部電極20と下部電極30とでワークW及び溶接部品Pを挟持した時点で、ロータリーエンコーダ43からのパルス数は、正常なときと比較して減少する。この結果、コントローラ50は、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方に不具合があると判定することができる。
【0036】
コントローラ50は、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方に不具合があると判定したときには、上部電極20と下部電極30との間に通電させること無く、溶接動作を中止する。そして、表示部に不具合が発生している旨を表示する。
【0037】
図5は、プロジェクションナットが二個投入された場合、すなわち、溶接部品Pに不具合がある場合を示す。
【0038】
このときには、プロジェクションナットの厚みの分だけ、上部電極20の下降量が減少する。このため、ラック41の下降量も減少して、ピニオン42の回転角が小さくなる。これにより、上部電極20と下部電極30とでワークW及び溶接部品Pを挟持した時点で、ロータリーエンコーダ43からのパルス数は、正常なときと比較して減少する。この結果、コントローラ50は、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方に不具合があると判定することができる。
【0039】
図6は、プロジェクションナットが逆向きになっている場合、すなわち、溶接部品Pに不具合がある場合を示す。
【0040】
このときには、プロジェクションナットに設けられた突起(プロジェクション)の分だけ、上部電極20の下降量が増加する。このため、ラック41の下降量も増加して、ピニオン42の回転角が大きくなる。これにより、上部電極20と下部電極30とでワークW及び溶接部品Pを挟持した時点で、ロータリーエンコーダ43からのパルス数は、正常なときと比較して増加する。この結果、コントローラ50は、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方に不具合があると判定することができる。
【0041】
図7は、溶接部品PとしてプロジェクションボルトをワークWに溶接する場合を示す。プロジェクションボルトをワークWに溶接する場合には、プロジェクションボルトの頭部とワークWとを、上部電極20と下部電極30とで挟持する。このため、プロジェクションナットの場合と同様に、ワークWが二枚重ねになっていたり、プロジェクションボルトが所望の規格とは別の規格のものであって、頭部の厚みが異なっていたりするときには、コントローラ50が、ロータリーエンコーダ43のパルス数に基づいて、これらの不具合を検出することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る部品溶接装置1で検出可能な不具合の例を列挙した。本実施形態に係る部品溶接装置1は、これ以外にも、溶接部品Pが、所望の規格のものであったとしても、突起が形成されていなかったり、突起が潰れていたりといった不良品であった場合にも、その不具合を検出することができる。これらの場合は、突起の分だけ上部電極20の下降量が異なるため、その下降量の違いから検出することができる。もちろん、前述した不具合が同時に発生した場合、例えば、ワークWが二枚重ねでかつプロジェクションナットが2個投入された場合にも、上部電極20の下降量の違いをロータリーエンコーダ43で検出することで、不具合を検出可能である。
【0043】
したがって、本実施形態では、上部電極20を昇降させるエアシリンダ11と、先端にピニオン42が取り付けられたロータリーエンコーダ43と、ピニオン42と噛み合い、上部電極20の昇降動作に伴いピニオン42を回転させるラック41と、ロータリーエンコーダ43からの電気信号を受信するコントローラ50と、を備え、コントローラ50は、ロータリーエンコーダ43からの電気信号に基づいて、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方の不具合を判定する。これにより、ワークWが2重になっていたり、溶接部品Pが他の規格の部品になっていたりしたときには、ロータリーエンコーダ43により検出されるピニオン42の回転角が所望の回転角から変化する。コントローラ50は、この回転角の違いから、ワークW及び溶接部品Pの少なくとも一方の不具合を判定することができる。ワイヤを用いることなく、ロータリーエンコーダ43に取り付けられたピニオン42を回転させるため、熱による膨張や可動電極からの荷重による変形の影響が、ワイヤと比較して小さい。また、ピニオン42の回転軸が上部電極の移動方向に対して厳密に直交していなくてもよいため、設置が容易である。したがって、ワークWや溶接部品Pの不具合を容易に判別することができる。
【0044】
特に、本実施形態では、上部電極20の昇降動作によりラック41が昇降することで、ピニオン42が回転する。これにより、既存の上部電極20にラック41を設ければよくなるため、簡単な構成で、ワークWや溶接部品Pの不具合を容易に判別することができるようになる。また、ピニオン42付きのロータリーエンコーダ43は、位置を固定させておけばよいため、ロータリーエンコーダ43とコントローラ50との通信を良好な状態に維持することができる。
【0045】
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0046】
例えば、前述の実施形態では、ラック41を上部電極20に取り付けて、ピニオン42付きのロータリーエンコーダ43を装置本体10に固定していた。これに限らず、ピニオン42付きのロータリーエンコーダ43を上部電極20に取り付けて、ラック41を装置本体10に固定する構成にしてもよい。
【0047】
また、前述の実施形態では、上部電極20が可動電極となり、下部電極30が固定電極となっていたが、逆に、上部電極20が固定電極となり、下部電極30が可動電極となっていてもよい。
【0048】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ここに開示された技術は、可動電極と固定電極の間に、ワークと溶接部品とを挟んだ状態で、通電による抵抗溶接によって、ワークと溶接部品とを接合する部品溶接装置として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 部品溶接装置
20 上部電極(可動電極)
30 下部電極(固定電極)
41 ラック(噛合部)
42 ピニオン
43 ロータリーエンコーダ
50 コントローラ
P 溶接部品
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7