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特開2023-112862粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112862
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014840
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】松下 孝夫
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA53
5F131CA07
5F131CA09
5F131CA23
5F131DA12
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA07
5F131EB01
5F131EB55
5F131EB81
5F131EC34
5F131EC37
5F131EC53
5F131EC55
5F131EC62
5F131EC63
5F131EC64
5F131EC72
5F131EC76
5F131EC77
(57)【要約】
【課題】ワークに変形または割れなどが発生することを防止しつつ、ワークに貼りつけられた粘着テープを精度よく剥離できる粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置を提供する。
【解決手段】ウエハWの全面のうちウエハWの外周部を保持する保持テーブル3と、平坦面45を有する剥離部材37の平坦面45を保護テープPTの表面に当接させ、保護テープ45を剥離部材37によって折り返した状態で保護テープPTを引っ張ることにより、ウエハWから保護テープPTを剥離させる剥離機構5と、を備え、平坦面45は、保護テープPTがウエハWから剥離される方向である剥離方向Vpについて、ウエハWの長さR1の1/10以上の長さを有するとともに、剥離方向Vpに直交する方向である直交方向yについてウエハWの長さR2より長くなるように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持過程と、
平坦面を有する剥離部材の前記平坦面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離過程と、
を備え、
前記平坦面は、前記粘着テープが前記ワークから剥離される方向である剥離方向について前記ワークの長さの1/10以上の長さを有するとともに、前記剥離方向に直交する方向である直交方向について前記ワークの長さより長くなるように構成されている
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は前記粘着テープを加熱させるヒータを備え、
前記剥離過程において、前記剥離部材は前記ヒータによって加熱された前記粘着テープを折り返させ、前記粘着テープを前記ワークから剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、
前記粘着テープに当接した状態で前記粘着テープを折り返して前記ワークから剥離させる折り返し角部を備え、
前記折り返し角部は、前記粘着テープが前記ワークから剥離される際に前記粘着テープが折り返される角度が鋭角となるように構成される
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、
先鋭なエッジ部をさらに有し、
前記エッジ部および前記平坦面のうち前記平坦面が前記粘着テープの表面に当接可能な第1姿勢と、前記エッジ部および前記平坦面のうち前記エッジ部が前記粘着テープの表面に当接可能な第2姿勢とを切り換え可能に構成されており、
前記剥離過程は、
前記剥離部材が前記第1姿勢をとる場合は前記平坦面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させ、
前記剥離部材が前記第2姿勢をとる場合は前記エッジ部を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離過程において、
前記ワークの外周部に貼りつけられている前記粘着テープを剥離する際には前記剥離部材が前記粘着テープに当接した状態で前記粘着テープを前記剥離部材で折り返し、前記ワークの外周部以外に貼りつけられている前記粘着テープを剥離する際には前記剥離部材が前記粘着テープに近接している状態で前記粘着テープを前記剥離部材で折り返すように前記剥離部材の高さが制御される
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、所定の方向に延びる複数の平面とそれぞれ角度が異なる複数の角部とを有する多角柱状の部材であり、前記所定の方向の軸周りに回動可能に構成されており、
前記剥離部材が前記所定の方向の軸周りに回動されることで、前記複数の平面のうち前記平坦面として前記粘着テープの表面に当接する平面が切り換えられ、前記複数の角部のうち前記粘着テープが前記ワークから剥離される際に前記粘着テープが折り返される角部が切り換えられるように構成される
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記粘着テープの表面に剥離テープを前記剥離方向に貼りつける剥離テープ貼付過程と、
を備え、
前記剥離過程は、
平坦面を有する剥離部材の前記平坦面を前記粘着テープに貼りつけられた前記剥離テープの表面に当接させ、前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記剥離テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項8】
請求項7に記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、
前記剥離テープの厚みに相当する深さの凹部が前記平坦面に形成されており、
前記剥離過程では
前記凹部に前記剥離テープを嵌合させた状態で前記平坦面を前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープの表面に当接させ、前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記剥離テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項9】
ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持過程と、
前記ワークの振動を防止する振動防止面を有する剥離部材の前記振動防止面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記振動防止面によって前記ワークの振動を防止しつつ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離過程と、
を備えることを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項10】
請求項9に記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は前記粘着テープを加熱させるヒータを備え、
前記剥離過程において、前記剥離部材は前記ヒータによって加熱された前記粘着テープを折り返させ、前記粘着テープを前記ワークから剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、
前記粘着テープに当接した状態で前記粘着テープを折り返して前記ワークから剥離させる折り返し角部を備え、
前記折り返し角部は、前記粘着テープが前記ワークから剥離される際に前記粘着テープが折り返される角度が鋭角となるように構成される
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項12】
請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、
先鋭なエッジ部をさらに有し、
前記エッジ部および前記振動防止面のうち前記振動防止面が前記粘着テープの表面に当接可能な第1姿勢と、前記エッジ部および前記振動防止面のうち前記エッジ部が前記粘着テープの表面に当接可能な第2姿勢とを切り換え可能に構成されており、
前記剥離過程は、
前記剥離部材が前記第1姿勢をとる場合は前記振動防止面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させ、
前記剥離部材が前記第2姿勢をとる場合は前記エッジ部を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項13】
請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離過程において、
前記ワークの周縁部に貼りつけられている前記粘着テープを剥離する際には前記剥離部材が前記粘着テープに当接した状態で前記粘着テープを前記剥離部材で折り返し、前記ワークの周縁部以外に貼りつけられている前記粘着テープを剥離する際には前記剥離部材が前記粘着テープに近接している状態で前記粘着テープを前記剥離部材で折り返すように前記剥離部材の高さが制御される
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項14】
請求項9ないし請求項13のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、所定の方向に延びる複数の平面とそれぞれ角度が異なる複数の角部とを有する多角柱状の部材であり、前記所定の方向の軸周りに回動可能に構成されており、
前記剥離部材が前記所定の方向の軸周りに回動されることで、前記複数の平面のうち前記振動防止面として前記粘着テープの表面に当接する平面が切り換えられ、前記複数の角部のうち前記粘着テープが前記ワークから剥離される際に前記粘着テープが折り返される角部が切り換えられるように構成される
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項15】
請求項9ないし請求項14のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法において、
前記粘着テープの表面に剥離テープを前記剥離方向に貼りつける剥離テープ貼付過程と、
を備え、
前記剥離過程は、
前記剥離部材の前記振動防止面を前記粘着テープに貼りつけられた前記剥離テープの表面に当接させ、前記振動防止面によって前記ワークの振動を防止しつつ、前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記剥離テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項16】
請求項15に記載の粘着テープ剥離方法において、
前記剥離部材は、
前記剥離テープの厚みに相当する深さの凹部が前記振動防止面に形成されており、
前記剥離過程では
前記凹部に前記剥離テープを嵌合させた状態で前記振動防止面を前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープの表面に当接させ、前記振動防止面によって前記ワークの振動を防止しつつ、前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記剥離テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項17】
ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持部と、
平坦面を有する剥離部材の前記平坦面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離機構と、
を備え、
前記平坦面は、前記粘着テープが前記ワークから剥離される方向である剥離方向について前記ワークの長さの1/10以上の長さを有するとともに、前記剥離方向に直交する方向である直交方向について前記ワークの長さより長くなるように構成されている
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項18】
ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持部と、
前記ワークの振動を防止する振動防止面を有する剥離部材の前記振動防止面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記振動防止面によって前記ワークの振動を防止しつつ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離機構と、
を備えることを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)を例とするワークに貼り付けられた粘着テープを剥離するための、粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの表面に回路パターン形成処理を行った後、ウエハの裏面全体を均一に研削して薄型化するバックグラインド処理が施される。当該バックグラインド処理を行う前に、回路を保護するべくウエハの表面に保護用の粘着テープ(保護テープ)を貼り付けている。ウエハを薄型化した後、ダイシング工程などの各処理をおこなうべく保護テープを剥離する。
【0003】
ウエハから保護テープを剥離する従来の方法としては、裏面研削後に保護テープの表面に剥離用の粘着テープ(剥離テープ)を貼付ローラで貼り付ける。そして、保護テープに貼りつけられた剥離テープをエッジ部材で折り返しつつ剥離することによって、剥離テープと保護テープとを一体としてウエハから剥離する方法が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
近年では高密度実装を目的としてウエハのさらなる薄型化が進められており、一例として数十μm程度の薄さになるようにバックグラインド処理が施される。このような薄型化によってウエハの剛性が低下するので、薄型化されたウエハは脆くかつ歪みが生じやすい。そこでウエハを補強する方法として、ウエハの外周部を残してバックグラインド処理を行うことにより、外周に沿って環状凸部が残存された薄型の形状に加工する方法が提案されている。当該環状凸部を形成することにより、一般的なハンドリング工程を行う場合においてはウエハの撓み変形を防止できる。
【0005】
バックグラインド処理後にウエハ表面から保護テープを剥離するとき、裏面の環状凸部のみを保持テーブルに接触させて吸着保持するとともに、保持テーブルとウエハ裏面との間に流体を供給して内圧を高めている。この状態で剥離テープを保護テープに貼付けるとともに、保護テープに貼りつけられた剥離テープをエッジ部材で折り返しつつ剥離することによって、剥離テープとともに保護テープをウエハ表面から一体にして剥離している(特許文献2を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002-124494号公報
【特許文献2】特開2008-034709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
【0008】
従来の構成において、ウエハの外周部を保持テーブルで保持した状態でウエハに貼りつけられている保護テープを剥離する場合、ウエハに波打ちが発生するという問題が新たに確認された。保護テープを剥離する際にウエハが波打つと、当該波打ちに起因してウエハに変形または割れが発生し、ウエハの処理効率が低下するという問題が懸念される。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ワークに変形または割れなどが発生することを防止しつつ、ワークに貼りつけられた粘着テープを精度よく剥離できる粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る粘着テープ剥離方法は、ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持過程と、
平坦面を有する剥離部材の前記平坦面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離過程と、
を備え、
前記平坦面は、前記粘着テープが前記ワークから剥離される方向である剥離方向について前記ワークの長さの1/10以上の長さを有するとともに、前記剥離方向に直交する方向である直交方向について前記ワークの長さより長くなるように構成されている
ことを特徴とするものである。
【0011】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク全体のうちワークの外周部のみを保持部材で保持させた状態で当該ワークから粘着テープを剥離する際に、平坦面を有する剥離部材を用いる。すなわち剥離部材の平坦面を粘着テープの表面に当接させ、粘着テープを剥離部材によって折り返した状態で粘着テープを引っ張ることにより、ワークから粘着テープを剥離させる。このとき、平坦面は、剥離方向についてワークの長さの1/10以上の長さを有するとともに、剥離方向に直交する方向である直交方向についてワークの長さより長くなるように構成されている。すなわち、十分に広い平坦面を粘着テープの表面に当接させた状態で粘着テープを引っ張るので、ワークの外周部のみを保持部材で保持させながら粘着テープを剥離する構成であっても、剥離部材の広い平坦面によってワークの位置が安定に維持される。よって、粘着テープを剥離する際にワークに変形または割れが発生することを防止できる。
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係る粘着テープ剥離方法は、ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持過程と、
前記ワークの振動を防止する振動防止面を有する剥離部材の前記振動防止面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記振動防止面によって前記ワークの振動を防止しつつ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離過程と、
を備えることを特徴とするものである。
【0013】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク全体のうちワークの外周部のみを保持部材で保持させた状態で当該ワークから粘着テープを剥離する際に、振動防止面を有する剥離部材を用いる。すなわち剥離部材の振動防止面を粘着テープの表面に当接させ、振動防止面によってワークの振動を防止しつつ、粘着テープを剥離部材によって折り返した状態で粘着テープを引っ張ることにより、ワークから粘着テープを剥離させる。よって、ワークの外周部のみを保持部材で保持させながら粘着テープを剥離する構成であっても、粘着テープを剥離する際にワークが振動して変形または割れが発生することを防止できる。
【0014】
また、上述した発明において、前記剥離部材は前記粘着テープを加熱させるヒータを備え、前記剥離過程において、前記剥離部材は前記ヒータによって加熱された前記粘着テープを折り返させ、前記粘着テープを前記ワークから剥離させることが好ましい。
【0015】
(作用・効果)この構成によれば、剥離部材は粘着テープを加熱させるヒータを備え、ヒータによって加熱された粘着テープを折り返させ、粘着テープをワークから剥離させる。粘着テープが加熱されることにより、粘着テープが軟化するので、粘着テープの折り返しが容易となる。よって、剥離過程において粘着テープの剥離エラーが発生することを防止できる。
【0016】
また、上述した発明において、前記剥離部材は、前記粘着テープに当接した状態で前記粘着テープを折り返して前記ワークから剥離させる折り返し角部を備え、前記折り返し角部は、前記粘着テープが前記ワークから剥離される際に前記粘着テープが折り返される角度が鋭角となるように構成されることが好ましい。
【0017】
(作用・効果)この構成によれば、剥離部材に設けられた折り返し角部により、粘着テープを鋭角に折り返しつつ粘着テープをワークから剥離させる。すなわち粘着テープが剥離される際に折り返される角度が過度に大きくなることを防止できるので、粘着テープの基材または粘着材が断裂する事態を回避できる。
【0018】
また、上述した発明において、前記剥離部材は、先鋭なエッジ部をさらに有し、前記エッジ部および前記平坦面のうち前記平坦面が前記粘着テープの表面に当接可能な第1姿勢と、前記エッジ部および前記平坦面のうち前記エッジ部が前記粘着テープの表面に当接可能な第2姿勢とを切り換え可能に構成されており、前記剥離過程は、前記剥離部材が前記第1姿勢をとる場合は前記平坦面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させ、前記剥離部材が前記第2姿勢をとる場合は前記エッジ部を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させることが好ましい。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、剥離部材は平坦面と先鋭なエッジ部とを有しており、第1姿勢と第2姿勢とを切り換え可能に構成される。剥離部材が第1姿勢をとる場合、剥離過程において平坦面が粘着テープの表面に当接するので、ワークをより安定に維持しつつ粘着テープをワークから剥離できる。そのため、ワークの外周部のみが保持される場合であってもワークの変形または割れが発生することを防止できる。剥離部材が第2姿勢をとる場合、先鋭なエッジ部が粘着テープの表面に当接した状態で粘着テープを折り返すので、粘着テープに作用する剥離力を大きくできる。そのため、粘着テープの粘着力が大きい場合であってもより確実に粘着テープをワークから剥離できる。このように、剥離部材の姿勢を切り換えるという単純な操作によってワークおよび粘着テープの条件に応じた剥離過程を実行できるので、装置の複雑化を回避しつつ粘着テープを精度よくワークから剥離できる。
【0020】
また、上述した発明において、前記剥離過程において、前記ワークの外周部に貼りつけられている前記粘着テープを剥離する際には前記剥離部材が前記粘着テープに当接した状態で前記粘着テープを前記剥離部材で折り返し、前記ワークの外周部以外に貼りつけられている前記粘着テープを剥離する際には前記剥離部材が前記粘着テープに近接している状態で前記粘着テープを前記剥離部材で折り返すように前記剥離部材の高さが制御されることが好ましい。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、ワークの外周部に貼りつけられている粘着テープを剥離する場合、剥離部材を粘着テープに当接させた状態で粘着テープを剥離部材で折り返して剥離する。この場合、ワークをより安定に維持できるので粘着テープを剥離する際にワークが変形または破損する事態を回避できる。また、ワークの外周部以外に貼りつけられている粘着テープを剥離する場合、剥離部材を粘着テープに近接させた状態で粘着テープを剥離部材で折り返して剥離する。この場合、剥離部材がワークに対して過剰な力が作用することを回避できるので、中央部が薄く脆弱なワークを用いる場合であってもワークに変形または割れが発生することをより確実に回避できる。
【0022】
また、上述した発明において、前記剥離部材は、所定の方向に延びる複数の平面とそれぞれ角度が異なる複数の角部とを有する多角柱状の部材であり、前記所定の方向の軸周りに回動可能に構成されており、前記剥離部材が前記所定の方向の軸周りに回動されることで、前記複数の平面のうち前記平坦面として前記粘着テープの表面に当接する平面が切り換えられ、前記複数の角部のうち前記粘着テープが前記ワークから剥離される際に前記粘着テープが折り返される角部が切り換えられるように構成されることが好ましい。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、剥離部材は所定の方向の軸周りに回動可能な多角柱状の部材であり、当該所定の方向に延びる複数の平面とそれぞれ角度が異なる複数の角部とを有する。すなわち剥離部材が所定の方向の軸周りに回動されることで、複数の平面のうち平坦面として粘着テープの表面に当接する平面が切り換えられる。粘着テープの表面に当接する平面が切り換えられることにより、粘着テープに当接して粘着テープを折り返す角部も切り換えられる。各々の角部の角度は異なるので、粘着テープを折り返す角部が切り換えられることにより、粘着テープの剥離角度を適宜変更できる。このように、剥離部材を回動させるという単純な操作によってワークおよび粘着テープの条件に応じて剥離角度を適宜変更して剥離過程を実行できるので、装置の複雑化を回避しつつ粘着テープを精度よくワークから剥離できる。
【0024】
また、上述した発明において、前記粘着テープの表面に剥離テープを前記剥離方向に貼りつける剥離テープ貼付過程と、を備え、前記剥離過程は、平坦面を有する剥離部材の前記平坦面を前記粘着テープに貼りつけられた前記剥離テープの表面に当接させ、前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記剥離テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離させることが好ましい。
【0025】
(作用・効果)この構成によれば、粘着テープの表面に剥離テープを貼りつける。そして剥離部材の平坦面を剥離テープの表面に当接させ、剥離テープが貼りつけられた粘着テープを剥離部材によって折り返した状態で剥離テープを引っ張ることにより、ワークから粘着テープを剥離テープと一体にして剥離させる。剥離テープを用いることにより、粘着テープをより安定に保持しつつワークから剥離できる。よって、剥離過程において粘着テープの剥離エラーが発生することを防止できる。
【0026】
また、上述した発明において、前記剥離部材は、前記剥離テープの厚みに相当する深さの凹部が前記平坦面に形成されており、前記剥離過程では前記凹部に前記剥離テープを嵌合させた状態で前記平坦面を前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープの表面に当接させ、前記剥離テープが貼りつけられた前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記剥離テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離させることが好ましい。
【0027】
(作用・効果)この構成によれば、剥離部材の平坦面には粘着テープの厚みに相当する深さの凹部が形成されている。そのため、剥離テープが貼りつけられた粘着テープに剥離部材の平坦面を当接させる際に、凹部に剥離テープが嵌合される。よって、厚みが大きい剥離テープを用いる場合であっても、剥離テープの厚みによって剥離部材の平坦面と粘着テープとの密着性が低下するという事態を回避できる。よって、剥離過程における平坦面と粘着テープとの密着性を向上させ、平坦面によってワークの位置をより安定に維持できる。
【0028】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係る粘着テープ剥離装置は、ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持部と、
平坦面を有する剥離部材の前記平坦面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離機構と、
を備え、
前記平坦面は、前記粘着テープが前記ワークから剥離される方向である剥離方向について前記ワークの長さの1/10以上の長さを有するとともに、前記剥離方向に直交する方向である直交方向について前記ワークの長さより長くなるように構成されている
ことを特徴とするものである。
【0029】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク全体のうちワークの外周部のみを保持部材で保持させた状態で当該ワークから粘着テープを剥離する際に、平坦面を有する剥離部材を用いる。すなわち剥離部材の平坦面を粘着テープの表面に当接させ、粘着テープを剥離部材によって折り返した状態で粘着テープを引っ張ることにより、ワークから粘着テープを剥離させる。このとき、平坦面は、剥離方向についてワークの長さの1/10以上の長さを有するとともに、剥離方向に直交する方向である直交方向についてワークの長さより長くなるように構成されている。すなわち、十分に広い平坦面を粘着テープの表面に当接させた状態で粘着テープを引っ張るので、ワークの外周部のみを保持部材で保持させながら粘着テープを剥離する構成であっても、剥離部材の広い平坦面によってワークの位置が安定に維持される。よって、粘着テープを剥離する際にワークに変形または割れが発生することを防止できる。
【0030】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係る粘着テープ剥離装置は、ワークに貼り付けられた粘着テープを前記ワークから剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを保持部材に載置させ、前記ワーク全面のうち前記ワークの外周部を前記保持部材で保持するワーク保持部と、
前記ワークの振動を防止する振動防止面を有する剥離部材の前記振動防止面を前記粘着テープの表面に当接させ、前記振動防止面によって前記ワークの振動を防止しつつ、前記粘着テープを前記剥離部材によって折り返した状態で前記粘着テープを引っ張ることにより、前記ワークから前記粘着テープを剥離させる剥離機構と、
を備えることを特徴とするものである。
【0031】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク全体のうちワークの外周部のみを保持部材で保持させた状態で当該ワークから粘着テープを剥離する際に、振動防止面を有する剥離部材を用いる。すなわち剥離部材の振動防止面を粘着テープの表面に当接させ、振動防止によってワークの振動を防止しつつ、粘着テープを剥離部材によって折り返した状態で粘着テープを引っ張ることにより、ワークから粘着テープを剥離させる。よって、ワークの外周部のみを保持部材で保持させながら粘着テープを剥離する構成であっても、粘着テープを剥離する際にワークが振動して変形または割れが発生することを防止できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置によれば、第1の態様においてはワーク全体のうちワークの外周部のみを保持部材で保持させた状態で当該ワークから粘着テープを剥離する際に、平坦面を有する剥離部材を用いる。すなわち剥離部材の平坦面を粘着テープの表面に当接させ、粘着テープを剥離部材によって折り返した状態で粘着テープを引っ張ることにより、ワークから粘着テープを剥離させる。
【0033】
このとき、平坦面は、剥離方向についてワークの長さの1/10以上の長さを有するとともに、剥離方向に直交する方向である直交方向についてワークの長さより長くなるように構成されている。すなわち、十分に広い平坦面を粘着テープの表面に当接させた状態で粘着テープを引っ張るので、ワークの外周部のみを保持部材で保持させながら粘着テープを剥離する構成であっても、剥離部材の広い平坦面によってワークの位置が安定に維持される。よって、ワークに変形または割れが発生することを防止しつつ、ワークに貼りつけられた粘着テープを精度よく剥離できる
【0034】
また第2の態様においては、ワーク全体のうちワークの外周部のみを保持部材で保持させた状態で当該ワークから粘着テープを剥離する際に、振動防止面を有する剥離部材を用いる。すなわち剥離部材の振動防止面を粘着テープの表面に当接させ、振動防止によってワークの振動を防止しつつ、粘着テープを剥離部材によって折り返した状態で粘着テープを引っ張ることにより、ワークから粘着テープを剥離させる。よって、ワークの外周部のみを保持部材で保持させながら粘着テープを剥離する構成であっても、ワークに変形または割れが発生することを防止しつつ、ワークに貼りつけられた粘着テープを精度よく剥離できる
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施例1に係る半導体ウエハの構成を示す図である。(a)は半導体ウエハの一部破断斜視図であり、(b)は半導体ウエハの裏面側の斜視図であり、(c)は半導体ウエハの部分縦断面図である。
図2】実施例1に係る保護テープの構成を示す断面図である。
図3】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の正面図である。
図4】実施例1に係る保持テーブルにウエハを載置させた状態を示す縦断面図である。
図5】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の要部の概略構成を示す平面図である。
図6】実施例1に係る剥離部材の構成を示す縦断面図である。(a)は剥離部材の正面図であり、(b)は剥離部材の斜視図である。
図7】各実施例に係る粘着テープ剥離装置の動作を示すフローチャートである。(a)は実施例1に係る粘着テープ剥離装置のフローチャートであり、(b)実施例2に係る粘着テープ剥離装置のフローチャートである。
図8】実施例1に係るステップS1の状態を示す正面図である。
図9】実施例1に係るステップS2を説明する正面図である。
図10】実施例1に係るステップS2を説明する正面図である。
図11】実施例1に係るステップS2を説明する平面図である。
図12】実施例1に係るステップS3を説明する正面図である。
図13】実施例1に係るステップS3を説明する正面図である。
図14】実施例1に係るステップS3を説明する正面図である。
図15】実施例1に係るステップS3を説明する平面図である。
図16】実施例1に係るステップS4を説明する正面図である。
図17】従来例に係るエッジ部材を用いて保護テープを剥離する状態を示す図である。
図18】従来例の問題点を示す平面図である。
図19】実施例2に係る粘着テープ剥離装置の正面図である。
図20】実施例2に係る第2剥離ユニットの構成を示す図である。(a)は第2剥離ユニットの正面図であり、(b)は第2剥離ユニットの斜視図である。
図21】実施例2に係るステップS2を説明する正面図である。
図22】実施例2に係るステップS2を説明する正面図である。
図23】実施例2に係るステップS2を説明する正面図である。
図24】実施例2に係るステップS3を説明する正面図である。
図25】実施例2に係るステップS3を説明する正面図である。
図26】実施例2に係るステップS3を説明する正面図である。
図27】実施例2に係るステップS3を説明する正面図である。
図28】実施例2に係るステップS3を説明する正面図である。
図29】変形例に係る剥離部材を示す左側面図である。
図30】凹部を有しない剥離部材を用いて保護テープを剥離する状態を示す左側面図である。
図31】凹部を有する変形例に係る剥離部材を用いて保護テープを剥離する状態を示す左側面図である。
図32】変形例に係る剥離部材を示す正面図である。
図33】変形例に係る剥離部材を示す図である。(a)は第1の状態となっている剥離部材を示す正面図であり、(b)は第2の状態に切り換えられた剥離部材を示す正面図である。
図34】変形例において、第2の状態に切り換えられた剥離部材を用いて保護テープを剥離する状態を示す正面図である。
図35】変形例において、剥離部材の高さを調整する状態を示す図である。
図36】変形例に係る剥離部材を示す正面図である。(a)は鋭角となっている折り返し角部を先端側に備える剥離部材を示す正面図であり、(b)は先端側に曲面を有する剥離部材を示す正面図である。
図37】変形例において、鋭角となっている折り返し角部を先端側に備える剥離部材を用いて保護テープを剥離する状態を示す正面図である。
図38】実施例および比較例において、剥離方向におけるワークの長さおよび剥離方向における平坦面の長さと、ワークにおける波打ち現象の有無との関係を評価する実験結果を示す表である。
図39】変形例を説明する図である。(a)は初期状態の剥離部材を示す正面図であり、(b)は下向きの平面を切り換えた状態を示す正面図であり、(c)は初期状態の剥離部材を用いて保護テープを剥離する状態を示す正面図であり、(d)は下向きの平面を切り換えた状態の剥離部材を用いて保護テープを剥離する状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0036】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。実施例1に係る粘着テープ剥離装置1では、半導体ウエハW(以下、「ウエハW」とする)の表面に貼りつけられている保護テープPTをウエハWから剥離する。保護テープPTは、回路保護用の粘着テープであり、本実施例における粘着テープに相当する。ウエハWは、本実施例におけるワークに相当する。
【0037】
ウエハWは図1(a)ないし図1(c)に示すように、回路パターンが形成された表面に、回路保護用の保護テープPTが貼り付けられている状態でバックグラインド処理されたものである。ウエハWの裏面は、外周部を径方向に約3mmを残して研削(バックグラインド)されている。すなわち、裏面に扁平凹部Heが形成されるとともに、その外周に沿って環状凸部Kaが残存された形状に加工されたものが使用される。
【0038】
一例として、扁平凹部Heにおいて研削される深さdが数百μm、扁平凹部Heのウエハ厚さJが30μmないし50μmになるよう加工されている。したがって、裏面外周に形成された環状凸部Kaは、ウエハWの剛性を高める環状リブとして機能し、ハンドリングやその他の処理工程におけるウエハWの撓み変形を抑止する。なお、環状凸部Kaの内側角部について、符号Kfを用いて示している。内側角部Kfは、環状凸部Kaと扁平凹部Heとの境界に相当する。
【0039】
本実施例に用いられる保護テープPTは図2に示すように、非粘着性の基材Taと、粘着性を有する粘着材Tbとが積層した長尺状の構造を備えている。
【0040】
基材Taを構成する材料の例として、ポリオレフィン、ポリエチレン、エチレン-ビニル酢酸共重合体、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンメタアクリル酸共重合体、ポリプロピレン、メタアクリル酸テレフタレート、ポリアミドイミド、ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。なお、上述した材料を複数組み合わせたものを基材Taとして用いてもよい。また、基材Taは単層でもよいし、複数の層を積層させた構成でもよい。
【0041】
粘着材Tbは、保護テープPTがウエハWに粘着する状態を保持できる機能を担保できる材料で構成される。粘着材Tbを構成する材料の例として、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。粘着材Tbは単層でもよいし、複数の層を積層させた構成でもよい。
【0042】
<全体構成の説明>
ここで、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1の全体構成について説明する。図3は、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1の基本構成を示す正面図である。なお、以後の説明において、図3などに示されるように粘着シート剥離装置1の長手方向を左右方向(x方向)、これと直交する水平方向(y方向)を前後方向と呼称する。また、鉛直方向をz方向とする。
【0043】
粘着テープ剥離装置1は図3に示すように、保持テーブル3と、テープ供給部5と、剥離機構7と、テープ回収部9とを備えている。
【0044】
保持テーブル3はウエハWを載置保持するものであり、一例として金属製のチャックテーブルである。保持テーブル3は図3に示すように、x方向に沿って水平に配備された左右一対のレール10に沿ってx方向にスライド可能に支持された可動台11に支持されている。可動台11は、パルスモータ12で正逆駆動されるネジ軸13によってネジ送り駆動されるように構成されている。すなわち、保持テーブル3はレール10に沿ってx方向に往復移動可能に構成されている。
【0045】
保持テーブル3は図4および図5に示すように、中央部の上面に円筒状の凹部15が設けられている。平面視における凹部15の径は、ウエハWの扁平凹部Heの径と比べて僅かに小さい程度となるように構成されている。
【0046】
保持テーブル3において凹部15が形成されていない部分、すなわち保持テーブル3の外周部の上面には真空吸着孔17が環状に配置されている。真空吸着孔17は真空装置18と連通接続されている。真空吸着孔17の径は、ウエハWを保持テーブル3に載置させた場合、ウエハWの環状凸部Kaに対向するように調整される。そのため、真空装置18が作動して真空吸引を行うことにより、保持テーブル3は真空吸着孔17を介してウエハWの環状凸部Kaを吸着保持する。すなわち、保持テーブル3はウエハWの全面のうちウエハWの外周部のみを保持するように構成されている。
【0047】
凹部15の底面には、気体供給孔19および小孔20が形成されている。気体供給孔19は、凹部15に気体を供給する気体供給部21と連通接続されている。小孔20は図示しない弁が配設されており、弁を開放することによって、凹部15の内部の空気が適度の抵抗をもって外部へ流出することを許容する。保持テーブル3にウエハWを載置させた状態で気体供給部21が凹部15に気体を供給することにより、ウエハWと保持テーブル3との間に形成された空間Sは、大気圧より少し高い所定の気圧まで加圧される。
【0048】
テープ供給部5は、原反ロールから繰り出された剥離テープTsを剥離機構7へ案内する。剥離テープTsの幅は、図4に示されているように、y方向におけるウエハWの長さR2より短くなるように構成されている。
【0049】
剥離機構7は、昇降ユニット23と、貼付けローラ25と、剥離ユニット27とを備えている。昇降ユニット23は剥離ユニット27を昇降移動させる。貼付けローラ25は図示しない昇降部材によって昇降可能に構成されている。貼付けローラ25は保護テープPTの表面上を転動可能に構成されており、テープ供給部5から繰り出された剥離テープTsを保護テープPTの表面に貼りつける。剥離ユニット27は、保護テープPTに貼りつけられた剥離テープTsを引っ張ることにより、保護テープPTを剥離テープTsと一体にしてウエハWから剥離させる。
【0050】
昇降ユニット23は図3および図5に示すように、縦フレーム28と支持フレーム29とを備えている。縦フレーム28は粘着テープ剥離装置1の基台に立設された前後一対のフレームである。支持フレーム29はy方向に延びるフレームであり、前後一対に立設された縦フレーム28に亘って固定されている。支持フレーム29の構成の例として、アルミ引き抜き材が挙げられる。
【0051】
支持フレーム29の前後中央部位には箱形の基台30が連結されている。基台30には前後一対の縦レール31が配設されている。また基台30には縦レール31を介して昇降台32がスライド昇降可能に支持されている。昇降台32は、モータ33によって連結駆動されるボール軸によって昇降される。剥離ユニット27は昇降台32に装備されており、昇降台32の動作によって昇降移動する。
【0052】
昇降台32は、上下に貫通した中抜き枠状に構成されている。剥離ユニット27は、昇降台32の前後に備えられた側板34の内側下部に接続されている。前後一対の側板34の各々に亘って、y方向に延びる支持フレーム35が固定されている。支持フレーム35の中央には剥離部材37が装着されている。剥離部材37の構成については後述する。
【0053】
剥離ユニット27の側板33には、ガイドローラ39が遊転自在に軸支されている。ガイドローラ39はy方向に延びるローラであり、y方向におけるガイドローラ39の長さは、剥離テープTsの幅よりも長く、かつy方向におけるウエハWの長さR2より短くなるように構成されている。ガイドローラ39は、テープ供給部5から繰り出された剥離テープTsを剥離部材37に案内する。
【0054】
剥離ユニット27の上方には、ガイドローラ40とニップローラ41とテンションローラ42とが配備されている。ガイドローラ40は遊転自在に軸支されている。ガイドローラ40は剥離部材37を経由して巻き取られた剥離テープTsを巻回してテー部回収部9へと案内する。テンションローラ42は、遊転自在に支持アーム43に設けられており、支持アーム43を介して揺動可能に配備されている。テンションローラ42は、巻回案内された剥離テープTsに適度の張力を与える。
【0055】
テープ回収部9は、剥離機構7から送り出された剥離テープTsを巻き取り回収する。
【0056】
粘着テープ剥離装置1は、制御部51を備えている。制御部51は一例として中央演算処理装置(CPU)を備えており、粘着テープ剥離装置1の各部を統括制御する。制御部51は、特にパルスモータ12およびモータ33の回転を統括制御することによって剥離部材37および保持テーブル3の位置を調整するとともに、図示しない昇降部材の動作を制御して貼付けローラ25の位置を調整する。
【0057】
<剥離部材の構成>
ここで、剥離部材37の構成について説明する。図6(a)は剥離部材37の縦断面図であり、図6(b)は剥離部材37の斜視図である。
【0058】
剥離部材37は全体としてy方向に延びる柱状部材であり、平坦面45と、第1折り返し角部47と、第1案内面48と、第2折り返し角部49と、第2案内面50とを備えている。
【0059】
平坦面45は、剥離部材37の下面に設けられておりxy平面に沿って拡がる面である。すなわち、保持テーブル3に載置された状態のウエハWに対して剥離部材37が下降することにより、ウエハWに貼りつけられている保護テープPTの表面に平坦面45が当接する。
【0060】
図4および図6(b)に参照されるように、平坦面45は、x方向の長さD1がx方向におけるウエハWの長さR1の1/10以上であるように構成される。また平坦面45は、y方向の長さD2が、y方向におけるウエハWの長さR2より長くなるように構成されている。当該条件に従って長さD1および長さD2を調整して平坦面45の面積を広くすることにより、保護テープPTを剥離する際にウエハWが振動して波打つ事態を確実に回避できる。実施例1では図38に示すように、x方向におけるウエハWの長さR1を300mmとし、x方向における平坦面45の長さD1を30mmとしている。平坦面45は本発明における振動防止面に相当する。
【0061】
第1折り返し角部47は、平坦面45の先端側に設けられているとともに、第1案内面48の一端側に設けられている。平坦面45が保護テープPTに当接している状態で保護テープPTを上側へ引っ張ることにより、保護テープPTは第1折り返し角部47において折り返されてウエハWから剥離する。
【0062】
正面視における第1折り返し角部47の角度、すなわち平坦面45と第1案内面48とがなす角度は、鈍角となるように構成される。第1折り返し角部47の角度が鈍角となることで、保護テープPTの剥離角度L1は鋭角となる。剥離角度L1は後述するように、ウエハWに貼りつけられている状態の保護テープPTが延びる方向P1と、ウエハWから剥離された保護テープPTが第1案内面48によって案内される方向P2との間の角度に相当する。
【0063】
なお剥離部材37における先端側とは、図3または図6(a)などにおける右側に相当する。言い換えると、剥離部材37の先端側は、図4に示す保護テープPTの剥離終了位置Ceから保護テープPTの剥離開始位置Csへ向かう側を意味する。
【0064】
第1案内面48は、本実施例において剥離部材37の先端側の下面に設けられている。第1案内面48は、第1折り返し角部47によって折り返されてウエハWから剥離された保護テープPTを方向P2へ案内する。
【0065】
第2折り返し角部49は、本実施例において剥離部材37の先端側に設けられている。第2折り返し角部49は、第1案内面48によって案内されている保護テープPTを再び折り返し、剥離部材37の基端側へと案内させる。
【0066】
第2案内面50は、本実施例において剥離部材37の上面に設けられている。第2案内面50は、第2折り返し角部49によって再び折り返された保護テープPTを方向P3へ案内する。実施例1において、方向P3と方向P1とがなす角度L2は鈍角となるように、第1折り返し角部47および第2折り返し角部49の角度が調整される。すなわち、方向P3は図6(b)などに示すように、x方向において左側へ向かう方向となる。正面視における第1折り返し角部47の角度と第2折り返し角部49の角度との和が270°より小さい場合、方向P1と方向P3となす角度L2は鈍角となる。
【0067】
<動作の概要>
ここで、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1の基本動作を説明する。図7(a)は、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1を用いてウエハWから保護テープPTを剥離する一連の工程を説明するフローチャートである。
【0068】
ステップS1(ワークの保持)
保護テープPTをウエハWから剥離する指令が出されると、裏面が研削されており表面に保護テープPTが貼りつけられているウエハWが、図示しない搬送ロボットによって保持テーブル3の上方へ搬送される。搬送ロボットは、一例としてウエハWの環状凸部Kaの表面側(ウエハWの表面外周部)を吸着することによってウエハWを搬送する。
【0069】
搬送ロボットは、保持テーブル3の表面に設けられている真空吸着孔17とウエハWの環状凸部Kaとが対向するように、ウエハWを保持テーブル3に載置させる。ウエハWが保持テーブル3に載置されると、真空装置18が作動して真空吸引を行う。真空吸引によって、保持テーブル3は真空吸着孔17を介してウエハWの環状凸部Kaを吸着保持する。保持テーブル3がウエハWの外周部を吸着保持している状態は、図8に示されている。
【0070】
保持テーブル3がウエハWを吸着保持すると、保持テーブル3の凹部15とウエハWとの間に形成される空間Sに対して、気体供給部21から気体が供給される。気体供給孔19を介して気体が供給されることにより、空間Sは大気圧より少し高い所定の気圧にまで加圧される。空間Sが加圧されることにより、ウエハWが下方へ垂れるように変形することを防止できる。
【0071】
ステップS2(剥離テープの貼付け)
保持テーブル3がウエハWを保持して空間Sが加圧されると、ウエハW上の保護テープPTに剥離テープTsを貼りつける動作を開始する。すなわち図9に示すように、貼付けローラ25が所定の貼付け高さにまで下降する。その後、保持テーブル3がx方向に移動することで保持テーブル3と貼付けローラ25とがx方向へ相対的に移動する。その結果、図10に示すように貼付けローラ25がウエハWの上面に沿って転動移動し、保護テープPTの一端側から他端側に亘って、剥離テープTsを保護テープPTの表面に貼りつけていく。
このとき、ウエハWの表面は空間Sの内圧を受けて扁平レベルより僅かに上方へ膨出変形されており、貼付けローラ25がウエハWの表面側から押圧することでウエハWは扁平レベルに押し戻され、その押圧反力を受けることによって剥離テープTsは確実に保護テープPTの表面に貼りつけられていく。保護テープPTの表面に剥離テープTsが貼りつけられた状態の平面図は、図11に示されている通りである。
【0072】
貼付けローラ25はy方向におけるウエハWの長さR2より幅広となるように構成されている。そのため剥離テープTsを貼りつける際に、貼付けローラ25は確実にウエハWの環状凸部Kaに当接する。すなわち、貼付けローラ25が過剰に下降することを環状凸部Kaが規制するので、ウエハWの扁平凹部Heが扁平レベルより下方に押し込み変形されることを防止できる。
【0073】
なお、ステップS2において小孔20の弁を開放状態にする。すなわち、上方へ僅かに膨出変形されていたウエハWの扁平凹部Heが貼付けローラ25によって扁平状態に押し戻されると空間Sの容積が減少して空間Sの内圧が高まり、小孔20から空間Sの内部の空気が流出する。小孔20から適量の空気流出することにより、空間Sの内圧の上昇が抑制される。従って、空間Sの内圧は所定の気圧に維持される。
【0074】
ステップS3(保護テープの剥離)
保護テープPTの表面に剥離テープTsが貼りつけられると、保護テープPTを剥離する動作が開始される。まず、貼付けローラ25が上昇して図3に示される初期位置へ復帰するとともに、保持テーブル3をx方向に移動させ、剥離ユニット27の位置を保護テープPTの剥離開始位置Csの上方に調整する。そして図12に示すように、剥離ユニット27が下降して剥離部材37の平坦面45が保護テープPTに当接する。
【0075】
平坦面45を保護テープPTの表面に当接させた後、保持テーブル3をx方向において右側へ移動させる。保持テーブル3が移動することにより、図13に示すように、剥離部材37は高さを維持しつつ保持テーブル3に対して相対的に剥離方向Vpへ移動する。剥離方向Vpは保護テープPTが剥離されていく方向であり、剥離開始位置Csから剥離終了位置Ceへ向かう方向である。
【0076】
剥離部材37が相対的に剥離方向Vpへ移動するとともに、テープ回収部9が作動して剥離テープTsを引っ張ることにより、剥離部材37によって剥離テープTs折り返しながら保護テープPTを一体にしてウエハWの表面から剥離させる。剥離テープTsが引っ張られる方向は、図13などにおいて符号Qを用いて示されている。
【0077】
実施例1では剥離部材37が備える第1折り返し角部47と第2折り返し角部49とを用いて、保護テープPTを2回折り返しつつウエハWの表面から剥離させる。すなわち、まずは図13に示すように、平坦面45が保護テープPTの表面に当接している状態で剥離テープTsが符号Qで示す方向へ引っ張られることにより、ウエハWの剥離開始位置Csに貼りつけられている部分の保護テープPT(保護テープPTa)は第1折り返し角部47を支点として上方へ引っ張られる。その結果、保護テープPTaはウエハWの表面から剥離される。
【0078】
保護テープPTをウエハWから剥離するとき、剥離部材37は昇降ユニット23の動作によって、ウエハWを僅かに押圧する。そのため、保護テープPTを剥離するための剥離力が作用することに起因して発生するウエハWの振動は、剥離部材37の平坦面45によって速やかに抑止される。従って、ウエハWが長時間振動することによってウエハWに変形または割れなどが発生することを確実に回避できる。
【0079】
ウエハWから剥離された保護テープPTaは剥離部材37の第1案内面48によって方向P2へ案内される。すなわち、第1折り返し角部47によって1回目の折り返し工程が行われ、保護テープPTaが延びる方向は符号P1で示される右水平方向から符号P2で示される右斜め上方向へと変更される。
【0080】
実施例1では、第1折り返し角部47によって保護テープPTが折り返される角度、すなわち保護テープPTの剥離角度L1は鋭角となっている。すなわち剥離角度L1を小さくすることにより、保護テープPTをウエハWから剥離させる際において保護テープPTに作用する剥離力を小さくできる。従って、保護テープPTをウエハWから剥離させる際に、保護テープPTに対して過剰に大きな剥離力が作用して基材Taまたは粘着材Tbが断裂することを回避できる。
【0081】
ウエハWから剥離された保護テープPTaは、第1案内面48によって第1折り返し角部47から第2折り返し角部49へと案内される。そして図14に示すように、第2折り返し角部49によって保護テープPTaはさらに折り返される。再度折り返された保護テープPTaは、第2案内面50によって方向P3へと案内される。
【0082】
このように第2折り返し角部49によって2回目の折り返し工程が行われ、保護テープPTaが延びる方向は符号P2で示される右斜め上方向から符号P3で示される左斜め上方向へと変更される。すなわち2回の折り返し工程を行うことにより、保護テープPTが延びる方向は平面視で右方向であるP1方向から、平面視で左方向であるP3方向へと速やかに反転する。第2折り返し角部49によって保護テープPTが折り返される角度は符号L3で示されている。
【0083】
第2案内面50によって方向P3へと案内された保護テープPTaは、剥離テープTsによってさらにガイドローラ40を経由して下流へ案内される。その後、保持テーブル3の移動および剥離テープTsの巻き取り動作を続行させ、剥離部材37をウエハWに対して剥離方向Vpへ移動させつつ剥離テープTsを方向Qへ引っ張ることにより、剥離開始位置Cs以外の部分のウエハWに貼りつけられている保護テープPTもウエハWから剥離される。すなわち、保護テープPTは剥離部材37の第1折り返し角部47によって折り返されてウエハWから剥離する。そしてウエハWから剥離された保護テープPTは第1案内面48を経由して第2折り返し角部49によって再度折り返され、第2案内面50に沿って反転方向P3へ搬送される。
【0084】
ステップS4(保護テープの回収)
保護テープPTがウエハWの表面全体から剥離されると、剥離テープTsをさらに巻き取ることによって保護テープPTを回収する。すなわち図16に示すように、ウエハWから剥離された保護テープPTは符号Qで示す方向に巻き取られ、剥離テープTsとともに剥離部材37の下流へと搬送される。そして保護テープPTはガイドローラ40、ニップローラ41、テンションローラ42を経由してテープ回収部9に搬送される。テープ回収部9は、回収用のボビンに剥離テープTsおよび保護テープPTを巻き取ることによって保護テープPTを回収する。
【0085】
ステップS5(ワークの回収)
保護テープPTを回収する動作と同期して、ワークを回収する動作が開始される。すなわち、保持テーブル3は真空装置18の動作を停止させてウエハWの真空吸着を解除する。そして搬送ロボットはウエハWの表面外周部を吸着保持して保持テーブル3から離脱させ、図示しないウエハ回収用のカセットにウエハWを収納させる。
【0086】
以上で実施例1に係る粘着テープ剥離装置1の一巡の動作が完了し、以後、所定枚数に達するまで同じ動作が繰り返される。
【0087】
<実施例1の構成による効果>
上記実施例1に係る粘着テープ剥離装置1によれば、平坦面45を備える剥離部材37を用いて保護テープPTを剥離する。すなわちウエハWの外周部に設けられている環状凸部Kaを保持テーブル3によって保持した後、平坦面45を保護テープPTの表面に当接させる。そして保護テープPTを剥離部材37で折り返しつつ保護テープPTを引っ張ってウエハWから剥離させる。平坦面45を保護テープPTに当接させた状態で保護テープPTを剥離することにより、保持テーブル3がウエハWの外周部のみを保持する構成であってもウエハWに変形または割れが発生することを回避できる。
【0088】
従来の粘着テープ剥離装置では図17に示すように、先鋭なエッジ部を先端部に有するエッジ部材Edを用いて保護テープPTをウエハWから剥離する。すなわち、保護テープPTに剥離テープTsを貼りつけた後、エッジ部材Edのエッジ部を保護テープPTに当接させ、エッジ部において保護テープPTを大きく折り返してウエハWから剥離させる。このような従来の装置では、ウエハWの外周部のみを保持テーブルTLで保持させた状態でウエハWの表面に貼りつけられた保護テープPTを剥離すると、ウエハWに歪みまたは割れなどが発生する頻度が高くなるという問題が新たに判明した。
【0089】
このような従来における剥離装置の問題について検討を重ねた結果、以下のような知見が得られた。すなわち図18に示すように、ウエハWの外周部のみを保持テーブルTLで保持させた状態で、エッジ部材Edを用いて保護テープPTをウエハWから剥離すると、ウエハWのうち保護テープPTが剥離された部分において、剥離テープTsの幅方向に波打ちNwが発生する。すなわち保護テープPTを剥離する剥離力などに起因して、剥離テープTsの幅方向(ここではy方向)においてウエハWが振動していると考えられる。
【0090】
ウエハWの裏面全体を保持テーブルが保持する場合、ウエハWの全面に当接している保持テーブルによって当該ウエハWの振動は速やかに抑止されて減衰する。しかしウエハWの外周部のみを保持テーブルTLが保持する場合、ウエハWの大部分は支持する部材が存在していないので、ウエハWの振動を抑止することが困難である。その結果、持続的にウエハWが振動することでウエハWに変形または割れなどが発生するものと考えられる。
【0091】
しかしながら近年ではウエハWの薄型化が急速に進み、中央部が非常に薄いウエハWを処理する要求が高くなっている。このような中央部が非常に薄いウエハWを取り扱う場合、補強されている外周部のみを保持テーブルで保持する必要がある。また近年では、表面のみならず裏面の中央部にもデバイスを搭載したウエハWが提案されている。このような表裏面にデバイスを有するウエハWを取り扱う場合、デバイスが搭載されている裏面中央部を保持テーブルで保持するとデバイスに不具合が発生するので、保持テーブルでウエハWの裏面外周部のみを保持する必要がある。従って、ウエハWの裏面全体のうち外周部のみを保持テーブルTLで保持させる場合であっても、ウエハWに変形を例とする不具合を発生させることなくウエハWから保護テープPTを剥離できる装置が要求される。
【0092】
そこで、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1では、剥離部材37を用いてウエハWの振動をウエハWの表面側から抑止させる。すなわち剥離部材37に設けられている平坦面45を保護テープPTに当接させた状態で保護テープPTを剥離部材37で折り返してウエハWから剥離させることにより、平坦面45はウエハWの振動を防止させる振動防止面として機能する。
【0093】
すなわちウエハWの表面に貼りつけられている保護テープPTに平坦面45を当接させることにより、保護テープPTを剥離する際に発生するウエハWの振動は、広い平坦面45によって速やかに抑止される。従って、保持テーブル3がウエハWの裏面の大部分を支持していない場合であっても、剥離部材37の平坦面45が保護テープPTを介してウエハWの表面側を支持することによって、ウエハWの振動は速やかに減衰される。よって、ウエハWの裏面全体のうち外周部のみを保持テーブルTLで保持させる場合であっても、ウエハWに変形などを発生させることなくウエハWから保護テープPTを剥離できる。
【0094】
平坦面45は、保護テープPTの剥離方向Vp(x方向)における長さD1が、x方向におけるウエハWの長さR1の1/10以上の長さであり、かつ、剥離方向Vpに直交する方向(y方向)における長さD2が、y方向におけるウエハWの長さR2より長くなるように構成されている。このように十分な広さを有する平坦面45を保護テープPTに当接させた状態で保護テープPTを剥離することにより、ウエハWの振動は平坦面45によって確実かつ速やかに減衰される。よって、より薄型化したウエハWまたは表面および裏面の両方にデバイスが搭載されたウエハWを使用する場合であっても、ウエハWに変形などの不具合を発生させることなく、ウエハWの表面から保護テープPTを精度よく剥離することができる。
【0095】
図38は、剥離方向Vp(x方向)におけるウエハWの長さR1の値および剥離方向Vp(x方向)における平坦面45の長さD1の値と、ウエハWにおける波打ちの有無との関係を評価した実験結果を示している。実施例1ではx方向におけるウエハWの長さR1が300mmであり、x方向における平坦面45の長さD1が30mmである。すなわち実施例1では、剥離方向Vpにおける平坦面45の長さD1は剥離方向VpにおけるウエハWの長さR1の1/10以上となっている。この場合、保護テープPTをウエハWから剥離するステップS3において、ウエハWに波打ち現象は発生しない。よって実施例1では保護テープPTをウエハWから剥離する際に、ウエハWの変形または割れが発生することを回避できる。
【0096】
また後述する実施例2では図38に示すように、x方向におけるウエハWの長さR1が200mmであり、x方向における平坦面45の長さD1が20mmである。なお、実施例3ではx方向におけるウエハWの長さR1が200mmであり、x方向における平坦面45の長さD1を30mmである。これら実施例2および実施例3では実施例1と同様に、平坦面45の長さD1はウエハWの長さR1の1/10以上となっている。このような実施例2および実施例3の条件で保護テープPTをウエハWから剥離した場合、ステップS3においてウエハWに波打ち現象は発生しないという結果が得られた。
【0097】
一方、比較例1ではx方向におけるウエハWの長さR1が300mmであり、x方向における平坦面45の長さD1が15mmである。すなわち比較例1では平坦面45の長さD1はウエハWの長さR1の1/10より小さい。このような比較例1において保護テープPTをウエハWから剥離すると、ステップS3においてウエハWに波打ち現象が発生する。その結果、波打ち現象に起因してウエハWに変形または割れなどの不具合が発生する。
【0098】
同様に、平坦面45の長さD1がウエハWの長さR1の1/10より小さい条件として比較例2および比較例3を示している。比較例2ではx方向におけるウエハWの長さR1を300mmであり、x方向における平坦面45の長さD1を20mmである。比較例3ではx方向におけるウエハWの長さR1を200mmであり、x方向における平坦面45の長さD1を15mmとしている。比較例2および比較例3の各々において保護テープPTをウエハWから剥離すると、ステップS3においてウエハWに波打ち現象が発生する。このように、x方向における平坦面45の長さD1がx方向におけるウエハWの長さR1の1/10以上である場合はステップS3においてウエハWに波打ち現象が発生することを防止できる。すなわち剥離方向Vpにおける平坦面45の長さD1を剥離方向VpにおけるウエハWの長さR1の1/10以上とすることにより、保護テープPTを剥離する際にウエハWに割れなどの不具合が発生することを回避できる。
【0099】
また、実施例1に係る剥離部材37は第1折り返し角部47および第2折り返し角部49を用いて、保護テープPTを複数回折り返して保護テープPTをウエハWから剥離させる。この場合、保護テープPTをウエハWから剥離させる際に保護テープPTが折り返される角度、すなわち保護テープPTの剥離角度L1を小さく抑えつつ、剥離部材37によって保護テープPTを反転させることができる。剥離角度L1を小さくすることにより、保護テープPTの剛性が高い場合であっても、保護テープPTに損傷が発生することを防止できる。
【0100】
また、より精度良く保護テープPTを剥離部材37の面に沿って折り返すことができる。そして保護テープPTを複数回折り返すことにより、各々の折り返し角度を小さく抑えつつ、保護テープPTを反転させてテープ回収部9へと搬送できる。すなわち、各々の折り返し工程における保護テープPTへのストレスを抑えつつ、保護テープPTを速やかに反転できる。従って、保護テープPTを反転させることによって保護テープPTの粘着材TbはウエハWから速やかに離れていくので、保護テープPTの粘着材Tb破片などによってウエハWの表面が汚染される事態を回避できる。
【実施例0101】
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1と実施例2において共通する構成については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。実施例1に係る粘着テープ剥離装置1は、剥離テープTsを用いて保護テープPTをウエハWから剥離する構成を有している。一方、実施例2に係る粘着テープ剥離装置1Aは、剥離テープTsを用いることなく保護テープPTをウエハWの表面から剥離する。すなわち、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1が備える構成のうち、テープ供給部5、テープ回収部9、貼付けローラ25、ガイドローラ39、ガイドローラ40など、剥離テープTsの操作に用いられる構成を実施例2では省略できる。なお実施例2では図38に示すように、x方向(剥離方向Vp)におけるウエハWの長さR1が200mmであり、x方向における平坦面45の長さD1が20mmである。
【0102】
実施例2に係る粘着テープ剥離装置1Aは図19に示すように、テープ供給部5およびテープ回収部9などが省略される一方、剥離機構7は第2剥離ユニット53を新たに備えている。
【0103】
第2剥離ユニット53は、保護テープPTのうち、ウエハWの剥離開始位置Csに貼りつけられている部分の保護テープPTを剥離させるものである。言い換えると、第2剥離ユニット53は、剥離開始位置Cs側における保護テープPTの端部を剥離させるものである。
【0104】
図20(a)は第2剥離ユニット53の正面図であり、図20(b)は第2剥離ユニット53の斜視図である。第2剥離ユニット53は、第1昇降軸55、モータ56、縦壁57、第1把持部材58、第2把持部材59、第2昇降軸60、およびモータ61などを備えている。
【0105】
第1昇降軸55は、図示しない左右可動台から下向きに延出されており、モータ56の正逆転駆動によって第2剥離ユニット53の全体を昇降させるよう構成されている。左右可動台はレールなどに沿ってx方向へ往復移動可能に構成されている。すなわち左右可動台の水平移動によって、第2剥離ユニット53はx方向へ往復移動可能となっている。
【0106】
縦壁57は第1昇降軸55の下端に接続されており、縦向きに配置されたレール63を備えている。第1把持部材58は縦壁57の下端に接続されており、剥離方向Vpへ水平に延びる先細り板状のエッジ部材である。すなわち第1把持部材58は、先鋭なエッジ状となっている先端部65を備えている。第1把持部材58は、フッ素加工などによる非粘着処理が施されている。
【0107】
第2把持部材59はレール63を介して縦壁57と接続されており、レール63に沿って昇降移動可能に構成される。第2把持部材59は第1把持部材58と同様に、剥離方向Vpへ延びる板状の部材である。第1把持部材58および第2把持部材59は、それぞれx方向における略同じ位置まで延びている。第2把持部材59は、第2昇降軸60に支持されている。第2昇降軸60は、モータ61の正逆転駆動によって第2把持部材59を昇降させるよう構成されている。
【0108】
第2把持部材59はレール63に沿って昇降することにより、第1把持部材58と協働してはみ出し部PSを把持できる。第1把持部材58および第2把持部材59の各々は、金属や樹脂を例とする、堅さを有する材料で構成される。
【0109】
第1把持部材58は後述するように、ウエハWと保護テープPTとの接着界面Kに先端部65を突き刺して進入させることにより、保護テープPTの周縁部分の一部をウエハWから剥離させ、第2剥離ユニット53によって把持される部分となる剥離部位Paを形成させる。そして第2把持部材59はレール63に沿って昇降することにより、第1把持部材58と協働して剥離部位Paを把持する。すなわち第1把持部材58および第2把持部材59は、剥離部位Paを把持する一対の把持部材として機能する。なお、先端部65はy方向に延びる幅広の板状となっているが、剥離方向Vpに向かって先細りとなっているニードル状であってもよい。
【0110】
図20(a)に示すように、第2剥離ユニット53において、第2把持部材59の下面59Aの形状は、先端部65を含む第1把持部材58の上面58Aの形状と嵌合するように構成されていることが好ましい。第1把持部材58の上面58Aと第2把持部材59の下面59Aとが嵌合する形状とすることにより、第1把持部材58と第2把持部材59とによって、より安定な状態で保護テープPTが把持される。
【0111】
次に、実施例2に係る粘着テープ剥離装置1Aを用いて、保護テープPTをウエハWから剥離するための一連の動作を説明する。図7(b)は、実施例2に係る粘着テープ剥離装置1Aを用いてウエハWから保護テープPTを剥離する一連の工程を説明するフローチャートである。
【0112】
ステップS1(ワークの保持)
実施例2に係るステップS1の工程は、実施例1と共通する。すなわちウエハWが、図示しない搬送ロボットによって保持テーブル3に載置される。ウエハWが保持テーブル3に載置されると、真空装置18の真空吸引によって、保持テーブル3は真空吸着孔17を介してウエハWの環状凸部Kaを吸着保持する。保持テーブル3がウエハWを吸着保持すると、気体供給部21は空間Sへ気体を供給して空間Sを加圧する。
【0113】
ステップS2(保護テープ端部の剥離)
実施例2では、保持テーブル3がウエハWの裏面外周部を保持すると、第2剥離ユニット53を用いて保護テープPTの端部をウエハWから剥離させる工程を開始する。すなわち、制御部51は左右可動台およびモータ56を制御して、第2剥離ユニット53を水平方向および上下方向に適宜移動させる。
【0114】
制御部51による制御の結果、第2剥離ユニット53は図21に示すように、点線で示す待機位置から実線で示す稼働位置に移動する。第2剥離ユニット53の稼働位置は、第1把持部材58の先端部65の高さが、ウエハWと保護テープPTとの接着界面Kと同じ高さであり、かつ先端部65が剥離開始位置Csにおける環状凸部Kaの外側近傍となるような位置として定められる。なお、保持テーブル3の保持面の高さ、ウエハWおよび保護テープPTの厚みに係る情報が制御部51に入力されている。そのため、制御部51は接着界面Kの正確な高さを予め算出できる。
【0115】
稼働位置に第2剥離ユニット53が移動すると、図22に示すように、制御部51は左右可動台を制御することにより、第2剥離ユニット53を剥離方向Vpへ水平移動させる。当該制御によって、先鋭なエッジ状となっている先端部65は、ウエハWと保護テープPTとの接着界面Kに突き刺される。
【0116】
先端部65が接着界面Kに突き刺された後、制御部51はさらに第2剥離ユニット53を剥離方向Vpへ水平移動させる。当該水平移動に伴い、先鋭な先端部65が接着界面Kに沿って剥離方向Vpへ進入していき、保護テープPTの周縁部分の一部が先端部65によってウエハWから剥離されていく。その結果、ウエハWから剥離された保護テープPTの周縁部分によって、剥離部位Paが形成される。このとき、ウエハWから剥離された剥離部位Paの下面(粘着面)は、第1把持部材58の上面58Aによって支持されている。
【0117】
剥離部位Paが形成されると、第1把持部材58が剥離部位Paの下面を支持している状態で、当該剥離部位Paの把持を行う。すなわち図23に示すように、制御部51はモータ61を制御することにより、第1把持部材58が接着界面Kに進入している状態を維持しつつ、第2把持部材59を下降させる。当該制御によって、第2把持部材59は図22になどに示される初期位置から、図23に示される把持位置へと下降する。
【0118】
第2把持部材59は把持位置へと下降することによって、剥離部位Paの表面(非粘着面)に当接するとともに、剥離部位Paを下方へ押圧する。当該押圧に伴って、剥離部位Paは第1把持部材58および第2把持部材59によって安定に把持される。このように、剥離開始位置Cs側における保護テープPTの端部が第2剥離ユニット53によってウエハWから剥離され、剥離部位Paが形成される。
【0119】
ステップS3(保護テープ全体の剥離)
剥離部位Paが形成されると、剥離ユニット27と第2剥離ユニット53とを用いて保護テープPTの全体をウエハWから剥離させる工程が開始される。まず、保持テーブル3をx方向に移動させ、剥離部材37が平面視で第2剥離ユニット53と近接対向するように剥離ユニット27の位置を調整する。そして図24に示すように剥離ユニット27を下降させ、剥離部材37の平坦面45を保護テープPTに当接させる。このとき剥離部材37は、剥離部位Paを把持している第1把持部材58および第2把持部材59と近接対向する。
【0120】
平坦面45を保護テープPTの表面に当接させた後、図25に示すように、剥離部位Paの保護テープPTを把持させつつ第2剥離ユニット53を上昇させる。保護テープPTを把持した状態で第2剥離ユニット53が上昇することにより、保護テープPTはウエハWから離反する方向Sへ引っ張られる。
【0121】
このとき、剥離部材37の平坦面45が保護テープPTに当接している。そのため、平坦面45の先端側に配置されている第1折り返し角部47を支点として、剥離部位Paの内側における保護テープPTがウエハWから離反する方向Sへ引っ張られてウエハWの表面から剥離される。ウエハWから剥離された保護テープPTは剥離部材37の第1案内面48に当接し、第1案内面48によって方向P2へ案内される。すなわち、第1折り返し角部47によって1回目の折り返し工程が行われ、保護テープPTが延びる方向は符号P1で示される右水平方向から符号P2で示される右斜め上方向へと変更される。
【0122】
保護テープPTをウエハWから剥離するとき、剥離部材37は昇降ユニット23の動作によって、ウエハWを僅かに押圧する。そのため、保護テープPTを剥離するための剥離力が作用すること起因して発生するウエハWの振動は、剥離部材37の平坦面45によって速やかに抑止される。従って、ウエハWが長時間振動することによってウエハWに変形または割れなどが発生することを確実に回避できる。
【0123】
実施例2では実施例1と同様、第1折り返し角部47によって保護テープPTが折り返される角度、すなわち保護テープPTの剥離角度L1は鋭角となっている。すなわち剥離角度L1を小さくすることにより、保護テープPTをウエハWから剥離させる際において保護テープPTに作用する剥離力を小さくできる。従って、保護テープPTをウエハWから剥離させる際に、保護テープPTに対して過剰に大きな剥離力が作用して基材Taまたは粘着材Tbが断裂することを回避できる。
【0124】
第2剥離ユニット53を上昇させて保護テープPTを第1案内面48に当接させた後、図26に示すように第2剥離ユニット53を左上方向へ移動させ、剥離部材37の上方へ回り込ませる。第2剥離ユニット53を剥離部材37の上方へ移動させることにより、第1案内面48によって方向P2へ案内されていた保護テープPTは第2折り返し角部49によって再び折り返され、第2案内面50に当接して方向P3へと案内される。2回の折り返し工程を行うことにより、保護テープPTが延びる方向は平面視で右方向であるP1方向から、平面視で左方向であるP3方向へと反転する。
【0125】
保護テープPTを第2案内面50に当接させた後、図27に示すように、第2剥離ユニット53をさらに左上方向へ移動させつつ、保持テーブル3を右方向に移動させる。すなわち、ウエハWに対する剥離ユニット27の相対的位置を剥離方向Vpへ変位させる。このとき、第2剥離ユニット53が把持している保護テープPTが弛まないように、剥離ユニット27を剥離方向Vpへ変位させる速度と、第2剥離ユニット53を移動させる速度とを調整させる。剥離ユニット27の変位と第2剥離ユニット53の移動とにより、保護テープPTは徐々にウエハWから剥離されていき、図28に示すように保護テープPTの全体がウエハWから剥離される。
【0126】
ステップS4(保護テープの回収)
保護テープPTがウエハWの表面全体から剥離されると、保護テープPTを回収する。一例として、図示しないテープ回収ボックスの上方へと第2剥離ユニット53を移動させた後、第2把持部材59を把持位置から初期位置へと上昇させる。第2把持部材59が上昇することによって、第1把持部材58と第2把持部材59とによる保護テープPTの把持が解除される。その結果、保護テープPTは第2剥離ユニット53から離れてテープ回収ボックスへと落下して回収される。
【0127】
ステップS5(ワークの回収)
保護テープPTを回収する動作と同期して、ワークを回収する動作が開始される。すなわち、保持テーブル3は真空装置18の動作を停止させてウエハWの真空吸着を解除する。そして搬送ロボットはウエハWの表面外周部を吸着保持して保持テーブル3から離脱させ、図示しないウエハ回収用のカセットにウエハWを収納させる。
【0128】
実施例2では第2剥離ユニット53を備えることにより、剥離テープTsを用いることなく保護テープPTをウエハWから剥離する。すなわち剥離部材37の平坦面45を保護テープPTに当接させた状態で、第2剥離ユニット53で保護テープPTを把持して引っ張ることにより、保護テープPTをウエハWから剥離する。広い平坦面45が保護テープPTに当接して上方からウエハWの振動を抑止するので、保持テーブル3がウエハWの裏面外周部のみを保持する場合であっても、保護テープPTをウエハWから剥離する際に発生するウエハWの振動は平坦面45によって速やかに減衰する。よって、ウエハWの振動に起因してウエハWに変形または割れなどの不具合が生じることを回避できる。
【0129】
また実施例2では剥離テープTsが不要であるので、テープ供給部5およびテープ回収部9などの機構を省略できる。そのため、粘着テープ剥離装置1Aをより単純化できる。
【0130】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0131】
(1)各実施例において、図29に示すように剥離部材37の平坦面45には凹部67が形成されていてもよい。図29は、剥離部材37の左側面図である。凹部67は、剥離テープTsが保護テープPTに貼りつけられている方向(各実施例ではx方向)に延びている。凹部67の深さRsおよび幅Gsは、剥離テープTsの厚みおよび幅に応じて設定される。すなわち凹部67は剥離テープTsを嵌合可能に構成されている。凹部67の深さRsおよび幅Gsは、剥離テープTsの厚みおよび幅より僅かに大きいことが好ましい。
【0132】
剥離テープTsが厚く剛性が高い場合、剥離テープTsが貼りつけられている保護テープPTに対して、凹部67を有しない剥離部材37を載置させると、図30に示すように、平坦面45が剥離テープTsに当接する一方で保護テープPTの全面に平坦面45が精度よく当接しない問題が懸念される。
【0133】
そこで剥離テープTsの厚みに応じたサイズの凹部67を剥離部材37の平坦面45に形成されることにより、剥離部材37の平坦面を精度良く保護テープPTに当接させることができる。すなわち図31に示すように、剥離テープTsが貼りつけられている保護テープPTに対して、凹部67を備える剥離部材37を載置させると、凹部67に剥離テープTsが嵌合する。そのため、凹部67が形成されていない部分の平坦面45は全面にわたって保護テープPTと精度よく当接する。そのため、剥離テープTsが厚く剛性が高い場合であっても、平坦面45によってウエハWの振動をより精度よく減衰させることができる。
【0134】
(2)上記各実施例および各変形例において、図32に示すように剥離部材37はヒータ69を内蔵してもよい。平坦面45が保護テープPTに当接している状態でヒータ69が作動することにより、保護テープPTがヒータ69によって加熱されて軟化する。そのため、保護テープPTの剛性が高い場合であってもヒータ69によって保護テープPTを軟化できるので、保護テープPTを精度良く折り返してウエハWから剥離することができる。
【0135】
(3)上記各実施例および各変形例において、剥離部材37は平坦面45を保護テープPTに当接可能な第1の状態と、先鋭なエッジ部を保護テープPTに当接可能な第2の状態とを切り換える構成としてもよい。複数の姿勢を切り換える構成の一例として、図33(a)に示すように剥離部材37はエッジ部70と、y方向に延びる回転軸71とをさらに備えている。エッジ部70は先鋭な角部であり、正面視で鋭角になるように構成されている。回転軸71は剥離部材37に埋設されており、y方向の軸周りに回転可能となるように構成されている。すなわち回転軸71の回転に応じて、剥離部材37はy方向の軸周りに回転する。そして回転軸71が回転することにより、剥離部材37は図33(a)に示される第1の状態と図33(b)に示される第2の状態とを切り換えることができる。
【0136】
図33(a)に示される第1の状態において、剥離部材37は平坦面45が下向きとなる姿勢(第1の姿勢)をとっている。剥離部材37が第1の姿勢をとる場合、ステップS3において剥離部材37を保護テープPTに載置させることによって、図12ないし図14などで示されたように、平坦面45が保護テープPTに当接してウエハWの振動を抑止する。
【0137】
一方、図33(b)に示される第2の状態において、剥離部材37はエッジ部70が下向きとなる姿勢(第2の姿勢)をとっている。剥離部材37が第2の姿勢をとる場合、ステップS3において剥離部材37を保護テープPTに載置させることによって、図34で示されるようにエッジ部70が保護テープPTに当接する。エッジ部70を保護テープPTに当接させた状態で剥離テープTsを引っ張ることにより、保護テープPTはエッジ部70によって折り返されてウエハWから剥離する。
【0138】
剥離された保護テープPTは、エッジ部70の角度に応じて方向P4へ反転案内される。すなわち保護テープPTが延びる方向は方向P1から方向P4へと反転される。エッジ部70は従来のエッジ部材と同様に先鋭な構造であるので、方向P1と方向P4とのなす角度である剥離角度L4は大きくなる。また、先鋭なエッジ部70は保護テープPTの狭い範囲に対して剥離力を作用させる。従って、先鋭なエッジ部70を用いることによって保護テープPTに強い剥離力を作用できるので、保護テープPTの粘着材Tbとして粘着力が大きい材料を用いる場合であっても、確実に保護テープPTをウエハWから剥離できる。
【0139】
このようにウエハWの裏面全体を保持する保持テーブルHTを用いる場合、または保護テープPTの粘着力が高い場合、剥離部材37を第2の姿勢に切り換えて保護テープPTを剥離する。すなわち、先鋭なエッジ部70を保護テープPTの狭い範囲に当接させて比較的強い剥離力を保護テープPTに作用させる。
【0140】
一方でウエハWの裏面外周部のみを保持する保持テーブル3を用いる場合、または保護テープPTの剛性が高い場合、剥離部材37を第1の姿勢に切り換えて保護テープPTを剥離する。すなわち、平坦面45を保護テープPTの広い範囲に当接させ、ウエハWの振動を抑止させながら保護テープPTをウエハWから剥離させる。従って、ウエハWを保持する構造または保護テープPTの条件に応じて剥離部材37の姿勢を切り換えることにより、汎用性が高い粘着テープ剥離装置1を実現できる。
【0141】
(4)上記各実施例および各変形例において、ステップS3において保護テープPTを剥離する際に、剥離部材37の高さを一定にして剥離方向Vpへ移動させる構成を例示しているがこれに限られない。すなわちステップS3において、保護テープPTが剥離されるウエハWの部位に応じて剥離部材37の高さを変更しつつ剥離方向Vpへ移動させてもよい。
【0142】
具体的には、ウエハWの外周部に貼りつけられている保護テープPTを剥離する場合、図35に示すように剥離部材37を符号H1で示される比較的低い位置に調整した状態で剥離部材37を剥離方向Vpへ移動させ、保護テープPTを折り返して剥離させる。一方、ウエハWの外周部以外の部分に貼りつけられている保護テープPTを剥離する場合、剥離部材37を符号H2で示される比較的高い位置に調整した状態で剥離部材37を剥離方向Vpへ移動させ、保護テープPTを折り返して剥離させる。
【0143】
一例として、剥離部材37の高さがH1である場合、剥離部材37の平坦面45は保護テープPTに当接している。一方、剥離部材37の高さがH2である場合、平坦面45は保護テープPTに近接している状態であり平坦面45と保護テープPTとの間には隙間73が形成されている。なお説明の便宜上、図35では隙間73を広く表示している。z方向における隙間73の高さは、ウエハWの振動を平坦面45で速やかに抑止できる程度に小さい距離に調整される。
【0144】
ウエハWの外周部に貼りつけられている保護テープPTを剥離する場合、剥離部材37はウエハWの環状凸部Kaの上方に位置している。環状凸部Kaは厚みがあり剛性が高い部分であるので、剥離部材37を比較的低い位置へ下降させてウエハWの環状凸部Kaに当接させる場合、または剥離部材37が環状凸部Kaに対して押圧力を作用させる場合であっても、ウエハWが剥離部材37の下降によって受ける影響は小さい。そのため、剥離部材37の高さを比較的低くすることによって、より確実にウエハWの振動を抑止しつつ保護テープPTを剥離できる。
【0145】
ウエハWの外周部以外すなわちウエハWの中央部に貼りつけられている保護テープPTを剥離する場合、剥離部材37はウエハWの扁平凹部Heの上方に位置している。扁平凹部Heは薄く剛性が低い部分であるので、平坦面45が扁平凹部Heに当接すると扁平凹部Heに押圧力が作用してウエハWに変形などの不具合が発生する場合がある。そのため、剥離部材37の高さを比較的高くして僅かな隙間73を形成させることによって、ウエハWに不具合が発生する事態をより確実に回避しつつ、保護テープPTを剥離する際にウエハWの振動を抑止できる。
【0146】
(5)上記各実施例および各変形例において、平坦面45を備える剥離部材37の形状は、第1折り返し角部47および第2折り返し角部49を備える構成に限られない。剥離部材37の形状の一例として、図36(a)に示すように、平坦面45と、鋭角に構成される折り返し角部75とを備える構成が挙げられる。また他の一例として図36(b)に示すように、先端部に曲面77が形成されており、下面に平坦面45を備える構成が挙げられる。
【0147】
図36(a)に示される剥離部材37を用いる場合、図37に示すように、ステップS3において平坦面45によってウエハWの振動を抑止しつつ、折り返し角部75によって保護テープPTを1回折り返してウエハWから剥離させる。折り返し角部75は鋭角であるので、保護テープPTの剥離角度L5は鈍角となる。すなわち鋭角である折り返し角部75を備えることによって保護テープPTの剥離角度L5を大きくできるので、保護テープPTの粘着力が高い場合であっても確実に保護テープPTをウエハWから剥離できる。
【0148】
図36(b)に示される剥離部材37を用いる場合、ステップS3において平坦面45によってウエハWの振動を抑止しつつ、曲面77によって保護テープPTを折り返してウエハWから剥離させる。保護テープPTは曲面77の形状に沿って徐々に折り返されるので、保護テープPTの剛性が高い場合であっても、保護テープPTを折り返す際において保護テープPTに断裂などの不具合が発生することを回避できる。
【0149】
(6)上記各実施例および各変形例において、剥離対象となる粘着テープの一例として回路保護用の保護テープPTを例にとって説明したが、剥離対象となる粘着テープは保護テープに限ることはなく、ダイシングテープなど他の用途に用いる粘着テープをも剥離対象とすることができる。
【0150】
(7)各実施例において、ステップS3において剥離部材37を保護テープPTの表面に載置させる際に、平坦面45が保護テープPTの表面に当接する構成を例にとって説明したが、平坦面45が保護テープPTの表面に近接する構成であってもよい。すなわち剥離部材37を下降させて保護テープPTの表面に載置させる際に、平坦面45と保護テープPTとの間に微小な隙間が形成されるように剥離部材37の高さを調整する。そして平坦面45が保護テープPTの表面に近接している状態を維持しつつ、保護テープPTを第1折り返し角部47で折り返してウエハWから剥離させる。
【0151】
このように平坦面45を近接させた状態で保護テープPTを折り返して剥離する変形例では、剥離部材37の高さを比較的高くして僅かな隙間を形成させることによって、平坦面45が過度な押圧力をウエハWに作用させることに起因してウエハWに割れなどの不具合が発生する事態を確実に回避できる。一方、平坦面45と保護テープPTとの間に形成されている隙間は非常に微小な距離であるので、ウエハWが変位する場合であっても当該変位は近接している平坦面45によって速やかに抑止される。よって、ウエハWの変形または割れの発生を回避しつつ、保護テープPTを剥離する際にウエハWが変位することを抑止できる。
【0152】
(8)各実施例において、ワークは半導体ウエハに限ることはなく、基板、パネルなど各種半導体用部材をワークとして適用することができる。さらにワークの形状としては円形状の他、矩形状、多角形状、略円形状などであってもよい。一例として矩形状の基板をワークとして用いる場合、剥離方向Vpにおける平坦面45の長さD1が、剥離方向Vpにおける基板の長さの1/10以上となるように装置の構成および基板の配置などを調整することで、保護テープPTを剥離する際にワークが振動して波打ちが発生することができる。
【0153】
(9)上記各実施例および各変形例において、剥離部材37は複数の平面および角部を備え、回動することによって保護テープPTに当接する平面および角部を切り換える構成であってもよい。回動することによって保護テープPTに当接する平面および角部を切り換える構成の一例として、図39(a)に示すように、剥離部材37はy方向に延びる4つの平面79、80、81、および82と、4つの角部83、84、85、および86とを備えている。すなわち(7)に係る変形例において、剥離部材37はy方向に延びる四角柱状の部材である。
【0154】
また剥離部材37はy方向に延びる回転軸87を備えており、y方向の軸周りに回動可能に構成される。剥離部材37がy方向の軸周りに回動することにより、剥離部材37において下向きとなる平面を切り換えることができる。図39(a)は、平面79が下向きになっている状態を示している。この状態で剥離部材37が保護テープPTに載置されることにより、平面79~82のうち平面79が保護テープPTに当接する。図39(b)は、平面81が下向きになっている状態を示している。この状態で剥離部材37が保護テープPTに載置されることにより、平面79~82のうち平面81が保護テープPTに当接する。
【0155】
角部83は平面79の一端側に備えており、平面79が保護テープPTに当接する場合は角部83がステップS3において保護テープPTを折り返す角部として機能する。角部84は平面80の一端側に備えており、平面80が保護テープPTに当接する場合は角部84がステップS3において保護テープPTを折り返す角部として機能する。角部85は平面81の一端側に備えており、平面81が保護テープPTに当接する場合は角部85がステップS3において保護テープPTを折り返す角部として機能する。角部86は平面82の一端側に備えており、平面82が保護テープPTに当接する場合は角部83がステップS3において保護テープPTを折り返す角部として機能する。
【0156】
角部83~86の各々の角度はそれぞれ異なるように構成されている。本変形例において、角部83は鈍角であり、角部84および85は鋭角であり、角部86は直角であるように構成されている。また角部84の正面視における角度は角部85の正面視における角度より小さくなるように構成されている。
【0157】
ステップS3において、図39(a)に示すように平面79が下向きになっている状態で剥離部材37を下降させて保護テープPTに載置させることにより、平面79~82のうち平面79が保護テープPTに当接する。そして角部83~86のうち角部83が保護テープPTを折り返す折り返し角部として機能する。すなわち図39(c)に示すように、剥離テープTsを引っ張ることにより保護テープPTは角部83において折り返されてウエハWから剥離される。角部83の角度は鈍角であるので、角部83が折り返し角部として機能する場合において、保護テープPTが剥離する際に折り返される角度すなわち剥離角度L6は鈍角となる。
【0158】
一方、ステップS3において、図39(b)に示すように平面81が下向きになっている状態で剥離部材37を下降させて保護テープPTに載置させることにより、平面79~82のうち平面81が保護テープPTに当接する。そして角部83~86のうち角部85が保護テープPTを折り返す折り返し角部として機能する。すなわち図39(d)に示すように、剥離テープTsを引っ張ることにより保護テープPTは角部85において折り返されてウエハWから剥離される。角部85の角度は鋭角であるので、角部85が折り返し角部として機能する場合において、保護テープPTの剥離角度L7は鋭角となる。
【0159】
このように、剥離部材37を回転させて保護テープPTに当接する平面および角部を切り換えることにより、ステップS3において保護テープPTを折り返して剥離する角度を適宜変更することができる。言い換えると、保護テープPTに当接する角部を切り換えることにより、ステップS3における保護テープPTの剥離角度を変更できる。
【0160】
なお剥離部材37は4つの平面および角部を備える四角柱状の部材に限ることはなく、六角柱状などを例とする多角柱状の部材であってもよい。一例として剥離部材37が六角柱状である場合、正面視においてそれぞれ異なる角度を有する6つの角部のうち保護テープPTを折り返す折り返し角部として機能する角部を切り換えることにより、ステップS3における保護テープPTの剥離角度を6段階に変更できる。すなわち剥離部材37を回動可能な多角柱状とすることにより、剥離部材37を複数準備することなく保護テープPTの剥離角度を複数の段階に変更できる。
【符号の説明】
【0161】
1 … 粘着テープ剥離装置
3 … 保持テーブル
5 … テープ供給部
7 … 剥離機構
9 … テープ回収部
10 … レール
11 … 可動台
12 … パルスモータ
13 … ネジ軸
15 … 凹部
17 … 真空吸着孔
18 … 真空装置
19 … 気体供給孔
20 … 小孔
21 … 気体供給部
23 … 昇降ユニット
25 … 貼付けローラ
27 … 剥離ユニット
28 … 縦フレーム
29 … 支持フレーム
30 … 基台
31 … 縦レール
32 … 昇降台
33 … モータ
34 … 側板
35 … 支持フレーム
37 … 剥離部材
39 … ガイドローラ
40 … ガイドローラ
41 … ニップローラ
42 … テンションローラ
43 … 支持アーム
45 … 平坦面
47 … 第1折り返し角部
48 … 第1案内面
49 … 第2折り返し角部
50 … 第2案内面
51 … 制御部
53 … 第2剥離ユニット
55 … 第1昇降軸
56 … モータ
57 … 縦壁
58 … 第1把持部材
59 … 第2把持部材
60 … 第2昇降軸
61 … モータ
63 … レール
65 … 先端部
W … ウエハ(ワーク)
Ka … 環状凸部
He … 扁平凹部
PT … 保護テープ
Ts … 剥離テープ
Cs … 剥離開始位置
Ce … 剥離終了位置
Vp … 剥離方向


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図20
図21
図22
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図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
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図39