(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112866
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】炉内圧力制御システム、燃焼炉、および、炉内圧力制御方法
(51)【国際特許分類】
F23N 5/24 20060101AFI20230807BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F23N5/24 104
F23N5/00 K
F23N5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014855
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591196429
【氏名又は名称】タカミツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 徹
(72)【発明者】
【氏名】矢川 憲利
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】色摩 竜信
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直之
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003EA08
3K003FA01
3K003FA09
3K003FB04
3K003GA03
3K003GA04
3K003RA05
(57)【要約】
【課題】炉圧を正圧に維持すると共に、高温によるダンパの破損を抑制すること。
【解決手段】燃焼炉100の炉本体1の内部の圧力を制御するための炉内圧力制御システム3は、炉本体1に設けられ、炉本体1の内部の圧力を検出する圧力センサ31と、炉本体1に接続される排気筒2に設けられ、排気筒2の内部の排気ガスの温度を検出する温度センサ32と、排気筒2においてダンパ21よりも上流に設けられ、排気筒2の内部に空気を供給する空気供給手段33と、空気供給手段33の動作を制御する制御装置34と、を備える。制御装置34は、圧力センサ31によって検出される圧力が正圧になるように、かつ、温度センサ32によって検出される温度が所定の値未満になるように、空気供給手段33からの空気の流量を調節する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉の炉本体の内部の圧力を制御するための炉内圧力制御システムであって、
前記炉本体に設けられ、前記炉本体の内部の圧力を検出する圧力センサと、
前記炉本体に接続される排気筒に設けられ、前記排気筒の内部の排気ガスの温度を検出する温度センサと、
前記排気筒においてダンパよりも上流に設けられ、前記排気筒の内部に空気を供給する空気供給手段と、
前記空気供給手段の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記圧力センサによって検出される前記圧力が正圧になるように、かつ、前記温度センサによって検出される温度が所定の値未満になるように、前記空気供給手段からの空気の流量を調節する、
炉内圧力制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記圧力を正圧にするための第1指令値を算出し、
前記温度を前記所定の値未満にするための第2指令値を算出し、
前記第1指令値および前記第2指令値のうち、大きい値を有する指令値に基づいて、前記空気供給手段からの空気の流量を調節する、請求項1に記載の炉内圧力制御システム。
【請求項3】
前記炉内圧力制御システムは、
バーナ―に供給される燃料の流量を検出する流量計と、
前記流量計によって検出される前記燃料の流量、前記圧力センサによって検出される前記圧力、および、前記第1指令値に基づいて、前記燃焼炉におけるシール要素の劣化状況を判定する劣化状況判定部と、
を備える、請求項2に記載の炉内圧力制御システム。
【請求項4】
前記劣化状況判定部は、前記シール要素が劣化していると判定される場合に、劣化状況をオペレータに報知する、請求項3に記載の炉内圧力制御システム。
【請求項5】
前記温度センサは、前記排気筒においてダンパよりも下流に設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の炉内圧力制御システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の炉内圧力制御システムと、
炉本体と、
前記炉本体に接続される排気筒と、
を備える、燃焼炉。
【請求項7】
燃焼炉の炉本体の内部の圧力を制御するための炉内圧力制御方法であって、
前記炉本体に設けられた圧力センサから、前記炉本体の内部の圧力を受信することと、
前記炉本体に接続される排気筒に設けられた温度センサから、前記排気筒の内部の排気ガスの温度を受信することと、
前記圧力センサによって検出される前記圧力が正圧になるように、かつ、前記温度センサによって検出される温度が所定の値未満になるように、前記排気筒においてダンパよりも上流に設けられた空気供給手段から、前記排気筒の内部に空気を供給することと、
を含む、炉内圧力制御方法。
【請求項8】
前記炉内圧力制御方法は、
前記圧力を正圧にするための第1指令値を算出することと、
前記温度を前記所定の値未満にするための第2指令値を算出することと、
をさらに含み、
前記空気供給手段から前記排気筒の内部に空気を供給することは、前記第1指令値および前記第2指令値のうち、大きい値を有する指令値に基づいて、前記空気供給手段からの空気の流量を調節することを含む、請求項7に記載の炉内圧力制御方法。
【請求項9】
前記炉内圧力制御方法は、
バーナ―に供給される燃料の流量を流量計から受信することと、
前記流量計によって検出される前記燃料の流量、前記圧力センサによって検出される前記圧力、および、前記第1指令値に基づいて、前記燃焼炉におけるシール要素の劣化状況を判定することと、
をさらに含む、請求項8に記載の炉内圧力制御方法。
【請求項10】
前記炉内圧力制御方法は、前記シール要素が劣化していると判定される場合に、劣化状況をオペレータに報知することをさらに含む、請求項9に記載の炉内圧力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内圧力制御システム、燃焼炉、および、炉内圧力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示される加熱炉では、煙道に高温ダンパが設けられる。高温ダンパの開度は、圧力センサによって検出される炉本体内部の圧力に基づいて制御される。このような構成によって、炉本体内部の圧力が微正圧に維持される。煙道において高温ダンパの上流には、ダイリューション空気ブロアが接続される。ダイリューション空気ブロアは、煙道にダイリューション空気を供給し、煙道内の排気ガスをダイリューション空気によって冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、上記のように、高温ダンパの開度を圧力センサの検出圧力に基づいて制御し、これによって、炉本体内部の圧力を微正圧に維持する。一般的に、低燃焼時には、排気ガスの流量が減少するため、高温ダンパの開度を絞る必要がある。しかしながら、ダンパの締め切り性能には限界がある。このため、低燃焼時にダンパと煙道との隙間から排気ガスが漏れる可能性がある。この場合、圧力が正圧に維持されない可能性がある。したがって、ダンパと煙道との隙間にシール材料を充填することが考えられる。しかしながら、炉が高温で運転するタイプの場合、シール材料が高温の排気ガスに晒されてしまうため、シール材料を充填することができない。
【0005】
また、上記のように、ダンパは、高温の排気ガスに晒される場合がある。高温による熱衝撃および温度勾配によってダンパが破損すると、ダンパを修復するまでの間、炉の操業を停止する必要があり得る。したがって、ダンパに耐火材が用いられる場合がある。しかしながら、耐火材は高額であり、しかも大型で高重量である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を考慮して、炉圧を正圧に維持することができると共に、高温によるダンパの破損を抑制することができる炉内圧力制御システムおよび炉内圧力制御方法を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような炉内圧力制御システムを備える燃焼炉も含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、燃焼炉の炉本体の内部の圧力を制御するための炉内圧力制御システムであって、炉本体に設けられ、炉本体の内部の圧力を検出する圧力センサと、炉本体に接続される排気筒に設けられ、排気筒の内部の排気ガスの温度を検出する温度センサと、排気筒においてダンパよりも上流に設けられ、排気筒の内部に空気を供給する空気供給手段と、空気供給手段の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、圧力センサによって検出される圧力が正圧になるように、かつ、温度センサによって検出される温度が所定の値未満になるように、空気供給手段からの空気の流量を調節する。
【0008】
制御装置は、圧力を正圧にするための第1指令値を算出し、温度を所定の値未満にするための第2指令値を算出し、第1指令値および第2指令値のうち、大きい値を有する指令値に基づいて、空気供給手段からの空気の流量を調節してもよい。
【0009】
炉内圧力制御システムは、バーナ―に供給される燃料の流量を検出する流量計と、流量計によって検出される燃料の流量、圧力センサによって検出される前記圧力、および、第1指令値に基づいて、燃焼炉におけるシール要素の劣化状況を判定する劣化状況判定部と、を備えてもよい。
【0010】
劣化状況判定部は、シール要素が劣化していると判定される場合に、劣化状況をオペレータに報知してもよい。
【0011】
温度センサは、排気筒においてダンパよりも下流に設けられてもよい。
【0012】
本発明の他の態様は、上記のいずれかの炉内圧力制御システムと、炉本体と、炉本体に接続される排気筒と、を備える燃焼炉である。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、燃焼炉の炉本体の内部の圧力を制御するための炉内圧力制御方法であって、炉本体に設けられた圧力センサから、炉本体の内部の圧力を受信することと、炉本体に接続される排気筒に設けられた温度センサから、排気筒の内部の排気ガスの温度を受信することと、圧力センサによって検出される圧力が正圧になるように、かつ、温度センサによって検出される温度が所定の値未満になるように、排気筒においてダンパよりも上流に設けられた空気供給手段から、排気筒の内部に空気を供給することと、を含む。
【0014】
炉内圧力制御方法は、圧力を正圧にするための第1指令値を算出することと、温度を所定の値未満にするための第2指令値を算出することと、をさらに含んでもよく、空気供給手段から排気筒の内部に空気を供給することは、第1指令値および第2指令値のうち、大きい値を有する指令値に基づいて、空気供給手段からの空気の流量を調節することを含んでもよい。
【0015】
炉内圧力制御方法は、バーナ―に供給される燃料の流量を流量計から受信することと、流量計によって検出される燃料の流量、圧力センサによって検出される圧力、および、第1指令値に基づいて、燃焼炉におけるシール要素の劣化状況を判定することと、をさらに含んでもよい。
【0016】
炉内圧力制御方法は、シール要素が劣化していると判定される場合に、劣化状況をオペレータに報知することをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炉圧を正圧に維持することができると共に、高温によるダンパの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る炉内圧力制御システムを備える燃焼炉を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1中の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1中のPCの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、実施形態に係る炉内圧力制御システム3を備える燃焼炉(以下、単に「炉」と称される)100を示す概略図である。炉100は、燃焼炉であり、燃焼によって排気ガスを発生する。例えば、炉100は、焼入れ等の熱処理を行う熱処理炉であることができる。しかしながら、炉100は、これに限定されず、様々なタイプの燃焼炉であることができる。炉100は、ガスまたはオイル等の様々な燃料を使用することができる。
【0021】
炉100は、炉本体1と、排気筒2と、炉内圧力制御システム3と、を備える。また、炉内圧力制御システム3は、圧力センサ31と、温度センサ32と、空気供給手段33と、制御装置34と、PC(劣化状況判定部)35と、を含む。
【0022】
炉本体1は、燃焼室11と、バーナ12と、を含む。バーナ12には、バーナ12へ供給される燃料の流量を検出するための流量計13が接続される。流量計13は、流量を示す信号をPC35に送信する。
【0023】
排気筒2は、炉本体1に接続されており、炉本体1で発生した排気ガスを外部に放出する。排気筒2は、ダンパ21を含む。ダンパ21は、その開度を制御することによって、外部に放出される排気ガスの流量を調節する。ダンパ21の開度は、モータM1によって調節される。モータM1は、制御装置34からの信号に基づいてモータドライバD1によって駆動される。
【0024】
圧力センサ31は、炉本体1に設けられる。圧力センサ31は、燃焼室11の内部の圧力(以下、単に「炉圧」と称される)を検出する。圧力センサ31は、炉圧を示す信号を制御装置34およびPC35に送信する。
【0025】
温度センサ32は、排気筒2に設けられる。温度センサ32は、排気筒2内の排気ガスの温度を検出する。本実施形態では、温度センサ32は、ダンパ21の下流に設けられる。温度センサ32は、温度を示す信号を制御装置34に送信する。また、温度センサ32は、温度を示す信号をPC35にも送信してもよい。
【0026】
空気供給手段33は、排気筒2内に空気を供給する。空気供給手段33は、ノズル33aを含む。ノズル33aは、排気筒2においてダンパ21の上流に設けられる。本実施形態では、複数のノズル33aが、排気筒2の側壁に間隔をあけて設けられる。ノズル33aには、空気制御弁33bが接続される。ノズル33aに供給される空気の流量が、空気制御弁33bの開度を制御することによって調節される。空気制御弁33bの開度は、モータM2によって調節される。モータM2は、制御装置34からの信号に基づいてモータドライバD2によって駆動される。空気供給手段33への空気の供給源は、例えば、バーナ12へ燃焼用の空気を送るもの(図示せず)と共通であってもよい。
【0027】
制御装置34は、炉内圧力調節計34aと、排気温度調節計34bと、第1演算器34cと、第2演算器34dと、を含む。
【0028】
炉内圧力調節計34aは、圧力センサ31と通信可能に接続されており、炉圧を示す信号を受信する。また、炉内圧力調節計34aには、オペレータによって、炉圧の目標値が入力される。炉内圧力調節計34aは、圧力センサ31から受信する炉圧と、炉圧の目標値との差分が所定の閾値未満になるように、ダンパ21の開度を調節するための指令値(以下、開度指令値という)を算出する。炉内圧力調節計34aは、算出した開度指令値をモータドライバD1および第1演算器34cに送信する。
【0029】
モータドライバD1は、炉内圧力調節計34aから受信した開度指令値をモータM1制御用信号に変換してモータM1を制御し、これによって、ダンパ21の開度を調節する。
【0030】
第1演算器34cは、炉内圧力調節計34aと通信可能に接続されており、開度指令値を受信する。第1演算器34cは、炉内圧力調節計34aから受信した信号を変換し、炉圧を正圧に維持するように空気制御弁33bの開度を調節するための指令値(以下、第1指令値という)を算出する。第1演算器34cは、算出した第1指令値を第2演算器34dおよびPC35に送信する。
【0031】
排気温度調節計34bは、温度センサ32と通信可能に接続されており、排気筒2内の排気ガスの温度を示す信号を受信する。また、排気温度調節計34bには、オペレータによって、排気ガスの温度の目標値が入力される。排気温度調節計34bは、温度センサ32から受信する排気ガスの温度と、排気ガスの温度の目標値との差分が所定の閾値未満になるように、空気制御弁33bの開度を調節するための指令値(以下、第2指令値という)を算出する。排気温度調節計34bは、算出した第2指令値を第2演算器34dに送信する。また、排気温度調節計34bは、算出した第2指令値をPC35にも送信してもよい。
【0032】
第2演算器34dは、第1演算器34cから受信する炉圧を正圧に維持するための第1指令値と、排気温度調節計34bから受信する排気ガスの温度を調節するための第2指令値と、を比較し、第1指令値および第2指令値のうち大きな値を有する指令値を選択する。第2演算器34dは、選択した指令値をモータドライバD2に送信する。また、第2演算器34dは、選択した指令値をPC35にも送信してもよい。
【0033】
モータドライバD2は、第2演算器34dから受信した指令値に基づいてモータM2を制御し、これによって、空気制御弁33bの開度、すなわち、排気筒2内に供給する空気の流量を調節する。
【0034】
上記の実施形態では、制御装置34は、一般的に入手可能な調節計34a,34bおよび演算器34c,34dによって実現される。しかしながら、他の実施形態では、制御装置34は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)、デスクトップPC、ノートPC、サーバまたはタブレット等のコンピュータであってもよく、プロセッサ(CPU等)、記憶装置(ハードディスク、ROMおよびRAM等)、表示装置(液晶ディスプレイおよびタッチパネル等)および入力装置(キーボード、ボタンおよびタッチパネル等)等の構成要素を含んでもよい。
【0035】
PC35は、本実施形態では、制御装置34とは別個に設けられている。PC35は、例えば、PLC、デスクトップPC、ノートPC、サーバまたはタブレット等のコンピュータであってもよく、プロセッサ、記憶装置、表示装置および入力装置等の構成要素を含んでもよい。例えば、PC35は、制御装置34に隣接して配置されたPCであってもよい。他の実施形態では、PC35は、制御装置34の遠隔に配置された炉100の管理会社のPCまたはタブレット等であってもよい。さらに、他の実施形態では、PC35が有する以下の劣化状況判定部としての機能は、制御装置34に組み込まれていてもよい。
【0036】
PC35は、圧力センサ31と通信可能に接続されており、炉圧を示す信号を受信する。また、PC35は、流量計13と通信可能に接続されており、バーナ12へ供給される燃料の流量を受信する。また、PC35は、第1演算器34cと通信可能に接続されており、炉圧を正圧に維持するための第1指令値を受信する。PC35は、炉圧と、燃料の流量と、炉圧を正圧に維持するための第1指令値と、に基づいて、炉本体1および排気筒2に含まれる不図示のシール要素(例えば、扉など)の劣化状況を推定する。例えば、PC35は、炉圧および流量に応じて第1指令値の閾値を示すテーブルを記憶していてもよい。この場合、PC35は、受信した炉圧および流量に応じてテーブルから閾値を読み出し、受信した第1指令値と、読み出した閾値とを比較し、受信した第1指令値が閾値よりも大きい場合、すなわち、炉圧を正圧に維持するための空気制御弁33bの開度(空気の流量)が閾値よりも大きい場合には、シール要素が劣化していると判断してもよい。シール要素が劣化していると判断された場合、PC35は、劣化状況をオペレータに報知してもよい。例えば、PC35は、劣化状況をディスプレイに表示してもよい。また、例えば、PC35は、登録されたメールアドレスに劣化状況を示すメールを送信してもよい。
【0037】
続いて、炉内圧力制御システム3の動作について説明する。まず、制御装置34の動作について説明する
【0038】
図2は、
図1中の制御装置34の動作を示すフローチャートである。
図2に示される動作は、例えば、炉100の操業中に所定のインターバル(例えば、1~数秒、10~数十秒、または、1~数分)で繰り返されてもよい。
【0039】
炉内圧力調節計34aは、圧力センサ31から炉圧を受信する(ステップS100)。
【0040】
続いて、炉内圧力調節計34aは、圧力センサ31から受信する炉圧と、炉圧の目標値との差分が所定の閾値未満になるように、開度指令値を算出する(ステップS102)。
【0041】
続いて、炉内圧力調節計34aは、算出した開度指令値をモータドライバD1および第1演算器34cに送信し、モータドライバD1およびモータM1を介して、ダンパ21の開度を調節する(ステップS104)。但し、モータドライバD1は受信した信号を予め設定された比率によりモータM1制御用信号に変換し、モータM1の回転駆動を調節する。
【0042】
続いて、第1演算器34cは、予め設定された比率に基づいて炉内圧力調節計34aからの信号を変換し、炉圧を正圧に維持するための第1指令値を算出する(ステップS106)。第1演算器34cは、算出した第1指令値を第2演算器34dおよびPC35に送信する。
【0043】
続いて、排気温度調節計34bは、温度センサ32から排気ガスの温度を受信する(ステップS108)。
【0044】
続いて、排気温度調節計34bは、温度センサ32から受信する排気ガスの温度と、排気ガスの温度の目標値との差分が所定の閾値未満になるように、排気ガスの温度を調節するための第2指令値を算出する(ステップS110)。排気温度調節計34bは、算出した第2指令値を第2演算器34dに送信する。
【0045】
続いて、第2演算器34dは、第1指令値が第2指令値よりも大きいか否かを判定する(ステップS112)。
【0046】
ステップS112において、第1指令値が第2指令値よりも大きいと判定される場合(YES)、第2演算器34dは、第1指令値をモータドライバD2に送信し、モータドライバD2、モータM2および空気制御弁33bを介して、ノズル33aからの空気の流量を調節する(ステップS114)。その後、制御装置34は、一連の動作を終了する。
【0047】
対照的に、ステップS112において、第1指令値が第2指令値よりも小さいと判定される場合(NO)、第2演算器34dは、第2指令値をモータドライバD2に送信し、モータドライバD2、モータM2および空気制御弁33bを介して、ノズル33aからの空気の流量を調節する(ステップS116)。その後、制御装置34は、一連の動作を終了する。
【0048】
続いて、PC35の動作について説明する。
【0049】
図3は、
図1中のPC35の動作を示すフローチャートである。
図3に示される動作は、例えば、炉100の操業中に所定のインターバル(例えば、1~数秒、10~数十秒、または、1~数分)で繰り返られる。また、PC35が制御装置34に組み込まれる場合には、
図3に示される動作は、
図2に示される動作と共に実行されてもよい。
【0050】
PC35は、圧力センサ31から炉圧を受信する(ステップS200)。
【0051】
続いて、PC35は、バーナ12への燃料の流量を流量計13から受信する(ステップS202)。
【0052】
続いて、PC35は、炉圧を正圧に維持するための第1指令値を、第1演算器34cから受信する(ステップS204)。
【0053】
続いて、PC35は、炉圧と、燃料の流量と、第1指令値と、に基づいて、シール要素が劣化しているか否かを判定する(ステップS206)。例えば、PC35は、炉圧および流量に応じてテーブルから閾値を読み出し、第1指令値が閾値よりも大きい場合、すなわち、炉圧を正圧に維持するための空気の流量が閾値よりも大きい場合には、シール要素が劣化していると判断してもよい。
【0054】
ステップS206において、シール要素が劣化していると判定される場合(YES)、PC35は、オペレータに劣化状況を報知し(ステップS208)、一連の動作を終了する。
【0055】
ステップS206において、シール要素が劣化していないと判定される場合(NO)、PC35は、一連の動作を終了する。
【0056】
以上のような炉内圧力制御システム3は、炉本体1に設けられ、炉圧を検出する圧力センサ31と、炉本体1に接続される排気筒2に設けられ、排気筒2の内部の排気ガスの温度を検出する温度センサ32と、排気筒2においてダンパ21よりも上流に設けられ、排気筒2の内部に空気を供給する空気供給手段33と、空気供給手段33の動作を制御する制御装置34と、を備え、制御装置34は、圧力センサ31によって検出される炉圧が正圧になるように、かつ、温度センサ32によって検出される温度が所定の値未満になるように、空気供給手段33からの空気の流量を調節する。この構成によれば、圧力センサ31によって検出される炉圧が正圧になるように、排気筒2の内部に空気が供給される。したがって、排気ガスの流量が減少する低燃焼時においても、高燃焼時のように十分な流量の気体(排気ガス+空気)を排気筒2内に供給することができ、炉圧を正圧に維持することができる。また、この構成によれば、温度センサ32によって検出される温度が所定の値未満になるように、排気筒2の内部に空気が供給される。したがって、排気筒2の内部に供給される空気によって排気ガスが冷却されるため、過度に高温な排気ガスにダンパ21が晒されることを抑制することができる。よって、高温によるダンパ21の破損を抑制することができる。
【0057】
また、炉内圧力制御システム3では、制御装置34は、炉圧を正圧にするための第1指令値と、排気ガスの温度を所定の値未満にするための第2指令値と、を算出し、第1指令値および第2指令値のうち、大きい値を有する指令値に基づいて、空気供給手段からの空気の流量を調節する。この構成によれば、第1指令値および第2指令値のうち、より高流量の指令値に基づいて、排気筒2の内部に空気が供給される。より高流量で排気筒2の内部に空気が供給されれば、炉圧の維持、および、排気ガスの冷却の双方を実現することができる。したがって、この構成によれば、別々に算出される第1指令値および第2指令値を比較するというシンプルな演算によって、炉圧の維持および排気ガスの冷却の双方を実現することができる。
【0058】
また、炉内圧力制御システム3は、バーナ―12に供給される燃料の流量を検出する流量計13と、流量計13によって検出される燃料の流量、圧力センサ31によって検出される炉圧、および、第1指令値に基づいて、炉100におけるシール要素の劣化状況を判定するPC35と、を備える。炉圧を正圧に維持するために必要な空気の量、すなわち、第1指令値は、燃焼量、すなわち、バーナ―12に供給される燃料の流量に依存する。また、シール要素が劣化している場合には、炉本体1から気体が漏れる。したがって、シール要素が劣化している場合には、圧力センサ31によって検出される炉圧を上昇させるために、第1指令値が増加する。したがって、シール要素が劣化している場合には、シール要素が劣化していない場合と燃料の流量および炉圧が同じであっても、算出される第1指令値が増加する。つまり、燃料の流量、炉圧および第1指令値の3つのパラメータを考慮することによって、シール要素が劣化しているか否かを判定することができる。上記の構成によれば、これら3つのパラメータがPC35によって考慮される。したがって、シール要素が劣化しているか否かを判定することができる。
【0059】
また、炉内圧力制御システム3では、PC35は、シール要素が劣化していると判定される場合に、劣化状況をオペレータに報知する。したがって、オペレータはシール要素を早期に交換することができ、炉100の運転効率の低下を抑制することができる。
【0060】
また、炉内圧力制御システム3では、温度センサ32は、排気筒2においてダンパ21よりも下流に設けられる。この構成によれば、ダンパ21の下流において、排気ガスの温度が測定される。このため、ダンパ21の上流から供給される空気によって、排気ガスが十分冷却された後に、排気ガスの温度を測定することができる。したがって、空気供給手段33による排気ガスの冷却効果をより正確に評価することができる。
【0061】
また、炉内圧力制御方法は、炉本体1に設けられた圧力センサ31から、炉圧を受信することと(ステップS100)、炉本体1に接続される排気筒2に設けられた温度センサ32から、排気筒2の内部の排気ガスの温度を受信することと(ステップS108)、圧力センサ31によって検出される炉圧が正圧になるように、かつ、温度センサ32によって検出される温度が所定の値未満になるように、排気筒2においてダンパ21よりも上流に設けられた空気供給手段33から、排気筒2の内部に空気を供給することと(ステップS112~S116)、を含む。この構成によれば、上記の通り、排気ガスの流量が減少する低燃焼時においても、高燃焼時のように十分な流量の気体を排気筒2に供給することができ、炉圧を正圧に維持することができる。また、この構成によれば、上記の通り、排気筒2の内部に供給される空気によって排気ガスが冷却されるため、過度に高温な排気ガスにダンパが晒されることを抑制することができる。よって、高温によるダンパの破損を抑制することができる。
【0062】
また、炉内圧力制御方法は、圧力を正圧にするための第1指令値を算出することと(ステップS106)、排気筒2の内部の排気ガスの温度を所定の値未満にするための第2指令値を算出することと(ステップS110)、をさらに含み、空気供給手段33から排気筒2の内部に空気を供給することは、第1指令値および第2指令値のうち、大きい値を有する指令値に基づいて、空気供給手段33からの空気の流量を調節することを含む(ステップS112~S116)。この構成によれば、上記の通り、別々に算出される第1指令値および第2指令値を比較するというシンプルな演算によって、炉圧の維持および排気ガスの冷却の双方を実現することができる。
【0063】
また、炉内圧力制御方法は、バーナ―12に供給される燃料の流量を流量計13から受信することと(ステップS202)、流量計によって検出される燃料の流量、圧力センサによって検出される圧力、および、第1指令値に基づいて、燃焼炉におけるシール要素の劣化状況を判定することと(ステップS206)、をさらに含む。上記の通り、燃料の流量、炉圧および第1指令値の3つのパラメータを考慮することによって、シール要素が劣化しているか否かを判定することができる。したがって、この構成によれば、これら3つのパラメータに基づいて、シール要素が劣化しているか否かを判定することができる。
【0064】
炉内圧力制御方法は、シール要素が劣化していると判定される場合に、劣化状況をオペレータに報知すること(ステップS208)をさらに含む。したがって、オペレータはシール要素を早期に補修・交換することができ、炉100の運転効率の低下を抑制することができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、上記実施形態の方法のステップは、上記の順番で実施されなくてもよく、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、異なる順番で実施されてもよい。
【0066】
例えば、上記の実施形態では、炉圧を正圧に維持するための第1指令値を算出するためのステップS100~S106は、排気ガスの温度を調節するための第2指令値を算出するためのステップS108~S110よりも前に実施される。しかしながら、他の実施形態では、ステップS100~S106は、ステップS108~S110と並行して実施されてもよく、または、ステップS108~S110よりも後に実施されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 炉本体
2 排気筒
3 炉内圧力制御システム
12 バーナ
13 流量計
21 ダンパ
31 圧力センサ
32 温度センサ
33 空気供給手段
34 制御装置
100 燃焼炉
35 PC(劣化状況判定部)