(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112881
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20230807BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B41J2/17 203
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014883
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】森上 敬之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056EA22
2C056EB25
2C056EB29
2C056EB38
2C056EB44
2C056EB52
2C056EB59
2C056EC57
2C056FA10
2C056JA13
2C056JB04
2C056JB09
2C056JC06
2C056JC13
2C056JC20
(57)【要約】
【課題】廃液タンクのインクを捨ててから廃液タンクを再び装着するときのユーザの負担が少ないインクジェットプリンタを提供すること。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、廃液タンク41が所定の装着位置に装着されているか否かを検出する廃液タンク検出センサ45と、コンピュータ50とを備える。コンピュータ50は、インクヘッド22からキャップ31に排出されるインクの量を廃液カウント値として計数する廃液カウント部61と、廃液カウント値を記憶する記憶部62と、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて、廃液タンク41が装着位置に再装着されたか否かを判定する判定部63と、廃液タンク41が再装着されたと判定されると、記憶部62に記憶されている廃液カウント値を初期化する初期化部64と、を有している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクヘッドから排出されるインクを受けるインク受け部材と、
前記インク受け部材からインクを回収する廃液タンクと、
前記廃液タンクが所定の装着位置に装着されているか否かを検出する廃液タンク検出センサと、
前記インクヘッドおよび前記廃液タンク検出センサに通信可能に接続されたコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、
前記インクヘッドから前記インク受け部材に排出されるインクの量を廃液カウント値として計数する廃液カウント部と、
前記廃液カウント値を記憶する記憶部と、
前記廃液タンク検出センサの出力の変化に基づいて、前記廃液タンクが前記装着位置に再装着されたか否かを判定する判定部と、
前記廃液タンクが再装着されたと前記判定部が判定すると、前記記憶部に記憶されている廃液カウント値を初期化する初期化部と、
を有している、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記判定部は、
前記廃液タンク検出センサの出力の変化に基づいて、前記廃液タンクが前記装着位置にある状態から前記装着位置にない状態に遷移する第1状態遷移の有無を判定する第1状態遷移判定部と、
前記廃液タンク検出センサの出力の変化に基づいて、前記廃液タンクが前記装着位置にない状態から前記装着位置にある状態に遷移する第2状態遷移の有無を判定する第2状態遷移判定部と、を有し、
前記第1状態遷移判定部により前記第1状態遷移があったと判定された後に、前記第2状態遷移判定部により前記第2状態遷移があったと判定されたときに、前記廃液タンクが再装着されたと判定するように構成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記廃液タンクが前記装着位置に装着されているときの前記廃液タンク検出センサの出力を第1の信号とし、前記廃液タンクが前記装着位置に装着されていないときの前記廃液タンク検出センサの出力を第2の信号としたときに、
前記第1状態遷移判定部は、前記廃液タンク検出センサから受ける出力が前記第1の信号から前記第2の信号に切り替わり、予め定められた第1時間の間、前記第2の信号を受け続けたときに、前記第1状態遷移があったと判定するように構成され、
および/または、
前記第2状態遷移判定部は、前記廃液タンク検出センサから受ける出力が前記第2の信号から前記第1の信号に切り替わり、予め定められた第2時間の間、前記第1の信号を受け続けたときに、前記第2状態遷移があったと判定するように構成されている、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記コンピュータと通信可能に接続された表示装置を備え、
前記コンピュータは、前記記憶部に記憶されている前記廃液カウント値に基づく廃液量を前記表示装置に表示させる表示部を有している、請求項1~3のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記廃液タンク内のインク量が予め定められた閾値を超えたか否かを検出する廃液量検出センサを備え、
前記表示部は、前記廃液タンク内のインク量が前記閾値を超えていることが前記廃液量検出センサにより検出されると、前記廃液タンクのインクの廃棄を促す通知を前記表示装置に表示させるように構成され、
前記初期化部は、前記通知を前記表示装置に表示させた後に、前記廃液タンクが再装着されたと前記判定部が判定し、かつ、前記廃液タンク内のインク量が前記閾値以下であることが前記廃液量検出センサにより検出されると、前記記憶部に記憶されている廃液カウント値を初期化するように構成されている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記廃液タンク内のインク量が予め定められた閾値を超えたか否かを検出する廃液量検出センサを備え、
前記初期化部は、前記廃液タンクが再装着されたと前記判定部が判定し、かつ、前記廃液タンク内のインク量が前記閾値以下であることが前記廃液量検出センサにより検出されると、前記記憶部に記憶されている廃液カウント値を初期化するように構成されている、請求項1~4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液タンクを備えたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、印刷時とは別に、インクヘッドのノズルのメンテナンス等のために、インクヘッドからインクが排出される。排出されたインクは、廃液タンクに回収される。ユーザは、廃液タンクが満杯になると、廃液タンクを取り出したうえでインクを捨て、空になった廃液タンクを再び装着する作業を行う必要がある。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、廃液タンク内のインク量を把握可能なインクジェットプリンタが知られている。上記インクジェットプリンタは、廃インク量を指標する廃液カウント値に基づいて、廃液タンク内のインク量を認識する。上記インクジェットプリンタは、インクヘッドのメンテナンス動作等を管理するコンピュータを備えている。コンピュータは、メンテナンス動作等において排出したインク量に基づいて、廃液カウント値を計数する。
【0004】
特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、廃液タンクが満杯であることを検知すると、表示画面に廃液タンクの交換を促す画像を表示する。この画像を見たユーザは、満杯となった廃液タンクを取り出し、廃液タンクからインクを捨て、空になった廃液タンクを再び装着する。そして、ユーザは、操作パネル等を操作することにより、廃液カウント値を初期化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記インクジェットプリンタでは、ユーザは、空の廃液タンクを装着する度に、操作パネル等の操作を行って廃液カウント値を初期化しなければならない。このような操作は、ユーザの負担となっていた。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、廃液タンクのインクを捨ててから廃液タンクを再び装着するときのユーザの負担が少ないインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドから排出されるインクを受けるインク受け部材と、前記インク受け部材からインクを回収する廃液タンクと、前記廃液タンクが所定の装着位置に装着されているか否かを検出する廃液タンク検出センサと、前記インクヘッドおよび前記廃液タンク検出センサに通信可能に接続されたコンピュータと、を備えている。前記コンピュータは、前記インクヘッドから前記インク受け部材に排出されるインクの量を廃液カウント値として計数する廃液カウント部と、前記廃液カウント値を記憶する記憶部と、前記廃液タンク検出センサの出力の変化に基づいて、前記廃液タンクが前記装着位置に再装着されたか否かを判定する判定部と、前記廃液タンクが再装着されたと前記判定部が判定すると、前記記憶部に記憶されている廃液カウント値を初期化する初期化部と、を有している。
【0009】
上記インクジェットプリンタによれば、インクが溜まった廃液タンクを装着位置から取り出してインクを捨てた後、空になった廃液タンクを再び装着位置に装着する際に、廃液タンク検出センサの出力が変化する。この廃液タンク検出センサの出力の変化に基づいて、廃液タンクが再装着されたか否かが判定される。廃液タンクが再装着されたと判定されると、コンピュータの初期化部により、廃液カウント値が初期化される。そのため、ユーザが廃液タンクを再装着すると、廃液カウント値は自動的に初期化される。ユーザは、廃液タンクを再装着した後、操作パネル等の操作を行って廃液カウント値を初期化する必要がない。したがって、上記インクジェットプリンタによれば、廃液タンクのインクを捨ててから廃液タンクを再び装着するときのユーザの負担が少ない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、廃液タンクのインクを捨ててから廃液タンクを再び装着するときのユーザの負担が少ないインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図である。
【
図3】廃液タンクが装着位置にあるときの廃液機構の正面図である。
【
図4】廃液タンクが取り外されたときの廃液機構の正面図である。
【
図8】廃液カウント値の初期化に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】廃液カウント値の初期化に関する処理の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と称する)について説明する。本明細書において「インクジェットプリンタ」とは、従来公知のインクジェット技術による印刷方法、例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般をいう。
【0013】
図1はプリンタ10の正面図である。なお、以下の説明において、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとし、プリンタ10からユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号X、Y、Zは、それぞれ前後方向、左右方向、上下方向を表す。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎず、プリンタ10の設置形態を何ら限定するものではない。
【0014】
本実施形態に係るプリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方に移動させると共に、左右方向に移動するキャリッジ19に搭載された複数のインクヘッド22からそれぞれインクを吐出することによって、記録媒体5に画像を印刷する。プリンタ10は、本体11と、本体11を支持する脚12と、タッチパネル13と、プラテン16と、コンピュータ50とを備えている。
【0015】
プリンタ10は、キャリッジ19と、キャリッジ19を左右方向に移動させるヘッド移動機構20とを備えている。ヘッド移動機構20は、例えば、左右方向に延びるガイドレール20aと、ガイドレール20aの左側に設けられたプーリ20bと、ガイドレール20aの右側に設けられたプーリ20cと、無端状のベルト20dと、キャリッジモータ20eとを備えている。ベルト20dは、プーリ20bおよびプーリ20cに巻き掛けられている。キャリッジ19はベルト20dに固定されている。キャリッジモータ20eを駆動するとプーリ20bが回転し、プーリ20bとプーリ20cとの間においてベルト20dが走行する。これにより、キャリッジ19は左右方向に移動する。
【0016】
プリンタ10は、媒体搬送機構25を備えている。媒体搬送機構25は、プラテン16に載置された記録媒体5を前後方向に移動させる機構である。媒体搬送機構25は、グリットローラ25aと、ピンチローラ25bと、フィードモータ25cとを備えている。グリットローラ25aとピンチローラ25bとの間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ25cが駆動してグリットローラ25aが回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
【0017】
タッチパネル13は入力装置と表示装置とを兼用するものであり、ユーザの操作が入力されると共に、プリンタ10に関する各種の情報を表示するように構成されている。本実施形態において、タッチパネル13は表示装置の一例である。タッチパネル13は、本体11の右側の前面に設けられている。ただし、タッチパネル13の位置は特に限定されない。
【0018】
インクヘッド22は、下方に開口したノズル22a(
図2参照)を有している。インクヘッド22は、印刷時にノズル22aから記録媒体5に向かってインクを吐出するように構成されている。インクヘッド22は、コンピュータ50と電気的に接続されている。コンピュータ50は、インクヘッド22と通信可能に接続されている。ノズル22aからのインクの吐出は、コンピュータ50によって制御される。
【0019】
プリンタ10は、クリーニング機構30を備えている。クリーニング機構30は、インクヘッド22のノズル22aに付着した付着物(例えば、埃、ごみ、インクの増粘物や硬化物等)を取り除くように構成されている。クリーニング機構30は、プラテン16よりも右側のホームポジションに配置されている。なお、ホームポジションは、キャリッジ19が印刷時以外のときに待機する位置である。本実施形態では、クリーニング機構30は、ワイピング機構26とキャッピング機構27とを含んでいる。ワイピング機構26は、ワイパー26aと、ワイパー26aを移動させるワイパー移動機構26bと、ワイパー洗浄槽(図示せず)とを有している。ワイパー26aが前後方向に移動すると、ワイパー26aによってインクヘッド22の下面が払拭される。ワイパー26aは、ワイパー洗浄槽の洗浄液に浸漬されることによって、付着したインクを洗い落とす。キャッピング機構27は、複数のキャップ31と、キャップ31を移動させるキャップ移動機構32と、複数の吸引ポンプ33とを備えている。吸引ポンプ33は、キャップ31がインクヘッド22に装着されているときに駆動し、インクヘッド22からインクを吸引する。クリーニング機構30はコンピュータ50に電気的に接続されており、コンピュータ50によって制御される。
【0020】
図2は、クリーニング機構30の一部の構成を示す模式図である。
図2では、ワイピング機構26の図示は省略している。前述したように、クリーニング機構30は、インク受け部材の一例であるキャップ31と、キャップ移動機構32と、吸引ポンプ33とを備えている。また、クリーニング機構30は廃液経路34を備えている。
【0021】
キャップ31は、例えば上部が開口した有底の箱状の形状を有している。キャップ31は、インクヘッド22のノズル22aの周囲を覆うように構成されている。これにより、ノズル22aとキャップ31との間に密閉空間が形成される。キャップ31は、キャップ移動機構32によって上下方向Zに移動可能であり、インクヘッド22の下面に着脱可能に装着される。
【0022】
廃液経路34は、キャップ31に排出されたインク(以下、廃液とも言う)をキャップ31から廃液機構40に導く流路である。廃液経路34の下端部には、漏斗35(
図3参照)が接続されている。廃液経路34を通った廃液は、漏斗35から廃液タンク41に排出され、廃液タンク41に回収される。廃液経路34の途中部分には、吸引ポンプ33が設けられている。吸引ポンプ33は、キャップ31の底面に接続されている。吸引ポンプ33は、ノズル22aにキャップ31が装着されている状態において、ノズル22aからインク等を吸引する。吸引ポンプ33は、キャップ31内に溜まったインク等を廃液機構40に送る。特に限定されるものではないが、吸引ポンプ33は、例えば真空ポンプである。吸引ポンプ33は、コンピュータ50と電気的に接続されており、コンピュータ50によって制御される。
【0023】
インクヘッド22のノズル22aをクリーニングする際、ノズル22aにキャップ31が装着された状態で吸引ポンプ33が駆動される。これにより、キャップ31を介してノズル22aからインクや付着物等が吸い出され、キャップ31内に溜まる。また、ノズル22aにキャップ31が装着された状態でインクヘッド22が駆動されると、キャップ31内にインクや付着物が吐出され、キャップ31内に溜まる。キャップ31は、廃液経路34を介して廃液機構40に連通されている。キャップ31内に溜まったインクや付着物等は、廃液経路34を介して廃液機構40に送られる。
【0024】
廃液機構40は、クリーニング動作等で生じた廃液を回収する機構である。
図1に示すように、廃液機構40は、クリーニング機構30よりも下方に配置されている。
図3は、廃液機構40の側面図である。廃液機構40は、廃液タンク41と、廃液タンク41が載せられるトレイ43と、トレイ43を変位可能に支持するベース部材42と、ばね44と、廃液タンク検出センサ45と、第1廃液量検出センサ46と、第2廃液量検出センサ47と、を備えている。
【0025】
ベース部材42は、前後に延びる横部42Aと、横部42Aの前部から上下に延びる縦部42Bとを有している。漏斗35はプリンタ10の本体11に吊り下げられた状態で固定されている。
【0026】
廃液タンク41は、キャップ31からのインクを回収し、貯留する容器である。廃液タンク41は、廃液経路34を通じてキャップ31からインクを回収するように構成されている。廃液タンク41は、トレイ43の上に載置される。
【0027】
トレイ43は、廃液タンク41内のインクの重量に応じて上下に変位するように構成されている。本実施形態では、トレイ43は軸49によって、ベース部材42の横部42Aに対して回転可能に支持されている。廃液タンク41内のインク量が増えるにつれて、トレイ43は軸49を中心として
図3の反時計回りに回転する。
【0028】
トレイ43には第1ストライカ48が固定されている。ばね44の下端部は、第1ストライカ48に接続されている。ばね44の上端部は、ブラケット42Cを介してベース部材42の縦部42Bに接続されている。ばね44は、第1ストライカ48を介して、廃液タンク41を支持するトレイ43を上方に付勢している。
【0029】
漏斗35には、液だれ防止用の廃液受け36が取り付けられている。廃液受け36は、軸37により、漏斗35に回転可能に吊り下げ支持されている。廃液受け36は、軸37に回転可能に支持されたアーム36Aと、アーム36Aに対して垂直に延びる(
図3の紙面裏側に延びる)プレート36Bとを有している。
図3に示すように、トレイ43に廃液タンク41が載せられている場合、廃液受け36は廃液タンク41に押されるので、プレート36Bは漏斗35の排出孔35aの真下の位置から外れる。一方、
図4に示すように、トレイ43に廃液タンク41が載せられていない場合、廃液受け36は自重により回転し、プレート36Bは漏斗35の排出孔35aの真下に位置する。そのため、トレイ43に廃液タンク41が載せられていない場合、漏斗35の排出孔35aからインクが垂れてきたとしても、そのインクは廃液受け36のプレート36Bによって受け止められる。よって、トレイ43等がインクによって汚れることは防止される。
【0030】
廃液受け36には、第2ストライカ38が固定されている。第2ストライカ38は、廃液受け36と共に軸37周りに回転可能である。
【0031】
廃液タンク検出センサ45は、廃液タンク41が所定の装着位置に装着されているか否かを検出するセンサである。ここでは、所定の装着位置とは、廃液タンク41がキャップ31からのインクを回収する位置のことである。本実施形態では、装着位置は
図3に示す位置であり、廃液タンク41がトレイ43に載せられ、かつ、漏斗35の排出孔35aが廃液タンク41の流出入口41aの真上または内側に配置された位置である。廃液タンク検出センサ45の形態は特に限定されないが、ここでは光透過型の光学センサからなっている。図示は省略するが、廃液タンク検出センサ45は、発光素子と受光素子とを備えている。受光素子が発光素子からの光を受けると、廃液タンク検出センサ45はOFFとなる。受光素子が発光素子からの光を受けないと、廃液タンク検出センサ45はONとなる。
【0032】
図3に示すように、廃液タンク41が装着位置にある場合、廃液タンク検出センサ45の光は第2ストライカ38によって遮られず、廃液タンク検出センサ45はOFFとなる。一方、
図4に示すように、廃液タンク41が装着位置にない場合、廃液タンク検出センサ45の光は第2ストライカ38によって遮られ、廃液タンク検出センサ45はONとなる。よって、廃液タンク検出センサ45のON/OFFに基づいて、廃液タンク41が装着位置に装着されているか否かを検出することができる。
【0033】
以下の説明では、廃液タンク41が予め定められた満杯状態であることを「エンド状態」といい、廃液タンク41が予め定められた満杯状態に近い状態であることを「ニアエンド状態」という。エンド状態は、例えば、廃液タンク41内のインク量が廃液タンク41の全容積の概ね70体積%以上、典型的には80体積%以上、例えば90体積%以上の状態であってもよい。ニアエンド状態は、エンド状態よりも少ない量のインクが廃液タンク41に回収された状態であり、例えば、廃液タンク41の全容積の概ね5体積%以上、例えば10体積%以上、エンド状態よりも少ない状態であってもよい。以下では、廃液タンク41内のインク量が第1閾値を超え、かつ、第2閾値以下の状態をニアエンド状態といい、廃液タンク41内のインク量が第2閾値を超えた状態をエンド状態という。なお、第1閾値および第2閾値は予め定められた値であり、第2閾値は第1閾値よりも大きい。
【0034】
第1廃液量検出センサ46は、ニアエンド状態を検出するセンサである。すなわち、第1廃液量検出センサ46は、廃液タンク41内のインク量が第1閾値を超えたか否かを検出するセンサである。第2廃液量検出センサ47は、エンド状態を検出するセンサである。すなわち、第2廃液量検出センサ47は、廃液タンク41内のインク量が第2閾値を超えたか否かを検出するセンサである。第1廃液量検出センサ46および第2廃液量検出センサ47の形態は特に限定されないが、ここでは廃液タンク検出センサ45と同様、光透過型の光学センサからなっている。
【0035】
前述したように、トレイ43は廃液タンク41を支持すると共に、軸49周りに回転可能である。廃液タンク41内のインク量が増えると、トレイ43は軸49周りに
図3の反時計回りに回転する。第1ストライカ48はトレイ43に固定されているので、廃液タンク41内のインク量が増えると、第1ストライカ48は下方に変位する。
【0036】
本実施形態では、廃液タンク41がニアエンド状態でなく、かつ、エンド状態でない場合、第1廃液量検出センサ46の光および第2廃液量検出センサ47の光は、いずれも第1ストライカ48によって遮られる。そのため、第1廃液量検出センサ46および第2廃液量検出センサ47は、いずれもONとなる。よって、第1廃液量検出センサ46および第2廃液量検出センサ47がONとなっていることに基づいて、廃液タンク41がニアエンド状態でなく、かつ、エンド状態でないことを検出することができる。
【0037】
廃液タンク41がニアエンド状態の場合、第1廃液量検出センサ46の光は第1ストライカ48によって遮られず、第2廃液量検出センサ47の光は第1ストライカ48によって遮られる。そのため、第1廃液量検出センサ46はOFFとなり、第2廃液量検出センサ47はONとなる。よって、第1廃液量検出センサ46がOFFとなり、かつ、第2廃液量検出センサ47がONとなっていることに基づいて、廃液タンク41のニアエンド状態を検出することができる。
【0038】
廃液タンク41がエンド状態の場合、第1廃液量検出センサ46の光および第2廃液量検出センサ47の光は、いずれも第1ストライカ48によって遮られない。そのため、第1廃液量検出センサ46および第2廃液量検出センサ47は、いずれもOFFとなる。よって、第1廃液量検出センサ46および第2廃液量検出センサ47がOFFとなっていることに基づいて、廃液タンク41のエンド状態を検出することができる。
【0039】
本実施形態では、プリンタ10のコンピュータ50は、クリーニング動作時におけるインクヘッド22のインクの吐出量および吸引ポンプ33の駆動量に基づいて、廃液タンク41内のインク量を演算することができ、演算されたインク量を廃液量としてタッチパネル13に表示可能である。
図5に示すように、コンピュータ50は、外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)51と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)52と、CPU52が実行するプログラムを格納したROM53と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM54と、他のプログラムや各種データを格納する他のメモリ55と、を備えている。本実施形態において、コンピュータ50はプリンタ10の本体11の内部に配置されたマイクロコンピュータを有しており、プリンタ10のための専用のコンピュータである。しかし、コンピュータ50は、本体11の外部に配置され、有線または無線を通じてプリンタ10と通信可能に接続された汎用のパーソナルコンピュータ等であっていてもよい。コンピュータ50の形態は特に限定されない。
【0040】
図6は、コンピュータ50の機能ブロック図である。コンピュータ50は、廃液カウント部61と、記憶部62と、判定部63と、初期化部64と、表示部65と、警告部66とを備える。CPU52がプログラムを実行することにより、コンピュータ50は、廃液カウント部61、記憶部62、判定部63、初期化部64、表示部65、および警告部66として機能する。
【0041】
クリーニング動作時には、インクヘッド22からキャップ31にインクが排出される。キャップ31に排出されたインクは、廃液経路34を通じて廃液タンク41に回収される。キャップ31に排出されたインクの量は、廃液タンク41内のインク量に等しいことが推定される。よって、キャップ31に排出されるインク量に基づいて、廃液タンク41内のインク量を推定することができる。例えば、1回のクリーニング動作でキャップ31に排出されるインク量が予め決まっている場合は、クリーニング動作の回数から廃液タンク41内のインク量を推定することができる。また、吸引ポンプの駆動回数から廃液タンク41内のインク量を推定してもよい。廃液カウント部61は、クリーニング動作時のインクの排出量を廃液カウント値として計数する。すなわち、廃液カウント部61は、インクヘッド22からキャップ31に排出されるインクの量を廃液カウント値として計数する。
【0042】
記憶部62は、廃液カウント値を記憶する。廃液タンク41が空になったと見なされると、廃液カウント値は初期化される。すなわち、廃液カウント値は零に戻される。クリーニング動作時のインクの排出量が増えるにつれ、廃液カウント部61によって廃液カウント値が加算され、加算後の廃液カウント値は記憶部62に記憶される。
【0043】
判定部63は、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて、廃液タンク41が装着位置に再装着されたか否かを判定する。判定部63が行う判定の内容については後述する。
【0044】
初期化部64は、廃液タンク41が装着位置に再装着されたと判定部63が判定すると、記憶部62に記憶されている廃液カウント値を初期化する。
【0045】
表示部65は、記憶部62に記憶されている廃液カウント値に基づく廃液量をタッチパネル13に表示させる。廃液カウント値は、廃液タンク41内のインク量と相関関係があり、インク量を指標するものである。表示部65がタッチパネル13に表示させる情報は、廃液タンク41内のインク量と一義的な相関関係がある情報であればよく、特に限定されない。表示部65は、例えば、廃液カウント値自体を表示させてもよく、廃液タンク41内のインク量(廃液量)を表示させてもよく、廃液タンク41の容積に対するインクの体積の割合を表示させてもよい。
【0046】
また、表示部65は、ニアエンド状態になると、廃液タンク41のインクの廃棄を促す通知をタッチパネル13に表示させる。詳しくは、表示部65は、廃液タンク41内のインク量が第1閾値を超えていることが第1廃液量検出センサ46により検出されると、廃液タンク41のインクの廃棄を促す通知をタッチパネル13に表示させる。
【0047】
警告部66は、エンド状態になると、廃液タンク41からインクが溢れることを防止するためにクリーニング動作を禁止すると共に、廃液タンク41のインクの廃棄が必要であることを伝える警告をタッチパネル13に表示させる。詳しくは、警告部66は、廃液タンク41内のインク量が第2閾値を超えていることが第2廃液量検出センサ47により検出されると、クリーニング動作を禁止すると共に、タッチパネル13に警告を表示させる。
【0048】
次に、判定部63が行う判定方法について説明する。廃液タンク41のインクの廃棄を促す通知またはインクの廃棄が必要であることを伝える警告を見たユーザは、トレイ43から廃液タンク41を取り外し、廃液タンク41のインクを廃棄する。そして、空になった廃液タンク41を再びトレイ43上に設置する。すなわち、ユーザは、廃液タンク41を装着位置から取り外し、廃液タンク41からインクを排出した後、空の廃液タンク41を装着位置に再装着する。
【0049】
ユーザが廃液タンク41を装着位置から取り外すと、廃液タンク検出センサ45はOFFからONに切り替わる。また、ユーザが廃液タンク41を装着位置に再装着すると、廃液タンク検出センサ45はONからOFFに切り替わる。そのため、判定部63は、廃液タンク検出センサ45がOFFからONに切り替わったこと、または、ONからOFFに切り替わったことに基づいて、廃液タンク41が再装着されたか否かを判定することができる。すなわち、判定部63は、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて、廃液タンク41が再装着されたか否かを判定することができる。廃液タンク41が再装着されたと判定部63が判定すると、初期化部64により、記憶部62に記憶されている廃液カウント値が初期化される。
【0050】
廃液タンク41のインクを廃棄し、空の廃液タンク41を再装着する際には、廃液タンク検出センサ45はOFFからONに切り替わり、その後、ONからOFFに切り替わる。廃液タンク検出センサ45のOFFからONへの変化と、その後のONからOFFへの変化とに基づいて判定することとすれば、廃液タンク41の再装着を精度良く判定することができるので特に好ましい。そこで、本実施形態では
図7に示すように、判定部63は、第1状態遷移判定部63Aと、第2状態遷移判定部63Bとを有している。第1状態遷移判定部63Aは、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて、廃液タンク41が装着位置にある状態から装着位置にない状態に遷移する第1状態遷移の有無を判定する。第2状態遷移判定部63Bは、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて、廃液タンク41が装着位置にない状態から装着位置にある状態に遷移する第2状態遷移の有無を判定する。判定部63は、第1状態遷移判定部63Aにより第1状態遷移があったと判定された後に、第2状態遷移判定部63Bにより第2状態遷移があったと判定されたときに、廃液タンク41が再装着されたと判定するように構成されている。
【0051】
ところで、
図3および
図4に示すように、廃液タンク検出センサ45は第2ストライカ38による遮光の有無に基づいてON/OFFされるが、第2ストライカ38は廃液受け36と一緒に軸37周りに揺動する。ユーザが廃液タンク41を装着位置から取り外すとき、または、装着位置に装着するときに、第2ストライカ38が揺動し、短時間の間に廃液タンク検出センサ45のON/OFFが繰り返されてしまう場合がある。また、印刷中にキャリッジ19が移動することで生じる振動により、短時間の間に廃液タンク検出センサ45のON/OFFが繰り返されてしまう場合がある。すなわち、いわゆるチャタリングが生じる場合がある。それにより、判定部63が第1状態遷移の後に第2状態遷移があったと誤判定してしまうおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態では、第1状態遷移判定部63Aは、廃液タンク41が装着位置にある状態から装着位置にない状態に遷移した後、装着位置にない状態が予め定められた第1時間の間継続した場合に、第1状態遷移があったと判定するように構成されている。第2状態遷移判定部63Bは、廃液タンク41が装着位置にない状態から装着位置にある状態に遷移した後、装着位置にある状態が予め定められた第2時間の間継続した場合に、第2状態遷移があったと判定するように構成されている。なお、第1時間と第2時間とは異なっていてもよいが、ここでは同一の時間に設定されている。第1時間および第2時間は、適宜に設定することができ、例えば2秒としてもよい。
【0053】
ここでは、廃液タンク検出センサ45がOFFのときに出力する信号をOFF信号とし、廃液タンク検出センサ45がONのときに出力する信号をON信号とする。OFF信号は、例えば、電圧が零または第1電圧の信号である。なお、電圧が零の場合は、厳密には廃液タンク検出センサ45は信号を出力していないが、本明細書では、信号を出力していない状態のことを零電圧の信号を出力しているものと見なすこととする。ON信号は、例えば、電圧が第1電圧よりも高い第2電圧の信号である。本実施形態では、OFF信号は「第1の信号」の例であり、ON信号は「第2の信号」の例である。第1状態遷移判定部63Aは、廃液タンク検出センサ45から受ける出力がOFF信号からON信号に切り替わり、予め定めた第1時間の間、ON信号を受け続けたときに、第1状態遷移があったと判定するように構成されている。第2状態遷移判定部63Bは、廃液タンク検出センサ45から受ける出力がON信号からOFF信号に切り替わり、予め定めた第2時間の間、OFF信号を受け続けたときに、第2状態遷移があったと判定するように構成されている。これにより、第1状態遷移および第2状態遷移の誤判定をより確実に防止することができる。
【0054】
図8は、本実施形態に係る廃液カウント値の初期化に関する処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、廃液タンク検出センサ45の出力がOFF信号からON信号に切り替わると(ステップS1)、廃液タンク検出センサ45の出力がON信号になってから第1時間が経過したか否かが判定される(ステップS2)。ステップS2の判定結果がYESの場合、第1状態遷移があったと判定される。その後、廃液タンク検出センサ45の出力がON信号からOFF信号に切り替わると(ステップS3)、廃液タンク検出センサ45の出力がOFF信号になってから第2時間が経過したか否かが判定される(ステップS4)。ステップS4の判定結果がYESの場合、第2状態遷移があったと判定される。すると、廃液タンク41が再装着されたと判定され(ステップS5)、廃液カウント値は初期化される(ステップS6)。
【0055】
ところで、ニアエンド状態またはエンド状態となった後に、ユーザが廃液タンク41をトレイ43から取り外したものの、廃液を捨てずに再びトレイ43の上に戻してしまう場合があり得る。その場合、インクの廃棄を促す通知または警告がタッチパネル13に表示されるので特に問題はないが、廃液カウント値を初期化することは好ましくない。
【0056】
そこで、本実施形態では、初期化部64は、廃液タンク41が再装着されたと判定部63が判定し、かつ、廃液タンク41がニアエンド状態およびエンド状態のいずれでもないことが検出されると、廃液カウント値を初期化するように構成されている。本実施形態では、ニアエンド状態およびエンド状態のいずれでもない状態とは、廃液タンク41内のインク量が第1閾値以下の状態のことである。初期化部64は、廃液タンク41が再装着されたと判定部63が判定し、かつ、廃液タンク41内のインク量が第1閾値以下であることが第1廃液量検出センサ46により検出されると、記憶部62に記憶されている廃液カウント値を初期化するように構成されている。これにより、ニアエンド状態またはエンド状態の後、ユーザが廃液を捨てずに廃液タンク41を再装着した場合に、廃液カウント値を初期化してしまうことを防止することができる。
【0057】
図9は、上記処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、廃液タンク41のインク量が第1閾値を超えているか否かが判定され(ステップS11)、第1閾値を超えていると判定された場合、廃液タンク41のインクの廃棄を促す通知がタッチパネル13に表示される(ステップS12)。次に、廃液タンク41が再装着されたと判定されたか否か、および、廃液タンク41のインク量が第1閾値以下であるか否かが判定される(ステップS13)。そして、ステップS13の両判定結果がYESの場合に、廃液カウント値が初期化される(ステップS14)。
【0058】
次に、本実施形態に係るプリンタ10によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0059】
前述したように、本実施形態に係るプリンタ10は、インクを吐出するインクヘッド22と、インクヘッド22から排出されるインクを受けるキャップ31と、キャップ31からインクを回収する廃液タンク41と、廃液タンク41が所定の装着位置に装着されているか否かを検出する廃液タンク検出センサ45と、インクヘッド22および廃液タンク検出センサ45に通信可能に接続されたコンピュータ50と、を備えている。コンピュータ50は、インクヘッド22からキャップ31に排出されるインクの量を廃液カウント値として計数する廃液カウント部61と、廃液カウント値を記憶する記憶部62と、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて廃液タンク41が前記装着位置に再装着されたか否かを判定する判定部63と、廃液タンク41が再装着されたと判定部63が判定すると、記憶部62に記憶されている廃液カウント値を初期化する初期化部64と、を有している。
【0060】
本実施形態に係るプリンタ10によれば、インクが溜まった廃液タンク41を装着位置から取り出してインクを捨てた後、空の廃液タンク41を再び装着位置に装着する際に、廃液タンク検出センサ45の出力が変化し、その出力の変化に基づいて、廃液タンク41が再装着されたか否かが判定される。そして、廃液タンク41が再装着されたと判定されると、コンピュータ50により廃液カウント値が初期化される。そのため、ユーザが廃液タンク41を再装着すると、廃液カウント値は自動的に初期化される。ユーザは、廃液タンク41を再装着した後、操作パネル等の操作を行って廃液カウント値を初期化する必要がない。したがって、本実施形態に係るプリンタ10によれば、廃液タンク41のインクを捨ててから廃液タンク41を再び装着するときのユーザの負担を軽減することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、判定部63は、第1状態遷移判定部63Aおよび第2状態遷移判定部63Bを有している。第1状態遷移判定部63Aは、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて、廃液タンク41が装着位置にある状態から装着位置にない状態に遷移する第1状態遷移の有無を判定する。第2状態遷移判定部63Bは、廃液タンク検出センサ45の出力の変化に基づいて、廃液タンク41が装着位置にない状態から装着位置にある状態に遷移する第2状態遷移の有無を判定する。判定部63は、第1状態遷移判定部63Aにより第1状態遷移があったと判定された後に、第2状態遷移判定部63Bにより第2状態遷移があったと判定されたときに、廃液タンク41が再装着されたと判定するように構成されている。
【0062】
このように、本実施形態によれば、廃液タンク41が装着位置にある状態から装着位置にない状態に遷移する第1状態遷移があったと判定された後に、廃液タンク41が装着位置にない状態から装着位置にある状態に遷移する第2状態遷移があったと判定されたときに、廃液タンク41が再装着されたと判定する。そのため、廃液タンク41が装着位置に再装着されたことを精度良く判定することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、第1状態遷移判定部63Aは、廃液タンク検出センサ45から受ける出力がOFF信号からON信号に切り替わり、予め定められた第1時間の間、ON信号を受け続けたときに、第1状態遷移があったと判定するように構成されている。また、第2状態遷移判定部63Bは、廃液タンク検出センサ45から受ける出力がON信号からOFF信号に切り替わり、予め定められた第2時間の間、OFF信号を受け続けたときに、第2状態遷移があったと判定するように構成されている。そのため、第1状態遷移の有無および第2状態遷移の有無を誤りなく判定することができる。
【0064】
また、本実施形態に係るプリンタ10は、コンピュータ50と通信可能に接続されたタッチパネル13を備えている。コンピュータ50は、記憶部62に記憶されている廃液カウント値に基づく廃液量をタッチパネル13に表示させる表示部65を有している。そのため、ユーザは、廃液タンク41に溜まったインク量(廃液量)を容易に把握することができる。
【0065】
また、本実施形態に係るプリンタ10は、廃液タンク41内のインク量が予め定められた第1閾値を超えたか否かを検出する第1廃液量検出センサ46を備えている。表示部65は、廃液タンク41内のインク量が第1閾値を超えていることが第1廃液量検出センサ46により検出されると、廃液タンク41のインクの廃棄を促す通知をタッチパネル13に表示させるように構成されている。初期化部64は、廃液タンク41が再装着されたと判定部63が判定し、かつ、廃液タンク41内のインク量が第1閾値以下であることが第1廃液量検出センサ46により検出されると、記憶部62に記憶されている廃液カウント値を初期化するように構成されている。これにより、ユーザが、ニアエンド状態またはエンド状態となった廃液タンク41をいったん装着位置から取り外した後、インクを捨てずに再び装着位置に装着してしまった場合に、廃液カウント値を初期化してしまうことを防止することができる。
【0066】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎない。本発明は他にも様々な形態で実施することができる。
【0067】
前記実施形態では、プリンタ10の表示装置はタッチパネル13により構成されているが、表示装置はタッチパネル13に限定されない。表示装置は、入力操作ができない表示パネルであってもよい。また、表示装置はパネル状のものに限定されない。表示装置は、プリンタ10の本体11に設けられたものであってもよく、本体11から離間したもの(外部ディスプレイ等)であってもよい。
【0068】
前記実施形態は、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)式のプリンタ10であるが、本発明に係るインクジェットプリンタの形態は何ら限定されない。インクジェットプリンタは、例えば、フラットベッド(Flatbed)式のプリンタであってもよい。
【0069】
廃液タンク41内のインク量を検出するための機構は何ら限定されない。前記実施形態では、廃液タンク41を支持するトレイ43は、軸49周りに回転可能に構成されているが、例えば、トレイ43は上下にスライド可能に構成されていてもよい。
【0070】
廃液タンク検出センサ45の形態は何ら限定されない。前記実施形態では、廃液タンク検出センサ45は、第2ストライカ38を検出することによって廃液タンク41が装着位置にあるか否かを検出するが、廃液タンク検出センサ45は、例えば廃液タンク41自体を検出するように構成されていてもよい。廃液タンク検出センサ45は、廃液タンク41の重量を検出することにより、廃液タンク41が装着位置にあるか否かを検出するように構成されていてもよい。
【0071】
前記実施形態では、廃液タンク41のニアエンド状態およびエンド状態を検出するために、プリンタ10は第1廃液量検出センサ46および第2廃液量検出センサ47を備えている。しかし、廃液量検出センサは1つのみでもよい。例えば、プリンタ10は、第1廃液量検出センサ46を備えず、第2廃液量検出センサ47のみを備えていてもよい。この場合、前述の第1閾値を第2閾値に置き換えることにより、前述と同様の判定または処理を実行することができる。また、プリンタ10は、3つ以上の廃液量検出センサを備えていてもよい。
【0072】
インクヘッド22から排出されるインクを受けるインク受け部材はキャップ31に限定されない。インク受け部材は、インクヘッド22のノズル面に密着されないものであってもよい。インク受け部材は、例えば、ホームポジションにあるときのインクヘッド22の下方に配置された容器であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 インクジェットプリンタ
13 タッチパネル(表示装置)
22 インクヘッド
31 キャップ(インク受け部材)
41 廃液タンク
45 廃液タンク検出センサ
46 第1廃液量検出センサ
47 第2廃液量検出センサ
50 コンピュータ
61 廃液カウント部
62 記憶部
63 判定部
63A 第1状態遷移判定部
63B 第2状態遷移判定部
64 初期化部
65 表示部