(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112910
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 53/30 20230101AFI20230807BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20230807BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01L27/11507
H01L21/90 B
H01L21/88 R
H01L21/88 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014931
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】520233375
【氏名又は名称】富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山口 水輝
(72)【発明者】
【氏名】王 文生
【テーマコード(参考)】
5F033
5F083
【Fターム(参考)】
5F033HH07
5F033HH18
5F033HH32
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5F083PR03
5F083PR05
5F083PR21
5F083PR22
5F083PR33
5F083PR40
(57)【要約】
【課題】コンタクト抵抗の上昇を抑制すること。
【解決手段】下部電極40と強誘電体膜42と上部電極44とを有する強誘電体キャパシタCaと、強誘電体キャパシタCaを覆う絶縁膜62と、絶縁膜62を貫通し、上部電極44に底部が埋め込まれた導電プラグ64と、を備え、上部電極44は、第1金属元素の酸化物を含む最上層の電極膜58と、電極膜58下に設けられ、電極膜58より酸素組成比が高い第1金属元素の酸化物を含む電極膜56と、を含み、導電プラグ64は、電極膜58を貫通して電極膜56に達して設けられ、電極膜56、58に接しかつ第2金属元素を含む密着膜66と密着膜66上の導電膜68とを含み、密着膜66のうち導電プラグ64の底面に位置する底面部分66bは、電極膜58と導電膜68に挟まれた被挟持部分66aに比べて、酸素濃度が低い、半導体装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、前記第1電極上に設けられた強誘電体膜と、前記強誘電体膜上に設けられた第2電極と、を有する強誘電体キャパシタと、
前記強誘電体キャパシタを覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜を貫通し、前記第2電極に底部が埋め込まれた導電プラグと、を備え、
前記第2電極は、第1金属元素の酸化物を含む最上層の第1層と、前記第1層下に設けられ、前記第1層より酸素組成比が高い前記第1金属元素の酸化物を含む第2層と、を含み、
前記導電プラグは、前記第1層を貫通して前記第2層に達して設けられ、前記第1層および前記第2層に接しかつ第2金属元素を含む密着膜と前記密着膜上の導電膜とを含み、
前記密着膜のうち前記導電プラグの底面に位置する第1部分は、前記第1層と前記導電膜に挟まれた第2部分に比べて、酸素濃度が低い、半導体装置。
【請求項2】
前記密着膜の前記第1部分は、前記密着膜の前記第2部分に比べて、前記第2金属元素の酸化物および/または酸窒化物が少ない、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1金属元素の酸化物は酸化イリジウムであり、
前記第1層に含まれる酸化イリジウムはIrOz(z<1.0)の組成を有し、
前記第2層に含まれる酸化イリジウムはIrOβ(β>z)の組成を有する、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2金属元素はチタンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記密着膜の前記第1部分は、前記第1層の下面より前記第2層側に位置して前記第2層の内部に設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記密着膜の前記第1部分と前記第1層の下面との間の距離は10nm以上である、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2電極は、最上層の前記第1層と、前記第1層下に設けられた前記第2層と、前記第2層下に設けられ、前記第1層より酸素組成比が高くかつ前記第2層とは酸素組成比が異なる前記第1金属元素の酸化物を含む第3層と、前記第3層下に設けられ、前記第1層より酸素組成比が高くかつ前記第2層および前記第3層より酸素組成比が低い前記第1金属元素の酸化物を含む第4層と、を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
第1電極となる膜を成膜する工程と、
前記第1電極となる膜上に、強誘電体膜を成膜する工程と、
前記強誘電体膜上に、第1金属元素の金属層である最上層の第1層と、前記第1層下に設けられ、前記第1金属元素の酸化層である第2層とを含む、第2電極となる膜を成膜する工程と、
前記第1電極となる膜と前記強誘電体膜と前記第2電極となる膜とをパターニングして、前記第1電極と前記強誘電体膜と前記第2電極とを有する強誘電体キャパシタを形成する工程と、
前記強誘電体キャパシタに対して酸素雰囲気下で熱処理をする工程と、
前記熱処理の後、前記強誘電体キャパシタを覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜および前記第1層を貫通して前記第2層に達し、前記第1層および前記第2層に接しかつ第2金属元素を含む密着膜と前記密着膜上の導電膜とを含む導電プラグを形成する工程と、を備え、
前記密着膜のうち前記導電プラグの底面に位置する第1部分は、前記第1層と前記導電膜に挟まれた第2部分に比べて、酸素濃度が低い、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1層は、前記熱処理により、前記第2層より酸素組成比が低い前記第1金属元素の酸化物が形成される、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体の分極反転を利用して、データを強誘電体キャパシタに保持する強誘電体メモリ(FeRAM:Ferroelectric Random Access Memory)が知られている。強誘電体キャパシタは、下部電極と、下部電極上に設けられた強誘電体膜と、強誘電体膜上に設けられた上部電極と、を備える。上部電極上には、上部電極に接続する導電プラグが設けられる。
【0003】
強誘電体キャパシタはエッチング等により所望の形状にパターニングすることで形成されるが、プロセスダメージを回復させるために酸素雰囲気下での回復アニール処理(熱処理)が行われる。この回復アニール処理により上部電極が酸化し、この酸化に起因して導電プラグと上部電極との間のコンタクト抵抗が上昇してしまうことがある。そこで、コンタクト抵抗の上昇を抑制するために、上部電極と導電プラグとの間に酸化しても導電性を有する導電材料を含む導電層を設けることが知られている(例えば特許文献1)。また、上部電極の上層部分を下層部分より酸素濃度の低い酸化イリジウム層とし、導電プラグを上部電極の上層部分で止まらせて下層部分まで到達しないようにすることが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-206213号公報
【特許文献2】特開2006-344684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載された方法では、導電プラグと上部電極との間のコンタクト抵抗の上昇を抑制する点において改善の余地が残されている。
【0006】
1つの側面では、コンタクト抵抗の上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、第1電極と、前記第1電極上に設けられた強誘電体膜と、前記強誘電体膜上に設けられた第2電極と、を有する強誘電体キャパシタと、前記強誘電体キャパシタを覆う絶縁膜と、前記絶縁膜を貫通し、前記第2電極に底部が埋め込まれた導電プラグと、を備え、前記第2電極は、第1金属元素の酸化物を含む最上層の第1層と、前記第1層下に設けられ、前記第1層より酸素組成比が高い前記第1金属元素の酸化物を含む第2層と、を含み、前記導電プラグは、前記第1層を貫通して前記第2層に達して設けられ、前記第1層および前記第2層に接しかつ第2金属元素を含む密着膜と前記密着膜上の導電膜とを含み、前記密着膜のうち前記導電プラグの底面に位置する第1部分は、前記第1層と前記導電膜に挟まれた第2部分に比べて、酸素濃度が低い、半導体装置である。
【0008】
1つの態様では、第1電極となる膜を成膜する工程と、前記第1電極となる膜上に、強誘電体膜を成膜する工程と、前記強誘電体膜上に、第1金属元素の金属層である最上層の第1層と、前記第1層下に設けられ、前記第1金属元素の酸化層である第2層とを含む、第2電極となる膜を成膜する工程と、前記第1電極となる膜と前記強誘電体膜と前記第2電極となる膜とをパターニングして、前記第1電極と前記強誘電体膜と前記第2電極とを有する強誘電体キャパシタを形成する工程と、前記強誘電体キャパシタに対して酸素雰囲気下で熱処理をする工程と、前記熱処理の後、前記強誘電体キャパシタを覆う絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜および前記第1層を貫通して前記第2層に達し、前記第1層および前記第2層に接しかつ第2金属元素を含む密着膜と前記密着膜上の導電膜とを含む導電プラグを形成する工程と、を備え、前記密着膜のうち前記導電プラグの底面に位置する第1部分は、前記第1層と前記導電膜に挟まれた第2部分に比べて、酸素濃度が低い、半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面として、コンタクト抵抗の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例に係る半導体装置の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例における強誘電体キャパシタ近傍の断面図である。
【
図3】
図3(a)から
図3(c)は、実施例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、実施例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、実施例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、実験を行った第1試料および第2試料の強誘電体キャパシタ近傍の断面図である。
【
図8】
図8は、第1試料および第2試料における導電プラグと上部電極との間のコンタクト抵抗の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例0012】
図1は、実施例に係る半導体装置100の断面図である。
図1のように、半導体装置100は、例えばP型シリコン基板である半導体基板10上に形成されている。半導体基板10の表層部には、トランジスタTaの形成領域を画定する酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁体からなる素子分離領域12が形成されている。また、半導体基板10の表層部には、トランジスタTaのソース領域Sおよびドレイン領域Dが形成されている。ソース領域Sおよびドレイン領域Dは例えばN型半導体で構成されている。
【0013】
半導体基板10上に、ゲート絶縁膜14を介してゲート電極Gが設けられている。ゲート絶縁膜14は例えばSiO2で形成され、ゲート電極Gは例えばポリシリコンで形成されている。ゲート電極Gはワード線として機能する。ゲート電極Gの側面にはSiO2等の絶縁体からなるサイドウォール16が設けられている。ソース領域S、ドレイン領域D、およびゲート電極Gの表面には、コンタクト抵抗を低下させるためのシリサイド層18が設けられている。トランジスタTaは電界効果トランジスタである。
【0014】
トランジスタTa上には、カバー膜20、層間絶縁膜22、エッチストッパ膜24、層間絶縁膜26、酸化抑制膜28、および緩衝膜30がこの順に積層されている。カバー膜20は、厚さが50nm~100nm程度であり、窒化シリコン(SiN)等の絶縁体で形成されている。層間絶縁膜22は、厚さが300nm~400nm程度であり、SiO2等で形成されている。エッチストッパ膜24は、厚さが20nm~50nm程度であり、SiN等の絶縁体で形成されている。層間絶縁膜26は、厚さが200nm~300nm程度であり、SiO2等で形成されている。酸化抑制膜28は、厚さが50nm~150nm程度であり、SiN等の絶縁体で形成されている。緩衝膜30は、厚さが200nm~300nm程度であり、SiO2等の絶縁体で形成されている。
【0015】
導電プラグ32、34が、層間絶縁膜22およびカバー膜20を貫通して、それぞれ、ソース領域Sおよびドレイン領域Dに接続されている。導電プラグ32、34は、タングステン(W)等の導電体で形成されている。層間絶縁膜26およびエッチストッパ膜24を貫通してビット線として機能する配線38が設けられている。配線38は、導電プラグ34を介してトランジスタTaのドレイン領域Dに電気的に接続されている。配線38は、W等の導電体で形成されている。導電プラグ36が、緩衝膜30、酸化抑制膜28、層間絶縁膜26、およびエッチストッパ膜24を貫通して設けられ、導電プラグ32に接続されている。導電プラグ36は、W等の導電体で形成されている。
【0016】
緩衝膜30上に、強誘電体キャパシタCaが設けられている。強誘電体キャパシタCaは、下部電極40、強誘電体膜42、および上部電極44が積層された積層構造を有する。下部電極40は、導電プラグ36、32を介してトランジスタTaのソース領域Sに電気的に接続されている。
【0017】
下部電極40は、密着膜46、酸素バリア導電膜48、および電極膜50がこの順に積層されている。密着膜46は、厚さが1nm~10nm程度であり、窒化チタン(TiN)等の導電体で形成されている。密着膜46は、導電プラグ36および緩衝膜30と酸素バリア導電膜48との間の密着性を向上させる機能を有する。酸素バリア導電膜48は、厚さが50nm~100nm程度で、酸素透過性の低い膜であり、導電プラグ36への酸素の拡散を抑制する機能を有する。酸素バリア導電膜48は密着膜46および電極膜50より酸素透過性が低い。酸素バリア導電膜48は、例えば、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、酸窒化チタンアルミニウム(TiAlON)、窒化チタンシリコン(TiSiN)、窒化タンタルアルミニウム(TaAlN)、酸窒化タンタルアルミニウム(TaAlON)、または窒化タンタルシリコン(TaSiN)で形成されている。電極膜50は、厚さが10nm~100nm程度であり、イリジウム(Ir)等の導電体で形成されている。
【0018】
強誘電体膜42は、PZT(Pb(Zr、Ti)O3)またはSBT(SrBi2Ta2O9)等のペロブスカイト結晶構造を有する強誘電体酸化物を含んで形成されている。強誘電体膜42の厚さは50nm~150nm程度である。
【0019】
上部電極44は、電極膜52と電極膜54と電極膜56と電極膜58がこの順に積層されている。電極膜52は、例えば、厚さが10nm~40nm程度で、IrOx(1.3≦x≦1.9)の組成を有する酸化イリジウムで形成されている。なお、xは、1.5≦x≦1.9であってもよいし、1.8≦x≦1.9であってもよい。電極膜52は、電気特性向上のために、上部電極44と強誘電体膜42の界面において強誘電体膜42と上部電極44の間で酸化イリジウムの相互拡散を抑制し、デートレイア(Dead Layer、強誘電体性がない界面層)を薄くなるようにコントロールするために設けられている。電極膜54は、例えば、厚さが50nm~100nm程度で、IrOα(x<α)の組成を有する酸化イリジウムで形成されている。電極膜56は、例えば、厚さが50nm~125nm程度で、IrOβ(x<β、α≠β)の組成を有する酸化イリジウムで形成されている。電極膜54と電極膜56は、水素の侵入を抑えて、強誘電体キャパシタCaへの還元雰囲気によるダメージを抑制するために設けられている。また、電極膜54と電極膜56の2層構造とすることで、1層とする場合に比べて、成膜時に異物が発生することの抑制および成膜時の異常酸化の抑制ができる。電極膜58は、例えば、厚さが20nm~70nm程度で、IrOz(z<1.0)の組成を有する酸化イリジウムで形成されている。電極膜58は、研磨処理した後の絶縁膜62の厚さ測定を可能とするために設けられている。なお、電極膜58は、IrOz(z<1.0)の組成を有する酸化イリジウムを含む層であれば、酸化イリジウム層である場合に限られず、酸化イリジウムの他に例えば金属イリジウムを含んでいてもよい。
【0020】
下部電極40、強誘電体膜42、および上部電極44の側面は、連続していて、非連続な張り出し部分が形成されていない。下部電極40、強誘電体膜42、および上部電極44は、下部電極40から上部電極44に向かって連続的に幅が狭まっていてもよいし、ほぼ同じ幅となっていてもよい。
【0021】
強誘電体キャパシタCaを覆って保護膜60が設けられている。保護膜60は、例えば、厚さが20nm~70nm程度であり、酸化アルミニウム(AlxOy)、酸化マグネシウム(MgxOy)、窒化アルミニウム(AlxNy)、または窒化マグネシウム(MgxNy)で形成されている。保護膜60は、強誘電体キャパシタCaへの水素および水分の侵入を抑制する機能を有する。
【0022】
保護膜60上に、SiO2等からなる絶縁膜62が設けられている。絶縁膜62の厚さは1000nm~1800nm程度である。絶縁膜62および保護膜60を貫通し、底部が上部電極44内に埋め込まれた導電プラグ64が設けられている。導電プラグ64は、絶縁膜62、保護膜60、および上部電極44に接する密着膜66と、密着膜66上に設けられた導電膜68と、を有する。密着膜66は、導電膜68と、絶縁膜62、保護膜60、および上部電極44と、の間の密着性を向上させる機能を有する。密着膜66は、例えば、厚さが2nm~100nm程度であり、大部分が窒化チタン(TiN)により形成され、一部分が酸窒化チタン(TiON)により形成されている。この点の詳細については後述する。導電膜68は、例えばタングステン(W)で形成されている。
【0023】
絶縁膜62上に、プレート線として機能する配線70が設けられている。配線70は、バリア膜72、配線膜74、およびバリア膜76が積層した積層構造を有する。バリア膜72、76は、例えばTiまたはTiNで形成されている。配線膜74は、例えばアルミニウム銅合金等の導電体で形成されている。配線70は導電プラグ64を介して強誘電体キャパシタCaの上部電極44に電気的に接続されている。
【0024】
図2は、実施例における強誘電体キャパシタCa近傍の断面図である。
図2のように、導電プラグ64は、底部が上部電極44内に位置して設けられている。導電プラグ64は、上部電極44の最上層である電極膜58を貫通し、電極膜58の下面に接して設けられた電極膜56まで達している。したがって、導電プラグ64の底面は電極膜56に接している。
【0025】
密着膜66のうち電極膜58と導電膜68とに挟まれた被挟持部分66aには、TiONが多く形成されている。TiONが多く形成された部分を濃いハッチングで図示している(以下の同様な図においても同じ)。密着膜66のその他の部分はほぼTiNにより形成され、TiONはあまり形成されていない。したがって、密着膜66は、導電プラグ64の底面に位置する底面部分66bにおいては電極膜58と導電膜68とに挟まれた被挟持部分66aより酸素濃度が低くなっている。酸素濃度とは、単位面積当たりに含まれる総原子数に対する酸素原子数の割合である。
【0026】
[製造方法]
図3(a)から
図5(b)は、実施例に係る半導体装置100の製造方法を示す断面図である。
図5(b)は、
図5(a)の領域Aの拡大図である。
図3(a)のように、例えばP型シリコン基板である半導体基板10の表層部に、STI(shallow trench isolation)技術を用いて素子分離領域12を形成する。次いで、熱酸化法を用いて半導体基板10の表面にゲート絶縁膜14を形成するためのSiO
2膜を形成した後、CVD(chemical vapor deposition)法を用いてゲート電極Gを形成するためのポリシリコン膜を成膜する。その後、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いてSiO
2膜及びポリシリコン膜をパターニングして、ゲート絶縁膜14およびゲート電極Gを形成する。
【0027】
次いで、CVD法を用いてゲート電極Gを覆うSiO2等の絶縁膜を成膜した後、この絶縁膜をエッチバックすることで、ゲート電極Gの側面を覆うサイドウォール16を形成する。次いで、ゲート電極Gおよびサイドウォール16をマスクとして用い、ソース領域Sおよびドレイン領域Dを形成するためのイオン注入を行う。その後、熱処理を行うことでソース領域Sおよびドレイン領域Dを構成するN型の不純物拡散領域を活性化させる。次いで、サリサイドプロセスを用いて、ソース領域S、ドレイン領域D、およびゲート電極Gの表面にコンタクト抵抗を低下させるためのシリサイド層18を形成する。これにより、半導体基板10にトランジスタTaが形成される。
【0028】
図3(b)のように、CVD法を用いてSiN等の絶縁膜をトランジスタTaの表面に堆積してカバー膜20を形成する。次いで、CVD法を用いてカバー膜20上にSiO
2等の層間絶縁膜22を形成した後、CMP(chemical mechanical polish)法を用いて層間絶縁膜22の表面を平坦化する。次いで、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いてソース領域Sおよびドレイン領域Dに達するコンタクトホールを層間絶縁膜22およびカバー膜20に形成する。次いで、コンタクトホールの側面および底面にスパッタリング法またはCVD法を用いてTi等の密着膜を形成した後、CVD法を用いてコンタクトホールをW等の導電膜で充填する。次いで、CMP法を用いて層間絶縁膜22上に堆積した余剰の密着膜および導電膜を除去することで、導電プラグ32、34を形成する。
【0029】
図3(c)のように、CVD法を用いて層間絶縁膜22上にSiN等の絶縁膜を堆積してエッチストッパ膜24を形成する。次いで、CVD法を用いてエッチストッパ膜24上にSiO
2等の層間絶縁膜26を形成する。次いで、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、層間絶縁膜26およびエッチストッパ膜24における配線38の形成領域にライン状の溝を形成する。次いで、ライン状の溝の側面および底面にスパッタリング法またはCVD法を用いてTi等の密着膜を形成した後、CVD法を用いてライン状の溝にW等の導電膜を充填する。次いで、CMP法を用いて層間絶縁膜26上に堆積した余剰の密着膜および導電膜を除去することで配線38を形成する。
【0030】
次いで、CVD法を用いてSiN等の絶縁膜を層間絶縁膜26上に堆積して酸化抑制膜28を形成する。次いで、CVD法を用いてSiO2等の絶縁膜を酸化抑制膜28上に堆積して緩衝膜30を形成する。次いで、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて緩衝膜30、酸化抑制膜28、層間絶縁膜26、およびエッチストッパ膜24を貫通して導電プラグ32に達するコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホールの側面および底面にスパッタリング法またはCVD法を用いてTi等の密着膜を形成した後、CVD法を用いてコンタクトホールにW等の導電膜を充填する。次いで、CMP法を用いて緩衝膜30上に堆積した余剰の密着膜および導電膜を除去することで、導電プラグ36を形成する。導電プラグ36は、導電プラグ32に接続される。
【0031】
図4(a)のように、緩衝膜30上にPVD(Physical Vapor Deposition)法を用いて例えばTiNからなる密着膜46を成膜する。密着膜46上にPVD法を用いて例えばTiAlNからなる酸素バリア導電膜48を成膜する。酸素バリア導電膜48上にPVD法を用いて例えばIrからなる電極膜50を成膜する。電極膜50上にPVD法またはCVD法を用いて例えばPZTからなる強誘電体膜42を成膜する。その後、強誘電体膜42に対して酸素雰囲気下での熱処理である急速加熱処理を行う。これにより、強誘電体膜42において、余剰元素の脱離および酸化が生じ、強誘電体膜42の結晶化が完了する。
【0032】
次いで、強誘電体膜42上にPVD法を用いて例えばIrOx(1.3≦x≦1.9)からなる酸化イリジウム層である電極膜52を成膜する。電極膜52上にPVD法を用いて例えばIrOα(x<α)からなる酸化イリジウム層である電極膜54を成膜する。電極膜54上にPVD法を用いてIrOβ(x<β、α≠β)からなる酸化イリジウム層である電極膜56を成膜する。電極膜56上に例えばIrからなる金属層である電極膜58を成膜する。酸化イリジウム層の酸素組成比は成膜条件によって制御することができる。例えば、スパッタリング法により酸化イリジウム層を形成する場合では、DCパワーおよび/または成膜温度によって酸素組成比を制御することができる。
【0033】
図4(b)のように、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、電極膜58、電極膜56、電極膜54、電極膜52、強誘電体膜42、電極膜50、酸素バリア導電膜48、および密着膜46をパターニングする。これにより、密着膜46と酸素バリア導電膜48と電極膜50を含む下部電極40と、強誘電体膜42と、電極膜52と電極膜54と電極膜56と電極膜58とを含む上部電極44と、を有する強誘電体キャパシタCaが形成される。
【0034】
強誘電体キャパシタCaを形成した後、エッチング等のプロセスダメージを取り除くために、強誘電体キャパシタCaに対して酸素雰囲気下での熱処理である回復アニール処理を行う。この回復アニール処理において、電極膜58は上面および側面が酸素雰囲気に曝されることになる。このため、電極膜58に含まれるIrは酸化されてIrOyとなる。ここで、Irは貴金属元素であるため、熱処理による酸化でIrOyが形成された場合、IrOyは酸素組成比が理論値より低い不飽和酸化物となり、yはy<1.0となる。なお、yは、y<0.5となってもよいし、y<0.2となってもよい。
【0035】
図5(a)および
図5(b)のように、CVD法またはPVD法を用いて、強誘電体キャパシタCaを覆うように、例えばAl
xO
y、Mg
xO
y、Al
xN
y、またはMg
xN
yからなる保護膜60を形成する。保護膜60上にCVD法を用いて例えばSiO
2を主として含む絶縁膜62を形成する。その後、CMP法を用いて絶縁膜62の表面を平坦化する。この後、絶縁膜62が適切な厚さで残っているかを確かめる残膜測定を行う。電極膜58は酸素組成比が小さい不飽和酸化物のIrO
yであるため、電極膜58を用いて絶縁膜62の厚さを測定することができる。例えば、絶縁膜62に光を入射させ、電極膜58からの光の反射を利用することによって絶縁膜62の厚さを測定することができる。
【0036】
次いで、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、絶縁膜62および保護膜60を貫通し、上部電極44の内部にまで達するコンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、上部電極44の最上層である電極膜58を貫通し、電極膜58下の電極膜56まで達するように形成する。次いで、コンタクトホールの側面および底面にスパッタリング法を用いて例えばTiNからなる密着膜66を形成する。その後、CVD法を用いてコンタクトホールに例えばWからなる導電膜68を充填する。次いで、CMP法を用いて絶縁膜62上に堆積した余剰の密着膜66および導電膜68を除去することで、導電プラグ64を形成する。
【0037】
ここで、密着膜66は電極膜58と電極膜56に接して形成される。電極膜56はIrO
β(x<β)を含み、電極膜58はIrO
y(y<1.0)を含んでおり、酸素組成比が互いに異なる。電極膜56に含まれるIrO
β(x<β)は、上述したようにxが1.3≦x≦1.9であることから、βは少なくとも1.3より大きい。したがって、電極膜58は電極膜56に比べて酸素組成比が低くなっている。酸素組成比が低いとIrとOの結合が弱く、酸素組成比が高いとIrとOの結合が強くなる。なお、上記先行技術文献に記載した特開2006-344684号広報の
図6における上部電極23の上層部分23Bは、スパッタリング法により形成された酸化イリジウム層であり、IrO
1.4の組成を有することから、電極膜58とはIrとOの結合状態が異なっている。
【0038】
IrとOの結合が弱い電極膜58では、導電プラグ64の製造工程における温度上昇によって、電極膜58に含まれる酸素(O)が密着膜66に固相拡散し易くなる。例えば、CVD法を用いて導電膜68を形成する場合、温度が400℃程度まで上昇することから、電極膜58に含まれる酸素が密着膜66に固相拡散し易くなる。また、密着膜66に含まれる金属はTiであり、電極膜58に含まれる金属はIrである。TiはIrに比べてイオン化傾向が大きいことから、この点においても、電極膜58に含まれる酸素が密着膜66に拡散し易くなる。このため、密着膜66の被挟持部分66aは、TiNが拡散された酸素と反応してTiONが形成されるようになり、TiONが多い部分となる。なお、電極膜58は、酸素が密着膜66に拡散することで、IrOz(z<y<1.0)となる。
【0039】
一方、電極膜56は電極膜58に比べてIrとOの結合が強いため、導電プラグ64の製造工程において温度が上昇しても、電極膜56に含まれる酸素は密着膜66に拡散し難い。したがって、密着膜66の底面部分66bは、被挟持部分66aより酸素濃度が低くなる。このため、密着膜66の底面部分66bでは、被挟持部分66aよりもTiONが形成され難い。
【0040】
その後、
図1のように、絶縁膜62の表面にバリア膜72、配線膜74、およびバリア膜76を積層する。次いで、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いてこの積層膜をパターニングすることで配線70を形成する。配線70は、導電プラグ64を介して強誘電体キャパシタCaの上部電極44に電気的に接続される。以上の工程を経ることにより、実施例の半導体装置100が形成される。
【0041】
[比較例]
比較例に係る半導体装置は、導電プラグ64が上部電極44の電極膜58を貫通せず、導電プラグ64の底部が電極膜58内に留まって電極膜56にまで達していない点で実施例の半導体装置100と異なる。その他の構成は実施例の半導体装置100と同じである。
【0042】
図6(a)および
図6(b)は、比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6(b)は、
図6(a)の領域Aの拡大図である。まず、実施例1の
図3(a)から
図4(b)に示した製造工程と同じ製造工程を実施する。なお、このときに、電極膜58は実施例の場合に比べて厚くなっている。その後、
図6(a)および
図6(b)のように、強誘電体キャパシタCaを覆うように保護膜60を形成する。保護膜60上に絶縁膜62を形成する。次いで、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、絶縁膜62および保護膜60を貫通し、上部電極44の内部にまで達するコンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、上部電極44の最上層である電極膜58内に留まり、電極膜56までは達しないようにする。次いで、コンタクトホールの側面および底面にスパッタリング法を用いてTiNからなる密着膜66を形成する。その後、CVD法を用いてコンタクトホールにWからなる導電膜68を充填する。次いで、CMP法を用いて絶縁膜62上に堆積した余剰の密着膜66および導電膜68を除去することで、導電プラグ64を形成する。
【0043】
比較例では、導電プラグ64の底部は、上部電極44の電極膜58内に位置し、電極膜58に接している。上述したように、電極膜58はIrとOの結合が弱いことから、電極膜58に含まれる酸素は密着膜66に拡散し易い。このため、密着膜66のう底面部分66bは、TiNが拡散された酸素と反応してTiONが形成され易い部分となり、TiONを多く含む。したがって、導電膜68の底面と上部電極44との間には多くのTiONが形成されるようになる。
【0044】
その後、図示は省略するが、実施例の半導体装置100と同様に、絶縁膜62の表面にバリア膜72、配線膜74、およびバリア膜76を含む配線70を形成する。
【0045】
比較例では、導電プラグ64の底部は上部電極44の電極膜58内に位置して形成されている。電極膜58は、上述したように、IrとOの結合が弱い。このため、導電プラグ64を形成するときの温度上昇によって電極膜58の酸素が密着膜66に拡散し易く、密着膜66の底面部分66bは、TiNが酸化したTiONを多く含むようになる。導電膜68の底部と上部電極44との間に多くのTiONが形成されることで、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗が上昇する。
【0046】
これに対し、実施例1では、
図5(a)および
図5(b)のように、導電プラグ64は電極膜58を貫通して形成され、導電プラグ64の底部は電極膜56に接している。電極膜56は、上述したように、IrとOの結合が強い。このため、電極膜56に含まれる酸素は導電プラグ64を形成するときの温度上昇によっても密着膜66に拡散し難く、密着膜66の底面部分66bにはTiONが形成され難い。よって、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇を抑えることができる。なお、密着膜66の被挟持部分66aはTiONを多く含む。しかしながら、被挟持部分66aにTiONが多く形成されたとしても、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇への影響は小さい。
【0047】
以上のように、実施例によれば、上部電極44(第2電極)は、IrOzを含む最上層の電極膜58(第1層)と、電極膜58下に設けられ、電極膜58より酸素組成比が高いIrOβを含む電極膜56(第2層)と、を含む。導電プラグ64は、電極膜58を貫通して電極膜56にまで達して設けられている。そして、導電プラグ64を構成する密着膜66のうち底面部分66b(第1部分)は、被挟持部分66a(第2部分)に比べて、酸素濃度が低くなっている。これにより、密着膜66の底面部分66bはTiONが形成され難い。したがって、密着膜66の底面部分66bは、被挟持部分66aに比べて、TiONが少ない。よって、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇が抑制される。導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗を低く抑える点から、密着膜66の底面部分66bの酸素濃度は被挟持部分66aの酸素濃度に比べて、0.5倍以下が好ましく、0.3倍以下がより好ましく、0.1倍以下が更に好ましい。
【0048】
また、実施例では、
図4(a)のように、下部電極40となる密着膜46、酸素バリア導電膜48、および電極膜50を成膜する。電極膜50上に強誘電体膜42を成膜する。強誘電体膜42上に、Irの金属層である最上層の電極膜58と、電極膜58下に設けられ、Irの酸化層である電極膜56とを含む、上部電極44となる電極膜52~58を成膜する。
図4(b)のように、電極膜58、電極膜56、電極膜54、電極膜52、強誘電体膜42、電極膜50、酸素バリア導電膜48、および密着膜46をパターニングして強誘電体キャパシタCaを形成した後、酸素雰囲気下で熱処理する。その後、
図5(a)および
図5(b)のように、強誘電体キャパシタCaを覆う絶縁膜62を形成した後、絶縁膜62および電極膜58を貫通して電極膜56に達する導電プラグ64を形成する。これにより、導電プラグ64を構成する密着膜66のうち底面部分66bは、被挟持部分66aに比べて、酸素濃度が低くなる。よって、密着膜66の底面部分66bはTiONが形成され難くなり、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇が抑制される。
【0049】
また、実施例では、上部電極44の電極膜58に含まれる酸化イリジウムはIrOz(z<1.0)の組成を有し、電極膜56に含まれる酸化イリジウムはIrOβ(β>z)の組成を有する。この場合、電極膜58はIrとOの結合が弱くなり、導電プラグ64を形成するときの温度上昇によって電極膜58の酸素が密着膜66に拡散し易くなる。よって、密着膜66のTiNが酸化してTiONが形成され易くなる。しかしながら、この場合でも、電極膜58を貫通して電極膜56にまで達する導電プラグ64とすることで、密着膜66の底面部分66bはTiONが形成され難くなり、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇が抑制される。また、上部電極44の最上層である電極膜58に含まれる酸化イリジウムをIrOz(z<1.0)の組成とすることで、研磨処理した後の絶縁膜62の厚さを、電極膜58を用いて測定することができる。なお、電極膜56に含まれる酸化イリジウムは、IrとOの結合が強くなる点から、IrOβの組成のβが、β>1.3の場合が好ましく、β>1.6の場合がより好ましく、β>1.8の場合が更に好ましい。
【0050】
また、実施例では、密着膜66はTiNを含んでいる。この場合、電極膜58の酸素が密着膜66に拡散されると抵抗の高いTiONが形成される。しかしながら、この場合でも、電極膜58を貫通して電極膜56にまで達する導電プラグ64とすることで、密着膜66の底面部分66bはTiONが形成され難くなる。よって、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇が抑制される。また、密着膜66がTiNを含むことで、導電膜68と、絶縁膜62および上部電極44と、の間の密着性が向上する。
【0051】
なお、実施例において、密着膜66は、TiNを含む場合に限られず、金属Tiを含む場合でもよい。すなわち、密着膜66は、金属TiおよびTiNの少なくとも一方を含む場合でもよい。密着膜66が金属Tiを含む場合、密着膜66に酸素が拡散されると酸化チタン(TiO)が形成される。この場合でも、密着膜66の底面部分66bにTiOが多く形成されると、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗が上昇してしまう。しかしながら、電極膜58を貫通して電極膜56にまで達する導電プラグ64とすることで、密着膜66の底面部分66bにTiOが形成され難くなるため、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇が抑制される。
【0052】
また、実施例では、
図1のように、上部電極44は、最上層の電極膜58と、電極膜58下に設けられた電極膜56と、電極膜56下に設けられた電極膜54(第3層)と、電極膜54下に設けられた電極膜52(第4層)と、を含む。電極膜58は、IrO
yを含む。電極膜56は、電極膜58より酸素組成比が高いIrO
βを含む。電極膜54は、電極膜58より酸素組成比が高くかつ電極膜56とは酸素組成比が異なるIrO
αを含む。電極膜52は、電極膜58より酸素組成比が高くかつ電極膜56、54より酸素組成比が低いIrO
xを含む。上部電極44が電極膜52を含むことで、上部電極44と強誘電体膜42の界面において強誘電体膜42と上部電極44の間で酸化イリジウムの相互拡散を抑制し、デートレイア(Dead Layer、強誘電体性がない界面層)を薄くなるようにコントロールできる。電極膜54と電極膜56を含むことで、強誘電体キャパシタCaへの還元雰囲気によるダメージを抑制できる。電極膜58を含むことで、強誘電体キャパシタCaを覆って設けられた絶縁膜62を研磨処理した後の厚さを測定することができる。また、上部電極44が酸化イリジウムを含むことで、イリジウムは触媒作用が比較的弱いことから強誘電体膜42の特性が劣化し難く、酸化イリジウムから強誘電体膜42に酸素が供給されることから特性の劣化が抑制される。
【0053】
[実験]
図7(a)および
図7(b)は、実験を行った第1試料および第2試料の強誘電体キャパシタCa近傍の断面図である。
図7(a)のように、第1試料では、導電プラグ64の底面を上部電極44の電極膜56と電極膜58の界面に一致させた。したがって、導電プラグ64の底面と、電極膜56と電極膜58の界面と、の間の距離は0nmである。
図7(b)のように、第2試料では、導電プラグ64の底面を電極膜56と電極膜58の界面よりも電極膜56側に位置するようにした。したがって、密着膜66の底面部分66bは、電極膜56と電極膜58の界面よりも電極膜56側に位置して電極膜56内に設けられている。密着膜66の底面部分66bと、電極膜56と電極膜58の界面と、の間の距離Lは10nmとした。
【0054】
第1試料および第2試料の各膜は実施例に示した材料を用いた。また、第1試料および第2試料は
図3(a)から
図5(b)に示した製造方法により作製した。
【0055】
複数の第1試料および複数の第2試料を作製し、各々に対して、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗を測定した。
図8は、第1試料および第2試料における導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の測定結果である。
図8の横軸は、測定した試料であり、縦軸はコンタクト抵抗である。
図8のように、第1試料では、コンタクト抵抗が高くなる試料があったが、第2試料では、全ての試料においてコンタクト抵抗が低くなった。
【0056】
したがって、導電プラグ64と上部電極44との間のコンタクト抵抗の上昇を抑制するために、密着膜66の底面部分66bは、電極膜58の下面より電極膜56側に位置して電極膜56の内部に設けられていることが好ましい。また、密着膜66の底面部分66bと電極膜58の下面との間の距離Lは、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましい。なお、導電プラグ64の製造容易性の点からは、距離Lは、30nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0057】
なお、実施例において、上部電極44の電極膜52、54、56、58は、金属元素の酸化物として酸化イリジウムを含む場合を例に示したが、この場合に限られず、導電性を有すれば、その他の金属元素の酸化物を含む場合でもよい。例えば、ストロンチウム、ルテニウム、またはランタンの酸化物を含む場合でもよい。密着膜66は金属TiおよびTiNの少なくとも一方を含む場合、すなわち金属元素としてTiを含む場合を例に示したが、酸素と反応することで抵抗率が増加するその他の金属元素を含む場合でもよい。例えばクロム(Cr)を含む場合でもよい。
【0058】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。