(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112917
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムおよび太陽光発電パネル発電効率低下抑制方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20230807BHJP
H02S 40/10 20140101ALI20230807BHJP
【FI】
H02S50/00
H02S40/10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014942
(22)【出願日】2022-02-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】519459975
【氏名又は名称】イシイ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】石井 誠之
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151JA15
5F151KA02
5F251JA15
5F251KA02
(57)【要約】
【課題】 太陽光発電パネルの発電効率低下を確実(人間の目視など感覚的なものではなく、客観的な数値で判断できること)に抑制することにある。
【解決手段】 抑制対象となる太陽光発電パネル50の設置角度と同一角度・同一部材で、設置時又は清掃時を共通にする表面材51及び当該表面材51を透過する太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第1光量測定部10と、前記同角度で直接に太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第2光量測定部20と、を設け、第1光量測定部10と第2光量測定部20で測定した同時刻の各光量を比較することで、太陽光発電パネル50の表面材の汚れを数値化し、太陽光発電パネル50の清掃の適期を確認する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルの発電効率の低下を抑制するための太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムであって、
抑制対象となる太陽光発電パネルの設置角度と同一角度・同一部材で、設置時又は清掃時を共通にする表面材及び当該表面材を透過する太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第1光量測定部と、
前記同角度で直接に太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第2光量測定部と、
を設け、第1光量測定部と第2光量測定部で測定した同時刻の各光量を比較することで、太陽光発電パネルの表面材の汚れを数値化し、太陽光発電パネル清掃の適期を確認することを特徴とした太陽光発電パネル発電効率低下抑制システム。
【請求項2】
第1光量測定部の表面材は、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に設けられることを特徴とした請求項1記載の太陽光発電パネル発電効率低下抑制システム。
【請求項3】
第1光量測定部の光量センサーは、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に回動自在に設けられ、第2光量測定部の光量センサーとしても兼用することを特徴とした請求項1又は2記載の太陽光発電パネル発電効率低下抑制システム。
【請求項4】
太陽光発電パネルの発電効率の低下を抑制するための太陽光発電パネル発電効率低下抑制方法であって、
抑制対象となる太陽光発電パネルの設置角度と同一角度・同一部材で、設置時又は清掃時を共通にする表面材及び当該表面材を透過する太陽光の光量を測定する光量センサーを備えて、当該光量センサーの測定した光量を出力する第1光量出力ステップと、
前記同角度で直接に太陽光の光量を測定する光量センサーを備えて、当該光量センサーの測定した光量を出力する第2光量出力ステップと、
第1光量出力ステップと第2光量出力ステップで出力した同時刻の各光量を比較することで、太陽光発電パネルの表面材の汚れを数値化し、太陽光発電パネル清掃の適期を算出する清掃適期算出ステップと、
を有することを特徴とした太陽光発電パネル発電効率低下抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、太陽光発電パネルの発電効率低下を抑制するためのシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電パネルの設置の条件として、太陽光が最大限に当たる設置場所として様々な場所に設置されているが、設置時からの発電効率低下の最大の要因として大気による汚染が考えられる。太陽光発電パネルの基本性能として、表面の汚染物質は降雨により洗い流されるよう設計されている。太陽光発電パネルの設置角度にもよるが、大気汚染による発電性能・発電量の低下は免れ得ない。
【0003】
その大気汚染による太陽光発電パネルの発電効率の低下要因として、大気中の土埃、鳥の糞、粉塵等の他、近年では数年間隔で降雨・長雨、曇天等、時期により緑藻等の大量発生等があり、それらによって大幅な発電効率の低下を招いている(汚れ具合は、ビニールハウスなどの屋根を見れば一目瞭然である)。
【0004】
この太陽光発電パネルの汚れに対しては、定期的にメンテナンス業者あるいは設置者等による清水・洗剤などの洗浄・清掃を行うことで、発電効率の低下を補っている。そして、太陽光発電パネルの洗浄・清掃技術については、これまでにも様々なものが開発・開示されている(特許文献1及び特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-181711号公報
【特許文献2】特開2014- 29899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、太陽光発電パネルの洗浄・清掃技術は種々存在しているとしても、その時期については、必ずしも洗浄・清掃の適期とはならない場合が多い。そのため、太陽光発電パネルの発電効率低下を効果的に抑制しているとは言い難い状況でもある。
また、太陽光発電パネル自体の設置場所・設置角度・設置規模にもよるが、メンテナンスの困難な位置或いは汚れを確認できない位置(例えば、建物の屋根等に設置された太陽光発電パネルなど)では定期的なメンテナンスあるいは洗浄・清掃の実施は非効率なものとなり、結果的に効果的な発電効率低下の抑制はできていない。
【0007】
なお、太陽光発電パネルへの洗浄・清掃はパネル表面(表面材)の傷を防止するため、洗浄用ファイバーブラシなどが推奨されているが、上記する鳥の糞、緑藻などのこびりつき汚れは傷を付けないファイバーブラシなどでは落とせないため、回転式ブラシ等により洗浄する場合がある。
しかし、これ自体がパネル表面への傷付き原因となり、傷の部分が微細な埃だまりとなり、汚れやすさを増長させる元となり得る。
【0008】
そもそも、太陽光発電パネル表面(受光面)は、黒色あるいは深いブルー色など光自体を吸収する色の濃い製品が主流となっており、汚れが目立たない。一方、発電効率を回復するための洗浄・清掃は定期的なメンテナンスで行うか、あるいは、汚れが目立つようになってから行うため、太陽光発電パネルに対する発電ロスが不明瞭である。
【0009】
そこで、本願発明者は、太陽光発電パネルの発電効率低下を確実(人間の目視など感覚的なものではなく、客観的な数値で判断できること)に抑制することを目的に、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の第1の発明は、太陽光発電パネルの発電効率の低下を抑制するための太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムであって、抑制対象となる太陽光発電パネルの設置角度と同一角度・同一部材で、設置時又は清掃時を共通にする表面材及び当該表面材を透過する太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第1光量測定部と、前記同角度で直接に太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第2光量測定部と、を設け、第1光量測定部と第2光量測定部で測定した同時刻の各光量を比較(観測比較)することで、太陽光発電パネルの表面材の汚れを数値化し、太陽光発電パネル清掃の適期を確認することを特徴としたものである。
ここで、「第1光量測定部と第2光量測定部で測定した同時刻の各光量」とは、好ましくは厳密な意味での同時刻であるが、周囲の環境が大きく変化しない限り、多少のタイムラグがあっても構わない。
第2の発明は、第1光量測定部の表面材が、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に設けられることを特徴とした同太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムである。
第3の発明は、第1光量測定部の光量センサーが、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に回動自在に設けられ、第2光量測定部の光量センサーとしても兼用することを特徴とした同太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムである。
第4の発明は、太陽光発電パネルの発電効率の低下を抑制するための太陽光発電パネル発電効率低下抑制方法であって、抑制対象となる太陽光発電パネルの設置角度と同一角度・同一部材で、設置時又は清掃時を共通にする表面材及び当該表面材を透過する太陽光の光量を測定する光量センサーを備えて、当該光量センサーの測定した光量を出力する第1光量出力ステップと、前記同角度で直接に太陽光の光量を測定する光量センサーを備えて、当該光量センサーの測定した光量を出力する第2光量出力ステップと、第1光量出力ステップと第2光量出力ステップで出力した同時刻の各光量を比較(観測比較)することで、太陽光発電パネルの表面材の汚れを数値化し、太陽光発電パネル清掃の適期を算出する清掃適期算出ステップと、を有することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)第1光量測定部で抑制対象となる太陽光発電パネルと同じ状態(汚れ具合も含む)の表面材を透過する太陽光の光量を測定できる。この測定値と表面材が無く直接に太陽光の光量を測定する第2光量測定部の測定値とを比較(観測比較)すれば、表面材の汚れ具合が客観的数値となって表れ、感覚に頼らず当該太陽光発電パネル清掃の適期を効果的に把握できる。
(2)第1光量測定部の表面材が、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に設けられることで、これによって得られる測定値は、抑制対象となる太陽光発電パネルの表面材そのものの数値である。従って、表面材の汚れ具合についてのより正確な数値として測定できる。
(3)第1光量測定部の光量センサーが、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に回動自在に設けられ、第2光量測定部の光量センサーとしても兼用することで、光量センサーの違いによる誤差も無く、効率的な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムの実施形態を説明する説明図(1)。
【
図2】太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムの実施形態を説明する説明図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明に係る太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に図示するように、抑制対象となる太陽光発電パネル50の一部に、同パネル50の表面材51を透過する太陽光の光量を測定するための第1光量測定部10を設ける。第1光量測定部10には、光量の測定が可能な光量センサー30を備えている。
【0014】
この光量センサー30は、太陽光発電パネル50の一部に回動自在に設けられている。
図2に図示するように、光量センサー30を回動させて、太陽光発電パネル50の外側へ移動すると、表面材51を介さない直射日光を受けることができる。そして、これが直接に太陽光の光量を測定するための第2光量測定部20となる。
【0015】
第1光量測定部10は、太陽光発電パネル50の一部に設けられているので、太陽光発電パネル50の設置角度と同一であり、同一部材である。また、設置時又は清掃時も共通である。従って、第1光量測定部10で測定した光量は、太陽光発電パネル50が発電のために利用できた光量と一致する。
一方、第2光量測定部20も、太陽光発電パネル50の一部に回動自在に設けられた光量センサーを太陽光発電パネル50外に移動させたものであるので、太陽光発電パネル50(第1光量測定部10)と設置角度が同角度となる。従って、第2光量測定部20で測定した光量は、太陽光発電パネル50が受光した光量と一致する。
【0016】
これにより、第1光量測定部と第2光量測定部で測定した同時刻の各光量を比較(観測比較)することで、太陽光発電パネル50の表面材51の透過率低下を数値で把握できる。数値の解析によって、それが内在的要因(品質の経年劣化等)以外の汚れ等による外在的要因であれば、まさにそれが太陽光発電パネル50を清掃する適期となり得る。
第1光量測定部と第2光量測定部で測定した数値から太陽光発電パネル50の清掃適期を算出することになるが、本願発明の太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムによってこの数値(データ)が集積され、より詳細且つ効果的な清掃適期を算出できるようになる。
【0017】
なお、図示した太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムでは、1台の光量センサー30が第1光量測定部10と第2光量測定部20の光量測定を担っているので、厳密な意味での同時刻の光量測定は不可能である。しかしながら、測定部(第1光量測定部10と第2光量測定部20)周辺に大きな環境的な変化(急な雷雨、倒木等)がなければ、多少のタイムラグは測定結果に実質的な影響を与えない。一方で、同一の機器(光量センサー)で測定するので、機器間による誤差は生じず、正確な数値を検出できるメリットがある。
また、第1光量測定部10と第2光量測定部20に2台の光量センサーを備えることで、同時刻の光量測定は可能になる。すなわち、同時刻に一方の光量センサーは第1光量測定部10で、他方の光量センサーは第2光量測定部20でそれぞれ光量測定を行う方法がある。
【0018】
また、第1光量測定部は
図1に図示するような抑制対象となる太陽光発電パネル50内の一部に設けられるものに限られず、太陽光発電パネル50外にあって、同パネルの設置角度と同一角度で、表面材を同一部材とするものであってもよい。そのような第1光量測定部であれば、太陽光発電パネル50(=表面材51)の場合と実質的に同じ光量を測定することになるからである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本願発明は、太陽光発電パネルの汚れによる発電効率の低下を抑制する装置又は方法として、太陽光発電パネルの発電ロスを最小限に確実に抑え、発電性能の維持を図り、発電効率の最大化を実現することで、低炭素社会へ向けて、幅広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0020】
10 第1光量測定部
20 第2光量測定部
30 光量センサー
50 太陽光発電パネル
51 表面材(受光面)
【手続補正書】
【提出日】2022-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルの発電効率の低下を抑制するための太陽光発電パネル発電効率低下抑制システムであって、
抑制対象となる太陽光発電パネルの設置角度と同一角度・同一部材で、設置時又は清掃時を共通にする表面材及び当該表面材を透過する太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第1光量測定部と、
前記同角度で直接に太陽光の光量を測定する光量センサーを備えた第2光量測定部と、
を設け、第1光量測定部と第2光量測定部で測定した同時刻の各光量を比較することで、太陽光発電パネルの表面材の汚れを数値化し、太陽光発電パネル清掃の適期を確認するとともに、第1光量測定部の光量センサーは、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に回動自在に設けられ、第2光量測定部の光量センサーとしても兼用することを特徴とした太陽光発電パネル発電効率低下抑制システム。
【請求項2】
第1光量測定部の表面材は、抑制対象となる太陽光発電パネルの一部に設けられることを特徴とした請求項1記載の太陽光発電パネル発電効率低下抑制システム。