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▶ シャープ福山レーザー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112922
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02255 20210101AFI20230807BHJP
   H01S 5/024 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01S5/02255
H01S5/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014952
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】319006036
【氏名又は名称】シャープ福山レーザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸司
(72)【発明者】
【氏名】小野 高志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑平
(72)【発明者】
【氏名】増井 克栄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘一
(72)【発明者】
【氏名】香川 利雄
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MC01
5F173MC12
5F173MD14
5F173MD35
5F173ME03
5F173ME15
5F173ME22
5F173ME31
5F173ME34
5F173ME44
5F173ME57
5F173MF28
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】平面視における基板上での複数のサブマウントの占有面積を小さくすることができる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、基板と、前記基板上に設けられた複数のサブマウントと、前記複数のサブマウントにそれぞれ搭載され、かつ、複数のレーザー光をそれぞれ発する複数のレーザー発光素子と、を備え、前記複数のレーザー発光素子の複数の長さ方向は、それぞれ、前記複数のサブマウントの複数の長さ方向に平面視において交差する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた複数のサブマウントと、
前記複数のサブマウントにそれぞれ搭載され、かつ、複数のレーザー光をそれぞれ発する複数のレーザー発光素子と、を備え、
前記複数のレーザー発光素子の複数の長さ方向は、それぞれ、前記複数のサブマウントの複数の長さ方向に平面視において交差する、発光装置。
【請求項2】
前記複数のレーザー発光素子は、1対1の関係で、前記複数のサブマウントに搭載された、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
平面視において、前記複数のサブマウントの複数の長さ方向は、互いに平行である、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数のレーザー発光素子のそれぞれに関しては、平面視において、幅方向における一方の角部が、前記幅方向における他方の角部よりも多く、前記複数のサブマウントのそれぞれの長さ方向における端面から突出した、請求項1~3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数のレーザー発光素子は、仮想平面に対して、鏡面対称に配置された、請求項1~4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記複数のレーザー光を反射するミラー部をさらに備えた、請求項1~5のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記基板は、凹部を有し、
前記ミラー部は、前記凹部に設けられた、請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記ミラー部で反射した前記複数のレーザー光の波長を変換して透過させる波長変換部材をさらに備えた、請求項6または7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記波長変換部材における前記複数のレーザー光の照射領域において、前記複数のレーザー光のうちの1つのレーザー光の少なくとも一部が前記複数のレーザー光のうちの他のレーザー光の少なくとも一部に重なるように、前記複数のレーザー光が前記波長変換部材に照射される、請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記波長変換部材において前記複数のレーザー光の複数の照射領域の複数の長さ方向が互いに平行になるように、前記複数のレーザー光が前記波長変換部材に照射される、請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
複数のレーザー光をそれぞれ発する複数のレーザー発光素子と、
前記複数のレーザー光を反射するミラー部と、
前記ミラー部で反射された前記複数のレーザー光を透過させる窓部材と、
前記窓部材を透過した前記複数のレーザー光が照射される波長変換部材と、
前記窓部材を取り囲みながら、前記複数のレーザー素子および前記ミラー部を覆うように設けられたキャップ部材と、を備え、
前記キャップ部材は、前記波長変換部材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する、発光装置。
【請求項12】
前記キャップ部材は、前記窓部材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する、請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記キャップ部材の熱伝導率は、50W/(m・K)以上である、請求項11または12に記載の発光装置。
【請求項14】
前記キャップ部材は、金属、金属合金、または、シリコンからなる、請求項11~13のいずれかに記載の発光装置。
【請求項15】
前記金属は、アルミニウムまたは銅であり、前記金属合金は、アルミニウム合金または銅合金である、請求項14に記載の発光装置。
【請求項16】
前記キャップ部材は、前記波長変換部材に接触している、請求項11~15のいずれかに記載の発光装置。
【請求項17】
前記キャップ部材は、前記複数のレーザー光の外周部の進行を遮るように配置されている、請求項11~16のいずれかに記載の発光装置。
【請求項18】
前記波長変換部材における前記複数のレーザー光の照射領域において、前記複数のレーザー光のうちの1つのレーザー光の少なくとも一部が前記複数のレーザー光のうちの他のレーザー光の少なくとも一部に重なるように、前記複数のレーザー光が前記波長変換部材に照射された、請求項11~16のいずれかに記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、複数のレーザー発光素子から発せられた複数のレーザー光を、1つのミラー部で反射させた後、波長変換部材において重ね合わせることにより、レーザーの出力を向上させる発光装置の開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/251233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示された技術によれば、複数のレーザー光を波長変換部材で重ね合わせるように複数のレーザー発光素子を設置する。特許文献1では、複数のレーザー発光素子の複数の長手方向がそれぞれ複数のサブマウントの長手方向に平行な状態で設けられている。また、複数のレーザー発光素子の複数の長手方向がミラー部でほぼ同じ位置を指すように、複数のサブマウント自体が基板上にそれらの長手方向が平面視において互いに交差するように配置されている。このため、平面視における基板上での複数のサブマウントの占有面積が大きくなってしまい、結果として、発光装置全体の小型化に支障をきたすという問題が生じる(問題1)。
【0005】
本開示は、前述の問題1に鑑みなされたものである。本開示の第1の目的は、平面視における基板上での複数のサブマウントの占有面積を小さくすることができる発光装置を提供することである。
【0006】
また、上記した特許文献1に開示された技術によれば、複数のレーザー光を重ね合わせたことに起因して波長変換部材での発熱量が大きくなってしまう。その結果、波長変換部材での発熱に起因して発光装置の不具合が発生するという問題が生じる(問題2)。
【0007】
本開示は、前述の問題2に鑑みなされたものである。本開示の第2の目的は、波長変換材での発熱に起因した不具合の発生を抑制することができる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題1を解決するために、本開示の発光装置の第1の態様は、基板と、前記基板上に設けられた複数のサブマウントと、前記複数のサブマウントにそれぞれ搭載され、かつ、複数のレーザー光をそれぞれ発する複数のレーザー発光素子と、を備え、前記複数のレーザー発光素子の複数の長さ方向は、それぞれ、前記複数のサブマウントの複数の長さ方向に平面視において交差する。
【0009】
上述の問題2を解決するために、本開示の発光装置の第2の態様は、複数のレーザー光をそれぞれ発する複数のレーザー発光素子と、前記複数のレーザー光を反射するミラー部と、前記ミラー部で反射された前記複数のレーザー光を透過させる窓部材と、前記窓部材を透過した前記複数のレーザー光が照射される波長変換部材と、前記窓部材を取り囲みながら、前記複数のレーザー素子および前記ミラー部を覆うように設けられたキャップ部材と、を備え、前記キャップ部材は、前記波長変換部材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1の発光装置の横断面図であって、図2および図3のI-I線断面図である。
図2】実施の形態1の発光装置の縦断面図であって、図1および図3のII-II線断面図である。
図3】実施の形態1の発光装置の縦断面図であって、図1および図2のIII-III線断面図である。
図4】実施の形態1の発光装置の平面視におけるレーザー発光素子の長さ方向の基準方向に対する回転角と、レーザー発光素子同士の間の距離との関係を示すグラフである。
図5】実施の形態1の発光装置の波長変換材料における複数のレーザー光の複数の照射領域を示す図である。
図6】実施の形態1の発光装置の位置とビーム強度との関係を示す図であって、図5のA-B線上のレーザー光のビーム強度の分布を示す。
図7】実施の形態1の発光装置のレーザー発光素子およびサブマウントの製造工程を説明するための図である。
図8】比較例の発光装置の製造工程を説明するための第1図である。
図9】比較例の発光装置の製造工程を説明するための第2図である。
図10】実施の形態1の変形例1の発光装置の横断面図である。
図11】実施の形態1の変形例2の発光装置の横断面図である。
図12】実施の形態2の発光装置を縦断面図であって、図10のXII-XII線断面図である。
図13】実施の形態2の発光装置の波長変換材料における複数のレーザー光の複数の照射領域を示す図である。
図14】実施の形態3の発光装置の横断面図であって、図15のXIV-XIV線断面図である。
図15】実施の形態3の発光装置の縦断面図であって、図14のXV-XV線断面図である。
図16】実施の形態4の発光装置の縦断面図であって、図10のXVI-XVI線断面図である。
図17】実施の形態5の発光装置の縦断面図である。
図18】実施の形態6の発光装置の縦断面図であって、図1のXVIII-XVIII線断面図である。
図19】実施の形態6の発光装置のミラー部の斜視図である。
図20】実施の形態6の変形例の発光装置の縦断面図であって、図1のXX-XX線断面図である。
図21】実施の形態6の変形例の発光装置のミラー部の斜視図である。
図22】実施の形態7の発光装置の横断面図である。
図23】実施の形態7の変形例1の発光装置の横断面図である。
図24】実施の形態7の変形例2発光装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の発光装置を、図面を参照しながら説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、同一又は同等の要素の重複する説明は繰り返さない。
【0012】
本明細書においては、平面視における「長さ方向」という用語は、長方形の長辺方向に沿った方向を含むとともに、長さと幅とを特定できるような平面形状の長さ方向に沿った方向(または平行な方向)を含む。本明細書においては、平面視における「幅方向」という用語は、長方形の短辺方向に沿った方向(または平行な方向)を含むとともに、長さと幅とを特定できるような平面形状の幅方向に沿った方向を含む。
【0013】
本明細書においては、「平行に」という用語は、数学的に平行であることを意味するものではなく、設計上で平行に製造することを意図されているものであって、製造上の誤差を含む平行であってもよいことを意味している。本明細書においては、「直交する」という用語は、数学的に直交することを意味するものではなく、設計上で直交するように製造することを意図されているものであって、製造上の誤差を含むように直交するものであってもよいことを意味している。
【0014】
本明細書においては、「直方体」および「長方形」という用語は、幾何学的な意味での直方体および長方形を意味しない。本明細書においては、直方体および長方形の角部が面取りされていたり丸みをおびていたりする形状は、直方体および長方形に含まれるものとする。
【0015】
本明細書において、「鏡面対称」という用語は、幾何学的な鏡面対称だけでなく、設計上で鏡面対称に製造することを意図されているものであって、製造上生じ得る誤差を含む状態で、ほぼ鏡面対称に設けられているものも含むことを意味している。
【0016】
実施の形態の各図面においては、レーザー光Lの軌跡が点線で示されているものもある。これは、本来、レーザー光Lは拡がりながら直進するものであるからである。しかしながら、図面の中には、簡略化のために、レーザー光Lの広がりの中心の光線の軌跡のみが矢印で示されているものもある。
【0017】
(実施の形態1)
図1図10を用いて、実施の形態1の発光装置Pを説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の発光装置Pの横断面図であって、図2および図3のI-I線断面図である。図2は、本実施の形態の発光装置Pの縦断面図であって、図1および図3のII-II線断面図である。図3は、本実施の形態の発光装置Pの縦断面図であって、図1および図2のIII-III線断面図である。
【0019】
図1図3に示されるように、発光装置Pは、基板S、複数のサブマウントSM、複数のレーザー発光素子LD、ミラー部M、窓部材W、波長変換部材WC、およびキャップ部材CAを備えている。
【0020】
基板Sは、平板状の部材であり、本実施の形態においては、主表面PSから所定の深さにかけて凹部COを有する。複数のサブマウントSMは、基板S上に設けられている。複数のサブマウンドSMは、サブマウントSM1とサブマウントSM2と有している。サブマウントSM1およびサブマウントSM2のいずれも、直方体をなし、平面視において、長方形をなしている。なお、基板Sは、平板上の外周部から立ち上がる側壁部を有するものであってもよい。
【0021】
複数のレーザー発光素子LDは、それぞれ、複数のサブマウントSMにそれぞれ搭載されている。具体的に言うと、複数のレーザー発光素子LDは、1対1の関係で、複数のサブマウントSMに搭載されている。複数のレーザー発光素子LDは、レーザー発光素子LD1およびレーザー発光素子LD2を有する。
【0022】
レーザー発光素子LD1は、その長さ方向に平行にレーザー光L1を発する。レーザー発光素子LD2も、その長さ方向に平行にレーザー光L2を発する。レーザー発光素子LD1およびLD2は、いずれも、半導体発光素子である。
【0023】
複数のレーザー発光素子LD1およびLD2は、仮想平面に対して、鏡面対称に配置されている。前述の仮想平面は、たとえば、ミラー部Mの長手方向に垂直な面であって、レーザー発光素子LD1とレーザー発光素子LD2との間に存在すると想像される面である。仮想平面は、鏡面対称の基準となる面である。凹部COに設けられているミラー部Mは、長方形の反射面MSを有している。ミラー部Mは、複数のレーザー光LD1およびLD2のそれぞれを反射面MSで反射する。
【0024】
窓部材Wは、ミラー部Mで反射された複数のレーザー光L1およびL2を透過させる透明部材で形成されている。波長変換部材WCは、ミラー部Mで反射した複数のレーザー光L1およびL2のそれぞれの波長を変換して透過させる。波長変換部材WCは、蛍光体を含む。波長変換部材WCは、レーザー光Lの波長を変換する。
【0025】
キャップ部材CAは、窓部材Wを取り囲みながら、複数のレーザー素子LDおよびミラー部Mを覆うように設けられている。キャップ部材CAは、基板Sの主表面PSに対向する天井部Tと、基板Sの主表面PSから天井部Tまで立ち上がる側壁部SWと、を備えている。
【0026】
キャップ部材CAは、波長変換部材WCの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。キャップ部材CAは、窓部材Wの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有している。キャップ部材CAの熱伝導率は、50W/(m・K)以上である。キャップ部材CAは、金属、金属合金、または、シリコンからなる。金属は、例えばアルミニウムまたは銅であり、金属合金は、例えばアルミニウム合金または銅合金である。
【0027】
キャップ部材CAは、波長変換部材WCに接触している。キャップ部材CAは、複数のレーザー光L1およびL2の外周部の進行を遮るように配置されている。なお、キャップ部材CAは、天井部Tと側壁部SWとを有しているが、基板Sが基板Sの外周部から立ち上がる側壁部を有している場合には、天井部Tのみを有する板形状または蓋形状をなしていてもよい。
【0028】
複数のレーザー発光素子LDの複数の長さ方向は、それぞれ、複数のサブマウントSMの複数の長さ方向(X軸方向)に平面視において交差する。つまり、レーザー発光素子LD1の長さ方向は、サブマウントSM1の長さ方向(X軸方向)に平面視において交差する。レーザー発光素子LD2の長さ方向は、サブマウントSM2の長さ方向(X軸方向)に平面視において交差する。また、複数のサブマウントSMの複数の長さ方向(X軸方向)は、平面視において互いに平行である。さらに、複数のサブマウントSMの複数の長さ方向(X軸方向)のそれぞれがミラー部Mの長さ方向(Y軸方向)に平面視において直交する。
【0029】
より具体的に言うと、発光装置Pは、次のような構成を有している。
【0030】
平面視において長方形をなすレーザー発光素子LD1は、平面視において長方形をなすサブマウントSM1の上に半田を介して載置されている。レーザー発光素子LD1は、レーザー発光素子LD1の長さ方向、すなわち長方形の長辺方向に平行にレーザー光L1を発する。平面視において長方形をなすレーザー発光素子LD2は、平面視において長方形をなすサブマウントSM2の上に半田を介して載置されている。レーザー発光素子LD2は、レーザー発光素子LD2の長さ方向、すなわち長方形の長辺方向に平行にレーザー光L2を発する。
【0031】
発光装置Pの平面視において、レーザー発光素子LD1の長さ方向、すなわち、レーザー光L1の進行方向が、サブマウントSM1の長さ方向(X軸方向)に対して角度θ1だけ傾いている。また、発光装置Pの平面視において、レーザー発光素子LD2の長さ方向、すなわちレーザー光L2の進行方向が、サブマウントSM2の長さ方向(X軸方向)に対して角度θ2だけ傾いている。角度θ1は、角度θ2と絶対値が同一であるが、正負の符号が逆である。つまり、θ2=-θ1である。なお、θ1とθ2との絶対値は、厳密な意味で同一でなくてもよく、同一になるように意図されているのであれば、製造上の誤差に起因した相違を有していてもよい。
【0032】
レーザー発光素子LD1に関しては、平面視において、幅方向、すなわち長方形の短辺方向における一方の角部A1Lが、その幅方向における他方の角部A1Rよりも多く、サブマウントSM1の長さ方向における端面E1から突出している。また、レーザー発光素子LD2に関しては、平面視において、幅方向、すなわち長方形の短辺方向における一方の角部A2Rが、その幅方向における他方の角部A2Lよりも多く、サブマウントSM2の長さ方向における端面E2から突出している。これによれば、レーザー発光素子LD1およびLD2は、それぞれ、レーザー光L1およびL2の出射点が、それぞれ、サブマウントSM1およびSM2の端面E1およびE2よりも突出した位置にある。そのため、サブマウントSM1およびSM2は、それぞれ、出射点から広がりながら進行するレーザー光L1およびL2の進路から外れた位置に設けられているため、レーザー光L1およびL2の進行を阻害しない。
【0033】
サブマウントSM1の長さ方向(X軸方向)が、ミラー部Mの反射面MSの長さ方向(Y軸方向)に対して平面視において直交する。そのため、発光装置Pの平面視において、レーザー発光素子LD1の長さ方向は、ミラー部Mの反射面MSの長さ方向(Y軸方向)に直交するミラー部Mの短辺方向(つまりサブマウントSM1の長さ方向でありX軸方向)に対して回転角θ1だけ傾いている。発光装置Pの平面視において、レーザー発光素子LD2の長さ方向は、ミラー部Mの反射面MSの長さ方向(Y軸方向)に直交するミラー部Mの短辺方向(つまりサブマウントSM2の長さ方向でありX軸方向)に対して回転角θ2だけ傾いている。レーザー発光素子LD1とレーザー発光素子LD2とは、ミラー部Mの反射面MSの長さ方向(Y軸方向)に直交する平面(ZX平面)に対して鏡面対称に配置されている。
【0034】
レーザー発光素子LD1およびLD2は、それぞれ、波長450nmのレーザー光L1およびL2を発するレーザダイオード(LD:Laser Diode)のチップである。図示されていないが、このチップは上下方向にpn接合を有するダイオードで形成されており、チップの上面および下面のそれぞれに極性を有する電極が設けられている。
【0035】
発光装置Pは、図示されていないが、チップを構成するダイオードの正負の両電極から引き出された金属ワイヤ線、基板S上の配線、および前述の金属ワイヤ線と外部の機器とを電気的に接続するための配線等を備えている。
【0036】
レーザー発光素子LD1およびLD2から出射したレーザー光L1およびL2のそれぞれは、ミラー部Mによってキャップ部材CAの窓部材Wに向かって反射される。窓部材Wには、レーザー発光素子LD1およびLD2が存在する空間と反対側の空間に波長変換部材WCとして機能する蛍光体発光部材が設けられている。レーザー光L1およびL2のそれぞれは波長変換部材WCを構成する蛍光体発光部材に照射される。その結果、レーザー光L1およびL2のそれぞれの波長変換が生じる。
【0037】
蛍光体発光部材としては、プレート状の単結晶蛍光体、公知の種々の蛍光体板、蛍光体層、または、蛍光体粒子が含有された印刷膜などが用いられ得る。本実施の形態においては、蛍光体発光部材として、単結晶YAG(Yttrium Aluminum Garnet)蛍光体板が用いられる。
【0038】
本実施の形態の波長変換部材WCは、蛍光体を含有する部材である。しかしながら、波長変換部材WCは、たとえば、透明な基材(一例としてサファイア(Al2O3板)の上に蛍光体粉末(一例として粉末のYAG蛍光体)がバインダによって接着されたものであってもよい。また、波長変換部材WCは、透明な基材の上に蛍光体粒子を含む膜が印刷されたものなど、透明な基材とその下面または上面上に設けられた蛍光体を含有する部材とが一体化されたものであってもよい。本実施の形態においては、蛍光体等を含む部分だけでなく、蛍光体等を含む部分と透明な基材とが一体化されたものも、波長変換部材WCであると定義している。
【0039】
たとえば、単結晶、多結晶、またはセラミックの蛍光体板もしくは蛍光体シートが透明な基材(サファイア板)に張り付けて支持されているものについても、本明細書においては、透明な基材も含めて波長変換部材WCと呼ぶ。さらに、たとえば、サファイア板の上に蛍光体を含有する印刷膜が形成された波長変換部材WCを、サファイア板と窓部材Wが接するように、窓部材Wに、設置したり、貼り付けたりしてもよい。
【0040】
なお、平面視において、波長変換部材WCのサイズは、窓部材Wのサイズと同一か、または、それよりも大きいことが好ましい。言い換えると、平面視において、波長変換部材WCは、窓部材Wと同一形状か、または、窓部材Wの全体を覆う形状を有していることが好ましい。
【0041】
ミラー部Mは、例えばその横断面が直角二等辺三角形をなす三角柱である。この三角柱のミラー部Mは、基板Sの主表面PSに対して45度をなす反射面MSを有している。反射面MSは平面である。ミラー部Mは、レーザー光L1およびL2の進行方向を変換させる。ミラー部Mはアルミニウムまたは銀などの高反射率を有する金属で形成されていてもよい。また、ミラー部Mは、表面に誘電体多層膜ミラー部が設けられた任意の素材で構成されていてもよい。ミラー部Mは基板Sの主表面PSから所定の深さにかけて形成された凹部COの中に設けられている。なお、ミラー部Mの形状は三角柱に限らない。他の多角柱の一側面をミラー部として利用してもよく、また平坦な板材の平面部をミラー部として利用してもよい。
【0042】
なお、本実施の形態においては、ミラー部Mは、基板Sおよびキャップ部材CAから独立した部材であるが、基板Sの一部であってもよく、また、キャップ部材CAの一部であってもよい。
【0043】
波長変換部材WCの表面における複数のレーザー光Lの複数の照射領域LDS1,LDS2(図5参照)は、半導体レーザーの特性上、それぞれ楕円形をなしている。波長変換部材WCにおける複数のレーザー光Lの照射領域LDS1,LDS2において、次のことが言える。複数のレーザー光Lのうちの1つのレーザー光LDS1の少なくとも一部が複数のレーザー光のうちの他のレーザー光LDS2の少なくとも一部に重なるように、複数のレーザー光Lが波長変換部材WCに照射される。
【0044】
波長変換部材WCにおいて複数のレーザー光Lの複数の照射領域LDS1,LDS2の複数の長さ方向(楕円の長軸方向)が互いに平行になるように、複数のレーザー光Lが波長変換部材WCに照射される。
【0045】
複数のレーザー光Lのミラー部Mの反射面MSに対する複数の入射角が互いに異なるように、具体的には、入射角の正負が逆でかつ絶対値が同一になるように、複数のレーザー発光素子LDがミラー部Mに対して配置されている。
【0046】
本実施の形態のキャップ部材CAは、板状のシリコンに凹部を設けることによって形成されたものである。キャップ部材CAは、凹部の底部を天井部Tとし、かつ、凹部の側壁部を側壁部SWとして、基板Sの主表面PSを覆うように設けられている。キャップ部材CAの天井部Tは、窓部材Wを有している。その窓部材Wは、キャップ部材CAの開口に透明なガラスが嵌合されることにより形成されている。
【0047】
このキャップ部材CAは、シリコン(熱伝導率148[W/(m・K)])以外の高熱伝導性材料で形成されていてもよい。たとえば、キャップ部材CAは、アルミニウム<237[W/(m・K)]>、または銅<398[W/(m・K)]などで構成されていてもよい。この窓部材Wを取り囲むキャップ部材CAの天井部Tを構成する材料としては、波長変換部材WC(蛍光体発光部材)で発せられた熱を排出する効率を高める観点から、上記のような高熱伝導材料にて構成されていることが好ましい。より具体的には、キャップ部材CAの熱伝導率は、波長変換部材WCの熱伝導率より高くなければならない。キャップ部材CAは、50[W/(m・K)]以上であることが好ましい。
【0048】
一般に、蛍光体として用いられたYAGの熱伝導率は約10[W/(m・K)]であり、その支持部材として用いられ得るサファイア(Al)の熱伝導率が約40[W/(m・K)]である。そのため、キャップ部材CAの天上部Tの材料としては、熱伝導率50[W/(m・K)]の材料を用いることは、波長変換部材WCで発せられた熱を効果的に排出する機能を有していると言える。
【0049】
このキャップ部材CAは半田により基板Sと接合されている。波長変換部材WCで発せられた熱は、キャップ部材CAの天井部Tを経由して、キャップ部材CAの側壁部SWの下面から基板Sへ伝達されることが好ましい。つまり、キャップ部材CAの天井部Tから基板Sまでの間に熱の伝導および伝達を妨げる部材は設けられていないことが好ましい。
【0050】
窓部材Wは、ガラス、プラスチック、またはサファイアなど、レーザー光Lに対して透明な材料であれば、いかなる材料で形成されていてもよいが、耐熱性が高い材料で形成されていることが好ましい。波長変換部材WC(蛍光体発光部材)は、レーザー光Lの波長を変換するものであれば、いかなるものであってもよい。本実施の形態の発光装置Pは、450nmの青色のレーザー光Lを、蛍光体発光部材により白色に変換し、このデバイスを白色光源として機能する波長変換部材WCを有している。
【0051】
レーザー発光素子LD1およびLD2から出射された2つのレーザー光L1,L2は、それぞれ、ミラー部Mで反射されることにより、進行方向が変更される。その後、ミラー部Mは、2つのレーザー光L1,L2の互いの一部同士が波長変換部材WCの窓部材W側の面で重なるように、配置されている。
【0052】
図4は、実施の形態1の発光装置Pの平面視におけるレーザー発光素子LDの長さ方向の基準方向(X軸方向)に対する回転角θ1,θ2のそれぞれの絶対値と、レーザー発光素子LD1とレーザー発光素子LD2との間の距離Dとの関係を示すグラフである。なお、距離Dは、図1および図3に示されるように、レーザー発光素子LD1のレーザー光L1の発光点とレーザー発光素子LD2のレーザー光L2の発光点との間の距離である。
【0053】
レーザー発光素子LD1およびLD2のそれぞれにおける発光点からミラー部Mまでの距離を0.25mmとする。ミラー部Mにおいてレーザー光Lが照射される部分の中央部から波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材の下面までの距離を0.80mmとする。なお、ミラー部Mの反射面MSの基板Sの主表面PSに対する傾斜角度は45度であるものとする。また、ミラー部Mは、その反射面MSに銀コーティングが施されたガラス製のプリズムにより形成されているものとする。
【0054】
レーザー発光素子LD1およびLD2のそれぞれは、横幅0.15mm(発光点は、幅方向の中央の位置)、長さ(共振器長)1.2mm、厚さ0.05mmを有するものとする。レーザー発光素子LD1またはLD2は、ジャンクションダウンの態様で、サブマウントSM1またはSM2上に設置されている。そのため、レーザー発光素子LD1およびLD2のそれぞれにおける発光点は、おおよそレーザー発光素子LD1またはLD2とサブマウントSM1またはSM2との界面の近傍に存在する。そのため、レーザー発光素子LDの厚さt(図2および図3参照)は、光学レイアウトには影響を及ぼさない。
【0055】
本実施の形態の場合、2つのレーザー発光素子LD1,LD2が用いられているが、レーザー光L1およびL2の出射端面におけるレーザー発光素子LD1の発光点とレーザー発光素子LD2の発光点との間の距離をD(図1および図3参照)とする。また、レーザー発光素子LD1の長さ方向のサブマウントSM1の長さ方向(X軸方向)に対する回転角をθ1とする。また、レーザー発光素子LD2の長さ方向のサブマウントSM2の長さ方向(X軸方向)に対する回転角をθ2とする。ここでは、θ1=-θ2であるものとする。より具体的には、D=0.34mm、θ1=-θ2=14.5°である。2つのレーザー発光素子LD1およびLD2から発せられるレーザー光L1およびL2の出力のピーク同士が波長変換部材WCの下面で重なるように、2つのレーザー光L1およびL2が波長変換部材WCに照射されるものとする。
【0056】
なお、本実施の形態のレーザー素子LD1,LD2のレーザー光L1,L2の放射角(全角)は、楕円形のビームの長軸方向が42°(1/e^2)であり、かつ、楕円形のビームの短軸方向が10°(1/e^2)である。波長変換部材WCを構成する蛍光体発光部材の下面には、長軸方向1.03mm、短軸方向0.25mmの楕円状のレーザー光L1およびL2のスポットが照射される。つまり、この場合、波長変換部材WCを構成する蛍光体発光部材は、長軸1.03mm、かつ、短軸0.25mmの楕円形状の白色光源として機能する。
【0057】
ここで、レーザー発光素子LD1の回転角θ1およびレーザー発光素子LD2の回転角θ2は、いかなる値であってもよい。しかしながら、2つのレーザー光L1,L2が波長変換部材WCを構成する蛍光体発光部材の下面で重なり合うためには、回転角θ1,θ2が大きくなるにつれて、レーザー発光素子LD1とレーザー発光素子LD2との間の距離Dを大きくする必要がある。
【0058】
レーザー発光素子LD1の回転角θ1の絶対値およびレーザー発光素子LD2の回転角θ2の絶対値を小さくし過ぎると、レーザー発光素子LD1とレーザー発光素子LD2との間の距離Dが小さくなり過ぎる。一般に、2つのサブマウントSM1およびSM2を基板Sに精密に装着するためには、サブマウントSM1とサブマウントSM2との間の距離Dが0.1mm以上であることが好ましい。サブマウントSM1とサブマウントSM2との間の距離Dが0.1mmである場合、回転角θ1,θ2は約4°とする必要がある。そのため、回転角θ1の絶対値および回転角θ2の絶対値が少なくとも4°以上であることが好ましい。
【0059】
一方、回転角θ1およびθ2の絶対値を大きくし過ぎると、レーザー発光素子LD1とレーザー発光素子LD2との間の距離Dを大きくする必要がある。この場合、レーザー発光素子LD1およびLD2を搭載するサブマウントSM1およびSM2の設置領域を大きくせざるを得ず、結果として発光装置全体の小型化に支障をきたすという問題が生じる。そのため、回転角θ1およびθ2の絶対値は、いずれも、45°以内であることが好ましい。
【0060】
また、サブマウントSM1,SM2の前端面(ミラー部M側の端面)から、レーザー発光素子LD1,LD2における2つの前端部が突き出るように、サブマウントSM1,SM2へそれぞれレーザー発光素子LD1,LD2を搭載することが好ましい。この場合、複数のレーザー発光素子LD1(LD2)のそれぞれに関しては、次のことが言える。平面視において、幅方向における一方の角部A1L(A2R)が、幅方向における他方の角部A1R(A2L)よりも多く、複数のサブマウントSM1(SM2)のそれぞれの長さ方向における端面E1(E2)から突出していることが好ましい。これによれば、レーザー発光素子LD1,LD2からそれぞれ出射されるレーザー光L1,L2の放射分布が、レーザー発光素子LD1,LD2の厚さ方向tに対称な分布にて出射されるようになる。
【0061】
図5は、本実施の形態の発光装置Pの波長変換材料WCにおける複数のレーザー光Lの複数の照射領域LDS1,LDS2を示す図である。
【0062】
図5は、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材が設置された位置を、キャップ部材CAをZ軸方向に沿って見たときの発光装置Pを示す図である。言い換えると、図5は、発光装置Pからキャップ部材CAを取り外し、キャップ部材CAの内側からキャップ部材CAの天井部Tを見たときの横断面図である。窓部材Wの位置には、窓部材Wのガラスを通して、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材の下面が見える。
【0063】
レーザー発光素子LD1およびL2から出射された2つのレーザー光L1およびL2のそれぞれのほぼ全体が波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材の窓部材W側の面で重なる。このように、レーザー発光素子LD1およびL2がそれぞれサブマウントSM1およびサブマウントSM2上に配置されている。
【0064】
破線の楕円および一点鎖線の楕円は、レーザー光L1およびL2の照射領域LDS1,LDS2を示している。2つのレーザー光L1およびL2の照射領域LDS1およびLDS2が完全に重ね合わされてしまうと、2つの照射領域LDS1,LDS2の存在が分からなくなってしまうため、敢えて図5では、2つの照射領域LDS1,LDSを少しずらした位置に描いている。
【0065】
このように、2つの照射領域LDS1,LDS2を重ね合わせることにより、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材を励起するレーザー光L1,L2の光密度を最大2倍まで増加させることができる。そのため、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材から放出される白色光の光源輝度を最大2倍まで増加させことができる。また、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材から放出される白色光の全光束を、たとえば、最大2倍に増加させることができる。その結果、簡単な構成により、光源の特性をより向上させることができる。
【0066】
レーザー発光素子LD1,LD2から出射されるビームの形状は楕円形状である。そのため、図5に示されるように波長変換部材WCへ照射されたレーザー光の照射領域LDS1,LDS2の形状も、X軸方向に長軸を有する楕円形状になる。レーザー発光素子LD1,LD2から発せられた2つのレーザー光の2つの照射領域LDS1,LDS2を重ね合わせた領域もビーム形状が反映された略楕円の形状になる。
【0067】
キャップ部材CAの天井部Tに設けられた窓部材Wは、2つのレーザー光の照射領域LDS1,LDS2の重ね合わせによって生じる略楕円の形状に合わせて設けられている。
【0068】
図6は、本実施の形態の発光装置Pの位置とビーム強度との関係を示す図であって、図5のA-B線上のレーザー光のビーム強度の分布を示す。
【0069】
図6に示されるように、波長変換部材WCのサイズおよび形状は、それぞれ、窓部材Wのサイズおよび形状に一致しているものとする。また、2つのレーザー光L1およびL2の照射領域LDS1,LDS2の重ね合わせによって生じる略楕円形状のスポットにおけるレーザー光L1,L2の光分布はガウシアン分布になっている。
【0070】
窓部材Wは、そのビームのガウシアン分布において、ピーク強度の1/e^2以上の強度を有するビームが通過するサイズを有している。すなわち、1/e^2以下の強度となるビームの周端部では、レーザー光L1,L2がキャップ部材CAの天井部Tにより遮断され、レーザー光L1,L2のビーム強度の約86%の光が窓部材Wを通過する。図6において、グラフの下部に示した斜線で描かれた部材(キャップ部材CA)同士の間の位置が模式的に示した窓部材Wの位置である。このように、レーザー光L1,L2の外周部の進行が遮断される。それにより、波長変換部材WCである蛍光体発光部材の発光サイズおよび形状が明確に規定される。その結果、光源の端部が明確になるため、光源サイズのばらつきが低下する。
【0071】
上記のように、本実施の形態の発光装置Pによれば、複数のレーザー照射領域LDS1,LDS2を波長変換部材WC(蛍光体発光部材)で重ね合わせることがきるため、波長変換部材WCの輝度および全光束を増加させることができる。しかながら、波長変換部材WCでのレーザー光L1,L2の光密度は数倍に上昇するため、波長変換部材WCでの発熱が著しくなる。そのため、波長変換部材WCでの放熱対策を同時に実施することが望ましい。そのため、本実施の形態においては、キャップ部材CAの天井部Tに設けた窓部材Wで生じた熱をキャップ部材CAの天井部Tを構成する高熱伝導材料を通して排出する。これにより、レーザー光L1,L2の重ね合わせによる波長変換部材WCでの高輝度化および高光束化を実用化することが可能になる。
【0072】
また、複数のサブマウントSM1,SM2を互いに平行に配置することができる。そのため、複数のサブマウンドSM1,SM2の複数の長手方向を交差するように配置する場合に比較して、基板S上での複数のサブマウントSM1,SM2の設置面積を小さくすることができる。その結果、発光装置Pを小型化することができる。
【0073】
さらに、上記の発光装置Pの製造工程においては、まず、レーザー発光素子LD1,LD2の長さ方向をサブマウントSM1,SM2の長さ方向に対して斜めに傾けた状態で、レーザー発光素子LD1,LD2をサブマウントSM1,SM2に搭載する。その後、サブマウントSM1,SM2の長さ方向をミラー部Mの長さ方向に対して垂直になるように、サブマウントSM1,SM2を基板S上に搭載する。
【0074】
上記の製造方法によれば、サブマウントSM1,SM2同士を基板S上に搭載するときには、サブマウントSM1,SM2を互いに平行に配置すればよい。そのため、サブマウントSM1,SM2のミラー部Mに対するアライメントが容易になる。その結果、発光装置Pの製造工程におけるスループットを向上させることができる。以下、スループットの向上方法を具体的に説明する。
【0075】
図7は、実施の形態の発光装置Pのレーザー発光素子LD1,LD2およびサブマウントSM1,SM2の製造工程を説明するための図である。
【0076】
まず、ステップ1において、レーザー発光素子LD1,LD2のそれぞれについて、最初に一度だけ、レーザー発光素子LD1,LD2の長さ方向のサブマウントSM1,SM2の長さ方向に対する回転角θ1,θ2を調整する。それによって、レーザー発光素子LD1とサブマウントSM1との第1セットST1、および、レーザー発光素子LD2とサブマウントSM2との第2セットST2のそれぞれを事前に準備する。大量生産においては、第1セットST1および第2セットST2のそれぞれを多数準備しておく。
【0077】
次に、ステップ2において、サブマウントSM1,SM2の長さ方向がミラー部Mの幅方向に対して平行になるように、第1セットST1および第2セットST2を基板Sの上に搭載する。大量生産においては、ステップ1およびステップ2を多数回繰り返す。これによれば、レーザー発光素子LD1,LD2のそれぞれをミラー部Mに対して個別にアライメントする必要がないため、発光装置Pのスループットを向上させることができる。また、レーザー発光素子LD1,LD2の長さ方向のミラー部Mの長さ方向に対する回転角θ1,θ2のばらつきを小さくすることができる。
【0078】
図8は、比較例の発光装置の製造工程を説明するための第1図である。 図9は、比較例の発光装置の製造工程を説明するための第2図である。
【0079】
図8に示されるように、比較例の発光装置の製造方法によれば、レーザー発光素子LD1,LD2の長さ方向がサブマウントSM1,SM2の長さ方向に平行になるように、レーザー発光素子LD1,LD2をサブマウントSM1,SM2に搭載する。次に、図9に示されるように、基板Sの上に複数のサブマウントSM1,SM2を搭載するときに、サブマウントSM1,SM2の回転角θ1,θ2のそれぞれを個別に調整しながら、第1セットST1および第2セットST2を基板S上に搭載する。これによれば、製造工程のスループットが著しく悪くなる。また、回転角θ1およびθ2のバラツキが大きくなる。
【0080】
また、本実施の形態では、2つのレーザー発光素子LD1およびLD2がミラー部Mに垂直なZX平面に対して鏡面対称に配置(θ2=-θ1)されている。それにより、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材における2つのレーザー照射領域LDS1,LDS2が、Y軸方向において、すなわち、ZX平面に対して、鏡面対称になる。そのため、2つのレーザー照射領域LDS1およびLDS2が重ね合わせられた合成照射領域は、Y方向において、すなわち、ZX平面に対して、鏡面対称になる。したがって、発光装置Pは、光源として好ましい状態になる。
【0081】
図10は、本実施の形態の変形例1の発光装置Pの横断面図である。
【0082】
変形例1においては、複数のレーザー発光素子LDが3つのレーザー発光素子LD11,LD12,LD13からなる。3つのレーザー発光素子LD11,LD12,LD13この順番でミラー部Mの長さ方向に沿って並べられている。3つのレーザー発光素子LD11,LD12,LD13のそれぞれは、自身の長さ方向に平行にレーザー光を発する。
【0083】
3つのレーザー発光素子LD11,LD12,LD13の中央に位置付けられたレーザー発光素子LD12は、レーザー発光素子LD12の長さ方向がサブマウントSM12の長さ方向に対して平行になるように、サブマウントSM12に搭載されている。レーザー発光素子LD12の長さ方向がミラー部Mの幅方向に平行に設けられている。
【0084】
一方、レーザー発光素子LD11は、平面視において、サブマウントSM11の長さ方向に対して回転角θ1だけ傾いた方向にレーザー光を発するように、サブマウントSM11上に搭載されている。レーザー発光素子LD13は、平面視において、サブマウントSM13の長さ方向に対して回転角θ3だけ傾いた方向にレーザー光を発するように、サブマウントSM13上に搭載されている。ここで、θ3=-θ1である。
【0085】
変形例1においても、3つのレーザー発光素子LD11,LD12,LD13から出射された3つのレーザー光は、ミラー部Mで反射され、進行方向が変えられ、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材における窓部材W側の面で、その少なくとも一部が重なる。
【0086】
変形例1の発光装置Pによっても、上記した本実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0087】
図11は、本実施の形態の変形例2の発光装置Pの横断面図である。
【0088】
変形例2においては、複数のレーザー発光素子LDが4つのレーザー発光素子LD101,LD102,LD103,LD104からなる。3つのレーザー発光素子LD101,LD102,LD103,LD104この順番でミラー部Mの長さ方向に沿って並べられている。4つのレーザー発光素子LD101,LD102,LD103,LD401のそれぞれは、自身の長さ方向に平行にレーザー光を発する。
【0089】
レーザー発光素子LD101とレーザー発光素子LD104とは、ミラー部Mの反射面MSの長さ方向(Y軸方向)に直交する平面(ZX平面)に対して鏡面対称に配置されている。レーザー発光素子LD102とレーザー発光素子LD103とは、ミラー部Mの反射面MSの長さ方向(Y軸方向)に直交する平面(ZX平面)に対して鏡面対称に配置されている。
【0090】
変形例2においても、4つのレーザー発光素子LD101,LD102,LD103,LD104から出射された4つのレーザー光は、ミラー部Mで反射される。また、4つのレーザー光は、進行方向が変えられ、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材における窓部材W側の面で、その少なくとも一部が重なる。
【0091】
変形例2の発光装置Pによっても、上記した本実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0092】
(実施の形態2)
図12および図13を用いて、実施の形態2の発光装置を説明する。なお、下記において実施の形態1と同様である点については、その説明は繰り返さない。
【0093】
図12は、本実施の形態の発光装置Pの縦断面図であって、図10のXII-XII線断面図である。図13は、本実施の形態の発光装置Pの波長変換材料WCにおける複数のレーザー光の複数の照射領域LDS11,LDS12,LDS13を示す図である。本実施の形態の発光装置Pは、実施の形態1の変形例1の発光装置Pに類似している。しかしながら、実施の形態2の発光装置Pは、次の点で、実施の形態1の変形例1の発光装置Pと異なる。
【0094】
レーザー発光素子LD12は、波長640nmの赤色レーザー光を発する。レーザー発光素子LD11,LD13のそれぞれは、波長450nmの青色レーザー光を発する。
【0095】
実施の形態1の変形例1の発光装置Pにおいては、レーザー発光素子LD11,LD12,LD13の全てが同じ波長のレーザー光を発するが、本実施の形態の発光装置Pにおいては、複数の異なる波長のレーザー光を発する。
【0096】
また、キャップ部材CAは、アルミニウムの側壁SWおよび天井部Tからなり、天井部Tに耐熱プラスチック製の窓部材Wが設けられたものである。
【0097】
本実施の形態においては、レーザー発光素子LD11,LD13が発した青色レーザー光によって波長変換部材WCとして機能する蛍光体発光部材を励起させる。それにより、蛍光体発光部材が白色に発光する。つまり、白色点光源が得られる。また、レーザー発光素子LD12から発せられた赤色レーザー光が波長変換部材WCとして機能する蛍光体発光部材に照射されて散乱される。それにより、白色光に赤味を加えることができる。その結果、演色性の優れた白色光源が得られる。
【0098】
図12から分かるように、断面視において、また、図示されていないが平面視においても、波長変換部材WCが窓部材Wよりも大きい。そのため、キャップ部材CAの高熱伝導材料からなる部分の上部に波長変換部材WCが重なることにより、波長変換部材WCがキャップ部材CAに接触する。その結果、波長変換部材WCによる発熱を効率的にキャップ部材CAに伝達することができる。
【0099】
図13に示されるように、波長変換部材WCのキャップ部材CA側の面へ照射される3つのレーザー光の照射領域LDS1,LDS2,LDS3に関しては、次のことが言える。つまり、レーザー発光素子LD1,LD3から発せられた2つのレーザー光の照射領域LDS1,LDS3の一部同士が重なる。図13に示されるように、レーザー発光素子LD1,LD3から発せられたレーザー光の照射領域LDS1,LDS3の一部同士は、Y軸方向にずれた位置に形成される。レーザー発光素子LD2から発せられたレーザー光の照射領域LDS2は、レーザー発光素子LD1,LD3から発せられた2つのレーザー光の2つの照射領域LDS1,LDS3の中央に位置付けられる。そのため、平面視において、レーザー発光素子LD1,LD2,LD3から発せられた3つのレーザー光の照射領域LDS1,LDS2,LDS3は、Y軸方向に対して対称な分布になる。
【0100】
上記した本実施の形態の発光装置Pによっても、上記した本実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0101】
次の本実施の形態の変形例の発光装置Pを説明する。変形例の発光装置は、異なる波長のレーザー発光素子を実装する。それにより、レーザー発光素子に機能が付加されている。
【0102】
図11に示されるように、実施の形態1の変形例2の発光装置Pと同様に、本実施の形態の変形例の発光装置Pは、4つのレーザー発光素子LD101,LD102,LD103,LD104を有し、それぞれは、次の関係が成立する。つまり、平面視において、レーザー発光素子LD102とレーザー発光素子LD103とはX軸方向に対して対称に配置されている。また、レーザー発光素子LD101とレーザー発光素子LD104とはX軸方向に対して対称に配置されている。
【0103】
レーザー発光素子LD102およびレーザー発光素子LD103が発するレーザー光は、波長405nmの紫外線レーザー光である。一方、レーザー発光素子LD101およびレーザー発光素子LD104は、いずれも、波長905nmの赤外光を発するチップで形成されている。波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材は、波長405nmのレーザー光によって励起され、白色の発光が生じるように、複数の蛍光体材料の混合によって形成されている。
【0104】
本実施の形態の発光装置Pによれば、レーザー発光素子LD102,LD103から発せられた紫外レーザー光によって蛍光体発光部材を励起する。それにより、蛍光体発光部材が白色に発光する。つまり、白色点光源が得られる。また、レーザー発光素子LD101およびレーザー発光素子LD104からの赤外レーザー光が波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材に照射されて散乱される。それにより、白色光に赤外光を加えることができる。この赤外光は、光通信または測距を可能にするものである。したがって、本実施の形態の発光装置Pによれば、白色光源に他の機能を付加することができる。
【0105】
レーザー発光素LD101,LD102,LD103,LD104から発せられた4つのレーザー光の略全体は、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材のキャップ部材CA側の面で重なる。
【0106】
上記した本実施の形態の変形例の発光装置Pによっても、上記した本実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0107】
(実施の形態3)
図14および図15を用いて、実施の形態3の発光装置を説明する。なお、下記において実施の形態1または2と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の発光装置は、次の点で、実施の形態1または2の発光装置と異なる。
【0108】
図14は、本実施の形態の発光装置Pの横断面図であって、図15のXIV-XIV線断面図である。図15は、本実施の形態の発光装置Pの縦断面図であって、図14のXV-XV線断面図である。
【0109】
本実施の形態のレーザー発光素子LD1およびLD2から出射された2つのレーザー光は、ミラー部Mの反射面MSに斜め方向に照射される。それにより、2つのレーザー光は、進行方向を変えられた後、光がキャップ部材CAの窓部材Wを通して波長変換部材WCに照射される。これらの点においては、本実施の形態は、前述の実施の形態と同様である。
【0110】
本実施の形態は、レーザー発光素子LD1およびLD2の位置とX軸方向に対して対称な位置に他のレーザー発光素子が設けられておらず、その代わりに、フォトダイオードPDが配置されている点において、前述の実施の形態と異なる。
【0111】
フォトダイオードPDは、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材または窓部材Wで反射されたレーザー光を受けて、その光量および光量の時間変化をモニターするためのものである。ミラー部Mの反射面MSに対して斜めに入射したレーザー光は、ミラー部Mで反射した後、窓部材Wおよび波長変換部材WCへも斜めに入射する。窓部材Wおよび波長変換部材WCでレーザー光がフォトダイオードPDの位置に向かって反射される。このような配置により、レーザー発光素子LD1およびLD2から発せられたレーザー光の状況(光量および時間変換)をモニターあるいは監視することができる。その結果、この発光装置Pの安定した特性で駆動することが可能になる。
【0112】
なお、フォトダイオードPDには、レーザー発光素子LD1およびLD2から発せられた特定の波長のレーザー光だけを通過させるフィルターが設けられていてもよい。これによれば、フォトダイオードPDは、モニターしたい波長のレーザー光だけを受光することができる。
【0113】
上記した本実施の形態の発光装置Pによっても、上記した本実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0114】
(実施の形態4)
図16を用いて、実施の形態4の発光装置を説明する。なお、下記において実施の形態1~3と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の発光装置は、次の点で、実施の形態1~3の発光装置と異なる。
【0115】
図16は、本実施の形態の発光装置Pの縦断面図であって、図10のXVI-XVI線断面図である。
【0116】
本実施の形態においては、波長変換部材WCとしての蛍光体発光部材の代わりに、光散乱部材SCが設けられている。レーザー発光素子LD1,LD2,およびLD3は、それぞれ、光の三原色をなす赤色(波長638nm)、緑色(波長520nm)、および青色(波長455nm)のレーザー光を発する。レーザー発光素子LD1,LD2,およびLD3のほぼ全体が重なるように光散乱部材SCに照射される。この三色のレーザー光が混合されると、白色のレーザー光が生成される。3つのレーザー光は光散乱部材SCで重ね合わされることによって、白色光として散乱される。それにより、光散乱部材SCは、白色の点光源として機能する。本実施の形態においては、蛍光体は用いられていないため、レーザー光の波長変換は行われない。
【0117】
光散乱部材SCは、蛍光体発光部材と異なり、レーザー光の吸収が生じない。そのため、発熱が起こらない。そのため、光散乱部材SCからの放熱対策は不要である。したがって、キャップ部材CAは、ガラス製(熱伝導率:1.0[W/(m・K)])である。
【0118】
このように、本実施の形態の発光装置Pは、蛍光体発光部材を励起するための半導体レーザー装置にのみ適用されるのではない。つまり、本実施の形態の発光装置Pは、蛍光体を用いずに光を出射する半導体レーザー装置、言い換えると、レーザー光の波長変換を行わずに光を出射する半導体レーザー装置とにも適用され得る。
【0119】
上記した本実施の形態の発光装置Pによっても、上記した本実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0120】
(実施の形態5)
図17を用いて、実施の形態5の発光装置を説明する。なお、下記において実施の形態1~4と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の発光装置は、次の点で、実施の形態1~4の発光装置と異なる。
【0121】
図17は、本実施の形態5の発光装置Pの縦断面図である。
【0122】
ミラー部Mの反射面MSの基板Sの主表面PSに対する角度は、必ずしも45度でなくてもよい。ミラー部Mの反射面MSの基板Sの主表面PSに対する角度を適切に選択する。それにより、図17に示されるように、波長変換部材WCをキャップ部材CA天井部の中央に配置することができる。この場合、波長変換部材WCから発せられる熱がキャップ部材CAの天井部から周囲に均等に伝導される。そのため、波長変換部材WCからの排熱効果を向上させることができる。
【0123】
(実施の形態6)
図18および図19を用いて、実施の形態6の発光装置を説明する。なお、下記において実施の形態1~5と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の発光装置は、次の点で、実施の形態1~5の発光装置と異なる。
【0124】
図18は、実施の形態6の発光装置Pの縦断面図であって、図1のXVIII-XVIII線断面図である。図19は、実施の形態6の発光装置Pのミラー部Mの斜視図である。
【0125】
本実施の形態の発光装置Pにおいては、ミラー部Mの反射面MSは、平面ではなく、曲面になっている。それにより、図18に示されるように、複数のレーザー発光素子LD1,LD2のそれぞれから発せられたレーザー光L1,L2のそれぞれの広がり角(ビーム発散角)は、曲面のミラー部Mでレーザー光L1,L2が反射されたときに変更される。この場合、波長変換部WCに照射される複数のレーザー光L1,L2のそれぞれのスポットサイズおよび形状を、このミラー部Mの曲面の設計によって調整することができる。
【0126】
本実施の形態においても、複数のレーザー発光素子LD1,LD2から発せられた複数のレーザー光L1,L2が一つの波長変換部W上で重ね合わせられることによって、波長変換部WCにおける輝度および全光束を増加させることができる。ただし、本実施の形態のミラー部Mのように、反射面MSが曲面であれば、複数のレーザー光L1,L2を重ね合わせるだけでなく、複数のレーザー光L1,L2を集光しながら重ね合わせたり、複数のレーザー光L1,L2を広げながら重ね合わせたりすることができる。たとえば、2つのレーザー光L1,L2を集光しながら重ね合わせれば、2つのレーザー光L1,L2を重ね合わせながら、2倍以上の輝度の光を得る、すなわち、光の出力を高めることができる。2つのレーザー光L1,L2を広げながら重ね合わせれば、2つのレーザー光L1,L2を重ね合わせながらも、2倍未満の輝度の光を得る、すなわち、光の出力の大幅な増加を抑制することができる。
【0127】
ミラー部Mの反射面MSの断面における曲面のプロファイルとしては、たとえば、楕円の一部、放物線の一部、または自由曲線など、目的に応じた任意のプロファイルが選択され得る。
【0128】
図18および図19に示されるように、反射面MSの曲面のプロファイルとして、レーザー光L1,L2に対して凹面をなす曲面が選択されると、レーザー発光素子LD1,LD2からのレーザー光L1,L2の広がり角(ビーム発散角)をより小さくするように、レーザー光L1,L2を波長変換部WCへ照射することができる。また、曲面のプロファイルを楕円として、楕円の第一焦点の位置にレーザー発光素子LD1,LD2のレーザー光L1,L2の出射点を、楕円の第二焦点の位置に波長変換部WCを配置すると、最も効果的にレーザー光L1,L2を波長変換部WCに集光することができる。さらに、ミラーMのプロファイルを放物線とし、その放物線の焦点の位置にレーザー発光素子LD1,LD2の出射点を配置すると、ミラーMで反射されたレーザー光L1,L2はおおよそ平行光の状態で、波長変換部WCに照射される。この場合、波長変換部WCとミラー部Mまたはレーザー発光素子LD1,LD2との間の距離D(図1および図3参照)を変更しても、波長変換部WCにおけるレーザスポットのサイズは変わることがないため、設計変更を容易に行うことが可能になる。
【0129】
図20は、実施の形態6の変形例の発光装置Pの縦断面図であって、図1のXVIII-XVIII線断面図である。図21は、実施の形態6の変形例の発光装置Pのミラー部Mの斜視図である。
【0130】
図20および図21に示されるように、反射面MSの曲面のプロファイルとして、複数のレーザー光L1,L2に対して凸面をなす曲面が選択されると、複数のレーザー発光素子LD1,LD2から発せられたレーザー光L1,L2のそれぞれの拡がり角をより大きくするように、レーザー光L1,L2を波長変換部WCへ照射することができる。本実施の形態においては、複数のレーザー光L1,L2は、複数のレーザー光L1,L2の少なくとも一部が重ね合わせられた状態で、波長変換部WCに照射されるため、波長変換部WCにおける輝度および全光束を増加させることができる。一方、レーザー光L1,L2が波長変換部WCに集中しすぎると、局所的な過熱により波長変換部WCに損傷を与えることもある。
【0131】
図20および図21に示される発光装置Pにおいて、複数のレーザー光L1,L2のそれぞれの広がり角(ビーム発散角)を大きくしながら、複数のレーザー光L1,L2を重ね合わせる。それにより、全光束を増加させながら、輝度を極端には増加させない、または、むしろ輝度を低下させることもできるなど、複数のレーザー光L1,L2を集中させ過ぎずに、全光束と輝度とを独立に調整することができる。
【0132】
図18に示されるように、複数のレーザー光L1,L2をより集中させるのか、または、図20に示されるように、複数のレーザー光L1,L2を集中させ過ぎないようにするのかは、波長変換部WCの光耐性および波長変換部WCからの放熱特性等の要因によって適宜選択され得る。
【0133】
(実施の形態7)
図22を用いて、実施の形態7の発光装置を説明する。なお、下記において実施の形態1~6と同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の発光装置は、次の点で、実施の形態1~6の発光装置と異なる。
【0134】
図22は、本実施の形態の発光装置Pの横断面図である。図22に示されるように、本実施の形態の発光装置Pのミラー部Mは、平面視において、正方形をなしている。実施の形態1~6の発光装置Pのミラー部Mは、平面視において、Y軸方向に沿って細長い長方形をなしているが、複数のレーザー光L1,L2を重ね合わせる場合には、必ずしも長方形である必要はない。2つのレーザー発光素子LD1,LD2が発した2つのレーザー光L1,L2の照射領域は、2つのレーザー光が平行に発せられる場合に比較して、近づけられている。そのため、ミラー部MのY軸方向の長さは小さくてもよい。そのため、本実施の形態のように、ミラー部Mが平面視において正方形をなしていても、前述の実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。また、ミラー部MのY軸方向の大きさの低減を図ることにより、発光装置Pの全体の小型化を図ることができる。
【0135】
図23は、本実施の形態の変形例1の発光装置Pの横断面図である。図23に示されるように、本実施の形態の変形例1の発光装置Pのミラー部Mは、平面視において、X軸方向に延びる長辺を有し、かつ、Y軸方向に延びる短辺を有する長方形をなしている。このようなミラー部Mが用いられる場合においても、前述の実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができるとともに、発光装置Pの全体の小型化を図ることができる。
【0136】
図24は、本実施の形態の変形例2の発光装置Pの横断面図である。図24に示されるように、本実施の形態の変形例2の発光装置Pのミラー部Mは、平面視において、X軸方向に延びる長軸を有し、かつ、Y軸方向に延びる短軸を有する楕円形をなしている。このようなミラー部Mが用いられる場合においても、前述の実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができる。さらに、ミラー部Mは、楕円形の代わりに、平面視において、円形をなしていても、前述の実施の形態の発光装置Pによって得られる効果と同様の効果を得ることができるとともに、発光装置Pの全体の小型化を図ることができる。なお、ミラー部Mは、平面視において、Y軸方向に延びる長軸を有し、かつ、X軸方向に延びる短軸を有する楕円形をなしていてもよい。
【符号の説明】
【0137】
A1L,A1R,A2L,A2R 角部
CA キャップ部材
CO 凹部
E1,E2 端面
L1,L2レーザー光
LD1,LD2 レーザー発光素子
M ミラー部
P 発光装置
S 基板
SM サブマウント
W 窓部材
WC 波長変換部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図22
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