(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112932
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】浸水高推定装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20230807BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
G06Q50/26
G01W1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014964
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】399106192
【氏名又は名称】三井住友海上火災保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大門 真
(72)【発明者】
【氏名】丸山 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】荒木 敏行
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
5L049CC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】浸水高を推定する浸水高推定装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】浸水高推定装置100であって、実測地点の平面座標及び実測地点の浸水高に対応する水面高を取得する取得部110と、実測地点の平面座標を母点としたボロノイ図およびボロノイ図に基づくドロネー三角形を生成し、ドロネー三角形の各頂点に対応する実測地点の高さとして水面高を用いることにより、ドロネー三角形の三次元の面方程式を決定する面決定部120と、面方程式に注目する地点の平面座標を代入して得られた高さに基づいて、注目する地点の浸水高を推定する推定部130と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実測地点の平面座標、および、前記実測地点の浸水高に対応する水面高を取得する取得部と、
前記実測地点の平面座標を母点としたボロノイ図および前記ボロノイ図に基づくドロネー三角形を生成し、前記ドロネー三角形の各頂点に対応する前記実測地点の高さとして前記水面高を用いることにより、前記ドロネー三角形の三次元の面方程式を決定する面決定部と、
前記面方程式に注目する地点の平面座標を代入して得られた高さに基づいて、前記注目する地点の浸水高を推定する推定部と
を備える浸水高推定装置。
【請求項2】
前記面決定部は、予め定められた条件で前記実測地点の前記水面高が異常値であるか否かを判断し、異常値と判断された前記水面高を除外して前記面方程式を決定する請求項1に記載の浸水高推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記注目する地点の平面座標が前記ドロネー三角形のいずれに属するかを判断し、いずれにも属しない場合に、すくなくともいずれかの前記実測地点の前記水面高の統計値を用いて、前記注目する地点の浸水高を推定する請求項1または2に記載の浸水高推定装置。
【請求項4】
前記統計値は、最小二乗法、平均値および中央値の少なくともいずれか1つを用いたものである請求項3に記載の浸水高推定装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記実測地点の浸水高と標高とを取得し、前記浸水高と前記標高とに基づいて前記水面高を取得する請求項1から4のいずれか1項に記載の浸水高推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、さらに、前記注目する地点の標高に基づいて前記浸水高を推定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の浸水高推定装置。
【請求項7】
コンピュータに、
実測地点の平面座標、および、前記実測地点の浸水高に対応する水面高を取得する取得部と、
前記実測地点の平面座標を母点としたボロノイ図および前記ボロノイ図に基づくドロネー三角形を生成し、前記ドロネー三角形の各頂点に対応する前記実測地点の高さとして前記水面高を用いることにより、前記ドロネー三角形の空間的な面方程式を決定する面決定部と、
前記面方程式に注目する地点の平面座標を代入することにより、前記注目する地点の浸水高を推定する推定部と
の機能を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水高推定装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「情報処理システム1は、業務の目的を示す情報である業務属性を取得する業務属性取得部131と、業務属性に対応付けられた判定モデルを決定する判定モデル決定部132と、観測周波数の異なる複数の衛星画像のそれぞれを解析することにより得られる複数の仮判定結果を決定部が決定した判定モデルに適用することにより、契約者についての浸水の深さが基準深さ以上であるかを示す判定結果を生成する判定結果生成部134と、判定結果生成部134が生成した判定結果を出力する出力部と、を備える」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特許第6874196号
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、浸水高推定装置は、実測地点の平面座標、および、前記実測地点の浸水高に対応する水面高を取得する取得部を備えてよい。浸水高推定装置は、前記実測地点の平面座標を母点としたボロノイ図および前記ボロノイ図に基づくドロネー三角形を生成し、前記ドロネー三角形の各頂点に対応する前記実測地点の高さとして前記水面高を用いることにより、前記ドロネー三角形の三次元の面方程式を決定する面決定部を備えてよい。浸水高推定装置は、前記面方程式に注目する地点の平面座標を代入して得られた高さに基づいて、前記注目する地点の浸水高を推定する推定部を備えてよい。
【0004】
前記面決定部は、予め定められた条件で前記実測地点の前記水面高が異常値であるか否かを判断し、異常値と判断された前記水面高を除外して前記面方程式を決定してよい。
【0005】
前記推定部は、前記注目する地点の平面座標が前記ドロネー三角形のいずれに属するかを判断し、いずれにも属しない場合に、すくなくともいずれかの前記実測地点の前記水面高の統計値を用いて、前記注目する地点の浸水高を推定してよい。前記統計値は、最小二乗法、平均値および中央値の少なくともいずれか1つを用いたものであってよい。
【0006】
前記取得部は、前記実測地点の浸水高と標高とを取得し、前記浸水高と前記標高とに基づいて前記水面高を取得してよい。前記推定部は、さらに、前記注目する地点の標高に基づいて前記浸水高を推定してよい。
【0007】
本発明の第2の態様においては、プログラムは、コンピュータに、実測地点の平面座標、および、前記実測地点の浸水高に対応する水面高を取得する取得部の機能を実行させてよい。プログラムは、コンピュータに、前記実測地点の平面座標を母点としたボロノイ図および前記ボロノイ図に基づくドロネー三角形を生成し、前記ドロネー三角形の各頂点に対応する前記実測地点の高さとして前記水面高を用いることにより、前記ドロネー三角形の空間的な面方程式を決定する面決定部の機能を実行させてよい。プログラムは、コンピュータに、前記面方程式に注目する地点の平面座標を代入することにより、前記注目する地点の浸水高を推定する推定部の機能を実行させてよい。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態にかかる浸水高推定装置100を模式的に示すブロック図である。
【
図3】記憶部140に記憶されている実測地点データベース142の一例を示す。
【
図4】取得部110が実測地点の情報を取得するとともに、面決定部120が当該実測地点に基づいて面方程式を決定する動作フロー(S10)の一例を示す。
【
図5】推定部130が注目地点Qの浸水高Zaqを推定する動作フロー(S20)の一例を示す。
【
図6】実測地点Pを母点としたボロノイ図の例を示す。
【
図7】
図6のボロノイ図に基づく、実測地点Pを頂点としたドロネー三角形の例を示す。
【
図8】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ1200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、浸水の状況を示す地
図10を模式的に示す。大雨などにより河が氾濫すると周辺に洪水が起こり、家屋が浸水する。その場合に、保険金を算出するなどの理由で、注目する地点(注目地点ともいう)の浸水の量すなわち浸水高を知りたいことがある。
【0012】
図1において、マル印は注目地点であり、バツ印は浸水高が実測された地点(実測地点ともいう)である。注目地点自体の浸水高が実測できているとは限られない。よって、本実施形態では、実測地点の浸水高に基づいて注目地点の浸水高を推定する。なお、実測地点は、住宅が密集している地域や街道沿いなどでは多いが、それ以外の田畑や山間などでは少ない傾向がある。また、水は水平になろうとする傾向があるので、互いに近い地点間では水面の標高(水面高ともいう)は近い値になるが、地面の標高が低いほど家屋等に対する浸水高は大きくなる傾向がある。
【0013】
図2は、本実施形態にかかる浸水高推定装置100を模式的に示すブロック図である。浸水高推定装置100は、例えばコンピュータなどの情報処理装置である。その場合に、浸水高推定装置100は、汎用のコンピュータに後述する各機能を実行させるプログラムをインストールしたものであってよい。
【0014】
浸水高推定装置100は、取得部110と、面決定部120と、推定部130と、記憶部140とを備える。取得部110は、実測地点の平面座標、および、当該実測地点の浸水高に対応する水面高を取得し、記憶部140に記憶する。面決定部120は、実測地点の平面座標を母点としたボロノイ(Voronoi)図を生成し、さらに当該ボロノイ図に基づくドロネー(Delaunay)三角形を生成する。面決定部120は、さらに、当該ドロネー三角形の各頂点に対応する実測地点の高さとして水面高を用いることにより、ドロネー三角形の三次元の面方程式を決定し、記憶部140に記憶する。推定部130は、注目地点の平面座標を面方程式に代入して得られた高さに基づいて、注目地点の浸水高を推定する。
【0015】
図3は、記憶部140に記憶されている実測地点データベース142の一例を示す。実測地点データベース142は、実測地点Pに対応付けて、X座標としての経度、Y座標としての緯度、および、Z座標としての水面高を記憶している。
【0016】
図4は、取得部110が実測地点の情報を取得するとともに、面決定部120が当該実測地点に基づいて面方程式を決定する動作フロー(S10)の一例を示す。当該動作フローは、浸水高推定装置100のユーザからの指示に基づき動作を開始する。
【0017】
取得部110は、外部から実測地点Pの経度および緯度に対応付けて浸水高Zaを取得し、これらを実測地点データベース142に記憶する(S101)。この場合に、取得部110は、緯度と経度とを直接的に外部から取得してもよいし、住所を取得して、当該住所を緯度と経度とに変換して実測地点データベース142に記憶してもよい。なお、取得部110は、キーボード等の入力デバイスを用いてユーザから入力を受け付けてもよいし、他のコンピュータ等に記憶された情報を、ネットワークを介して受信してもよい。
【0018】
浸水高Zaは、衛星や航空写真などからデータとして取得してもよいし、保険会社の社員や行政の職員が予め定められた方法で測った値でもよい。または、浸水高Zaは、被保険者や付近住民の協力者から自己申告された値であってもよいし、これらの者から送られてきた画像からユーザが見積もった値でもよい。この観点から、実測地点Pには浸水高を実際に測った地点のみならず、何らかの方法で浸水高Zaを確定させた地点を含んでいてよい。
【0019】
複数の実測地点Pは規則性を持った間隔で並んだものでもよいし、ランダムに配置されたものであってもよい。実測地点P同士は、例えば数十m程度の間隔毎にあることが好ましい。また、複数の実測地点Pは浸水があったと想定される領域全体、例えば数km四方にわたって分散して配されていることが好ましい。
【0020】
取得部110は、実測地点Pの経度および緯度に基づいて、当該実測地点Pの地表の標高Zbを取得する(S103)。この場合に、取得部110は、予め用意されている地図情報に基づいて、緯度と経度とに対応する標高Zbを取得してもよいし、ドローンなどの写真から標高Zbを特定してもよい。他の例として、標高Zbは衛星画像、航空画像、国土地理院のデータなどから取得してもよい。
【0021】
取得部110は、代表地点Pについて、標高Zbに浸水高Zaを加算することにより、水面高Zを算出し(すなわち、Z=Za+Zb)、実測地点データベース142に記憶する(S105)。これに代えて、取得部110は、ステップS101において代表地点Pの地表の標高Zbと、その水面高Zとを外部から取得してもよい。その場合には、ステップS105を省略して、標高Zbと、その水面高Zとを実測地点データベース142に記憶してよい。付言すれば、いずれの場合であっても、水面高Zは当該地点での浸水高Zaに対応した情報であるといえる。
【0022】
面決定部120は、代表地点Pの水面高Zを用いて近似水面を決定し、記憶部140に記憶する(S107)。決定方法の一例として、面決定部120は、代表地点Pの水面高Zから最小二乗法を用いて、代表地点Pを含む領域全体の一意な水面高Zavgを決定することが挙げられる。最小二乗法に代えて、水面高Zの平均値や中央値などを近似水面の水面高Zavgとしてもよい。これら最小二乗法、平均値および中央値はいずれも、代表地点Pの水面高Zの統計値の一例となっている。
【0023】
また、取得した代表地点Pの全部を用いた統計値に代えて、代表地点Pを複数の領域ごとにグループ化し、当該グループ内での統計値をそれぞれの領域での近似水面に決定してもよい。例えば東西南北で4分割したり、氾濫を起こした河からまたは氾濫地点からの距離に基づいて領域を分割することが考えられる。これらの場合でも当該近似水面はいずれかの代表地点Pの統計値であるといえる。それぞれの近似水面の水面高Zavgはその領域に対応付けて記憶部140に記憶される。
【0024】
面決定部120は、予め定められた条件で実測地点Pの水面高Zが異常値であるか否かを判断し、異常値と判断された水面高Zを除外する(S111)。予め定められた条件の一例は、水面高Zが、ステップS107で決定した近似水面の水面高Zavgから予め定められた高さ以上乖離しているか否かである。例えば、面決定部120は、水面高Zavgから1.5m以上高いまたは低い水面高Zを異常値と判断する。
【0025】
面決定部120は、異常値と判断した水面高Zに対応する実測地点Pについて、異常値であることを示すフラグを実測地点データベース142に記憶する。
図3に示す例において、代表地点P2の水面高(Za2+Zb2)が異常値であると判断され、それを示す「*」が「異常値」の欄に記憶されている。異常値と判断された水面高Zは、以降の計算において除外される。除外の方法については後述する。
【0026】
面決定部120は、実測地点Pの平面座標、すなわち、経度(X)および緯度(Y)を母点としたボロノイ図を生成する(S113)。平面上に分散している複数の点からボロノイ図を生成する方法は数学的な操作であり、既知の方法が用いられてよい。
【0027】
図6は、実測地点Pを母点としたボロノイ図の例を示す。黒点が代表地点Pであり、ボロノイ境界でひとつひとつの黒点が囲まれている。破線は十分な母点が周囲にない母点に対する擬似的な境界である。
【0028】
面決定部120は、さらにステップS113で生成したボロノイ図に基づくドロネー三角形を生成する(S115)。ボロノイ図に基づいてドロネー三角形を生成する方法も数学的な操作であり、既知の方法が用いられてよい。
【0029】
図7は、
図6のボロノイ図に基づく、実測地点Pを頂点としたドロネー三角形の例を示す。黒点が代表地点Pであり、3つの代表地点Pを結んでできているのがドロネー三角形である。
【0030】
面決定部120は、各ドロネー三角形の各頂点に対応する実測地点Pの高さ、すなわちZ座標として水面高Zを用いることにより、ドロネー三角形の三次元の面方程式を決定し、当該ドロネー三角形の頂点と対応付けて記憶部140に記憶する(S117)。ここで、三角形の各頂点のXYZ座標から、Z=aX+bY+cで表される面方程式の各係数a,b,cを決定する方法も数学的な操作であり、既知の方法が用いられてよい。
【0031】
ステップS111で判定した異常値の除外の方法の一例は、ステップS117において、当該異常値に代えて、ステップS107で決定した近似水面の水面高Zavgを用いることが挙げられる。また、異常値の除外の方法の他の例は、ステップS111で異常値と判断された実測地点P2を、ステップS113からS117について母点として用いないことである。
【0032】
以上、動作フローS10で、実測地点Pを頂点とするドロネー三角形の三次元の面方程式が決定される。
【0033】
図5は、推定部130が注目地点Qの浸水高Zaqを推定する動作フロー(S20)の一例を示す。当該動作フローは、浸水高推定装置100のユーザからの指示に基づき動作を開始する。これに代えて、動作フローS20は動作フローS10に続けて自動的に開始してもよい。
【0034】
取得部110は、注目地点Qの情報を受け付ける(S201)。当該情報には、注目地点Qの緯度Xq、経度Yqおよび標高Zbqが含まれる。これらの情報を受け付ける方法については、動作フローS10における実測地点Pの緯度、経度および標高を取得する方法と同様であってよい。
【0035】
推定部130は、記憶部140に記憶されたドロネー三角形の各頂点のXY座標と注目地点QのXY座標に基づいて、注目地点Qがいずれのドロネー三角形に属するかを判断する(S203)。この場合、各頂点のXY座標から当該三角形の各辺を示す直線αX+βY+γ=0が決まるので、これらと注目地点QのXY座標(Xq,Yq)とを比較することで、注目地点Qがこの三角形の内部もしくは辺上にあるか、外部にあるかが判断できる。他の例として、XY平面に投影した状態での、三角形のある頂点から他の頂点へのベクトルと当該頂点から注目地点へのベクトルとの外積を各頂点について求め、これらの外積に基づいて三角形への属否を判断してもよい。
【0036】
図7には、例として、注目地点Q1が頂点Pa,Pb,Pcのドロネー三角形の内部にあることが示されている。他の例として、注目地点Q2がいずれのドロネー三角形の内部にも辺上にもない、すなわち、外側にあることが示されている。
【0037】
注目地点Qがいずれかのドロネー三角形に属すると判断された場合(S203:Yes)、推定部130は当該ドロネー三角形の面方程式に、注目地点Qの平面座標(Xq,Yq)を代入することで、注目地点Qの水面高Zq(=aXq+bYq+c)を算出する(S205)。さらに、推定部130は、水面高Zqから注目地点Qの地表の標高Zbqを引き算することにより、注目地点Qの浸水高Zaq(=Zq-Zbq)を算出する(S209)。
【0038】
一方、注目地点Qがいずれのドロネー三角形にも属しないと判断された場合(S203:No)、推定部130は記憶部140に記憶されている近似水面を読み出し、当該近似水面の水面高Zavgを、注目地点Qの水面高Zqとする(S207)。近似水面が領域ごとに算出されて記憶部140に記憶されている場合には、注目地点Qに対応する領域の近似水面の水面高Zavgが用いられてよい。さらに、推定部130は、水面高Zqから注目地点Qの地表の標高Zbqを引き算することにより、注目地点Qの浸水高Zaq(=Zq-Zbq)を算出する(S209)。
【0039】
推定部130は、浸水高Zaqを注目地点Qの推定値として出力する(S211)。出力の方法は、モニターに表示してもよいし、他の情報処理装置に送信してもよいし、注目地点Qに対応付けて記憶部140に記憶してもよい。その場合に、面方程式から算出したか、近似水面を使ったかを区別して出力してもよい。さらに、推定部130は当該浸水高Zaqに基づいて、予め定められた条件で被害の度合いをランク付けしたり、保険金を算出し、それらを出力してもよい。
【0040】
以上、本実施形態によれば、実測できない地点でも浸水高を推定することができる。特に、いずれかのドロネー三角形に属する場合と属しない場合とにそれぞれ適した推定の方法を用いるので、推定の誤差生を抑えることができる。
【0041】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0042】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0043】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0044】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0045】
図8は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ1200の例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0046】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、グラフィックコントローラ1216、およびディスプレイデバイス1218を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータはまた、ROM1230およびキーボード1242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ1240を介して入/出力コントローラ1220に接続されている。
【0047】
CPU1212は、ROM1230およびRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU1212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示されるようにする。
【0048】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ1226は、プログラムまたはデータをDVD‐ROM1201から読み取り、ハードディスクドライブ1224にRAM1214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0049】
ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ1240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ1220に接続してよい。
【0050】
プログラムが、DVD-ROM1201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ1224、RAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0051】
例えば、通信がコンピュータ1200および外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御下、RAM1214、ハードディスクドライブ1224、DVD‐ROM1201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0052】
また、CPU1212は、ハードディスクドライブ1224、DVD‐ROMドライブ1226(DVD‐ROM1201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0053】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0054】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0056】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0057】
10 地図
100 浸水高推定装置
110 取得部
120 面決定部
130 推定部
140 記憶部
142 実測地点データベース