(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112955
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】インキ組成物及び印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20230807BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20230807BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C09D11/102
B41M1/30 D
B41M1/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014998
(22)【出願日】2022-02-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】冨山 亮太
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴匡
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA03
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC02
2H113DA43
2H113DA45
2H113DA47
2H113DA63
2H113EA10
2H113FA08
2H113FA23
4J039AB02
4J039AB12
4J039AD01
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4J039AE08
4J039BA04
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4J039BA35
4J039BC01
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4J039BC36
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE16
4J039CA07
4J039EA33
4J039EA36
4J039EA42
4J039EA43
4J039FA02
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】耐摩擦性、基材との密着性、及び光沢感に優れた印刷層を形成することができるとともに、グラビア印刷に用いた場合にもドクター筋の発生を抑制することが可能なインキ組成物を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂、炭化水素ワックス、及び有機溶剤を含有し、バインダー樹脂が、ポリアミド樹脂及びニトロセルロースを含み、ニトロセルロースの窒素分が11.5~12.2質量%であり、ニトロセルロースの粘度記号が1/16~2であり、炭化水素ワックスの針入度が9.5以上であるインキ組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、炭化水素ワックス、及び有機溶剤を含有し、
前記バインダー樹脂が、ポリアミド樹脂及びニトロセルロースを含み、
前記ニトロセルロースの窒素分が11.5~12.2質量%であり、
前記ニトロセルロースの粘度記号が1/16~2であり、
前記炭化水素ワックスの針入度が9.5以上であるインキ組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(P)及び前記ニトロセルロース(N)の質量比が、P:N=50:50~90:10である請求項1に記載のインキ組成物。
【請求項3】
塩素化ポリオレフィン樹脂をさらに含有する請求項1又は2に記載のインキ組成物。
【請求項4】
前記炭化水素ワックスの含有量が、前記インキ組成物中の固形分を基準として、0.5~2.0質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項5】
基材と、前記基材の表面上に配設される、請求項1~4のいずれか一項に記載のインキ組成物で形成された印刷層と、を備える印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ組成物及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム等の基材を用いて包装材料を製造する場合、基材の装飾や表面保護のために、グラビアインキ等の印刷インキによる印刷が施される。グラビア印刷は、高精細かつ高速で印刷することが可能であるため、大量生産に向いている。但し、作業環境改善等の観点から、トルエンを含有しないノントルエン系溶剤のインキの開発が要望されている。また、包装材の多様化及び包装技術の高度化に対応すべく、高品質な画像を印刷可能なインキが要望されている。
【0003】
フィルム状の基材に印刷するために用いるグラビアインキ等のインキに要求される特性としては、ドクター筋が生じにくい等のインキ自体の印刷適性とともに、インキにより形成される印刷層の耐摩擦性や基材との密着性等の皮膜特性が重要である。また、近年、印刷物の外観を良好にすべく、光沢感(グロス)に優れた印刷層が求められる傾向にある。
【0004】
形成される印刷層の皮膜特性の向上を目的として、例えば、バインダー樹脂、ワックス、塩素化ポリオレフィン、及び脂肪酸アミドを含有する表刷り印刷用のグラビアインキが提案されている(特許文献1)。また、バインダー樹脂、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレンワックス、及び脂肪酸アミドを含有する、ラミネート用のグラビア印刷インキが提案されている(特許文献2)。さらに、バインダー樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、及び脂肪酸アミドを含有する、二つの基材同士の間に印刷層を形成するためのグラビアインキが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-299136号公報
【特許文献2】特開2020-70396号公報
【特許文献3】特開2018-184584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3で提案されたグラビアインキ等であっても、版のインキをドクターブレードで掻き取った際に、版上の回転方向に沿って形成される白い筋(いわゆる、ドクター筋)の発生を必ずしも十分に抑制しうるものではなかった。また、形成されるインキ層の耐摩擦性、基材との密着性、及び光沢感(グロス)については必ずしも十分であるとは言えず、さらなる改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、耐摩擦性、基材との密着性、及び光沢感に優れた印刷層を形成することができるとともに、グラビア印刷に用いた場合にもドクター筋の発生を抑制することが可能なインキ組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、このインキ組成物を用いた印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すインキ組成物が提供される。
[1]バインダー樹脂、炭化水素ワックス、及び有機溶剤を含有し、前記バインダー樹脂が、ポリアミド樹脂及びニトロセルロースを含み、前記ニトロセルロースの窒素分が11.5~12.2質量%であり、前記ニトロセルロースの粘度記号が1/16~2であり、前記炭化水素ワックスの針入度が9.5以上であるインキ組成物。
[2]前記ポリアミド樹脂(P)及び前記ニトロセルロース(N)の質量比が、P:N=50:50~90:10である前記[1]に記載のインキ組成物。
[3]塩素化ポリオレフィン樹脂をさらに含有する前記[1]又は[2]に記載のインキ組成物。
[4]前記炭化水素ワックスの含有量が、前記インキ組成物中の固形分を基準として、0.5~2.0質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載のインキ組成物。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示す印刷物が提供される。
[5]基材と、前記基材の表面上に配設される、前記[1]~[4]のいずれかに記載のインキ組成物で形成された印刷層と、を備える印刷物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐摩擦性、基材との密着性、及び光沢感に優れた印刷層を形成することができるとともに、グラビア印刷に用いた場合にもドクター筋の発生を抑制することが可能なインキ組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このインキ組成物を用いた印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の一実施形態であるインキ組成物(以下、単に「インキ」とも記す)は、バインダー樹脂、炭化水素ワックス、及び有機溶剤を含有する、例えばグラビア印刷等に用いられる表刷り印刷用のインキとして好適なインキ組成物である。以下、本実施形態のインキ組成物の詳細について説明する。
【0012】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、基材に付与したインキによって形成される印刷層(画像)を構成するための結着樹脂として機能する成分である。本実施形態のインキ組成物に用いるバインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びニトロセルロースを含む。なお、バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びニトロセルロースで実質的に構成されることが好ましい。ポリアミド樹脂とニトロセルロースを併用することで、形成される印刷層の耐摩擦性、基材との密着性、及び光沢感を向上させることができる。インキ組成物中のバインダー樹脂の含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、通常、20~95質量%程度とすればよく、用途に応じて適宜設定すればよい。
【0013】
ポリアミド樹脂としては、通常、多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得られる、有機溶剤に可溶な熱可塑性のポリアミド樹脂を用いる。多塩基酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、及び重合脂肪酸等を挙げることができる。
【0014】
多価アミンとしては、脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、及び芳香族ポリアミン等を用いることができる。脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等を挙げることができる。脂肪族ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を挙げることができる。脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。芳香族ポリアミンとしては、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。
【0015】
ポリアミド樹脂の溶解性の観点から重量平均分子量は、2,000~50,000であることが好ましく、3,000~10,000であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂の重量平均分子量が上記の範囲内であると、形成される印刷層の耐摩擦性をさらに向上させることができる。インキ組成物中のポリアミド樹脂の含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、5~60質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
ポリアミド樹脂の酸価は、30mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。また、ポリアミド樹脂のアミン価は、30mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0017】
ニトロセルロース(硝化綿)は、通常、天然セルロースと硝酸を反応させて得られる、天然セルロース中の3個の水酸基を硝酸基に置換した硝酸エステルである。本実施形態のインキ組成物にバインダー樹脂として配合されるニトロセルロースの窒素分は、11.5~12.2質量%である。窒素分が上記の範囲内であるニトロセルロースをバインダー樹脂として用いることで、耐摩擦性に優れた印刷層を形成しうるインキ組成物とすることができる。
【0018】
また、ニトロセルロースの粘度記号は1/16~2であり、好ましくは1/8~1、さらに好ましくは1/4~1である。粘度記号が上記の範囲内であるニトロセルロースをバインダー樹脂として用いることで、光沢感のあり、かつ耐摩擦性に優れた印刷層を形成するとともに、グラビア印刷に適用した場合にドクター筋が発生しにくいインキ組成物とすることができる。ニトロセルロースの粘度記号が2超であると、形成される印刷層の光沢感及び耐摩擦性が低下するとともに、グラビア印刷に適用した場合にドクター筋が発生しやすくなる。なお、ニトロセルロースの粘度記号は、JIS K 6703:1995で規定される25℃における物性値である。インキ組成物中のニトロセルロースの含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、1~40質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがさらに好ましく、3~25質量%であることが特に好ましく、8~15質量%が最も好ましい。
【0019】
インキ組成物中のポリアミド樹脂(P)及びニトロセルロース(N)の質量比は、P:N=50:50~90:10であることが好ましく、60:40~80:20であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(P)とニトロセルロース(N)の質量比を上記範囲内とすることで、形成される印刷層の耐摩擦性及び基材との密着性をより向上させることができる。
【0020】
(炭化水素ワックス)
インキ組成物は、JIS K 2207で規定される25℃における針入度(硬度)が9.5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは15以上の炭化水素ワックスを含有する。その針入度が上記範囲内にある炭化水素ワックスを含有させることで、形成される印刷層(インキ皮膜)の耐摩擦性がさらに向上する。また、より微細に分散されることで光沢感が損なわれにくくなるとともに、グラビア印刷に適用した場合にドクター筋が発生しにくくなり、印刷適性が向上する。
【0021】
炭化水素ワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ポリプロピレンワックス等を挙げることができる。なかでも、ポリエチレンワックス及びフィッシャー・トロプシュ・ワックスが好ましい。インキ組成物中の炭化水素ワックスの含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、0.5~2.0質量%とすることが好ましく、0.7~1.7質量%とすることがさらに好ましい。
【0022】
ポリエチレンワックスとしては、高密度重合ポリエチレン、低密度重合ポリエチレン、酸化ポリエチレン、酸変性ポリエチレン、及び特殊モノマー変性ポリエチレン等を挙げることができる。また、フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、一酸化炭素と水素を原料とし、フィッシャー・トロプシュ法により製造されたワックスであり、ほぼ飽和の、分枝を有しない直鎖の分子構造を有する。
【0023】
(塩素化ポリオレフィン樹脂)
インキ組成物は、塩素化ポリオレフィン樹脂をさらに含有することが好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂は、接着付与剤として機能しうる成分である。このため、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有させることで、インキ組成物で形成される印刷層の各種基材への密着性をさらに向上させることができる。
【0024】
インキ組成物中の塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1~50質量部とすることが好ましく、5~45質量部とすることがさらに好ましく、7.5~40質量部とすることが特に好ましく、10~30質量部とすることが最も好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量を上記の範囲とすることで、各種基材への印刷層の密着性をより高めることができる。
【0025】
塩素化ポリオレフィン樹脂は、水素原子の少なくとも一部が塩素原子で置換されたポリオレフィン樹脂である。塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は5,000~100,000であることが、バインダー樹脂との相溶性及び炭化水素ワックスとの親和性が良好であるために好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率が25~45質量%であると、基材に対する印刷層の密着性がさらに向上するために好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は、塩素化ポリオレフィン樹脂中の塩素原子の含有割合(質量%)である。
【0026】
塩素化ポリオレフィン樹脂を構成するポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン系不飽和炭化水素の単独重合体又は共重合体が好ましく、ポリプロピレンがさらに好ましい。すなわち、塩素化ポリオレフィン樹脂としては、塩素化ポリプロピレンが好ましい。塩素化ポリプロピレンと炭化水素ワックスを併用することで、各種基材に対する印刷層の密着性を相乗的に向上させることができる。
【0027】
(脂肪酸アミド)
インキ組成物には、脂肪酸アミドをさらに含有させることが好ましい。脂肪酸アミドを含有させることで、形成される印刷層の耐ブロッキング性を向上させることができる。脂肪酸アミドとしては、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基及びアミド基を有するものが好ましい。脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等を挙げることができる。インキ組成物中の脂肪酸アミドの含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、0.1~10質量%とすることが好ましく、0.5~5質量%とすることがさらに好ましい。
【0028】
(溶剤)
インキ組成物は、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;等を用いることができる。
【0029】
なかでも、トルエンやキシレン等の芳香族系有機溶剤を実質的に含有しない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)が好ましい。すなわち、インキ組成物は、トルエンを実質的に含有しないノントルエン系のインキであることが環境面で好ましい。なお、有機溶剤としては、脂肪族炭化水素系有機溶剤、エステル系有機溶剤、及びアルコール系有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤中の脂肪族炭化水素系有機溶剤の含有割合は、有機溶剤の全体を基準として、30~80質量%であることが好ましい。有機溶剤中のエステル系有機溶剤の含有割合は、有機溶剤の全体を基準として、1~50質量%であることが好ましい。有機溶剤中のアルコール系有機溶剤の含有割合は、有機溶剤の全体を基準として、1~50質量%であることが好ましい。
【0030】
(顔料)
インキ組成物には、顔料を含有させることができる。なお、顔料等の色材を実質的に含有しない無色のインキ組成物としてもよい。
【0031】
顔料としては、体質顔料、無機顔料、及び有機顔料及び等を用いることができる。体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ等の白色無機顔料;カーボンブラック、鉄黒等の黒色無機顔料;アルミニウム粒子、マイカ、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、酸化亜鉛等の各色無機顔料;等を挙げることができる。
【0032】
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系等の各系統の有機顔料を挙げることができる。
【0033】
インキ組成物中の顔料の含有量は、インキの着色力等を確保するのに十分な量に設定すればよい。具体的には、インキ組成物中の顔料の含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、通常1~80質量%とすればよい。
【0034】
(添加剤)
インキ組成物には、各種の添加剤をさらに含有させることができる。添加剤としては、顔料誘導体、分散剤、可塑剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、キレート剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、前述の炭化水素ワックス以外のワックス成分、架橋剤、シランカップリング剤等を挙げることができる。
【0035】
インキ組成物にキレート剤を含有させることで、プラスチック基材等に対する密着性がさらに向上するとともに、耐摩擦性がさらに向上した印刷層を形成することができる。キレート剤としては、チタンキレート剤を用いることが好ましい。チタンキレート剤としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシドの他;トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテトナート、チタニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシチタン、チタニウムエチルアセトアセテテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、n-ブチルリン酸エステルチタン、プロパンジオキスチタンビス(エチルアセチルアセテート)等を挙げることができる。
【0036】
インキ組成物中、キレート剤の含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。キレート剤の含有量を上記の範囲とすることで、インキ安定性が向上するとともに、形成される印刷層の耐摩擦性をより高めることができる。
【0037】
(インキ組成物の製造)
インキ組成物は、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、バインダー樹脂、炭化水素ワックス等を溶剤中に溶解又は分散させることによって製造することができる。インキ組成物の粘度等の物性は、分散機に用いるメディアのサイズや充填率、分散処理時間等を適宜制御することによって調整することができる。なお、炭化水素ワックスは、溶剤にあらかじめ微分散させておき、製造工程中に添加することが好ましい。分散機としては、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル等を用いることができる。
【0038】
<印刷物>
本発明の一実施形態である印刷物は、基材と、この基材の表面上に配設される、前述のインキ組成物で形成された印刷層とを備える。本実施形態の印刷物は、例えば、基材上にインキ組成物を用いて印刷した後、揮発成分を除去して印刷層を形成することで製造することができる。印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷等を挙げることができる。なかでも、グラビア印刷によって印刷することが好ましい。グラビア印刷に適した粘度及び濃度となるようにインキ組成物を希釈溶剤で希釈した後、グラビア印刷機の印刷ユニットに供給され、プラスチックフィルム等の基材上に塗布される。その後、オーブン等によって乾燥させることで印刷層(皮膜)を形成して定着させることで、積層体である印刷物を得ることができる。
【0039】
基材としては、フィルム状又はシート状の基材を用いることができる。基材としては、紙やプラスチック製の基材(フィルム及びシート)を用いることができる。基材を構成するプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;セロハン;等を挙げることができる。
【0040】
プラスチック製の基材は、コロナ処理されていてもよいし、未処理であってもよい。また、プラスチック製の基材は延伸されていてもよいし、未延伸であってもよい。プラスチック製の基材には、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の金属又は金属酸化物が蒸着されていてもよく、蒸着面がポリビニルアルコール等の塗料でコーティングされていてもよい。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0042】
<各成分の準備>
以下に示す各成分を準備した。
(バインダー樹脂)
・ポリアミドA:重量平均分子量4000、酸価7mgKOH/g以下、アミン価7mgKOH/g以下
・ポリアミドB:重量平均分子量6,000、酸価8mgKOH/g未満、アミン価6mgKOH/g未満
・硝化綿A:商品名「RS1/2」、キミア社製、窒素分11.5~12.2%、粘度記号1/2
・硝化綿B:商品名「RS1/4」、キミア社製、窒素分11.5~12.2%、粘度記号1/4
・硝化綿C:商品名「RS1/16」、キミア社製、窒素分11.5~12.2%、粘度記号1/16
・硝化綿D:商品名「RS2」、キミア社製、窒素分11.5~12.2%、粘度記号2
・硝化綿E:商品名「RS20」、キミア社製、窒素分11.5~12.2%、粘度記号20
【0043】
(炭化水素ワックス)
・ワックスA:低密度ポリエチレンワックス、商品名「ハイワックス110P」、三井化学社製、針入度25
・ワックスB:酸化ポリエチレンワックス、商品名「ハイワックス220MP」、三井化学社製、針入度14
・ワックスC:ポリオレフィンワックス分散液、商品名「X-7019」、岐阜セラツク社製、針入度13
・ワックスD:低密度ポリエチレンワックス、商品名「ACポリエチレン6A」、HoneyWell社製、針入度4
・ワックスE:ポリエチレンワックス、商品名「MPP620VF」、Micro Powders社製、針入度1
【0044】
(顔料)
・カーボンブラック:商品名「ミツビシカーボンブラックMA100」、三菱ケミカル社製
・酸化チタン:商品名「チタニックスJR-600A」、テイカ製
【0045】
(その他の成分)
・脂肪酸アミド:ステアリン酸アマイド、商品名「ニュートロンS」、日本精化社製
・塩素化PO:塩素化ポリオレフィン、商品名「スーパークロン360T」、日本製紙社製
・チタンキレート剤:商品名「オルガチックスTC-115」、マツモトファインケミカル社製
・消泡剤:商品名「BYK-1751」、ビックケミー・ジャパン社製
・有機溶剤:メチルシクロヘキサン(MCH)/酢酸ノルマルプロピル(NPAC)/イソプロピルアルコール(IPA)=5/3/2
【0046】
<インキ組成物の調製>
(実施例1)
ポリアミドA10部、硝化綿A4部、ワックスA0.3部、カーボンブラック10部、脂肪酸アミド0.5部、塩素化PO2部、チタンキレート剤1部、消泡剤0.1部、及び有機溶剤72.1部を混合し、ペイントシェーカーを使用して十分に分散させて、インキ組成物(実施例1)を得た。
【0047】
(実施例2~26、比較例1~10)
表1-1~1-3に示す種類及び量の各成分を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、インキ組成物(実施例2~26、比較例1~10)を得た。なお、表1-1~1-3に記載の材料は、すべて固形分での配合量を表す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
<評価>
調製した各インキ組成物を、ザーンカップ#3を用いて測定される25℃における粘度が15秒となるように有機溶剤(MCH/NPAC/IPA=5/3/2)で希釈して、印刷用のインキを調製した。ヘリオ175線/inchグラビア彫刻版を備えたグラビア印刷機を使用し、以下に示す各基材に調製した印刷用のインキを付与して印刷物を製造した。
・OPP:片面をコロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、厚さ25μm(処理面にインキを付与)
・CPP:片面をコロナ放電処理した無軸延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、厚さ30μm(未処理面にインキを付与)
【0052】
(印刷物外観(グロス))
光沢計(商品名「micro-TRI-gloss S」、BYK社製)を使用して製造した印刷物(OPP)の60°角のグロス値を測定し、以下に示す評価基準にしたがって印刷物の外観を評価した。結果を表2に示す。
5:グロス値が70以上であった。
4:グロス値が60以上70未満であった。
3:グロス値が50以上60未満であった。
2:グロス値が40以上50未満であった。
1:グロス値が40未満であった。
【0053】
(密着性)
製造した印刷物の印刷面にセロファンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン社製、幅12mm)を貼り付けた後に剥離する密着性試験を行い、以下に示す評価基準にしたがって各基材への印刷層の密着性を評価した。結果を表2に示す。
5:セロファンテープ側にインキ塗膜の取られなし。
4:セロファンテープ側にインキ塗膜が面積比率で1%以上5%未満取られた。
3:セロファンテープ側にインキ塗膜が面積比率で5%以上20%未満取られた。
2:セロファンテープ側にインキ塗膜が面積比率で20%以上50%未満取られた。
1:セロファンテープ側にインキ塗膜が面積比率で50%以上取られた。
【0054】
(耐摩擦性)
学振型摩耗試験機を使用し、製造した印刷物の印刷面を金巾3号で100回(200g荷重)摩擦した。摩擦後の金巾3号の表面を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって印刷層の耐摩擦性を評価した。結果を表2に示す。
5:金巾3号側にインキ塗膜の取られなし。
4:金巾3号側にインキ塗膜が面積比率で1%以上10%未満取られた。
3:金巾3号側にインキ塗膜が面積比率で10%以上20%未満取られた。
2:金巾3号側にインキ塗膜が面積比率で20%以上50%未満取られた。
1:金巾3号側にインキ塗膜が面積比率で50%以上取られた。
【0055】
(印刷適性(ドクター筋))
グラビア印刷機を使用し、版の空転150m/minで60分後にドクター筋を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって印刷適性を評価した。なお、ドクターブレードとしては、スチール製の市販品を用いた。結果を表2に示す。
5:ドクター筋がない、又は薄いドクター筋が1~2本程度あった。
4:薄いドクター筋が3~5本程度あった。
3:薄いドクター筋が6本以上、又は濃いドクター筋が1~2本程度あった。
2:濃いドクター筋が3~5本程度あった。
1:濃いドクター筋が6本以上あった。
【0056】