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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112960
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】可動式量水標
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/04 20060101AFI20230807BHJP
   G01F 23/56 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
G01F23/04 F
G01F23/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015006
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】上坂 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 慎司
(72)【発明者】
【氏名】善 幸生
(72)【発明者】
【氏名】白野 武
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸也
(72)【発明者】
【氏名】松崎 公彦
(72)【発明者】
【氏名】川住 優
(72)【発明者】
【氏名】地川 聖也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 時人
【テーマコード(参考)】
2F013
【Fターム(参考)】
2F013AA06
2F013CA11
2F013CB10
(57)【要約】
【課題】壁面に固定された固定式目盛板に必要時のみ装着されることで汚れの付着を回避でき、緊急時においても水位を確実に計測可能な移動式量水標を提供する。
【解決手段】可動式量水標1は、水路を形成する壁面50に、上下方向に固定された固定式目盛板51に沿ってスライドする可動式目盛板2と、可動式目盛板2の上端2aに取り付けられ、可動式目盛板2を吊り下げる紐状体3と、固定式目盛板51の側縁51dと、可動式目盛板2の側縁2cとの間に設けられ、可動式目盛板2を固定式目盛板51に沿ってスライド可能に保持する保持部材4を備え、保持部材4は、ガイドレール6と、このガイドレール6を着脱可能に支持する支持部材7である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路における水位を計測するための可動式量水標であって、
前記水路を形成する壁面に、上下方向に固定された固定式目盛板に沿ってスライドする可動式目盛板と、
前記可動式目盛板の上端に取り付けられ、この可動式目盛板を吊り下げる紐状体と、
前記固定式目盛板の側縁と、前記可動式目盛板の側縁との間に設けられ、前記可動式目盛板を前記固定式目盛板に沿ってスライド可能に保持する保持部材を備えることを特徴とする可動式量水標。
【請求項2】
前記保持部材は、ガイドレールと、このガイドレールを着脱可能に支持する支持部材であり、
前記ガイドレールは、前記可動式目盛板の前記側縁と嵌合する嵌合部が形成されるとともに、少なくともこの嵌合部と反対側の端面に第1の磁石が設けられ、
前記支持部材は、前記固定式目盛板の前記側縁に取り付けられる取付部が形成されるとともに、前記第1の磁石を吸着する第2の磁石が設けられることを特徴とする請求項1に記載の可動式量水標。
【請求項3】
前記可動式目盛板は、その下端にフロートを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可動式量水標。
【請求項4】
前記可動式目盛板は、複数の板体と、この複数の板体同士を連結する少なくとも1のジョイントを備えた折り畳み式であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の可動式量水標。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路における水位を計測するための量水標に係り、特に、壁面に固定された固定式目盛板に必要時のみ装着されて、水位を計測可能な可動式量水標に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水力発電設備において、ダム水位は極めて重要な計測データであり、常時電子機器を用いて計測している箇所が多い。しかし、電子機器に故障が生じた際には、水路を形成する壁面に固定された目盛板(量水標)の指示値を目視により読み取ることで水位を計測している。
このような量水標として、例えば、特許文献1には、「河川の最高水位を記録できる量水標」という名称で、堤防法面や護岸法面等に設置される量水標に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、中空状函と、この中空状函の正面蓋に表示される目盛りと、中空状函の内部に設けられるフロートとフロートが上下動するためのガイドを備え、ガイドの内側には凹凸突起形状のストッパーが設けられることを特徴とする。
上記の発明においては、目盛りによって現在水位を読み取ることができるので、量水標として用いることができる。さらに、中空状函の内部に水が浸入したときにはフロートが上昇し、水位が下がったときにはフロートがストッパーに引っ掛かって停止し最高水位を記録することから、痕跡計としても使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-57650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水路を形成する壁面に量水標を固定すると、干満部の目盛りに汚れが付着し、水位を読み取れないことがある。
一方、水路の清掃をするためには、断水が必要である場合が多い。また、ダム放流や電子機器故障等の突発的事象が発生した際に、断水は実務上行われないため、このような緊急時には目盛りの清掃ができず、水位を読み取れない事態になりかねない。そのため、例えば、出水時にダム水位が把握できない状況に陥ると、第三者被害に繋がるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、壁面に固定された固定式目盛板に必要時のみ装着されることで汚れの付着を回避でき、これにより緊急時においても水位を確実に計測可能な移動式量水標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明は、水路における水位を計測するための可動式量水標であって、水路を形成する壁面に、上下方向に固定された固定式目盛板に沿ってスライドする可動式目盛板と、可動式目盛板の上端に取り付けられ、この可動式目盛板を吊り下げる紐状体と、固定式目盛板の側縁と、可動式目盛板の側縁との間に設けられ、可動式目盛板を固定式目盛板に沿ってスライド可能に保持する保持部材を備えることを特徴とする。
このような発明において、紐状体として、例えば、ロープやチェーンが使用される。また、保持部材として、例えば、可動式目盛板の側縁に設けられるローラーと、固定式目盛板の側縁に形成されて、このローラーが嵌め込まれて内部を走行可能な溝部が考えられる。なお、固定式目盛板の上端の目盛の最大値は既知であり、可動式目盛板の下端の目盛をゼロに設定することができる。
【0007】
上記構成の発明においては、保持部材が設けられることにより、作業者が紐状体を把持して可動式目盛板を固定式目盛板に沿ってスライドさせることができる。
さらに、可動式目盛板を下降させてその下端を水面に着水させたときの読み取り値は、壁面の上端面から可動式目盛板の下端までの距離である。よって、固定式目盛板の上端における目盛の最大値を壁面の上端面の高さと一致させ、かつ可動式目盛板の下端の目盛をゼロに設定しておくと、固定式目盛板の目盛の最大値から可動式目盛板の読み取り値を差し引くことによって、水路の水位が計測される。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、保持部材は、ガイドレールと、このガイドレールを着脱可能に支持する支持部材であり、ガイドレールは、可動式目盛板の側縁と嵌合する嵌合部が形成されるとともに、少なくともこの嵌合部と反対側の端面に第1の磁石が設けられ、支持部材は、固定式目盛板の側縁に取り付けられる取付部が形成されるとともに、第1の磁石を吸着する第2の磁石が設けられることを特徴とする。
このような構成の発明において、第1の磁石は、ガイドレールの嵌合部と反対側の端面に設けられるほか、ガイドレール全体を形成していてもよい。また、第2の磁石は、支持部材の取付部と反対側の端面に設けられるほか、支持部材を形成していてもよい。
さらに、ガイドレールの全長は、可動式目盛板の全長や固定式目盛板の全長よりも短くてもよい。
【0009】
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、支持部材の第2の磁石がガイドレールの第1の磁石を吸着するため、ガイドレールは支持部材によって支持される。そして、支持部材によって支持されたガイドレールの嵌合部に、可動式目盛板の側縁を嵌合すると、可動式目盛板がガイドレールに沿って上下方向にスライド可能に取り付けられる。
すなわち、可動式目盛板は、ガイドレールと、支持部材を介し、固定式目盛板に対して着脱可能に取り付けられる。また、ガイドレールも、支持部材に対して着脱可能に取り付けられる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、可動式目盛板は、その下端にフロートを備えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、可動式目盛板の下端にフロートを備えるため、可動式目盛板を降下させたときに、この下端が確実に水面と一致する。また、可動式目盛板の下端が水面と一致したか否かを目視で確認する必要がない。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、可動式目盛板は、複数の板体と、この複数の板体同士を連結する少なくとも1のジョイントを備えた折り畳み式であることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1乃至第3のいずれかの発明の作用に加えて、ジョイントの数を増減することで、複数の板体の枚数が増減される。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、作業者が紐状体を把持して可動式目盛板を固定式目盛板に沿ってスライドさせることができるため、可動式目盛板を壁面に固定された固定式目盛板に必要時のみ装着して、水路の水位を計測することができる。よって、移動式量水標が不要な場合には、これを陸上で保管可能なため、移動式量水標への汚れの付着を回避でき、目盛の指示値を読み取ることができる。したがって、第1の発明によれば、緊急時においても水位を確実に計測可能である。
また、固定式目盛板の目盛の最大値から可動式目盛板の読み取り値を差し引くことによって、水路の水位が計測できるため、水位を容易に計測可能である。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、可動式目盛板は、ガイドレールに沿って上下方向にスライド可能であるため、可動式目盛板の下端を水面までスムーズに下降させることができる。また、可動式目盛板は、固定式目盛板に着脱可能に取り付け可能であり、ガイドレールも同様であるから、可動式目盛板とガイドレールに水中の汚れが付着することを防止できる。よって、緊急時に、可動式目盛板を確実にスライドさせることができる。
【0014】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、可動式目盛板の下端にフロートを備えることにより、この下端が確実に水面と一致することから、可動式目盛板の指示値の読み取り精度を向上させることができる。さらに、可動式目盛板の下端が水面と一致したか否かを目視で確認する必要がないことから、容易な使用が可能となる。
【0015】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加えて、水路の深さに応じ、ジョイントの数を増減することで、複数の板体の枚数が増減されるため、水路の深さに関わらず、水位を計測可能である。よって、汎用性が良好である。また、可動式目盛板は折り畳み式であるため、陸上で可動式目盛板を持ち運ぶ際の負荷を軽減可能であり、取り扱いも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る可動式量水標の平面図である。
図2】(a)は図1におけるA-A線断面図であり、(b)は(a)の分解図である。
図3】本発明の実施例に係る折り畳み式の可動式量水標の外観図である。
図4】本発明の実施例に係る折り畳み式の可動式量水標を用いた水位の計測方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0017】
本発明の実施の形態に係る可動式量水標について、図1乃至図4を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施例に係る可動式量水標の平面図である。
図1に示すように、実施例に係る可動式量水標1は、水路における水位を計測するための可動式量水標であって、可動式目盛板2と、紐状体3と、保持部材4を備える。
可動式目盛板2は、水路を形成する壁面50に、上下方向に固定された固定式目盛板51に沿ってスライドする樹脂製の長尺板材であって、その表面に目盛が付されている。詳細には、可動式目盛板2は、上端2aと、下端2bと、側縁2c,2dで囲まれてなるとともに、上端2a寄りに孔部2eが形成されている。
また、上端2aは最大目盛値Max2(=1m)、下端2bは最小目盛値Min2(=0m)にそれぞれ設定されている。
さらに、可動式目盛板2は、その下端2bにフロート5を備える。このフロート5は、上端面に下端2bを差し込んで固着するスリットが形成された直方体形状である。また、フロート5は、可動式目盛板2を吊り下げたときに、その吃水線が下端2bと一致するような形状に設計されることが望ましい。
【0018】
次に、固定式目盛板51もその表面に目盛が付された樹脂製の長尺板材であり、図示しないビスによって壁面50に固定されている。詳細には、固定式目盛板51は、上端51aと、下端51bと、側縁51c,51dで囲まれてなり、上端51aは最大目盛値Max51(=10m)、下端51bは最小目盛値Min51(=0m)にそれぞれ設定されている。ただし、固定式目盛板51は、最小目盛値Min51が水路の底面50bに一致するように配置されるため、水路の深さによって最大目盛値Max51が異なる固定式目盛板51が適宜選択される。
【0019】
さらに、紐状体3は、可動式目盛板2の上端2aに形成された孔部2eに取り付けられ、可動式目盛板2を吊り下げる部材である。具体的には、紐状体3はロープであって、孔部2eに通された一端3aが留め金具3b,3bを用いてループ状に形成されたものである。
また、保持部材4は、固定式目盛板51の側縁51dと、この側縁51dに平行に配置される可動式目盛板2の側縁2cとの間に設けられ、可動式目盛板2を固定式目盛板51に沿ってスライド可能、かつ固定式目盛板51に対し着脱可能に保持する部材である。
【0020】
続いて、保持部材について、図2を用いてさらに説明する。図2(a)は図1におけるA-A線断面図であり、図2(b)は図2(a)の分解図である。なお、図1で示した構成要素については、図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2(a)及び図2(b)に示すように、保持部材4は、ガイドレール6と、このガイドレール6を着脱可能に支持する支持部材7である。
このうち、ガイドレール6は、可動式目盛板2の側縁2cと嵌合する凹構造をなす嵌合部6aが形成されるとともに、嵌合部6aと反対側の端面に第1の磁石8が設けられる。また、ガイドレール6の全長は約1.1mであり、可動式目盛板2の全長(1m)よりやや長く、固定式目盛板の全長(10m)よりも短い。
なお、嵌合部6aと反対側の端面は、支持部材7と嵌合する凹構造をなす嵌合部6bであり、ガイドレール6の第1の磁石8以外の部分は磁性を有しない金属または樹脂製である。
【0021】
また、支持部材7は、直方体形状をなし、一方の端面7a寄りに固定式目盛板51の側縁51dに取り付けられる取付部9が形成されるとともに、他方の端面7b寄りに第1の磁石8を吸着する第2の磁石10が埋設されている。
取付部9は、ボルト9aと、このボルト9aの先端に螺合するナット9bと、ボルト9aが貫通する貫通孔9cを備えている。
なお、支持部材7の第2の磁石10以外の部分は樹脂製である。また、固定式目盛板51の側縁51d寄りには、ボルト9aが螺合するねじ孔51eが形成されている。
【0022】
よって、図2(b)に示すように、ガイドレール6を支持部材7に近づけると、支持部材7の第2の磁石10がガイドレール6の第1の磁石8を吸着するため、ガイドレール6は支持部材7によって支持される。
そして、支持部材7によって支持されたガイドレール6の嵌合部6aに、可動式目盛板2の側縁2cを嵌合すると、可動式目盛板2がガイドレール6に沿って上下方向にスライド可能に取り付けられる。
逆に、ガイドレール6の嵌合部6aから可動式目盛板2の側縁2cを取り外し、ガイドレール6を支持部材7から遠ざけると、可動式目盛板2と、ガイドレール6と、支持部材7はそれぞれ分離した状態になる。
すなわち、可動式目盛板2は、ガイドレール6と、支持部材7を介し、固定式目盛板51に対して着脱可能に取り付けられる。また、ガイドレール6も、支持部材7に対して着脱可能に取り付けられる。
【0023】
次に、可動式量水標1を用いた水位の計測方法について、図1を用いて説明する。
まず、最初に、図2を用いて説明したとおり、ガイドレール6を支持部材7に取り付け、可動式目盛板2の側縁2cをガイドレール6の嵌合部6aに嵌合する。次いで、作業者は、この嵌合を維持したまま、可動式目盛板2を嵌合部6aに沿って下降させ、下端2bに取り付けられたフロート5を水面52に着水させる。
すると、可動式目盛板2の下端2bから壁面50の上端面50aまでの距離L2を、可動式目盛板2の目盛から読み取ることができる。よって、求める水位Dは、壁面50の上端面50aから固定式目盛板51の上端51aまでの距離L50に、固定式目盛板51の全長L51を加算した(L50+L51)から、距離L2を差し引いた値となる。
ここで、距離L50と、全長L51は、いずれも既知である。また、可動式目盛板2を吊り下げたときにおけるフロート5の吃水線が下端2bと一致していると、可動式目盛板2の最小目盛値Min2が水面52とほぼ一致するので、距離L2の読み取り値の精度が良好となる。
【0024】
さらに、可動式目盛板を折り畳み式とした場合の構成と、この場合の水位の計測方法について、図3及び図4を用いてそれぞれ説明する。図3は、本発明の実施例に係る折り畳み式の可動式量水標の外観図である。図4は、本発明の実施例に係る折り畳み式の可動式量水標を用いた水位の計測方法を説明するための平面図である。なお、図1及び図2で示した構成要素については、図3及び図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3及び図4に示すように、可動式量水標1Aは、可動式目盛板2の代わりに、可動式目盛板2Aを備える。この可動式目盛板2Aは、四枚の板体11a~11dと、この四枚の板体11a~11d同士を連結する3個のジョイント12を備えた折り畳み式である。
【0025】
板体11a~11cは、可動式目盛板2の孔部2eがその下端にもそれぞれ形成されることと、フロート5を備えない以外は、それぞれ可動式目盛板2と同一の構造である。板体11dは、可動式目盛板2と同一の構造である。そして、最上となる板体11aには紐状体3が取り付けられる。
よって、可動式目盛板2Aの全長は、可動式目盛板2の全長の約4倍の4m程度となる。このような可動式目盛板2Aは、水路の深さ、すなわち、壁面50の上端面50aから水路の底面50bまでの距離が長くなる場合に好適である。
【0026】
また、ジョイント12は、具体的には、略U字形状の本体12aと、この本体12aの開放端をそれぞれ貫通するボルト12bからなるシャックルである。よって、可動式目盛板2Aにおいては、水路の深さに応じ、ジョイント12を用いて、例えば、板体11a~11cと同形状の板体を板体11aと板体11bの間に連結したり、板体11bを取り除いて板体11aと板体11cを連結したりすることにより、可動式目盛板2Aの全長を適宜増減することができる。
なお、本体12a内側の頂点と、ボルト12bとの間隔D12は、予め計測しておくとよい。
【0027】
次に、可動式目盛板2Aを用いて水位Dを計測するには、板体11dを先頭に、ガイドレール6に沿って、フロート5が水面52に着水するまで下降させる。そして、図4に示すように、このときの上端面50aにおける可動式目盛板2Aの目盛の指示値L2Aを読み取る。さらに、この指示値L2Aに、板体11b~11dの各長さを合算した長さと、間隔D12にジョイント12の個数を乗じた値と、を加えることで、距離L2が演算される。
よって、既知の(L50+L51)から、演算された距離L2を差し引くと、水位Dを求めることができる。
なお、ガイドレール6は、可動式目盛板2Aの全長にわたって設けられていないが、板体11dがガイドレール6に沿って設置されることにより、可動式目盛板2Aを固定式目盛板51に対して平行に配置可能である。
【0028】
以上説明したように、可動式目盛板2を備える可動式量水標1によれば、作業者が紐状体3を把持して可動式目盛板2を固定式目盛板51に沿ってスライドさせることができるため、壁面50に固定された固定式目盛板51に必要時のみ装着して、水路の水位Dを計測することができる。よって、可動式目盛板2が不要な場合には、これを陸上で保管可能なため、可動式目盛板2への汚れの付着を回避でき、その目盛の指示値を読み取ることができる。したがって、可動式量水標1によれば、緊急時においても水位Dを確実に計測可能である。
また、壁面50の上端面50aから固定式目盛板51の上端51aまでの距離L50に、固定式目盛板51の全長L51を加算した既知の(L50+L51)から、距離L2を差し引くことによって、水路の水位Dが計測できる。よって、常時用いられる電子機器に故障が生じた際等の緊急時においても、水位Dを容易に計測可能である。
【0029】
さらに、可動式目盛板2は、ガイドレール6に沿って上下方向にスライド可能であるため、可動式目盛板2の下端2bを水面52までスムーズに下降させることができる。また、可動式目盛板2は、ガイドレール6と、支持部材7を介し、固定式目盛板51に対して着脱可能に取り付けられ、ガイドレール6も、支持部材7に対して着脱可能に取り付けられることから、必要時のみ可動式目盛板2とガイドレール6を容易に固定式目盛板51に取り付けることができる。よって、可動式目盛板2とガイドレール6に水中の汚れが付着することを防止できるので、緊急時に、可動式目盛板2を確実にスライドさせることが可能である。
【0030】
加えて、可動式量水標1によれば、可動式目盛板2の上端2aにフロート5を備えることにより、この上端2aを確実に水面52と一致させることができる。よって、可動式目盛板2の下端2bから壁面50の上端面50aまでの距離L2の読み取り精度を向上させることができる。また、可動式目盛板2を吊り下げたときにおけるフロート5の吃水線が下端2bと一致するよう、フロートの形状を設計することにより、距離L2の読み取り精度を一層向上させることが可能である。
さらに、可動式目盛板2の上端2aが水面52と一致したか否かを目視で確認する必要がないことから、作業者が水面52をのぞき込むことが不要であり、また夜間においても読み取り精度を高く維持できる。よって、容易で安全に水位Dの計測をすることができる。
また、支持部材7は、ボルト9a等を備える取付部9によって、固定式目盛板51に常時取り付けられているため、水の流れによって支持部材7が流されるおそれが少ない。
【0031】
また、可動式量水標1Aによれば、水路の深さに応じ、ジョイント12の数を増減することで、複数の板体11a~11dの枚数が増減されるため、水路の深さに関わらず、水位Dを計測可能である。よって、汎用性が良好である。また、可動式目盛板2Aは折り畳み式であるため、陸上で可動式目盛板2Aを持ち運ぶ際の負荷を軽減可能であるとともに、収納場所の確保が容易となる。
【0032】
なお、本発明に係る可動式量水標1,1Aは、実施例に示すものに限定されない。例えば、可動式目盛板2と、板体11a~11dの全長は、1m以外であってもよく、ガイドレール6の全体が第1の磁石で形成されてもよい。また、支持部材7も、その全体が第2の磁石で形成されてもよい。さらに、支持部材7は、ボルト9a等を備える代わりに、固定式目盛板51の側縁51dを挟持するクランプを備えることで、固定式目盛板51に必要時のみ取り付ける構成であってもよい。
このほか、可動式目盛板2Aにおいて、ジョイント12として、シャックル以外に、例えばカラビナや結束バンドが用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、水路における水位を計測するための可動式量水標として利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1,1A…可動式量水標 2,2A…可動式目盛板 2a…上端 2b…下端 2c,2d…側縁 2e…孔部 3…紐状体 3a…一端 3b…留め金具 4…保持部材 5…フロート 6…ガイドレール 6a,6b…嵌合部 7…支持部材 7a,7b…端面 8…第1の磁石 9…取付部 9a…ボルト 9b…ナット 9c…貫通孔 10…第2の磁石 11a~11d…板体 12…ジョイント 12a…本体 12b…ボルト 50…壁面 50a…上端面 50b…底面 51…固定式目盛板 51a…上端 51b…下端 51c,51d…側縁 51e…ねじ孔 52…水面
図1
図2
図3
図4