(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011301
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】比抵抗計の自動校正方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/22 20060101AFI20230117BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G01R27/22
G01N27/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115078
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】村上 和利
(72)【発明者】
【氏名】本田 薫
(72)【発明者】
【氏名】星野 隆文
【テーマコード(参考)】
2G028
2G060
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BB20
2G028BC04
2G028CG02
2G028GL01
2G060AA05
2G060AC01
2G060AF07
2G060FA15
2G060HC01
2G060HC02
(57)【要約】
【課題】純水製造装置に内蔵される水質測定用の比抵抗計を校正する作業に要する時間を短縮し、設定のミスやばらつきを低減する。
【解決手段】水質測定用比抵抗計28を校正する自動校正方法は、純水製造装置10において純水が流れる配管27,30に、既に校正がなされている比較用比抵抗計60を仮設で接続する接続工程と、接続工程ののち、純水製造装置10の運転を開始する工程と、純水製造装置10の運転を継続しながら、水質測定用比抵抗計28での測定に基づく比抵抗値が比較用比抵抗計60での測定された比抵抗値に一致するように、水質測定用比抵抗計28のセル定数を自動的に設定する校正工程と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水製造装置において製造された純水の水質を測定するために前記純水製造装置において純水が流れる配管に設けられる水質測定用比抵抗計を校正する自動校正方法であって、
前記配管に、既に校正がなされている比較用比抵抗計を仮設で接続する接続工程と、
前記接続工程ののち、前記純水製造装置の運転を開始する工程と、
前記純水製造装置の運転を継続しながら、前記水質測定用比抵抗計での測定に基づく比抵抗値が前記比較用比抵抗計で測定された比抵抗値に一致するように、前記水質測定用比抵抗計のセル定数を自動的に設定する校正工程と、
を有する、自動校正方法。
【請求項2】
前記水質測定用比抵抗計及び前記比較用比抵抗計は温度測定機能を備え、
前記校正工程において、前記水質測定用比抵抗計での測定に基づく水温値が、前記比較用比抵抗計で測定された水温値に一致するように、前記水質測定用比抵抗計の温度測定機能における温度定数を補正してから、前記セル定数を自動的に設定する、請求項1に記載の自動校正方法。
【請求項3】
前記温度定数を自動的に補正する、請求項2に記載の自動校正方法。
【請求項4】
前記校正工程において、前記純水製造装置の運転を継続することによって前記比較用比抵抗計で測定された比抵抗値が規定値となったのちに、前記水質測定用比抵抗計での測定に基づく比抵抗値が前記規定値となるように前記セル定数を自動的に設定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動校正方法。
【請求項5】
前記純水製造装置は、前記水質測定用比抵抗計の抵抗検出値が入力して前記抵抗検出値と前記セル定数とに基づいて前記純水の比抵抗を算出するプロセッサを有し、
前記校正工程において、前記プロセッサは、前記抵抗検出値と前記セル定数とから算出される比抵抗値が前記比較用比抵抗計で測定された比抵抗値に一致するように前記セル定数を設定し、設定した前記セル定数を記憶する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動校正方法。
【請求項6】
前記水質測定用比抵抗計及び前記比較用比抵抗計は温度測定機能を備え、
前記純水製造装置は、前記水質測定用比抵抗計の抵抗検出値及び温度検出値が入力して前記抵抗検出値と前記温度検出値と前記セル定数と前記水質測定用比抵抗計の温度測定機能の温度定数とに基づいて前記純水の比抵抗を算出するプロセッサを有し、
前記校正工程において前記プロセッサは、前記水質測定用比抵抗計での温度検出値から算出される水温が前記比較用比抵抗計で測定される水温に一致するように前記温度定数を補正し、その後、前記抵抗検出値と前記セル定数とから算出される比抵抗値が前記比較用比抵抗計で測定された比抵抗値に一致するように前記セル定数を設定し、補正後の前記温度定数と設定した前記セル定数とを記憶する、
請求項1に記載の自動校正方法。
【請求項7】
前記純水が流れる配管において前記水質測定用比抵抗計の設置位置よりも下流側に前記比較用比抵抗計を接続する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自動校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置あるいは超純水製造装置に内蔵される比抵抗計を自動的に校正するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水製造装置や超純水製造装置には、その生成する純水あるいは超純水の水質を計測するために、比抵抗計が設けられる。以下の説明において、純水というときは超純水を含み、純水製造装置というときは超純水製造装置を含むものとする。純水製造装置に設けられる比抵抗計は、対向して1対の電極が設けられているセル内を純水で満たしたときの電極間の電気抵抗に基づいて、その純水の比抵抗を計測するものである。一般に比抵抗計において、比抵抗は、1対の電極間の実測された電気抵抗値をセル定数で除算することによって算出される。セル定数は、電極の間隔を電極の面積で除算した値に相当するパラメータであって、セルの物理的形状やそのサイズ、電極の形状やサイズ、電極の間隔などに基づいて定まり、比抵抗計のセルごとに異なる。したがって、比抵抗計による正確な測定を行うためには事前にセル定数の校正を行う必要がある。
【0003】
不純物を含まない水の理論的な比抵抗は25℃において18.2MΩ・cmである。そこで純水製造装置において純水の経路に設けられる比抵抗計のセル定数の校正は、既に校正が行われている比較用の比抵抗計を用意し、校正対象の比抵抗計と比較用の比抵抗計とを直列に接続し、比抵抗が例えば18.0MΩ・cm以上の純水をこれらの比抵抗計に流しながらオンラインで測定を行うことによって実行することができる。その場合、それぞれの比抵抗計での測定値を比較し、同じ値になるように校正対象の比抵抗計のセル定数を手作業で調整して設定することになる。
【0004】
水の比抵抗は温度によっても変化し、水温が上昇すれば比抵抗は低下する。水質管理の観点からは、水温によらずに比抵抗値だけで管理を行える方が好都合であるから、比抵抗の測定とともに水温も測定し、測定された比抵抗値を水温に応じて25℃での値に換算して表示できることが好ましい。このため比抵抗計は一般に水温測定のためにサーミスタなどの温度センサも備えており、温度センサも校正の対象となる。温度センサがサーミスタであれば、サーミスタの電気抵抗の実測値に温度定数を乗じたものが温度測定値となるから、温度定数の校正を行うことになる。
【0005】
特許文献1は、比抵抗の逆数である導電率の測定に関するものであるが、セルを含む電極プローブにセル定数識別用の抵抗を設け、導電率計の本体である変換器に電極プローブを接続したときに、変換器において識別用の抵抗の値に応じて識別信号を発生し、識別信号に応じて記憶部からセル定数を呼び出し、呼び出したセル定数を用いて導電率を算出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
校正対象の比抵抗計(すなわち純水製造装置において水質測定に用いられる比抵抗計)と比較用の比抵抗計とを直列に接続して純水を流し、両方の比抵抗計の測定値に基づいて校正対象の比抵抗計のセル定数を調整するときは、トライアル・アンド・エラーの繰り返しとなり、校正作業に時間を要する。純水製造装置に内蔵される水質測定用比抵抗計の校正は、一般に純正製造装置の出荷時に出荷検査の一項目として行われるものであって出荷検査に要する時間の短縮が望まれているから、比抵抗計の校正作業に要する時間の短縮も望まれている。また、手作業による校正作業では、校正作業を担当する作業者によってセル定数の設定にばらつきが生じたり、設定そのものにミスが生じる可能性がある。また、特許文献1に記載の技術は、電極プローブに設けられるセルのセル定数が既に分かっていることを前提とするものであるので、セル定数自体の決定には使用することができない。
【0008】
本発明の目的は、純水製造装置に内蔵される水質測定用の比抵抗計を校正する作業に要する時間を短縮でき、設定のミスやばらつきを低減できる自動校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自動校正方法は、純水製造装置において製造された純水の水質を測定するために純水製造装置において純水が流れる配管に設けられる水質測定用比抵抗計を校正する自動校正方法であって、配管に、既に校正がなされている比較用比抵抗計を仮設で接続する接続工程と、接続工程ののち、純水製造装置の運転を開始する工程と、純水製造装置の運転を継続しながら、水質測定用比抵抗計での測定に基づく比抵抗値が比較用比抵抗計で測定された比抵抗値に一致するように、水質測定用比抵抗計のセル定数を自動的に設定する校正工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、純水製造装置に内蔵される水質測定用の比抵抗計を校正する作業に要する時間を短縮でき、設定のミスやばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示す純水製造装置における比抵抗計の校正手順を示すフローチャートである。
【
図3】セル定数を決定する手順を示すフローチャートである。
【
図4】純水製造装置の構成の別の例を示す図である。
【
図5】純水製造装置の構成の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態の比抵抗計の自動校正方法が適用される純水製造装置の構成を示す図である。
【0013】
図示される純水製造装置10は、水道水などを供給水として供給水から純水を製造するものであり、供給水をまず処理する活性炭装置(AC)11と、逆浸透膜を備えて活性炭装置11の出口水を処理する逆浸透膜装置(RO)12を備えている。逆浸透膜装置12から透過水はタンク21に貯えられ、逆浸透膜装置12からの濃縮水は外部に排出される。タンク21の出口には、タンク21に貯えられた水を給送するポンプ22が設けられ、ポンプ22の出口すなわち2次側には、流量センサ(FI)23、紫外線酸化装置(UV)24、非再生型イオン交換装置(カートリッジポリッシャー(CP))25がこの順で設けられている。非再生型イオン交換装置25の出口には、この純水製造装置10で製造された純水をユースポイントに対して供給するための純水配管27が設けられ、純水配管27には、ユースポイントへの純水の供給を制御するために電磁弁29が設けられている。純水配管27において電磁弁29よりも上流側となる位置には、純水配管27を流れる純水の水質を測定するために水質測定用比抵抗計28が設けられている。水質測定用比抵抗計28は、純水の比抵抗を測定する比抵抗センサ(RI)と純水の水温を測定する温度センサ(TI)とを備えている。比抵抗センサは、純水が流れるセルに1対の電極を配置した構成となっており、電極間の電気抵抗を測定して抵抗値を出力する。その電気抵抗をセルに固有のセル定数Jで除算することによって純水の比抵抗を求めることができる。本発明に基づく自動校正方法は、水質測定用比抵抗計28の比抵抗センサのセル定数Jを自動的に設定しようとするものである。温度センサは、例えばサーミスタなどの測温体によって構成されており、温度センサでの測定出力値に対してその測温体に固有の温度定数を適用することによって正確な水温を求めることができる。
【0014】
純水製造装置10では、純水配管27において水質測定用比抵抗計28の接続位置と電磁弁29との間の位置から分岐してタンク21に接続する循環配管30が設けられている。循環配管30には電磁弁31が設けられている。循環配管30は、ユースポイントに供給されなかった純水をタンク21に戻すために設けられており、これにより純水製造装置10では、ユースポイントでの純水の需要の有無に係らずに純水を常時製造してそれを装置内で循環させることができる。純水が装置内で循環し、循環するたびに純水がさらに精製されて水質がさらに向上するので、この純水製造装置10によれば、より水質に優れた純水あるいは超純水を需要に応じてユースポイントに供給することができる。
【0015】
純水製造装置10には、純水製造装置10の全体を制御する制御装置50と、制御装置50に接続して利用者に対して表示を行い、利用者からの入力を受け付ける操作パネル51とがさらに設けられている。制御装置50は、例えばマイクロプロセッサ(MPU)あるいはマイクロコンピュータなどのプロセッサによって構成され、特に電磁弁29,31の開閉を制御する。制御装置50には流量センサ23の検出出力と水質測定用比抵抗計28の検出出力とが入力する。制御装置50は、水質測定用比抵抗計のセル定数Jと温度定数とを記憶する機能を有し、水質測定用比抵抗計28の抵抗検出値と温度検出値が入力する。制御装置50は、抵抗検出値をセル定数Jで除算して比抵抗値を算出し、さらに算出された比抵抗値を水温が25℃のときの値に変換して操作パネル51に出力する機能を有する。比抵抗値を25℃のときに値に変換するためには水温の測定値が必要であるが、制御装置50は、水質測定用比抵抗計28の温度検出値に対して温度定数を適用して、正確な水温を算出する。制御装置50が算出した水温も操作パネル51に対して出力可能である。
【0016】
純水製造装置10は、ユースポイントへの純水の供給に関し、いくつかの動作モードを備えている。例えば、指定された量の純水をユースポイントに供給するときは、制御装置50は、流量センサ23で測定される流量の積算値がその指定された量となるまで、電磁弁31を閉じ電磁弁29を開ける制御を行なう。あるいは、入力があるときだけユースポイントに純水を供給するときは、入力があるときだけ電磁弁31を開ける制御を行なう。
【0017】
次に、
図1に示した純水製造装置10における水質測定用比抵抗計28のセル定数の自動校正について説明する。
図2は自動校正の手順を示すフローチャートである。
【0018】
まず、ステップ101において、純水製造装置10において純水が流れる配管に対し、比較用比抵抗計60を仮設で接続する。
図1に示した例では、循環配管30において電磁弁31とタンク21の間に比較用比抵抗計60を取り付けている。純水製造装置10においては、配管にはフレキシブルチューブなどの可撓性を有する配管部材が用いられることが多く、それらの配管部材はワンタッチ継手などにより相互に接続される。したがって、ワンタッチ継手を介した配管部材の接続関係を変更することにより、循環配管30に対して比較用比抵抗計60を仮設で接続することは容易である。図示した例では、純水が流れる経路において水質測定用比抵抗計28の下流側の位置に比較用比抵抗計60が接続されている。純水が流れる経路において水質測定用比抵抗計28の上流側の位置に比較用比抵抗計60を接続することも可能であるが、純水製造装置10内でのコンタミネーションの発生を防ぐために、水質測定用比抵抗計28の下流に比較用比抵抗計60を配置することが好ましい。比較用比抵抗計60は既に校正済みのものであり、水質測定用比抵抗計と同様に比抵抗センサ(RI)と温度センサ(TI)を備えている。比較用比抵抗計60は、測定した比抵抗値と温度値(水温値)とを出力あるいは表示することが可能な構成となっている。比較用比抵抗計60で出力あるいは表示される比抵抗値は、一般に、水温が25℃のときの値に換算されたものである。
【0019】
次に、電磁弁29を閉じ、電磁弁31を開けた状態で供給水を純水製造装置10に供給し、この状態でステップ102において純水製造装置10の運転を開始する。純水製造装置10で製造された純水は循環配管30を介してタンク21に戻されるので、純水の循環精製が行われることとなり、時間の経過とともに純水製造装置10内の純水の水質が向上し、やがて、比較用比抵抗計60で表示される比抵抗が、18.2MΩ・cm(すなわち規定値)に到達する。ステップ103に示すように、比較用比抵抗計60で測定される比抵抗値が規定値(25℃換算で18.2MΩ・cm)に達するまで処理を待ち合わせる。
【0020】
比較用比抵抗計60で測定される比抵抗値が規定値に達したら、次に、ステップ104において、比較用比抵抗計60での温度測定値に基づいて、水質測定用比抵抗計28の温度センサの温度定数を校正する。温度定数の校正は、水質測定用比抵抗計28の温度センサでの温度測定値が比較用比抵抗計60での温度測定値と一致するように、手動または自動で温度定数を変化させることによって行われる。手動で温度定数の校正を行うときは、水質測定用比抵抗計28での温度測定値を操作パネル51に表示させ、操作パネル51に表示される温度測定値が水質測定用比抵抗計28での温度測定値と一致するまで、操作パネル51を介して温度定数を増減するコマンドを制御装置50に入力する。自動で温度定数を校正するときは、温度定数を増減させるこの処理を制御装置50自体が実行する。校正された温度定数は、制御装置50内のメモリ(不図示)に記憶され、それ以降の水温測定に使用される。
【0021】
温度定数の校正が済んだら、制御装置50における自動校正プロセスを開始する。自動校正プロセスは、制御装置50内のプロセッサがプログラムを実行することによって実行される。自動校正プロセスが開始すると、ステップ105において制御装置50は、セル定数Jの値に初期値を代入する。初期値として、例えば、水質測定用比抵抗計28の機種ごとにあらかじめ定められている値を使用することができる。過去にセル定数の校正を行ったことがあるときはその校正で求めたセル定数を初期値として使用してもよい。その後、ステップ106において、制御装置50は、水質測定用比抵抗計28により比抵抗を測定する。比抵抗値は、水質測定用比抵抗計28から入力する抵抗検出値をセル定数Jで除算し、さらに水温による補償を行うことによって算出される。この時点で純水製造装置10は循環精製によって純水の製造を継続しており、純水の比抵抗は水温25℃の値に換算して上述した規定値(18.2MΩ・cm)となっているはずである。そこで制御装置50は、ステップ107において、水質測定用比抵抗計28での測定に基づいて上述のように算出される比抵抗値が規定値と一致するかどうか、すなわち正しく比抵抗を測定できているかどうかを判定する。正しく比抵抗を測定できているときは、処理はステップ109に進み、正しく測定できていないときは、ステップ108において制御装置50は、正しく測定できるようにセル定数Jを変更し、その後、ステップ106の比抵抗の測定からの処理を繰り返す。結局、水質測定用比抵抗計28での測定に基づく比抵抗値が規定値と一致するようになるまで、セル定数の調整が繰り返し行われることになる。
【0022】
ステップ109において制御装置50は、ステップ106からステップ108までの処理を繰り返すことによって校正されたセル定数を制御装置50のメモリ(不図示)に記憶するとともに、利用者に確認を促すために操作パネル51に表示する。これにより、自動校正のプロセスを終了する。これ以降、水質測定用比抵抗計28によって純水の水質を測定するときは、ステップ110に示すように、上述のようにして校正されて記憶されたセル定数を用いて比抵抗値を算出すればよい。セル定数の校正が済めば比較用比抵抗計60は不要となるので、ステップ111において純水製造装置10での純水製造を停止してポンプ22も停止し、ステップ112において比較用比抵抗計60を取り外す。
【0023】
図3は、ステップ108での処理の一例を示すフローチャートであり、説明を分かりやすくするため。
図2のステップ106からステップ109までの部分も示している。ステップ107において比抵抗を正しく測定できていない場合には、水質測定用比抵抗計28の抵抗検出値と水温とから算出される比抵抗値(算出値とする)が、上述した規定値(
図3では「目標値」と記載する)よりも大きい場合と小さい場合とがある。そこで、ステップ108Aでは、算出値が目標値よりも小さいかどうかを判定する。校正の目標は算出値と目標値とが一致することである。ここで一致とは、測定精度などを考えてMΩ・cm単位で表したときに例えば小数第1位までの数値として比抵抗の値が一致することである。算出値<目標値であるときは、ステップ108Bにおいてセル定数をΔだけ小さくしてステップ106に戻り、算出値<目標値ではないときは、ステップ108Bにおいてセル定数をΔだけ大きくしてステップ106に戻る。なお、算出値と目標値が一致する場合は、正しく比抵抗を測定できているとステップ107において既に判定されている場合であるから、セル定数の変更は起こらない。セル定数の変更の刻み幅であるΔは、あらかじめ定められた数値であって、例えば0.01m
-1である。
【0024】
以上説明した本実施形態の自動校正方法によれば、純水製造装置10に内蔵される水質測定用比抵抗計28のセル定数の校正作業を自動化でき、校正に要する時間を短縮できるとともに、設定のミスやばらつきを低減できる。例えば、人手でセル定数を校正する作業には例えば3~4分間程度の時間を要するのに対し、本実施形態の方法によれば、10秒程度でセル定数の校正を終らせることができる。
【0025】
比較用比抵抗計60として、制御装置50が受け入れ可能なデータフォーマットで検出結果を信号として出力するものを用いることもできる。
図4は、そのような比較用比抵抗計60を取り付けることができる純水製造装置10を示している。
図4に示す純水製造装置10では、比較用比抵抗計60を循環配管30に仮設で接続したときに、比較用比抵抗計60と制御装置50とを信号線61で接続することができる。制御装置50は信号線61が接続可能な入力ポートを備えている。信号線61で接続することにより、比較用比抵抗計60で測定された比抵抗値と水温とが信号線61を介して制御装置50に入力する。
図4に示した純水製造装置10での水質測定用比抵抗計28の校正は、
図2に示したプロセスよりもさらに自動化された形態で行うことができる。
【0026】
図4に示した純水製造装置10の水質測定用比抵抗計28の校正を行うときは、上述の場合と同様に比較用比抵抗計60を循環配管30に接続し、さらに、信号線61を制御装置50に接続する。そして純水製造装置10の運転を開始し、制御装置50を自動校正モードに設定する。自動校正モードに設定すると制御装置50内のプロセッサが実行するプログラムにより、制御装置50は、比較用比抵抗計60から温度の測定値を読み込んで上述と同様に温度定数の自動校正を行い、続いて、比較用比抵抗計60から比抵抗の測定値が読み込み、読み込んだ測定値を目標値として
図3で示したものと同様の処理を行ってセル定数の自動校正を行い、その後、校正された温度定数とセル定数とをメモリ(不図示)に記憶し、校正されたセル定数を操作パネル51に出力する。比較用比抵抗計60での比抵抗の測定値が制御装置50に常時入力するので、
図4に示す純水製造装置10の場合は、純水製造装置10内を循環する純水の比抵抗が25℃換算で18.2MΩ・cmに到達する前の段階においてもセル定数の校正を完了させることができる。
【0027】
図5は本発明の自動校正方法が適用される別の純水製造装置の例を示している。実験室などで純水を例えばビーカーやフラスコ、試験管などに採水するときは、純水製造装置に接続する採水ディスペンサーを使用する。採水ディスペンサーから吐出される純水の水質を高めるために、特開2020-006295号公報には、循環精製のために純水が循環する配管を純水製造装置から採水ディスペンサーにまで延長することを開示している。
図5は、循環精製のための配管を採水ディスペンサーまで延長した例を示している。
図5に示す純水製造装置10は、
図4に示す純水製造装置10において、活性炭装置や逆浸透膜装置を設けずにタンク21に一次純水が供給されるようにするとともに、非再生型イオン交換装置25の出口に接続する限外ろ過膜装置(UF)26と、採水ディスペンサー70との間で純水を循環させるための循環出口32及び循環入口33とをさらに設けたものである。純水配管27は限外ろ過膜装置26と循環出口32との間に設けられている。純水配管27には電磁弁は設けられていない。循環配管30は、給水配管27から分岐するのではなく、循環入口33とタンク21の間に設けられている。採水ディスペンサー70が純水製造装置10に接続していないときであっても純水製造装置10における循環精製による純水の製造を可能とするために、純水配管27と循環配管30とを接続するバイパス配管34が設けられ、バイパス配管34にはバイパス弁35が設けられている。バイパス配管34が循環配管30に接続する位置は、電磁弁31とタンク21の間の位置である。水質測定用比抵抗計28は、純水配管27において、バイパス配管33が分岐する位置と循環出口32との間の位置に設けられている。
【0028】
純水製造装置10と採水ディスペンサー70の間は、循環出口32に接続して純水製造装置10から採水ディスペンサー70に向けて純水が流れる配管71と、循環入口33に接続して採水ディスペンサー70から純水製造装置10に向けて純水が流れる配管72とによって接続されている。配管71,72として例えばフレキシブルチューブが用いられる。採水ディスペンサー70には、配管73,74と電磁弁75とノズル76とスイッチ77とが設けられている。配管73の一端は配管71に接続し、配管74の一端は配管72に接続する。配管73の他端と配管74の他端とは相互に接続し、この接続点とノズル76とを接続する配管に電磁弁75が設けられている。したがって、配管71,72を介して純水が採水ディスペンサー70に循環しているときに電磁弁75を開ければ、循環している純水の少なくとも一部がノズル76から吐出することになる。ノズル76から吐出する純水を例えば試験管やビーカーなどに注ぐことができる。
【0029】
スイッチ77は制御装置50に電気的に接続しており、利用者がスイッチ77を操作することによって入力された指令は制御装置50に伝達される。電磁弁75は制御装置50によって制御される。その結果、利用者がスイッチ77を操作している電磁弁75を開く制御を制御装置50が実行すれば、スイッチ77を操作しているときだけノズル76から純水が吐出する。あるいは、利用者による1回のスイッチ操作があったときに、制御装置50は、流量センサ23での検出結果に基づいて、あらかじめ規定された体積の純水がノズル76から吐出するような制御を行なうこともできる。
【0030】
図5に示す純水製造装置10の水質測定用比抵抗計28の校正を行うときは、純水製造装置10から採水ディスペンサー70に向けて純水が流れる配管71に対して比較用比抵抗計60を接続すればよい。比較用比抵抗計60のこの接続位置では循環精製のために純水が循環して流れているので、上述した例と同様の手順により、水質測定用比抵抗計28の校正を行うことができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態を説明した。純水製造装置10に設けられる水質測定用比抵抗計28の校正は、純水製造装置10の工場出荷時に行なわれるほか、出荷後も、例えば1年に1回程度の頻度で行われることが多い。管理する純水製造装置10の台数が多く、それに伴って水質測定用比抵抗計28の台数も多い場合には、各水質測定用比抵抗計28の校正記録を管理することには労力を要する。そこで、クラウド側に設けられたサーバに対して各純水製造装置10の制御措置50をネットワークを介して接続し、本発明に基づく方法で自動校正された各水質測定用比抵抗計28のセル定数をサーバへ送信し、クラウド側でセル定数を記録することにより、多数の純水製造装置10についての定期的な校正の記録をクラウド上で一括管理することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
21 タンク
24 紫外線酸化装置
25 非再生式イオン交換装置
26 限外ろ過膜装置
27 純水配管
30 循環配管
28 水質測定用比抵抗計
50 制御装置
51 操作パネル
60 比較用比抵抗計
70 採水ディスペンサー
76 ノズル