(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113016
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20230807BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015098
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 英明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】新野 和久
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA02
4D037AA08
4D037AB03
4D037BA18
(57)【要約】
【課題】 シンプルな構造でありながら、流路管側に取り出される紫外光の光取出効率を高めた流体殺菌装置の提供を目的とする。
【解決手段】 流体殺菌装置は、流体を通す流路管と、前記流路管に臨むよう配設されると共に、発光素子と、前記発光素子を実装する基板と、前記発光素子を覆い且つ前記流路管側に向けて突設されるレンズ部とを備え、前記流体に紫外光を照射する光源ユニットと、紫外光透過能を有し、前記基板と前記流体との境界領域に介設されるカバー部とを備え、前記カバー部は、前記レンズ部を挿し込む貫通孔を備え、前記レンズ部の少なくとも先端は、前記流体に接液し、前記光源ユニットの前記基板は、前記カバー部によって覆われることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通す流路管と、
前記流路管に臨むよう配設されると共に、発光素子と、基板と、前記発光素子を覆い且つ前記流路管側に向けて突設されるレンズ部とを備える光源ユニットと、
前記基板と前記流体との境界領域に介設されるカバー部と、
を備え、
前記カバー部は、前記レンズ部を挿し込む貫通孔を備え、
前記レンズ部の少なくとも先端は、前記流体に接液し、
前記光源ユニットの前記基板は、前記カバー部によって覆われる
ことを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
前記流路管が、開口端部を有する筒状部材であり、
前記光源ユニットが、前記開口端部に取り付けられる
請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記レンズ部が、前記流体と接液すると共に、内部に前記発光素子を収めるドーム状部位を有する
請求項1又は2に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記光源ユニットが、複数の前記発光素子と、前記発光素子の各々を覆う複数の前記レンズ部とを備え、
前記カバー部が、前記レンズ部の各々を挿し込む複数の貫通孔を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外光を照射して流体(例えば、飲料用の液体若しくは食品原料水、又は工場用の各種冷却水・洗浄水など)を殺菌する種々の製品が提供されている。これに関連する発明として、流体の流路に設けられる流体殺菌装置が、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、特許文献1に開示の流体殺菌装置は、殺菌対象となる流体が流れる殺菌管と、殺菌管の端部と対向して配置され、流体に紫外光を照射する光源ユニットとを備える流体殺菌装置である。また、この光源ユニットは、発光ダイオードチップと、発光ダイオードチップを収容する収容室を有するハウジングとを備える。更に、光源ユニットは、ハウジングに設けられた開口を塞ぎ、ハウジングの外部空間と収容室とを区画するように設けられ、発光ダイオードチップからの紫外光を透過する窓部材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の窓部材は、発光ダイオードチップ(光源ユニット)より殺菌管(流路管)側に設けられるTIRレンズ(レンズ部)を備える。より詳しくは、レンズ部は、光源ユニット側に位置する曲面部と、この曲面部の略中央領域に連なると共に、光源ユニットを収める凹部を備える。
【0006】
光源ユニットから照射された紫外光のうち、凹部の底部からレンズ部に入射した光は、レンズ部の内部を通過した後、レンズ部外に出射される。また、光源ユニットから照射された紫外光のうち、凹部の側部からレンズ部に入射した光は、レンズ部の内部を通り、曲面部の内面で反射してレンズ部外に出射する。
【0007】
しかしながら、凹部の側部からレンズ部に入射した紫外光に関し、全反射角を超えた角度で入射する光は、レンズ部に入射せずに光源ユニット側に反射する。この場合、紫外光は流路管側に出射されない。その結果、特許文献1に開示の流体殺菌装置において、流路管側に取り出される紫外光の光取出効率(光源ユニットから照射された紫外光のうち、流路管側に出射される光の割合)が低下し得る。
【0008】
前記課題に鑑み、本発明は、シンプルな構造でありながら、流路管側に取り出される紫外光の光取出効率を高める流体殺菌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するため、本発明に係る流体殺菌装置は、
流体を通す流路管と、
前記流路管に臨むよう配設されると共に、発光素子と、基板と、前記発光素子を覆い且つ前記流路管側に向けて突設されるレンズ部とを備える光源ユニットと、
前記基板と前記流体との境界領域に介設されるカバー部と、
を備え、
前記カバー部は、前記レンズ部を挿し込む貫通孔を備え、
前記レンズ部の少なくとも先端は、前記流体に接液し、
前記光源ユニットの前記基板は、前記カバー部によって覆われる
ことを特徴とする。
【0010】
本発明のこの態様において、紫外光透過能を有し、光源ユニットと流体との境界領域に介設されるカバー部が、レンズ部を挿し込む貫通孔を備える。これにより、レンズ部の少なくとも先端が、流路管を流れる流体に接液する。そのため、光源ユニットから照射されてレンズ部を通過する紫外光が、空気層などの他の媒体を通らずに流体に出射される。その結果、本発明のこの態様によれば、流路管側に取り出される紫外光の光取出効率を高めることができる。
【0011】
また、本発明に係る流体殺菌装置において、
前記流路管が、開口端部を有する筒状部材であり、
前記光源ユニットが、前記開口端部に取り付けられる
ことが好ましい。
【0012】
本発明のこの態様によれば、光源ユニットからの紫外光が、流路管の軸方向(流体の流通方向)と直交する断面(横断面)に向かって照射されるため、流体に対する紫外光照射量を高めることができる。その結果、流体の殺菌能を向上させることができる。
【0013】
更に、本発明に係る流体殺菌装置において、
前記レンズ部が、前記流体と接液すると共に、内部に前記発光素子を収めるドーム状部位を有する
ことが好ましい。
【0014】
本発明のこの態様によれば、レンズ部のドーム状部位と流体とを接液させることができるため、レンズ部と流体との接液域(例えば、ドーム状部位の先端)を増やすことができる。その結果、より多くの紫外光を流路管側に出射させることができる。
【0015】
更に、本発明に係る流体殺菌装置において、
前記光源ユニットが、複数の前記発光素子と、前記発光素子の各々を覆う複数の前記レンズ部とを備え、
前記カバー部が、前記レンズ部の各々を挿し込む複数の貫通孔を備える
ことが好ましい。
【0016】
本発明のこの態様において、各々の発光素子を覆い、流体に接液する複数のレンズ部を介して、複数の発光素子から照射される紫外光が、流体側に出射する。そのため、本発明のこの態様によれば、複数の発光素子に基づく、より多くの紫外線を流路管側にロスなく出射させることができる。その結果、流体の殺菌能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シンプルな構造でありながら、流路管側に取り出される紫外光の光取出効率を高めた流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る流体殺菌装置の垂直断面図。
【
図3】流体殺菌装置に備わる光源ユニットの基板の一例を示す斜視図。
【
図4】本実施形態の変形例1に係る光源ユニットの垂直断面図。
【
図5】本実施形態の変形例2に係る流体殺菌装置の垂直断面図。
【
図6】本実施形態の変形例3に係る光源ユニット40の平面図(
図6(a))、
図6(a)のA-A線で切断した光源ユニット40の断面図(
図6(b))。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[基本例]
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る流体殺菌装置を詳細に説明する。初めに、
図1から
図3を参照して、本実施形態に係る流体殺菌装置1を説明する。ここで、
図1は、流体殺菌装置1の垂直断面図である。また、
図2は、光源ユニットの光源装置の垂直断面図である。更に、
図3は、流体殺菌装置1に備わる光源ユニットの基板の一例を示す斜視図である。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る流体殺菌装置1は、流路管10、入口管部11、出口管部12、光源ユニット20を備える。
図1に示されるように、本実施形態の流路管10は、軸方向(長手方向)に延在する管状部材である。また、流路管10の両端101,102は、開口する。
【0021】
本実施形態の流路管10は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製である。ただし、流路管10の素材は、これに限られない。流路管10の他の素材として、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等の樹脂や、ステンレス等の金属が挙げられる。
【0022】
入口管11は、流路管10の一端101に設けられる。一端101を介して、流路管10と入口管11とが連通する。これにより、殺菌対象の流体(例えば、水)は、入口管11から流路管10内に流入する。これに対して、流路管10の側周壁の所定箇所に貫通孔103が設けられている。出口管12は、貫通孔103に対向するよう設けられる。これにより、流路管10と出口管12とが連通する。流路管10内を流通した流体は、出口管12から流出する。
【0023】
また、光源ユニット20は、流路管10の他端102に設けられる。これにより、光源ユニット20は、流路管10の内側に臨む。より詳しくは、光源ユニット20は、
図1に示されるように、紫外光(例えば、100nm~400nmにピーク波長を有する光)を発光する発光装置21、基板22、紫外線に対し不透過のカバー24(例えば、PTFE)を備える。更に、
図2に示されるように、発光装置21は、搭載基板211(前記基板22とは別の基板)、発光素子212、レンズ部213を備える。より詳しくは、搭載基板211上に発光素子212が搭載され、レンズ部213が、これらを覆う。
【0024】
流路管10と光源ユニット20との位置関係を前記のようにすることで、光源ユニット20(発光装置21)からの紫外光が、レンズ部213を通ってダイレクトに流路管10へ入射し、軸方向(流体の流通方向)と直交する断面(横断面)に向かって照射される。そのため、流体に対する紫外光照射量を高めることができる。その結果、流体の殺菌能を向上させることができる。
【0025】
なお、発光装置21に用いられる発光素子212の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light emitting diode)、レーザーダイオードなどの半導体発光素子が挙げられる。また、本実施形態の発光装置21の数は1つであるが、2つ以上であってもよい(発光装置21を2つ以上備える実施形態に関しては、後述する)。
【0026】
次に、基板22は、例えば
図3に示されるように、発光装置21を取り付けると共に、例えば、発光装置21に電流を供給する電源回路等の他の電子部品を実装する。
【0027】
次に、レンズ部213は、
図1に示されるように、発光装置21を覆う光学部材である。発光装置21からの紫外光は、レンズ部213を通り、流路管10を流れる流体に照射される。本実施形態のレンズ部213は、基板22から流路管10側に向けて突設される。また、
図1に示されるように、レンズ部213は、先端231が流路管10側に臨むドーム状の形態を呈することが好ましい。
【0028】
このような態様によれば、レンズ部213のドーム状部位と流体とを接液させることができるため、レンズ部213における流体との接液域(例えば、ドーム状部位の先端231との接液面積)を増やすことができる。その結果、より多くの紫外光を流路管10側に出射させることができる。
【0029】
次に、カバー24は、
図1に示されるように、基板22と流体との境界領域10Bに介設される内部中空のキャップ状部材である。流路管10の他端102側に配設される基板22は、カバー部24によって覆われる。また、例えば、カバー24の端縁241(流路管10側の端縁)と流路管10の他端102の内壁との間に、Oリング25が配設される。
【0030】
これにより、流路管10内の流体が、基板22側に流れることを防ぐ。すなわち、カバー部24を設けることで、発光装置21や所定の電子部品を実装する基板22に流体が接触することを防ぐ。
【0031】
なお、カバー部24によって基板22が覆われる状態とは、流体が基板22に至らないようカバー部24によって止水される程度に重畳する状態を含む(例えば、
図1に示されるような状態)。すなわち、必ずしも、基板22の表面全域がカバー部24によって覆われる必要はない。
【0032】
更に、カバー部24は、その略中央位置にレンズ部213を挿し込む貫通孔242を備える。また、貫通孔242に挿し込まれたレンズ部213の少なくとも先端231が、流体と接液する。
【0033】
これにより、発光装置21から照射されてレンズ部213を通過する紫外光が、空気層などの他の媒体を通らずにダイレクトに流体に出射される。その結果、極めてシンプルな構造でありながら、流路管10側に取り出される紫外光の光取出効率を高めることができる。
【0034】
なお、カバー部24の貫通孔242とレンズ部213との間にも、Oリング26が配設されることが好ましい。このような位置にOリング26が設けられることで、貫通孔242に至った流水が、基板22側に流入しないよう止水される。
【0035】
[変形例1]
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る流体殺菌装置1(特に、光源ユニット30)の変形例1を説明する。ここで、
図4は、変形例1に係る光源ユニット30の垂直断面図である。前述の基本例の場合、基板22を覆うカバー部24は、基板22の表面側(流路管10側を向く面側)のみを覆っていた。これに対して、変形例1に係るカバー部34は、基板32の表面側だけでなく、背面側(流路管10側と反対側)も覆う。なお、カバー部34の背面側に、基板32と接続する配線35を挿入するための貫通孔36を設けることが好ましい。なお、特に限定されるものではないが、変形例1に係る光源ユニット30においても、発光素子312とレンズ部313を含む発光装置31が基板32に搭載されることが好ましい。
【0036】
[変形例2]
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る流体殺菌装置1の変形例2を説明する。ここで、
図5は、変形例2に係る流体殺菌装置2の垂直断面図である。前述の基本例では、光源ユニット20は、流路管10の他端102側にのみ設けられていた。これに対して、変形例2の光源ユニット37は、流路管10の一端101側と他端102側の双方の開口端部に設けられる。
【0037】
また、前述の基本例では、入口管11が、流路管10の一端101に設けられていた。これに対して、変形例2において、流路管13の側周壁104に貫通孔105が設けられると共に、入口管14は、貫通孔105に対向するよう設けられる。このように、光源ユニット37が、流路管10の両端(一端101、他端102)に設けられることで、より多くの紫外光を流体に照射することができる。
【0038】
[変形例3]
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る流体殺菌装置1(特に、光源ユニット40)の別の変形例(変形例3)を説明する。ここで、
図6(a)は、変形例3に係る光源ユニット40の平面図(流路管10から光源ユニット40側を見た図)である。また、
図6(b)は、
図6(a)のA-A線で切断した光源ユニット40の断面図である。
【0039】
図6に示されるように、変形例3に係る光源ユニット40は、複数の発光装置41a,41b,41c,・・・,41n(複数のレンズ部413a,413b,413c,・・・,413n)を備える。なお、特に限定されるものではないが、変形例3においても、各発光装置41(41aから41n)は、発光素子412(412aから412n)とレンズ部413(413aから413n)を備える。また、各発光素子412(412aから412n)は、レンズ部413(413aから413n)のそれぞれに収容される。
【0040】
また、変形例3に係るカバー部44は、各レンズ部413(413aから413n)を挿し込む複数の貫通孔442a,442b,442c,・・・,442nを備える。このような態様によれば、複数の発光装置41(41aから41n)を有する分、前述の基本例のように単一の発光装置21を備える光源ユニット20に比べて多くの紫外光を照射することができる。
【0041】
また、複数のレンズ部413(413aから413n)の各々が、各発光素子412(412aから412n)を収容すると共に、複数の貫通孔442(442aから442n)を介して流体に接液する。これにより、多くの紫外線を流路管10側にロスなく出射させることができる。その結果、流体の殺菌能を向上することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明した。ただし、前述の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る流体殺菌装置は、例えば、紫外光殺菌装置、浄水器、給湯器、送水管、冷却水循環装置、ウォーターサーバ、ドリンクサーバ等に用いられる。ただし、その用途は、これに限られない。
【符号の説明】
【0044】
1… 流体殺菌装置
10…流路管
101,102…流路管の開口端部
11,14…入口管
12…出口管
20,30,37,40…光源ユニット
21…発光装置
212…発光素子
213,413…レンズ部
231…レンズ部の先端
22…基板
24,34,44…カバー部
242,442…カバー部に設けられる貫通孔