(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113023
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/01 20130101AFI20230807BHJP
B62K 21/00 20060101ALI20230807BHJP
B62K 25/08 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B62K5/01
B62K21/00
B62K25/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015110
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
【テーマコード(参考)】
3D011
3D013
3D014
【Fターム(参考)】
3D011AB01
3D011AD01
3D011AD03
3D011AD11
3D011AG04
3D011AH01
3D011AJ02
3D011AL01
3D011AL11
3D013CA07
3D014DD03
3D014DE03
(57)【要約】
【課題】等速ジョイントを用いた車両においてトー角の変化を良好に抑制できる、車両を提供する。
【解決手段】車両10は、フロント差動装置40と、等速ジョイント42a,42bと、ステアリング機構38とを備える。ステアリング機構38は、ピットマンアーム74と、タイロッド76a,76bと、ピットマンアーム74およびタイロッド76a,76bを連結する第1リンクアーム78a,78bと、第1リンクアーム78a,78bおよび車体フレーム22を連結する第2リンクアーム80a,80bとを含む。平面視において、第1直線L1と第2直線L2との間に等速ジョイント42a,42bの少なくとも一部が位置し、第3直線L3と第4直線L4との間に等速ジョイント42a,42bの少なくとも一部、第1接続部C1および第2接続部C2が位置し、第5直線L5と第6直線L6との間にフロント差動装置40の少なくとも一部が位置する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに支持される原動機と、
一対の前輪と、
前記原動機からの動力が伝達されるフロント差動装置と、
前記フロント差動装置の左右近傍に設けられる一対の等速ジョイントと、
前記フロント差動装置からの動力を対応する前記等速ジョイントを介して対応する前記前輪に伝達するために、それぞれ対応する前記等速ジョイントと前記前輪との間に設けられる一対の軸部と、
前記車体フレームに揺動可能に支持される一対のアッパーアームと、
それぞれ対応する前記アッパーアームより下方に位置しかつ前記車体フレームに揺動可能に支持される一対のロアアームと、
それぞれ対応する前記アッパーアームと前記ロアアームとを連結しかつ対応する前記軸部を回転可能に支持する一対のナックルアームと、
前記一対の前輪を操舵するステアリング機構とを備え、
前記ステアリング機構は、ステアリングシャフト部と、前記ステアリングシャフト部の下端部に設けられるピットマンアームと、それぞれ対応する前記ナックルアームに接続される一対のタイロッドと、それぞれ前記ピットマンアームおよび対応する前記タイロッドを連結する一対の第1リンクアームと、それぞれ対応する前記第1リンクアームと前記車体フレームとを連結する一対の第2リンクアームとを含み、
平面視において、一方の前記タイロッドと前記第1リンクアームとの接続部を第1接続部とし、他方の前記タイロッドと前記第1リンクアームとの接続部を第2接続部とし、前記第1接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第1直線とし、前記第2接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第2直線とすると、前記第1直線と前記第2直線との間に、前記各等速ジョイントの少なくとも一部が位置する、車両。
【請求項2】
平面視において、一方の前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとの接続部を第3接続部とし、他方の前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとの接続部を第4接続部とし、一方の前記第2リンクアームと前記車体フレームとの接続部を第5接続部とし、他方の前記第2リンクアームと前記車体フレームとの接続部を第6接続部とし、前記第3接続部と前記第4接続部とを通る直線を第3直線とし、前記第5接続部と前記第6接続部とを通る直線を第4直線とすると、前記第3直線と前記第4直線との間に、前記各等速ジョイントの少なくとも一部、前記第1接続部および前記第2接続部が位置する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
平面視において、前記第3接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第5直線とし、前記第4接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第6直線とすると、前記第5直線と前記第6直線との間に、前記フロント差動装置の少なくとも一部が位置する、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
平面視において、前記第3接続部、前記第4接続部、前記第5接続部および前記第6接続部を頂点とする四角形によって囲まれる領域に、前記フロント差動装置の少なくとも一部が位置する、請求項2または3に記載の車両。
【請求項5】
正面視において、前記フロント差動装置と前記ステアリング機構の少なくとも一部が重なる、請求項1から4のいずれかに記載の車両。
【請求項6】
側面視において、前記フロント差動装置の上部形状に沿うように前記ピットマンアーム、前記第1リンクアームおよび前記第2リンクアームの少なくともいずれか1つが傾斜する、請求項1から5のいずれかに記載の車両。
【請求項7】
前記第1リンクアームと前記タイロッドとは上下方向に延びる取付軸を介して接続され、前記タイロッドが前記第1リンクアームから前記ナックルアームに向けて斜め下方に延びる場合、前記取付軸は上方にかけて車両外方に向くように傾斜する、請求項1から6のいずれかに記載の車両。
【請求項8】
正面視において、前記アッパーアームと前記車体フレームとの接続部、前記ロアアームと前記車体フレームとの接続部、前記タイロッドと前記第1リンクアームとの接続部、および前記等速ジョイントが、上下方向に並ぶ、請求項1から7のいずれかに記載の車両。
【請求項9】
前記アッパーアームと前記車体フレームとの接続部、前記タイロッドと前記第1リンクアームとの接続部、前記等速ジョイント、および前記ロアアームと前記車体フレームとの接続部の順に配置される、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
角度公差および/または軸方向公差を吸収するために前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとの接続部に設けられるボールジョイントをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の車両。
【請求項11】
角度公差および/または軸方向公差を吸収するために前記第2リンクアームと前記車体フレームとの接続部に設けられる金属カラーをさらに含む、請求項1から10のいずれかに記載の車両。
【請求項12】
前記車体フレームは、フロントフレームを有し、
正面視において、前記フロントフレームの概ね外側に、前記アッパーアームと前記車体フレームとの接続部、前記ロアアームと前記車体フレームとの接続部、前記タイロッドと前記第1リンクアームとの接続部、および前記等速ジョイントが位置する、請求項1から11のいずれかに記載の車両。
【請求項13】
前記タイロッドと前記第1リンクアームとの接続部は、前記タイロッドと前記ナックルアームとの接続部より前方に位置し、
前記タイロッドと前記第1リンクアームとの接続部および前記タイロッドと前記ナックルアームとの接続部は、前記前輪の中心より後方に位置する、請求項1から12のいずれかに記載の車両。
【請求項14】
側面視において、前記第2リンクアームと前記車体フレームとの接続部の少なくとも一部は、前記ピットマンアームと前記第1リンクアームとの接続部より上方に位置する、請求項1から13のいずれかに記載の車両。
【請求項15】
前記車体フレームに支持される鞍乗りシートと、
前記ステアリングシャフト部の上端部に設けられるバーハンドルとをさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両に関し、より特定的にはリンク式のピットマンアーム構造を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例として、特許文献1において車両用操舵装置が開示されている。この装置は、不整地走行車に用いられ、車輪を進行方向に対して横方向に転向させるナックルが、ロアアームおよびアッパアームを介して車体フレームに上下変位自在に懸架されるとともに、ナックルとステアリングシャフトに連動した車体幅方向への変位発生部とが2つのタイロッド(ナックル側および変位発生部側)を介して連結される。2つのタイロッドの連結部は、リレーアームを介して車体フレームに連結される。そして、ロアアーム、アッパアーム、およびナックル側タイロッドがいずれも略等しい揺動半径を有するように、リレーアームとナックルとが、所定長さのナックル側タイロッドで連結されることによって、ロアアームおよびアッパアームの上下変位に対するナックルの転向方向の変位、すなわちトー角の変化を抑えようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、フロント差動装置およびその近傍に設けられる等速ジョイントについて開示されておらず、これらの部材を有する場合のトー角の変化の抑制手段について何ら記載されていない。
【0005】
それゆえにこの発明の主たる目的は、等速ジョイントを用いた車両においてトー角の変化を良好に抑制できる、車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、車体フレームと、車体フレームに支持される原動機と、一対の前輪と、原動機からの動力が伝達されるフロント差動装置と、フロント差動装置の左右近傍に設けられる一対の等速ジョイントと、フロント差動装置からの動力を対応する等速ジョイントを介して対応する前輪に伝達するために、それぞれ対応する等速ジョイントと前輪との間に設けられる一対の軸部と、車体フレームに揺動可能に支持される一対のアッパーアームと、それぞれ対応するアッパーアームより下方に位置しかつ車体フレームに揺動可能に支持される一対のロアアームと、それぞれ対応するアッパーアームとロアアームとを連結しかつ対応する軸部を回転可能に支持する一対のナックルアームと、一対の前輪を操舵するステアリング機構とを備え、ステアリング機構は、ステアリングシャフト部と、ステアリングシャフト部の下端部に設けられるピットマンアームと、それぞれ対応するナックルアームに接続される一対のタイロッドと、それぞれピットマンアームおよび対応するタイロッドを連結する一対の第1リンクアームと、それぞれ対応する第1リンクアームと車体フレームとを連結する一対の第2リンクアームとを含み、平面視において、一方のタイロッドと第1リンクアームとの接続部を第1接続部とし、他方のタイロッドと第1リンクアームとの接続部を第2接続部とし、第1接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第1直線とし、第2接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第2直線とすると、第1直線と第2直線との間に、各等速ジョイントの少なくとも一部が位置する、車両が提供される。
【0007】
この発明では、平面視において、第1直線と第2直線との間に各等速ジョイントの少なくとも一部が位置するので、第1リンクアームからナックルアームまでのタイロッドの長さと、等速ジョイントからナックルアームまでの軸部の長さとを実質的に同じか、両者の長さの差分を小さくすることができる。すなわち、第1リンクアームを支点とするタイロッドの揺動半径と、等速ジョイントを支点とする軸部の揺動半径とを実質的に同じか、両者の各半径の差分を小さくすることができる。したがって、タイロッドの当該揺動半径だけではなく軸部の当該揺動半径を、車体フレームに対するアッパーアームおよびロアアームの揺動半径と実質的に同じか、各半径の差分を小さくすることができる。その結果、等速ジョイントを用いた車両において、サスペンションストロークに伴って、車体フレームに対してアッパーアームおよびロアアームが揺動するとともに、タイロッドおよび軸部が揺動するとき、トー角の変化を良好に抑制できる。
【0008】
好ましくは、平面視において、一方の第1リンクアームと第2リンクアームとの接続部を第3接続部とし、他方の第1リンクアームと第2リンクアームとの接続部を第4接続部とし、一方の第2リンクアームと車体フレームとの接続部を第5接続部とし、他方の第2リンクアームと車体フレームとの接続部を第6接続部とし、第3接続部と第4接続部とを通る直線を第3直線とし、第5接続部と第6接続部とを通る直線を第4直線とすると、第3直線と第4直線との間に、各等速ジョイントの少なくとも一部、第1接続部および第2接続部が位置する。この場合、タイロッドと第1リンクアームとの接続部を等速ジョイントの近くに配置できるので、第1リンクアームからナックルアームまでのタイロッドの長さ(タイロッドの揺動半径)と、等速ジョイントからナックルアームまでの軸部の長さ(軸部の揺動半径)とを、実質的に同じか、両者の長さ(両者の各半径)の差分を小さくすることが容易になる。
【0009】
また好ましくは、平面視において、第3接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第5直線とし、第4接続部を通りかつ前後方向に延びる直線を第6直線とすると、第5直線と第6直線との間に、フロント差動装置の少なくとも一部が位置する。
【0010】
さらに好ましくは、平面視において、第3接続部、第4接続部、第5接続部および第6接続部を頂点とする四角形によって囲まれる領域に、フロント差動装置の少なくとも一部が位置する。この場合、リンクアーム構造とフロント差動装置とを平面視で重ねて配置することになるので、車両前後方向においてレイアウトをコンパクトにできる。
【0011】
好ましくは、正面視において、フロント差動装置とステアリング機構の少なくとも一部が重なる。この場合、レイアウトをコンパクトにできる。
【0012】
また好ましくは、側面視において、フロント差動装置の上部形状に沿うようにピットマンアーム、第1リンクアームおよび第2リンクアームの少なくともいずれか1つが傾斜する。この場合、レイアウトをコンパクトにできる。
【0013】
さらに好ましくは、第1リンクアームとタイロッドとは上下方向に延びる取付軸を介して接続され、タイロッドが第1リンクアームからナックルアームに向けて斜め下方に延びる場合、取付軸は上方にかけて車両外方に向くように傾斜する。この場合、斜め下方に延びるタイロッドが、第1リンクアームとの接続部を支点として円滑に揺動できる。
【0014】
好ましくは、正面視において、アッパーアームと車体フレームとの接続部、ロアアームと車体フレームとの接続部、タイロッドと第1リンクアームとの接続部、および等速ジョイントが、上下方向に並ぶ。この場合、タイロッド、軸部、アッパーアームおよびロアアームの揺動半径を実質的に同じか、各揺動半径の差分を小さくすることが容易になる。
【0015】
また好ましくは、アッパーアームと車体フレームとの接続部、タイロッドと第1リンクアームとの接続部、等速ジョイント、およびロアアームと車体フレームとの接続部の順に配置される。
【0016】
さらに好ましくは、当該車両は、角度公差および/または軸方向公差を吸収するために第1リンクアームと第2リンクアームとの接続部に設けられるボールジョイントをさらに含む。この場合、ボールジョイントによって、第1リンクアームと第2リンクアームとの接続部における角度公差および軸方向公差の少なくともいずれか一方を吸収できる。
【0017】
好ましくは、当該車両は、角度公差および/または軸方向公差を吸収するために第2リンクアームと車体フレームとの接続部に設けられる金属カラーをさらに含む。この場合、金属カラーによって、第2リンクアームと車体フレームとの接続部における角度公差および軸方向公差の少なくともいずれか一方を吸収できる。
【0018】
また好ましくは、車体フレームは、フロントフレームを有し、正面視において、フロントフレームの概ね外側に、アッパーアームと車体フレームとの接続部、ロアアームと車体フレームとの接続部、タイロッドと第1リンクアームとの接続部、および等速ジョイントが位置する。
【0019】
さらに好ましくは、タイロッドと第1リンクアームとの接続部は、タイロッドとナックルアームとの接続部より前方に位置し、タイロッドと第1リンクアームとの接続部およびタイロッドとナックルアームとの接続部は、前輪の中心より後方に位置する。この場合、前輪が前方から力を受けた場合にコンプライアンストーアウトとなるように車両を構成できる。これにより、車両は、前方からの力を受け流すことができ、直進走行し易くなる。
【0020】
好ましくは、側面視において、第2リンクアームと車体フレームとの接続部の少なくとも一部は、ピットマンアームと第1リンクアームとの接続部より上方に位置する。この場合、ピットマンアームの下方にフロント差動装置を配置する十分なスペースを形成できる。
【0021】
また好ましくは、当該車両は、車体フレームに支持される鞍乗りシートと、ステアリングシャフト部の上端部に設けられるバーハンドルとをさらに含む。この発明は、このような構成を有するATV(All Terrain Vehicle)に好適に用いられる。
【0022】
なお、この発明における各構成要素の位置関係は、人が乗っておらず水平面上に配置された車両の姿勢を基準にして定義される。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、等速ジョイントを用いた車両においてトー角の変化を良好に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の一実施形態に係る車両を示す側面図である。
【
図3】車体フレームおよびその近傍を示す側面図である。
【
図4】フロントフレームおよびその近傍を示す斜視図である。
【
図5】フロントフレームおよびその近傍を示す正面図である。
【
図6】フロントフレームおよびその近傍を示す平面図である。
【
図7】フロントフレームおよびその近傍の左方の構造を示す平面図である。
【
図8】フロントフレームおよびその近傍を示す左方から見た側面図である。
【
図9】フロント差動装置およびピットマンアーム等を示す正面図である。
【
図10】フロント差動装置およびピットマンアーム等を示す平面図である。
【
図12】ピットマンアーム等を示す後方斜視図である。
【
図13】ピットマンアーム等を後方から見た図である。
【
図14】ピットマンアーム等を示す前方斜視図である。
【
図15】ピットマンアームおよびその近傍を矢印A(
図8参照)で示すステアリングシャフト方向かつ下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図中において、「Fr」は前方を示し、「Rr」は後方を示し、「R」は右方を示し、「L」は左方を示し、「U」は上方を示し、「Lo」は下方を示す。
【0027】
図1および
図2を参照して、この発明の一実施形態に係る車両10は、鞍乗型車両、より具体的には四輪タイプのATVであり、車体12と、一対の前輪14と、一対の後輪16と、車体12に設けられるバーハンドル18と、車体12に支持される鞍乗りシート20とを含む。
図2では、一対の後輪16について一方のみが図示されている。バーハンドル18は、車幅方向中央部においてステアリングシャフト部72(後述)の上端部に設けられ、かつ側面視で前輪14の上方に設けられる。鞍乗りシート20は、車幅方向中央部に設けられ、側面視で前輪14および後輪16よりも上方かつ前輪14と後輪16との間に設けられ、車体フレーム22に支持される。
【0028】
図3を参照して、車体12は、車体フレーム22を含む。
【0029】
車体フレーム22は、主フレーム24、主フレーム24の前部に設けられるフロントフレーム26、および主フレーム24の後部に設けられるリアフレーム28を含む。
【0030】
図4および
図5を参照して、フロントフレーム26は、上下方向に延びる一対の前フレーム部26a,26bを含む。一対の前フレーム部26a,26bの中央より上方寄りの箇所は、クロスメンバ26cによって連結され、一対の前フレーム部26a,26bの中央部は、クロスメンバ26dによって連結され、一対の前フレーム部26a,26bの下端部は、クロスメンバ26eによって連結される。
【0031】
図3~
図5を参照して、車両10はさらに、原動機としてのエンジン30と、エンジン30の下端部から前方に延びるプロペラシャフト32と、エンジン30からプロペラシャフト32を介して伝達される回転を一対の前輪14に伝達する回転伝達部34と、一対の前輪14を懸架する一対のサスペンション36a,36bと、一対の前輪14を操舵するステアリング機構38とを含む。
【0032】
エンジン30は、車体フレーム22の主フレーム24によって支持される。エンジン30は、主フレーム24の前後方向中央部よりやや前方において、斜め前方に傾斜するように配置される。
【0033】
図6~
図8をも参照して、回転伝達部34は、フロント差動装置40と、一対の等速ジョイント42a,42bと、一対の軸部44a,44bと、一対の車軸46a,46bと、一対のハブ48a,48bとを含む。
【0034】
フロント差動装置40は、フロントフレーム26の後方に配置され、主フレーム24によって支持される。フロント差動装置40は、プロペラシャフト32を介してエンジン30に連結され、フロント差動装置40にはエンジン30からの動力が伝達される。
【0035】
フロント差動装置40の左右近傍に、一対の等速ジョイント42a,42bが設けられる。
【0036】
一対の等速ジョイント42a,42bと一対の前輪14との間には、一対の軸部44a,44b、一対の車軸46a,46b、および一対のハブ48a,48bが設けられる。すなわち、フロント差動装置40からの動力を等速ジョイント42aを介して一方の前輪14に伝達するために、等速ジョイント42aと一方の前輪14との間に、軸部44a、車軸46aおよびハブ48aが設けられ、フロント差動装置40からの動力を等速ジョイント42bを介して他方の前輪14に伝達するために、等速ジョイント42bと他方の前輪14との間に、軸部44b、車軸46bおよびハブ48bが設けられる。
【0037】
軸部44aは、ドライブシャフト50aおよび等速ジョイント52aを含む。ドライブシャフト50aは、左右方向に延びて等速ジョイント42aと等速ジョイン52aとを連結する。等速ジョイント52aおよび車軸46aは互いに連結され、かつナックルアーム58a(後述)に回転可能に支持される。車軸46aにはハブ48aを介して前輪14(この実施形態では、左前輪)が取り付けられる。
【0038】
軸部44bは、軸部44aと左右対称かつ同様に構成され、ドライブシャフト50bおよび等速ジョイント52bを含む。ドライブシャフト50bは、左右方向に延びて等速ジョイント42bと等速ジョイン52bとを連結する。等速ジョイント52bおよび車軸46bは互いに連結され、かつナックルアーム58b(後述)に回転可能に支持される。車軸46bにはハブ48bを介して前輪14(この実施形態では、右前輪)が取り付けられる。
【0039】
一対のサスペンション36a,36bは、一対の前輪14を懸架するために一対の前輪14と車体フレーム22との間に設けられる。この実施形態では、サスペンション36a,36bの構成として、たとえばダブルウィッシュボーンタイプが採用される。
【0040】
サスペンション36a,36bは、車体フレーム22の前部に設けられる。
【0041】
サスペンション36aは、アッパーアーム54a、ロアアーム56a、ナックルアーム58a、ショックアブソーバ60aおよびコイルスプリング62aを含む。同様に、サスペンション36bは、アッパーアーム54b、ロアアーム56b、ナックルアーム58b、ショックアブソーバ60bおよびコイルスプリング62bを含む。
【0042】
アッパーアーム54a,54bおよびロアアーム56a,56bとしては、たとえばA型アームが用いられる。
【0043】
フロントフレーム26近傍において、一対のアッパーアーム54a,54bおよび一対のロアアーム56a,56bが、主フレーム24に上下方向に揺動可能に支持される。各ロアアーム56a,56bは、対応するアッパーアーム54a,54bより下方に位置する。より具体的には、
図4、
図8および
図9を参照して、車体フレーム22はさらに、主フレーム24の左側に設けられる2つのブラケット64aおよび2つのブラケット66aと、主フレーム24の右側に設けられる2つのブラケット64bおよび2つのブラケット66bとを含む。アッパーアーム54aは、主フレーム24に2つのブラケット64aを介して揺動可能に接続され、アッパーアーム54bは、主フレーム24に2つのブラケット64bを介して揺動可能に接続され、ロアアーム56aは、主フレーム24に2つのブラケット66aを介して揺動可能に接続され、ロアアーム56bは、主フレーム24に2つのブラケット66bを介して揺動可能に接続される。
【0044】
図5に戻って、アッパーアーム54aとロアアーム56aとの間に、ナックルアーム58aが設けられる。すなわち、アッパーアーム54aとロアアーム56aとは、ナックルアーム58aを介して連結される。より具体的には、アッパーアーム54aおよびロアアーム56aはそれぞれ、ボールジョイント68a,70aを介してナックルアーム58aに接続される。これにより、アッパーアーム54aおよびロアアーム56aは、ナックルアーム58aに対して上下方向に揺動可能になる。また、ナックルアーム58aは、アッパーアーム54aおよびロアアーム56aに対して前後方向に揺動可能になる。ナックルアーム58aによって軸部44aが回転可能に支持される。
【0045】
同様に、アッパーアーム54bとロアアーム56bとの間に、ナックルアーム58bが設けられる。すなわち、アッパーアーム54bとロアアーム56bとは、ナックルアーム58bを介して連結される。より具体的には、アッパーアーム54bおよびロアアーム56bはそれぞれ、ボールジョイント68b,70bを介してナックルアーム58bに接続される。これにより、アッパーアーム54bおよびロアアーム56bは、ナックルアーム58bに対して上下方向に揺動可能になる。また、ナックルアーム58bは、アッパーアーム54bおよびロアアーム56bに対して前後方向に揺動可能になる。ナックルアーム58bによって軸部44bが回転可能に支持される。
【0046】
ショックアブソーバ60a,60bの下端部はそれぞれ、左右方向に揺動可能にロアアーム56a,56bに支持される。ショックアブソーバ60a,60bの上端部はそれぞれ、フロントフレーム26の前フレーム部26a、26bの上端部に左右方向に揺動可能に支持される。
【0047】
図5、
図8および
図9を参照して、ステアリング機構38は、主フレーム24によって支持される。ステアリング機構38は、ステアリングシャフト部72と、ピットマンアーム74と、一対のタイロッド76a,76bと、一対の第1リンクアーム78a,78bと、一対の第2リンクアーム80a,80bとを含む。
【0048】
ステアリングシャフト部72は、ステアリングシャフト82と、ステアリングシャフト82に設けられる電動パワーステアリング(EPS)84とを含む。ステアリングシャフト82は、主フレーム24の前部近傍に設けられる。電動パワーステアリング84は、ブラケット86を介して主フレーム24に支持される。
【0049】
図10および
図11をも参照して、ピットマンアーム74は、ステアリングシャフト部72の下端部に設けられる。
【0050】
タイロッド76aは、対応するナックルアーム58aに接続され、タイロッド76bは、対応するナックルアーム58bに接続される。
【0051】
一対の第1リンクアーム78a,78bはそれぞれ、ピットマンアーム74および対応するタイロッド76a,76bを連結する。ピットマンアーム74およびタイロッド76aは、第1リンクアーム78aに揺動自在に接続され、ピットマンアーム74およびタイロッド76bは、第1リンクアーム78bに揺動自在に接続される。
【0052】
ピットマンアーム74は、第1リンクアーム78aに接続部材88によって接続され、第1リンクアーム78bに接続部材88によって接続される。
【0053】
図12および
図13をも参照して、第1リンクアーム78a,78bとタイロッド76a,76bとは上下方向に延びる取付軸90a,90bを介して接続される。タイロッド76a,76bはそれぞれ、第1リンクアーム78a,78bからナックルアーム58a,58bに向けて斜め下方に延び、取付軸90a,90bは上方にかけて車両外方に向くように傾斜する。この実施形態では、取付軸90a,90bは、後方にもやや傾斜する。取付軸90aとタイロッド76aの端部、および取付軸90bとタイロッド76bの端部が、それぞれ、ボールジョイントとして機能する。
【0054】
図14および
図15をも参照して、一対の第2リンクアーム80a,80bはそれぞれ、対応する第1リンクアーム78a,78bと車体フレーム22とを連結する。より具体的には、第2リンクアーム80aは、第1リンクアーム78aの中間部と車体フレーム22とを連結し、第2リンクアーム80bは、第1リンクアーム78bの中間部と車体フレーム22とを連結する。第1リンクアーム78a,78bはそれぞれ、第2リンクアーム80a,80bに揺動自在に接続される。車体フレーム22はさらに、主フレーム24に接続されるプレート部材92を有する。プレート部材92は、主フレーム24にたとえば溶接される。一対の第2リンクアーム80a,80bは、プレート部材92を介して相互に連結され、プレート部材92を介して主フレーム24に接続される。
【0055】
図16を参照して、第1リンクアーム78aと第2リンクアーム80aとは、ボールジョイント94によって連結される。ボールジョイント94は、ボルト94aと、ナット94bと、球状部94cと、ボールシート94dと、2つのワッシャ94eと、プレート部材94fとを含む。第1リンクアーム78aと第2リンクアーム80aとは、ボルト94aに球状部94cと2つのワッシャ94eとが嵌められた状態で、ボルト94aとナット94bとによって連結される。ボールシート94dは、球状部94cに対向するように、第1リンクアーム78a内に嵌められる。プレート部材94fは、ボールシート94dの位置ずれを防ぐために、第1リンクアーム78aと第2リンクアーム80aとの間に設けられる。このようにして、角度公差および/または軸方向公差を吸収するために、第1リンクアーム78aと第2リンクアーム80aとの接続部にボールジョイント94が設けられる。第1リンクアーム78bと第2リンクアーム80bとの接続部にも同様に、ボールジョイント94が設けられる。
【0056】
図17を参照して、第2リンクアーム80aはプレート部材92にボルト96とナット98とによって連結される。このとき、第2リンクアーム80aの上面とプレート部材92との間、および第2リンクアーム80aの下面とボルト96の頭部96aとの間には、それぞれ、金属カラー100,102が設けられる。ボルト96の胴部96bと第2リンクアーム80aとの間には、円筒状のカラー104およびハウジング106,108が介挿される。また、金属カラー100とハウジング106との間および金属カラー102とハウジング108との間にはそれぞれ、ワッシャ110,112が設けられる。さらに、金属カラー100,102の内側には、第2リンクアーム80aの位置ずれを防ぐためにゴム等からなる環状の弾性部材114,116が設けられる。このようにして、角度公差および/または軸方向公差を吸収するために、第2リンクアーム80aと車体フレーム22(プレート部材92)との接続部に金属カラー100,102が設けられる。第2リンクアーム80bと車体フレーム22(プレート部材92)との接続部にも同様に、金属カラー100,102が設けられる。
【0057】
図10に戻って、平面視において、タイロッド76aと第1リンクアーム78aとの接続部を第1接続部C1とし、タイロッド76bと第1リンクアーム78bとの接続部を第2接続部C2とし、第1接続部C1を通りかつ前後方向に延びる直線を第1直線L1とし、第2接続部C2を通りかつ前後方向に延びる直線を第2直線L2とすると、第1直線L1と第2直線L2との間に、各等速ジョイント42a,42bの少なくとも一部が位置する。
【0058】
平面視において、第1リンクアーム78aと第2リンクアーム80aとの接続部を第3接続部C3とし、第1リンクアーム78bと第2リンクアーム80bとの接続部を第4接続部C4とし、第2リンクアーム80aと車体フレーム22との接続部を第5接続部C5とし、第2リンクアーム80bと車体フレーム22との接続部を第6接続部C6とし、第3接続部C3と第4接続部C4とを通る直線を第3直線L3とし、第5接続部C5と第6接続部C6とを通る直線を第4直線L4とすると、第3直線L3と第4直線L4との間に、第1接続部C1、第2接続部C2、および各等速ジョイント42a,42bの少なくとも一部が位置する。
【0059】
平面視において、第3接続部C3を通りかつ前後方向に延びる直線を第5直線L5とし、第4接続部C4を通りかつ前後方向に延びる直線を第6直線L6とすると、第5直線L5と第6直線L6との間に、フロント差動装置40の少なくとも一部が位置する。
【0060】
平面視において、第3接続部C3、第4接続部C4、第5接続部C5および第6接続部C6を頂点とする四角形によって囲まれる領域に、フロント差動装置40の少なくとも一部が位置する。
【0061】
図5に戻って、正面視において、フロント差動装置40とステアリング機構38の少なくとも一部が重なる。
【0062】
正面視において、アッパーアーム54aと車体フレーム22との接続部C7、ロアアーム56aと車体フレーム22との接続部C8、タイロッド76aと第1リンクアーム78aとの接続部(第1接続部C1)、および等速ジョイント42aが、上下方向に並ぶ。すなわち、正面視において、これらは、略一直線上に並び、多少ずれていても概ね並んでいればよい。同様に、正面視において、アッパーアーム54bと車体フレーム22との接続部C9、ロアアーム56bと車体フレーム22との接続部C10、タイロッド76bと第1リンクアーム78bとの接続部(第2接続部C2)、および等速ジョイント42bが、上下方向に並ぶ。すなわち、正面視において、これらは、略一直線上に並び、多少ずれていても概ね並んでいればよい。
【0063】
また、上方から下方に向けて、アッパーアーム54aと車体フレーム22との接続部C7、タイロッド76aと第1リンクアーム78aとの接続部(第1接続部C1)、等速ジョイント42a、およびロアアーム56aと車体フレーム22との接続部C8の順に配置される。同様に、上方から下方に向けて、アッパーアーム54bと車体フレーム22との接続部C9、タイロッド76bと第1リンクアーム78bとの接続部(第2接続部C2)、等速ジョイント42b、およびロアアーム56bと車体フレーム22との接続部C10の順に配置される。
【0064】
正面視において、フロントフレーム26の概ね外側に、アッパーアーム54a,54bと車体フレーム22との接続部C7,C9、ロアアーム56a,56bと車体フレーム22との接続部C8,C10、タイロッド76a,76bと第1リンクアーム78a,78bとの接続部(第1接続部C1および第2接続部C2)、および等速ジョイント42a,42bが位置する。ここで、等速ジョイント42a,42bについては、正面視において、それぞれの外端部がフロントフレーム26の外側に位置すればよく、それぞれの一部はフロントフレーム26の内側に位置してもよい。
【0065】
図8を参照して、側面視において、フロント差動装置40の上部形状に沿うようにピットマンアーム74、第1リンクアーム78a,78b、および第2リンクアーム80a,80bが傾斜する(水平面に対して平行ではなく傾く)。また、側面視において、第2リンクアーム80a,80bと車体フレーム22(プレート部材92)との接続部の少なくとも一部は、ピットマンアーム74と第1リンクアーム78a,78bとの接続部より上方に位置する。
【0066】
図5および
図7を参照して、タイロッド76aと第1リンクアーム78aとの接続部(第1接続部C1)は、タイロッド76aとナックルアーム58aとの接続部C11より前方に位置し、タイロッド76aと第1リンクアーム78aとの接続部(第1接続部C1)、およびタイロッド76aとナックルアーム58aとの接続部C11は、左側の前輪14の中心D1より後方に位置する。このように構成することにより、前輪14が前方から矢印Fで示す力を受けると、ナックルアーム58aの後部はタイロッド76aによって矢印X1で示すように内方に引かれ、それに伴ってナックルアーム58aの前部は矢印X2で示すように外方に開く。同様に、タイロッド76bと第1リンクアーム78bとの接続部(第2接続部C2)は、タイロッド76bとナックルアーム58bとの接続部C12より前方に位置し、タイロッド76bと第1リンクアーム78bとの接続部(第2接続部C2)、およびタイロッド76bとナックルアーム58bとの接続部C12は、右側の前輪14の中心D2より後方に位置する。
【0067】
このような車両10によれば、平面視において、第1直線L1と第2直線L2との間に各等速ジョイント42a,42bの少なくとも一部が位置するので、第1リンクアーム78a(78b)からナックルアーム58a(58b)までのタイロッド76a(76b)の長さと、等速ジョイント42a(42b)からナックルアーム58a(58b)までの軸部44a(44b)の長さとを実質的に同じか、両者の長さの差分を小さくすることができる。すなわち、第1リンクアーム78a(78b)を支点とするタイロッド76a(76b)の揺動半径と、等速ジョイント42a(42b)を支点とする軸部44a(44b)の揺動半径とを実質的に同じか、両者の各半径の差分を小さくすることができる。したがって、タイロッド76a(76b)の当該揺動半径だけではなく軸部44a(44b)の当該揺動半径を、車体フレーム22に対するアッパーアーム54a(54b)およびロアアーム56a(56b)の揺動半径と実質的に同じか、各半径の差分を小さくすることができる。その結果、等速ジョイント42a,42bを用いた車両10において、サスペンションストロークに伴って、車体フレーム22に対してアッパーアーム54a(54b)およびロアアーム56a(56b)が揺動するとともに、タイロッド76a(76b)および軸部44a(44b)が揺動するとき、トー角の変化を良好に抑制できる。
【0068】
平面視において、第3直線L3と第4直線L4との間に、各等速ジョイント42a,42bの少なくとも一部、第1接続部C1および第2接続部C2が位置する。したがって、タイロッド76a(76b)と第1リンクアーム78a(78b)との接続部を等速ジョイント42a(42b)の近くに配置できるので、第1リンクアーム78a(78b)からナックルアーム58a(58b)までのタイロッド76a(76b)の長さ(タイロッド76a(76b)の揺動半径)と、等速ジョイント42a(42b)からナックルアーム58a(58b)までの軸部44a(44b)の長さ(軸部44a(44b)の揺動半径)とを、実質的に同じか、両者の長さ(両者の各半径)の差分を小さくすることが容易になる。
【0069】
平面視において、第3接続部C3、第4接続部C4、第5接続部C5および第6接続部C6を頂点とする四角形によって囲まれる領域に、フロント差動装置40の少なくとも一部が位置する。したがって、リンクアーム構造とフロント差動装置40とを平面視で重ねて配置することになるので、車両前後方向においてレイアウトをコンパクトにできる。
【0070】
正面視において、フロント差動装置40とステアリング機構38の少なくとも一部が重なるので、レイアウトをコンパクトにできる。
【0071】
側面視において、フロント差動装置40の上部形状に沿うようにピットマンアーム74、第1リンクアーム78a,78bおよび第2リンクアーム80a,80bが傾斜する。したがって、レイアウトをコンパクトにできる。
【0072】
タイロッド76a(76b)が第1リンクアーム78a(78b)からナックルアーム58a(58b)に向けて斜め下方に延び、取付軸90a(90b)は上方にかけて車両外方に向くように傾斜する。したがって、斜め下方に延びるタイロッド76a(76b)が、第1リンクアーム78a(78b)との接続部を支点として円滑に揺動できる。すなわち、取付軸90a(90b)とタイロッド76a(76b)の端部とによって構成されるボールジョイントの揺動角を広く利用できる。
【0073】
正面視において、アッパーアーム54a(54b)と車体フレーム22との接続部C7(C9)、ロアアーム56a(56b)と車体フレーム22との接続部C8(C10)、タイロッド76a(76b)と第1リンクアーム78a(78b)との接続部(第1接続部C1(第2接続部C2))、および等速ジョイント42a(42b)が、上下方向に並ぶ。したがって、タイロッド76a(76b)、軸部44a(44b)、アッパーアーム54a(54b)およびロアアーム56a(56b)の揺動半径を実質的に同じか、各揺動半径の差分を小さくすることが容易になる。
【0074】
ボールジョイント94によって、第1リンクアーム78a(78b)と第2リンクアーム80a(80b)との接続部における角度公差および軸方向公差の少なくともいずれか一方を吸収できる。
【0075】
金属カラー100,102によって、第2リンクアーム80a(80b)と車体フレーム22(プレート部材92)との接続部における角度公差および軸方向公差の少なくともいずれか一方を吸収できる。
【0076】
タイロッド76a(76b)と第1リンクアーム78a(78b)との接続部(第1接続部C1(第2接続部C2))は、タイロッド76a(76b)とナックルアーム58a(58b)との接続部C11(C12)より前方に位置し、タイロッド76a(76b)と第1リンクアーム78a(78b)との接続部(第1接続部C1(第2接続部C2))およびタイロッド76a(76b)とナックルアーム58a(58b)との接続部C11(C12)は、前輪14の中心D1(D2)より後方に位置する。これにより、前輪14が前方から力を受けた場合にコンプライアンストーアウトとなるように車両10を構成できる。その結果、車両10は、前方からの力を受け流すことができ、直進走行し易くなる。
【0077】
側面視において、第2リンクアーム80a(80b)と車体フレーム22(プレート部材92)との接続部の少なくとも一部は、ピットマンアーム74と第1リンクアーム78a(78b)との接続部より上方に位置する。したがって、ピットマンアーム74の下方にフロント差動装置40を配置する十分なスペースを形成できる。
【0078】
この発明は、上述のような構成を有するATVに好適に用いられる。
【0079】
なお、上述の実施形態では、側面視において、フロント差動装置40の上部形状に沿うようにピットマンアーム74、第1リンクアーム78a,78b、および第2リンクアーム80a,80bのすべてが傾斜したが、これに限定されない。側面視において、フロント差動装置40の上部形状に沿うようにピットマンアーム74、第1リンクアーム78a,78b、および第2リンクアーム80a,80bのいずれか1つが傾斜すればよい。
【0080】
上述の実施形態では、金属カラー100,102によって、第2リンクアーム80a(80b)と車体フレーム22との接続部における軸方向公差を吸収するようにしたが、これに限定されない。ボールジョイントを用いて当該接続部における軸方向公差を吸収するようにしてもよい。
【0081】
この発明は、ROV(Recreational Off-Highway Vehicle)にも適用できる。
【0082】
原動機は、エンジン30に限定されず、電動モータであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 車両
14 前輪
16 後輪
18 バーハンドル
20 鞍乗りシート
22 車体フレーム
26 フロントフレーム
30 エンジン
38 ステアリング機構
40 フロント差動装置
42a,42b,52a,52b 等速ジョイント
44a,44b 軸部
54a,54b アッパーアーム
56a,56b ロアアーム
58a,58b ナックルアーム
68a,68b,70a,70b,94 ボールジョイント
72 ステアリングシャフト部
74 ピットマンアーム
76a,76b タイロッド
78a,78b 第1リンクアーム
80a,80b 第2リンクアーム
90a,90b 取付軸
92 プレート部材
100,102 金属カラー
C1 第1接続部
C2 第2接続部
C3 第3接続部
C4 第4接続部
C5 第5接続部
C6 第6接続部
C7,C8,C9,C10,C11,C12 接続部
D1,D2 前輪の中心
L1 第1直線
L2 第2直線
L3 第3直線
L4 第4直線
L5 第5直線
L6 第6直線