(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113027
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/087 20180101AFI20230807BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20230807BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20230807BHJP
【FI】
G01N23/087
G01N23/18
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015119
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】岩川 健
(72)【発明者】
【氏名】前中 章弘
(72)【発明者】
【氏名】万木 太
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA08
2G001EA03
2G001FA29
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA05
2G001LA01
2G001PA03
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】物品の搬送速度を上げても当該物品の検査精度の低下を防止可能なX線検査装置、X線検査システム、及びX線検査方法を提供する。
【解決手段】
X線検査装置は、物品を搬送する搬送部と、第1エネルギー帯の第1電磁波、及び、第2エネルギー帯の第2電磁波を物品に照射する電磁波照射部と、物品に照射される第1電磁波及び第2電磁波を検出する電磁波センサと、電磁波センサの検出結果が入力される制御部と、を備える。制御部は、第1電磁波の検出結果に基づく第1透過画像と、第2電磁波の検出結果に基づく第2透過画像とを生成し、第1透過画像及び第2透過画像に映し出されるうち物品以外の背景に関する輝度分布を利用して、第1透過画像及び第2透過画像に対するサブトラクション処理を含む画像処理を実施し、サブトラクション処理にて得られる差分画像に基づき、物品に含まれる異物の有無を判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエネルギー帯のX線を物品に照射するX線源と、
前記X線をフォトンカウンティング方式で検出可能であるX線検出部と、
前記X線検出部による前記X線の検出結果に基づき、前記複数のエネルギー帯の全てのX線に対応する全体透過画像、及び、前記複数のエネルギー帯の一部のX線に対応する透過画像を生成する画像生成部と、
前記全体透過画像及び前記透過画像のそれぞれに基づき、前記物品を検査する検査部と、
を備えるX線検査装置。
【請求項2】
複数のエネルギー帯のX線を物品に照射するX線源と、
前記X線をフォトンカウンティング方式で検出可能であるX線検出部と、
前記X線検出部による前記X線の検出結果に基づき、(1)前記複数のエネルギー帯の全てのX線に対応する全体透過画像、(2)前記複数のエネルギー帯に含まれる第1エネルギー帯のX線に対応する第1透過画像、(3)前記複数のエネルギー帯に含まれると共に前記第1エネルギー帯よりも低い第2エネルギー帯のX線に対応する第2透過画像、及び、(4)前記第1透過画像と前記第2透過画像とのサブトラクション処理にて得られる差分画像を生成する画像生成部と、
前記全体透過画像、前記第1透過画像、及び前記第2透過画像の少なくとも一つ、ならびに、前記差分画像のそれぞれに基づき、前記物品を検査する検査部と、
を備えるX線検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、前記差分画像と、少なくとも前記全体透過画像とに基づき、前記物品を検査する、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記検査部は、前記差分画像と、少なくとも前記第1透過画像とに基づき、前記物品を検査する、請求項2または3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記検査部は、前記差分画像と、少なくとも前記第2透過画像とに基づき、前記物品を検査する、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記画像生成部は、前記全体透過画像と前記第2透過画像とに基づいて、前記第1透過画像を生成する、請求項2~5のいずれか一項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
外部から操作を受け付ける表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記検査部による前記物品の検査に用いられる画像の選択操作を受け付ける、請求項2~6のいずれか一項に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記X線検出部は、直接変換型検出部である、請求項1~7のいずれか一項に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線検査装置として、例えば、特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1に記載のX線検査装置は、被検査物にX線を照射するX線源と、X線源から照射される第1エネルギー帯のX線を検知する第1センサ及び第2エネルギー帯のX線を検知する第2センサを有するセンサユニットと、第1センサにより検知されたX線データに基づいて被検査物の第1透過画像を生成すると共に、第2センサにより検知されたX線データに基づいて被検査物の第2透過画像を生成する画像生成部と、画像生成部によって生成された画像に基づいて検査を行う検査部と、を備えている。このX線検査装置では、第1透過画像及び第2透過画像から被検査物を消し込むことによって、異物のみの抽出が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなX線検査装置では、上述したように異物のみの抽出が可能になっている。このため、被検査物(物品)が分厚い場合であっても、被検査物内の異物の有無を高精度に検査できる。一方、被検査物における薄い部分(例えば、包材部分など)が含まれる場合などにおいては、当該部分内の異物の有無などを精度よく検査できないおそれがある。
【0005】
本発明の一側面の目的は、様々な厚みを有する物品に対する高精度な検査を可能なX線検査装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るX線検査装置は、複数のエネルギー帯のX線を物品に照射するX線源と、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能であるX線検出部と、X線検出部によるX線の検出結果に基づき、複数のエネルギー帯の全てのX線に対応する全体透過画像、及び、複数のエネルギー帯の一部のX線に対応する透過画像を生成する画像生成部と、全体透過画像及び透過画像のそれぞれに基づき、物品を検査する検査部と、を備える。
【0007】
このX線検査装置によれば、検査部は、全体透過画像及び透過画像のそれぞれに基づき、物品を検査する。ここで、上記透過画像を生成するためのエネルギー帯が検査条件によって変更されることによって、物品内の異物の有無などを精度よく検査できる。加えて、全体透過画像を用いることによって、様々な厚みを有する物品に対する異物の有無などを検査できる。したがって、上記X線検査装置を用いることによって、様々な厚みを有する物品に対する高精度な検査が可能になる。
【0008】
本発明の別の一側面に係るX線検査装置は、複数のエネルギー帯のX線を物品に照射するX線源と、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能であるX線検出部と、X線検出部によるX線の検出結果に基づき、(1)複数のエネルギー帯の全てのX線に対応する全体透過画像、(2)複数のエネルギー帯に含まれる第1エネルギー帯のX線に対応する第1透過画像、(3)複数のエネルギー帯に含まれると共に第1エネルギー帯よりも低い第2エネルギー帯のX線に対応する第2透過画像、及び、(4)第1透過画像と第2透過画像とのサブトラクション処理にて得られる差分画像を生成する画像生成部と、全体透過画像、第1透過画像、及び第2透過画像の少なくとも一つ、ならびに、差分画像のそれぞれに基づき、物品を検査する検査部と、を備える。
【0009】
このX線検査装置によれば、検査部は、全体透過画像、第1透過画像、及び第2透過画像の少なくとも一つ、ならびに、差分画像のそれぞれに基づき、物品を検査する。この場合、差分画像を用いることによって、物品において比較的厚い部分に対する異物の有無などを精度よく検査できる。加えて、全体透過画像、第1透過画像、及び第2透過画像の少なくとも一つを用いることによって、物品において上記比較的厚い部分とは異なる部分に対する異物の有無などを検査できる。したがって、上記X線検査装置を用いることによって、様々な厚みを有する物品に対する高精度な検査が可能になる。
【0010】
検査部は、差分画像と、少なくとも全体透過画像とに基づき、物品を検査してもよい。この場合、全体透過画像を用いることによって、様々な厚みを有する物品に対する異物の有無などを容易に検査できる。
【0011】
検査部は、差分画像と、少なくとも第1透過画像とに基づき、物品を検査してもよい。この場合、第1透過画像を用いることによって、特に物品の薄い部分に対する異物の有無などを高精度に検査できる。
【0012】
検査部は、差分画像と、少なくとも第2透過画像とに基づき、物品を検査してもよい。この場合、第2透過画像を用いることによって、物品の比較的厚い部分に対する異物の有無などをより高精度に検査できる。
【0013】
画像生成部は、全体透過画像と第2透過画像とに基づいて、第1透過画像を生成してもよい。
【0014】
上記X線検査装置は、外部から操作を受け付ける表示部をさらに備え、表示部は、検査部による物品の検査に用いられる画像の選択操作を受け付けてもよい。この場合、表示部を介して検査精度などを適宜変更できる。
【0015】
X線検出部は、直接変換型検出部でもよい。この場合、X線検査装置の小型化を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、様々な厚みを有する物品に対する高精度な検査を可能なX線検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るX線検査装置の構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるシールドボックスの内部の構成図である。
【
図4】
図4(a)は、第1透過画像を示す図であり、
図4(b)は、第2透過画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1に示されるように、X線検査装置1は、装置本体2と、支持脚3と、シールドボックス4と、搬送部5と、X線照射部6と、X線検出部7と、表示操作部8と、制御部10と、を備える。X線検査装置1は、物品Gを搬送しつつ物品GのX線透過画像を生成し、当該X線透過画像に基づいて物品Gの検査(例えば、収納数検査、異物検査、欠品検査、割れ欠け検査等)を行う。検査前の物品Gは、搬入コンベア51によってX線検査装置1に搬入される。検査後の物品Gは、搬出コンベア52によってX線検査装置1から搬出される。X線検査装置1によって不良品と判定された物品Gは、搬出コンベア52の下流に配置された振分装置(図示省略)によって生産ライン外に振り分けられる。X線検査装置1によって良品と判定された物品Gは、当該振分装置をそのまま通過する。本実施形態では、物品Gはシリアルフレークである。
【0020】
装置本体2は、制御部10等を収容している。支持脚3は、装置本体2を支持している。シールドボックス4は、装置本体2に設けられている。シールドボックス4は、外部へのX線(電磁波)の漏洩を防止する。シールドボックス4の内部には、X線による物品Gの検査が実施される検査領域Rが設けられている。シールドボックス4には、搬入口4a及び搬出口4bが形成されている。検査前の物品Gは、搬入コンベア51から搬入口4aを介して検査領域Rに搬入される。検査後の物品Gは、検査領域Rから搬出口4bを介して搬出コンベア52に搬出される。搬入口4a及び搬出口4bのそれぞれには、X線の漏洩を防止するX線遮蔽カーテン(図示省略)が設けられている。
【0021】
搬送部5は、物品Gを搬送する部材であり、シールドボックス4の中央を貫通するように配置されている。搬送部5は、搬入口4aから検査領域Rを介して搬出口4bまで、搬送方向Aに沿って物品Gを搬送する。搬送部5は、例えば、搬入口4aと搬出口4bとの間に掛け渡されたベルトコンベアである。なお、ベルトコンベアである搬送部5は、搬入口4a及び搬出口4bよりも外側に突出していてもよい。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、X線照射部6は、シールドボックス4内に配置されている電磁波照射部(X線源)である。X線照射部6は、例えば、X線を出射するX線管と、X線管から出射されたX線を搬送方向Aに垂直な面内において扇状に広げる絞り部と、を有している。X線照射部6から照射されるX線には、低エネルギー(長波長)から高エネルギー(短波長)までの様々なエネルギー帯のX線が含まれている。このため、X線照射部6は、搬送部5によって搬送される物品Gに対して、複数のエネルギー帯のX線を照射する。なお、上述した低エネルギー及び高エネルギーにおける「低」及び「高」は、X線照射部6から照射される複数のエネルギー帯の中で相対的に「低い」及び「高い」ことを示すものであり、特定の範囲を示すものではない。本実施形態では、X線照射部6は、少なくとも、第1エネルギー帯のX線(第1電磁波)と、当該第1エネルギー帯よりも低い第2エネルギー帯のX線(第2電磁波)とを含む複数のエネルギー帯を照射する。第1エネルギー帯と第2エネルギー帯とは、所定の閾値によって区分されてもよいし、異なる閾値(例えば、第1の閾値と、当該第1の閾値とは異なる第2の閾値)によって区分されてもよい。後者の場合、第1エネルギー帯と第2エネルギー帯との間には、1または複数のエネルギー帯が存在してもよい。なお、上記閾値及びその数は、物品Gの種類変更、検査条件の変更などに応じて、表示操作部8を介して適宜変更できる。
【0023】
X線検出部7は、電磁波を検出するセンサ部材である。X線検出部7は、シールドボックス4内であって、上下方向においてX線照射部6に対向する位置に配置される。X線検出部7は、特定のエネルギー帯のX線を検出可能でもよいし、フォトンカウンティング方式でX線を検出可能でもよい。X線検出部7は、直接変換型検出部でもよいし、間接変換型検出部でもよい。本実施形態では、X線検出部7は、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能な直接変換型検出部であり、例えば、物品Gを透過する複数のエネルギー帯の各々のX線を検出するセンサ(マルチエナジーセンサ)を含む。当該センサは、例えば、少なくとも搬送部5の搬送方向及び上下方向に直交する方向(幅方向)に並べられる。当該素子は、上記幅方向だけでなく、上記搬送方向にも並べられてもよい。すなわち、X線検出部7は、ラインセンサを含んでもよいし、二次元的に配置されるセンサ群を含んでもよい。上記センサは、例えば、CdTe半導体検出器などの光子検出型センサである。
【0024】
X線検出部7に含まれる上記素子においては、例えば、X線の光子が到達することによって電子正孔対が生成される。このときに得られるエネルギーに基づき、フォトンカウンティングがなされる。ここで、所定の閾値(1または複数の閾値)を用いることによって、各エネルギー領域のフォトンカウンティングが可能になる。X線検出部7は、X線の検出結果に相当する信号(検出結果信号)を制御部10に出力する。
【0025】
図1に示されるように、表示操作部8は、装置本体2に設けられている部材(表示部)である。表示操作部8は、各種情報を表示すると共に、外部から各種条件の入力操作を受け付ける。表示操作部8は、例えば、液晶ディスプレイであり、タッチパネルとしての操作画面を表示する。この場合、オペレータは、表示操作部8を介して各種条件を入力することができる。入力操作としては、例えば、制御部10に含まれる検査部23(
図3を参照)による物品Gの検査に用いられる画像(詳細は後述)の選択操作を受け付ける。これにより、所望の検査結果を好適に入手できる。
【0026】
制御部10は、装置本体2内に配置されている。制御部10は、X線検査装置1の各部(本実施形態では、搬送部5、X線照射部6、X線検出部7、及び表示操作部8、並びに、X線検査装置1の下流に配置される図示しない振分装置)の動作を制御する。なお、振分装置は、X線検査装置1による画像検査で不良品と判定された被検査物(物品)を搬送路上から排除する装置である。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びSSD(Solid State Drive)等のストレージを備える。ROMには、X線検査装置1を制御するためのプログラムが記録されている。
【0027】
図3は、制御部の機能構成図である。
図3に示されるように、制御部10は、検出結果取得部21と、画像生成部22と、検査部23と、判定部24と、出力部25と、記憶部26とを備えている。
【0028】
検出結果取得部21は、X線検出部7から出力される検出結果信号を取得する。検出結果取得部21は、取得した検出結果信号を画像生成部22に送信する。
【0029】
画像生成部22は、例えば主にGPU(Graphics Processing Unit)によって構成され、上記検出結果信号をメモリ上で二次元の画像に展開する。二次元の画像が展開されるメモリは、例えばGPUに含まれるメモリであるが、これに限られない。画像生成部22は、例えば、X線検出部7によるX線の検出結果に基づいて、物品Gの検査に用いられる複数の画像を生成する。画像生成部22は、当該複数の画像の一つとして、例えば、上記検出結果に基づき、上記複数のエネルギー帯の全てのX線に対応する全体透過画像(非エネルギー分析用画像)を生成する。当該全体透過画像は、例えば、検出結果信号に含まれる情報の全てに基づいて生成される。全体透過画像の生成時、ノイズとみなされる情報が予め排除されてもよい。この場合、全体透過画像は、検出結果信号に含まれる情報の一部に基づいて生成される。
【0030】
画像生成部22は、全体透過画像に加えて、当該複数のエネルギー帯の一部のX線に対応する1または複数の透過画像を生成する。本実施形態では、画像生成部22は、透過画像として、上記第1エネルギー帯のX線に対応する第1透過画像P1(
図4(a)を参照)と、上記第2エネルギー帯のX線に対応する第2透過画像P2(
図4(b)を参照)と、第1透過画像P1と第2透過画像P2とのサブトラクション処理にて得られる差分画像P3(
図5を参照)とが生成される。
【0031】
第1透過画像P1は、例えば、検出結果信号に含まれる情報の一部に基づいて生成される。第2透過画像P2は、例えば、検出結果信号に含まれる情報の別の一部に基づいて生成される。画像生成部22は、全体透過画像と第2透過画像P2とに基づいて、第1透過画像P1を生成してもよい。この場合、第1透過画像P1は、例えば、全体透過画像の生成に利用されるデータと、第2透過画像P2の生成に利用されるデータとの差分データに基づいて生成される。もしくは、画像生成部22は、全体透過画像と第1透過画像P1とに基づいて、第2透過画像P2を生成してもよい。この場合、第2透過画像P2は、例えば、全体透過画像の生成に利用されるデータと第1透過画像P1の生成に利用されるデータとの差分データに基づいて生成される。第1透過画像P1と第2透過画像P2とのそれぞれには、物品Gと、当該物品G以外の背景とが映し出されている。
図4(a)に示す一例のように、第1透過画像P1は、第2透過画像P2と比較して全体的に明るくなっている。一方、
図4(b)に示す一例のように、第2透過画像P2は、第1透過画像P1と比較して全体的に暗くなっている。本実施形態では、第1透過画像P1と第2透過画像P2との明るさの比較は、第1透過画像P1に表示される物品Gの明るさと、第2透過画像P2に表示される物品Gの明るさとの比較に相当する。
【0032】
差分画像P3は、例えば、画像処理アルゴリズムを用い、第1透過画像P1及び第2透過画像P2の少なくとも一方に対して画像処理を実施することによって生成される画像(エネルギー分析用画像)である。画像処理アルゴリズムとは、第1透過画像P1及び第2透過画像P2の少なくとも一方に施す画像処理の処理手順を示す型である。画像処理アルゴリズムは、1つの画像処理フィルタ、又は、複数の画像処理フィルタの組み合わせによって構成される。複数の画像処理アルゴリズムは、インターネット等のネットワークを介して外部から取得することができる。また、複数の画像処理アルゴリズムは、USBメモリ又はリムーバブルハードディスク等の外部記憶媒体から取得することもできる。複数の画像処理アルゴリズムのうちの少なくとも1つ以上は、生物界における遺伝及び進化のメカニズムを応用した手法である遺伝的アルゴリズム(GA=Genetic Algorithms)を採用して、X線検査装置1の仕様又は検査条件等に基づき複数の画像処理フィルタから自動生成できる。複数の画像処理アルゴリズムの少なくとも一部は、作業者が表示操作部8を介して適宜設定することもできる。第1透過画像P1に対して用いられる画像処理アルゴリズムと、第2透過画像P2に対して用いられる画像処理アルゴリズムとは、互いに異なってもよい。例えば、第1透過画像P1の明るさと、第2透過画像P2との明るさとを揃えるため、第1透過画像P1及び第2透過画像P2の一方に対して明るさを変更する処理がなされてもよい。当該処理として、例えば、特願2021-195926号に記載されるように輝度分布を利用する処理が実施されてもよい。
【0033】
画像生成部22は、上記画像処理アルゴリズムを用いる代わりに、機械学習によって自動設定されるプログラムを用いてもよい。このようなプログラムは、機械学習によって生成される予測モデル(学習済モデル)であり、機械学習の結果得られたパラメータ(学習済パラメータ)が組み込まれた推論プログラムである。学習済モデルに用いられる機械学習の例としては、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、遺伝的アルゴリズム等が挙げられる。学習済モデルは、畳み込みニューラルネットワークを含んでもよいし、複数の階層(例えば、8層以上)のニューラルネットワークを含んでもよい。すなわち、上記プログラムに相当する学習済モデルは、ディープラーニングによって生成されてもよい。
【0034】
検査部23は、画像生成部22によって生成される複数の画像の少なくとも一部に基づき、物品Gを検査する。検査部23は、例えば、全体透過画像及び上記透過画像のそれぞれに基づき、物品Gを検査する。もしくは、検査部23は、例えば、全体透過画像、第1透過画像P1、及び第2透過画像P2の少なくとも一つ、ならびに、差分画像P3のそれぞれに基づき、物品Gを検査する。換言すると、検査部23は、画像生成部22によって生成される複数の画像のうち、2つ以上の画像に基づき、物品Gを検査する。例えば、高分解能の画像利用の観点などから、全体透過画像が用いられてもよい。例えば、物品Gの薄い部分に対する検査精度を高める観点などから、第1透過画像P1が用いられてもよい。例えば、物品Gの比較的厚い部分に対する検査精度を高める観点などから、第2透過画像P2及び差分画像P3の少なくとも一方が用いられてもよい。
【0035】
本実施形態では、検査部23は、少なくとも差分画像P3を用いて物品Gを検査する。少なくとも差分画像P3が用いられる場合、検査部23は、差分画像P3と全体透過画像とに基づいて物品Gを検査してもよいし、差分画像P3と第1透過画像P1とに基づいて物品Gを検査してもよいし、差分画像P3と第2透過画像P2とに基づいて物品Gを検査してもよい。検査部23において、差分画像P3に基づく物品Gの検査と、他の画像に基づく物品Gの検査とは、同時に実施されてもよいし、異なるタイミングにて実施されてもよい。例えば、画像生成部22による差分画像P3の生成中に、全体透過画像などに基づく物品Gの検査がなされてもよい。
【0036】
検査部23は、例えば、物品Gに対して異物の有無、割れ欠けの有無などを検査するが、これに限られない。物品Gがシート状の包装材によって包まれる場合などにおいては、検査部23は、包装材の破れ、包装材のシール不良(シール噛み込み)なども検査し得る。物品Gが包装体に収容される場合などにおいては、検査部23は、包装体内の異物確認検査、欠品確認検査、収納数確認検査、空洞確認検査等を実施し得る。検査部23は、物品Gの検査結果を判定部24及び記憶部26に送信する。
【0037】
判定部24は、検査部23から受信した検査結果に基づいて、物品Gが良品であるか否かを判定する。例えば、判定部24は、物品G内における異物の有無、物品Gの割れ欠けの有無などを判定する。判定部24は、判定結果を出力部25及び記憶部26に送信する。
【0038】
出力部25は、X線検査装置1における制御部10以外の部分、及びX線検査装置1とは異なる装置の少なくとも一方に、判定部24の判定結果を出力する。これにより、X線検査装置1、及びX線検査装置1とは異なる装置(例えば、X線検査装置1よりも下流に配置した振分装置)との少なくとも一方は、物品Gが不良品であるときの動作を実行できる。X線検査装置1とは異なる上記装置の別例としては、例えば搬入コンベア51、搬出コンベア52、報知装置等が挙げられる。
【0039】
記憶部26は、制御部10にて生成される信号、データ等を記録する。例えば、記憶部26は、検出結果取得部21から送信される検出結果信号と、画像生成部22から送信される画像のデータと、検査部23から送信される検査結果に関するデータと、判定部24から送信される判定結果に関するデータとを記録する。
【0040】
以上に説明した本実施形態に係るX線検査装置1によれば、検査部23は、全体透過画像、第1透過画像P1、及び第2透過画像P2の少なくとも一つ、ならびに、差分画像P3のそれぞれに基づき、物品Gを検査する。この場合、差分画像P3を用いることによって、物品Gにおいて比較的厚い部分に対する異物の有無などを精度よく検査できる。加えて、全体透過画像、第1透過画像P1、及び第2透過画像P2の少なくとも一つを用いることによって、物品Gにおいて比較的厚い部分とは異なる部分に対する異物の有無などを検査できる。したがって、X線検査装置1を用いることによって、様々な厚みを有する物品に対する高精度な検査が可能になる。
【0041】
加えて、本実施形態によれば、1台のX線検査装置によって非エネルギー分析処理(全体透過画像、第1透過画像P1、第2透過画像P2の少なくとも一つを用いる分析処理)と、エネルギー分析処理(差分画像P3を用いる分析処理)との両方を実施できる。したがって、例えば生産ライン等にX線検査装置1を用いることによって、物品Gの検査精度を向上しつつ、省スペース化、省コスト化、省エネルギー化などを実現できる。
【0042】
本実施形態では、検査部23は、差分画像P3と、少なくとも全体透過画像とに基づき、物品Gを検査してもよい。この場合、全体透過画像を用いることによって、様々な厚みを有する物品Gに対する異物の有無などを容易に検査できる。
【0043】
本実施形態では、検査部23は、差分画像P3と、少なくとも第1透過画像P1とに基づき、物品Gを検査してもよい。この場合、第1透過画像P1を用いることによって、検査部23は、特に物品Gの薄い部分に対する異物の有無などを高精度に検査できる。加えて、物品Gがシート状の包装材によって包まれる場合などにおいては、検査部23は、包装材の破れ、包装材のシール不良(シール噛み込み)なども高精度に検査できる。
【0044】
本実施形態では、検査部23は、差分画像P3と、少なくとも第2透過画像P2とに基づき、物品Gを検査してもよい。この場合、第2透過画像P2を用いることによって、物品Gの比較的厚い部分に対する異物の有無などをより高精度に検査できる。
【0045】
本実施形態では、画像生成部22は、全体透過画像と第2透過画像P2とに基づいて、第1透過画像P1を生成してもよい。
【0046】
本実施形態では、X線検査装置1は、外部から操作を受け付ける表示操作部8を備え、表示操作部8は、検査部23による物品Gの検査に用いられる画像の選択操作を受け付ける。このため、表示操作を介して検査精度などを適宜変更できる。
【0047】
X線検出部7は、直接変換型検出部でもよい。この場合、X線検査装置1の小型化を実現できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0049】
上記実施形態では、検査部は、少なくとも差分画像を用いて物品を検査するが、これに限られない。例えば、検査部は、少なくとも全体透過画像を用いて物品を検査してもよい。例えば、検査部は、全体透過画像と少なくとも第1透過画像とに基づいて物品を検査してもよいし、全体透過画像と少なくとも第2透過画像とに基づいて物品を検査してもよいし、全体透過画像と少なくとも差分画像とに基づいて物品を検査してもよい。この場合、全体透過画像を必ず用いるので、様々な厚みを有する物品に対する異物の有無などを良好に検査できる。また、検査部が全体透過画像及び透過画像のそれぞれに基づき、物品を検査することによって、物品内の異物の有無などを精度よく検査できる。
【0050】
上記実施形態では、X線検査装置が、画像処理を実施する制御部を有するが、これに限られない。例えば、制御部において画像処理を実施する機能、差分画像に基づいて物品に含まれる異物の有無を判定する機能、X線検査結果を表示する機能などは、X線検査装置に含まれなくてもよい。その代わりに、上記X線検査装置に対して有線通信または有線通信可能な制御装置に実装されてもよい。この場合、X線検査装置と、当該X線検査装置の検査結果が入力される上記制御装置とを備えるX線検査システムが実現できる。このようなX線検査システムによっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、X線検査装置が備える制御部の構成を簡易化できる。さらには、ユーザがX線検査装置から離れた場所においても、検査結果などを確認できる。なお、上記制御装置は、特に限定されないが、例えばラップトップPC、タブレットなどである。また、上記制御装置に、異物の有無を判定する機能は、含まれなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…X線検査装置、3…支持脚、4…シールドボックス、4a…搬入口、4b…搬出口、5…搬送部、6…X線照射部、7…X線検出部、8…表示操作部、21…検出結果取得部、22…画像生成部、23…検査部、24…判定部、25…出力部、26…記憶部、A…搬送方向、G…物品、P1…第1透過画像、P2…第2透過画像、P3…差分画像。