(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113030
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/087 20180101AFI20230807BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20230807BHJP
【FI】
G01N23/087
G01N23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015122
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】岩川 健
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 修
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA08
2G001FA29
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA05
2G001LA01
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】物品よりも比重が重い異物と物品よりも比重が軽い異物との双方を検出可能なX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線検査装置1は、物品Gを搬送する搬送部5と、搬送部5により搬送される物品GにX線を照射するX線照射部6と、X線照射部6により照射されて物品Gを透過したX線を、複数のエネルギー帯毎に検出するX線検出部7と、X線検出部7により検出された複数のエネルギー帯毎のX線に基づいて複数のX線透過画像を生成し、複数のX線透過画像の差分画像に基づいて物品Gに含まれる異物の有無に関する検査を行うする制御部10と、を備える。制御部10は、第1閾値を用いて物品Gよりも比重が重い第1異物を検出すると共に、第1閾値とは異なる第2閾値を用いて物品Gよりも比重が軽い第2異物を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記物品にX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部により照射されて前記物品を透過したX線を、複数のエネルギー帯毎に検出するX線検出部と、
前記X線検出部により検出された複数のエネルギー帯毎のX線に基づいて、複数のX線透過画像を生成するX線透過画像生成部と、
前記X線透過画像生成部により生成された複数の前記X線透過画像の差分画像に基づいて、前記物品に含まれる異物の有無に関する検査を行う検査部と、を備え、
前記検査部は、第1閾値を用いて前記物品よりも比重が重い第1異物を検出すると共に、前記第1閾値とは異なる第2閾値を用いて前記物品よりも比重が軽い第2異物を検出する、X線検査装置。
【請求項2】
ユーザの入力を受け付ける入力部を備え、
前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記入力部を介して個別に設定可能である、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、前記差分画像における輝度分布に基づいて、異物を検出する、請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記第1閾値は、前記物品に対応する基準輝度値よりも大きい輝度値であり、
前記第2閾値は、前記基準輝度値よりも小さい輝度値であり、
前記検査部は、
前記差分画像の輝度分布において前記第1閾値よりも大きい輝度値がある場合に、前記第1異物及び前記第2異物の何れか一方を検出すると共に、
前記差分画像の輝度分布において前記第2閾値よりも小さい輝度値がある場合に、前記第1異物及び前記第2異物の何れか他方を検出する、請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記物品に対応する基準輝度値よりも大きい又は小さい輝度値であり、
前記検査部は、
前記差分画像の輝度分布において前記第1閾値よりも大きい又は小さい輝度値がある場合に、前記第1異物及び前記第2異物の何れか一方を検出し、
前記差分画像の輝度分布の正負を反転させ、当該輝度分布において前記第2閾値よりも大きい又は小さい輝度値がある場合に、前記第1異物及び前記第2異物の何れか他方を検出する、請求項3に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線検査装置として、例えば、特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1に記載のX線検査装置は、被検査物(物品)にX線を照射するX線源と、X線源から照射される第1エネルギー帯のX線を検知する第1センサ及び第2エネルギー帯のX線を検知する第2センサを有するセンサユニットと、第1センサ及び第2センサにより検知されたX線データに基づいて被検査物の第1透過画像及び第2透過画像を生成する画像生成部と、画像生成部によって生成された画像に基づいて物品に含まれる異物の有無に関する検査を行う検査部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなX線検査装置では、例えば物品よりも比重が重い異物を検出することはできても、物品よりも比重が軽い異物を検出することは難しい場合がある。
【0005】
本発明の一側面は、物品よりも比重が重い異物と物品よりも比重が軽い異物との双方を検出可能なX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るX線検査装置は、物品を搬送する搬送部と、搬送部により搬送される物品にX線を照射するX線照射部と、X線照射部により照射されて物品を透過したX線を、複数のエネルギー帯毎に検出するX線検出部と、X線検出部により検出された複数のエネルギー帯毎のX線に基づいて、複数のX線透過画像を生成するX線透過画像生成部と、X線透過画像生成部により生成された複数のX線透過画像の差分画像に基づいて、物品に含まれる異物の有無に関する検査を行う検査部と、を備え、検査部は、第1閾値を用いて物品よりも比重が重い第1異物を検出すると共に、第1閾値とは異なる第2閾値を用いて物品よりも比重が軽い第2異物を検出する。
【0007】
例えば差分画像では、物品よりも比重が重い第1異物が明るく映る場合、物品よりも比重が軽いプラスチック等の第2異物については、それとは反対に暗く映ることが見出される。そこで、本発明の一側面に係るX線検査装置では、差分画像に基づく異物検査の閾値を2つ設け、そのうちの一方である第1閾値を用いて第1異物を検出すると共に、他方の第2閾値を用いて第2異物を検出することができる。すなわち、物品よりも比重が重い異物と物品よりも比重が軽い異物との双方を検出可能となる。
【0008】
本発明の一側面に係るX線検査装置は、ユーザの入力を受け付ける入力部を備え、第1閾値及び第2閾値は、入力部を介して個別に設定可能であってもよい。この場合、第1閾値及び第2閾値のそれぞれを所望に設定することができ、様々な第1異物及び第2異物の検出に容易に対応可能となる。
【0009】
本発明の一側面に係るX線検査装置では、検査部は、差分画像における輝度分布に基づいて、異物を検出してもよい。この場合、差分画像の輝度分布を利用して第1異物及び第2異物の双方を検出することができる。
【0010】
本発明の一側面に係るX線検査装置では、第1閾値は、物品に対応する基準輝度値よりも大きい輝度値であり、第2閾値は、基準輝度値よりも小さい輝度値であり、検査部は、差分画像の輝度分布において第1閾値よりも大きい輝度値がある場合に、第1異物及び第2異物の何れか一方を検出すると共に、差分画像の輝度分布において第2閾値よりも小さい輝度値がある場合に、第1異物及び第2異物の何れか他方を検出してもよい。この場合、差分画像の輝度分布を具体的に利用して、第1異物及び第2異物の双方を検出することができる。
【0011】
本発明の一側面に係るX線検査装置では、第1閾値及び第2閾値は、物品に対応する基準輝度値よりも大きい又は小さい輝度値であり、検査部は、差分画像の輝度分布において第1閾値よりも大きい又は小さい輝度値がある場合に、第1異物及び第2異物の何れか一方を検出し、差分画像の輝度分布の正負を反転させ、当該輝度分布において第2閾値よりも大きい又は小さい輝度値がある場合に、第1異物及び第2異物の何れか他方を検出してもよい。この場合、差分画像の輝度分布を具体的に利用して、第1異物及び第2異物の双方を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、物品よりも比重が重い異物と物品よりも比重が軽い異物との双方を検出可能なX線検査装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るX線検査装置の構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるシールドボックスの内部の構成図である。
【
図3】
図3(a)は、第1透過画像を示す図であり、
図3(b)は、第2透過画像を示す図である。
【
図4】
図4は、差分画像の輝度分布の一例を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1に示されるように、X線検査装置1は、装置本体2と、支持脚3と、シールドボックス4と、搬送部5と、X線照射部6と、X線検出部7と、表示操作部8と、制御部10と、を備える。X線検査装置1は、物品Gを搬送しつつ物品GのX線透過画像を生成し、当該X線透過画像に基づいて物品Gの検査を行う。物品Gは、特に限定されないが、本実施形態では例えば食肉(ミンチ肉)である。物品Gの検査は、例えば収納数検査、異物検査、欠品検査、割れ欠け検査等である。
【0016】
検査前の物品Gは、搬入コンベア51によってX線検査装置1に搬入される。検査後の物品Gは、搬出コンベア52によってX線検査装置1から搬出される。X線検査装置1によって不良品と判定された物品Gは、搬出コンベア52の下流に配置された振分装置(図示省略)によって生産ライン外に振り分けられる。X線検査装置1によって良品と判定された物品Gは、当該振分装置をそのまま通過する。振分装置は、X線検査装置1による画像検査で不良品と判定された被検査物(物品)を搬送路上から排除する装置である。
【0017】
装置本体2は、制御部10等を収容している。支持脚3は、装置本体2を支持している。シールドボックス4は、装置本体2に設けられている。シールドボックス4は、外部へのX線の漏洩を防止する。シールドボックス4の内部には、X線による物品Gの検査が実施される検査領域Rが設けられている。シールドボックス4には、搬入口4a及び搬出口4bが形成されている。検査前の物品Gは、搬入コンベア51から搬入口4aを介して検査領域Rに搬入される。検査後の物品Gは、検査領域Rから搬出口4bを介して搬出コンベア52に搬出される。搬入口4a及び搬出口4bのそれぞれには、X線の漏洩を防止するX線遮蔽カーテン(図示省略)が設けられている。
【0018】
搬送部5は、物品Gを搬送する。搬送部5は、シールドボックス4の中央を貫通するように配置されている。搬送部5は、搬入口4aから検査領域Rを介して搬出口4bまで、搬送方向Aに沿って物品Gを搬送する。搬送部5は、例えば、搬入口4aと搬出口4bとの間に掛け渡されたベルトコンベアである。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、X線照射部6は、シールドボックス4内に配置されている。X線照射部6は、搬送部5により搬送される物品GにX線を照射する。X線照射部6は、例えば、X線を出射するX線管と、X線管から出射されたX線を搬送方向Aに垂直な面内において扇状に広げる絞り部と、を有している。X線照射部6から照射されるX線には、低エネルギー(長波長)から高エネルギー(短波長)までの様々なエネルギー帯のX線が含まれている。なお、上述した低エネルギー帯及び高エネルギー帯における「低」及び「高」は、X線照射部6から照射される複数のエネルギー帯の中で相対的に「低い」及び「高い」ことを示すものであり、特定の範囲を示すものではない。本実施形態では、X線照射部6は、少なくとも、低エネルギー帯に相当する第1エネルギー帯のX線(第1電磁波)と、当該第1エネルギー帯よりも高く、高エネルギー帯に相当する第2エネルギー帯のX線(第2電磁波)とを照射する。
【0020】
X線検出部7は、シールドボックス4内に配置されている。X線検出部7は、X線照射部6により照射されて物品Gを透過したX線を、複数のエネルギー帯毎に検出する。本実施形態では、X線検出部7は、低エネルギー帯のX線及び高エネルギー帯のX線を検出するように構成されている。X線検出部7は、第1ラインセンサ11及び第2ラインセンサ12を有している。第1ラインセンサ11及び第2ラインセンサ12のそれぞれは、搬送方向Aに垂直な水平方向に沿って一次元に配列された複数のX線検出素子によって構成されている。第1ラインセンサ11は、物品G及び搬送部5の搬送ベルトを透過した低エネルギー帯のX線を検出する。第2ラインセンサ12は、物品G、搬送部5の搬送ベルト及び第1ラインセンサ11を透過した高エネルギー帯のX線を検出する。
【0021】
図1に示されるように、表示操作部8は、装置本体2に設けられている。表示操作部8は、各種情報を表示すると共に、各種条件の入力を受け付ける。表示操作部8は、例えば、液晶ディスプレイであり、タッチパネルとしての操作画面を表示する。この場合、ユーザは、表示操作部8を介して各種条件を入力することができる。表示操作部8は、ユーザの入力を受け付ける入力部を構成する。
【0022】
制御部10は、装置本体2内に配置されている。制御部10は、X線検査装置1の各部(本実施形態では、搬送部5、X線照射部6、X線検出部7、及び表示操作部8、並びに、X線検査装置1の下流に配置される図示しない振分装置)の動作を制御する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びSSD(Solid State Drive)等のストレージを備える。ROMには、X線検査装置1を制御するためのプログラムが記録されている。
【0023】
制御部10には、X線検出部7の検出結果が入力される。本実施形態では、制御部10には、X線検出部7の第1ラインセンサ11から低エネルギー帯のX線の検出結果が入力されると共に、X線検出部7の第2ラインセンサ12から高エネルギー帯のX線の検出結果が入力される。制御部10は、X線検出部7により検出された複数のエネルギー帯毎のX線に基づいて、複数のX線透過画像を生成する。
【0024】
図3(a)に示されるように、制御部10は、第1ラインセンサ11の低エネルギー帯のX線の検出結果に基づいて、X線透過画像としての第1透過画像P1を生成する。
図3(b)に示されるように、制御部10は、第2ラインセンサ12の高エネルギー帯のX線の検出結果に基づいて、X線透過画像としての第2透過画像P2を生成する。第1透過画像P1と第2透過画像P2とのそれぞれには、物品Gと当該物品G以外の背景とが少なくとも映し出されている。
図3(a)に示す一例のように、第1透過画像P1は、第2透過画像P2と比較して全体的に暗くなっている。一方、
図3(b)に示す一例のように、第2透過画像P2は、第1透過画像P1と比較して全体的に明るくなっている。第1透過画像P1と第2透過画像P2との明るさの比較は、第1透過画像P1に表示される物品Gの明るさと第2透過画像P2に表示される物品Gの明るさとの比較に相当する。
【0025】
制御部10は、第1透過画像P1及び第2透過画像P2に対して、サブトラクション処理を含む画像処理を実施することにより、第1透過画像P1と第2透過画像P2との差異を抽出した差分画像を生成する。例えば制御部10は、第1透過画像P1と第2透過画像P2との間で物品Gに対応する部分の輝度値(濃淡値)を合わせ、これらの各画素の輝度値の差分を計算する差分処理を行い、異物に対応する画素の輝度値と異物に対応しない画素の輝度値との差異が大きくなるように加工された差分画像を取得する。ここでの制御部10は、画像処理アルゴリズムを用い、第1透過画像P1及び第2透過画像P2の少なくとも一方に対して画像処理を実施してもよい。
【0026】
画像処理アルゴリズムは、1つの画像処理フィルタ、又は、複数の画像処理フィルタの組み合わせによって構成される。画像処理アルゴリズムは、インターネット等のネットワークを介して外部から取得することができる。画像処理アルゴリズムは、USBメモリ又はリムーバブルハードディスク等の外部記憶媒体から取得することもできる。画像処理アルゴリズムは、生物界における遺伝及び進化のメカニズムを応用した手法である遺伝的アルゴリズム(GA=Genetic Algorithms)を採用して、X線検査装置1の仕様又は検査条件等に基づき複数の画像処理フィルタから自動生成することができる。画像処理アルゴリズムは、ユーザが表示操作部8を介して適宜設定することもできる。
【0027】
図4は、差分画像の輝度分布の一例を模式的に示すグラフである。
図4において、縦軸は輝度に対応し、横軸は搬送方向Aに沿う位置(差分画像の各画素)に対応する。制御部10は、生成された差分画像に基づいて、物品Gに含まれる異物の有無に関する検査を行う。制御部10は、差分画像における輝度分布に基づいて、異物を検出する。制御部10は、第1閾値を用いて物品Gよりも比重が重い第1異物を検出すると共に、第1閾値とは異なる第2閾値を用いて物品Gよりも比重が軽い第2異物を検出する。具体的には、制御部10は、差分画像の輝度分布において第1閾値よりも大きい輝度値がある場合に、第1異物を検出する。制御部10は、差分画像の輝度分布において第2閾値よりも小さい輝度値がある場合に、第2異物を検出する。
【0028】
図4に示されるように、第1閾値は、物品Gに対応する輝度値である基準輝度値よりも大きい輝度値である。基準輝度値は、例えば0であって、差分画像の背景にも対応する。第1閾値は、第1異物の有無の判定用の異物判定閾値である。第2閾値は、第2異物の有無の判定用の異物判定閾値である。第2閾値は、基準輝度値よりも小さい輝度値である。第1閾値及び第2閾値は、表示操作部8を介して個別に設定可能である。第1閾値及び第2閾値は、物品Gの性質に応じて、試験等によって適宜設定されてもよい。例えば第1閾値の絶対値は、第2閾値の絶対値よりも大きくてもよい。
【0029】
第1異物は、例えば物品Gに埋もれるような金属等であり、物品Gの元素よりも重い元素で構成される。第1異物は、例えば差分画像において明るく映る部分に対応する。第2異物は、例えば物品Gの外表面に貼り付くようなプラスチック等であり、物品Gの元素よりも軽い元素で構成される。第2異物は、例えば差分画像において暗く映る部分に対応する。制御部10は、異物の検査結果を記憶部に記憶させる。制御部10は、X線透過画像生成部及び検査部を構成する。
【0030】
図4に示される例では、差分画像の輝度分布において、輝度値が第1閾値よりも大きくなっており(つまり、差分画像に顕著に明るい部分が存在しており)、そこに第1異物が含まれると判定できる。また、差分画像の輝度分布において、輝度値が第2閾値よりも小さくなっており(つまり、差分画像に顕著に暗い部分が存在しており)、そこに第2異物が含まれると判定できる。なお、差分画像の輝度分布において、輝度値が第1閾値以下で第2閾値以上の場合(つまり、差分画像の明るさが背景と同様な明るさの場合)、そこには異物が無いと判定できる。
【0031】
次に、X線検査装置1により実施されるX線検査方法の一例について、説明する。
【0032】
第1エネルギー帯及び第2エネルギー帯のX線を、搬送中の物品Gに照射する。具体的には、搬送部5によってシールドボックス4内にて搬送中の物品Gに対して、X線照射部6により第1エネルギー帯及び第2エネルギー帯のX線を照射し、当該X線をX線検出部7により検出する。続いて、制御部10により、第1エネルギー帯のX線の検出結果に基づいて第1透過画像P1を生成すると共に、第2エネルギー帯のX線の検出結果に基づいて第2透過画像P2を生成する。
【0033】
続いて、制御部10により、第1透過画像P1及び第2透過画像P2に対するサブトラクション処理を含む画像処理を実施し、第1透過画像P1と第2透過画像P2との差異を抽出した差分画像を生成する。制御部10により、差分画像の輝度分布において、第1閾値よりも大きい輝度値があるか否かを判定し、第1閾値よりも大きい輝度値が存在する場合に第1異物を検出する。これと共に、制御部10により、差分画像の輝度分布において、第2閾値よりも小さい輝度値があるか否かを判定し、第1閾値よりも小さい輝度値が存在する場合に第2異物を検出する。そして、制御部10により、当該判定結果を記憶させる。なお、物品Gに第1異物及び第2異物の少なくとも何れかが含まれると判定された場合、当該物品Gは、不良品と判定され、振分装置(図示省略)によって生産ライン外に振り分けられる。
【0034】
以上、X線検査装置1において、差分画像では、物品Gよりも比重が重い第1異物が明るく映り、物品Gよりも比重が軽いプラスチック等の第2異物については、それとは反対に暗く映ることが見出される。そこで、X線検査装置1では、差分画像に基づく異物検査の閾値を2つ設け、そのうちの一方である第1閾値を用いて第1異物を検出すると共に、他方の第2閾値を用いて第2異物を検出することができる。すなわち、物品Gよりも比重が重い異物と物品Gよりも比重が軽い異物との双方を検出可能となる。
【0035】
X線検査装置1は、ユーザの入力を受け付ける表示操作部8を備え、第1閾値及び第2閾値は、表示操作部8を介して個別に設定可能である。この場合、第1閾値及び第2閾値のそれぞれを所望に設定することができ、様々な第1異物及び第2異物の検出に容易に対応可能となる。
【0036】
X線検査装置1では、制御部10は、差分画像における輝度分布に基づいて、異物を検出する。この場合、差分画像の輝度分布を利用して第1異物及び第2異物の双方を検出することができる。
【0037】
X線検査装置1では、第1閾値は、物品Gに対応する基準輝度値よりも大きい輝度値であり、第2閾値は、基準輝度値よりも小さい輝度値である。制御部10は、差分画像の輝度分布において第1閾値よりも大きい輝度値がある場合に、第1異物を検出すると共に、差分画像の輝度分布において第2閾値よりも小さい輝度値がある場合に、第2異物を検出する。この場合、差分画像の輝度分布を具体的に利用して、第1異物及び第2異物の双方を検出することができる。
【0038】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明の一態様は上記実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0039】
上記実施形態では、第1閾値及び第2閾値は特に限定されず、種々の値であってもよい。上記実施形態では、第1閾値及び第2閾値の少なくとも一方は、固定値であってもよいし、他のパラメータに応じて変動する変動値であってもよい。上記実施形態では、差分画像の輝度分布において第1閾値よりも大きい輝度値がある場合に第2異物を検出すると共に、差分画像の輝度分布において第2閾値よりも小さい輝度値がある場合に第1異物を検出してもよい。
【0040】
上記実施形態では、第1閾値及び第2閾値は、基準輝度値よりも大きい輝度値であってもよい。この場合、制御部10は、差分画像の輝度分布において第1閾値よりも大きい輝度値がある場合に第1異物及び第2異物の何れか一方を検出し、差分画像の輝度分布の正負を反転させ、当該輝度分布において第2閾値よりも大きい輝度値がある場合に第1異物及び第2異物の何れか他方を検出してもよい。或いは、第1閾値及び第2閾値は、基準輝度値よりも小さい輝度値であってもよい。この場合、制御部10は、差分画像の輝度分布において第1閾値よりも小さい輝度値がある場合に第1異物及び第2異物の何れか一方を検出し、差分画像の輝度分布の正負を反転させ、当該輝度分布において第2閾値よりも小さい輝度値がある場合に第1異物及び第2異物の何れか他方を検出してもよい。このような変形例においても、差分画像の輝度分布を具体的に利用して、第1異物及び第2異物の双方を検出することが可能となる。
【0041】
上記実施形態では、X線検出部7は、2つの帯域のX線を検出するように構成されているが、これに限られない。例えば、X線検出部7は、3つ以上の帯域のX線を検出するように構成されてもよい。この場合、X線検出部7は、3つ以上の帯域のX線を用いて物品Gに含まれる異物の有無を判定してもよい。
【0042】
上記実施形態では、X線検査装置1が制御部10を有するが、これに限られない。例えば、制御部10の少なくとも一部の機能は、X線検査装置1に対して有線通信又は有線通信可能な外部の制御装置(ラップトップPC、タブレット。サーバ等)に実装されてもよい。上記実施形態又は上記変形例における各構成は、他の実施形態又は他の変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…X線検査装置、3…支持脚、4…シールドボックス、4a…搬入口、4b…搬出口、5…搬送部、6…X線照射部、7…X線検出部、8…表示操作部(入力部)、10…制御部(X線透過画像生成部,検査部)、11…第1ラインセンサ、12…第2ラインセンサ、A…搬送方向、G…物品、P1…第1透過画像、P2…第2透過画像。