(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113037
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】船舶の制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B63B 79/15 20200101AFI20230807BHJP
【FI】
B63B79/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015138
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏
(72)【発明者】
【氏名】中津川 統三
(57)【要約】
【課題】センサを追加することなく、船舶の環境の状態を把握する。
【解決手段】システムは、エンジンを備える船舶の制御システムである。制御システムは、第1温度センサとコントローラとを備える。第1温度センサは、エンジンの温度を検出する。コントローラは、コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度を取得する。コントローラは、コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度から、船舶の環境温度を推定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備える船舶の制御システムであって、
前記エンジンの温度を検出する第1温度センサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記エンジンの温度を取得し、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記エンジンの温度から、前記船舶の環境温度を推定する、
制御システム。
【請求項2】
前記エンジンの温度は、前記エンジンの吸気温度であり、
前記環境温度は、外気温であり、
前記コントローラは、前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気温度から、前記外気温を推定する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記船舶は、前記コントローラを起動するためのメインスイッチを備え、
前記コントローラは、前記メインスイッチがオン操作されたときの前記吸気温度から、前記外気温を推定する、
請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前回の前記エンジンの停止時から、今回の前記エンジンの始動時までの経過時間を取得し、
前記経過時間が閾値以上であるときに、前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気温度から、前記外気温を推定する、
請求項2に記載の制御システム。
【請求項5】
前記エンジンの壁温を検出する第2温度センサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記壁温と前記吸気温度との差が閾値以下であるときに、前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気温度から、前記外気温を推定する、
請求項2に記載の制御システム。
【請求項6】
前記エンジンの吸気圧を検出する圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気圧を取得し、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気圧から、大気圧を推定する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記船舶は、前記コントローラを起動するためのメインスイッチを備え、
前記コントローラは、前記メインスイッチがオン操作されたときの前記吸気圧から、前記大気圧を推定する、
請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記船舶は、外部の水をくみ上げて前記エンジンに冷却水として供給するウォータポンプをさらに備え、
前記エンジンの温度は、前記冷却水の温度であり、
前記環境温度は、外水温であり、
前記コントローラは、前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度から、前記外水温を推定する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項9】
前記エンジンの壁温を検出する第2温度センサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記壁温と前記冷却水の温度との差が閾値以下であるときに、前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度から、前記外水温を推定する、
請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、
前回の前記エンジンの停止時から、今回の前記エンジンの始動時までの経過時間を取得し、
前記経過時間が閾値以上であるときに、前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度から、前記外水温を推定する、
請求項8に記載の制御システム。
【請求項11】
エンジンと、前記エンジンを制御するコントローラとを備える船舶を制御するための方法であって、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記エンジンの温度を取得することと、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記エンジンの温度から、前記船舶の環境温度を推定すること、
を備える方法。
【請求項12】
前記エンジンの温度は、前記エンジンの吸気温度であり、
前記環境温度は、外気温であり、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気温度から、前記外気温を推定することをさらに備える、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記船舶は、前記コントローラを起動するためのメインスイッチを備え、
前記メインスイッチがオン操作されたときの前記吸気温度から、前記外気温を推定することをさらに備える、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前回の前記エンジンの停止時から、今回の前記エンジンの始動時までの経過時間を取得することと、
前記経過時間が閾値以上であるときに、前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気温度から、前記外気温を推定すること、
をさらに備える、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記エンジンの壁温を検出することと、
前記壁温と前記吸気温度との差が閾値以下であるときに、前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気温度から、前記外気温を推定すること、
をさらに備える、
請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記エンジンの吸気圧を取得することと、
前記コントローラの起動時、又は、前記エンジンの始動時の前記吸気圧から、大気圧を推定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記船舶は、前記コントローラを起動するためのメインスイッチを備え、
前記メインスイッチがオン操作されたときの前記吸気圧から、前記大気圧を推定すること、
をさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記船舶は、外部の水をくみ上げて前記エンジンに冷却水として供給するウォータポンプをさらに備え、
前記エンジンの温度は、前記冷却水の温度であり、
前記環境温度は、外水温であり、
前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度から、前記外水温を推定することをさらに備える、
請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記エンジンの壁温を検出することと、
前記壁温と前記冷却水の温度との差が閾値以下であるときに、前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度から、前記外水温を推定すること、
をさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前回の前記エンジンの停止時から、今回の前記エンジンの始動時までの経過時間を取得することと、
前記経過時間が閾値以上であるときに、前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度から、前記外水温を推定すること、
をさらに備える、
請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、船舶の環境の状態を検出する様々なセンサが搭載されたものがある。例えば、特許文献1では、風向・風速計、気温計、水温計などのセンサが船舶に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の船舶のように、船舶の環境の状態を検出するための専用のセンサが設けられる場合、センサの追加によりコストが増大してしまう。本発明の目的は、センサを追加することなく、船舶の環境の状態を把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るシステムは、エンジンを備える船舶の制御システムである。制御システムは、第1温度センサとコントローラとを備える。第1温度センサは、エンジンの温度を検出する。コントローラは、コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度を取得する。コントローラは、コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度から、船舶の環境温度を推定する。
【0006】
本発明の他の態様に係る方法は、船舶を制御するための方法である。船舶は、エンジンと、エンジンを制御するコントローラとを備える。本態様に係る方法は、コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度を取得することと、コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度から、船舶の環境温度を推定すること、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度から、環境気温が推定される。コントローラの起動時、又は、エンジンの始動時のエンジンの温度は、環境温度に近似している。従って、エンジンの温度を検出するためのセンサを用いて、環境温度を精度よく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】外気温を推定するための処理を示すフローチャートである。
【
図5】外水温を推定するための処理を示すフローチャートである。
【
図6】大気圧を推定するための処理を示すフローチャートである。
【
図7】変形例に係る外気温を推定するための処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る船舶100を示す斜視図である。船舶100は、船舶推進器1と船体2とを含む。船舶推進器1は、船体2の船尾に取り付けられる。船舶推進器1は、船舶100を推進させるスラストを発生させる。本実施形態において、船舶推進器1は、船外機である。
【0010】
図2は、船舶推進器1の側面図である。
図2に示すように、船舶推進器1は、エンジン10と、駆動軸11と、プロペラ軸12と、シフト機構13とを含む。エンジン10は、船舶100を推進させる推進力を発生させる。エンジン10は、クランク軸14を含む。クランク軸14は、鉛直方向に延びている。駆動軸11は、クランク軸14に接続されている。駆動軸11は、鉛直方向に延びている。駆動軸11は、エンジン10から下方へ延びている。
【0011】
プロペラ軸12は、船舶推進器1の前後方向に延びている。プロペラ軸12は、シフト機構13を介して、駆動軸11に接続されている。プロペラ軸12には、プロペラ15が接続される。シフト機構13は、駆動軸11からプロペラ軸12へ伝達される動力の回転方向を切り換える。シフト機構13は、例えば、複数のギアと、ギアの噛み合いを変更するクラッチとを含む。船舶推進器1は、ブラケット16を介して、船舶100に取り付けられる。
【0012】
船舶推進器1は、ECU(Engin Control Unit)17を含む。ECU17は、エンジン10を電気的に制御する。ECU17は、CPU等のプロセッサ、RAM及びROMなどのメモリを含む。
【0013】
船舶推進器1は、エンジンカウル18と、アッパケース19と、ロアケース20とを備える。エンジンカウル18内には、エンジン10が配置される。アッパケース19は、エンジンカウル18の下方に配置される。ロアケース20は、アッパケース19の下方に配置される。駆動軸11は、アッパケース19とロアケース20内に配置されている。ロアケース20内には、プロペラ軸12が配置されている。
【0014】
エンジン10は、ウォータジャケット21を含む。ウォータジャケット21を流れる冷却水により、エンジン10が冷却される。船舶推進器1は、取水口22と、冷却水通路23と、排水通路24と、ウォータポンプ25とを含む。取水口22は、ロアケース20に設けられている。冷却水通路23と排水通路24とは、エンジン10のウォータジャケット21に接続されている。冷却水通路23と排水通路24とは、アッパケース19及びロアケース20内に配置されている。
【0015】
ウォータポンプ25は、例えば海水などの船舶推進器1の外部の水をくみ上げて、エンジン10に冷却水として供給する。ウォータポンプ25は、取水口22から外部の水を取り込み、冷却水通路23を通って、エンジン10のウォータジャケット21に送る。冷却水は、ウォータジャケット21から排水通路24を通って、船舶推進器1の外部に排出される。
【0016】
図3は、船舶100の制御システム3の構成を示す模式図である。
図3に示すように、制御システム3は、スロットル・シフト操作装置26を含む。スロットル・シフト操作装置26は、船舶推進器1のエンジン回転速度を調整するために、オペレータによって操作可能である。また、スロットル・シフト操作装置26は、船舶推進器1の前進・後進を切り替えるために、オペレータによって操作可能である。
【0017】
スロットル・シフト操作装置26は、スロットルレバー27を含む。スロットルレバー27は、中立位置から、前進位置と後進位置とに操作可能である。スロットル・シフト操作装置26は、スロットルレバー27の操作位置を示すスロットル信号を出力する。ECU17は、スロットル・シフト操作装置26からのスロットル信号を受信する。ECU17は、スロットルレバー27の操作位置に応じて、シフト機構13を制御する。それにより、プロペラ軸12の回転方向が、前進方向と後進方向とに切り替えられる。また、ECU17は、スロットルレバー27の操作位置に応じて、エンジン回転速度を制御する。
【0018】
制御システム3は、ステアリング操作装置28とステアリングアクチュエータ29とを含む。ステアリングアクチュエータ29は、船舶推進器1を左右に旋回させることで、船舶推進器1の舵角を変更する。ステアリングアクチュエータ29は、例えば電動モータである。或いは、ステアリングアクチュエータ29は、電動ポンプと油圧シリンダとを含んでもよい。
【0019】
ステアリング操作装置28は、船舶推進器1の舵角を調整するために、オペレータによって操作可能である。ステアリング操作装置28は、例えばステアリングホイールである。或いは、ステアリング操作装置28は、ジョイスティックなどの他の操作装置であってもよい。ステアリング操作装置28は、中立位置から左右に操作可能である。ステアリング操作装置28は、ステアリング操作装置28の操作位置を示すステアリング信号を出力する。ステアリング操作装置28の操作位置に応じてステアリングアクチュエータ29を制御することで、船舶推進器1の舵角が制御される。
【0020】
制御システム3は、ディスプレイ31と入力装置32とを含む。ディスプレイ31は、船舶推進器1に関する情報を表示する。ディスプレイ31は、ディスプレイ31に入力される画像信号に応じた画像を表示する。入力装置32は、ユーザによる入力を受け付ける。入力装置32は、ユーザによる入力を示す入力信号を出力する。入力装置32は、例えばタッチパネルである。ただし、入力装置32は、ハードウェアキーを含んでもよい。
【0021】
制御システム3は、吸気温度センサ34と、壁温センサ35と、冷却水温センサ36と、吸気圧センサ37とを含む。吸気温度センサ34と、壁温センサ35と、冷却水温センサ36と、吸気圧センサ37とは、船舶推進器1に設けられる。吸気温度センサ34は、吸気温度データを示す信号を出力する。吸気温度データは、エンジン10の吸気温度を示す。壁温センサ35は、壁温データを示す信号を出力する。壁温データは、エンジン10の壁温を示す。エンジン10の壁温は、例えば、エンジン10の燃焼室の壁面の温度である。冷却水温センサ36は、冷却水温データを示す信号を出力する。冷却水温データは、エンジン10のウォータジャケット21を流れる冷却水の温度を示す。吸気圧センサ37は、吸気圧データを示す信号を出力する。吸気圧データは、エンジン10の吸気圧を示す。
【0022】
制御システム3は、操船コントローラ38とデータ通信モジュール(以下、DCM)39とを備える。操船コントローラ38は、CPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリと、HDD,SSDなどのストレージとを含む。操船コントローラ38は、船舶推進器1を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。操船コントローラ38は、ECU17と有線、或いは無線を介して接続されている。操船コントローラ38は、スロットル・シフト操作装置26及びステアリング操作装置28と有線、或いは無線を介して接続されている。
【0023】
制御システム3は、メインスイッチ33を含む。メインスイッチ33は、オペレータによって操作可能である。メインスイッチ33がオンされることで、操船コントローラ38が起動される。また、メインスイッチ33がオンされることで、エンジン10が始動される。
【0024】
操船コントローラ38は、入力装置32からの入力信号を受信する。操船コントローラ38は、入力信号に応じて、船舶推進器1の制御を設定する。操船コントローラ38は、ディスプレイ31に画像信号を出力して、船舶推進器1に関する情報をディスプレイに表示させる。
【0025】
操船コントローラ38は、吸気温度センサ34から吸気温度データを取得する。操船コントローラ38は、壁温センサ35から壁温データを取得する。操船コントローラ38は、冷却水温センサ36から冷却水温データを取得する。操船コントローラ38は、吸気圧センサ37から吸気圧データを取得する。操船コントローラ38は、吸気温度データ、壁温データ、冷却水温データ、及び吸気圧データを、所定周期で記録する。
【0026】
操船コントローラ38は、吸気温度データ、壁温データ、冷却水温データ、或いは、吸気圧データにより、エンジン10の異常を判定する。例えば、操船コントローラ38は、冷却水温データに基づいて、エンジン10のオーバーヒートを判定する。例えば、操船コントローラ38は、冷却水の温度が所定の温度閾値以上であるときに、エンジン10のオーバーヒートが発生していると判定する。操船コントローラ38は、エンジン10に異常が発生していると判定したときには、ディスプレイ31に警告を表示する。或いは、操船コントローラ38は、エンジン10に異常が発生していると判定したときには、警告灯を表示させてもよい。
【0027】
DCM39は、外部のコンピュータと無線通信を行う。DCM39は、CPU等のプロセッサと、RAM及びROMなどのメモリと、HDD、或いはSSDなどの補助記憶装置とを含む。DCM39は、モバイル通信網200を介して、外部のコンピュータとデータ通信可能である。モバイル通信網200は、例えば3G、4G、或いは5Gなどのモバイル通信システムのネットワークである。
【0028】
DCM39は、サーバ201と通信可能である。DCM39は、ユーザ端末202と通信可能である。ユーザ端末202は、例えばスマートフォン、タブレット、或いはパーソナルコンピュータであってもよい。DCM39は、サーバ201を介して、ユーザ端末202と通信可能であってもよい。
【0029】
DCM39は、船舶100に関する船舶データを収集し、船舶データをサーバ201に送信する。DCM39は、船舶データを所定周期でサーバ201に送信する。船舶データは、上述した吸気温度データ、壁温データ、冷却水温データ、及び吸気圧データを含む。
【0030】
操船コントローラ38は、エンジン10の始動時のエンジン10の温度を取得し、エンジン10の始動時のエンジン10の温度から、船舶の環境温度を推定する。例えば、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の吸気温度から、外気温を推定する。操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の冷却水の温度から、外水温を推定する。
【0031】
図4は、外気温を推定するための処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、ステップS101では、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時のエンジン10の吸気温度を取得する。操船コントローラ38は、吸気温度データからエンジン10の始動時のエンジン10の吸気温度を取得する。操船コントローラ38は、メインスイッチ33がオン操作されたときのエンジン10の吸気温度を、エンジン10の始動時のエンジン10の吸気温度として取得する。
【0032】
ステップS102では、操船コントローラ38は、前回のエンジン10の停止時から、今回のエンジン10の始動時までの経過時間を取得する。操船コントローラ38は、エンジン10の始動時と停止時の日時を記憶している。操船コントローラ38は、例えば、メインスイッチ33がオフ操作されたときの日時を記憶する。操船コントローラ38は、メインスイッチ33がオン操作されたときの日時を記憶する。操船コントローラ38は、メインスイッチ33がオン操作されたときの日時とオフ操作された時の日時から、経過時間を算出する。
【0033】
ステップS103では、操船コントローラ38は、経過時間が時間閾値A1以上であるかを判定する。時間閾値A1は、例えば、エンジン10の停止後に、エンジン10の温度が外気温に近い温度まで十分に低下する程度の時間である。経過時間が時間閾値A1以上であるときには、処理はステップS104に進む。
【0034】
ステップS104では、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の吸気温度から、外気温を推定する。操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の吸気温度の値を、外気温として決定する。
【0035】
図5は、外水温を推定するための処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、ステップS201では、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時のエンジン10の冷却水の温度を取得する。操船コントローラ38は、冷却水温データからエンジン10の始動時のエンジン10の冷却水の温度を取得する。操船コントローラ38は、メインスイッチ33がオン操作されたときのエンジン10の冷却水の温度を、エンジン10の始動時のエンジン10の冷却水の温度として取得する。
【0036】
ステップS202では、操船コントローラ38は、ステップS102と同様に、前回のエンジン10の停止時から、今回のエンジン10の始動時までの経過時間を取得する。
【0037】
ステップS203では、操船コントローラ38は、経過時間が時間閾値A2以上であるかを判定する。時間閾値A2は、例えば、エンジン10の停止後に、エンジン10の温度が外気温に近い温度まで十分に低下する程度の時間である。経過時間が時間閾値A2以上であるときには、処理はステップS204に進む。
【0038】
ステップS204では、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の冷却水の温度から、外水温を推定する。操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の冷却水の温度の値を、外水温として決定する。
【0039】
図6は、大気圧を推定するための処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS301では、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時のエンジン10の吸気圧を取得する。操船コントローラ38は、吸気圧データからエンジン10の始動時のエンジン10の吸気圧を取得する。操船コントローラ38は、メインスイッチ33がオン操作されたときのエンジン10の吸気圧を、エンジン10の始動時のエンジン10の吸気圧として取得する。
【0040】
ステップS302では、操船コントローラ38は、ステップS102と同様に、前回のエンジン10の停止時から、今回のエンジン10の始動時までの経過時間を取得する。
【0041】
ステップS303では、操船コントローラ38は、経過時間が時間閾値A3以上であるかを判定する。時間閾値A3は、例えば、エンジン10の停止後に、エンジン10の温度が外気温に近い温度まで十分に低下する程度の時間である。経過時間が時間閾値A3以上であるときには、処理はステップS304に進む。
【0042】
ステップS304では、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の吸気圧から、大気圧を推定する。操船コントローラ38は、エンジン10の始動時の吸気圧の値を、大気圧として決定する。
【0043】
以上のように、操船コントローラ38は、外気温と、外水温と、大気圧とを推定する。操船コントローラ38は、推定した外気温、外水温、大気圧を、船舶データとして、サーバ201に送信してもよい。操船コントローラ38は、推定した外気温、外水温、大気圧に基づいて、船舶推進器1、或いは船舶100の異常を判定してもよい。操船コントローラ38は、推定した外気温、外水温、或いは大気圧をディスプレイ31に表示させてもよい。
【0044】
以上説明した本実施形態に係る船舶の制御システム3では、エンジン10の始動時のエンジン10の吸気温度から、外気温が推定される。エンジン10の始動時のエンジン10の吸気温度は、外気温に近似している。従って、吸気温度センサ34を用いて、外気温を精度よく推定することができる。
【0045】
エンジン10の始動時のエンジン10の冷却水の温度から、外水温が推定される。エンジン10の始動時のエンジン10の冷却水の温度は、外水温に近似している。従って、冷却水温センサ36を用いて、外水温を精度よく推定することができる。
【0046】
エンジン10の始動時のエンジン10の吸気圧から、大気圧が推定される。エンジン10の始動時のエンジン10の吸気圧は、大気圧に近似している。従って、吸気圧センサ37を用いて、大気圧を精度よく推定することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
船舶推進器1は、船外機に限らず、船内外機、或いはジェット推進器などの他の推進器であってもよい。船舶推進器1の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。制御システム3の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、DCM39は省略されてもよい。
【0049】
外気温、外水温、或いは大気圧を推定するための処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、
図7は、変形例に係る外気温を推定するための処理を示すフローチャートである。
【0050】
図7に示すように、ステップS401の処理は、上記の実施形態のステップS101の処理と同様である。ステップS402では、操船コントローラ38は、エンジン10の始動時のエンジン10の壁温を取得する。操船コントローラ38は、壁温データから、エンジン10の始動時のエンジン10の壁温を取得する。操船コントローラ38は、メインスイッチ33がオン操作されたときのエンジン10の壁温を、エンジン10の始動時のエンジン10の壁温として取得する。
【0051】
ステップS403では、操船コントローラ38は、壁温と吸気温度との温度差が温度閾値B1以下であるかを判定する。壁温と吸気温度との温度差が、温度閾値B1以下であるときには、処理は、ステップS404に進む。ステップS404では、操船コントローラ38は、ステップS101と同様に、エンジン10の始動時の吸気温度から、外気温を推定する。
【0052】
図5に示す外水温を推定するための処理においても同様に、ステップS202及びステップS203の処理に代えて、ステップS403及びステップS404の処理が行われてもよい。
図6に示す大気圧を推定するための処理においても同様に、ステップS302及びステップS303の処理に代えて、ステップS403及びステップS404の処理が行われてもよい。
【0053】
操船コントローラ38が起動されているが、エンジン10が停止している場合、操船コントローラ38は、操船コントローラ38の起動時のエンジン10の温度から、船舶の環境温度を推定してもよい。例えば、操船コントローラ38は、操船コントローラ38の起動時の吸気温度から、外気温を推定してもよい。操船コントローラ38は、操船コントローラ38の起動時の冷却水の温度から、外水温を推定してもよい。操船コントローラ38は、操船コントローラ38の起動時のエンジン10の吸気圧から、大気圧を推定してもよい。
【0054】
外気温、外水温、大気圧の推定は、操船コントローラ38に限らず、他のコンピュータによって実行されてもよい。例えば、外気温、外水温、大気圧の推定は、サーバ201によって行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、センサを追加することなく、船舶の環境の状態を把握することができる。
【符号の説明】
【0056】
10:エンジン
25:ウォータポンプ
33:メインスイッチ
34:吸気温度センサ
35:壁温センサ
36:冷却水温センサ
37:吸気圧センサ
38:操船コントローラ