(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113056
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】タクト分割データ収集システム、及び、異常検知システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230807BHJP
G01D 9/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
G05B23/02 301U
G01D9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015178
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 翼
【テーマコード(参考)】
2F070
3C223
【Fターム(参考)】
2F070AA01
2F070BB10
2F070CC01
2F070DD14
2F070FF09
3C223AA12
3C223BB13
3C223FF03
3C223FF13
3C223FF16
3C223GG01
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】
ロギングと同時にタクト切り出しを実現し、装置数を抑制して低コストにタクト分割データ収集をすることができるタクト分割データ収集システム、および、異常検知システムを提供することである。
【解決手段】
上記の課題を解決するタクト分割データ収集システムは、プロセッサを備えている。ここで、タクト分割データ収集システムのプロセッサは、繰り返し波形であるタクト波形の一部であって予め記憶装置に記憶されたトリガ波形に基づいて、センサから取得する時系列データにおけるタクト波形にトリガ波形が含まれるかを判定する処理を行う。そして、タクト分割データ収集システムのプロセッサは、タクト波形にトリガ波形が含まれると判定した場合、該トリガ波形を含むタクト波形のデータを収集する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
繰り返し波形であるタクト波形の一部であって予め記憶装置に記憶されたトリガ波形に基づいて、センサから取得する時系列データにおけるタクト波形にトリガ波形が含まれるかを判定し、
タクト波形にトリガ波形が含まれると判定した場合、該トリガ波形を含むタクト波形のデータを収集する、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項2】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記記憶装置は、
タクト波形の先頭からの一定時間分の波形をトリガ波形として記憶する、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項3】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記記憶装置は、
タクト波形の中間部分の一定時間分の波形をトリガ波形として記憶し、
前記プロセッサは、
トリガ波形開始までのタクト波形のデータを、一時記憶された時系列データに基づいて収集する、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項4】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記記憶装置は、
タクト波形の終端部分の一定時間分の波形をトリガ波形として記憶し、
前記プロセッサは、
トリガ波形開始までのタクト波形のデータを、一時記憶された時系列データに基づいて収集する、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項5】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記プロセッサは、
前記判定において、タクト波形からトリガ波形長さ分のデータを取り出して、記憶されたトリガ波形との類似度を計算し、
前記類似度の値に基づいて類似すると判定する場合には、取り出した長さ分のデータをファイルへの書き出した後に、残りの長さ分のデータをファイルに書き出す、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項6】
請求項5に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記類似度は、相互相関に基づいて計算される、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項7】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記記憶装置は、
タクト波形が複数含まれる連続データにおいて、タクト波形の個数が計算され、
前記連続データに含まれるタクト波形から切り出されたトリガ波形の個数が計算したタクト波形の個数に一致するように、長さが調整されて同定されたトリガ波形を記憶する、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項8】
請求項7に記載のタクト分割データ収集システムであって、
連続データにおけるタクト波形が自己相関関数を用いて同定される、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項9】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記プロセッサは、
センサから取得する時系列データの統計量を計算し、計算した統計量を用いて処理を行う、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項10】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
複数のセンサからそれぞれの時系列データを取得する場合において、
前記プロセッサは、
何れか一つのセンサから取得した時系列データを用いて処理を行う、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項11】
請求項1に記載のタクト分割データ収集システムであって、
前記タクト分割データ収集システムは、クラウド上に配置される、
ことを特徴とするタクト分割データ収集システム。
【請求項12】
センサから時系列データを取得するセンサデータ取得部と、
学習時データに含まれる繰り返し波形の一つをタクト基準波形として記憶するタクト波形記憶部と、
前記タクト基準波形の先頭から一定時間分波形をタクト開始トリガであるトリガ波形として記憶するトリガ波形記憶部と、
運用時データからトリガ波形長さ分のデータを取り出して前記トリガ波形との類似度を計算する処理を含むタクト開始判定部と、
前記計算結果に応じて運用時データをタクト長さ毎にファイルとして保存するタクトデータ保存部と、
を備えるタクト分割データ収集モジュールと、
得られたタクト毎のデータを用いて正常/異常判定を行う異常検知モジュールと、を備える、
ことを特徴とする異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクト分割データ収集システム、及び、異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器は導入後経過年数により、故障頻度が大きく変わる。導入後1-2年では、設計や製造の欠陥で故障が起こる初期故障期、導入後3-6年頃の故障が起こり難く稼働が安定している偶発故障期、導入後7-8年以降の機械の寿命が原因により故障が増加する摩耗故障期というものが統計的に示されている。初期故障期は、メーカ側の初期不良対応などでサポートされているものの、摩耗故障期は機械の使用状況や、ユーザのメンテナンス頻度などに依存して到来時期が読みがたく、ユーザ側での状態把握がなされないと稼働率の低下を招き、生産性低下が発生しやすい問題がある。この時期の機器に関して、メーカ側の最新のモニタリングソリューションなどはモデルが古いなどの事から導入が難しいことが多いため、新たに汎用のセンサをアドオンし、モニタリングして異常検知を実施するソリューションのニーズが増加する傾向がある。このようなアドオンセンサには温度センサや振動センサ、モータで駆動される機器の場合にはモータ駆動電流を測定する電流センサなどが用いられる。対象機器が、機械加工などのワーク単位の加工機や、ワークを搬送する垂直多関節ロボットの場合、測定データは一連の工程を示す“タクト“の繰り返しとなるため、異常検知では繰り返されたタクト同士を比較することで、差分を検知する手段が用いられるのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、予め決められたタクト基準波形と取得データのパターンマッチングを行ってタクト分割を実現する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アドオンセンサによる異常検知の場合、既存の装置への影響を最小限にしたいとの要望からタクト開始のトリガ信号を制御系から取得することが困難なことが多い。タクトとタクトの間はワーク待ちや、周辺機器の作業待ちなどにより、ばらつくことが多いため、タクト長さでの固定周期切り出しではタクト分割を仕損じることがあり、如何にトリガ信号レスでタクト分割を高精度に実現するかが課題となる。
【0006】
以上の要請を満たすため、特許文献1に記載のシステムでは、運用前に学習フェーズを設けて、予め取得したデータからタクト基準波形を同定して記憶し、運用中は一定時間ごとにそれまでに取得したデータとタクト基準波形のパターンマッチングを行って、マッチング度が一定量を超えた場合にタクトが存在すると判定し、当該データをタクトデータとして切り出す処理を実施している。しかしながら本手法では二つの欠点が存在する。一つ目はタクト基準波形全体でパターンマッチングを行うため、計算負荷が高く、データロギング機器に同時に実装することが容易ではないと考えられることである。二つ目はマッチングが成立した際に、切り出した取得データを一括で取り扱うため、もし前記システムでデータをファイル保存しようとした場合には、データのI/O負荷が大きく、この点でもデータロギングに影響を及ぼす可能性が高いため、データロギング機器に同時に実装することが容易ではないと考えらえることである。上記二つの欠点から、データロギング機器と別にタクト分割用機器を用意する必要が有り、装置コストが増加する課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、其の目的とするところは、ロギングと同時にタクト切り出しを実現し、装置数を抑制して低コストにタクト分割データ収集をすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、下記のタクト分割データ収集システムが提供される。すなわち、タクト分割データ収集システムは、プロセッサを備える。プロセッサは、繰り返し波形であるタクト波形の一部であって予め記憶装置に記憶されたトリガ波形に基づいて、センサから取得する時系列データにおけるタクト波形にトリガ波形が含まれるかを判定する。プロセッサは、タクト波形にトリガ波形が含まれると判定した場合、該トリガ波形を含むタクト波形のデータを収集する。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、下記の異常検知システムが提供される。すなわち、異常検知システムは、タクト分割データ収集モジュールと、異常検知モジュールと、を備える。タクト分割データ収集モジュールは、センサデータ取得部と、タクト波形記憶部と、トリガ波形記憶部と、タクト開始判定部と、タクトデータ保存部と、を備える。センサデータ取得部は、センサから時系列データを取得する。タクト波形記憶部は、学習時データに含まれる繰り返し波形の一つをタクト基準波形として記憶する。トリガ波形記憶部は、タクト基準波形の先頭から一定時間分波形をタクト開始トリガであるトリガ波形として記憶する。タクト開始判定部は、運用時データからトリガ波形長さ分のデータを取り出して前記トリガ波形との類似度を計算する処理を含む。タクトデータ保存部は、前記計算結果に応じて運用時データをタクト長さ毎にファイルとして保存する。異常検知モジュールは、得られたタクト毎のデータを用いて正常/異常判定を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロギングと同時にタクト切り出しを実現し、装置数を抑制した低コストにタクト分割データ収集をすることができるシステムが提供される。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来例に係るデータ収集システムと対象装置の外観を示す図。
【
図2】従来例に係るデータ収集システムが対象とする装置の電源系回路を示す図。
【
図3A】従来例及び本実施形態に係るデータ収集システムが対象とする装置をセンシングして得られた電流波形を示す図であり、複数タクトが含まれる電流波形の一例を示す図。
【
図3B】従来例及び本実施形態に係るデータ収集システムが対象とする装置をセンシングして得られた電流波形を示す図であり、1タクトを示す基準波形の一例を示す図。
【
図4】従来例のタクト分割データ収集システムの処理の流れを示すフローチャート図。
【
図5A】従来例に係るタクト分割データ収集システムのブロック図であり、学習中のブロック図。
【
図5B】従来例に係るタクト分割データ収集システムのブロック図であり、運用中のブロック図。
【
図6】実施形態に係るタクト分割データ収集システムと対象装置の一例の外観を示す図。
【
図7】実施形態に係るデータ収集システムが対象とする装置の電源系回路の一例を示す図。
【
図8】第1実施形態に係るタクト分割データ収集システムが対象とする装置をセンシングして得られる電流波形の1タクトの取得開始を示すトリガ波形の一例を示す図。
【
図9】第1実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【
図10A】実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の一例を示すブロック図であり、学習中のブロック図を示す。
【
図10B】実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の一例を示すブロック図であり、運用中のブロック図を示す。
【
図11】第1実施形態に係るタクト分割データ収集システムが対象とする装置をセンシングして得られる電流波形の1タクトの取得開始を示すトリガ波形の一例を示す図。
【
図12】第2実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【
図13】第3実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【
図14】第4実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【
図15A】第5実施形態に係るタクト分割データ収集システムが対象とする装置をセンシングして得られた電流波形を示す図であり、電流生波形の一例を示す図。
【
図15B】第5実施形態に係るタクト分割データ収集システムが対象とする装置をセンシングして得られた電流波形を示す図であり、移動RMS波形の一例を示す図。
【
図16】第5実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【
図17】第6実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【
図18】第7実施形態に係る異常検知システムと対象装置の一例の外観を示す図。
【
図19】第7実施形態に係る異常検知システムの処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【
図20A】第7実施形態に係る異常検知システムの処理の一例を示すブロック図であり、学習中のブロック図。
【
図20B】第7実施形態に係る異常検知システムの処理の一例を示すブロック図であり、運用中のブロック図。
【
図21】システム構成の一例に関するハードウェア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述のように特許文献1に記載の基準波形でパターンマッチングを行う仕組みを用いたタクト分割データ収集システムでは、タクト長さ分の取得データとタクト基準波形でパターンマッチングを行い、マッチング成立時はデータを一括保存する形式と成り得る。このような手法では、上述の通り、計算負荷やI/O負荷が高く、ロギング機器への同時実装ができずに、装置追加でコスト増加を招く恐れがある。
【0013】
はじめに、従来例のタクト分割データ収集システムが対象とする装置及びセンサデータ例と、システム構成の一例について説明する。
【0014】
図1は従来例のタクト分割データ収集システムと対象装置の例を示す図であり、対象装置はロボットを例としている。このシステムにおいて、ロボットは、制御Box200と、ロボット部300とを含んで構成されている。ロボット部300には、複数の稼働軸が存在し、第一稼働軸301、第二稼働軸302、第三稼働軸303、第四稼働軸304、第五稼働軸305、第六稼働軸306は、それぞれ矢印方向に回転運動をすることができる。
【0015】
タクト分割データ収集システム1は、対象装置の制御Box200と接続される。タクト分割データ収集システム1は、記憶部10と、処理部20と、を備える。記憶部10には、タクトの基準波形を記憶するタクト基準波形記憶部11と、分割後のデータを保存するタクトデータ保存部13が格納される。処理部20には、センサデータ取得部21と、タクト開始判定部22と、が含まれる。
【0016】
図2は、タクト分割データ収集システムの対象装置のセンシング対象回路の例を示す図である。制御Box200から、ロボット部300内の駆動用モータである各モータに電力が供給される。ロボット部300には、複数の駆動用モータが含まれ、それぞれの駆動用モータの回転は減速機に伝えられ、さらにその先に設けられた稼働軸を動作させる。減速機は、入力された回転速度を減少させて代わりにトルクを増大させる機構である。
【0017】
図2の例では、制御Box200には、電源回路210と、制御基板220と、が含まれ、配電盤100から供給される電力は電源回路210に受け渡されて制御基板220を通り、各モータに供給される。制御基板220は、複数の電力消費装置に電力を供給することができる。駆動用モータとして、第一モータ321と、第二モータ322と、第三モータ323と、第四モータ324と、第五モータ325と、第六モータ326と、がロボット部300に搭載されている。
【0018】
それぞれの駆動用モータには、第一減速機311と、第二減速機312と、第三減速機313と、第四減速機314と、第五減速機315と、第六減速機316と、がそれぞれ接続されている。また、それぞれの減速機には、第一稼働軸301と、第二稼働軸302と、第三稼働軸303と、第四稼働軸304と、第五稼働軸305と、第六稼働軸306と、がそれぞれ接続されている。ロボット部300において、動作プログラムに応じて制御基板220から出力される電流の大きさや周波数によって各稼働軸につながるモータが駆動される。故にこれらの電流波形はロボットの各稼働軸のモータやモータにつながる機械的部品である減速機や稼働軸の劣化状態を反映する重要な物理量であることが知られている。従来例ではこの中の第一モータへ接続される電源回路に電流センサをクランプしてセンシングしている。
【0019】
図3は電流センサで取得された電流波形を簡易的に示した波形であり、
図3Aは複数タクトが含まれる電流波形の一例、
図3Bは1タクトを示す基準波形の一例を示す図である。1タクトとはロボットの一連の繰り返し動作の最小単位を示しており、
図3Aでは4タクト分が含まれた連続データとなっており、タクト分割データ収集システムは、連続データを取得して、
図3Bの1タクト分データをファイル出力するシステムとなっている。
図4は従来例のタクト分割データ収集システムの処理フローを示す図であり、
図5は従来例のタクト分割データ収集システムのブロック図である。
【0020】
図1~5を用いて従来例のタクト分割データ収集システムについてまず学習時の工程から説明する。前述の通り、
図1、2のロボット部300の第一稼働軸301を稼働させる第一モータと制御基板220間の配線に電流センサがクランプされ、
図3Aの複数タクトが繋がった連続的な電流波形が取得される。この流れが
図4の項番0、1(S1、S2)で示される手順であり、
図5Aの学習時のブロック図に相当する。タクト分割データ収集システム1は、この連続的な電流波形を観察し、繰り返されているタクト波形を同定し、タクト基準波形として記憶する。
【0021】
センサデータ取得部21は、100msec~1sec分の予め定められた時間分のセンサデータを纏めてファイルとして保存しており、ここでは例として1sec分のデータを一つのtempファイル(テンポラリファイル)に纏めて保存することとし、またタクト長さは例として60sec分であるとする。
【0022】
タクト基準波形記憶部11での同定工程では、保存された1sec分ファイルを例えば1時間分、すなわち3600個のファイルを繋げて分析し、60secのタクトが存在することを明らかにし、60secのタクト基準波形を保存しておく作業が行われる。続いて運用時の工程を説明する。運用時には、
図4の項番2(S3)に示される通り、tempファイルを60個分取得して結合、保持し、項番3、4(S4、S5)の基準波形との比較工程の準備をする。従来例では比較手段を下記の式で示される統計量を用いている。
【0023】
【0024】
ここでRMSはRoot Mean Square、nはタクト長さ分のデータ量、xiはセンサ値、すなわち電流値を示し、タクト分波形全体で一つの値が算出される。項番3にて、予め同定、保持されているタクト基準波形のRMSと、運用中に得られた60sec分の取得結合データのRMSをそれぞれ算出する。項番4ではこのRMSの差分絶対値が予め定められた値以下かどうかを判定し、例えばタクト基準波形のRMS値が8[Arms]であり、取得結合データのRMS値が8.5[Arms]であった場合には、RMSの差分絶対値は0.5[Arms]となる。
【0025】
ここで閾値が0.3[Arms]であったとすると、RMSの差分絶対値は閾値以上となるため、項番5(S6)に処理が移行する。項番5では、取得結合データはタクト基準波形と一致していないとみなしているため、取得結合データを更新するために古い方から一つファイルを削除する作業をしている。こうすることにより、項番2に戻った際に新たなファイルを一つ足して、タクト開始判定工程に再度移行することとなる。
【0026】
この項番2~5のループを繰り返し、RMSの差分絶対値が閾値以下となった場合には、タクトが取得結合データ内に存在したとみなすため、項番6(S7)に処理が移行する。項番6では取得結合データをタクトファイルとして、保存する工程であり、タクトデータ保存部に保存後、取得結合データに関わるtempファイルを全て削除する項番7(S8)の作業が行われる。基本的にタクトが次のタクトとオーバラップすることは無いため、このように一旦データをリセットして、次のタクトを待つことになる。なお、項番0(S1)では、処理部20がセンサデータ取得部21を実行し、項番1~7(S2~S8)では、処理部20がタクト開始判定部22を実行する。
【0027】
以上のような流れで従来例でもタクト分割データ収集システムは構築可能であるが、項番3において、タクト時間分の統計値計算処理を行うため、リアルタイムで処理が行われているセンサデータ取得作業などに影響を及ぼす可能性がある。そのため、
図4の点線矢印で示される通り、処理を行う機器を分けることで、機器コストが増加するデメリットがある。また、項番6のタクト分保持データの保存でもタクト分のデータを一括保存する必要が有るため、I/Oの観点で、リアルタイムなセンサデータ取得工程に影響を及ぼす可能性があり、この点でも機器コスト増加が発生し得るデメリットが存在する。
【0028】
次に、こうした課題を解決する実施形態について説明する。なお、実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0029】
以下の実施形態では、どれも計算負荷及びI/O負荷を抑制できる手法となっており、低コストのタクト分割データ収集システムを実現できる効果がある。そして、低コスト化を図るという観点から、省資源化を図ることもできる。
【0030】
以下の実施形態で、同一の参照符号は、図番が異なっていても同一の構成を示しており、同じ作用効果を成す。また、既に説明済みの内容や同様の内容について、説明を省略する場合がある。
【0031】
<第1実施形態>
第1実施形態でのタクト分割データ収集システムは、
図6に示す構成であり、対象とする装置の電源構成やセンサ設置箇所は、一例として、
図7に示すように、上記した
図2を用いて説明した従来例と同様とすることができる。すなわち、タクト分割データ収集システム3は、記憶部30と、処理部40と、を備える。また、対象装置は、ロボットとすることができ、ロボットは、制御Box500と、ロボット部600とを含んで構成されている。制御Box500には、電源回路510と、制御基板520と、が含まれ、配電盤400から供給される電力は電源回路510に受け渡されて制御基板520を通り、各モータに供給される。ロボット部600は、各モータ(621~626)と、各減速機(611~616)と、各稼働軸(601~606)と、を備える。
図8は第1実施形態に係るトリガ波形の一例を示す図であり、
図9は第1実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示したフローチャートであり、
図10は第1実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の一例を示すブロック図である。
【0032】
以下、本発明の実施形態での共通した特徴は、
図9のフローチャート内項番2、4,7(S12、S14、S17)に記載されている二重枠線、斜線塗潰しの処理である。ここで、学習時はタクト基準波形を同定した後に、トリガ波形の同定を行う。
【0033】
このトリガ波形とは、タクト基準波形の一部を切り出したデータであり、その役割は、タクト有無をタクト長さ以下のデータ量で判定することである。
図10Aに示される通り、従来例と同手順でタクト基準波形まで同定して、タクト基準波形がタクト基準波形記憶部31に記憶される。
【0034】
その後、そのデータを用いて、トリガ波形記憶部32にてタクト内に存在し、タクト内で繰り返し存在することが無い
図8に示されるようなユニークな波形を同定する。ここでこのユニークな波形は例えば先頭の10sec分であるとする。同定後、そのユニークな波形がトリガ波形としてトリガ波形記憶部32に記憶される。この手順は
図8の項番0~2(S10~S12)の工程に相当する。
【0035】
そして、運用時では
図9の項番3(S13)に示される通り、トリガ分の10sec分のデータのみを取得し結合、保持する。次の項番4(S14)では従来例と同様の統計量計算、比較をこのトリガ波形長さ分データで実施する。項番5(S15)にて統計量差分絶対値が閾値以下の場合、項番7(S17)に処理が移行する。項番7(S17)は、取得済みのデータをトリガ波形分データに追加して、タクト長さ分の残りデータをファイルから逐次取得する。そして、タクト長さに到達したら項番8(S18)に記載されている通り、タクトファイルとして一括保存が実施される。また、項番9(S19)にて結合したtempファイルの全てが削除される。
【0036】
本実施形態では、
図10Bに示される通り、タクト開始判定計算をタクト長さよりも短いトリガ波形長さ分のデータで実施することができる。例えば、説明したように、タクト長さが60sec、トリガ波形長さが10secであった場合は、タクト開始判定計算を従来例と比較して1/6にすることができ、タクト分割データ収集システム3の計算コストを抑制する効果が得られる。
【0037】
また、
図11に示される通り、タクト基準波形の中間部分をトリガ波形として取ることも可能であり、その場合には、トリガ波形分データと共に、先頭からトリガ波形開始までのデータを一時的に保持しておく必要がある。タクト開始判定計算で使用するのはあくまでトリガ波形長さ分データのため、同様の計算コスト低減効果が得られるが、一時的に保持するメモリコストを考慮すると、先頭からのユニークな波形をトリガ波形として使用したほうが、メモリコスト増加を抑制することが可能である。また、同様の観点に基づいて、タクト基準波形の終端部分のトリガ波形が用いられてもよい。
【0038】
なお、第1実施形態では、一例として、項番0(S10)では、処理部40がセンサデータ取得部41を実行し、項番1~9(S11~S19)では、処理部40がタクト開始判定部42を実行する。
【0039】
<第2実施形態>
図12は第2実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れを示したフローチャートであり、第2実施形態でのタクト分割データ収集システムは
図6に示す構成と同様であり、対象とする装置の電源構成やセンサ設置箇所は
図7を用いて説明した一例と同様である。また、第2実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理のブロック図は
図10と同様である。
【0040】
以下、本発明の実施形態での共通した特徴は、
図12のフローチャート内項番0記載のデータの一時保存形式と項番4、5記載のタクト開始判定に正規化相互相関(NCC)を用いることである。
【0041】
データの一時保存形式では第1実施形態がファイル保存であるのに対し、第2実施形態ではメモリへの一時保存としている。こうすることにより、取得データを保存する際のI/O負荷を抑制することが可能である。但し、メモリ保存領域が余分に必要となるため、使用する機器に応じて各構成を選択することが必要である。第2実施形態での主要な効果は、もう一つの特徴であるNCCを用いることで奏される。ここで、NCCは以下の式で計算される。
【0042】
【0043】
ここでnはトリガ波形長さ分のデータ量、xiは取得したトリガ波形長さ分データ、yiは予め同定したトリガ波形を示す。NCCは2つの波形間の類似度を評価する場合に使用される指標である。NCCを用いることにより、第1実施形態で示したような統計量を用いる場合と比較して、波形全体の類似度を評価できる点と、閾値を類似度という相対的な値で決定できる点がある。例えばNCCでは2つの波形の類似度を0から1の間の数値で算出することができるため、対象毎に閾値を選定するSI工数削減という効果が得られる。
【0044】
本構成によれば、タクト開始判定の精度を向上しつつ、タクト開始判定用の閾値設定工数を削減できるという効果が得られる。また本実施形態ではNCCを用いた判定方法を説明したが、その他の代表的な波形間の類似度計算手法である、差分二乗和(SSD)や、差分絶対値和(SAD)を用いることもでき、NCCを用いた場合と同様にタクト開始判定の精度を向上させることが可能である。
【0045】
なお、第2実施形態では、一例として、項番0(S20)では、処理部40がセンサデータ取得部41を実行し、項番1~9(S21~S29)では、処理部40がタクト開始判定部42を実行する。
【0046】
<第3実施形態>
図13は第3実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示したフローチャートであり、第3実施形態でのタクト分割データ収集システムは
図6に示す構成と同様であり、対象とする装置の電源構成やセンサ設置箇所は
図7を用いて説明した例と同様である。また、第3実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理のブロック図は
図10と同様である。
【0047】
以下、本発明の実施形態での共通した特徴は、
図13のフローチャート内項番7、8に記載されている二重枠線、斜線塗潰しの処理である。第3実施形態では項番5(S35)のタクト開始判定でタクト開始と判定された後のデータ保存の際に、トリガ分保持データは一括保存、その後のトリガ長さ残り分のデータはファイルから取得するたびに逐次ファイルに追記していく方式となっている。このようにデータ保存を全て一括保存とするのではなく、大部分を逐次保存とすることにより、従来例の問題点であった、I/Oの処理負荷を抑制することができる。
【0048】
本構成によれば、タクトデータ保存時のI/O処理負荷を抑制して、センサデータ取得のリアルタイム処理への影響を抑制することができる効果が得られる。なお、第3実施形態では、一例として、項番7~8(S37~S38)では、処理部40がタクト開始判定部42を実行する。
【0049】
<第4実施形態>
図14は第4実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示したフローチャートであり、第4実施形態でのタクト分割データ収集システムは
図6に示す構成と同様であり、対象とする装置の電源構成やセンサ設置箇所は
図7を用いて説明した一例と同様である。また、第4実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理のブロック図は
図10と同様である。
【0050】
以下、本発明の実施形態での共通した特徴は、
図14のフローチャート内項番1、2に記載されている二重枠線、斜線塗潰しの処理である。第4実施形態ではタクト基準波形及びトリガ波形の同定がシステム構築者の手作業による分析ではなく、システムによる自動化が図られている。こうすることによりシステム構築作業工数を抑制することが可能である。以下、各自動化手法について説明する。
【0051】
項番1記載のタクト基準波形同定の自動化では、タクトが複数含まれる連続データを学習データとして、まず式(3)で示される自己相関関数が導出される。
【0052】
【0053】
ここでnは連続データのデータ量、xiは連続データを示す。自己相関関数(ACF(t))に関して、相互相関が波形同士の類似度であったのに対し、ACF(t)は一つの波形同士の片方を少しずつずらした場合の類似度推移を算出する。タクトが複数含まれる連続データに対してACF(t)を計算した場合、ACF(t)の値がタクト長さと同周期でピークを持つ。この性質を応用することにより、タクト基準波形の同定を実施することができる。
【0054】
続いてトリガ波形同定の自動化は、先ほどの連続データと同定したタクト基準波形を用いる。まず連続データとタクト基準波形でNCCを計算し、類似度から連続データ内に含まれるタクト基準波形個数を算出する。続いて、タクト基準波形の先頭から予め定めた規定長さで切り出して仮トリガ波形とする。前述の連続データと仮トリガ波形でNCCを計算し、類似度から連続データ内に含まれる仮トリガ波形個数を算出する。最後に仮トリガ波形が正式なトリガ波形と成り得るかをタクト基準波形個数と仮トリガ波形個数が一致するかで判定する。個数が一致しない場合には仮トリガ波形を規定長さから規定量延長し、同様の計算を実施し、個数が一致するまで繰り返す。本計算を仮トリガ波形がタクト基準波形長さに到達するまで実施すると、仮トリガ波形個数が過大な状態から、徐々にタクト基準波形個数に近づいていく関係性が得られ、タクト基準波形個数と一致した最初の仮トリガ波形長さが同定すべきトリガ波形の長さとなり、トリガ波形の自動同定が達成される。
【0055】
以上の両自動化手法を搭載する本構成によれば、人手作業で実施しなければならなかったタクト基準波形同定及びトリガ波形同定を自動化して人手作業工数を抑制することができる効果が得られる。なお、項番1~2(S41~S42)では、処理部40がタクト開始判定部42を実行する。
【0056】
<第5実施形態>
図15は第5実施形態に係るタクト分割データ収集システムが対象とする電流波形及びその統計量の波形の一例であり、
図16は第5実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示したフローチャートであり、第5実施形態でのタクト分割データ収集システムは
図6に示す構成と同様であり、対象とする装置の電源構成やセンサ設置箇所は
図7を用いて説明した一例と同様である。また、第5実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理のブロック図は
図10と同様である。
【0057】
以下、本発明の実施形態での共通した特徴は、
図16のフローチャート内項番1に記載されている二重枠線、斜線塗潰しの処理である。ここまでの実施形態では単純化したセンサデータについて取り扱っていたが、実際にモータに流れる電流値は
図15Aに示されるような交流波形であり、短い周期で値の大きさが変わる。そのため、そのままの波形でNCCのような類似度を計算すると、精度低下を招くことがある。よって、第5実施形態では、
図15Aに示されるような交流波形を項番1(S51)に示されるように統計量を用いて単純化する工程を追加している。第5実施形態では例として、交流波形から移動RMSで単純化している。移動RMSは式1で示されるRMSを既定の区間毎に算出する方法であり、
図15Bのような波形が得られる。本実施形態ではタクト開始判定などの計算では
図15Bの波形を使用し、最終的なタクトファイル保存では
図15Aの交流波形を保存することとしている。
【0058】
本構成によれば、センサデータが交流波形のような複雑波形であってもタクト分割の精度を維持することができる効果が得られる。なお、項番1(S51)では、処理部40がタクト開始判定部42を実行する。
【0059】
<第6実施形態>
図17は第6実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理の流れの一例を示したフローチャートであり、第6実施形態でのタクト分割データ収集システムは
図6に示す構成と同様であり、対象とする装置の電源構成は
図7を用いて説明した一例と同様である。また、第6実施形態に係るタクト分割データ収集システムの処理のブロック図は
図10と同様である。第6実施形態では取得するセンサデータが複数である場合を対象としており、例えば、
図7の第一モータから第6モータのすべでのセンサデータを取得する場合を対象としている。
【0060】
以下、本発明の実施形態での共通した特徴は、
図17のフローチャート内項番1に記載されている二重枠線、斜線塗潰しの処理である。ここまでの実施形態ではセンサデータは単一チャンネルであることが前提であったが、本実施形態では複数チャンネル分のデータを纏めて取得している場合を対象としている。本実施形態では項番1(S71)に記載されている通り各チャンネルごとにタクト開始判定計算を行うのではなく、いずれか一つのチャンネルデータを選定してタクト開始判定等の計算を行い、その結果を用いて全チャンネルのデータをタクト分割する方式としている。
【0061】
本構成によれば、チャンネル数が増えた場合でもタクト分割データ収集システムの計算量を1チャンネルの時と同程度まで抑制できる効果が得られる。なお、項番1(S71)では、処理部40がタクト開始判定部42を実行する。
【0062】
<第7実施形態>
図18は第7実施形態に係る異常検知システムとその対象の一例を示す図であり、
図19、20は第7実施形態に係る異常検知システムの処理の流れの一例を示したフローチャートとブロック図である。対象とする装置の電源構成やセンサ設置箇所は
図7を用いて説明した一例と同様である。
【0063】
第7実施形態の特徴は、
図19のフローチャート内項番10に記載されている二重枠線、斜線塗潰しの処理である。それ以外の処理については、上記で説明した内容と同様とすることができ、本実施形態ではここまでの実施形態で説明したタクト分割したデータを用いて、項番10(S100)に示される通り、装置の異常検知を実施する機能を付与している。
【0064】
具体的には、処理部40が異常検知アルゴリズムを実行して、保存されたデータが正常であるかそうでないかの判定を行う。そして、処理部40が検知結果表示部50にその結果を出力する。ここで、検知結果表示部50は、適宜のディスプレイを用いて構成することができる。なお、処理部40は、異常検知に関する表示処理において適宜のプログラムを実行することができる。また、オペレータ等が異常検知の結果を把握できればよく、表示の態様は特に限定されない。
【0065】
本実施形態によれば、タクト毎のデータを収集するタクト分割データ収集モジュールと、得られたタクト毎のデータを用いて正常/異常判定を行う異常検知モジュールと、を備える、異常検知システムが提供される。本構成によれば、分割したタクトデータを活用して、データ収集と同時に異常検知までを実施できる効果が得られる。なお、項番10(S100)では、処理部40が異常検知部43を実行する。
【0066】
以上、本発明の実施形態によれば、ワーク単位での機械加工や、ロボット搬送などのディスクリート系工程を対象としたアドオンセンサによる異常検知ではデータロギング後のタクト切り出しが必須となっているが、トリガ信号取得が困難な場合は、タクト基準波形全体を用いてパターンマッチングでタクト切り出しを実施していたため、処理負荷の観点でロギング機器とは別に処理装置を用意する必要があり、コストが増加するという課題を解決することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0068】
タクト分割データ収集システム3および異常検知システム5は、一例として、1台または複数台のコンピュータを用いて構成され、
図21に示すように、プロセッサと、記憶装置と、データの入出力に用いるインタフェースと、を備えるシステムとすることができる。そして、実施形態で説明された処理部40は、プロセッサを用いて構成され、記憶部30は、記憶装置を用いて構成することができる。ここで、プロセッサは、一例として、CPU(Central Processing Unit)が挙げられるが、他の半導体デバイスが用いられてもよい。記憶装置は、一例として、SSD(Solid State Drive)が挙げられる。なお、記憶装置は、プロセッサがプログラムを読み込むRAM(Random Access Memory)を含んでもよいし、記憶装置には、HDD(Hard Disk Drive)等が用いられてもよい。
【0069】
実施形態で説明されたセンサデータ取得部41、タクト開始判定部42、異常検知部43は、プロセッサにより実行されるプログラムとされる。そして、タクト基準波形記憶部31、トリガ波形記憶部32、タクトデータ保存部33は、データベースとして記憶装置に配置される。なお、記憶装置には、他のデータが記憶されてもよく、例えば、異常検知に関するデータが記憶されてもよい。
【0070】
タクト分割データ収集システム3および異常検知システム5は、一例として、ロボットが作業を行う現場に配置されるが、現場とは異なるクラウド上に配置されてもよい。これにより、クラウド上でデータを管理することができる。
【0071】
タクトデータを収集する対象装置は、実施形態で説明されたロボットの構成に限定されない。例えば、繰り返し動作において複数の種類の動作を行う他の異なる産業用機器であってもよい。
【0072】
タクト分割データ収集システム3および異常検知システム5は、それぞれのタクトにおいて同様の値を出力する他の種類のセンサからデータを取得し、処理を行ってもよい。例えば、力覚センサに基づくデータを取得し、同様にして処理を行ってもよい。
【0073】
異常検知システム5は、オペレータ等への異常の通知に際し、他の態様の通知を行ってもよい。例えば、ランプやブザーによる通知が行われてもよい。
【0074】
タクト分割データ収集システム3および異常検知システム5は、接続される可搬性の不揮発性の記憶装置を用いてデータの入出力を行ってもよい。
【符号の説明】
【0075】
3:タクト分割データ収集システム、
30:記憶部、
31:タクト基準波形記憶部、
32:トリガ波形記憶部、
33:タクトデータ保存部、
40:処理部、
41:センサデータ取得部、
42:タクト開始判定部、
400:配電盤、
500:制御Box、
510:電源回路、
520:制御基板、
600:ロボット部、
601:第一稼働軸、
602:第二稼働軸、
603:第三稼働軸、
604:第四稼働軸、
605:第五稼働軸、
606:第六稼働軸。