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特開2023-113121センサシステム及び検知対象の検知方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113121
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】センサシステム及び検知対象の検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004209
(22)【出願日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2022014720
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022164929
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸希
(72)【発明者】
【氏名】世古 暢哉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡
(72)【発明者】
【氏名】重村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】住吉 研
(72)【発明者】
【氏名】山根 治起
(72)【発明者】
【氏名】梁瀬 智
(72)【発明者】
【氏名】山川 清志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎吾
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE02
2G059EE05
2G059JJ19
2G059KK01
2G059LL02
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】検知対象物質を高感度、高分解能で、かつ安定して検知する。
【解決手段】センサシステムは、検知素子と、光源を含み検知素子に斜めに光を入射させる入射光学系と、検知素子で反射された光を検出する検出装置とを含む。検知素子は、検知対象物質との接触により光学特性が変化する化学検知層と、入射した光の少なくとも一部を反射する反射層と、反射層と化学検知層との間の中間層と、を含む。検出装置は、検知素子で反射されたp偏光及びs偏光それぞれを検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサシステムであって、
検知素子と、
光源を含み、前記検知素子に斜めに光を入射させる、入射光学系と、
前記検知素子で反射された光を検出する、検出装置と、
を含み、
前記検知素子は、
検知対象物質との接触により光学特性が変化する、化学検知層と、
入射した光の少なくとも一部を反射する反射層と、
前記反射層と前記化学検知層との間の中間層と、
を含み、
前記検出装置は、前記検知素子で反射されたp偏光及びs偏光それぞれを検出する、
センサシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記p偏光及び前記s偏光それぞれの、前記反射層での反射光と前記化学検知層での反射光とが干渉し、前記p偏光及び前記s偏光の前記検知素子による反射率の差が増大される、
センサシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記検知素子は、非磁性材料で構成されている、
センサシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記化学検知層は、パラジウムを含有する材料で構成されている、
センサシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記検知素子に対して、前記反射層側から光が入射され、
前記反射層は、ハーフミラー層であり、
前記化学検知層は、全反射層である、
センサシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記検知素子に対して、前記化学検知層側から光が入射され、
前記化学検知層は、ハーフミラー層であり、
前記反射層は、全反射層である、
センサシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記光源と前記検知素子との間又は前記検知素子と前記検出装置との間に、入射した光からp偏光及びs偏光を分離する偏光分離器を含み、
前記検出装置は、
前記検知素子で反射されたp偏光を検出する第1検出器と、
前記第1検出器と異なる検出器であって、前記検知素子で反射されたs偏光を検出する第2検出器と、
を含む、
センサシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記光源と前記検知素子との間又は前記検知素子と前記検出装置との間に、偏光変調器を含み、
前記偏光変調器は、
第1の期間において入射した光からp偏光及びs偏光の一方を出力し、第1の期間の後の第2の期間において前記入射した光から前記p偏光及び前記s偏光の他方を出力し、
前記検出装置は、
前記第1の期間において、前記検知素子で反射された前記p偏光及び前記s偏光の前記一方を検出し、
前記第2の期間において、前記検知素子で反射された前記p偏光及び前記s偏光の前記他方を検出する、
センサシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記検知素子の前記光源からの光が入射する側に反射防止膜及びプリズムの一方が形成されており、
前記光源からの光は、前記反射防止膜及び前記プリズムの前記一方を介して前記反射層に入射する、
センサシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記反射層は、タンタル層であり、
前記中間層は、窒化物層である、
センサシステム。
【請求項11】
検知素子を使用した検知対象の検知方法であって、
前記検知素子は、
所定検知対象物質との接触により光学特性が変化する、化学検知層と、
入射した光の少なくとも一部を反射する反射層と、
前記反射層と前記化学検知層との間の中間層と、
を含み、
前記検知方法は、
前記検知素子に斜めに光を入射させ、
前記検知素子で反射されたp偏光及びs偏光それぞれを検出し、
前記p偏光及び前記s偏光の強度の比較結果に基づいて前記検知対象の検知結果を生成する、
検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサシステム及び検知素子を使用した検知対象の検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質の種類や濃度を検知する化学センサが開発されており、例えば、水素ガスの漏洩検知用センサが化学センサとして開発されている。検出方式の異なる複数の水素ガスセンサが知られているが、応答速度の向上やクリーニング効果等のための、高温動作を必要とするものが一般的である。高温動作を要する水素ガスセンサは、電気回路での過電流やスパークが水素と接触することによる爆発の危険性を防ぐことが求められる。
【0003】
化学センサの他の例として、光学的手法により水素ガスを検知する方式が知られている。例えば、特開2017-172993号公報に開示されている水素ガスセンサは、磁性層及び水素ガス検知層を含む積層構造からなる検知素子を有する。検知素子の膜面に計測光を入射したとき、磁性層で生じる磁気光学効果によって計測光の偏光角が回転する。水素ガス検知膜が水素に触れると、検知膜の光学特性が変化し偏光角の回転量が変化するため、この変化を計測することで水素を検知する。この水素ガスセンサの主要構成要素の光源、光検知器、検知素子、磁場印加装置は、被測定雰囲気を挟んで配置されている。光学式水素ガスセンサは、高温に加熱する必要が無く、通電部を測定雰囲気に配置する必要もないため、上記の問題を回避して、より安全に水素ガスの漏洩検知が可能となる。
【0004】
この水素ガスセンサでは、磁気光学効果を用いて計測を行うために、センサの構成に磁性材料が必須であるが、これに加えて、磁性材料の磁化を制御する磁場印加機構が必要とされている。積層膜は開示された膜構成によると、水素ガス検知層、金属反射層に加えて金属磁性膜が用いられており、さらに積層数を増やした構成も開示されている。磁場印加機構の必要性及び、積層膜の膜構成の複雑化はコスト高になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-172993号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0309679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検知素子を使用する化学物質のセンサには、高い検知精度と、目的に応じて選択できる検知素子構造の自由度が高いこと、とが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様のセンサシステムは、検知素子と、光源を含み前記検知素子に斜めに光を入射させる入射光学系と、前記検知素子で反射された光を検出する検出装置と、を含む。前記検知素子は、検知対象物質との接触により光学特性が変化する化学検知層と、入射した光の少なくとも一部を反射する反射層と、前記反射層と前記化学検知層との間の中間層と、を含む。前記検出装置は、前記検知素子で反射されたp偏光及びs偏光それぞれを検出する。
【0008】
本開示の一態様は、検知素子を使用した検知対象の検知方法である。前記検知素子は、所定検知対象物質との接触により光学特性が変化する化学検知層と、入射した光の少なくとも一部を反射する反射層と、前記反射層と前記化学検知層との間の中間層とを含む。前記検知方法は、前記検知素子に斜めに光を入射させ、前記検知素子で反射されたp偏光及びs偏光それぞれを検出し、前記p偏光及び前記s偏光の強度の比較結果に基づいて前記検知対象の検知結果を生成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、検知対象物質を高感度、高分解能で、かつ安定して検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。
図2A】検知素子の構成例を示す。
図2B】検知素子の構成例を示す。
図3】本明細書の一実施形態にかかる検知素子の積層膜の構成例を模式的に示す断面図である。
図4図3に示す検知素子による、水素ガスの検知原理を説明するシミュレーション結果を示す。
図5A図3に示す検知素子の、検知積層膜と水素ガスとの反応によるp偏光とs偏光の反射率変化のシミュレーション結果を示す。
図5B図3に示す検知素子の、検知積層膜と水素ガスとの反応によるp偏光とs偏光の反射率変化のシミュレーション結果を示す。
図6図5に示すp偏光とs偏光のシミュレーション結果から算出された、反射p偏光の強度Ipと反射s偏光の強度Isの比(Ip/Is)を示す。
図7】本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。
図8】本明細書の一実施形態にかかる検知素子の構成例を模式的に示す断面図である。
図9図7及び図8に示す構成例における測定結果のグラフを示す。
図10】本明細書の一実施形態にかかる検知素子の構成例を模式的に示す断面図である。
図11図7及び図10に示す構成例における測定結果のグラフを示す。
図12A】本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。
図12B】本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。
図13】本明細書の一実施形態にかかる検知素子の構成例を模式的に示す断面図である。
図14図12A及び図13に示す構成例における測定結果のグラフを示す。
図15】本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。
図16】本明細書の一実施形態にかかる検知素子の構成例を模式的に示す断面図である。
図17図16に示す積層膜についてのシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。各図面における各構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するために適宜変更して記載している。また、各図面におけるハッチングは、各構成要素を区別するためのものであり、必ずしも切断面を意味するものではない。本実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0012】
以下において、センサシステムの実施形態を説明する。本明細書のいくつかの実施形態のセンサシステムは、光学式化学センサシステムである。光学式化学センサシステムは、検知対象物と接触する検知素子の光学特性の変化を測定することで、検知対象を検知する。本明細書の実施形態の光学式化学センサシステムは、検知素子に斜めに光を入射させ、p偏光及びs偏光の反射光を測定する。
【0013】
検知素子は、薄膜積層体を含み、積層体は、例えば、化学検知層、光干渉層、反射層を含む。光干渉層は、中間層であって、化学検知層と反射層の間に挟まれている。化学検知層及び反射層は、それぞれ、所定波長の光を全反射又は部分反射する。積層体は、検知に用いる光の波長に対して、反射層と、化学検知層での反射光どうしが干渉しあい、p偏光あるいはs偏光の共鳴条件の近くとなるように、構成する材料が選定され、膜厚が設定されている。検知素子への入射光は積層体へ入射し、上記の干渉の結果を反映した反射光が検出装置で検出される。
【0014】
本開示の実施形態においては、検出のための光が検出素子の薄膜積層体に対して斜めに入射する、斜入射光学系を構成している。検知素子に斜めに入射した光の一部は、反射膜の入射側界面で反射する。反射膜を透過した光の一部は、中間層を通過し、化学検知層で反射して再び中間層を通過したのち反射膜を透過して入射面での反射光と干渉し、検出装置により検出される。
【0015】
斜入射光学系において、偏光成分はp偏光及びs偏光として定義できる。積層体で生じる干渉の影響はp偏光とs偏光で異なるため、それぞれの入射光及び検出装置により検出される反射光の比、すなわち反射率が異なって観測される。
【0016】
化学検知層が検知対象物に触れると、検知対象物の濃度に応じて化学検知層の光学特性が変化し、積層体で発生する干渉条件が変化する。前述のように積層体はp偏光あるいはs偏光の共鳴条件の近くに設定されている。そのため、わずかな化学検知層の光学特性の変化で共鳴条件から遠ざかり、きわめて大きな反射率の変化を生じる。この反射率の変化は検出装置での大きな検出光強度の変化となるため、検知対象物質を高感度、高分解能に検知することができる。
【0017】
なお、化学検知層の変化はp偏光、s偏光の反射率にそれぞれ反映されるが、光源の光強度に変動があった場合、この変動の影響はp偏光、s偏光に同じ比率で反映されるため、p偏光、s偏光それぞれの検出光強度を比較することで、光源の光強度変動の影響を排除することができる。このようにして、検知対象物質を高感度、高分解能で、かつ安定して検知対象物質を検知することができる。
【0018】
光学式化学センサシステムの検知対象は、検知対象物の濃度であり、検知対象物は、例えば、pH、水素、酸素、二酸化炭素、塩素、窒素酸化物などのガス、DNA、酵素などである。光学式化学センサシステムは、例えば、pHを検知する光学式イオンセンサシステム、ガスを検知する光学式ガスセンサシステム、DNA、酵素を検知する光学式バイオセンサシステムであり得る。以下の実施形態では、水素ガスを検知する光学式水素ガスセンサシステムを例として詳細に説明する。なお、光学式センサシステムを単にセンサシステムと呼ぶことがある。
【0019】
〔実施形態1〕
図1は、本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。水素ガスセンサシステムは、光学式化学センサシステムの例であり、検知対象物は水素ガスである。水素ガスセンサシステムは、水素ガス濃度を検知できる。図中の片矢印は光路であり、水素ガスセンサは、斜入射光学系を基本とする。
【0020】
水素ガスセンサシステムは、光源11、偏光分離素子(偏光分離器)13、検知素子14、光検出装置17、検知制御装置40を含む。入射光学系は、光源11及び偏光分離素子13を含む。検知制御装置40は、水素ガスセンサシステムの他の構成要素を制御すると共に、検知素子14による反射光強度の計測及び反射光強度に基づく計測値の計算を行う。
【0021】
検知素子14は、透明基板141及び透明基板141上に形成されている積層膜140を含む。積層膜140は、透明基板141の側から積層された、ハーフミラー層142、光干渉層143、及び水素ガス検知層144を含む。透明基板141の積層膜140の反対側には、プリズム146が設置され、不図示のイマージョンオイル等によって透明基板141と光学結合される。プリズム146は、積層膜140が形成されていない透明基板141裏面での入射光の反射を低減する。
【0022】
図2Aは、検知素子14の他の構成例を示す。図2Aに示す構成例は、プリズム146に代えて、反射防止膜147が、透明基板141の積層膜140の反対側に形成されている。反射防止膜147は、例えば、誘電体多層膜であり、高屈折率層としてのZnO薄膜と、低屈折率層としてのSiO2薄膜とが、透明基板141の上にこの順番で積層された構造体であってよい。透明基板141は、反射防止膜147と積層膜140とに挟まれている。反射防止膜147は、プリズム146と同様に、積層膜140が形成されていない透明基板141裏面での入射光の反射を低減することができる。
【0023】
図2Bは、検知素子14の他の構成例を示す。図2Bに示す検知素子14は、図1に示す検知素子14の構成例から透明基板141を省略した構成を有している。積層膜140は、プリズム146の面上に直接成膜される。透明基板141とプリズム146を光学結合するためのイマージョンオイルが不要となるので、オイルによる素子周辺の汚染を回避できる。
【0024】
図1に戻って、水素ガス検知層144の表面は、検知対象物である水素ガス30と接触している。水素ガスセンサシステムは、水素ガス30による検知素子14の光学特性の変化を測定することで、水素ガスを検知する。より具体的には、水素ガス濃度に応じた積層膜140によるp偏光とs偏光の反射率の違いを測定することで、水素ガス濃度を検知する。
【0025】
図1の構成例において、水素ガスセンサシステムは、プリズム146を介して、水素ガス30を検知する積層膜140が形成されていない透明基板141の裏面側から、光を斜めに積層膜140へ照射する。光検出装置17は、反射p偏光32p及び反射s偏光32sをそれぞれ検出し、検知制御装置40は、それらの強度の相違に基づき、水素濃度を決定する。後述するように、強度の相違は、例えば、差や比を使用する関数によって表され得る。
【0026】
積層膜140は、ハーフミラー層142と透明基板141との界面での反射光と、内部へ侵入し水素ガス検知層144で反射した光とが干渉する構造を有する。なお、図示の容易のため、図1においてハーフミラー層142と透明基板141の界面で反射した光は示されていない。この点は他の図において同様である。水素ガスセンサシステムは、光源11から出射された光を、検知素子14に斜め方向から入射させる。斜め入射光学系では、一般にp偏光とs偏光で反射率が異なる。さらに、本開示の実施形態のような積層膜では、p偏光とs偏光それぞれで、異なる干渉条件が重畳される。
【0027】
これらを合わせた積層膜140でのp偏光とs偏光の反射の挙動は、p偏光とs偏光の反射率に反映される。入射p偏光31p及び入射s偏光31sの強度の比率を一定にしておけば、反射p偏光32p及び反射s偏光32sの強度をそれぞれ光検出器171、172で検出することで、強度比を算出できる。反射p偏光32p及び反射s偏光32sの強度比を取ることで、光源の出射光強度が変動してもその影響を排除することができる。
【0028】
光源11は、プリズム146を介して、透明基板141の上に形成された積層膜140に入射する光を放出する。光源11としては、半導体レーザ、LED、又は、ガスレーザなどの単一の波長の光を出射する単色光源が用いられ得る。
【0029】
偏光分離素子13は、光源11と検知素子14との間の光路上に配置されている。偏光分離素子13は、光源11からの光を、p偏光31p及びs偏光31sに分離する。p偏光31p及びs偏光31sは、検知素子14への入射光である。p偏光31p及びs偏光31sは、互いに異なる光路で検知素子14の異なる位置に入射する。
【0030】
偏光分離素子13により分離されたp偏光31p及びs偏光31sは、それぞれ、異なる光路においてプリズム146を介して、積層膜140が形成されていない透明基板141の裏面に入射する。入射する方法は、積層膜140の積層方向(透明基板141の法線方向)に対して斜めである。その角度は、例えば45°である。
【0031】
積層膜140に入射したp偏光31p及びs偏光31sの内の一部は、ハーフミラー層142と透明基板141との界面で反射される。残りの一部はハーフミラー層142を透過して、光干渉層143を通過、化学検知層144で反射され、再び光干渉層143を逆向きに通過したのち、ハーフミラー層142を透過して、前述の、ハーフミラー層142と透明基板141との界面で反射された光と干渉する。
【0032】
このとき、p偏光及びs偏光は異なった干渉条件をとる。積層膜140は、検知に用いる光源11の出射光の波長に対して、p偏光あるいはs偏光の干渉が共鳴条件に近くなるように設定しておく。共鳴条件に近い偏光成分の反射光強度は、干渉のためきわめて小さい値となる。一方の共鳴条件から外れた偏光成分の反射光強度は、相対的に大きな値をとる。
【0033】
検知素子14により反射されたp偏光32p及びs偏光32sは、互いに異なる光路を進む。反射p偏光32p及び反射s偏光32sは、それぞれ、第1光検出器171及び第2光検出器172により検出される。第1光検出器171及び第2光検出器172は、検出装置17の構成要素であり、異なる位置に設置されている。第1光検出器171及び第2光検出器172は、それぞれ、反射p偏光32p及び反射s偏光32sの光路上にあって、反射p偏光32p及び反射s偏光32sの強度をそれぞれ検出する。
【0034】
検知制御装置40は、光源11の発光を制御すると共に、第1光検出器171及び第2光検出器172からの検出信号を受信する。検知制御装置40は、第1光検出器171及び第2光検出器172から、反射p偏光32p及び反射s偏光32sそれぞれの強度を示す信号を受け取る。検知制御装置40は、それらの比較結果に基づき、水素ガス濃度を算出する。
【0035】
例えば、検知制御装置40は、予め設定された関数(ルックアップテーブルを含む)を使用して、反射p偏光32p及び反射s偏光32sの強度から水素濃度を決定する。関数は、例えば、p偏光強度とs偏光強度の比を変数として含むことができる。入射側のp偏光成分とs偏光成分の比率を一定に保った場合、p偏光とs偏光の反射光強度の比をとることで、光源11からの出射光強度の変動を排除することができる。
【0036】
検知素子14は、図1に示すように、透明基板141に、ハーフミラー層142、光干渉層143、及び水素ガス検知層144を、この順番で積層した積層膜140を含む。これら層のそれぞれは、単一層又は複数層で構成され得る。水素ガス検知層144は、化学検知層であって、検知対象物に応じた適切な材料で構成される。
【0037】
水素ガス検知層144は、水素ガスとの接触によって屈折率や吸収係数などの光学特性を変化させる。水素ガスセンサシステムは、水素ガス検知層144の光学特性の変化によって生じるp偏光とs偏光の反射光の強度変化を測定することで、水素ガスを検知する。
【0038】
光干渉層143は、中間層であって、積層膜140に照射された光のうち、ハーフミラー層142と透明基板141との界面での反射光と、内部へ侵入し水素ガス検知層144で反射した光とが干渉する構造を有する。例えば、ハーフミラー層142と光干渉層143のそれぞれの厚さと屈折率とを乗じて加算した値が、照射する光の波長に対して1/4程度より厚い。
【0039】
ハーフミラー層142は、入射した光の一部を反射し、一部を透過させる。ハーフミラー層142は、積層膜140に照射された光が、積層膜140の内部に侵入できる厚さを有する。例えば、ハーフミラー層142は、0nmより大きく30nm以下の厚さを有することができる。水素ガス検知層144は、積層膜140の内部に侵入した光を反射させるのに十分な厚さを有し、例えば、20nm以上の厚さを有することができる。水素ガス検知層144の膜厚を厚くすることにより、検知層の表面状態の変動の影響を低減することができ、より安定した検知対象の検知が可能である。
【0040】
水素ガス検知層144に用いる材料としては、水素ガスと反応することで屈折率あるいは吸収係数等の光学特性が変化するいかなる材料を用いることも可能である。一例として、水素ガスが接触することで光学特性が大きく変化するPd(パラジウム)を含有する薄膜を用いることができる。この場合、Pdは、室温での水素ガスの吸蔵および放出特性を有するため、室温での動作が可能であり、かつ高い検知感度を有する水素ガスセンサを提供できる。
【0041】
光干渉層143に用いる材料としては、SiO(二酸化ケイ素)、ZnO(酸化亜鉛)、MgO(酸化マグネシウム)、TiO(酸化チタン)、AlN(窒化アルミニウム)、Si34(窒化ケイ素)、MgF(弗化マグネシウム)等の一般的な透明酸化物、透明窒化物、又は透明弗化物が挙げられる。光干渉層143は、光源11から照射される光の波長に対して、高い透過率を有する誘電体であってよい。
【0042】
ハーフミラー層142に用いる材料としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Au(金)、Cu(銅)、Ta(タンタル)等の金属やそれらを成分とする合金等からなる一般的な金属材料が挙げられる。ハーフミラー層142の材料は、光源11から照射される光の波長において、高い反射率を有してよい。透明基板141は、例えば0.5mm(500μm)程度のガラス基板である。
【0043】
本明細書の一実施形態において、検知素子14の積層膜140は、非磁性材料で構成される。特許文献1においては、磁気光学効果による偏光面の回転により検知することが動作原理であったため、磁性材料を含むことが必須であった。しかし、本明細書の実施形態において、磁性材料を含む構成とする必要はない。ただし、非磁性材料のみで構成することも必須ではない。実施形態において要求される特性を実現するために必要な要件のみに注目して好適な材料選定を行えばよく、磁性の有無にこだわる必要はない。
【0044】
ただし、磁性材料を構成の中に含めることを選択した場合には、使用環境で想定される最大の磁場においても、磁化反転しない大きな保磁力と、ヒステリシスループの角形性の高い材料を選択することで、外部磁場の影響を抑制でき、特性の安定性が向上する。
【0045】
上述のように、水素ガスセンサシステムは、積層膜140の法線方向に対して斜めの方向から光を照射し、積層膜140により反射されたp偏光及びs偏光を検出する。水素ガスセンサシステムは、水素ガス30との接触による水素ガス検知層144の光学特性の変化を、積層膜140で反射されるp偏光及びs偏光の強度変化を示す光学信号として検出することにより、水素ガスを検知する。
【0046】
水素ガスが水素ガス検知層144に接触すると、水素ガス検知層144の光学特性が変化するため、積層膜140の干渉条件が変化する。干渉条件は、p偏光とs偏光について異なる変化をし、特に共鳴条件近傍にある偏光成分の反射率は、水素ガス検知層144の水素接触による光学特性変化で大きく変化する。結果として、p偏光及びs偏光の反射光強度の比が大きく変化する。このように、積層膜140において発生する光の干渉によって光学信号を大きく増強できるため、水素ガスを高い感度で検知できる。これは、他の検知対象物及び化学検知層の積層膜についても同様である。
【0047】
図3は、本明細書の一実施形態にかかる検知素子の積層膜(検知積層膜)の構成例を模式的に示す断面図である。水素ガスを検知する積層膜200は、ガラスで形成された透明基板201上に形成されている。積層膜200は、ハーフミラー層202、光干渉層203及び水素ガス検知層204で構成されている。
【0048】
ハーフミラー層202は、厚さが3nmのCr薄膜及び厚さ11nmのAu薄膜で構成されている。光干渉層203は、厚さ114nmのSi34(窒化ケイ素)薄膜で構成されている。水素ガス検知層204は、厚さ100nmのPd薄膜で構成されている。ハーフミラー層202、光干渉層203及び水素ガス検知層204は、透明基板201上に、この順番で積層されている。
【0049】
積層膜200が形成されていない透明基板201の裏面には、透明基板201から反射される光を小さくするため、反射防止膜やプリズムが配置されてよい。
【0050】
図4図3に示す検知積層膜200の反射特性についてのシミュレーション結果である。図4の横軸は光源の波長、縦軸はp偏光およびs偏光の反射率である。図3に示す検知積層膜200の膜厚条件では、波長が670nmのとき、p偏光が共鳴条件となる例を示している。縦軸は対数軸であり、共鳴条件付近では著しい反射率の変化がみられ、共鳴条件では原理上は、反射率が0となる。同じ条件のとき、s偏光の反射率はp偏光の反射率に対して数桁高い状態にあり、その変化もわずかであるという特性をもっている。具体的には、図4において、波長670nmでのs偏光の反射率は約14%、p偏光の反射率は約0.0008%である。従って、反射率の比をとると、s偏光がp偏光より4桁高い(約17500倍)。
【0051】
s偏光の方も共鳴条件はあるが、p偏光とは異なった波長にあり、かつ共鳴条件付近での反射率の変化はp偏光にくらべて緩やかである。ここでは、p偏光に急峻な共鳴条件が現れる設計を例に説明したが、積層膜の設計次第では、s偏光に急峻な共鳴条件が現れるような積層膜とすることも可能である。ここでは、波長を横軸に取った計算例を示したが、干渉条件を左右する別のパラメータ(例えば、入射角、積層膜の光学特性等)を横軸にしても、共鳴条件付近では同様な応答が得られる。
【0052】
図5は、図3に示す検知積層膜200の反射特性についてのシミュレーション結果であり、水素ガス検知層が水素と接触したときの、水素濃度に応じた特性の変化を示す。図5A図4に示す反射率の波長依存性について、水素ガス検知層と接触する水素の濃度を変化させたときの特性変化のシミュレーション結果である。図5Aの横軸は光源の波長、縦軸はp偏光およびs偏光の反射率であり、図4で説明したように、水素濃度0%のときには波長670nmでp偏光が共鳴条件となる。p偏光の反射率は水素濃度を高めていくと、共鳴条件が長波長側にシフトしつつ、共鳴条件近傍の反射率変化が緩やかになる。
【0053】
一方、s偏光の反射率は、このグラフの範囲内では水素濃度が高くなるにつれ、全体的にわずかに低下している。波長をp偏光が共鳴条件となる670nmに固定してみた場合には、p偏光の反射率は水素濃度の上昇に伴って増大する。一方のs偏光は、もともとの反射率が高く、水素濃度による変化はあるものの、縦軸が対数軸のこのグラフ上では変化はほとんどみられない。図5Aの縦軸は反射率であるが、実際に検出できるのは、反射光強度である。
【0054】
図5Aのような素子設計をすることでs偏光の反射率とp偏光の反射率の組合せによって、水素検知膜のさらされている雰囲気の水素濃度を決定することができる。図5Bは、図5Aの波長670nmにおけるデータを抽出したものである。横軸は、水素濃度を示し、縦軸は、対数軸であり、検知積層膜200によるp偏光及びs偏光の反射率を示す。実線がp偏光の水素濃度に対する反射率の変化を示し、破線がs偏光の水素濃度に対する反射率の変化を示す。
【0055】
図5Bに示すシミュレーション結果において、水素濃度を0~100%まで変えたとき、p偏光の反射率はオーダが3桁ほど変化した。一方、s偏光の反射率は、水素濃度を0~100%まで変えたときほとんど変化がなく、p偏光の変化に対して変化が少なかった。したがって、この構成例においては、s偏光の反射光強度を一定とみなせば、p偏光の反射光強度のみで水素濃度を検知することができる。しかし、この例においても、p偏光とs偏光それぞれの反射光強度を測定し、それらの比をとることで、光源の光強度変動の影響とs偏光の微妙な変化の影響を排除することができ、高精度に水素ガスを検知することができる。また、積層膜の各層の材料及び厚さを調整することで、p偏光及びs偏光それぞれの反射率を調整することができる。
【0056】
図6は、図5Bに示すp偏光とs偏光のシミュレーション結果から算出された、反射p偏光の強度Ipと反射s偏光の強度Isの比(Ip/Is)であり、単層膜と、積層膜を比較して示す。横軸は水素濃度を示し、縦軸は、対数軸であり、反射p偏光の強度Ipと反射s偏光の強度Isの比(Ip/Is)を示す。また、縦軸は、水素濃度が0%のときに強度比(Ip/Is)が1となるよう規格化されている。破線は、ハーフミラー層と光干渉層を有していないPd単層膜(100nm)の、水素濃度に対する強度比(Ip/Is)の変化を示す。実線は、図3に示す積層膜200の、水素濃度に対する強度比(Ip/Is)の変化を示す。
【0057】
図6の計算結果は、光の干渉効果がある積層膜200が、水素濃度に変化に対して敏感に応答していることを示している。Pd単層膜(100nm)においても、水素との接触で反射特性の変化はあるものの、光の干渉効果がある積層膜200と比べると、ごくわずかである。
【0058】
〔実施形態2〕
図7は、本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。以下において、図1に示す構成例との相違点を主に説明する。水素ガスセンサシステムは、図1の構成例と同様に、斜入射光学系を基本とし、水素ガスを検知する積層膜140が形成されていない透明基板141の裏面から、プリズム146を介して斜め方向から光を照射することで、水素ガスを検知する。検知素子14は、図1に示す構成例と同様の構造を有する。
【0059】
入射光学系は、光源11及び偏光子12を含む。光源11と、検知素子14との間の入射光31の光路上に、偏光子12が配置されている。偏光子12は、特定方向の直線偏光を通過させ、他の方向の偏光を減衰させる。偏光子12は、水素濃度の測定範囲における反射p偏光と反射s偏光の強度の違いが、所定範囲内となるように、予め調整されていてよい。例えば、水素ガスが存在しない場合の、反射p偏光と反射s偏光の強度が略同一となるように、偏光子12の回転角を調整してよい。このように、偏光子12の回転角を適切に調整することで、精度を向上できる。なお、偏光子12は省略されてもよい。
【0060】
さらに、検知素子14と光検出装置との間の光路上に、偏光分離器15が配置されている。図7において、図示の容易のため、図1に示す光検出装置17を示す枠は省略されているが、図1の構成例と同様に、光検出装置17は、第1光検出器171及び第2光検出器172を含む。偏光分離器15は、検知素子14で反射された光から、p偏光32p及びs偏光32sを分離する。偏光分離器15からのp偏光32p及びs偏光32sは、異なる光路を進む。
【0061】
光源11から偏光子12を通過した直線偏光31は、偏光角に対応したp偏光成分、s偏光成分の強度比率をもって、検知素子14の積層膜140に、プリズム146を介して入射する。上述のように、直線偏光31は、積層膜140の法線方向に対し傾いた角度で積層膜140に入射する。実施形態1と異なり、入射光は、p偏光とs偏光に分離されておらず、直線偏光31は、一点で入射する。このため、積層膜140の面内での特性の違いの影響を避けることができる。
【0062】
実施形態1で説明したように、入射した光におけるp偏光(成分)及びs偏光(成分)は、それぞれ、積層膜140で異なった干渉条件で干渉する。また、水素ガス30によって水素ガス検知層144の光学特性が変化するため、水素ガス検知層144でのp偏光及びs偏光の反射率と、積層膜140の干渉条件が変化する。結果として、p偏光及びs偏光の積層膜140による反射光強度の比が大きく変化する。
【0063】
積層膜140による反射光は、偏光分離器15に入射して、p偏光32p及びs偏光32sに分割される。これらは異なる光路を進む。第1光検出器171はp偏光32pを受光して、その強度を検知制御装置40に出力する。第2光検出器172はs偏光32sを受光して、その強度を検知制御装置40に出力する。このように、検知素子14による反射光をp偏光とs偏光に分割し、それぞれの光強度を検出し、比をとることで光源の光強度の変動が排除可能である。
【0064】
図8は、本明細書の一実施形態にかかる検知素子250の構成例を模式的に示す断面図である。検知素子250は、ガラスで形成された透明基板251上に、水素ガスを検知する積層膜260を含む。積層膜260は、ハーフミラー層253、光干渉層254、及び水素ガス検知層255で構成されている。ハーフミラー層253、光干渉層254、及び水素ガス検知層255は、透明基板251上に、この順で積層されている。
【0065】
ハーフミラー層253は、厚さが14nmのAg薄膜で構成されている。光干渉層254は、厚さ30nmのZnO薄膜及び厚さ143nmのAl23薄膜からなる積層膜で構成されている。水素ガス検知層255は、厚さ100nmのPdCuSi合金薄膜で構成されている。
【0066】
積層膜260と透明基板251との間には、シード層252が存在する。シード層252は、厚さ30nmのZnO薄膜で構成されている。シード層252は、積層膜260と透明基板251の間の密着力を維持する。
【0067】
積層膜260が形成されていない透明基板251の裏面には、プリズム256が光学結合オイル257によって、透明基板251に光学結合されている。プリズム256は、透明基板251裏面での光の反射を抑制することができる。光学結合オイル257は、透明基板251とプリズム256との界面での光の反射を低減する。
【0068】
図9は、図7及び図8に示す構成例における測定結果のグラフを示す。横軸は時間を示し、縦軸は、反射p偏光の強度Ipと反射s偏光の強度Isの比(Ip/Is)を示す。測定において、水素濃度が0%のときに反射p偏光と反射s偏光の光強度が等しくなるように、入射光の偏光角(偏光子12の回転角度)が設定されていた。
【0069】
実線は、水素ガスの導入及び遮断に応じたp偏光とs偏光の強度比(Ip/Is)の変化を示す。測定は、濃度100%の水素を導入し、その後、水素を遮断した。水素導入に応答して、反射光強度比(Ip/Is)が大きく上昇した。水素を遮断すると、反射光強度比(Ip/Is)は徐々に低下した。このように、本実施形態の構成によっても、水素濃度を高感度に検知することが可能であった。
【0070】
図10は、本明細書の一実施形態にかかる検知素子270の構成例を模式的に示す断面図である。検知素子270は、ガラスで形成されたプリズム276上に、水素ガスを検知する積層膜280を含む。積層膜280は、ハーフミラー層273、光干渉層274、及び水素ガス検知層275で構成されている。ハーフミラー層273、光干渉層274、及び水素ガス検知層275は、プリズム276上に、この順で積層されている。
【0071】
ハーフミラー層273は、厚さが6.4nmのTa薄膜で構成されている。光干渉層274は、厚さ68nmのSi34薄膜で構成されている。水素ガス検知層275は、厚さ100nmのPdCuSi合金薄膜で構成されている。
【0072】
積層膜280とプリズム276との間には、シード層272が存在する。シード層272は、厚さ5nmのSi34薄膜で構成されている。シード層272は、積層膜280とプリズム276の間の密着力を維持する。
【0073】
水素ガス検知層275を覆うように、触媒層278が存在する。触媒層278は、厚さが5nmのPt(白金)薄膜で構成され、プリズム276と反対側において、積層膜280上に形成されている。触媒層278は、水素ガス検知層275と接触している。触媒層278は水素ガスに接触し、水素分子を水素原子に分解する。水素ガス検知層275は、触媒層278により生成された水素原子の濃度に応じて光学特性を変化させる。
【0074】
高濃度水素に常時さらされる用途を考えた場合、水素ガス検知層以外の層と、水素との不要な反応を抑制することで、検知素子の長期安定性を向上させることができる。光干渉層の材料候補となる透明酸化物の中には、水素との反応で生成される水素化合物(水酸化物)の方がより安定である材料も存在する。光干渉層の材料選定に当たって、光干渉層を構成する元素の水素化合物よりも光干渉層材料が安定であるという考え方に基づけば、光干渉層と水素との反応が抑制され、検知素子の長期安定性を向上させることができる。その一例がシリコン窒化物である。本実施形態では、図10を参照して説明したように、シリコン窒化物を光干渉層として用いる。
【0075】
光干渉層をシリコン窒化物とした場合、ハーフミラー材料としていくつかの金属材料を試したが、光干渉層とハーフミラー層の界面の密着力が弱い場合があった。界面の密着力が弱いと、長期間の使用で界面が安定に維持されず、測定結果の再現性及び信頼性が低下する。シリコン窒化物との組み合わせを検討する中で、タンタル(Ta)をハーフミラーに用いると界面の密着力が十分に高いことがわかった。本実施形態では、シリコン窒化物との組み合わせで、検知素子を安定化させるために、ハーフミラー材料にTa薄膜を用いる。
【0076】
図11は、図7及び図10に示す構成例における測定結果のグラフを示す。横軸は時間を示し、縦軸は、反射p偏光の強度Ipと反射s偏光の強度Isの比(Ip/Is)を示す。測定において、水素濃度が0%のときに反射p偏光と反射s偏光の光強度が等しくなるように、入射光の偏光角(偏光子12の回転角度)が設定されていた。
【0077】
実線は、水素ガスの導入及び遮断に応じたp偏光とs偏光の強度比(Ip/Is)の変化を示す。測定は、濃度100%の水素を導入し、その後、水素を遮断した。水素導入に応答して、反射光強度比(Ip/Is)が大きく上昇した。水素を遮断すると、反射光強度比(Ip/Is)は徐々に低下した。このように、本実施形態の構成によっても、水素濃度を高感度に検知することが可能であった。
【0078】
〔実施形態3〕
図12Aは、本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。以下において、図1に示す構成例との相違点を主に説明する。水素ガスセンサシステムは、図1の構成例と同様に、斜入射光学系を基本とし、水素ガスを検知する積層膜140が形成されていない透明基板141の裏面から、プリズム146を介して斜め方向から光を照射することで、水素ガスを検知する。検知素子14は、図1に示す構成例と同様の構造を有する。
【0079】
図12Aに示す水素ガスセンサシステムは、入射側に偏光変調器122を含む。偏光変調器122を時分割制御することで、入射光の偏光状態を切り替える。これにより、1台の光検出器で反射p偏光及び反射s偏光を検出することができる。
【0080】
図12Aに示すように、入射光学系は、光源11、偏光子121、及び偏光変調器122を含む。光源11と、検知素子14との間の入射光の光路上に、偏光子121が配置されている。偏光子121は、特定方向の直線偏光を通過させ、他の方向の偏光を減衰させる。
【0081】
さらに、偏光子121と検知素子14との間の入射光の光路上に、偏光変調器122が配置されている。偏光変調器122は、偏光子121からの直線偏光の偏光方向を切り替える。偏光変調器122は、例えば液晶を利用することができる。偏光変調器122を制御することで、偏光子121からの直線偏光を、p偏光又はs偏光に相当する直交した二つの直線偏光に変調することができる。
【0082】
検知素子14と光検出装置との間の光路上に、偏光子123が配置されている。偏光子123は、水素濃度の測定範囲における反射p偏光と反射s偏光の強度の違いが、所定範囲内となるように、予め調整されていてよい。例えば、水素ガスが存在しない場合の、反射p偏光と反射s偏光の強度が略同一となるように、偏光子123の回転角を調整してよい。このように、偏光子123の回転角を適切に調整することで、精度を向上できる。なお、偏光子123は省略されてもよい。
【0083】
光検出装置は、一つの光検出器173で構成されている。つまり、一つの光検出器173が、反射p偏光及び反射s偏光を時分割で受光し、それらの強度を検知制御装置40に送信する。
【0084】
光源11から偏光子121を通過した直線偏光は、偏光変調器122に入射する。検知制御装置40は、偏光変調器122を制御することによって、偏光子121からの直線偏光を、s偏光31s又はp偏光31pに変調する。例えば、第1の期間においてp偏光31pが出力され、その後の第2の期間においてs偏光31sが出力される。
【0085】
p偏光31p及びs偏光31sは、検知素子14の積層膜140に、プリズム146を介して入射する。p偏光31p及びs偏光31sは、積層膜140の法線方向に対し傾いた角度で積層膜140に入射する。p偏光31p又はs偏光31sは、積層膜140の一点で入射する。このため、積層膜140の面内での特性の違いの影響を避けることができる。
【0086】
実施形態1で説明したように、p偏光31p及びs偏光31sは、それぞれ、積層膜140で干渉する。また、水素ガス30によって水素ガス検知層144の光学特性が変化するため、水素ガス検知層144でのp偏光31p及びs偏光31sの反射率と、積層膜140の干渉条件が変化する。結果として、p偏光31p及びs偏光31sの積層膜140による反射光強度の比が大きく変化する。
【0087】
積層膜140による反射p偏光及び反射s偏光は、それぞれ、異なる期間において偏光子123に入射する。偏光子123を通過した所定の角度の直線偏光が、光検出器173に入射する。光検出器173は、異なる期間において、反射p偏光及び反射s偏光をそれぞれ受光して、それらの強度を検知制御装置40に出力する。このように、異なる期間においてp偏光及びs偏光の検出を行うことで、反射p偏光と反射s偏光の反射光強度を単一の光検出器で検出することができ、水素濃度の検知が可能となる。
【0088】
図12Aでは、偏光変調器122が入射側に配置された構成について説明したが、図12Bに示すように偏光変調器122は検出側に配置されてもよい。つまり、検知素子14と偏光子123との間の反射光の光路上に配置されてもよい。この場合、偏光子121の回転角はp偏光、s偏光の強度の比率が一定となるように設定され、検知素子14からはp偏光とs偏光の両方の成分を含む光が反射される。
【0089】
偏光変調器122は時分割制御により反射光の偏光軸を90度回転させる。このとき、偏光子123がp偏光とs偏光のいずれか一方を通過できるように設定しておくことで、第1の期間においては一方の偏光成分が通過し、その後の第2の期間において90度回転した他方の偏光成分が通過する。これにより、偏光変調器122を入射側に配置した場合と同様の機能を持たせることができる。
【0090】
図13は、本明細書の一実施形態にかかる検知素子300の構成例を模式的に示す断面図である。検知素子300は、ガラスで形成された透明基板301上に、水素ガスを検知する積層膜310を含む。積層膜310は、ハーフミラー層303、光干渉層304、及び水素ガス検知層305で構成されている。ハーフミラー層303、光干渉層304、及び水素ガス検知層305は、透明基板301上に、この順で積層されている。
【0091】
ハーフミラー層303は、厚さが14nmのAg薄膜で構成されている。光干渉層304は、厚さ120nmのAZO(アルミドープ酸化亜鉛)薄膜で構成されている。水素ガス検知層305は、厚さ100nmのPdAg合金薄膜で構成されている。
【0092】
積層膜310と透明基板301との間には、シード層302が存在する。シード層302は、厚さ5nmのAl23薄膜で構成されている。シード層302は、積層膜310と透明基板301の間の密着力を維持する。
【0093】
水素ガス検知層305を覆うように、触媒層308が存在する。触媒層308は、厚さが5nmのPt(白金)薄膜で構成され、透明基板301と反対側において、積層膜310上に形成されている。触媒層308は、水素ガス検知層305と接触している。触媒層308は水素ガスに接触し、水素分子を水素原子に分解する。水素ガス検知層305は、触媒層308により生成された水素原子の濃度に応じて光学特性を変化させる。
【0094】
積層膜310が形成されていない透明基板301の裏面には、プリズム306が光学結合オイル307によって、透明基板301に光学結合されている。プリズム306は、透明基板301裏面での光の反射を抑制することができる。光学結合オイル307は、透明基板301とプリズム306との界面での光の反射を低減する。
【0095】
偏光変調器122は、2枚のガラス板に液晶が挟まれた構成である。両方のガラス板の液晶に対向する面には、ITO(インジウム・スズ酸化物)から成る透明電極が被覆されている。本実施形態による偏光変調素子において、液晶の厚さはおよそ3.5μmとしたが、後述の液晶の光学異方性との関係で最適な液晶厚みを選ぶことができる。
【0096】
実施例で用いた偏光変調素子では、光学異方性が約0.2の液晶を用いて、液晶厚3.5μmとした。これにより最大で0.7μmの位相変化を得ることができるため、光源波長が0.63μmでは、10V以下の印加電圧で半波長0.315μmの位相差を得ることができる。これらのガラス基板の液晶に対向する面にはそれぞれポリイミド膜が被覆されており、さらにその表面は液晶分子が一方向に均一に配列するように一方向にラビングされている。
【0097】
以上のように構成される液晶を用いた偏光変調器は、直交する偏光を通過させるとき、2つの偏光の間に位相差を与え、印加電圧によってその位相差を制御できる。即ち外部印加電圧によって位相変化量が変化する光学位相板として働くため、偏光子121から入射した直線偏光を、楕円偏光、円偏光、直線偏光などに変換することができる。本実施形態では、直線偏光の偏光軸を切替えるために用いる。
【0098】
例えば偏光変調器の軸に対して入射直線偏光の偏光軸をπ/4として入射したとき、第1の期間において位相差が光源の波長の整数倍となる電圧を印加すると位相差はゼロとなるため、出力光は入射光と同じ偏光軸を持った直線偏光である。また第2の期間において波長の整数倍に加えて半波長の位相差となる電圧を印加すると、半波長板と同様の効果を発揮するため、入射直線偏光に対して偏光軸がπ/2回転した直線偏光が出力される。本実施例では偏光変調素子を用いて偏光方向を切り替えているが、90度捩じれネマティック素子を用いても同様の効果を得ることができる。
【0099】
図14は、図12A及び図13に示す構成例における測定結果のグラフを示す。横軸は時間を示し、縦軸は、反射p偏光の強度Ipと反射s偏光の強度Isの比(Ip/Is)を示す。測定において、水素濃度が0%のときに反射p偏光と反射s偏光の光強度が等しくなるように、偏光子123の回転角度が設定されていた。
【0100】
実線は、水素ガスの導入及び遮断に応じたp偏光とs偏光の強度比(Ip/Is)の変化を示す。測定は、水素濃度4%の水素-窒素混合ガスを導入し、その後、混合ガスを遮断した。水素導入に応答して、反射光強度比(Ip/Is)が大きく上昇した。水素を遮断すると、反射光強度比(Ip/Is)は徐々に低下した。このように、本実施形態の構成によっても、水素濃度を高感度に検知することが可能であった。
【0101】
〔実施形態4〕
図15は本明細書の一実施形態にかかる水素ガスセンサシステムの構成例を模式的に示す。以下において、図1に示す構成例との相違点を主に説明する。水素ガスセンサシステムは、図1の構成例と同様に、斜入射光学系を基本とする。図1の構成例と異なり、図15に示す構成例は、水素ガス30を検知する積層膜側に、斜め方向から光を照射することで、水素ガス30を検知する。入射光学系は光源11を含む。
【0102】
検知素子54は、基板541上の積層膜540を含む。積層膜540は、金属反射層542、光干渉層543及び水素ガス検知層544を含み、この順で基板541上に積層されている。金属反射層542は、水素ガス検知のための光を全反射する。水素ガス検知層544はハーフミラーであって、水素ガス検知のための光の一部を通過させ、一部を反射する。
【0103】
光源11からの光は、検知素子54の積層膜540に、水素ガス検知層544側から入射する。上述のように、光は、積層膜540の法線方向に対し傾いた角度で積層膜540に入射する。入射光は、p偏光とs偏光に分離されておらず、光は、一点で入射する。このため、積層膜540の面内での特性の違いの影響を避けることができる。
【0104】
実施形態1で説明したように、入射した光におけるp偏光(成分)及びs偏光(成分)は、それぞれ、積層膜540で干渉する。また、水素ガスによって水素ガス検知層544の光学特性が変化するため、水素ガス検知層544でのp偏光及びs偏光の反射率と、積層膜540の干渉条件が変化する。結果として、p偏光及びs偏光の積層膜540による反射光強度の比が大きく変化する。
【0105】
検知素子54と光検出装置17との間の光路上に、偏光分離器55が配置されている。光検出装置17は、第1光検出器171及び第2光検出器172を含む。偏光分離器55は、検知素子54で反射された光を、p偏光32p及びs偏光32sに分離する。偏光分離器55からのp偏光32p及びs偏光32sは、異なる光路を進む。
【0106】
第1光検出器171はp偏光32pを受光して、その強度を検知制御装置40に出力する。第2光検出器172はs偏光32sを受光して、その強度を検知制御装置40に出力する。このように、検知素子54による反射光をp偏光とs偏光に分割し、それぞれの反射光強度を検出し、比を取ることで光源の出射光強度の変動を排除して水素濃度を検出できる。
【0107】
図16は、本明細書の一実施形態にかかる検知素子54の構成例を模式的に示す断面図である。検知素子54は、ガラスで形成された透明基板541上に、水素ガスを検知する積層膜540を含む。透明基板541に代えて不透明の基板が使用されてよい。積層膜540は、金属反射層542、光干渉層543、及び水素ガス検知層544で構成されている。金属反射層542、光干渉層543、及び水素ガス検知層544は、透明基板541上に、この順で積層されている。なお、本実施形態においては、積層膜540が形成されていない透明基板541の裏面に、プリズム及び反射防止膜を必要としない。
【0108】
金属反射層542は、厚さが100nmのAu薄膜で構成されている。光干渉層543は、厚さ140nmのSiO2薄膜で構成されている。水素ガス検知層544は、厚さ8.1nmのPd薄膜で構成されている。水素ガス検知層544は、ハーフミラー層としても機能する。
【0109】
図17は、図16に示す積層膜540の光学特性についてのシミュレーション結果を示す。横軸は、水素濃度を示し、縦軸は、対数軸であり、積層膜540による反射p偏光の強度Ipと反射s偏光の強度Isの比(Ip/Is)を示す。また、縦軸は、水素濃度が0%のときに強度比(Ip/Is)が1となるよう規格化されている。破線は、積層構造を有していないPd単層膜(100nm)の、水素濃度に対する強度比(Ip/Is)の変化を示す。実線は、図16に示す積層膜540の、水素濃度に対する強度比(Ip/Is)の変化を示す。入射光の波長λは661nmであった。図17の計算結果は、光の干渉効果がある積層膜540が、水素濃度の変化に対して敏感に応答していることを示している。
【0110】
上記実施形態は、透明基板としてガラス基板を用いているが、これに限定されるものではない。実施形態1、2及び3では、計測に用いる光に対して透明であれば他の材料の基板を用いることも可能であり、例えば、赤外領域の光源を用いる場合には、SiやGaAsといった半導体基板を使用することも可能である。
【0111】
光源から検知素子に光を照射、および、検知素子からの反射光を光検出器に導く方法として、光ファイバを用いることも可能である。この場合、光ファイバの先端に検知素子が一体化された構成とすることも可能である。
【0112】
光源から検知素子に照射する光の強度を周期的に変化させて、光検出装置で検出する光学信号に変調を加え、同期検出又はフーリエ解析を行ってもよい。これにより、光学信号のノイズ低減による検知感度をさらに向上できる。
【0113】
上記実施形態では、光学式化学センサの一例として光学式水素ガスセンサを挙げて説明したが、本発明の光学式化学センサは、光学式水素ガスセンサに限るものではなく、例えば、pHを検知する光学式イオンセンサ、ガスを検知する光学式ガスセンサ、DNA、酵素を検知する光学式バイオセンサにも適用可能である。このように、pHを検知する光学式イオンセンサ、ガスを検知する光学式ガスセンサ、DNA、酵素を検知する光学式バイオセンサに適用しても上記実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0114】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0115】
11 光源
13 偏光分離素子
14、54、250、270、300 検知素子
15、55 偏光分離器
17 光検出装置
146、256、276、306 プリズム
30 水素ガス
31p、32p p偏光
31s、32s s偏光
40 検知制御装置
122 偏光変調器
140、200、260、280、310、540 積層膜
142、202、253、273、303 ハーフミラー層
143、203、254、274、304、543 光干渉層
144、204、255、275、305、544 水素ガス検知層
147 反射防止膜
171、172、173 光検出器
542 金属反射層
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17