(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113134
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】高電圧に耐えるための熱保護デバイス
(51)【国際特許分類】
H02H 5/04 20060101AFI20230807BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H02H5/04 120
H01C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023013727
(22)【出願日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】63/305,901
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊和
(72)【発明者】
【氏名】水上 陽平
(72)【発明者】
【氏名】ジアンフア チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー ヨーラー
【テーマコード(参考)】
5E034
【Fターム(参考)】
5E034AA08
5E034AB01
5E034AC19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気及び電子コンポーネント及び回路を保護するために、熱保護デバイス、過電圧保護デバイス並びに過電流保護デバイスを含む熱保護回路を提供する。
【解決手段】熱保護回路100は、PTC回路108に配置されており、PTC回路の入力経路103に結合された第1の入力側を有し、PTC回路の出力経路105に結合された第1の出力側を有する第1のPTCデバイス102、PTC回路に配置されており、PTC回路の入力経路に結合された第2の入力側116を有し、PTC回路の出力経路に結合された第2の出力側118を有する第2のPTCデバイス104及びPTC回路の出力経路を経由して第1のPTCデバイスの第1の出力側及び第2のPTCデバイスの第2の出力側に結合されている第3の入力側120を有する熱リンク106を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTC回路に配置されており、前記PTC回路の入力経路に結合された第1の入力側を有し、前記PTC回路の出力経路に結合された第1の出力側を有する第1のPTCデバイス;
前記PTC回路に配置されており、前記PTC回路の前記入力経路に結合された第2の入力側を有し、前記PTC回路の前記出力経路に結合された第2の出力側を有する第2のPTCデバイス;及び
前記PTC回路の前記出力経路を経由して、前記第1のPTCデバイスの前記第1の出力側及び前記第2のPTCデバイスの前記第2の出力側に結合されている第3の入力側を有する熱リンク
を備える熱保護回路。
【請求項2】
前記第1のPTCデバイスが、第1のトリップ温度を有し、前記第2のPTCデバイスが、前記第1のトリップ温度よりも高い第2のトリップ温度を有する、請求項1に記載の熱保護回路。
【請求項3】
前記第1のPTCデバイスが、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン‐酢酸ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリエステル、又はそれらの組合せを有する、請求項2に記載の熱保護回路。
【請求項4】
前記第2のPTCデバイスが、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン‐酢酸ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、又はそれらの組合せを有する、請求項2に記載の熱保護回路。
【請求項5】
前記第2のPTCデバイスが、前記熱リンクと熱的近傍にある、請求項1に記載の熱保護回路。
【請求項6】
前記第1のPTCデバイスが、第1のトリップ温度PTCT1を有し、前記第2のPTCデバイスが、第2のトリップ温度PTCT2を有し、前記熱リンクが、溶融温度TMを有し、PTCT1<TM<PTCT2である、請求項1に記載の熱保護回路。
【請求項7】
前記第1のPTCデバイスの第1の電気抵抗率が、前記第2のPTCデバイスの第2の電気抵抗率よりも小さい、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱保護回路。
【請求項8】
保護回路を介して電流を伝導する段階、前記保護回路は、PTC回路内で互いに電気的に並列に配置された第1のPTCデバイス及び第2のPTCデバイスを有し、前記PTC回路に電気的に直列に配置された熱リンクをさらに有する;及び
異常条件に応答して前記第1のPTCデバイスを正常状態からトリップされた状態に変更する段階、ここで前記第2のPTCデバイスは、前記第1のPTCデバイスが前記正常状態から前記トリップされた状態に変更された後に正常導通状態からトリップされた状態に移行し、前記第2のPTCデバイスは、前記熱リンクを溶融させる、
を備える熱保護を提供する方法。
【請求項9】
前記第1のPTCデバイスが、前記PTC回路の入力経路に結合された第1の入力側を有し、前記PTC回路の出力経路に結合された第1の出力側を有し;
第2のPTCデバイスが、前記PTC回路の前記入力経路に結合された第2の入力側を有し、前記PTC回路の前記出力経路に結合された第2の出力側を有し;
前記熱リンクが、前記PTC回路の前記出力経路を経由して前記第1のPTCデバイスの前記第1の出力側及び前記第2のPTCデバイスの前記第2の出力側に結合された第3の入力側を有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のPTCデバイスが、第1のトリップ温度を有し、前記第2のPTCデバイスが、前記第1のトリップ温度よりも高い第2のトリップ温度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のPTCデバイスが、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン‐酢酸ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリエステル、又はそれらの組合せを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のPTCデバイスが、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン‐酢酸ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、又はそれらの組合せを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のPTCデバイスが、前記熱リンクと熱的近傍にある、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のPTCデバイスが、第1のトリップ温度PTCT1を有し、前記第2のPTCデバイスが、第2のトリップ温度PTCT2を有し、前記熱リンクが、溶融温度TMを有し、PTCT1<TM<PTCT2である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のPTCデバイスの第1の電気抵抗率が、前記第2のPTCデバイスの第2の電気抵抗率よりも小さい、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1の電流経路に沿って配置された熱リンク、前記第1の電流経路は外部コンポーネントに結合されている;及び
前記熱リンクの熱的近傍に配設されたPPTCヒーター、前記PPTCヒーターは前記第1の電流経路とは別の第2の電流経路に沿って配置されたPPTCデバイスを有する、
を備える熱保護回路。
【請求項17】
前記PPTCヒーター及び前記熱リンクの間に配設された電気絶縁基板をさらに備え、前記PPTCヒーターが前記電気絶縁基板を経由して前記熱リンクに熱的に結合されている、請求項16に記載の熱保護回路。
【請求項18】
第1の電気的な導電性パッド及び第2の電気的な導電性パッドをさらに備え、前記第1の電気的な導電性パッド及び前記第2の電気的な導電性パッドの各々は、前記PPTCヒーターに隣接している前記電気絶縁基板の第2の側面の反対側にある前記電気絶縁基板の第1の側面に配設されており、前記熱リンクが前記第1の電気的な導電性パッド及び前記第2の電気的な導電性パッドの間に電気的な導電経路を形成する、請求項17に記載の熱保護回路。
【請求項19】
前記電気絶縁基板がセラミックを有する、請求項17に記載の熱保護回路。
【請求項20】
前記熱リンクがハンダを有する、請求項16から19のいずれか一項に記載の熱保護回路。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年2月2日に出願された米国仮特許出願第63/305,901、発明の名称「高電圧に耐えるための熱保護デバイス」に対する優先権の利益を主張し、参照によってその出願の全体を本明細書に引用する。
【技術分野】
【0002】
実施形態は、抵抗ヒーターの分野に関し、より詳細には、PPTC材料に基づくヒーターに関する。
[関連技術の論考]
【0003】
自動車及び他の装置は、広い温度範囲にわたって動作するように設計されたコンポーネントを含み得る。広い温度範囲にわたって動作し得るコンポーネントの例には、自動車の中の様々なコンポーネントを制御するために用いられる電子回路、並びに自動車に電力供給するために用いられるバッテリがある。
【0004】
様々な電気及び電子コンポーネント及び回路を保護するために、熱保護デバイス、過電圧保護デバイス、並びに過電流保護デバイスを含む、様々な既知のデバイスが配備され得る。
【0005】
この考慮事項及び他の考慮事項に関して、本開示は提供される。
【発明の概要】
【0006】
1つの実施形態において、熱保護回路は、PTC回路に配置されており、前記PTC回路の入力経路に結合された第1の入力側を有し、前記PTC回路の出力経路に結合された第1の出力側を有する第1のPTCデバイス;前記PTC回路に配置されており、前記PTC回路の前記入力経路に結合された第2の入力側を有し、前記PTC回路の前記出力経路に結合された第2の出力側を有する第2のPTCデバイス;及び前記PTC回路の前記出力経路を経由して前記第1のPTCデバイスの前記第1の出力側及び前記第2のPTCデバイスの前記第2の出力側に結合されている第3の入力側を有する熱リンクを含み得る。
【0007】
別の実施形態において、熱保護を提供する方法は、保護回路を介して電流を伝導する段階、前記保護回路は、PTC回路内で互いに電気的に並列に配置された第1のPTCデバイス及び第2のPTCデバイスを有し、前記PTC回路に電気的に直列に配置された熱リンクをさらに有する;及び異常条件に応答して前記第1のPTCデバイスを正常状態からトリップされた状態に変更する段階、前記第2のPTCデバイスは、前記第1のPTCデバイスのトリップ後に正常導通状態からトリップされた状態に移行し、前記第2のPTCデバイスは前記熱リンクを溶融させる、を含み得る。
【0008】
さらなる実施形態において、熱保護回路は、第1の電流経路に沿って配置された熱リンク、前記第1の電流経路は外部コンポーネントに結合されている;及び前記熱リンクの熱的近傍に配設されたPPTCヒーター、前記PPTCヒーターは前記第1の電流経路とは別の第2の電流経路に沿って配置されたPPTCデバイスを有する、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による熱保護回路を示す図である。
【0010】
【
図1A】正常条件中の
図1の熱保護回路の動作を示す図である。
【0011】
【
図1B】異常イベント中の
図1Aの熱保護回路の動作を集合的に示す図である。
【
図1C】異常イベント中の
図1Aの熱保護回路の動作を集合的に示す図である。
【0012】
【
図2】本開示の実施形態による第1のPPTCデバイス及び第2のPPTCデバイスの、温度の関数としての抵抗データの一例を示す図である。
【0013】
【
図3】本開示の実施形態に従って配置されたPTC回路の例示的な温度及び電流挙動を示す複合グラフである。
【0014】
【
図4】本開示の実施形態による熱保護回路を示す図である。
【0015】
【
図5A】本開示の実施形態による熱保護回路を示す上面図である。
【0016】
【
図5B】本開示の実施形態による
図5Aの熱保護回路を示す断面図である。
【0017】
【
図6】本開示のさらなる実施形態による別の熱保護回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、以下では、例示的な実施形態が示される添付図面を参照しながら、本実施形態についてより十分に説明する。これらの実施形態は、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全なものになり、当該実施形態の範囲が当業者に十分に伝わるように提供される。図面では、全体を通じて同様の番号が同様の要素を指す。
【0019】
以下の説明及び/又は特許請求の範囲では、「上(on)」、「上にある(overlying)」、「上に配置され(disposed on)」、及び「上方(over)」という用語が、以下の説明及び特許請求の範囲で使用され得る。「上」、「上にある」、「上に配置され」、及び「上方」は、2つ又はそれより多くの要素が互いに物理的に直接接触していることを示すために使用され得る。また、「上」、「上にある」、「上に配置され」、及び「上方」という用語は、2つ又はそれより多くの要素が互いに直接接触していないことを意味し得る。例えば、「上方」は、1つの要素が別の要素の上にあるが互いに接触していないことを意味してよく、これら2つの要素の間に別の1つの要素又は複数の要素を有してよい。更に、「及び/又は」という用語は、「及び」を意味してよく、「又は」を意味してよく、「排中的な「又は」」を意味してよく、「一方」を意味してよく、「全てではないが幾つか」を意味してよく、「どちらでもない」を意味してよく、及び/又は「両方」を意味してよいが、特許請求される主題の範囲は、この点において限定されない。
【0020】
様々な実施形態において、PTC回路及び熱リンク又は熱ヒューズの組合せに基づいて、新規性がある熱保護回路が提供される。熱保護回路は、様々な非限定的な実施形態に従って、任意の適切な対象物、コンポーネント、回路、又は上記の組合せを保護するために用いられ得る。下記詳細のように、様々な実施形態において、PTC回路は、PTC回路の入力経路に結合された第1の入力側を有し、PTC回路の出力経路に結合された第1の出力側を有する第1のPTCデバイスを含み得る。PTC回路はさらに、PTC回路の入力経路に結合された第2の入力側を有し、PTC回路の出力経路に結合された第2の出力側を有する第2のPTCデバイスを含み得る。熱保護回路の熱リンクは、PTC回路の出力経路を経由して第1のPTCデバイスの第1の出力側及び第2のPTCデバイスの第2の出力側に結合された第3の入力側を有し得る。下記説明のように、回路アーキテクチャは、異常イベントの場合に有利な保護を提供する。
【0021】
図1は、本開示の実施形態による熱保護回路100を示している。
図1Aは、正常条件中の
図1の熱保護回路100の動作を示している。
図1B及び
図1Cは、異常イベント中の
図1Aの熱保護回路100の動作を集合的に示している。
図1に示すように、熱保護回路100は、PTC回路108に配置されており、PTC回路108の入力経路103に結合された第1の入力側112を有し、PTC回路108の出力経路105に結合された第1の出力側114を有する第1のPTCデバイス102を含む。熱保護回路100はさらに、PTC回路108の入力経路103に結合された第2の入力側116を有し、PTC回路108の出力経路105に結合された第2の出力側118を有する第2のPTCデバイス104を含む。熱保護回路はまた、PTC回路108の出力経路105を経由して第1のPTCデバイス102の第1の出力側114及び第2のPTCデバイス104の第2の出力側118に結合された第3の入力側120を有する本明細書では熱リンク106と称される熱ヒューズ又は同様の熱的な要素を含む。
【0022】
本開示の様々な実施形態によれば、用語PTCデバイスは、正温度係数(positive temperature coefficient:PTC)材料から形成されたデバイスを指し得、PTCデバイスは、しばしばトリップ温度と称される所与の温度において抵抗率の大きな上昇を見せることによって電流を限定するように作用するリセット可能なデバイスである。具体的な実施形態において、第1のPTCデバイス102及び第2のPTCデバイス104のうちの1又は複数は、ポリマーPTC(polymer positive temperature coefficient:PPTC)材料から形成され得る。適切なPTC材料又はPPTC材料は、1又は複数の適切なポリマー、並びにカーボン、金属粉末、グラフェン、又は他の既知の充填材料などの導電性充填剤形成されたマトリックス重合を含み得る。正常状態の抵抗率などの材料特性は、マトリックス重合を含むPTC材料全体に対する導電性充填剤の相対パーセントを調節することによって調整され得る。
【0023】
PTCデバイス用のマトリックス重合に関して、非限定的な実施形態によるPTCデバイス102に適切な材料には、半結晶性ポリマーがあり、例えばポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン‐酢酸ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、及びポリエステルである。いくつかの非限定的な実施形態によれば、第2のPTCデバイス104に適切な材料には、半結晶性ポリマーがあり、例えばポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン‐酢酸ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体である。
【0024】
当技術分野において既知のように、PTCデバイスのトリップ温度は、そのPTC材料のマトリックス重合の溶融温度又は軟化温度によって設定され得る。様々な実施形態において、第1のPTCデバイス102は、第1のトリップ温度を伴って手配され、第2のPTCデバイス104は、第1のトリップ温度よりも高い第2のトリップ温度を伴って手配される。加えて、第1のPTCデバイス102の第1の電気抵抗率は、第2のPTCデバイス104の第2の電気抵抗率よりも小さくなるように手配され得る。いくつかの非限定的な例において、第1のPTCデバイス102の電気抵抗率は、第2のPTCデバイス104の電気抵抗率の10分の1、50分の1、又は100分の1であってもよい。
【0025】
動作中に、熱保護回路100は、保護されるべきデバイス、回路、又は他のエンティティを表すコンポーネント150として示されている任意の適切なコンポーネントを保護するために結合され得る。保護の例には、コンポーネント150への電流を所与の動作電圧に対する許容限度に限定することがあり得る。
【0026】
ここで
図1Aに目を向けると、正常条件中の
図1の熱保護回路100の動作が示されている。このシナリオ下で、電流は、コンポーネント150へ熱保護回路100を介して通る。電流は、許容範囲内であり得、それに応じて、所定の経路に沿って熱保護回路100を介して通り得る。例えば、第1のPTCデバイス102の抵抗が、第2のPTCデバイス104の抵抗の例えば10分の1又は100分の1であると、PTC回路108を介して通る入射電流122の全てではない場合に大部分は、第1のPTCデバイス102を介して、及び電気的な導電性が高いコンポーネントであり得る熱リンク106を介して伝導され得る。そのため、熱リンク106は、熱保護回路100を介して通る入射電流122のレベルに影響され得ない。
【0027】
図1Bは、異常イベント中の
図1Aの熱保護回路100の動作を示している。異常イベントとは、第1のPTCデバイス102がトリップされるようなことであり得る。つまり、異常イベントが、第1のPTCデバイス102の温度に第1のPTCデバイス102のトリップ温度を超えさせ得る。異常イベントの一例は、PTCデバイスをトリップさせる過剰電流である。電流がPTCデバイスを介して流れると、生成された熱が、PTCデバイスの温度を上げる。過剰電流のイベントでは、第1のPTCデバイス102の内部温度がトリップ温度に到達し得、第1のPTCデバイス102の抵抗率が2桁、3桁、4桁などだけ上昇する。そのため、電流の流れは、第1のPTCデバイス102によってブロックされ得、異常イベント中の入射電流130は、バイパス電流130Bとして第2のPTCデバイス104へ導かれ、このデバイスは初めに、そこを介して電流130Cとして示されている過剰電流を伝導し得る。
【0028】
同時に、バイパス電流130Bが、第2のPTCデバイス104の温度上昇を生じ、第2のPTCデバイス104に第2のPTCデバイス104のトリップ温度を超えさせ得る。トリップされた状態で第2のPTCデバイス104の抵抗率が急に上昇することはまた、バイパス電流130Bがそこを介して通ることに応答して第2のPTCデバイス104によって生成される熱134を増加させる。
【0029】
ここで
図1Cに目を向けると、異常イベント中の
図1Bのインスタンス後のより後のインスタンスが示されており、第2のPTCデバイス104から生成された熱134が、熱リンク106を溶融して、電流がもはや熱保護回路100を介して流れない開回路条件を生じる。第2のPTCデバイス104を第1のPTCデバイス102に並列に設けることによって、第2のPTCデバイス104を含むPTC回路108の分岐が、ヒーター回路を効果的に形成し、第1のPTCデバイス102がトリガーされて電流を第2のPTCデバイス104に方向転換すると、第2のPTCデバイス104がトリガーされて熱リンク106を加熱する。
【0030】
様々な実施形態において、第2のPTCデバイス104が、熱リンク106の熱的近傍にあり得ることに留意されたい。このようにして、熱リンク106は、異常イベントに応答して急速に開放させられ得る。
【0031】
あらかじめ留意したように、第1のPTCデバイスのトリガー温度は、第2のPTCデバイスのトリガー温度よりも低くなり得る。
図2は、本開示の実施形態による第1のPPTCデバイス(PTC1)及び第2のPPTCデバイス(PTC2)の、温度の関数としての例示的な抵抗データを示している。この場合、第1のPPTCデバイスは、トリガー温度の限界が160度であり、第2のPPTCデバイスは、トリガー温度の限界が230℃である。このようにして、第1のPTCデバイスが過熱下でトリガーするセンサとして機能し得るとともに、第2のPTCデバイスが熱リンクを溶融するために用いられ、その結果、第1のPTCデバイスをトリガーする温度は、熱リンク溶融温度よりも低く設定されるべきであることに留意されたい。これに関連して、いくつかの非限定的な実施形態による熱リンクに適切な材料には、鉛フリーハンダ、又はその代わりに、鉛含有ハンダがある。より概して、コンポーネントの様々な温度間の関係は、PTC1のトリガー(トリップ)温度<熱リンクの溶融温度<PTC2のトリップ(トリップ状態)温度である。本開示の実施形態においては、PTC2が電流によってトリガーされるので、PTC2の実際のトリガー(トリップ)温度が、それほど重要ではないことに留意されたい。PTC2が過剰電流によってトリガーされてトリップ状態に入ると、トリップ状態中に生成された熱が、熱リンクを溶融するので、(低電流における)PTC2トリップ温度は、熱リンクの溶融点よりも高くなければならない。
【0032】
そうして、PTC1及びPTC2のトリップ温度の間の間隙を比較的広く設定するにより、PTC1及びPTC2のトリガー温度の間に収まるより広い範囲の融解温度を有する種々の熱リンクを使用することができる。
【0033】
図3は、本開示の実施形態に従って配置されたPTCベースの熱保護回路の例示的な温度及び電流挙動を示す複合グラフである。この例において、
図1の回路と同様の回路は、850VDC及び4A電流においてテストされる。回路全体が室温から2℃/分の速度で加熱されるとともに、電流及び温度が監視される。3つの温度曲線のうちの最も低いものは、時間の関数としての周囲温度を表し、他の2つの曲線は、第1のPTCデバイス(PTC1)及び第2のPTCデバイス(PTC2)の温度を表す。約2750秒の加熱時間で、周囲温度は105℃に到達する。この点において、第1のPTCデバイスがトリガー点に到達し、4A電流及び周囲温度の組合せが第1のPTCデバイスをトリガー点に到達させることを意味して、温度の急激な上昇が生じる。ほぼ同時に、
図1B~
図1Cに対して上記で概して説明したように、第2のPTCデバイスを介する4A電流の分路の理由で、第2のPTCデバイスもトリガーされる。これにより、図示のように、123℃までの温度の急激な上昇が生じる。この温度の上昇は、熱リンクの開放をもたらし、この開放は、図示のように、ゼロまでの電流降下をもたらす。
【0034】
図4は、本開示のさらなる実施形態による熱保護回路200を示している。この例において、熱リンク106は、
図1に対して上記で概して説明したように提供される。例えば、熱リンク106は、コンポーネント150への電流を限定する主保護回路202の一部を形成し得る。図示のように、熱リンク106は、電気経路204に沿ってコンポーネント150と電気的に直列に配置されている。熱保護回路200はまた、熱リンク106の熱的近傍に配置されたPPTCヒーター206を含む。PPTCヒーター206は、上記で説明した第2のPTCデバイス104と同一又は同様のものであってもよい。PPTCヒーター206は、電気経路204とは別の電気経路210に沿ってヒーター回路208に配置されている。異常イベント中、周囲温度及びPPTCヒーター206のPPTC材料を介して通る電流の組合せが、PPTCヒーター206にPPTCヒーター206のトリップ温度を超えさせると、上記で説明したように、PPTCヒーター206は、高抵抗率状態に移行し、同時に、熱134を生成し得る。このようにして、熱134は、熱リンク106を開放させ得、したがって、コンポーネント150を過剰な電流から保護する。
【0035】
図4の実施形態の利点は、PPTCヒーター206が、外部のもの(210への入力信号)によってトリガーされるので、熱リンク106がトリガーされて融解し開回路を作り出すタイミングを制御可能であるということである。
【0036】
図5Aは、本開示の実施形態による熱保護回路の上面図を示しており、
図5Bは、本開示の実施形態による
図5Aの熱保護回路の断面図を示している。熱保護回路500は、
図4の熱保護回路の変種であると考えられてもよい。外部導体502として示されている一対の導体は、熱リンク504の反対側に配設されており、あらかじめ説明したように、熱リンク504は、電気的に導電性のある溶融可能な材料であり得る。そのため、外部導体502及び熱リンク504は、
図5Bに示されている導電経路520を画定する。導電経路520は、保護されるべきデバイス又は他の回路構成の回路の一部を形成し得る。熱保護回路500において、電気絶縁基板510が、導電性パッド508として示されている一対の電気的な導電性パッドのすぐ下に設けられている。導電性パッド508は、外部導体502と電気的に接触しており、間隙507によって互いに分離されている。
【0037】
熱保護回路500はさらに、上方の導電層516及び下方の導電層514として示されている2つの電極間に配設されたPPTCボディ512から形成されたPPTCヒーター506を含む。PPTCヒーター206でのように、導電経路520によって形成された電気回路とは別の電気回路におけるPPTCヒーターを介して電流を駆動するために、リード線(図示せず)などの外部導体がPPTCヒーター506の電極の各々に結合され得る。
【0038】
電気絶縁基板510は、最適な動作には不十分な電気導体ではあるが、電気絶縁基板510は、PPTCヒーター506によって生成された熱が効率的に及び急速に熱リンク504に伝達するように良好な熱導体であることに留意されたい。電気絶縁基板510に適切な材料には、電気的な絶縁性及び比較的高い熱伝導率を見せる様々な既知のセラミックがある。他の実施形態において、熱導体として金属層を用いることによって、電気絶縁基板510には樹脂材料が許容可能になるだろう。
【0039】
図5Bに示しているように、ハンダ層518が、PPTCヒーター506及び電気絶縁基板510の間に設けられている。ハンダ層518はまた、導電性パッド508を外部導体502に接続するために、導電性パッド508の上面に設けられ得る。加えて、下方の金属層522は、電気絶縁基板510をハンダ層518に、したがってPPTCヒーター506に接合するために、電気絶縁基板510上に設けられ得る。
【0040】
正常動作下では、電流は、外部導体502、熱リンク504、及び導電性パッド508を介して、熱保護回路500を横断し得、保護すべき任意の外部回路構成を介して伝導し得る。しかしながら、故障条件下では、PPTCヒーター506は、トリガーする電流を電流源530から送られるように導く制御装置532によってトリガーされ得、その結果、トリガーする電流がPPTCボディ512を介して通る。そして次に、トリガーする電流は、PPTCボディに、熱リンク504を融解するのに十分な熱を生成させて、間隙507の領域で導電性パッド508の1つ目及び導電性パッド508の2つ目の間に、電気的な開放を作り出す。
【0041】
図6は、本開示のさらなる実施形態による別の熱保護回路を示している。熱保護回路600は、
図1の実施形態と同様の特徴を伴って手配されており、同様の要素は同一にラベル付けされている。熱保護回路600において、トリガー端子602として示されている追加の端子が、第2のPTCデバイス104に結合されている。本実施形態において、上記で説明した熱保護回路100の特徴に加えて、トリガー端子602が、遠隔及び外部トリガー用に結合されて、熱リンク106を加熱するためのPTCヒーターとして作用する第2のPTCデバイスをトリガーし得る。動作中には、PTC2は、トリガー端子602から入力された電流によってトリガーされる。本実施形態において、PTCヒーターのトリガーは、
図4の実施形態においてよりも急速であり得る。
【0042】
本実施形態は特定の実施形態を参照して開示されているが、添付した特許請求の範囲で定義されるように、本開示の領域及び範囲から逸脱することなく、記載されている実施形態に対する数々の修正、改変、及び変更を行うことが可能である。従って、本実施形態は、記載されている実施形態に限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲の文言及びその同等物により定義される全範囲を有し得る。
【外国語明細書】