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特開2023-113164セラミック電子部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113164
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201C
H01G4/30 201K
H01G4/30 311E
H01G4/30 513
H01G4/30 512
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015310
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山根 麻衣子
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC02
5E001AD02
5E001AD03
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH03
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E082AB03
5E082BC32
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG28
5E082LL03
5E082MM24
5E082PP09
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】 外部電極の剥離を抑制することができる大容量のセラミック電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 セラミック電子部品は、交互に積層された複数の内部電極層及び複数の誘電体層を含む略直方体形状の積層体と、積層体の積層方向における両端面以外の4つの面のうち、一面と、一面に隣り合い、互いに対向する一対の面との間に延在する一対の第1角部をそれぞれ覆う一対の外部電極とを有し、一対の第1角部は、積層体を積層方向で正面視したときにそれぞれ外側に凸となる弧状であり、複数の内部電極層は、積層体を積層方向で正面視したときに略矩形状の外縁をそれぞれ有し、略矩形状の外縁をなす4つの辺のうち、一面側の辺の一端に、一対の外部電極の一方と接するように一対の第1角部の一方に露出する弧状の第2角部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層された複数の内部電極層及び複数の誘電体層を含む略直方体形状の積層体と、
前記積層体の積層方向における両端面以外の4つの面のうち、一面と、前記一面に隣り合い、互いに対向する一対の面との間に延在する一対の第1角部をそれぞれ覆う一対の外部電極とを有し、
前記一対の第1角部は、前記積層体を前記積層方向で正面視したときにそれぞれ外側に凸となる弧状であり、
前記複数の内部電極層は、
前記積層体を前記積層方向で正面視したときに略矩形状の外縁をそれぞれ有し、
前記略矩形状の外縁をなす4つの辺のうち、前記一面側の辺の一端に、前記一対の外部電極の一方と接するように前記一対の第1角部の一方に露出する弧状の第2角部を備えることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記積層体を前記積層方向で正面視したときに前記一対の外部電極の一方に覆われた前記一対の第1角部の一方の外縁のうち、前記第2角部が露出する外縁の長さは、該外縁の両側の他の外縁の長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記一対の第1角部は、前記積層体を前記積層方向で正面視したときに円弧状に曲がっていることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記一対の第1角部の半径は、52.5~100(μm)であることを特徴とする請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記一対の第1角部の半径は、前記一面を底面とする前記積層体の高さの30%以下であることを特徴とする請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記一対の第1角部の曲率半径は、前記一面を底面とする前記積層体の高さの10~20%であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記一面側の辺の他端に、前記一対の外部電極の他方と接しないように切り欠かれた第3角部を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記第3角部と前記一対の外部電極の他方との間の最小間隔は、15(μm)以上であることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記第3角部と前記一対の外部電極の他方との間の最小間隔は、19(μm)以上であることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記第3角部と前記一対の外部電極の他方との間の最小間隔は、20(μm)以上であることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
誘電体グリーンシートを準備する工程と、
金属導電ペーストにより前記誘電体グリーンシートの表面に略矩形状の内部電極パターンを印刷する工程と、
前記内部電極パターンが印刷された前記誘電体グリーンシートを積層することにより略直方体形状の積層体を形成する工程と、
前記積層体を研磨する工程と、
前記積層体の積層方向における両端面以外の4つの面のうち、一面と、前記一面に隣り合い、互いに対向する一対の面との間に延在する一対の第1角部をそれぞれ覆うように一対の外部電極を形成する工程とを有し、
前記積層体を研磨する工程は、
前記積層体を前記積層方向で正面視したときに前記一対の第1角部を、それぞれ外側に凸となる弧状に丸め、
前記内部電極パターンの前記略矩形状の外縁をなす4つの辺のうち、前記一面側の辺の一端にある第2角部を、外側に凸となる弧状に丸めて、前記一対の第1角部の一方に露出させることを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記積層体を研磨する工程は、前記一対の第1角部を、前記積層体を前記積層方向で正面視したときに円弧状に丸めることを特徴とする請求項11に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記内部電極パターンを印刷する工程は、前記内部電極パターンにおいて、前記一面側の辺の他端に、前記一対の外部電極の他方と接しないように切り欠かれた第3角部を形成することを特徴とする請求項11または12に記載のセラミック電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品に関し、例えば特許文献1には、回路基板の実装面に対向する下面に外部電極が設けられたキャパシタが記載されている。このキャパシタの内部電極には、外部電極に接続するために下面に露出するリード部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-175105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のキャパシタのように、下面に外部電極を備えるセラミック電子部品が実装された回路基板が振動して撓んだとき、外部電極の端部には、回路基板側に引っ張られるように応力が作用する。このため、外部電極がセラミック積層体から剥離するおそれがある。
【0005】
また、上記のキャパシタのように、内部電極にリード部が設けられているセラミック電子部品は、略矩形状の電極領域から外部電極までリード部を引き回すため、略矩形状の電極領域の近傍に大きなマージンを設ける必要があることから、静電容量が減少する。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、外部電極の剥離を抑制することができる大容量のセラミック電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセラミック電子部品は、交互に積層された複数の内部電極層及び複数の誘電体層を含む略直方体形状の積層体と、前記積層体の積層方向における両端面以外の4つの面のうち、一面と、前記一面に隣り合い、互いに対向する一対の面との間に延在する一対の第1角部をそれぞれ覆う一対の外部電極とを有し、前記一対の第1角部は、前記積層体を前記積層方向で正面視したときにそれぞれ外側に凸となる弧状であり、前記複数の内部電極層は、前記積層体を前記積層方向で正面視したときに略矩形状の外縁をそれぞれ有し、前記略矩形状の外縁をなす4つの辺のうち、前記一面側の辺の一端に、前記一対の外部電極の一方と接するように前記一対の第1角部の一方に露出する弧状の第2角部を備えることを特徴とする。
【0008】
上記のセラミック電子部品において、前記積層体を前記積層方向で正面視したときに前記一対の外部電極の一方に覆われた前記一対の第1角部の一方の外縁のうち、前記第2角部が露出する外縁の長さは、該外縁の両側の他の外縁の長さ以下としてもよい。
【0009】
上記のセラミック電子部品において、前記一対の第1角部は、前記積層体を前記積層方向で正面視したときに円弧状に曲がっていてもよい。
【0010】
上記のセラミック電子部品において、前記一対の第1角部の半径は、52.5~100(μm)としてもよい。
【0011】
上記のセラミック電子部品において、前記一対の第1角部の半径は、前記一面を底面とする前記積層体の高さの30%以下としてもよい。
【0012】
上記のセラミック電子部品において、前記一対の第1角部の曲率半径は、前記一面を底面とする前記積層体の高さの10~20%としてもよい。
【0013】
上記のセラミック電子部品において、前記一面側の辺の他端に、前記一対の外部電極の他方と接しないように切り欠かれた第3角部を備えてもよい。
【0014】
上記のセラミック電子部品において、前記第3角部と前記一対の外部電極の他方との間の最小間隔は、15(μm)以上としてもよい。
【0015】
上記のセラミック電子部品において、前記第3角部と前記一対の外部電極の他方との間の最小間隔は、19(μm)以上としてもよい。
【0016】
上記のセラミック電子部品において、前記第3角部と前記一対の外部電極の他方との間の最小間隔は、20(μm)以上としてもよい。
【0017】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、誘電体グリーンシートを準備する工程と、金属導電ペーストにより前記誘電体グリーンシートの表面に略矩形状の内部電極パターンを印刷する工程と、前記内部電極パターンが印刷された前記誘電体グリーンシートを積層することにより略直方体形状の積層体を形成する工程と、前記積層体を研磨する工程と、前記積層体の積層方向における両端面以外の4つの面のうち、一面と、前記一面に隣り合い、互いに対向する一対の面との間に延在する一対の第1角部をそれぞれ覆うように一対の外部電極を形成する工程とを有し、前記積層体を研磨する工程は、前記積層体を前記積層方向で正面視したときに前記一対の第1角部を、それぞれ外側に凸となる弧状に丸め、前記内部電極パターンの前記略矩形状の外縁をなす4つの辺のうち、前記一面側の辺の一端にある第2角部を、外側に凸となる弧状に丸めて、前記一対の第1角部の一方に露出させる。
【0018】
上記のセラミック電子部品の製造方法において、前記積層体を研磨する工程は、前記一対の第1角部を、前記積層体を前記積層方向で正面視したときに円弧状に丸めてもよい。
【0019】
上記のセラミック電子部品の製造方法において、前記内部電極パターンを印刷する工程は、前記内部電極パターンにおいて、前記一面側の辺の他端に、前記一対の外部電極の他方と接しないように切り欠かれた第3角部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0020】
1つの側面として、セラミック電子部品において、外部電極の剥離を抑制し、静電容量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
図2図1のA-A線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
図3図2のB-B線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
図4】回路基板の振動時に、比較のための例の積層セラミックコンデンサの外部電極に加わる応力の一例を示す正面図である。
図5】回路基板の振動時に本実施形態の積層セラミックコンデンサの外部電極に加わる応力の一例を示す正面図である。
図6】内部電極層の角部の切り欠き形状が異なる他の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図7】内部電極層の角部の切り欠き形状が異なる他の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図8】内部電極層の角部の切り欠き形状が異なる他の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図9】積層セラミックコンデンサの製造工程の一例を示す。
図10】内部電極パターンが印刷された誘電体グリーンシートの一例を示す平面図である。
図11】内部電極パターンが印刷された誘電体グリーンシートの他の例を示す平面図である。
図12】内部電極パターンが印刷された誘電体グリーンシートの他の例を示す平面図である。
図13】内部電極パターンが印刷された誘電体グリーンシートの他の例を示す平面図である。
図14】内部電極パターンが印刷された誘電体グリーンシートの他の例を示す平面図である。
図15】切り欠き形状がダイヤ形である誘電体グリーンシートの一例を示す平面図である。
図16】切り欠き形状が丸形である誘電体グリーンシートの一例を示す平面図である。
図17】切り欠き形状が六角形である誘電体グリーンシートの一例を示す平面図である。
図18】スパッタリング法による外部電極の形成手法の一例を示す図である。
図19】ディップ法による外部電極の形成手法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態]
(積層セラミックコンデンサの構成)
図1は、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線に沿った積層セラミックコンデンサ1の断面図である。図3は、図2のB-B線に沿った積層セラミックコンデンサ1の断面図である。図1図3において、Z軸は積層セラミックコンデンサ1の積層方向を示す。X軸及びY軸は、積層セラミックコンデンサ1の積層方向の両端面以外の2組の対向面がそれぞれ対向する方向である。
【0023】
積層セラミックコンデンサ1は、セラミック電子部品の一例であり、略直方体形状の積層チップ10と、積層チップ10の下面10Aの両側の一対の角部100a,100bをそれぞれ覆う一対の外部電極4a,4bとを有する。積層チップ10は、積層体の一例であり、交互に積層された複数の内部電極層2及び複数の誘電体層3を含む。ここで積層チップ10の積層方向の両端に位置する各誘電体層3はカバー層として機能する。各内部電極層2は卑金属材料を含み、各誘電体層3は主成分としてセラミック材料を含む。
【0024】
誘電体層3は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO(チタン酸バリウム),CaZrO(ジルコン酸カルシウム),CaTiO(チタン酸カルシウム),SrTiO(チタン酸ストロンチウム),MgTiO(チタン酸マグネシウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaSrTi1-zZrは、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。
【0025】
内部電極層2は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層2として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。
【0026】
外部電極4a,4bはNi,Cuなどを主成分とする。外部電極4a,4bの表面には、Cu,Ni,Al,Zn,Snなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする、めっき層が設けられていてもよい。
【0027】
一対の角部100a,100bは、一対の第1角部の一例であり、下面10Aと、下面10Aに隣接する一対の側面10B,10Cとの間に延在する。ここで下面10Aは、積層チップ10の積層方向(Z軸方向)における両端面以外の4つの面のうち、不図示の回路基板の実装面と対向する一面である。一対の角部100a,100bは、積層チップ10を積層方向で正面視したときにそれぞれ外側に凸となる弧状に曲がっている。このため、外部電極4a,4bも、積層チップ10を積層方向で正面視したとき、角部100a,100bにそれぞれ沿った丸みのある三日月形状を有する。
【0028】
例えば角部100a,100bは、図2に示されるように、例えば半径Rで中心角が90度の扇形の円弧状の外縁を有する。つまり、角部100a,100bは円弧状に曲がっている。なお、角部100a,100bの外縁は、円弧状に限定されず、丸みのある他の形状を有してもよい。
【0029】
また、各内部電極層2は、積層チップ10を積層方向(Z軸方向)で正面視したときに略矩形状の外縁をそれぞれ有する。各内部電極層2は、略矩形状の外縁をなす4つの辺のうち、下面10A側の辺2Aの一端に、積層チップ10の一方の角部100aに露出する角部20aを備え、下面10A側の辺2Aの他端に、積層チップ10の他方の角部100bから離間した角部20bを備える。
【0030】
一方の角部20aは、第2角部の一例であり、外部電極4aと接するように積層チップ10の一方の角部100aに露出する。角部20aは、積層チップ10の角部100aに従って弧状の外縁を有する。
【0031】
他方の角部20bは、第3角部の一例であり、他方の外部電極4bと接しないように切り欠かれている。例えば角部20bは、四角形の角を三角形状に切り取った形状を有するが、後述するように、これに限定されない。
【0032】
図3に示されるように、複数の内部電極層2は、積層チップ10の積層方向に沿って一対の外部電極4a,4bに交互に接続されている。このため、各内部電極層2の一方の角部20aは、積層方向に沿って積層チップ10の一対の角部100a,100bに交互に露出している。また、各内部電極層2の他方の角部20bは、積層方向に沿って積層チップ10の一対の角部100a,100bの外縁に対し交互に離間している。
【0033】
(寸法)
次に本実施形態の積層セラミックコンデンサ1の各部の寸法を説明する。積層チップ10の幅L1は例えば1000(μm)以下であり、下面10Aを底面とする積層チップ10の高さH1は例えば500(μm)以下である。内部電極層2の幅L2は例えば970(μm)以下であり、内部電極層2の高さH2は例えば470(μm)以下である。内部電極層2に対する誘電体層3のX軸方向及びY軸方向のマージンの幅a,bは、ともに例えば15(μm)以上である。また、外部電極4bと内部電極層2の角部20bの最小間隔dは例えば20(μm)以下であり、外部電極4a,4bの厚みは例えば平均2(μm)である。
【0034】
また、角部100a,100bの円弧状の外縁の半径Rは例えば52.5(μm)~100(μm)である。これにより、後述するように外部電極4aの剥離を抑制することができる。また、半径Rは、例えば後述のバレル研磨などの研磨により角部100a,100bを形成する場合、積層チップ10の他の角部に過度な丸みが形成されないように、積層チップ10の高さH1の30%以下であることが好ましい。
【0035】
また、角部100a,100bが円弧状ではない丸みを有している場合、その半径Rは、曲率半径として規定される。このとき、半径Rは、上記と同様に積層チップ10の他の角部に過度な丸みが形成されないように、積層セラミックコンデンサ1の高さH1に対して、例えば10~20(%)の範囲内とするのが好ましい。
【0036】
また、外部電極4bと内部電極層2の角部20bの最小間隔dは例えば15(μm)以上である。好ましくは、最小間隔dは19(μm)以上であり、さらに好ましくは、最小間隔dは20(μm)以上である。後述するように最小間隔dが大きいほど、内部電極層2における切り欠き形状の角部20bと外部電極4bの間のショートの発生を抑制することができる。
【0037】
また、符号Gは、外部電極4aに覆われた角部100a近傍の拡大図である。角部100aの外縁のうち、内部電極層2の角部20aが露出する外縁(点P2,P3の間)の長さをgと定義し、その両側の他の外縁(点P1,P2の間、及び点P3,P4の間)の長さをそれぞれf,eと定義する。本実施形態において、内部電極層2の角部20aが露出する外縁の長さgは、その両側の各長さe,f以下、または各長さe,fより長い。
【0038】
(効果)
次に積層セラミックコンデンサ1の効果を述べる。積層セラミックコンデンサ1において、内部電極層2は、略矩形状を有し、積層チップ10の下面10Aの一端の角部20aにおいて外部電極4a,4bの一方と接している。このため、内部電極層2は、略矩形状の導体領域から外部電極4a,4bまで延びるリード部を必要としない。
【0039】
したがって、内部電極層2の面積は、上記の特許文献1に開示されているようなリード部を備える他の積層セラミックコンデンサよりも大きく設定することができる。これにより、積層セラミックコンデンサ1の静電容量を増加させることが可能となる。
【0040】
また、積層セラミックコンデンサ1は、以下に述べるように外部電極4a,4bの剥離を抑制することができる。
【0041】
図4は、回路基板の振動時に、比較のための例の積層セラミックコンデンサ9の外部電極91,92に加わる応力Fvの一例を示す正面図である。積層セラミックコンデンサ9は回路基板Bに実装されている。
【0042】
積層セラミックコンデンサ9は、複数の内部電極層93及び複数の誘電体層が交互に積層された積層チップ90と、積層チップ90の下面90Aに設けられた一対の外部電極91,92を有する。
【0043】
複数の内部電極層93は、それぞれ矩形形状を有し、積層チップ90の積層方向に沿って一対の外部電極91,92に交互に接続されている。各内部電極層93は矩形形状のリード部930を介して外部電極91,92に接続されている。なお、図4には、一方の外部電極91に接続された内部電極層93のみが示されているが、他方の外部電極92にもリード部930を介して他の内部電極層93が接続されている。
【0044】
積層チップ90の下面90Aは回路基板Bの実装面と対向する。外部電極91,92は、はんだSにより回路基板Bの導体パターン(不図示)に接続されている。
【0045】
回路基板Bが矢印Vで示されるように振動して撓むと、各外部電極91,92の両端には、下面90Aに対して略直交方向に応力Fvが加わる。このため、各外部電極91,92は、回路基板B側に引っ張られて積層チップ90内のセラミックから剥離するおそれがある。
【0046】
図5は、回路基板Bの振動時に本実施形態の積層セラミックコンデンサ1の外部電極4a,4bに加わる応力Fの一例を示す正面図である。図5において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0047】
積層セラミックコンデンサ1は回路基板Bに実装されている。回路基板Bが矢印Vで示されるように振動して撓むと、各外部電極4a,4bの両端には、角部100a,100bの表面に対して略直交方向に応力Fが加わる。
【0048】
符号Mは、一方の角部100a近傍の領域mの拡大図を示す。なお、拡大図において、はんだSの図示は省略する。各外部電極4aの両側の端点Pu,Pdには、角部100aの円弧状の外縁における接線Lに対して略直交方向に応力Fが作用する。ここで、端点Pu,Pdは、角部100aの外縁をなす円弧の両端間の曲面上に位置する。
【0049】
このため、各端点Pu,Pdに加わる応力Fは、X軸方向の分力Fx及びY軸方向の分力Fyに分解可能である。このように、各端点Pu,Pdの応力Fが分散されるため、外部電極4aを積層チップ10から引きはがそうとする力が緩和される。これにより外部電極4aの剥離が抑制される。なお、他方の外部電極4bの剥離も上記と同様の作用により抑制される。
【0050】
このように、積層セラミックコンデンサ1によると、静電容量を増加させることができるとともに、外部電極4a,4bの剥離を抑制することができる。なお、積層セラミックコンデンサ1の内部電極層2について、外部電極4a,4bと接しない角部20bの切り欠き形状には限定がない。
【0051】
図6図8は、内部電極層2の角部20ba~20bcの切り欠き形状が異なる他の積層セラミックコンデンサ1a~1cの断面図である。図6図8において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0052】
図6図8の各例において、外部電極4aに接する一方の角部20aの外縁形状は、上記の積層セラミックコンデンサ1と同様に円弧となる。他方の角部20ba~20bcは、第3角部の一例であり、他方の外部電極4bと接しないように切り欠かれている。
【0053】
図6の角部20baは、四角形の角を正方形状に切り取った形を有する。図7の角部20bbは、四角形の角を中心角90度の扇形形状に切り取った形を有する。図8の角部20bcは、四角形の角を台形形状に切り取った形を有する。このように、角部20ba~20bcは切り欠き形状を有するため、外部電極4bから離間して絶縁することができる。なお、各例において最小間隔dは、角部20ba~20bcと外部電極4bとの間の最短距離である。
【0054】
(積層セラミックコンデンサの製造工程)
図9は、積層セラミックコンデンサ1,1a~1cの製造工程の一例を示す。積層セラミックコンデンサ1,1a~1cの製造工程は、セラミック電子部品の製造方法の一例である。
【0055】
(グリーンシート成形工程)
まずグリーンシート成形工程St1が行われる。グリーンシート成形工程St1は、誘電体グリーンシートを準備する工程の一例である。
【0056】
例えばグリーンシート成形工程St1では、セラミック粉末に各種の添加化合物(焼結補助剤など)を添加することで得た誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み4(μm)以上の誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。基材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。
【0057】
なお、セラミック粉末の添加化合物としては、Mg(マグネシウム),Mn(マンガン),V(バナジウム),Cr(クロム),希土類元素(Y(イットリウム),Sm(サマリウム),Eu(ユウロピウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy(ジスプロシウム),Ho(ホロミウム),Er(エルビウム),Tm(ツリウム)およびYb(イッテルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(シリコン)の酸化物もしくはガラスが用いられる。
【0058】
(内部電極印刷工程)
次に内部電極印刷工程St2が行われる。内部電極印刷工程St2は、金属導電ペーストにより誘電体グリーンシートの表面に略矩形状の内部電極パターンを印刷する工程の一例である。内部電極印刷工程St2では、基材上の誘電体グリーンシートに、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷やグラビア印刷等により印刷することで、複数の内部電極パターンを互いに離間させて成膜する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層3の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0059】
図10は、内部電極パターン60A,60Bが印刷された誘電体グリーンシート5の一例を示す平面図である。本例では、図6に示される正方形の切り欠き形状の角部20baを有する、内部電極層2に対応する誘電体グリーンシート5を挙げる。なお、積層工程St3において誘電体グリーンシート5は図中の点線に沿ってカットされる。
【0060】
誘電体グリーンシート5には、一例として4つの内部電極パターン60A,60Bが印刷されている。各内部電極パターン60A,60Bは略矩形形状を有する。各内部電極パターン60A,60Bには、正方形の切り欠き600が設けられている。切り欠き600は内部電極層2の角部20baに該当する。
【0061】
内部電極パターン60Aと内部電極パターン60Bは、略矩形形状における切り欠き600の位置が相違する。このため、積層工程St3において積層チップ10を生成するとき、内部電極パターン60Aと内部電極パターン60Bは交互に積層される。これにより、内部電極層2の角部20baは、積層チップ10の積層方向に沿って下面10A側の辺2Aの一端に互い違いに設けられる。
【0062】
また、誘電体グリーンシート5には、識別マーク65が印刷されている。識別マーク65は、積層工程St3における積層面を識別する。なお、内部電極パターン60A,60Bは本例に限定されない。例えば、以下の例のように内部電極パターン同士がマージンで隔てられることなく、互いに隣接してもよい。
【0063】
図11は、内部電極パターン61A,61Bが印刷された誘電体グリーンシート5の他の例を示す平面図である。図11において、図10と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0064】
誘電体グリーンシート5には、一組の内部電極パターン61A,61Bを含む2つの一面隣接パターン61が印刷されている。内部電極パターン61A,61Bは上記の内部電極パターン60A,60Bとそれぞれ同様の形状を有する。一面隣接パターン61において、一組の内部電極パターン61A,61Bは、矢印で示される一辺を共有するように互いに隣接する。この隣接部分には、誘電体が露出したマージン部分Mが設けられていない。
【0065】
また、一面隣接パターン61は、矩形状の切り欠き610を有する。切り欠き610は各内部電極パターン61A,61Bから得られる内部電極層2の角部20baに該当する。
【0066】
内部電極パターン61Aと内部電極パターン61Bは、略矩形形状における切り欠き610の位置が相違する。このため、積層工程St3において積層チップ10を生成するとき、内部電極パターン61Aと内部電極パターン61Bは交互に積層される。これにより、内部電極層2の角部20baは、積層チップ10の積層方向に沿って下面10A側の辺2Aの一端に互い違いに設けられる。
【0067】
符号51は、複数の誘電体グリーンシート5を積層して積層チップ10単位で切断した後の内部電極パターン61Aの誘電体層である。他方の内部電極パターン61Bと共有していた一辺に対応する切断面Saには、積層チップ10に応じた高さと所定の厚みを有するサイドマージン部Maが貼り合わせられる。サイドマージン部Maは、誘電体グリーンシート5と同じ組成の誘電体シートとして形成される。なお、サイドマージン部Maは、これと同じ組成の他の接合シート(不図示)を介して切断面に貼り合わせられる。
【0068】
図12は、内部電極パターン62A,62Bが印刷された誘電体グリーンシート5の他の例を示す平面図である。図12において、図10と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0069】
誘電体グリーンシート5には、二組の内部電極パターン62A,62Bを含む二面隣接パターン62が印刷されている。内部電極パターン62A,62Bは上記の内部電極パターン60A,60Bとそれぞれ同様の形状を有する。二面隣接パターン62において、各内部電極パターン62A,62Bは、矢印で示される2つの辺を共有するように互いに隣接する。この隣接部分には、誘電体が露出したマージン部分Mが設けられていない。
【0070】
また、二面隣接パターン62は、矩形状の切り欠き620を有する。切り欠き620は各内部電極パターン62A,62Bから得られる内部電極層2の角部20baに該当する。
【0071】
内部電極パターン62Aと内部電極パターン62Bは、略矩形形状における切り欠き620の位置が相違する。このため、積層工程St3において積層チップ10を生成するとき、内部電極パターン62Aと内部電極パターン62Bは交互に積層される。これにより、内部電極層2の角部20baは、積層チップ10の積層方向に沿って下面10A側の辺2Aの一端に互い違いに設けられる。
【0072】
符号52は、複数の誘電体グリーンシート5を積層して積層チップ10単位で切断した後の内部電極パターン62Aの誘電体層である。他の内部電極パターン62Bと共有していた2つの辺に対応する切断面Sa,Sbには、一面隣接パターン61の場合と同様に、積層チップ10に応じた高さと所定の厚みを有するサイドマージン部Ma,Mbがそれぞれ貼り合わせられる。
【0073】
図13は、内部電極パターン63A,63Bが印刷された誘電体グリーンシート5の他の例を示す平面図である。図13において、図10と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0074】
誘電体グリーンシート5には、複数組の内部電極パターン63A,63Bが所定方向に配列された三面隣接パターン63が印刷されている。内部電極パターン63A,63Bは上記の内部電極パターン60A,60Bとそれぞれ同様の形状を有する。三面隣接パターン63において、内部電極パターン63A,63Bは交互に配列されており、各内部電極パターン63A,63Bは、矢印で示される3つの辺を共有するように互いに隣接する。この隣接部分には、誘電体が露出したマージン部分Mが設けられていない。
【0075】
また、三面隣接パターン63は、正方形状の切り欠き630を有する。切り欠き630は各内部電極パターン63A,63Bから得られる内部電極層2の角部20baに該当する。
【0076】
内部電極パターン63Aと内部電極パターン63Bは、略矩形形状における切り欠き630の位置が相違する。このため、積層工程St3において積層チップ10を生成するとき、内部電極パターン63Aと内部電極パターン63Bは交互に積層される。これにより、内部電極層2の角部20baは、積層チップ10の積層方向に沿って下面10A側の辺2Aの一端に互い違いに設けられる。
【0077】
符号53は、複数の誘電体グリーンシート5を積層して積層チップ10単位で切断した後の内部電極パターン63Aの誘電体層である。他の内部電極パターン63Bと共有していた3つの辺に対応する切断面Sa,Sb,Scには、一面隣接パターン61の場合と同様に、積層チップ10に応じた高さと所定の厚みを有するサイドマージン部Ma,Mb,Mcがそれぞれ貼り合わせられる。
【0078】
図14は、内部電極パターン64A,64Bが印刷された誘電体グリーンシート5の他の例を示す平面図である。図14において、図10と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0079】
誘電体グリーンシート5には、内部電極パターン64A,64Bが縦横に交互に配列された四面隣接パターン64が印刷されている。内部電極パターン64A,64Bは上記の内部電極パターン60A,60Bとそれぞれ同様の形状を有する。四面隣接パターン64において、各内部電極パターン64A,64Bは、矢印で示される4つの辺を共有するように互いに隣接する。この隣接部分には、誘電体が露出したマージン部分Mが設けられていない。
【0080】
また、四面隣接パターン64は、正方形状の切り欠き640を有する。切り欠き640は各内部電極パターン64A,64Bから得られる内部電極層2の角部20baに該当する。
【0081】
内部電極パターン64Aと内部電極パターン64Bは、略矩形形状における切り欠き640の位置が相違する。このため、積層工程St3において積層チップ10を生成するとき、内部電極パターン64Aと内部電極パターン64Bは交互に積層される。これにより、内部電極層2の角部20baは、積層チップ10の積層方向に沿って下面10A側の辺2Aの一端に互い違いに設けられる。
【0082】
このように、内部電極印刷工程St2は、内部電極パターン60A~64A,60B~64Bにおいて、外部電極4a,4bと接しないように切り欠かれた角部20bを形成する。
【0083】
符号54は、複数の誘電体グリーンシート5を積層して積層チップ10単位で切断した後の内部電極パターン64Aの誘電体層である。他の内部電極パターン64Bと共有していた2つの辺に対応する切断面Sa,Sb,Sc,Sdには、一面隣接パターン61の場合と同様に、積層チップ10に応じた高さと所定の厚みを有するサイドマージン部Ma,Mb,Mc,Mdがそれぞれ貼り合わせられる。
【0084】
次に他の切り欠き形状の例を挙げる。以下の例では、三面隣接パターン63を挙げるが、他の隣接パターンにも以下の切り欠き形状を用いることができる。
【0085】
図15は、切り欠き形状がダイヤ形である誘電体グリーンシート5の一例を示す平面図である。図15において、図13と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0086】
誘電体グリーンシート5には、複数組の内部電極パターン63Aa,63Baが所定方向に配列された三面隣接パターン63aが印刷されている。内部電極パターン63Aa,63Baは上記の内部電極パターン60A,60Bとそれぞれ同様の形状を有する。三面隣接パターン63aにおいて、内部電極パターン63Aa,63Baは交互に配列されており、各内部電極パターン63Aa,63Baは、隣接する内部電極パターン63Ba,63Aaと3つの辺を共有している。
【0087】
また、三面隣接パターン63aは、ダイヤ形状の切り欠き630aを有する。このため、各内部電極パターン63Aa,63Baから、図2に示されるような三角形の切り欠き形状を有する角部20bを備える内部電極層2が得られる。
【0088】
図16は、切り欠き形状が丸形である誘電体グリーンシート5の一例を示す平面図である。図16において、図13と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0089】
誘電体グリーンシート5には、複数組の内部電極パターン63Ab,63Bbが所定方向に配列された三面隣接パターン63bが印刷されている。内部電極パターン63Ab,63Bbは上記の内部電極パターン60A,60Bとそれぞれ同様の形状を有する。三面隣接パターン63bにおいて、内部電極パターン63Ab,63Bbは交互に配列されており、各内部電極パターン63Ab,63Bbは、隣接する内部電極パターン63Bb,63Abと3つの辺を共有している。
【0090】
また、三面隣接パターン63bは、丸形状の切り欠き630bを有する。このため、各内部電極パターン63Ab,63Bbから、図7に示されるような扇形の切り欠き形状を有する角部20bbを備える内部電極層2が得られる。
【0091】
図17は、切り欠き形状が六角形である誘電体グリーンシート5の一例を示す平面図である。図17において、図13と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0092】
誘電体グリーンシート5には、複数組の内部電極パターン63Ac,63Bcが所定方向に配列された三面隣接パターン63cが印刷されている。内部電極パターン63Ac,63Bcは上記の内部電極パターン60A,60Bとそれぞれ同様の形状を有する。三面隣接パターン63cにおいて、内部電極パターン63Ac,63Bcは交互に配列されており、各内部電極パターン63Ac,63Bcは、隣接する内部電極パターン63Bc,63Acと3つの辺を共有している。
【0093】
また、三面隣接パターン63cは、六角形状の切り欠き630cを有する。このため、各内部電極パターン63Ac,63Bcから、図8に示されるような台形の切り欠き形状を有する角部20bcを備える内部電極層2が得られる。
【0094】
(積層工程)
再び図9を参照すると、内部電極印刷工程St2の後、積層工程St3が行われる。積層工程St3では、内部電極パターン60A~64A,60B~64Bが印刷された誘電体グリーンシート5を積層することにより略直方体形状の積層チップ10を形成する。上述したように、内部電極パターン60A~64Aと内部電極パターン60B~64Bは積層方向に沿って交互に積層される。積層後の誘電体グリーンシート5を上記の点線に沿ってカットすることにより個別の積層チップ10が得られる。
【0095】
(研磨工程)
次に研磨工程St4が行われる。研磨工程St4では、積層チップ10を例えばバレル研磨などの手法により研磨する。これにより、積層チップ10の角部100aを、それぞれ外側に凸となる円弧状に丸め、また、各内部電極層2の角部20aを、外側に凸となる弧状に丸めて、積層チップ10の角部100aに露出させる。なお、角部100a,100bの外縁は、円弧状に限定されず、丸みのある他の形状を有してもよい。
【0096】
(焼成工程)
次に焼成工程St5が行われる。焼成工程St5では、積層チップ10を、250~500℃のN雰囲気中で脱バインダ処理した後に、酸素分圧10-8~10-13atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成することで、積層チップ10内の各粒子が焼結する。
【0097】
(再酸化処理工程)
次に再酸化処理工程St6が行われる。再酸化処理工程St6では、Nガス雰囲気において600~1000℃で再酸化処理が行われる。
【0098】
(外部電極形成工程)
次に外部電極形成工程St7が行われる。外部電極形成工程St7では、金属粉末、ガラスフリット、バインダ、および溶剤を含む金属ペーストを積層チップ2の角部100a,100bに塗布し、乾燥させる。これにより、外部電極4a,4bが形成される。ここで外部電極4a,4bは、積層チップ10の積層方向の正面視で、X軸方向及びY方向において例えば半径Rより10(μm)だけ長くなるように形成される。なお、バインダおよび溶剤は、焼き付けによって蒸発する。金属ペーストの塗布手段としては、以下に述べるように例えばスパッタリング法及びディップ法が挙げられる。
【0099】
図18は、スパッタリング法による外部電極4a,4bの形成手法の一例を示す図である。スパッタリング装置の真空チャンバ70内において、振込治具71には複数個の積層チップ10が傾斜姿勢で保持されている。このとき、各積層チップ10の角部100aは、振込治具71からイオン放出器72に対し露出している。
【0100】
イオン放出器72は、各積層チップ10の角部100aに対し、一例としてNiイオンを放出する。これにより、角部100a上に外部電極4a,4bとしてNi膜が形成される。また、角部100aと同様に、他方の角部100bにも外部電極4a,4bとしてNi膜が形成される。なお、スパッタリングの手法は、本例のようなイオンビームスパッタリングに限定されず、マグネトロン方式が用いられてもよい。
【0101】
図19は、ディップ法による外部電極4a,4bの形成手法の一例を示す図である。ディップ槽には、金属ペースト81が貯留されている。保持装置80は、一方向に配列された複数個の積層チップ10を保持する。保持装置80は各積層チップ10の角部100aが金属ペーストに浸るように移動する。これにより角部100aに金属ペーストが塗布されて外部電極4a,4bが形成される。また、角部100aと同様に、他方の角部100bにも金属ペーストが塗布される。なお、ディップ法を用いる場合、焼成工程St5より前にディップ法により外部電極形成工程St7を実行することも可能である。
【0102】
(めっき処理工程)
再び図9を参照すると、外部電極形成工程St7の後にめっき処理工程St8が行われる。めっき処理工程St8では、外部電極4a,4b上にめっき処理によりCu,Ni,Sn等の金属コーティングが行われる。なお、めっきの厚みは、例えば約3(μm)としてもよい。以上の工程により、上述した積層セラミックコンデンサ1,1aが完成する。
【0103】
積層セラミックコンデンサ1,1a~1cの製造工程によると、積層セラミックコンデンサ1,1a~1cと同様の効果が得られる。
【実施例0104】
次に実施例の積層セラミックコンデンサ1の評価結果を述べる。
【0105】
【表1】
【0106】
(剥がれ率及びショート発生率)
表1は積層セラミックコンデンサ1,9の評価結果を示す。評価では、No.1~6のサンプルを100個ずつ試験に用いた。No.1のサンプルは、上記の比較のための例(以下、比較例と表記)の積層セラミックコンデンサ9(図4参照)であり、No.2~7のサンプルは、実施例の積層セラミックコンデンサ1である。
【0107】
評価では、外部電極4a,4bの剥離試験を行った。外部電極4a,4bにおいて、100個の積層セラミックコンデンサ1,9のうち、回路基板の67(Hz)の振動により外部電極4a,4bが剥離した積層セラミックコンデンサ1の個数を「剥がれ率」と表記する。
【0108】
評価では、外部電極4a,4bのショート試験を行った。ショート試験において、100個の積層セラミックコンデンサ1,9のうち、切り欠き形状の内部電極層2の角部20bと外部電極4a,4bとの間のショートの発生率(%)を調べた。
【0109】
積層セラミックコンデンサ1,9のサイズは1005サイズとした。積層チップ10の幅L1は1000(μm)とし、積層チップ10の高さH1は500(μm)とした。内部電極層2の幅L2は970(μm)とし、内部電極層2の高さH2は470(μm)とした。内部電極層2に対する誘電体層3のX軸方向及びY軸方向のマージンの幅a,bは、ともに15(μm)とした。また、外部電極4a,4bの厚みは平均2(μm)とした。
【0110】
また、積層チップ10の誘電体層3はチタン酸バリウムを主成分とし、内部電極層2はニッケルを主成分とし、外部電極4a,4bはニッケルを主成分とした。
【0111】
実施例の角部100aの半径Rは、内部電極層2の角部20aが露出するように、誘電体層3のマージンの幅a(=b)に対してR>3.5×aを満たす値に設定した。外部電極長は、No.1のサンプルの場合、積層チップ90の積層方向の正面視において積層チップ90と接触する外部電極91,92の外縁の長さを示し、No.2~7のサンプルの場合、積層チップ10の積層方向の正面視において積層チップ10と接触する外部電極4a,4bの外縁の長さ(=e+f+g)を示す。
【0112】
(サンプルNo.1)
外部電極長は300(μm)とした。上述したように、積層セラミックコンデンサ9の外部電極91,92は積層チップ90の下面90Aに設けられているため、応力Fvを分散できず、Z軸方向に集中する。このため、サンプルNo.1~7中で剥がれ率は最も高くなった。また、積層セラミックコンデンサ9の内部電極層93は、リード部930を介して外部電極91,92と接続されるため、非接続対象の外部電極91,92と内部電極層93の間隔が実施例のサンプルNo.2~7より大きい。このため、非接続対象の外部電極91,92と内部電極層93との間のショートは発生しなかった。しかし、剥がれ率の高さが高いため、評価結果は不可とした。
【0113】
(サンプルNo.2)
角部20bと外部電極4bの最小間隔dを15(μm)とした。角部20aの曲げの半径Rを55(μm)とした。また、角部100aの外縁の長さについて、g<eかつg<fを満たすように設定した。外部電極長は86.39(μm)とした。サンプルNo.1~7中では半径Rが小さく、角部100aにおいて内部電極層2の露出する外縁(g)が両側の外縁(e,f)より短いため、剥がれ率は0(%)となった。しかし、サンプルNo.1~7中で最小間隔dが小さいため、ショート発生率が77(%)となった。このため、評価結果は良とした。
【0114】
(サンプルNo.3)
角部20bと外部電極4bの最小間隔dを19(μm)とした。角部20aの曲げの半径Rを55(μm)とした。また、角部100aの外縁の長さについて、g<eかつg<fを満たすように設定した。外部電極長は86.39(μm)とした。サンプルNo.1~7中では半径Rが小さく、角部100aにおいて内部電極層2の露出する外縁(g)が両側の外縁(e,f)より短いため、剥がれ率は0(%)となった。しかし、サンプルNo.1~7中で最小間隔dが小さいため、ショート発生率が8(%)となった。このため、評価結果は良とした。
【0115】
(サンプルNo.4)
角部20bと外部電極4bの最小間隔dを20(μm)とした。角部20aの曲げの半径Rを100(μm)とした。また、角部100aの外縁の長さについて、g>eかつg>fを満たすように設定した。外部電極長は157.08(μm)とした。サンプルNo.1~7中では半径Rが大きく、角部100aにおいて内部電極層2の露出する外縁(g)が両側の外縁(e,f)より長いため、外部電極4aと誘電体層3の接触面積が減少して、外部電極4aと積層チップ10の結合力が弱くなる。また、サンプルNo.1~7中では外部電極長が長いため、外部電極4a,4bに加わる応力の大きさが増加する。このため、剥がれ率は1(%)となった。しかし、サンプルNo.1~7中で最小間隔dが大きいため、ショート発生率が0(%)となった。このため、評価結果は良とした。
【0116】
(サンプルNo.5)
角部20bと外部電極4bの最小間隔dを20(μm)とした。角部20aの曲げの半径Rを52.5(μm)とした。また、角部100aの外縁の長さについて、g<eかつg<fを満たすように設定した。外部電極長は82.47(μm)とした。サンプルNo.1~7中では半径Rが小さく、角部100aにおいて内部電極層2の露出する外縁(g)が両側の外縁(e,f)より短いため、剥がれ率は0(%)となった。また、サンプルNo.1~7中で最小間隔dが大きいため、ショート発生率は0(%)となった。このため、評価結果は優とした。
【0117】
(サンプルNo.6)
角部20bと外部電極4bの最小間隔dを20(μm)とした。角部20aの曲げの半径Rを55(μm)とした。また、角部100aの外縁の長さについて、g<eかつg<fを満たすように設定した。外部電極長は86.39(μm)とした。サンプルNo.1~7中では半径Rが小さく、角部100aにおいて内部電極層2の露出する外縁(g)が両側の外縁(e,f)より短いため、剥がれ率は0(%)となった。また、サンプルNo.1~7中で最小間隔dが大きいため、ショート発生率は0(%)となった。このため、評価結果は優とした。
【0118】
(サンプルNo.7)
角部20bと外部電極4bの最小間隔dを20(μm)とした。角部20aの曲げの半径Rを87.4(μm)とした。また、角部100aの外縁の長さについて、g=e=fを満たすように設定した。外部電極長は137.29(μm)とした。サンプルNo.1~7中では半径Rが大きいが、角部100aにおいて内部電極層2の露出する外縁(g)が両側の外縁(e,f)と同じであるため、剥がれ率は0(%)となった。また、サンプルNo.1~7中で最小間隔dが大きいため、ショート発生率は0(%)となった。このため、評価結果は優とした。
【0119】
以上より、角部100aの外縁の長さ(g,e,f)に関し、積層チップ10を積層方向で正面視したときに外部電極4aに覆われた角部100aの外縁のうち、内部電極層2の角部20aが露出する外縁の長さgは、その外縁の両側の他の外縁の長さe,f以下とすることで、外部電極4aの剥がれ率をさらに好適に抑制することができる。
【0120】
また、角部100aの半径Rは、52.5~100(μm)である場合、外部電極4aの剥がれ率をさらに好適に抑制することができる。さらに、半径Rが100(μm)であるサンプルNo.4では剥がれ率が1(%)であったことから、半径Rは小さいほど、剥がれ率が小さくなり、好ましいことが理解される。
【0121】
また、ショート発生率に関し、最小間隔dが15(μm)以上である場合、ショート発生率を77(%)以下に抑制することができる。さらに、最小間隔dが19(μm)以上である場合、ショート発生率を8(%)以下に抑制することができ、好ましくは最小間隔dが20(μm)以上である場合、ショート発生率を0(%)以下に抑制することができる。このように、ショート発生率は、最小間隔dが大きいほど、改善される。
【0122】
(静電容量の評価)
次に積層セラミックコンデンサ1の静電容量を比較例の積層セラミックコンデンサ9と比較して評価した結果を示す。
【0123】
【表2】
【0124】
表2は、1005サイズの積層セラミックコンデンサ1,9の高さH1が500(μm)である場合と、高さH1が180(μm)である場合とについて、単位高さ当たりの実効容量面積及び容量比を示す。なお、比較例の積層セラミックコンデンサ9の高さは、外部電極91,92の厚みを除いた積層チップ90の高さである。
【0125】
実効容量面積は、積層方向で正面視した場合の内部電極層2,93の面積を高さH1で除算することで算出した。高さH1が500(μm)である場合、実施例の実効容量面積は、比較例の実効容量面積の約1.11倍となった。高さH1が180(μm)である場合、実施例の実効容量面積は、比較例の実効容量面積の約1.21倍となった。これは、上述したように、実施例の積層セラミックコンデンサ1の内部電極層2は、比較例の積層セラミックコンデンサ9とは異なりリード部930を有していないため、その分だけ面積が増加しているためである。
【0126】
容量比については、比較例の積層セラミックコンデンサ9の容量比を100(%)として、実施例の積層セラミックコンデンサ1の容量比を算出した。実施例の積層セラミックコンデンサ1は、実効容量面積の比に従って、高さH1が500(μm)である場合、比較例より7.73(%)だけ大きく、高さH1が180(μm)である場合、比較例より21.25(%)だけ大きい。このように、実施例の積層セラミックコンデンサ1によると、比較例の積層セラミックコンデンサ9より静電容量を増加させることができる。
【0127】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
1,1a~1c,9 積層セラミックコンデンサ
2,93 内部電極層
3 誘電体層
10,90 積層チップ
20a,20b,20ba~20bc,100a,100b 角部
4a,4b,91,92 外部電極
5 誘電体グリーンシート
10A,90A 下面
60A~64A,60B~64B 内部電極パターン
図1
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