(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113201
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】テストパターン、テストパターンの印刷方法および印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015383
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】小林 新
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA07
2C056EA08
2C056EB27
2C056EC07
2C056EC35
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】ヘッドの傾きを把握する。
【解決手段】テストパターン50の領域51A、52Aは、ヘッド23、24のノズル部231、B1から吐出されたインクにより、Y方向に沿って形成されたベースライン530と、ヘッド23、24の第1のノズル部231、241とY方向に間隔を空けて設けられたノズル部235、245から吐出されたインクにより形成された、ブロック540およびブロック550と、を含む。ブロック540は、ベースライン530のY方向に直交するX方向におけるX1側に形成され、ブロック550は、X2側に形成される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル部を備えるインクジェットヘッドから媒体にインクを吐出することにより、前記媒体に印刷されるテストパターンであって、
前記インクジェットヘッドの第1ノズル部から吐出されたインクにより、第1の方向に沿って形成された第1ベースラインと、
前記インクジェットヘッドの、前記第1ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第2ノズル部から吐出されたインクにより形成された、第1ブロックおよび第2ブロックと、を含み、
前記第1ブロックは、前記第1ベースラインの前記第1の方向に直交する第2の方向における一方側に形成され、前記第2ブロックは他方側に形成されることを特徴とする、テストパターン。
【請求項2】
複数の前記第1ベースラインが、前記第2の方向に間隔を空けて形成され、
前記第1ブロックは、複数の前記第1ベースラインのそれぞれの前記一方側において、前記第2の方向に沿って複数配列され、
前記第2ブロックは、複数の前記第1ベースラインのそれぞれの前記他方側において、前記第2の方向に沿って複数配列され、
複数の前記第1ブロックと複数の前記第2ブロックとは、前記第2の方向において重ならないように位置をずらして配列され、
前記第1ブロックの集合が第1図形を形成し、前記第2のブロックの集合が第2図形を形成していることを特徴とする、請求項1に記載のテストパターン。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドは、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に沿って延びるチルト軸を中心として回動可能に設けられていることを特徴とする、請求項2記載のテストパターン。
【請求項4】
前記第1図形と前記第2図形とは異なる意匠の図形であり、前記チルト軸の回動方向に応じて、前記第1図形および前記第2図形のいずれか一方が、他方よりも濃い図形として視認される、請求項3記載のテストパターン。
【請求項5】
前記第1図形および前記第2図形は、それぞれ、前記チルト軸の回動方向を示す表示を含む、請求項3または4記載のテストパターン。
【請求項6】
前記第1ノズル部および前記第2ノズル部は、それぞれ、前記第2の方向に沿って一定の間隔で配置された複数のノズルから構成され、
前記第1ノズル部のノズルと前記第2ノズル部のノズルは、前記第2の方向において交互に並ぶように配置され、
前記第1ベースラインは、前記第1ノズル部の第1ノズルによって形成され、
前記第1ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の一方側において隣り合う、第2ノズルによって形成され、
前記第2ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の他方側において隣り合う、第3ノズルによって形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のテストパターン。
【請求項7】
前記第1ノズル部および前記第2ノズル部は、前記第2の方向に沿って一定の間隔で配置された複数のノズルから構成され、
前記第1ノズル部と前記第2ノズル部のノズルは、前記第2の方向において同じ位置に配置され、
前記第1ベースラインは、前記第1ノズル部の第1ノズルによって形成され、
前記第1ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の一方側において隣り合う、第2ノズルによって形成され、
前記第2ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の他方側において隣り合う、第3ノズルによって形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のテストパターン。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドの第3ノズル部から吐出されたインクにより、前記第2の方向に沿って形成された第2ベースラインと、
前記インクジェットヘッドの、前記第3ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第4ノズル部から吐出されたインクにより形成され、前記第2ベースラインの前記第2の方向における一方側において、前記第2ベースラインに隣接して形成された第3ブロックと、
前記第4ノズル部から吐出されたインクにより形成され、前記第2ベースラインの前記第2の方向における他方側において、前記第2ベースラインに隣接して形成され、前記第3ブロックと前記第1の方向に間隔を空けて配置された第4ブロックと、を含み、
前記第3ノズル部と前記第4ノズル部との前記第1の方向における距離は、前記第1ノズル部と前記第2ノズル部との前記第1の方向における距離よりも長いことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のテストパターン。
【請求項9】
複数のノズル部を備えるインクジェットヘッドから媒体にインクを吐出することにより、前記媒体にテストパターンを印刷する方法であって、
前記インクジェットヘッドの第1ノズル部からインクを吐出して、第1の方向に沿って第1ベースラインを形成し、
前記インクジェットヘッドの、前記第1ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第2ノズル部からインクを吐出して、第1ブロックおよび第2ブロックを形成し、
前記第1ブロックは、前記第1ベースラインの前記第1の方向に直交する第2の方向における一方側に形成され、前記第2ブロックは他方側に形成されることを特徴とする、テストパターンの印刷方法。
【請求項10】
複数のノズル部を備えるインクジェットヘッドから媒体にインクを吐出することにより、前記媒体にテストパターンを印刷する印刷装置であって、
前記媒体に前記インクジェットヘッドの第1ノズル部からインクを吐出して、第1の方向に沿って第1ベースラインを形成し、
前記インクジェットヘッドの、前記第1ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第2ノズル部からインクを吐出して、第1ブロックおよび第2ブロックを形成し、
前記第1ブロックは、前記第1ベースラインの前記第1の方向に直交する第2の方向における一方側に形成し、前記第2ブロックは他方側に形成することを特徴とする、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストパターン、テストパターンの印刷方法および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置は、インクを吐出するインクジェットヘッドを備える。インクジェットヘッドは、主走査方向に配列された複数のノズル列を備える。各ノズル列は、副走査方向に並んだ複数のノズルから構成される。印刷装置では、媒体とインクジェットヘッドを、主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、各ノズルからインクを吐出することで、媒体に印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットヘッドは、ノズル交換の作業等により傾きが生じることがある。インクジェットヘッドが傾いたまま印刷を行うと、印刷物の品質に影響を与えることがある。印刷装置において、インクジェットヘッドの傾きを把握することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(1)複数のノズル部を備えるインクジェットヘッドから媒体にインクを吐出することにより、前記媒体に印刷されるテストパターンであって、
前記インクジェットヘッドの第1ノズル部から吐出されたインクにより、第1の方向に沿って形成された第1ベースラインと、
前記インクジェットヘッドの、前記第1ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第2ノズル部から吐出されたインクにより形成された、第1ブロックおよび第2ブロックと、を含み、
前記第1ブロックは、前記第1ベースラインの前記第1の方向に直交する第2の方向における一方側に形成され、前記第2ブロックは他方側に形成される。
【0006】
(2)テストパターンにおいて、
複数の前記第1ベースラインが、前記第2の方向に間隔を空けて形成され、
前記第1ブロックは、複数の前記第1ベースラインのそれぞれの前記一方側において、前記第2の方向に沿って複数配列され、
前記第2ブロックは、複数の前記第1ベースラインのそれぞれの前記他方側において、前記第2の方向に沿って複数配列され、
複数の前記第1ブロックの集合と複数の前記第2ブロックの集合とは、前記第2の方向において重ならないように位置をずらして配列され、
前記第1ブロックの集合が第1図形を形成し、前記第2のブロックの集合が第2図形を形成している。
【0007】
(3)テストパターンにおいて、前記インクジェットヘッドは、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に沿って延びるチルト軸を中心として回動可能に設けられている。
【0008】
(4)テストパターンにおいて、前記第1図形と前記第2図形とは異なる意匠の図形であり、前記チルト軸の回動方向に応じて、前記第1図形および前記第2図形のいずれか一方が、他方よりも濃い図形として視認される。
【0009】
(5)テストパターンにおいて、前記第1図形および前記第2図形は、それぞれ、前記チルト軸の回動方向を示す表示を含む。
【0010】
(6)テストパターンにおいて、前記第1ノズル部および前記第2ノズル部は、それぞれ、前記第2の方向に沿って一定の間隔で配置された複数のノズルから構成され、
前記第1ノズル部のノズルと前記第2ノズル部のノズルは、前記第2の方向において交互に並ぶように配置され、
前記第1ベースラインは、前記第1ノズル部の第1ノズルによって形成され、
前記第1ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の一方側において隣り合う、第2ノズルによって形成され、
前記第2ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の他方側において隣り合う、第3ノズルによって形成される。
【0011】
(7)テストパターンにおいて、前記第1ノズル部および前記第2ノズル部は、前記第2の方向に沿って一定の間隔で配置された複数のノズルから構成され、
前記第1ノズル部と前記第2ノズル部のノズルは、前記第2の方向において同じ位置に配置され、
前記第1ベースラインは、前記第1ノズル部の第1ノズルによって形成され、
前記第1ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の一方側において隣り合う、第2ノズルによって形成され、
前記第2ブロックは、前記第2ノズル部の、前記第1ノズルと前記第2の方向の他方側において隣り合う、第3ノズルによって形成される。
【0012】
(8)テストパターンにおいて、前記インクジェットヘッドの第3ノズル部から吐出されたインクにより、前記第2の方向に沿って形成された第2ベースラインと、
前記インクジェットヘッドの、前記第3ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第4ノズル部から吐出されたインクにより形成され、前記第2ベースラインの前記第2の方向における一方側において、前記第2ベースラインに隣接して形成された第3ブロックと、
前記第4ノズル部から吐出されたインクにより形成され、前記第2ベースラインの前記第2の方向における他方側において、前記第2ベースラインに隣接して形成され、前記第3ブロックと前記第1の方向に間隔を空けて配置された第4ブロックと、を含み、
前記第3ノズル部と前記第4ノズル部との前記第1の方向における距離は、前記第1ノズル部と前記第2ノズル部との前記第1の方向における距離よりも長い。
【0013】
本発明は、
(9)複数のノズル部を備えるインクジェットヘッドから媒体にインクを吐出することにより、前記媒体にテストパターンを印刷する方法であって、
前記インクジェットヘッドの第1ノズル部からインクを吐出して、第1の方向に沿って第1ベースラインを形成し、
前記インクジェットヘッドの、前記第1ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第2ノズル部からインクを吐出して、第1ブロックおよび第2ブロックを形成し、
前記第1ブロックは、前記第1ベースラインの前記第1の方向に直交する第2の方向における一方側に形成され、前記第2ブロックは他方側に形成される。
【0014】
本発明は、
(10)複数のノズル部を備えるインクジェットヘッドから媒体にインクを吐出することにより、前記媒体にテストパターンを印刷する印刷装置であって、
前記媒体に前記インクジェットヘッドの第1ノズル部からインクを吐出して、第1の方向に沿って第1ベースラインを形成し、
前記インクジェットヘッドの、前記第1ノズル部と前記第1の方向に間隔を空けて設けられた第2ノズル部からインクを吐出して、第1ブロックおよび第2ブロックを形成し、
前記第1ブロックは、前記第1ベースラインの前記第1の方向に直交する第2の方向における一方側に形成し、前記第2ブロックは他方側に形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テストパターンから、インクジェットヘッドの傾きを把握することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】正面側から見たヘッド部を模式的に示した図である。
【
図4】上側から見たヘッド部を模式的に示した図である。
【
図5】ノズル部を構成するノズルの配置を模式的に示す図である。
【
図6】ヘッドのドット位置が一致している場合の印刷例を示す図である。
【
図7】ヘッドのドット位置が一致していない場合の印刷例を示す図である。
【
図8】補正の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】傾き補正用のテストパターンを示す図である。
【
図11】テストパターンの形成方法を示す図である。
【
図12】ヘッドに傾きがあった場合のテストパターンの変化を説明する図である。
【
図13】ヘッドに傾きがあった場合のテストパターンの変化を説明する図である。
【
図15】ヘッドの傾きが大きい場合を説明する図である。
【
図16】ヘッドの傾きが小さい場合を説明する図である。
【
図17】Y方向の位置ずれ補正用のテストパターンを示す図である。
【
図18】テストパターンの形成方法を説明する図である。
【
図19】ヘッドにY方向の位置ずれがあった場合の、テストパターンの変化を説明する図である。
【
図20】X方向の位置ずれ補正用のテストパターンを示す図である。
【
図22】ヘッドがX方向に位置ずれしている場合の、テストパターンの変化を説明する図である。
【
図23】ヘッドにY方向の位置ずれがあった場合のテストパターンを示す図である。
【
図24】変形例1に係るテストパターンの形成方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、印刷装置1を正面側から見た斜視図である。
図2は、印刷装置1の構成を示すブロック図である。
図3は、正面側から見たヘッド部22を模式的に示した図である。
図4は、上側から見たヘッド部22を模式的に示した図である。
なお、以降の説明において、「Y方向」は、印刷装置1の主走査方向(第1の方向)を意味する。主走査方向は、印刷装置1の正面から見た左右方向である。「X方向」は、副走査方向(第2の方向)を意味する。副走査方向は、主走査方向に直交する方向であり、印刷装置1の正面側から奥側に向かう方向である。「Z方向」は、印刷装置1を水平面に置いた場合の鉛直線方向を意味し、X方向およびY方向に直行する方向(第3の方向)である。また、「Y1側」は、印刷装置1の正面から見て、Y方向における一方側(
図3の左側)を意味し、「Y2側」は他方側(
図3の右側)を意味する。「X1側」は、印刷装置1の正面側を意味し、「X2側」は奥側を意味する。
【0018】
印刷装置1は、インクジェット方式により媒体Mに印刷する。媒体Mは、例えば、紙、布帛、樹脂製のフィルムとすることができる。
図1に示すように、印刷装置1は、本体部2と、本体部2を支持する架台3と、を備える。本体部2は、媒体Mを支持するプラテン21を備える。さらに、本体部2は、媒体Mに紫外線硬化型のインクを吐出するヘッド部22と、媒体Mに吐出されたインクに紫外線を照射する紫外線照射部25と、を備える。本体部2は、ユーザの操作入力を受けつける操作パネル26と、印刷装置1の動作を制御するコントローラ27と、を備える。
【0019】
図2に示すように、印刷装置1は、ヘッド部22にインクを供給するインク供給機構28と、ヘッド部22および紫外線照射部25をY方向に移動させる移動機構29と、媒体MをX方向に送る送り機構30と、を備える。
【0020】
図3に示すように、インク供給機構28は、インクを貯蔵するインクボトル281と、インクボトル281とヘッド部22とを接続するインク供給路282と、を有する。
【0021】
移動機構29(
図2参照)は、
図1に示すように、ヘッド部22および紫外線照射部25が搭載されるキャリッジ291と、キャリッジ291を案内するガイドレール292と、を備える。ガイドレール292は、本体部2のY方向に沿って配置される。図示は省略するが、移動機構29は、ベルトと、ベルトが掛けまわされた駆動プーリおよび従動プーリと、駆動プーリを回転させるモータと、を備える。キャリッジ291は駆動ベルトに固定されている。モータにより駆動ベルトを回転させることで、キャリッジ291はガイドレール292に沿って本体部2をY方向に移動する。
【0022】
送り機構30(
図2参照)は、図示は省略するが、モータと、モータにより回転するローラと、複数のピンチローラと、を備える。ローラと複数のピンチローラとにより媒体Mを挟みながら、ローラを回転させることで、媒体MがX方向に送られる。媒体Mは、X2側からX1側に送られる。すなわち、媒体Mの送り方向において、X2側が上流側であり、X1側が下流側である。
【0023】
印刷装置1は、移動機構29によりキャリッジ291をY方向に移動させると共に、送り機構30により媒体MをX方向に送る。これによってキャリッジ291は、媒体Mに対してX方向およびY方向に相対的に移動する。印刷装置1は、キャリッジ291を移動させながら、ヘッド部22から紫外線硬化型のインクを媒体Mに吐出する。印刷装置1は、媒体Mに着弾したインクを、紫外線照射部25により硬化させる。これによって、媒体Mへの印刷が行われる。
【0024】
操作パネル26は、例えば、タッチパネルとすることができる。操作パネル26は、コントローラ27が出力する画像を表示すると共に、ユーザからの操作入力を受け付ける。操作パネル26は、たとえば、画像を表示するディスプレイと、操作入力を受け付けるスイッチ等から構成しても良い。
【0025】
コントローラ27は、印刷装置1の各部の動作を制御する。コントローラ27は、例えば、マイクロコンピュータ等とすることができる。コントローラ27は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを備えている。CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、印刷装置1の動作が実行される。
【0026】
コントローラ27は、通信機器を備え、外部のコンピュータ等から媒体Mに印刷する画像データを受信する。
コントローラ27は、入力された画像データから、印刷装置1の各部を制御するための印刷データを生成する。印刷データはドット位置を含む。ドット位置は、ヘッド部22から吐出されるインクの、媒体Mにおける着弾位置を意味する。ドット位置は、たとえば、XY座標で示される。コントローラ27は、画像に含まれる各画素の位置座標を、ドット位置に変換して印刷データを生成する。
コントローラ27は、印刷データに基づいて送り機構30および移動機構29を制御して、ヘッド部22をドット位置に移動させ、インクを吐出させる。
【0027】
図3に示すように、ヘッド部22は、2つのインクジェットヘッド23、24(以降は、単に「ヘッド23、24」という)を備えている。ヘッド23、24は、プラテン21(
図1参照)上の媒体Mに対向して配置される。
図4に示すように、ヘッド23、24は、いわゆるスタガ配置(staggered arrangement)されている。ヘッド23、24は、X方向およびY方向の位置をずらして配置されている。ヘッド24は、Y方向においてヘッド23のY2側に配置され、X方向においてヘッド23のX1側に配置されている。ヘッド24は、ヘッド23に対して媒体Mの送り方向の下流側に配置される。Y方向から見た場合に、ヘッド24の一部が、ヘッド23にオーバーラップしている。
【0028】
ヘッド23は、Y方向に並んだ8つのノズル部231~238を備える。ヘッド24も同様に、Y方向に並んだ8つのノズル部241~248を備える。
図4に示すように、ヘッド23、24のX2側には、ノズル部231~238、241~248が及んでいない端部領域23a、24aが設けられている。ヘッド24の端部領域24aが、Y方向から見てヘッド23にオーバーラップしている。
図3に示すように、ノズル部231~238、241~248は、それぞれ、ヘッド23、24の媒体Mとの対向面に設けられている。
ヘッド23、24にはインク供給路282に接続するインク供給口(不図示)が設けられている。インクボトル281から、インク供給路282およびインク供給口を介して、ヘッド23、24のそれぞれのノズル部231~238、241~248にインクが供給される。
【0029】
実施形態では、一例として、ヘッド23、24に、C(シアン:Cyan)、M(マゼンタ:Magenta)、Y(イエロー:Yellow)、K(キー・プレート:Key plate)の4色のインクが供給される。キー・プレートとして、ここでは黒を用いる例を説明する。
図4では、わかりやすくするために、それぞれのノズル部231~238、241~248に供給されるインクの色を頭文字C、M、Y、Kで表示している。
【0030】
図3に示すように、ヘッド23のノズル部231~238は、媒体Mに面するヘッド23の下部に設けられている。図示は省略するが、ヘッド23には、ノズル部231~238が備える各ノズルに対応したピエゾ素子が設けられている。ピエゾ素子が駆動することで、ノズルからインクが吐出される。
【0031】
図4に示すように、ノズル部231~238は、Y方向に並んで設けられている。ヘッド23のY方向中心YoからY1側に向かって、ノズル部231、232、233、234が配置されている。ヘッド23のY方向中心YoからY2側に向かって、ノズル部235、236、237、238が配置されている。ノズル部231、235は黒のインクを吐出する。ノズル部232、236はイエローのインクを吐出する。ノズル部233、237はシアンのインクを吐出する。ノズル部234、238はマゼンタのインクを吐出する。すなわち、ヘッド23において、ノズル部231~238は、同じ色のインクを吐出するノズル部同士が、Y方向中心Yoに対して線対称に位置するように、配置されている。
【0032】
図5は、ノズル部231、235を構成するノズルNの配置を模式的に示す図である。
図5に示すように、ノズル部231、235は、それぞれ、複数のノズル列Nqから構成される。各ノズル列Nqは、X方向に一定の間隔Dで配列された、複数のノズルNから構成される。各ノズル列Nqは、X方向における長さLを有する。複数のノズル列Nqが、Y方向に間隔を空けて配置されている。
ノズル部231、235のノズルNは、X方向における位相を互いに異ならせて配置されている。すなわち、ノズル部231、235のそれぞれのノズルNが、X方向において交互に並ぶように配置されている。Y方向から見たときに、ノズル部231を構成するノズルN間の間隔Dに、ノズル部235を構成するノズルNが位置している。すなわち、Y方向から見たときに、同色のインクを吐出するノズル部231、235のノズルNが、X方向において連続して配置されている。
【0033】
図示は省略するが、他のノズル部も、ノズル部231、235と同様の構成を有する。さらに、ノズル部231、235と同様に、同色のインクを吐出するノズル部(ノズル部232、236;ノズル部233、237;ノズル部234、238)は、それぞれのノズルのX方向における位相を互いに異ならせて配置されている。
【0034】
図4に示すように、ヘッド24のノズル部241~248は、ヘッド23のノズル部231~238と同じ構成を有するため、詳細な説明は省略する。ヘッド24においても、ヘッド23と同様に、ノズル部241~248が、同じ色のインクを吐出するノズル部同士がY方向中心Yoに対して線対称に位置するように、配置されている。ノズル部241、245が黒のインクを吐出する。ノズル部242、246はイエローのインクを吐出する。ノズル部243、247はシアンのインクを吐出する。ノズル部244、248はマゼンタのインクを吐出する。同色のインクを吐出するノズル部(ノズル部241、245;ノズル部242、246;ノズル部243、247;ノズル部244、248)は、それぞれのノズルのX方向における位相を互いに異ならせて配置されている。
【0035】
なお、ここで示した構成はあくまで一例であり、ヘッド、ノズル部、ノズル列、ノズルの数、インクの色数、各ノズル部へのインクの色の割り当て等の設定については、適宜変更可能である。
【0036】
Y方向からヘッド部22を見ると、ヘッド23のノズル部231~238とヘッド24のノズル部241~248は、X方向に連続している。ヘッド23、24は、Y方向における位置をずらして配置されているが、移動機構29(
図2参照)でヘッド部22をY方向に移動させることで、ヘッド23、24を同じY方向の位置においてインクを吐出させることが可能である。すなわち、それぞれに長さLのノズル列Nq(
図5参照)を有するヘッド23のノズル部と、ヘッド24のノズル部は、X方向に連続する長さ2Lの一つのノズル列を構成するものとみなすことができる。
【0037】
具体的には、各ヘッド23、24内においてY方向中心Yoから同じ距離に位置するノズル部の組み合わせが、X方向に連続する一つのノズル列を構成する。
図4に示すように、ノズル部231とノズル部241、ノズル部232とノズル部242、ノズル部233とノズル部243、ノズル部234とノズル部244、ノズル部235とノズル部245、ノズル部236とノズル部246、ノズル部237とノズル部247、およびノズル部238とノズル部248の組み合わせが、それぞれX方向に連続する一つのノズル列を形成する。
【0038】
図4に示すように、ヘッド23には、Z方向に沿ったチルト軸TAが設けられている。ヘッド23およびヘッド24は、不図示のチルト機構によって、チルト軸TA回りに回動可能に設けられている。チルト軸TAは、ヘッド23の、X2側の端部領域23aに設けられている。チルト軸TAは、端部領域23aにおける、Y2側の角部の近傍に設けられている。
図3に示すように、ヘッド23の正面には、ヘッド23のチルト調整用つまみ225(以降、単に「つまみ225」という)が設けられている。つまみ225は、不図示のチルト機構と連動している。つまみ225を時計回りに動かすと、ヘッド23は時計回り(
図4参照)に回動する。つまみ225を反時計回りに動かすと、ヘッド23は、反時計回り(
図4参照)に回動する。
つまみ225は、たとえば、所定角度回動させるごとにクリック感が得られるダイヤルつまみとすることができる。
【0039】
図4に示すように、ヘッド24にも、ヘッド23と同様に、X2側の端部領域24aの、Y2側の角部の近傍にチルト軸TAが設けられている。
ヘッド24にも不図示のチルト機構が設けられており、ヘッド23と同様に、チルト軸TA回りに回動可能である。
【0040】
図3に示すように、ヘッド24の正面側には、ヘッド23のつまみ225と同じ機能を有する、つまみ225が設けられている。
ヘッド24には、さらに、ヘッド24をX方向に対して変位させるスライダ等の変位機構(不図示)が設けられている。ヘッド24の正面側には、つまみ225に加えて、変位調整用つまみ226(以降、単に「つまみ226」という)が設けられている。つまみ226は、不図示の変位機構と連動している。たとえば、つまみ226を時計回りに動かすと、ヘッド24はX方向のX2側(
図4参照)に変位する。つまみ226を反時計回りに動かすと、ヘッド24は、X方向のX1側(
図4参照)に変位する。つまみ226は、たとえば、所定角度回動させるごとにクリック感が得られるダイヤルつまみとすることができる。
【0041】
ヘッド23、24のチルト機構と、ヘッド24の変位機構は、たとえば、ノズルの点検、清掃、交換等の作業を行うために設けられている。作業後、ヘッド23とヘッド24が、それぞれ傾きの無い状態となるように、つまみ225で調整が行われる。傾きの無い状態とは、ヘッド23、24のそれぞれのノズル列NqがX方向に平行になっている状態である。
さらに、ヘッド24の端部領域24aが、Y方向から見てヘッド23にオーバーラップするように、つまみ226によって、ヘッド24のX方向の位置調整が行われる。
【0042】
このようにヘッド23、24の位置調整を行うことで、ヘッド23、24のドット位置が一致した状態となる。
【0043】
図6は、ヘッド23、24のドット位置が一致している場合の印刷例を示す図である。
図6は、Y方向の位置Yaにおいて、ヘッド23、24により、連続した1本のラインSを形成する例を示している。
前記したように、媒体Mに印刷を行う場合、コントローラ27が移動機構29を制御して、ヘッド23、24を、印刷データに含まれるドット位置に移動させて、ノズルからインクを吐出させる。
【0044】
たとえば、
図6の(a)に示すように、Y方向の位置Yaにおいて、ヘッド23のノズル部234からインクを吐出して、X方向に平行なラインS1を形成する。ラインS1は、ノズル部234を構成するノズル列NqのX方向の長さに対応する長さLを有する。続いて、
図6の(b)に示すように、ヘッド24のノズル部244をY方向の位置Yaに移動させてインクを吐出し、X方向に平行なラインS2を形成する。ラインS2は、ノズル部244を構成するノズル列Nqに対応するX方向の長さLを有する。ノズル部234によって形成されたラインS1のX1側と、ノズル部244によって形成されたラインS2のX2側が接続する。これにより、X方向に連続する長さ2LのラインSが形成される。
【0045】
このように、ヘッド23、24をY方向のY2側からY1側に移動させながらインクを吐出させることで、ヘッド23、24のノズル部同士を、X方向に連続する一つのノズル列として扱うことができる。ただし、ヘッド23、24のドット位置が一致していない場合、ヘッド23、24のノズル部同士の連続性に影響を与える可能性がある。
【0046】
前記したヘッド23、24の位置の調整は、ユーザが目視で行う。そのため、ヘッド23、24に、肉眼では把握できない傾きおよび位置ずれが生じることがある。あるいは、ヘッド23、24の製造上の誤差や摩耗等によっても、傾きおよび位置ずれが生じることがある。これらの場合、コントローラ27が、ヘッド23、24を印刷データ上の同じドット位置にインクを吐出するように制御しても、ヘッド23、24から吐出されたインクが着弾する位置(実際のドット位置)にずれが生じることがある。ヘッド23、24のインクの着弾位置(実際のドット位置)が一致しない場合、ヘッド23のノズル部とヘッド24のノズル部同士の連続性に影響を与え、印刷物の品質に影響を与える可能性がある。
【0047】
図7は、ヘッド23、24のドット位置が一致していない場合の印刷例を示す図である。
図7は、
図6と同様に、Y方向の位置Yaに、ヘッド23のノズル部234でラインS1を形成し、ヘッド24のノズル部244でラインS2を形成する例を示している。なお、
図7はラインS1、S2の傾きおよび位置ずれを誇張して示している。
【0048】
図7の(a)は、ヘッド24が反時計回りに傾いている場合の印刷例を示す図である。
この場合は、ヘッド24に形成されたラインS2にも傾きが生じ、X方向に対して非平行になる。
【0049】
図7の(b)は、ヘッド23、24にY方向の位置ずれが生じている場合の印刷例を示す図である。
図7の(b)では、ヘッド24のドット位置が、ヘッド23のドット位置に対して、Y方向におけるY1側にずれている場合を示している。
ヘッド23の形成したラインS1が、Y方向の位置Yaに位置しているのに対して、ヘッド24の形成したラインS2は、YaよりY1側に位置している。
【0050】
図7の(c)は、ヘッド23、24にX方向の位置ずれが生じている場合の印刷例を示す図である。
図7の(c)では、ヘッド24のドット位置が、ヘッド23のドット位置に対して、X方向におけるX1側に位置ずれしている場合を示している。この場合は、Y方向から見たとき、ヘッド23が形成するラインS1と、ヘッド24が形成するラインS2の間に、隙間が生じる。
【0051】
このように、
図7に示したいずれの例においても、
図6に示したようなX方向に連続する長さ2LのラインSが適切に形成されない。すなわち、ヘッド23、24の傾きや位置ずれによって、それぞれのドット位置が一致しない状態になった場合、ヘッド23、24によって形成される印刷物の品質に影響を与えるおそれがある。
【0052】
本実施形態において、コントローラ27は、ヘッド23、24の傾きおよび位置ずれを補正するための補正モードを実行する。補正モードは、たとえば、操作パネル26に表示されるメニューからユーザが選択することにより実行される。
コントローラ27は、補正モードにおいて、以下のテストパターンを媒体Mに印刷する。
・傾き補正用のテストパターン50
・Y方向の位置ずれ補正用のテストパターン60
・X方向の位置ずれ補正用のテストパターン70
【0053】
テストパターン50、60、70を用いた補正は、例えば、以下のような手順で行うことができる。
図8は、補正の手順の一例を示すフローチャートである。
最初に、テストパターン50を用いて、ヘッド23、24の傾きを補正する(ステップS1)。
次に、テストパターン60を用いて、ヘッド23、24のY方向の位置ずれを補正する(ステップS2)。
次に、テストパターン70を用いて、ヘッド23、24のX方向の位置ずれを補正する(ステップS3)。
以下に、各テストパターンの詳細と、各テストパターンを用いた補正方法を説明する。
【0054】
図9は、傾き補正用のテストパターン50を示す図である。
図9のX、Y、Z方向は、媒体Mがプラテン21(
図1参照)上に位置している際の方向を示している。
図9に示すように、傾き補正用のテストパターン50は、ヘッド23によって形成される領域51と、ヘッド24に形成される領域52とに区分される。領域51は、粗調整用の領域51Aと、微調整用の領域51Bとに区分される。領域52は、粗調整用の領域52Aと、微調整用の領域52Bとに区分される。
【0055】
粗調整用の領域51Aは、ヘッド23のノズル部231(第1ノズル部)、ノズル部235(第2ノズル部)(
図4参照)によって形成された黒色のパターンである。
微調整用の領域51Bは、ヘッド23のノズル部234(第3ノズル部)、ノズル部238(第4ノズル部)(
図4参照)によって形成されたマゼンタのパターンである。
粗調整用の領域52Aは、ヘッド24のノズル部241(第1ノズル部)、ノズル部245(第2ノズル部)(
図4参照)によって形成された黒色のパターンである。
微調整用の領域52Bは、ヘッド24のノズル部244(第3ノズル部)、ノズル部248(第4ノズル部)(
図4参照)によって形成されたマゼンタのパターンである。
すなわち、各領域は、ヘッド23、24のそれぞれにおいて、同色のインクを吐出するノズル部の組み合わせによって形成される。
【0056】
領域51A、51B、52A、52Bは、矩形のベース53の中に、反時計回りの矢印54(第1図形)と、時計回りの矢印55(第2図形)が並べて配置された構成を有する。前記したように、領域51A、51B、52A、52Bのそれぞれは、同じ色のインクで構成されているが、
図9ではわかりやすくするため、ベース53と矢印54、55に異なるハッチングを付している。
【0057】
領域51A、51B、52A、52Bは同じ構成を有するため、代表して、領域51Aの構成を詳細に説明する。
図10は、
図9の枠Aで囲んだ部分の拡大図である。
図9に示すベース53は、
図10に示すY方向に延びる複数のベースライン530(第1ベースライン)の集合で構成されている。複数のベースライン530が互いにわずかな間隔を空けてX方向に並ぶことで、全体として矩形のベース53として視認される。
【0058】
図9に示す矢印54と矢印55は、それぞれ、
図10に示す複数の矩形のブロック540(第1ブロック)の集合と、ブロック550(第2ブロック)の集合で構成されている。ブロック540、550は、複数のベースライン530の間に形成される。ブロック540とブロック550は、Y方向に間隔を空けて形成される。これによって、ブロック540の集合である矢印54と、ブロック550の集合である矢印55とは、Y方向において重ならないように位置をずらして配置される。
【0059】
矢印54を構成するブロック540は、ベースライン530のX1側(図中下側)において、ベースライン530に隣接して形成される。複数のブロック540の集合が、反時計回りの矢印54として視認される。
【0060】
矢印55を構成するブロック550は、ベースライン530のX2側(図中上側)に隣接して形成される。複数のブロック550の集合が、時計回りの矢印55として視認される。
【0061】
図11は、テストパターン50の形成方法を示す図である。
図11は、一例として、領域51Aの形成方法を示している。領域51Aのベースライン530は、ヘッド23のノズル部231によって形成される。ブロック540、550は、ヘッド23のノズル部235によって形成される。
図11では、ノズル部231、235を構成するノズルの配列と、各ノズルによって形成されるベースライン530とブロック540、550の対応を模式的に示している。
図11では、わかりやすくするためにノズルを矩形で示している。
【0062】
図11に示すように、ノズル部231のノズルN1a、N1b、N1c、N1d、N1e・・・が、X方向のX2側からX1側に向かって配置されている。
ノズル部235のノズルN5a、N5b、N5c、N5d、N5e、N5f・・・が、X方向のX2側からX1側に向かって配置されている。ノズル部235のノズルは、ノズル部231のノズルに対して、X方向の位相をずらして配置されている。すなわち、ノズル部231のノズルとノズル部235のノズルがX方向に交互に位置している。
【0063】
図11では、ベースライン530とブロック540、550との3つの組み合わせP1、P2、P3を図示している。
組み合わせP1において、ベースライン530は、ノズルN1a(第1ノズル)によって形成される。ブロック540は、ノズルN1aのX1側に位置するノズルN5b(第2ノズル)によって形成される。ブロック550は、ノズルN1aのX2側に位置するノズルN5a(第3ノズル)によって形成される。
これによって、ブロック540、550は、ベースライン530のX1側、X2側にそれぞれ隣接して形成される。組み合わせP1は、X方向において3ドット分の幅を有する。
【0064】
組み合わせP1と組み合わせP2の間には、1ドット分の間隔が設けられる。すなわち、ノズルN1bからインクは吐出されない。
【0065】
組み合わせP2のベースライン530はノズルN1c(第1ノズル)によって形成される。ブロック540は、ノズルN1cのX1側に位置するノズルN5d(第2ノズル)によって形成される。ブロック550は、ノズルN1cのX2側に位置するノズルN5c(第3ノズル)によって形成される。
組み合わせP2と組み合わせP3の間には、1ドット分の間隔が設けられる。すなわち、ノズルN1dからインクは吐出されない。
組み合わせP3のベースライン530はノズルN1e(第1ノズル)によって形成される。ブロック540は、ノズルN1eのX1側のノズルN5f(第2ノズル)によって形成される。ブロック550は、ノズルN1eのX2側のノズルN5e(第3ノズル)によって形成される。
組み合わせP2、P3も、組み合わせP1と同様に、X方向において3ドット分の幅を有する。
【0066】
このように、ベースライン530は、ノズル部231のノズルを1つおきに使用して形成される。ブロック540は、ノズル部235の、ベースライン530を形成するノズル部231のノズルに対して、X方向の一方側(X1側)において隣り合うノズルによって形成される。ブロック550は、ノズル部235の、ベースライン530を形成するノズル部231のノズルに対して、X方向の他方側(X2側)において隣り合うノズルによって形成される。すなわち、ブロック540とブロック550は、X方向において互いに位置をずらし、重ならないように配列される。
【0067】
図11は、ヘッド23に傾きが無い状態で形成されるテストパターン50を示している。
図4に示すように、ベースライン530を形成するノズル部231は、ブロック540、550を形成するノズル部235よりも、チルト軸TAから離れている。詳細は後述するが、このチルト軸TAとの距離の違いによって、ヘッド23に傾きがあった際、ベースライン530とブロック540、550との位置関係に変化が生じる。
【0068】
他の領域も、領域51Aと同様の方法で形成される。
図9に示す微調整用の領域51Bにおいて、ベース53(ベースライン530、第2ベースライン)は、ヘッド23のノズル部234(第3ノズル部)によって形成される。矢印54(ブロック540、第3ブロック)、矢印55(ブロック550、第4ブロック)はノズル部238(第4ノズル部)によって形成される。
粗調整用の領域52Aにおいて、ベース53(ベースライン530、第1ベースライン)は、ヘッド24のノズル部241(第1ノズル部)によって形成される。矢印54(ブロック540、第1ブロック)、矢印55(ブロック550、第2ブロック)はノズル部245(第2ノズル部)によって形成される。
微調整用の領域52Bにおいて、ベース53(ベースライン530、第2ベースライン)は、ヘッド24のノズル部244(第3ノズル部)によって形成される。矢印54(ブロック540、第3ブロック)、矢印55(ブロック550、第4ブロック)はノズル部248(第4ノズル部)によって形成される。
このように、いずれの領域においても、ベース53(ベースライン530)はチルト軸TAからの距離が遠いノズル部で形成し、矢印54、55(ブロック540、550)は、チルト軸TAからの距離が近いノズル部で形成される。
【0069】
図12は、ヘッド23に傾きがあった場合のテストパターン50の変化を説明する図である。
図12の(a)は、ヘッド23が時計回りCWに傾いた場合のノズル部234、238の変位を示す図である。
図12の(a)ではヘッド23の傾きの影響がわかりやすいように、ノズル部間の距離が長いノズル部234、238を示している。また、
図12の(a)では、わかりやすくするために、ノズル部234、238の位置関係を模式的に示している。
図12の(b)は、ヘッド23が時計回りCWに傾いた場合に、ノズル部234、238によって形成される領域51Bの変化を説明する図である。
図12の(a)は、傾いていない状態のヘッド23を破線で示し、時計回りCWに傾いたヘッド23を実線で示している。
図12の(a)に示すように、ヘッド23が時計回りCWに傾いた場合、ヘッド23に備えられているノズル部234、238は、X方向において、X2側に変位する。
【0070】
図12の(b)に示すように、ノズル部234、238の変位に応じて、これらのノズル部によって形成されるベースライン530とブロック540、550も、X方向に変位する。
なお、ヘッド23の傾きによってノズル部234、238はY方向にも変位しているが、
図12の(b)では、わかりやすくするためにY方向の変位は無視して、ベースライン530とブロック540、550はY方向に平行に示している。
【0071】
図12の(a)に示すように、ヘッド23が回動する際、回動中心であるチルト軸TAから遠いノズル部ほど、X方向の変位量が大きくなる。チルト軸TAから遠いノズル部234のX方向の変位量ΔXAは、チルト軸TAに近いノズル部238のX方向の変位量ΔXBよりも大きい(ΔXA>ΔXB)。
【0072】
ノズル部234、238の変位量の差は、これらによって形成されるベースライン530と、ブロック540、550のX方向の変位量にも反映される。すなわち、ベースライン530のX方向の変位量は、ブロック540、550より大きくなる。そのため、
図12の(b)に示すように、組み合わせP1~P3のベースライン530は、同じ組み合わせ内のブロック540、550に対して、X2側に相対的に変位する。
図11に示すように、ヘッド23に傾きが無い状態では、ベースライン530はブロック540、550の間に位置していた。
図12の(b)に示すように、ベースライン530がX2側に変位することで、組み合わせP1のベースライン530は、同じ組み合わせP1のブロック540から離間し、ブロック550に一部が重なる。組み合わせP2、P3にも同様の変化が生じる。この、ベースライン530とブロック540、550の相対的な位置の変化は、領域51B全体に現れる。
【0073】
ここで、人間の視覚では、同じ面積内において、線同士が離れていると色が濃く見え、線同士が近いまたは接触していると色が薄く見える。
すなわち、ベースライン530から離間したブロック540の集合である矢印54は、ベースライン530に一部が重なるブロック550の集合である矢印55よりも濃く見えるという現象が生じる。
ここで、
図12の(a)では、ヘッド23は時計回りCWに傾いているため、ヘッド23の傾きを調整するためにはつまみ225を反時計回りCCWに回す必要がある。
図12の(b)に示すように、ユーザは、濃く見える矢印54が示す方向にしたがって、つまみ225を反時計回りCCWに回動させることで、ヘッド23の傾きを補正することができる。
【0074】
図13は、ヘッド23に傾きがあった場合のテストパターン50の変化を説明する図である。
図13の(a)は、ヘッド23が反時計回りCCWに傾いた場合のノズル部234、238の変位を模式的に示す図である。
図13の(b)は、ヘッド23が反時計回りCCWに傾いた場合のテストパターン50の変化と、つまみ225の回動方向を説明する図である。
図13の(b)は、
図12の(b)と同様に、Y方向の変位は無視して、ベースライン530とブロック540、550はY方向に平行に示している。
【0075】
図13の(a)に示すように、ヘッド23が反時計回りCCWに傾いた場合、ヘッド23に備えられているノズル部234、238は、X方向において、X1側に変位する。チルト軸TAから遠いノズル部234のX方向の変位量ΔXCは、チルト軸TAに近いノズル部238のX方向の変位量ΔXDよりも大きい(ΔXC>ΔXD)。
【0076】
図13の(b)に示すように、ベースライン530は、ブロック540、550に対してX1側に相対的に変位する。組み合わせP1~P3のベースライン530は、同じ組み合わせのブロック550から離間し、ブロック540に一部が重なる。これによって、ブロック550の集合である矢印55は、ブロック540の集合である矢印54よりも濃く見えるという現象が生じる。
ここで、
図13の(a)では、ヘッド23は反時計回りCCWに傾いているため、ヘッド23の傾きを調整するためにはつまみ225を時計回りCWに回す必要がある。すなわち、ユーザは、濃く見える矢印55が示す方向にしたがって、つまみ225を時計回りCWに回動させることで、ヘッド23の傾きを補正することができる。
【0077】
このように、ベースライン530のX1、X2側にブロック540、550を形成する。さらに、ブロック540、550を形成するノズル部は、ベースライン530を形成するノズル部よりも、チルト軸TAに近いものを使用する。これによって、ヘッド23が傾いた際のベースライン530とブロック540、550との変位量に差が生まれ、ベースライン530は、ブロック540、550に対して相対的に変位する。ベースライン530は、ヘッド23の傾きの方向に応じて、X1側、X2側のいずれかに変位し、ブロック540、550のそれぞれとの距離に差が生じる。この距離の差によって、矢印54、55に濃度の差が生じる。ユーザは、ヘッド23の傾きの補正方向がX2側(時計回りCW)であるのか、X1側(反時計回りCCW)であるのかを把握することができる。
【0078】
ここで、個々のベースライン530とブロック540、550は非常に小さいものである。たとえば、ベースライン530とブロック540、550の一つの組み合わせP1のみを媒体Mに印刷した場合、それぞれの距離の差は把握するのにはルーペが必要となる。
実施形態では、複数のベースライン530とブロック540、550の組み合わせを印刷し、ベースライン530の集合であるベース53の中に、ブロック540とブロック550のそれぞれの集合である矢印54、55を形成している。前記したように、人間の視覚では、同じ面積内において、線同士が離れていると色が濃く見え、線同士が近いまたは接触していると色が薄く見える。線の集合体である矢印54、55においては、この濃度の差はさらに視認されやすくなる。
【0079】
実施形態では、さらに、ブロック540、550の集合で形成する図形を、ヘッド23の傾きの補正方向(チルト軸TAの回動方向)を示す矢印54、55とした。すなわち、ヘッド23のX2側(時計回りCW)への傾きによって濃くなる矢印54は、反時計回りCCWの表示とした。ヘッド23のX1側(反時計回りCCW)への傾きによって濃くなる矢印55は、時計回りCWの表示とした。
【0080】
たとえば、ベースライン530とブロック540、550の一つの組み合わせP1のみを媒体Mに印刷した場合、それぞれの距離の差からつまみ225をどちらの方向に回すかは直感的に把握しにくい。ヘッド23の傾きの方向に応じて濃く見える矢印54、55に、ヘッド23の傾きの方向とは反対の方向、すなわち補正方向の表示を割り当てることで、ユーザはつまみ225を回動させる方向を直感的に把握できる。
【0081】
テストパターン50において、ヘッド23の傾きを示す領域51と、ヘッド24の傾きを示す領域52が同じ媒体M上に形成される。そのため、ユーザは1つのテストパターン50から、ヘッド23、24の双方の調整を行うことが可能である。
ヘッド23、24の傾きが無い状態では、矢印54、55の濃度の差は生じない。ユーザは、矢印54、55の濃度の差に応じてつまみ225を回動させ、再びテストパターン50を印刷して矢印54、55の濃度の変化を確認する。ユーザはこれを繰り返して、矢印54、55の濃度の差が無くなるまで、ヘッド23、24の調整を行う。
【0082】
図9に示すように、テストパターン50の領域51は、粗調整用の領域51Aと微調整用の領域51Bとに区分されている。領域52も、粗調整用の領域52Aと、微調整用の領域52Bとに区分される。ユーザは、ヘッド23、24の傾きが大きい初期段階では、領域51A、52Aを用いて粗調整を行い、傾き補正が進んだ段階では、領域51B、52Bを用いて微調整を行う。なお、
図9は、微調整用の領域51B、52Bを用いて、傾き補正を行う段階を図示している。
粗調整用の領域51A、52Aは、ノズル部間のY方向における距離が短い(近い)ノズル部の組み合わせで形成する。微調整用の領域51B、52Bは、ノズル部間のY方向における距離が長い(遠い)ノズル部の組み合わせで形成する。これによって、微調整用の領域51B、52Bでは、粗調整用の領域51A、52Aよりも、ヘッド23、24の傾きによる影響が大きく表れる。
【0083】
図14は、ヘッド23のノズル部の位置関係を説明する図である。
図14の(a)は、ヘッド23の、領域51A(
図9参照)を形成するノズル部231、235と、領域51B(
図9参照)を形成するノズル部234、238の位置関係を模式的に示す図である。
図14の(b)は、ヘッド23が傾いた際の各ノズル部の変位量の差を説明する図である。
図14の(a)に示すように、微調整用の領域51Bを形成するノズル部234、238間の距離D3は、粗調整用の領域51Aを形成するノズル部231、235間の距離D2よりも長い。さらに、領域51Bのベースライン530を形成するノズル部234は、領域51Aのベースライン530を形成するノズル部231よりもチルト軸TAから離れている。領域51Bのブロック540、550を形成するノズル部238は、領域51Aのブロック540、550を形成するノズル部235よりも、チルト軸TAに近い。
【0084】
このような位置関係によって、
図14の(b)に示すように、ヘッド23が傾いた際、ノズル部234、238間のX方向の変位量の差(ΔXA-ΔXB)は、ノズル部231、235間のX方向の変位量の差(ΔXE-ΔXF)よりも大きくなる。この変位量の差によって、ヘッド23が傾いた際に、領域51Bでは領域51Aよりも、ベースライン530とブロック540、550の相対的な変位量が大きくなる。
【0085】
図15は、ヘッド23の傾きが大きい場合の、領域51Aと領域51BのX方向の変位を説明する図である。
図15の(a)が、領域51Aを示し、
図15の(b)が領域51Bを示している。
図15は、ヘッド23が時計回りに傾いた場合を示している。
図15の(a)に示すように、ヘッド23の傾きが大きい段階では、領域51Aにおいても、ベースライン530はX2側に比較的大きく変位する。組み合わせP1、P2のベースライン530は同じ組み合わせ内のブロック550と一部重なり、ブロック540と離間する。これによって、つまみ225の回動方向(反時計回り)に応じた矢印54が濃く見える。
一方、領域51Bでは、ベースライン530が、領域51Aよりもさらに大きくX2側に変位する。組み合わせP1、P2のベースライン530は、同じ組み合わせ内のブロック550と重ならない。さらに、組み合わせP2のベースライン530は、別の組み合わせP1のブロック540に近づいている。これによって、矢印54、55の濃度の差が明確にならない可能性や、つまみ225の回動方向(反時計回り)とは反対の矢印55が濃く見える可能性がある。
そのため、ヘッド23の傾きが大きい初期段階では、ヘッド23の傾きによる影響が小さい領域51Aを用いて粗調整を行う。
【0086】
図16は、ヘッド23の傾きが小さい場合の、領域51Aと領域51BのX方向の変位を説明する図である。
図16の(a)が、領域51Aを示し、
図16の(b)が領域51Bを示している。
図16は、ヘッド23が時計回りに傾いた場合を示している。
【0087】
粗調整が進んでヘッド23の傾きが小さくなると、領域51Aでは、ベースライン530の変位が小さくなる。組み合わせP1、P2のベースライン530は、ブロック550と重ならず、ブロック540との距離も近くなるため、矢印54、55の濃度の差が表れにくくなる。
一方、領域51Bでは、領域51Aよりも、ベースライン530の変位が大きいため、ベースライン530は、ブロック550と一部重なり、X1側のブロック540と離間している。これによって、つまみ225の回動方向(反時計回り)に応じた矢印54が濃く見える。
このように、ヘッド23の傾きの補正が進んだ段階では、ヘッド23の傾きによる影響が大きい領域51Bを用いて、ヘッド23の微細な角度の調整を行うことができる。
【0088】
詳細な説明は省略するが、ヘッド24についても、領域52Aを用いて粗調整を行い、領域52Bを用いて微調整を行うことができる。テストパターン50では、粗調整用の領域51A、52Aと微調整用の領域51B、52Bが同じ媒体M上に印刷される。ユーザは粗調整と微調整のモードを選択して印刷する必要が無い。ユーザは、テストパターン50で領域51A、52Aと領域51B、52Bを見比べられるため、スムーズに粗調整から微調整へ移行することができる。
【0089】
粗調整と微調整では、つまみ225によって、ヘッド23、24を回動させる量を異ならせても良い。
たとえば、粗調整では、つまみ225を5クリック分回動させるのに対し、微調整では、つまみ225を3クリック分回動させても良い。
また、
図9に示すように、領域51A、51B、52A、52Bのそれぞれに、2組の矢印54、55が印刷されている。矢印54、55が1組だけの場合、誤差によって濃度の差が適切に表れない場合もある。実施形態では、誤差を考慮して、複数組の矢印54、55を印刷している。
ユーザは、領域51A、51B、52A、52Bのそれぞれを用いて調整を行う場合、2組の矢印54、55の両方において、濃度の差が無くなるように、調整を行うことができる。なお、領域51A、51B、52A、52Bのそれぞれにおいて、3組以上の矢印54、55を印刷しても良い。
【0090】
テストパターン50を用いたヘッド23、24の傾き補正が完了したら、続いて、テストパターン60を用いたY方向の位置ずれ補正を行う(
図8、ステップS2)。
テストパターン60は、ヘッド23、24において、連続するノズル列を形成するノズル部の組み合わせで形成する。前記したように、実施形態では8つの組み合わせがあるが、ステップS2では、1つのノズル部の組み合わせを用いてテストパターン60を形成する。
【0091】
ここでは、ヘッド23のノズル部234と、ヘッド24のノズル部244の組み合わせにより、テストパターン60を形成する例を説明する。
なお、ヘッド23、24にはY方向の変位機構は備えられていない。実施形態では、テストパターン60で、Y方向の位置ずれが確認された場合は、印刷データに含まれるドット位置のデータを補正することで、Y方向の位置ずれを補正する。
【0092】
図17は、Y方向の位置ずれ補正用のテストパターン60を示す図である。
図18は、テストパターン60の形成方法を説明する図である。
図18の(a)は、第1ライン部610の形成を説明する図である。
図18の(b)は、第2ライン部620の形成を説明する図である。
図17および
図18のX、Y、Z方向は、媒体Mがプラテン21(
図1参照)上に位置している際の方向を示している。
図17および
図18は、ヘッド23とヘッド24のドット位置が一致している状態で形成されるテストパターン60を示している。
【0093】
図17に示すように、テストパターン60は、ヘッド23のノズル部234によって形成される第1ライン61と、ヘッド24のノズル部244によって形成される第2ライン62と、を有する。
図18の(a)に示すように、第1ライン61は、X方向に平行に延びるラインである。複数の第1ライン61がY方向に間隔D4で配置され、Y方向の幅Wを有する第1ライン部610が形成される。
図17に示すように、テストパターン60では、複数の第1ライン部610が、Y方向に間隔を空けて形成されている。
図17では、4つの第1ライン部610を形成する例を示している。
【0094】
図18の(b)に示すように、第2ライン62は、X方向に平行に延びるラインである。複数の第2ライン62がY方向に間隔D4で配置され、Y方向の幅Wを有する第2ライン部620が形成される。
【0095】
第2ライン62は、Y方向において複数の第1ライン61の間に形成される。第2ライン62は、Y方向において、第1ライン61同士の間隔D4内に位置する。第2ライン62は、X方向において、第1ライン61よりもX2側に位置をずらして形成される。Y方向から見た場合、第1ライン61と第2ライン62の一部がオーバーラップしている。
すなわち、テストパターン60は、第1ライン61と第2ライン62が、Y方向から見てオーバーラップするオーバーラップ部630を有する。オーバーラップ部630において、第1ライン61と第2ライン62は、Y方向に交互に並んでいる。言い換えると、オーバーラップ部630において、第2ライン62は、隣り合う第1ライン61の間隔D4を埋めるように配置される。
実際の間隔D4は非常に小さい。そのため、
図17に示すように、肉眼では、オーバーラップ部630は、インクで塗りつぶされた領域、すなわちベタ塗りされた領域として視認される。
【0096】
図17に示すように、4つの第1ライン部610に対して、一つ置きに第2ライン部620が形成される。すなわち、2つの第1ライン部610にはオーバーラップ部630が形成されている。その間の第1ライン部610にはオーバーラップ部630が形成されない。
【0097】
図17に示すように、テストパターン60は、各第1ライン部610のY1側に形成された第1基準ライン64を有する。第1基準ライン64は、第1ライン部610と同様に、ヘッド23のノズル部234によって形成される。
図18に示すように、第1基準ライン64は、X方向に平行に延びるラインであり、第1ライン61と同じX方向の長さを有する。第1基準ライン64は、X方向において、第1ライン部610と同じ位置に形成される。
【0098】
テストパターン60は、各第2ライン部620のY1側に形成された第2基準ライン65を有する。第2基準ライン65は、第2ライン部620と同様に、ヘッド24のノズル部244によって形成される。
第2基準ライン65は、X方向に平行に延びるラインであり、第2ライン62と同じX方向の長さを有する。第2基準ライン65は、X方向において、第2ライン部620と同じ位置に形成される。第2基準ライン65は、第1基準ライン64とY方向において同じ位置に形成される。第2基準ライン65は、第1基準ライン64のX2側に位置をずらして形成される。すなわち、第1基準ライン64と第2基準ライン65は、媒体Mにおいて一部が重畳して印刷される。これによって、第1基準ライン64と第2基準ライン65は、1つの連続したラインとして視認される。
【0099】
図17に示すように、テストパターン60は、サンプルブロック660を有する。サンプルブロック660は、第1ライン部610のY2側に形成される。サンプルブロック660は、単色のインクで塗りつぶされた、いわゆる「ベタ塗り」の矩形状の図形である。サンプルブロック660は、ヘッド23のノズル部234のみで形成される。サンプルブロック660は、X方向において第1ライン部610と同じ位置に形成される。
【0100】
テストパターン60は、ヘッド23、24をそれぞれ、同じ方向に移動させながら形成する。テストパターン60の第1ライン部610、第1基準ライン64およびサンプルブロック660は、たとえば、ヘッド23をY方向のY2側からY1側に移動させながらインクを吐出して形成する。テストパターン60の第2ライン部620および第2基準ライン65は、たとえば、ヘッド24を、ヘッド23と同様に、Y方向のY2側からY1側に移動させながらインクを吐出して形成する。
【0101】
図19は、ヘッド23、24にY方向の位置ずれがあった場合の、テストパターン60の変化を説明する図である。
図19は、ヘッド24のドット位置が、ヘッド23のドット位置に対してY2側にずれている場合を示している。
ヘッド24のドット位置がY2側にずれることで、ヘッド24によって形成される第2ライン62が、Y2側に変位する。
これによって、
図19に示すように、オーバーラップ部630において、第2ライン62が、第1ライン61に近づいたり、第1ライン61に重なったりする。第1ライン61の間隔D4が第2ライン62によって埋められず、インクが吐出されない部分として視認される。言い換えると、オーバーラップ部630は塗りムラが生じた状態となり、
図19で示すようなベタ塗りと視認されなくなる。
ユーザは、ベタ塗りされたサンプルブロック660(
図17参照)とオーバーラップ部630の状態を比較することで、ヘッド23とヘッド24のドット位置にY方向のずれが生じていることを把握することができる。
【0102】
図19に示すように、ヘッド24のドット位置がY2側にずれることで、ヘッド24によって形成される第2基準ライン65も、第2ライン62と同様に、Y2側に変位する。これによって、第1基準ライン64と第2基準ライン65のY方向の位置にずれが生じ、第2基準ライン65は第1基準ライン64に重畳せず、第1基準ライン64よりもY2側に位置する。ユーザは、第1基準ライン64と第2基準ライン65を比較することで、ヘッド24のドット位置が、ヘッド23のドット位置に対して、Y2側にずれていることを把握することができる。さらに、第2基準ライン65の第1基準ライン64に対するずれ量を見ることで、ヘッド24のドット位置のおおよそのずれ量を把握することができる。
【0103】
なお、
図17に示すように、テストパターン60では、オーバーラップ部630が形成されていない第1ライン部610を設けている。すべての第1ライン部610にオーバーラップ部を設けた場合、媒体Mの向きが変わった際等に、第1ライン部610と第2ライン部620の区別がつけにくくなる可能性がある。ユーザは、オーバーラップ部630が形成されていない第1ライン部610を基準として、第1ライン部610と第2ライン部620を判別することができる。
【0104】
図示は省略するが、コントローラ27(
図1参照)は、たとえば、補正モードにおいて、ヘッド24のノズル部241~248のドット位置を補正するための補正値の入力を受け付ける。コントローラ27は、たとえば、操作パネル26(
図1参照)に、補正値の入力部を表示させる。ユーザは、テストパターン60から確認されるヘッド24のドット位置のずれ方向とずれ量に応じた補正値を入力する。この際、ユーザはヘッド24のノズル部244のついてのみ補正値を入力しても良い。あるいは、ヘッド24のすべてのノズル部241~248に対して、同じ補正値を入力しても良い。
【0105】
ユーザは、オーバーラップ部630(
図19参照)が、サンプルブロック660と同じベタ塗りの状態(
図17参照)になるまで、テストパターン60の印刷を補正値の入力を繰り返す。
これによって、ヘッド23、24のY方向の位置ずれを補正することができる。コントローラ27は、印刷時には、印刷データにおけるヘッド24のドット位置に補正値を反映させて、ヘッド24の移動を制御する。
【0106】
なお、ヘッド24にY方向の変位機構を設け、変位機構により、ヘッド23とヘッド24のY方向の位置ずれを補正しても良い。
【0107】
ヘッド23、24のY方向の位置ずれ補正が完了したら、続いて、テストパターン70を用いて、ヘッド23、24のX方向の位置ずれ補正を行う(
図8、ステップS3)。
テストパターン70は、テストパターン60と同様に、ヘッド23のノズル部234とヘッド24のノズル部244を用いて形成する。
【0108】
図20は、X方向の位置ずれ補正用のテストパターン70を示す図である。
図20のX、Y、Z方向は、媒体Mがプラテン21上に位置している際の方向を示している。また、
図20は、ノズル部234、244のドット位置が一致している状態で形成したテストパターン70を示している。
【0109】
図20に示すように、テストパターン70は、矩形状のブロック71と、台形状のブロック81と、ライン91の、3つの図形から構成される。
テストパターン70の各図形は、X方向に平行な線分HLを境界として、X2側の領域がヘッド23のノズル部234によって形成され、X1側の領域がヘッド24のノズル部244によって形成されている。なお、線分HL上に位置する境界は、実際には目立たないが、
図20ではわかりやすくするために太線で示している。
また、テストパターン70はすべてマゼンタのインクで形成されるものであるが、
図20では、わかりやすくするために、ノズル部234、ノズル部244それぞれが形成する領域に異なるハッチングを付している。
【0110】
図21は、
図20の枠Aで囲んだ部分の拡大図である。
ブロック71は、線分HLのX2側に、ヘッド23によって形成される領域71A(第1領域)を有する。ブロック71は、線分HLのX1側に、ヘッド24によって形成される領域71B(第2領域)を有する。
図21に示すように、領域71A、71Bの境界には、線分HLを跨ぐ形で凹凸が形成されている。
凹凸は、線分HLのX2側に位置する線状部72(第1線状部)と、線分HLのX1側に位置する線状部73(第2線状部)と、線状部72、73の端部同士を接続する線状部74(第3線状部)とから形成される。
線状部72と線状部73は、線分HLに平行に延びる。線状部72と線状部73は、Y方向において交互に並んでいる。線状部74は、線分HLと直交する方向に延びる。上から見ると、領域71A、71Bの境界には、矩形状の凹凸がY方向に連続して並んでいる。
【0111】
線状部72、73、74は、ヘッド23のノズル部234から吐出されたインクと、ヘッド24のノズル部244から吐出されたインクとが重畳して形成されている。すなわち、線状部72、73、74は、領域71AのX1側の端部と、領域71BのX2側の端部が重畳して形成されている。
【0112】
なお、ヘッド23、24のドット位置が一致している状態では、線分HLを跨ぐ凹凸形状は、肉眼では視認しにくい状態である。
【0113】
図20に示すように、台形状のブロック81は、線分HLを境界として、ヘッド23によって形成されるX2側の領域81Aと、ヘッド24によって形成されるX1側の領域81Bと、を有する。ブロック81は、Y1側の端部82とY2側の端部83を有する。端部82は、X方向に平行に延びる直線である。端部83は、X方向に対して傾斜する斜線である。端部83は、X2側からX1側に向かうにつれて、Y2側に近づく方向に傾斜している。
【0114】
ライン91は、X方向に延びる直線状のラインである。ライン91は、線分HLを境界として、ヘッド23によって形成されるX2側の領域91Aと、ヘッド24によって形成されるX1側の領域91Bと、を有する。
【0115】
図22は、ヘッド23、24がX方向に位置ずれしている場合の、テストパターン70の変化を説明する図である。
図22は、ブロック71の線分HL周りを示している。
図22の(a)は、ヘッド24のドット位置が、ヘッド23のドット位置のX1側に位置ずれしている場合を示している。
図22の(b)は、ヘッド24のドット位置が、ヘッド23のドット位置のX2側に位置ずれしている場合を示している。
【0116】
図22の(a)に示すように、ヘッド24がX方向のX1側に位置ずれしている場合、ブロック71の領域71B全体が、領域71Aから離れる方向に変位する。これによって、領域71Aの端部と領域71Bの端部が重畳されず、領域71Aと領域71Bの境界に隙間が生じる。ここで、隙間とは、インクが吐出されていない部分を意味する。
【0117】
具体的には、領域71Aの線状部72と、領域71Bの線状部72の間に隙間75Aが形成される。領域71Aの線状部73と領域71Bの線状部73の間に隙間75Bが形成される。線分HLのX2側の隙間75Aと、X1側の隙間75Bは、Y方向に交互に並び、連続して形成される。
【0118】
ユーザは、ブロック71に隙間75A、75Bが形成された場合には、ヘッド24のドット位置がヘッド23のドット位置に対して、X1側にずれていることを把握することができる。ユーザは、不図示の変位機構により、ヘッド24をX2側に変位させることで、ヘッド24のX方向の位置ずれを補正することができる。
【0119】
図22の(b)に示すように、ヘッド24がX方向のX2側に位置ずれしている場合、ブロック71の領域71B全体が、領域71Aに近づく方向に変位する。これによって、領域71Bの端部は、領域71Aの端部よりX2側に変位し、領域71Aに重畳する。
具体的には、領域71Bの線状部72が領域71Aに重畳し、高濃度領域76Aが形成される。領域71Bの線状部73が領域71Aに重畳し、高濃度領域76Bが形成される。高濃度領域76A、76Bは、インクが重畳することにより、色が濃く見える領域である。
線分HLのX1側の高濃度領域76Aと、X2側の高濃度領域76Bは、Y方向に交互に並び、連続して形成される。
【0120】
ユーザは、ブロック71に高濃度領域76A、76Bが形成された場合には、ヘッド24のドット位置がヘッド23のドット位置に対して、X2側にずれていることを把握することができる。ユーザは、不図示の変位機構により、ヘッド24をX1側に変位させることで、ヘッド24の位置ずれを調整することができる。
【0121】
図示は省略するが、ヘッド24のドット位置がX方向に位置ずれすると、
図23に示すブロック81とライン91にも、隙間または高濃度領域が生じる。ユーザは、ブロック81とライン91からも、ヘッド23、24のX方向の位置ずれを把握することができる。
【0122】
ここで、ヘッド23、24のX方向の位置ずれがわずかな場合、隙間75A、75Bまたは高濃度領域76A、76Bは小さなものとなり、単体では視認しにくい場合がある。特に、ノズル部234、244は同色のインクを吐出するため、高濃度領域は視認しにくい。ブロック71において、隙間75A、75Bまたは高濃度領域76A、76Bが、線分HLのX1側とX2側に位置をずらして形成され、さらにY方向において交互に連続して表れる。そのため、隙間75A、75Bまたは高濃度領域76A、76Bが連続したパターンとして視認されやすい。
【0123】
なお、ここでは、テストパターン70からヘッド24のX方向の位置ずれを把握する態様について説明したが、テストパターン70から、Y方向の位置ずれや、ヘッド23、24の傾きを把握することも可能である。
【0124】
図23は、ヘッド23、24にY方向の位置ずれがあった場合のテストパターン70を示す図である。
図23では、ヘッド24のノズル部244のドット位置が、Y1側に位置ずれしている場合のテストパターン70を示す図である。
ブロック71において、領域71BがY1側にずれることで、領域71Aの線状部74と領域71Bの線状部74のY方向の位置がずれる。これによって、Y1側の線状部74には高濃度領域が形成され、Y2側の線状部74には隙間が生じる。
ブロック81において、領域81BがY1側にずれることで、Y方向の端部82、83は、線分HLが通る位置において段差が生じる。特に、端部83は斜辺であるため、段差が視認されやすい。
ライン91においても、領域91BがY1側にずれることで、線分HLが通る位置において段差が生じる。ユーザは、これらの現象から、テストパターン70においてドット位置のずれを把握することができる。
さらに図示は省略するが、ヘッド23、24のいずれかが傾いた場合も同様に、ライン91の領域91Aまたは91Bが傾いて、ライン91はX方向に連続した直線ではなくなる。ユーザは、この現象からヘッド23、24の傾きを把握することが可能である。
【0125】
テストパターン70においてこれらの現象が確認された場合は、傾き補正またはドット位置補正が十分ではなかった可能性があるため、テストパターン50、60を用いた調整に戻ることができる。
【0126】
なお、前記した例では、ブロック71の領域71Aと領域71Bの端部として線状部72(第1線状部)、線状部73(第2線状部)および線状部74(第3線状部)を形成する例を説明したが、線状部72~74のみでも、ヘッド23、24の位置ずれを把握することは可能である。テストパターン70において、ブロック71全体を印刷せず、ヘッド23、24により、線状部72~74からなる凹凸形状のみを印刷しても良い。
【0127】
テストパターン70によるX方向の位置ずれ補正が完了した場合、
図8に示すように、補正処理を終了しても良い。
あるいは、ヘッド23、24のノズル部234、244以外のノズル部の組み合わせを用いて、テストパターン60の形成を行っても良い。基準となるノズル部234、244のY方向の位置ずれが補正されても、他のノズル部の組み合わせに、微細なY方向の位置ずれがある可能性もある。他のノズル部の組み合わせでもテストパターン60を形成することにより、より精度の高い位置補正を行うことができる。
【0128】
さらに、テストパターン50による傾き補正が完了した後に、テストパターン60、70を用いてY方向の位置ずれ補正またはX方向の位置ずれ補正を行った場合は、再びテストパターン50による傾き補正を行っても良い。すべてのテストパターンにおいて、補正の必要が無くなった段階で、補正処理を終了しても良い。
【0129】
このように、テストパターン50、60、70を用いた調整を行うことにより、印刷装置1は、ヘッド23、24のドット位置が一致した状態で印刷を行うことができ、印刷品質を向上させることができる。なお、「ヘッド23、24のドット位置(インクの着弾位置)が一致している状態」とは、完全に一致している状態だけではなく、印刷品質として問題が無い程度のずれがある状態も含む。
【0130】
実施形態では、テストパターン50、60、70を別々に媒体Mに印刷する例を説明したが、この態様に限定されない。テストパターン50、60、70は同じ媒体Mに印刷しても良い。
【0131】
以上の通り、実施形態で説明したテストパターン50は、たとえば、以下の構成を有する。
(1)テストパターン50は、複数のノズル部231~238、241~248を備えるヘッド23、24(インクジェットヘッド)から媒体Mにインクを吐出することにより、媒体Mに印刷される。
テストパターン50の領域51A、52Aは、ヘッド23、24のノズル部231、241(第1ノズル部)から吐出されたインクにより、Y方向(第1の方向、主走査方向)に沿って形成されたベースライン530(第1ベースライン)と、
ヘッド23、24の第1のノズル部231、241とY方向に間隔を空けて設けられたノズル部235、245(第2ノズル部)から吐出されたインクにより形成された、ブロック540(第1ブロック)およびブロック550(第2ブロック)と、を含む。
ブロック540は、ベースライン530のY方向に直交するX方向(第2の方向、副走査方向)におけるX1側(一方側)に形成され、ブロック550は、X2側(他方側)に形成される。
【0132】
ヘッド23、24が傾いている場合、ベースライン530がブロック540、550に対して相対的に変位するため、ベースライン530とブロック540との距離と、ベースライン530とブロック550との距離に差が生じる。ユーザは、この距離の差を確認することにより、ヘッド23、24の傾きを把握することができる。
【0133】
(2)テストパターン50において、複数のベースライン530が、X方向に間隔を空けて形成される。
ブロック540は、複数のベースライン530のそれぞれのX1側において、X方向に沿って複数配列される。
ブロック550は、複数のベースライン530のそれぞれのX2側において、X方向に沿って複数配列される。
複数のブロック540の集合と、複数のブロック550の集合とは、X方向において重ならないように、位置をずらして配列されている。
ブロック540の集合が矢印54(第1図形)を形成する。ブロック550の集合が矢印55(第2図形)を形成する。
(3)ヘッド23、24は、X方向およびY方向に直交するZ方向(第3の方向)に沿って延びるチルト軸TAを中心として回動可能に設けられている。
(4)第1図形である矢印54と第2図形である矢印55とは、異なる意匠の図形である。ヘッド23、24のチルト軸TAの回動方向に応じて、矢印54、矢印55のいずれか一方が、他方よりも濃い図形として視認される。
【0134】
人間の視覚において、同じ線種であっても、線同士の距離が近いと濃度が薄く見え、線同士の距離が遠いと濃く見えるという錯覚がはたらく。ブロック540の集合とブロック550の集合によって形成された矢印54、55は、ヘッド23、24の傾き方向(チルト軸の回動方向)に応じて、濃度が異なるように視認される。これにより、ユーザは、肉眼でテストパターン50からヘッド23、24の傾きを把握することが可能となる。ルーペ等の道具が不要となるため、利便性を向上させることができる。
なお、第1図形および第2図形は、異なる意匠であれば良く、矢印54、55に限定されない。第1図形および第2図形は矢印以外の図形としても良く、例えば、文字としても良い。
【0135】
(5)矢印54(第1図形)および矢印55(第2図形)は、それぞれ、チルト軸TAの回動方向を示す表示である。
【0136】
印刷装置1に、たとえば、チルト軸TAの回動機構と連動するつまみ225を設けた場合、第1図形および第2図形をつまみ225の回動方向を示唆する矢印54、矢印55とすることができる。これにより、ユーザは、テストパターン50から、ヘッド23、24の傾きを調整するためにつまみをどの方向に回動させれば良いか、容易に把握することができる。すなわち、ユーザは、テストパターン50で色が濃くなっている矢印が示す方向につまみ225を回動させることで、ヘッド23、24の傾きを調整することができる。
なお、前記した実施形態では、チルト軸TAの回動方向を示す表示として、つまみ225の回動方向を示す反時計回りの矢印54および時計回りの矢印55を例示したが、この態様に限定されない。たとえば、チルト軸TAの回動方向を示す表示を、「反時計回り」および「時計回り」のような文字としても良い。あるいは、「反時計回り」および「時計回り」を意味する文字である「CCW」および「CW」との文字を、チルト軸TAの回動方向を示す表示としても良い。
また、前記した実施形態では、チルト機構と連動したつまみ225を回すことでヘッド23、24の傾きを調整する例を説明したが、この態様に限定されない。例えば、つまみ225を用いずに、ユーザが直接ヘッド23、24を前方または後方に動かすことで、チルト軸TAを回動させて傾きを調整するようにしても良い。その場合は、チルト軸TAの回動方向を示す表示を、ヘッド23、24の前方または後方への移動方向を示す直線状の矢印としても良い。
【0137】
(6)印刷装置1のノズル部231(第1ノズル部)およびノズル部235(第2ノズル部)は、それぞれ、X方向に沿って一定の間隔で配置された複数のノズルNから構成される。
ノズル部231のノズルN1a、N1b、N1c、N1d、N1e・・・とノズル部235のノズルN5a、N5b、N5c、N5d、N5e、N5f・・・は、X方向において交互に並ぶように配置される。
ベースライン530は、ノズル部231のノズルN1a、N1c、N1e(第1ノズル)によって形成される。
ブロック540は、ノズル部235の、ノズルN1a、N1c、N1eとX方向のX1側において隣り合うノズルN5a、N5c、N5e(第2ノズル)によって形成される。
ブロック550は、ノズル部235の、ノズルN1a、N1c、N1eとX方向のX2側において隣り合う、ノズルN5b、N5d、N5f(第3ノズル)によって形成される。
【0138】
実施形態では、X方向における位相を異ならせたノズルを有するノズル部231、235を用いることにより、X方向における3ドットの幅で、ベースライン530とブロック540、550の組み合わせP1、P2、P3が形成される。これによって、テストパターン50において線の密度が高くなり、ヘッド23、24のわずかな傾きでも矢印54、55の濃度の差が生じるため、精度の高い傾き補正が可能となる。
【0139】
(7)テストパターン50の領域51B、52Bは、ベースライン530(第2ベースライン)、ブロック540(第3ブロック)、ブロック550(第4ブロック)を含む。
ベースライン530(第2ベースライン)は、ヘッド23、24のノズル部234、244(第3ノズル部)から吐出されたインクにより、X方向に沿って形成される。
ブロック540(第3ブロック)は、ヘッド23、24の、ノズル部234、244とY方向に間隔を空けて設けられたノズル部238、248(第4ノズル部)から吐出されたインクにより形成される。ブロック540は、ベースライン530のX方向におけるX1側(一方側)において、ベースライン530に隣接して形成される。
ブロック550(第4ブロック)は、ノズル部238、248から吐出されたインクにより形成される。ブロック550は、ベースライン530のX方向におけるX2側(他方側)において、ベースライン530に隣接して形成される。ブロック550は、ブロック540とY方向に間隔を空けて配置される。
領域51B、52Bを形成するノズル部234、244とノズル部238、248とのY方向における距離D3は、領域51A、52Aを形成するノズル部231、241とノズル部235、245とのY方向における距離D2よりも長い。
【0140】
ノズル部間の距離が短いノズル部で粗調整用の領域51A、52Aを形成し、ノズル部間の距離が長いノズル部で、微調整用の領域52A、52Bを設ける。これにより、ヘッド23、24の傾きが大きい初期段階では、粗調整用の領域51A、52Aにおいて矢印54、55の濃度の差が表れやすい。傾き補正が進んでヘッド23、24の傾きが小さくなった段階では、微調整用の領域51B、52Bにおいて、矢印54、55の濃度の差が表れやすい。
テストパターン50が、粗調整用の領域51A、52Aと微調整用の領域51B、52Bを含むことで、ユーザは、テストパターン50で領域51A、52Aと領域51B、52Bを見比べられるため、スムーズに粗調整から微調整へ移行することができる。
【0141】
なお、粗調整用の領域51A、52Aと微調整用の領域51B、52Bは、別の媒体Mに印刷しても良い。あるいは、粗調整用の領域51A、52Aまたは微調整用の領域51B、52Bのみで、ヘッド23、24の傾きの補正を行っても良い。
【0142】
前記したテストパターン50を印刷する印刷方法および印刷装置1においても、同様の効果を得ることができる。
【0143】
(変形例1)
図24は、変形例1に係るテストパターン50Aの形成方法を示す図である。
実施形態では、ノズルがX方向の位相をずらして配置されているノズル部同士で、テストパターン50を形成する例を説明した。変形例1では、ノズルがX方向において同位相に配置されているノズル部同士で、テストパターン50Aを形成する例を説明する。
図24は、ノズル部231A、235Aのノズルが同位相に配置されている例を説明している。他のノズル部でも同位相のノズル部の組み合わせであれば、同様に形成することができる。
【0144】
図24に示すように、ノズル部231AのノズルN1a、N1b、N1c、N1d、N1e、N1f、N1g・・・が、X方向のX2側からX1側に向かって間隔Dで配置されている。
ノズル部235AのノズルN5a、N5b、N5c、N5d、N5e、N5f、N5g・・・が、X方向のX2側からX1側に向かって間隔Dで配置されている。
ノズル部231Aの各ノズルは、ノズル部235Aの各ノズルと、X方向において同じ位置に配置されている。すなわち、ノズル部231Aのノズルとノズル部235AのノズルがX方向において同位相に配置されている。
【0145】
図24では、ベースライン530とブロック540、550との2つの組み合わせP4、P5を図示している。ベースライン530は、チルト軸TAから遠いノズル部231Aによって形成され、ブロック540、550はチルト軸TAに近いノズル部235Aのノズルによって形成される。
組み合わせP4において、ベースライン530は、ノズル部231AのノズルN1bによって形成される。ブロック540は、ノズルN1bのX1側のノズルN5cによって形成される。ブロック550は、ノズルN1bのX2側のノズルN5aによって形成される。
ノズルN1bと同位相のノズルN5bは使用されない。ノズルN5a、N5cと同位相のノズルN1a、N1cは使用されない。
ブロック540、550は、ベースライン530に対して、X方向おいて1ドット分の間隔を空けて形成される。組み合わせP4は、X方向において5ドット分の幅で形成される。
【0146】
組み合わせP4と組み合わせP5の間には、X方向において3ドット分の間隔が空けられる。そのため、ノズルN1d、N5dは使用されない。
【0147】
組み合わせP5において、ベースライン530は、ノズル部231AのノズルN1fによって形成される。ブロック540は、ノズルN1fのX1側のノズルN5gによって形成される。ブロック550は、ノズルN1fのX2側のノズルN5eによって形成される。
ノズルN1fと同位相のノズルN5fは使用されない。ノズルN5e、N5gと同位相のノズルN1e、N1gは使用されない。組み合わせP5も、組み合わせP4と同様に、X方向において5ドット分の幅で形成される。
【0148】
このように、変形例1においても、実施形態と同様に、ベースライン530を形成したノズルの、X方向の一方側(X1側)において隣り合うノズルでブロック540を形成し、他方側(X2側)において隣り合うノズルでブロック550を形成している。
ただし、変形例1では、同位相にノズルが配置されたノズル部を用いることで、ベースライン530とブロック540、550の1つの組み合わせが、X方向において5ドット分という広い幅で形成される。また、組み合わせP4、P5の間には、X方向において3ドット分の間隔が設けられる。前記したように、実施形態では、X方向における3ドット分の幅で、ベースライン530とブロック540、550の1つの組み合わせが形成され、組み合わせP1~P3の間にはX方向において1ドット分の間隔が設けられる(
図11参照)。
【0149】
すなわち、変形例1のテストパターン50Aは、実施形態のテストパターン50と比較して、ベースライン530とブロック540、550のX方向の距離が離れている。テストパターン50Aは、テストパターン50よりも線の密度が薄くなる。すなわち、テストパターン50Aは、テストパターン50よりも、ヘッド23、24の傾きによる影響が小さい。そのためテストパターン50Aは、たとえば、ヘッド23、24の傾きが大きい場合の粗調整に用いることができる。
【0150】
印刷装置1は、ヘッド23、24の傾きが大きい段階での粗調整用として、変形例のテストパターン50Aを印刷し、傾きが小さくなった段階での微調整用として、実施形態のテストパターン50を印刷しても良い。
【0151】
以上の通り、変形例1で説明したテストパターン50Aは、以下の構成を有する。
(8)印刷装置1のノズル部231A(第1ノズル部)のノズルN1a、N1b、N1c、N1d、N1e、N1f、N1g・・・とノズル部235A(第2ノズル部)のノズルN5a、N5b、N5c、N5d、N5e、N5f、N5g・・・は、X方向において同じ位置に配置される。
ベースライン530は、ノズル部231AのノズルN1b、N1f(第1ノズル)によって形成される。
ブロック540(第1ブロック)は、ノズル部235Aの、ノズルN1b、N1fとX方向のX1側(一方側)において隣り合う、ノズルN5c、N5g(第2ノズル)によって形成される。
ブロック550(第2ブロック)は、ノズル部235Bの、ノズルN1b、N1fとX方向のX2側(他方側)において隣り合う、ノズルN1a、N1e(第3ノズル)によって形成される。
【0152】
同位相にノズルが配置されたノズル部同士の組み合わせによっても、テストパターン50Aを形成することができる。同位相のノズル部の組み合わせで形成されたテストパターン50Aは、線同士の密度が薄くなるため、ヘッド23、24の傾きが大きい場合でも、矢印54、55の濃度の差が表れやすいため、粗調整に用いるのが好適である。
【0153】
本願発明は、上記した実施の形態の態様に限定されるものではなく、本願発明の技術的な思想の範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0154】
1 印刷装置
2 本体部
3 架台
21 プラテン
22 ヘッド部
23 インクジェットヘッド(第1インクジェットヘッド)
231 ノズル部(第1ノズル部)
234 ノズル部(第3ノズル部)
235 ノズル部(第2ノズル部)
238 ノズル部(第4ノズル部)
24 インクジェットヘッド(第2インクジェットヘッド)
241 ノズル部(第1ノズル部)
244 ノズル部(第3ノズル部)
245 ノズル部(第2ノズル部)
248 ノズル部(第4ノズル部)
225 チルト調整用つまみ
226 変位調整用つまみ
25 紫外線照射部
26 操作パネル
27 コントローラ
28 インク供給機構
281 インクボトル
282 インク供給路
29 移動機構
291 キャリッジ
292 ガイドレール
30 送り機構
50 テストパターン
51A、51B、52A、52B 領域
53 ベース
530 ベースライン
54 矢印(第1図形)
540 ブロック(第1ブロック)
55 矢印(第2図形)
550 ブロック(第2ブロック)
60 テストパターン
610 第1ライン部
61 第1ライン
620 第2ライン部
62 第2ライン
630 オーバーラップ部
64 第1基準ライン
65 第2基準ライン
660 サンプルブロック
70 テストパターン
71 ブロック
71A 領域(第1領域)
71B 領域(第2領域)
72 線状部(第1線状部)
73 線状部(第2線状部)
74 線状部(第3線状部)
75A、75B 隙間
76A、76B 高濃度領域
81 ブロック
81A、81B 領域
82、83 端部
91 ライン
91A、91B 領域
TA チルト軸
HL 線分(仮想線)
M 媒体
Y 主走査方向(第1の方向)
X 副走査方向(第2の方向)