(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113208
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】鏝先およびそれを備えた半田付け装置、鏝先の状態判定方法
(51)【国際特許分類】
B23K 3/02 20060101AFI20230808BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20230808BHJP
B23K 31/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B23K3/02 G
B23K3/02 R
B23K3/06 K
B23K31/02 310B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015391
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】314000280
【氏名又は名称】株式会社アンド
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 満男
(57)【要約】
【課題】溶融半田から発生するヒュームを迅速に外部に排出でき、且つ排出されたヒュームがプリント回路基板上の周囲の電子部品に当たるのを抑制することができ、さらに溶融した半田が排気孔から外部に流出することのない鏝先を提供する。
【解決手段】鏝先5aは、ヒーターユニット4を有する装置本体A1に着脱可能に取り付けられる鏝先であって、柱状の本体部50と、前記本体部50の軸線方向に貫通し、半田片Whが供給される半田孔51と、一端が前記半田孔51の内周面に開口し、他端が前記本体部50の外周面に開口する排気孔53aとを有し、前記半田孔51は、前記半田片Whが溶融する溶融領域Dを有し、前記排気孔53aの内周面側の開口54は、前記溶融領域Dに位置し、前記排気孔53aの外周面側の開口55は、前記排気孔53aの内周面側の開口54よりも上側に位置している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を有する装置本体に着脱可能に取り付けられる鏝先であって、
柱状の本体部と、
前記本体部の軸線方向に貫通し、半田片が供給される半田孔と、
一端が前記半田孔の内周面に開口し、他端が前記本体部の外周面に開口する排気孔とを有し、
前記半田孔は、前記半田片が溶融する溶融領域を有し、
前記排気孔の内周面側の開口は、前記溶融領域に位置し、
前記排気孔の外周面側の開口は、前記排気孔の内周面側の開口よりも上側に位置している
ことを特徴とする鏝先。
【請求項2】
前記排気孔が傾斜部を有している請求項1に記載の鏝先。
【請求項3】
前記傾斜部の前記本体部の軸線とのなす角度が10°以上85°以下の範囲である請求項2記載の鏝先。
【請求項4】
前記請求項1~3いずれかに記載の鏝先と、
前記鏝先が着脱可能に取り付けられる装置本体と、
を有し、
前記装置本体は、
前記鏝先を加熱する熱源と、
前記半田孔に半田片を供給する半田片供給部と、
を備えていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項5】
前記装置本体は、
ガスを供給するガス供給源と、
前記ガス供給源と前記半田孔とを連通し、前記ガス供給源からのガスを前記半田孔に供給するガス供給部と、
前記半田孔内を流れるガスの圧力を測定する測定部と、
をさらに備えている請求項4に記載の半田付け装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載の半田付け装置の鏝先状態を判定する鏝先の状態判定方法であって、
前記半田孔を流れるガスの流量が一定で、
前記半田孔内を流れるガスの圧力を測定するとともに、測定した圧力と予め備えられた基準値又はテーブルと比較して、鏝先の状態を判定することを特徴とする鏝先の状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鏝先およびそれを備えた半田付け装置、鏝先の状態判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの機器には電子部品を実装したプリント回路基板(以下、単に「基板」と記すことがある)が搭載されている。基板の形成工程においては、リード線を基板上の配線パターンに接合するための半田付け処理が行われる。
【0003】
半田付け処理を効率良く行うことの出来る装置として、本発明者は、筒状の鏝先に形成された半田孔内に半田片を供給し、鏝先の熱によってその半田片を溶融させる半田付け装置を提案した(特許文献1など)。
【0004】
このような半田付け装置の鏝先には、実用上、半田片が加熱溶融される際に半田片から発生するヒューム(気化したフラックス)を半田孔から外部に排出する、半田孔の内周面と鏝先の外周面とを連通する排気孔(リリース孔)が形成されている。
【0005】
また、本出願人は、排気孔が形成された鏝先において、半田孔内に供給される窒素などの不活性ガスの総流量を一定として半田孔内を流れるガスの圧力の変化に基づいて鏝先の状態を判定する方法を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5184359号公報
【特許文献2】特開2019-166541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでの鏝先に形成されていた排気孔は、半田片供給方向に対して垂直に形成されていた。また排気孔の上下方向の形成位置は、ヒュームを効率的に外部に排出する観点から、半田孔に供給された半田片に近い位置、換言すると基板の表面に近い位置とされていた。一方、基板には多くの電子部品が密集して配置されており、基板上の半田付け対象である電子部品の周囲にも他の電子部品が配置されている。
【0008】
このような状況下で、半田片が加熱溶融された際に発生するヒュームが鏝先に形成された排気孔から外部に排出されると、ヒュームが周りの電子部品に当たって悪影響を及ぼすおそれがある。また、排気孔の形成位置によっては溶融した半田が排気孔から外部に流出するおそれもある。
【0009】
一方、排気孔の上下方向の形成位置を基板表面から離れた位置、すなわち鏝先の半田片供給方向の上流側(上下方向上側)にすれば、鏝先の排気孔から排出されたヒュームが周りの電子部品に当たることは少なくなると考えられるが、ヒュームの半田孔から排出が迅速に行われないおそれがある。また鏝先の状態変化に伴う半田孔内の圧力変化の検出速度が遅く、あるいは圧力の変化量が少なくなり、鏝先の状態判定精度が低下するおそれがある。
【0010】
そこで本発明の目的は、溶融する際に半田片から発生するヒュームを迅速に外部に排出でき、且つ排出されたヒュームが基板上の周囲の電子部品に当たるのを抑制することができ、さらに溶融した半田が排気孔から外部に流出することのない鏝先を提供することにある。
【0011】
また本発明の目的は、鏝先から排出されたヒュームが基板上の電子部品に当たるのを抑制できる半田付け装置を提供することにある。
【0012】
そしてまた本発明の目的は、鏝先の状態を迅速かつ精度よく判定することができる鏝先の状態判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成する本発明に係る鏝先は、熱源を有する装置本体に着脱可能に取り付けられる鏝先であって、柱状の本体部と、前記本体部の軸線方向に貫通し、半田片が供給される半田孔と、一端が前記半田孔の内周面に開口し、他端が前記本体部の外周面に開口する排気孔とを有し、前記半田孔は前記半田片が溶融する溶融領域を有し、前記排気孔の内周面側の開口は前記溶融領域に位置し、前記排気孔の外周面側の開口は内周面側の開口よりも上側に位置していることを特徴とする。
【0014】
前記構成の鏝先において、前記排気孔が傾斜部を有しているのが好ましい。前記傾斜部の前記本体部の軸線とのなす角度は10°以上85°以下の範囲であるのが好ましい。
【0015】
前記目的を達成する本発明に係る半田付け装置は、前記のいずれかに記載の鏝先と、前記鏝先が着脱可能に取り付けられる装置本体とを有し、前記装置本体は、前記鏝先を加熱する熱源と、前記半田孔に半田片を供給する半田片供給部とを備えていることを特徴とする。
【0016】
前記構成の半田付け装置において、前記装置本体は、ガスを供給するガス供給源と、前記ガス供給源と前記半田孔とを連通し、前記ガス供給源からのガスを前記半田孔に供給するガス供給部と、前記半田孔内を流れるガスの圧力を測定する測定部とをさらに備えているのが好ましい。
【0017】
前記目的を達成する本発明に係る鏝先の状態判定方法は、前記に記載の半田付け装置の鏝先状態を判定する鏝先の状態判定方法であって、前記半田孔を流れるガスの流量が一定で、前記半田孔内を流れるガスの圧力を測定するとともに、測定した圧力と予め備えられた基準値又はテーブルと比較して、鏝先の状態を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鏝先によれば、溶融した半田片から発生するヒュームを迅速に外部に排出でき、且つ排出されたヒュームが基板上の周囲の電子部品に当たるのを抑制することができる。また溶融した半田が排気孔から外部に流出するのを防止できる。
【0019】
また本発明の半田付け装置によれば、鏝先から排出されたヒュームが基板上の電子部品に当たるのを抑制できる。
【0020】
そしてまた本発明の鏝先の状態判定方法によれば、鏝先の状態を迅速かつ精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る鏝先の一実施形態を示す垂直断面図である。
【
図3】排気孔の他の形態を示す鏝先の部分垂直断面図である。
【
図4】鏝先の他の実施形態を示す垂直断面図である。
【
図5】本発明に係る半田付け装置APの一実施形態を示す斜視図である。
【
図6】装置本体A1の内部構造を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す装置本体A1の概略垂直断面図である。
【
図8】
図6に示す装置本体A1に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。
【
図9】鏝先が基準状態のときの部分垂直断面図である。
【
図10】鏝先が鏝先接触状態のときの部分垂直断面図である。
【
図11】鏝先が半田片投入状態のときの部分垂直断面図である。
【
図12】鏝先が半田片溶融状態のときの部分垂直断面図である。
【
図13】鏝先が半田片流出状態のときの部分垂直断面図である。
【
図14】鏝先が離間状態のときの部分垂直断面図である。
【
図15】半田付け装置が半田付け処理を1回行うときの半田孔内の圧力の変化を示す図である。
【
図16】汚れた半田孔内に半田片Whが投入された状態図である。
【
図17】ランドとピン端子との半田付け状態を判定する場合の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る鏝先およびそれを用いた半田付け装置、鏝先の状態判定方法について図に基づき説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、本明細書における「上下方向」は
図1に示す上下方向をいい、「上下方向」は重力方向における上下方向を意味するものとする。
【0023】
(鏝先)
図1に、本発明に係る鏝先の一実施形態を示す、中心軸線C1を含む垂直断面図を示す。また、
図2に、
図1の鏝先の下端が基板の表面に当接し、半田孔内に半田片が供給された状態の下部拡大垂直断面図を示す。
【0024】
図1に示す鏝先5aは、円柱状の本体部50と、本体部50の中心軸線C1を共通の中心軸線とする上下方向に貫通した半田孔51と、半田孔51の内周面と本体部50の外周面とに開口54,55を有する排気孔53aとを有する。半田孔51の下部には段部を経て拡径部510が設けられている。この拡径部510は、基板CBの表面から突出したピン端子Pを半田孔51内に挿入しやすくする等の観点から設けられている。なお、拡径部510は鏝先5aの下端に向かって半径方向外方に連続して拡径した形状であっても構わない。
【0025】
排気孔53aの開口55は、開口54よりも上下方向上側に位置し、排気孔53aは中心軸線C1に対して所定角度θを有して全体が傾斜している(全体が傾斜部)。傾斜角度θに特に限定はなく、鏝先5aの大きさや形状、半田付け対象である基板CB上の電子部品の大きさ(高さ)や形状などから適宜決定すればよい。通常、排気孔53aの傾斜部の角度θは10°以上85°以下の範囲が好ましく、45°以上80°以下の範囲がより好ましい。
【0026】
また、排気孔53aの開口54は、半田孔51における溶融領域D(
図2に図示)に位置している。ここで溶融領域Dは、半田孔51に供給された半田片Whが溶融し得る領域である。本実施形態における溶融領域Dは、基板CBの表面から突出したピン端子Pの先端部に当接して半田孔51内に立った半田片Whの上端から下端までの領域である。排気孔53aの軸線に対して垂直な断面の形状や大きさに特に限定はなく、半田片Whの体積や本体部50の厚みなどから適宜決定すればよい。
【0027】
鏝先5aの上部には、半田孔51と外周面とを連通する圧力測定用孔52が設けられている。圧力測定用孔52は、半田孔51内の圧力を測定するための孔である。
図7に示すように、鏝先5aが装置本体A1のヒーターブロック42の凹部421に装着されると、圧力測定用孔52の外側開口は、凹部421の内周面と外周面とを連通する貫通孔423に接続する。貫通孔423の外周面側開口には圧力測定用配管8の一方端が接続されており、圧力測定用孔52は圧力測定用配管8に貫通孔423を介して接続する。なお、圧力測定用孔52に圧力測定用配管8が直接接続する形態であっても構わないが、装置本体A1への鏝先5aの着脱の際に圧力測定用配管8の鏝先5aから取り外しが不要になる点で、圧力測定用孔52が圧力測定用配管8に貫通孔423を介して間接的に接続する形態が好ましい。圧力測定用孔52の内径は、半田孔51の内径よりも小さく設定される。すなわち、圧力測定用孔52は、半田孔51に比べて流路抵抗が大きくされる。圧力測定用孔52は、排気孔53aよりも上方に形成される。これにより、ヒュームによる圧力測定用孔54の汚染の低減が図れる。
【0028】
(排気孔の他の形態)
図3に、鏝先の本体部に形成される排気孔の他の形態を示す。
図3(a)に示す排気孔53bは傾斜角度の異なる2つの傾斜部531、532から構成される。傾斜部531の角度θ
1は傾斜部532の角度θ
2よりも大きく、排気孔53bは半田孔51の内周面から半径方向外方に向かって上方に緩やかに傾斜した後、急角度で傾斜している。このような排気孔53bは、隣設する電子部品にヒュームがかからないように可能な限り上方に向けてヒュームを排出したい場合などに形成され得る。
【0029】
図3(b)に示す排気孔53cは、傾斜部533と水平部534とから構成される。このような構成の排気孔53cは、排気孔53cからのヒュームの排出方向を、可能な限り水平にしたい場合などに形成され得る。
【0030】
図3(c)に示す排気孔53dは、2つの水平部535,536と1つの接続部537とをから構成され、水平部535の半径方向外側端と水平部536の半径方向内側端とが垂直な接続部537で接続された構造を有する。接続部537は、垂直である場合の外、鏝先5dの半径方向外方に向かって上方に傾斜していても構わない。
【0031】
(他の鏝先)
図4に、本発明に係る鏝先の他の実施形態を示す。
図4(a)に示す鏝先5eは、
図1に示した鏝先5aと基本構造は同じで、本体部50に2つの排気孔53aが設けられている点が異なる。2つの排気孔53が本体部50に設けられていることによって、ヒュームなどの半田孔51からの排出が迅速に行われるようになる。なお、本体部50に形成する排気孔53aの個数は3つ以上であっても構わない。また、複数個の排気孔53aの各々の形成位置は本発明の構成を満たす範囲において上下方向および周方向のいずれであっても構わない。
【0032】
図4(b)に示す鏝先5fは、
図1に示した鏝先5aと同様に、円柱状の本体部50と、本体部50の中心軸線C1を中心として上下方向に貫通した半田孔51と、半田孔51の内周面と本体部50の外周面とに開口54,55を有する排気孔53aとを有する。一方、
図1に示した鏝先5aと異なって、半田孔51の下部に拡径部510が設けられておらず、また本体部50の上部に半田孔51の内周面と本体部50の外周面とに開口を有するガス解放孔59が設けられている。
【0033】
図1に示した鏝先5aが拡径部510を設けていたのは、主として、基板CBから突出したピン端子Pと基板CBとの半田付けする際の、半田孔51へのピン端子Pの挿入裕度を大きくするためからであったところ、基板CB上のパッド(平面電極)と電子部品の端子とを接続する場合などは半田孔51の下部の拡径部510は特段必要ではなく、
図4(b)の鏝先5fに示すような拡径部510を有さないものであってもよい。
【0034】
後述する半田付け装置APでは、溶融半田の酸化抑制などの観点から窒素ガスなどの不活性ガスが半田孔に供給されている。このような半田付け装置APでは、半田孔51内で加熱溶融された半田が半田孔51および排気孔53aを完全に塞いでしまうと半田孔51の内圧が著しく高くなるおそれがある。そこで、鏝先5eでは、ガス解放孔59を設けて半田孔51の内圧が著しく高くならないようにしている。なお、ガス解放孔59の内径は、半田孔51の内径よりも小さく設定される。すなわち、ガス解放孔59は、半田孔51に比べて流路抵抗を大きくされる。なお、通常は、半田孔51内で加熱溶融された半田片Whが半田孔51および排気孔53aを完全に塞いだ場合でも、溶融半田は短時間で流下し半田孔51および排気孔53aの少なくとも一方は溶融半田による閉塞が解除されるので、ガス解放孔59が設けられていなくても問題ない。
【0035】
(半田付け装置の全体構成)
本発明に係る鏝先5aが用いられる半田付け装置について以下説明する。
図5は、鏝先5aを用いて半田付けを行う半田付け装置APの斜視図である。半田付け装置APが基板CBに電子部品Epを半田付けする場合である。治具Gjに固定された基板CBには4つのスルーホールThが形成されており、各スルーホールThの内周面及び周縁にはランドLdが形成されている。そして、この4つのスルーホールThの各々には、基板CBの裏面側に配置された電子部品Epから延出した4つのピン端子Pが下から上方向に挿通され、基板CBの上面からピン端子Pの先端が突出した状態となっている。
【0036】
一方、半田付け装置APは、多関節アームAmを有する移動手段としてのマニピュレーターMLと、マニピュレーターMLの先端に取り付けられた装置本体A1と、マニピュレーターML及び装置本体A1の動作を制御する制御装置Contとを備える。マニピュレーターMLは基台Bs上に設置され、多関節アームAmは複数の関節部の各々において回転可能とされている。制御手段Contは、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、装置本体A1をX方向、Y方向、Z方向の所望位置に移動させる。また制御手段Contは、
図6に示す装置本体A1のカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6及びヒーターユニット(熱源)4の動作を制御する。なお、本実施形態ではカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6が半田片供給手段を構成する。
【0037】
半田付け装置APによって半田付けを行う場合、装置本体A1が、マニピュレーターMLによってX方向及びY方向に移動されて基板CBのランドLdに対する位置決めが行われる。そして、装置本体A1がZ方向に移動されることで、鏝先5aの先端が基板CBに接触する。以下説明する実施形態ではこの半田付け装置APを用いて、基板CBの上面から突出したピン端子Pを装置本体A1の鏝先5aの半田孔51内に位置させ、鏝先5aの半田孔51に供給される半田片Whを溶融させてピン端子PとランドLdとを半田付けする。なお、本実施形態では、装置本体A1を移動させているが、装置本体A1を固定し基板CBを移動させる、あるいは装置本体A1と基板CBの両者を移動させるようにしても構わない。
【0038】
このような鏝先5の制御手段Contによる移動制御は、予め入力設定された値に基づき行ってもよいし、接触センサーなど不図示の検知手段による検知信号に基づき行ってもよい。
【0039】
(装置本体A1)
図6に装置本体A1の斜視図を示し、
図7に
図6に示す装置本体A1の垂直断面図、
図8は
図6に示す装置本体A1に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、
図6では、筐体の一部を切断し、装置本体A1の内部を表示するようにしている。
【0040】
図6に示すように、装置本体A1は、装置ユニットUと、装置ユニットUをZ方向の所定距離範囲で移動可能に支持する支持部材SPと、装置ユニットUと支持部材SPを覆うカバーC(
図6の破線)とを有する。
【0041】
支持部材SPは、四角形状のYZ平面を有しX方向に所定の厚みを有する板状の基部Mfと、基部MfのX方向一方側面のY方向中央部にY方向に所定幅を有しX方向に突出しZ方向に連続するガイドレールMgと、ガイドレールMgにZ方向に移動可能に取り付けられたブロックMbとを備える。
【0042】
基部MfのZ方向上端部はマニピュレーターMLの多関節アームAmの先端に取り付けられる。ブロックMbには装置ユニットUの壁体11がZ方向の略全域にわたって取り付けられている。すなわち、装置ユニットUはブロックMbに固定され、ブロックMbと一体となってZ方向に移動可能とされている。また、ブロックMbのY方向の一方側面の下端部には移動規制ピン91が側面から外方に向かって垂直に突出して設けられている。
【0043】
一方、基部MfのX方向一方側面のZ方向下部のY方向端部位置には、直方体形状の上ストッパー部93と下ストッパー部94とがZ方向に所定距離隔てて対向するように設けられている。
【0044】
ブロックMbの一方側面に設けられた移動規制ピン91は、基部Mfの上ストッパー部93と下ストッパー部94との間の領域に位置し、初期状態のときすなわち鏝先5aが基板CBに当接していない状態のときは、装置ユニットU及びブロックMbの自重によって移動規制ピン91は下ストッパー部94に当接した状態となっている。換言すると、移動規制ピン91が下ストッパー部94に当接することで、装置ユニットUのZ方向下方への移動が規制される。他方、鏝先5aが基板CBに当接して装置ユニットUがZ方向上方に移動した場合には、移動規制ピン91が上ストッパー部93に当接することで、装置ユニットUのZ方向上方向への移動が規制される。
【0045】
(装置ユニットU)
装置ユニットUは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5、半田送り機構6を備えている。
【0046】
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。なお、以下の説明では、便宜上、
図6に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。例えば、
図6に示すように、壁体11はZX平面を有している。
【0047】
支持部1は、壁体11と、保持部12と、摺動ガイド13と、ヒーターユニット固定部14とを備える。壁体11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。壁体11は、装置本体A1の支持部材としての役割を果たしている。保持部12は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に固定されている。保持部12は、駆動機構3の後述するエアシリンダー31を保持する。ヒーターユニット固定部14は、ヒーターユニット4の固定を行う部材であり、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられている。
【0048】
摺動ガイド13は、壁体11のZ方向の下端部の近傍に、固定されている。摺動ガイド13は、カッターユニット2の後述するカッター下刃22と共に、壁体11と固定されており、カッターユニット2の後述するカッター上刃21をX方向に摺動可能にガイドする。
【0049】
摺動ガイド13は、Y方向に対向して対をなす部材である。摺動ガイド13は、一対の壁部131と、抜止部132とを有している。壁部131は、X方向に延びる平板状の部材である。一方の壁部131は、壁体11と接触して配されており、壁体11と反対側の面は、カッター下端22と接触している。また、他方の壁部131は、カッター下刃22の側面と接触している。つまり、一対の壁部131は、カッター下刃22をY方向の両側から挟んでいる。そして、一対の壁部131及びカッター下刃22は、ねじ等の締結具で壁体11に共締めされて、固定される。
【0050】
抜止部132は、一対の壁部131のそれぞれに設けられている。一対の壁部131は、カッター下刃22のZ方向上面よりもZ方向に延びており、一対の壁部131のZ方向の上端部から、それぞれ、他方に向かって延びている。すなわち、摺動ガイド13は、一対の抜止部132を備えている。そして一対の抜止部132それぞれのY方向の先端は、接触しない、換言すると、摺動ガイド13には上部に開口を有している。カッター上刃21は、カッター下刃22の上面と、抜止部132との間に少なくとも一部は配される。これにより、カッター上刃21は、X方向にガイドされるとともに、Z方向に抜け止めされる。
【0051】
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する切断具である。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23とを備えている。
【0052】
上述のとおり、カッター下刃22は摺動ガイド13とともに壁体11に固定される。
図7に示すように、カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入孔222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、カッター上刃21の後述する上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とを用いて、糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する。切断された半田片Whは、自重によって又はプッシャーピン23に押されて、下刃孔221の内部を下方に落下する。下刃孔221は、ヒーターユニット4の後述する半田供給孔422を介して、鏝先5の後述する半田孔51と連通している。下刃孔221の内部を落下した半田片Whは、半田供給孔422に達した後、半田孔51に落下する。
【0053】
ガス流入孔222は、カッター下刃22の外側面と下刃孔221とを連通する孔である。ガス供給源GSから供給されるガスはガス流入孔222に流入する。そして、ガスは、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に到達する。なお、ガスとは、半田を加熱して溶融するときに半田の酸化を抑制するために用いられるものである。すなわち、溶融した半田と酸素との接触を抑制するためのガスである。ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。本実施形態の半田付け装置APでは、窒素ガスを供給するものとして説明する。
【0054】
カッター上刃21は、上述したとおり、カッター下刃22のZ方向上面上に配される。カッター上刃21は、摺動ガイド13によって摺動時に摺動方向がX方向になるようガイドされるとともにZ方向に抜け止めされる。すなわち、カッター上刃21は、カッター下刃22のZ方向の上面上をX方向に摺動する。なお、カッター上刃21は、駆動機構3によって摺動される。
【0055】
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である、上刃孔211には、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である。ピン孔212には、プッシャーピン23の後述するロッド部231が、摺動可能に挿入される。
【0056】
プッシャーピン23は、ロッド部231と、ヘッド部232と、バネ233とを有する。ロッド部231は、円柱状の部材であり、ピン孔212に摺動可能に挿入される。また、プッシャーピン23がZ方向下に移動することで、ロッド部23の先端が、ピン孔212から突出する。ヘッド部232はロッド部231の軸方向の上端に連結される。ヘッド部232は、ピン孔212の内径よりも大きい外径を有する円板形状である。ヘッド部232は、ピン孔212に挿入されない。すなわち、ヘッド部232は、ロッド部231のピン孔212内への移動を制限する、いわゆる、ストッパーとしての役割を果たす。
【0057】
バネ233は、ロッド部231の径方向外側を囲む圧縮コイルばねである。バネ233は、Z方向下端部がカッター上刃21の上面と接触し、Z方向上端部がヘッド部232の下面と接触する。すなわち、バネ233は、カッター上刃21の上面から反力を受け、ヘッド部232をZ方向上に押す。これにより、ヘッド部232と連結されたロッド部231は、Z方向上方に持ち上げられ、ロッド部231の下端が、ピン孔212の下端から突出しないように維持される。なお、ロッド部231のZ方向下端部には、ピン孔212からの抜けを抑制する抜け止め(不図示)が設けられている。
【0058】
プッシャーピン23は、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片Whを下方に押す。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に押し上げられている。つまり、ロッド部231は、ヘッド部232が押されたときに、ピン孔212のZ方向下端部から下に突出する。そして、ヘッド部232は、駆動機構3の後述するカム部材33に押される。
【0059】
カッター上刃21において、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、X方向に摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置、又は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置に移動する。なお、カッター上刃21は、一方の摺動端部まで摺動したときに上刃孔211と下刃孔221とが重なり、他方の摺動端部まで摺動したときにピン孔212と下刃孔221とが重なるように、摺動してもよい。
【0060】
そして、上刃孔211と下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。上述のとおり、上刃孔211の下端の辺縁部が切刃状に形成されているとともに、下刃孔221の上端の辺縁部も切刃状に形成されている。そして、カッター上刃21の下面は、カッター下刃22の上面と接触している。そのため、下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21がX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
【0061】
カッター上刃21は、カム部材33によってX方向に摺動される。そのため、カッター上刃21及びプッシャーピン23は、カム部材33と同期している。カム部材33は、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ヘッド部232を押す。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときには、プッシャーピン23のロッド部231の先端は、ピン孔212に収容されている。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときに、ロッド部231の先端とカッター下刃22の上面とが接触するのを抑制し、ロッド部231の先端及び(又は)カッター下刃22の変形、破損等が抑制される。
【0062】
カッター上刃21がX方向に摺動することで、下刃孔211とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔211と重なっている状態で、ヘッド部232はカム部材33に押される。これにより、プッシャーピン23が、Z方向下に移動する。プッシャーピン23がピン孔212からZ方向下方に突出すると、プッシャーピン23の一部が下刃孔211に挿入される。下刃孔211の入り口に糸半田Wを切断した後述の半田片Whが残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片Whを押して、半田片Whは落下する。
【0063】
図6、
図7に示すように、駆動機構3は、エアシリンダー31と、ピストンロッド32と、カム部材33と、スライダー部34と、ガイド軸35とを有する。エアシリンダー31は保持部12に保持される。エアシリンダー31は、有底円筒状である。エアシリンダー31の内部には、ピストンロッド32が収容されており、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させる。エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、エアシリンダー31の内部に配されるとともに、一部が常にエアシリンダー31の軸方向の一方の端部(ここでは、Z方向の下端部)から、突出している。エアシリンダー31は、ピストンロッド32が突出する面がカッターユニット2に向くように、すなわち、Z方向下に向くように、保持部12に保持される。
【0064】
ピストンロッド32は、保持部12に設けられた貫通孔(不図示)を貫通している。ピストンロッド32は、ガイド軸35と平行に設けられており、ガイド軸35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、カム部材33がZ方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド軸35によってガイドされている。
【0065】
図7に示すように、ガイド軸35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド軸35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド軸35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
【0066】
なお、本実施形態において、ガイド軸35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド軸35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
【0067】
図7、
図8に示すように、カム部材33は、矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド軸35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド軸35と平行に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
【0068】
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸線がガイド軸35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持部331内部に配置された軸受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸受334は、ガイド軸35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。
【0069】
図7、
図8に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド軸35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド軸35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
【0070】
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド軸35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
【0071】
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライド部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライド部にピンを備えた構成であってもよい。
【0072】
本実施形態では、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよい。また、流体を用いるものに限定されるものではなく、モーターやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。本実施形態では、1つのアクチュエーターと、カム及びカム溝を用いて、カッター上刃21の摺動とプッシャーピン23の押下を行っているが、これに限定されない。例えば、カッター上刃21の摺動と、プッシャーピン23の押下とを行うように、アクチュエーターを複数個(2個)備えていてもよい。
【0073】
図6、
図7に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給する。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田Wを下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
【0074】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
【0075】
ヒーターユニット4は、半田片Whを加熱し、溶融させるための熱源であり、
図7に示すように、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42とを備える。ヒーター41は、通電により発熱する。ヒーター41は、ここでは、円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回された電熱線を有する。
【0076】
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸方向の端部に鏝先5aを取り付けるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422と、凹部421の内周面と外周面とを連通する貫通孔423とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
【0077】
鏝先5aは、ヒーターブロック42の凹部421に挿入され、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。また、鏝先5aの半田孔51は、ヒーターブロック42の半田供給孔421と連通しており、半田供給孔421から半田片Whが送られる。また、鏝先5aがヒーターブロック42の凹部421に挿入されると、鏝先5aの圧力測定用孔52が凹部421の貫通孔423に接続する。貫通孔423の外周面側開口には圧力測定用配管8の一方端が接続されており、半田孔51の内圧は圧力測定用孔52、貫通孔423,圧力測定用配管8を介して圧力測定部75で測定される。
【0078】
鏝先5aは、ヒーター41からの熱が伝達されており、その熱で半田片Whを溶融させる。そのため、鏝先5aは、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されている。装置ユニットUにおいて、鏝先5aは円筒形状のものとしているが、これに限定されるものではなく、断面多角形又は楕円形の筒形状のものを用いてもよい。半田付けを行う基板CB及び(又は)電子部品Epのピン端子Pの形状に合わせて異なる形状のものを用意するようにしてもよい。
【0079】
ガス供給部7は、装置ユニットUの外部に設けられたガス供給源GSから供給されるガスを装置ユニットUに供給する。ガスとして、上述した、不活性ガスを用いることで半田の酸化を防止することが可能である。
図7に示すように、ガス供給部7は、配管70と、第1調整部71と第1計測部72とを有する。配管70は、ガス供給源GSからの窒素ガスをガス流入孔222に流入させる配管である。なお、
図7では、便宜上、配管70を線図で示しているが、実際にはガスである窒素ガスが漏れない管体(例えば、樹脂管)である。
【0080】
第1調整部71は、流量制御弁を含む構成であり、配管70を流れる窒素ガスの流量を調整している。第1計測部72は配管70を流れる窒素ガスの流量を計測する。すなわち、第1計測部72は、第1調整部71から吐出される窒素ガスの流量を計測している。そして、第1計測部72は、計測した窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように、第1調整部71に対して、第1調整部71を制御する制御信号を送信している。すなわち、ガス供給部7は、第1調整部71と第1計測部72を用いて、フィードバック制御を行っており、ガス供給源GSから半田孔51に供給される窒素ガスの流量を一定に制御している。なお、第1計測部72の計測結果に基づいて、作業者が手動で第1調整部71を操作して窒素ガスの流量を調整してもよい。また、なんらかの異常により計測した流量が予め決めた基準値と異なる又は予め設定した範囲から外れる場合には、制御手段Contは、異常が発生している旨の警報及び(又は)半田付け装置の運転の停止を行ってもよい。
【0081】
鏝先5aに形成された圧力測定用孔52の外側開口には圧力測定用配管8の一方端が接続されている。そして圧力測定用配管8の他方端には圧力測定部75が接続されている。圧力測定部75は、半田孔51の内部の圧力を測定し、その測定結果を制御手段Contに送信する。そして、後述するように、制御手段Contは、半田孔51の内部の圧力及び/又は圧力変化に基づいて鏝先の状態を判定する。すなわち、制御手段Contは、鏝先の状態を判定する状態判定部としての役割を果たす。また、制御手段Contは、判定した鏝先の状態に基づいて、半田付け装置APの制御を行ってもよい。半田付け装置APの制御としては、例えば、装置本体A1の基板CBへの接近離間、糸半田Wの切断、鏝先5aの加熱等を含む。
【0082】
(半田付け装置の動作)
次に、半田付け装置APの動作について説明する。
図9に示すように、制御手段Cont(
図5に図示)が、マニピュレーターML(
図5に図示)の多関節アームAm(
図5に図示)の回転動作を制御して、装置本体A1の鏝先5aを、鏝先5aの中心軸線が基板CBから突出したピン端子Pの中心軸線と同一線上で且つ上方向に離隔した位置(離隔位置)に移動させる。
【0083】
次いで、
図10に示すように、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、鏝先5aを下方に移動させて、鏝先5aの下面を基板CBのソルダーレジストSRに当接させ、鏝先5aの半田孔51内に電子部品Epのピン端子Pを位置させる。鏝先5aには、ヒーター41(
図7に図示)からの熱が伝達されており、鏝先5aが接触することで基板CBのソルダーレジストSRを介してランドLdが伝熱により加熱され(プレヒート)、電子部品Epのピン端子PもソルダーレジストSR、ランドLd及び基板CBを経由した伝熱及び鏝先5aからの輻射熱、さらには半田孔51内の対流によって加熱される。
【0084】
そして
図11に示すように、カッターユニット2によって糸半田Wから所定長さに切断された半田片Whが鏝先5aの半田孔51に供給される。半田片Whは半田孔51を落下し、半田片Whの下端がピン端子Pの先端に当接し、半田片Whの上端は半田孔51の内周面に接触した状態で停止する。前述のように鏝先5aには、ヒーター41(
図7に図示)からの熱が伝達されており、半田片Whは半田孔51との接触部分からの伝熱によって加熱される。また同時に、半田片Whは、半田孔51の内周面からの輻射および半田孔51内の対流によって加熱される。
半田片Whがフラックスの溶融温度以上に加熱されるとフラックスが溶融する。そして、溶融したフラックスが高温の鏝先5aの内壁に接触すると、フラックスの一部が気化してヒュームが発生する。発生したヒュームは排気孔53aから鏝先5aの外に排出される。
【0085】
次いで、
図12に示すように、半田片Whの温度が半田の溶融温度に達すると、半田片Whは溶融して溶融半田MSとなり、半田孔51の内周面による制約で球形になれない状態でピン端子P上に一時的に留まる。なお、ピン端子Pが半田の溶融温度以上に加熱されていた場合は溶融半田MSはピン端子P上に留まることなく流下する。
【0086】
そして、ピン端子Pが半田の溶融温度以上に加熱されると、
図13に示すように、溶融半田MSは拡径部510に流下する。さらに溶融半田MSの一部はスルーホールTh内を流下する。溶融半田MSの一部は基板CBの下面側に到達してバックフィレットを形成する。
【0087】
次いで、
図14に示すように、鏝先5aが基板CBから上方に離間することで溶融半田MSが外気によって冷却固化され、ランドLdとピン端子Pとの間に半田の円錐形状のフィレット(およびバックフィレット)が形成され、ランドLdとピン端子Pとが半田付けされる。半田付け装置APはこの一連の動作を繰り返して電子部品Epのピン端子Pと基板CBのランドLdとの半田付けを順次行う。
【0088】
(鏝先の状態判定方法)
次に、鏝先5aの半田孔51内の圧力に基づいて鏝先の状態を判定する判定方法について説明する。なお、
図7に示すガス供給部7において、ガス流入孔222に流入した窒素ガスは、すべて、鏝先5aの半田孔51に流入するものとする。例えば、ガス流入孔222は、下刃孔221と連通しており、下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向上下に貫通している。窒素ガスが供給されている状態において、窒素ガスは、下刃案221のZ方向上端から抜けないように、密閉されるものとする。
【0089】
なお、鏝先5aの半田孔51内を流れる窒素ガスは、ガス供給源GSからのガスを第1調整部71で調整することで流量が調整される。第1調整部71に備えられている流量制御弁は、配管内部の圧力にかかわらず窒素ガスを設定した流量で流し続ける。すなわち、ガス供給部7は、流量一定とする流量制御を行う。
【0090】
装置本体A1において、例えば、半田片Whが半田孔51に供給された場合、半田孔51の軸と直交する断面の一部を半田片Whが占める。そのため、半田孔51の窒素ガスが流れる部分の流路面積が小さくなり、窒素ガスが流れにくくなる、すなわち、流路抵抗が大きくなる。そして、半田孔51の流路抵抗が大きくなると半田孔51内の圧力Pが上昇する。つまり、鏝先5aの状態が変化することで半田孔51内の圧力Pが変動する。制御手段Contは、この圧力P、或いは、圧力Pの変化に基づいて、鏝先5aの状態を判定する。例えば、制御手段Contは、圧力Pの変化とその変化の原因とを関連付けた情報を予め記憶している。制御手段Contは、算出した圧力Pの変化に基づいて、その原因、すなわち、鏝先5aの状況を判定する。
【0091】
以下に、鏝先5aの各状態における半田孔51内の圧力Pについて、
図15を参照して説明する。
図15は、半田付け装置APで半田付け作業を1回行うときの半田孔51内の圧力Pの変化を示す図である。
【0092】
本実施形態では、鏝先5aの状態として、基準状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の6個の状態を挙げて説明する。半田付け装置APでは、1回の半田付け時に上記各状態に順に変化する。
【0093】
(a)基準状態
図9に示したように、装置本体A1では、半田付けを行う前段階(例えば、鏝先5aをプレヒートするあるいは半田付けを行う基板CBを変更する等)において、鏝先5aは、基板CBから離している。鏝先5aが基板CBから離れている状態を基準状態とする。すなわち、半田孔51は下端開口が大気に開放されている。また、本実施形態では、装置本体A1が基準状態のときに、ヒーターユニット4を駆動して鏝先5aを加熱する。基準状態において、ガス供給源GSから窒素ガスの供給が開始されると、ガス供給部7に窒素ガスが供給される。上述のとおりガス供給部7は、第1調整部71で窒素ガスを流量Qに調整している。
【0094】
装置本体A1が基準状態のとき、半田孔51の下端開口は大気に開放されている。そのため、ガス供給部7から半田孔51に窒素ガスが供給されても、半田孔51内の圧力Pは一定である。基準状態における半田孔51内の圧力Pを圧力Paとする。基準状態において、鏝先5aは、半田孔51の下端開口が大気開放されているため、排気孔53aから外部に流れる窒素ガスは少量である。
【0095】
(b)鏝先接触状態
図10に示したように、半田付け装置APは、半田付けを行うため、基準状態の後に鏝先5aを基板CBのソルダーレジストSRに接触させる。鏝先5aがソルダーレジストSRに接触すると、鏝先5aの半田孔51の下端開口がソルダーレジストSRおよびランドLdによって一部塞がれる。半田孔51を通過した窒素ガスは、ピン端子Pが挿入されたスルーホールThから外部に流出する。
【0096】
ピン端子Pが挿入されたスルーホールThの窒素ガスが抜ける部分の流路面積は、半田孔51の中心軸線C1と直交する断面積よりも小さい。このため、鏝先5aが接触状態のとき、半田孔51内の流路抵抗は基準状態よりも大きくなり、鏝先接触状態における半田孔51内の窒素ガスの圧力Pbは基準状態の圧力Paよりも高くなる。
【0097】
(c)半田片投入状態
図11に示したように、ランドLdが適切な温度まで昇温された後に、半田片Whが半田孔51に投入される。半田片Whは、半田孔51に挿入されているピン端子Pに接触して、半田孔51の内部で停止する。半田片Whが半田孔51の途中で停止することで、半田孔51の窒素ガスが通過する流路面積は小さくなる。これにより、半田片投入状態のときには、鏝先接触状態のときに比べて、半田孔51内の流路抵抗が大きくなる。そして、半田片投入状態のときの半田孔51内の圧力Pcは、鏝先接触状態の圧力Pbよりも高くなる。また、本発明では、排気孔53aの内周面側の開口54が半田片Whの溶融領域に形成されているので、半田片Whによって開口54の一部が塞がれて排気孔53aから鏝先5aの外へ流れ出る窒素ガスは鏝先接触状態のときと同じまたはそれ以下となる。
【0098】
(d)半田片溶融状態
図12に示したように、半田孔51に投入された半田片Whが鏝先5aによって加熱されて溶融されると、溶融半田MSによって半田孔51および排気孔53aは塞がれる。これにより、半田孔51の下端開口および排気孔53aから窒素ガスが外部に流出しない。その結果、半田片Whが溶融すると、半田孔51内の窒素ガスの圧力Pdは半田片投入状態の圧力Pcよりも高くなる。
【0099】
なお、前述のように、排気孔53aは鏝先5aの半径方向外方に向かって上方に傾斜しているので、溶融半田MSが排気孔53aから鏝先5aの外に流出することはない。
【0100】
(e)半田片流出状態
図13に示したように、溶融半田MSがピン端子Pの先端部から流下すると、半田孔51の下端開口は、ランドLd及びスルーホールThを塞いだ溶融半田MSによって塞がれる。一方、排気孔53aは開放される。これにより、窒素ガスは半田孔51の下端開口からは外部に流出しないが、排気孔53aから鏝先5aの外に排気される。なお、排気孔53aは半田孔51よりも内径が小さく流路抵抗が大きい。この結果として、半田孔51内の窒素ガスの圧力Peは、半田片溶融状態の圧力Pdよりも小さく、且つ半田片投入状態の圧力Pcよりも大きくなる。なお、鏝先5aは、常にヒーターユニット4によって加熱されているため、溶融半田MSは、すべて鏝先5aの外部、すなわち、ランドLdと電子部品Epのピン端子Pとに流出する。
【0101】
(f)鏝先離間状態
図14に示したように、電子部品Epのピン端子PとランドLdとの半田付けが終了すると、鏝先5aはランドLdから離間する。半田片流出状態において、溶融半田MSは全量又は略全量が半田孔51の外部に流出する。そのため、半田孔51は、半田付け前の状態、すなわち、基準状態と同じ状態に戻る。これにより、半田孔51内の窒素ガスの圧力Pfは基準状態と同じ圧力Paと略同じとなる。
【0102】
上述のとおり、半田孔51内の圧力Pa~Peは、各状態によって異なる値になる。制御手段Contは、予め圧力Pa~Peの基準となる値をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75から取得した半田孔51内の圧力Pのデータと比較することで、現在の鏝先の状態を判定することができる。
【0103】
なお、半田片Wh(溶融半田MS)の体積が大きく、半田片流出状態においても排気孔53aが溶融半田MSによって封鎖される場合には、半田片溶融状態の半田孔51内の圧力Pdと半田片流出状態の半田孔51内の圧力Peとがほぼ同じになることがあり得る。この場合には、半田孔51内の圧力から状態の判定が困難となる。そこで、制御手段Contは、半田孔51内の圧力Pの時間変化も考慮して、鏝先の状態を検出してもよい。例えば、第2計測部75が半田孔51内の圧力Pdを検出してから所定時間経過したことによって、制御手段Contは、鏝先5aが半田片溶融状態から半田片流出状態に変化したと判断してもよい。
【0104】
装置本体A1では、鏝先5aの状態が、基準状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の順に変化する。そして、各状態での半田孔51内の圧力Pは、
図15に示すグラフに示すようになる。
図15は、半田付け装置APが半田付けを1回行うときの半田孔51内の圧力Pの変化を示している。
図15では、縦軸が圧力P、横軸が時間である。なお、
図15に示す圧力値Pa、Pb、Pc、Pd、Pe及びPfは基準値である。
【0105】
図15において、第1領域Ar1は鏝先5aが基準状態のときであり、第1領域Ar1において、半田孔51内の圧力が圧力Paとなっている。第2領域Ar2は、鏝先が鏝先接触状態であり、鏝先が基準状態から鏝先接触状態に変わると鏝先5のランドLdへの接触によって圧力Paから圧力Pbに急激に高くなる。
【0106】
また
図15における、第3領域Ar3は鏝先が半田片投入状態を示しており、半田孔51への半田片Whの投入よって半田孔51および排気孔53aの流路の一部が塞がれて流路抵抗が増加して、圧力Pbから圧力Pcへは急激に高くなる。
【0107】
第4領域Ar4は、鏝先5aが半田片溶融状態を示しており、半田孔51および排気孔53aは半田片Whの溶融によって塞がれるので、その流路抵抗は増加する。半田片Whの溶融は、まず、フラックスが比較的ゆっくり溶融し、その後半田は急激に溶融する。圧力Pcから圧力Pdへは、最初ゆっくり高くなり、一定の変化ののち急激に高くなる。すなわち、第3領域Ar3から第4領域Ar4への変化は最初ゆっくりで、その後急激に高くなる。
【0108】
第5領域Ar5は、鏝先5aが半田片流出状態を示しており、半田孔51の下端開口は溶融半田MSによって閉塞されるが、排気孔53aは開放されるので、半田片流出状態の圧力Peは、半田片溶融状態の圧力Pdよりも低くなる。
【0109】
そして、鏝先5aがランドLdから離間すると、溶融半田MSは全量又は略全量が半田孔51の外部に流出しているため、半田孔51は、半田付け前の状態、すなわち、基準状態と同じ状態に戻り、半田孔51内の窒素ガスの圧力Pfは基準状態と同じ圧力Paと略同じとなる。
【0110】
以上のとおり、半田孔51内の圧力Pは、その値だけでなく、状態が変化するときの圧力Pの変化の割合(急激に変化する又はゆっくり変化する)にも特徴を有する。
【0111】
半田付けの工程が正常に行われているかの判定は、次のように行われる。まず、予め各半田付け状態における半田孔51内の圧力Pの基準値の範囲を設定する。そして、各半田付け状態における基準値の範囲と計測された半田孔51内の圧力Pとの比較によって判定を行う。例えば、半田片投入状態における判定について説明する。まず、半田片投入状態であるAr3の時間帯において基準値の上限値Px1、下限値Py1を設定する。上限値Px1、下限値Py1は、それぞれ、Px1=Pc+x1及びPy1=Pc-y1(x1、y1は正の数)で表される値である。そして、半田付け工程においてAr3の時間帯に計測された半田孔51内の圧力Pが上限値Px1から下限値Py1の間の範囲から逸脱したとき、制御手段Contは、半田付け工程に異常があったとして警報あるいは運転の停止を行ってもよい。なお、x1、y1の一方が0であってもよい。
【0112】
また、前述のx1やy1よりも小さな値であるx2やy2を用いて、第2上限値Px2=Pc+x2及び第2下限値Py2=Pc-y2を設定し、Ar3の時間帯に計測された半田孔51内の圧力Pが第2上限値Px2から第2下限値Py2の範囲外に逸脱した場合に、制御手段Contは、作業者に注意を報知することもできる。なお、x2、y2の一方が0であってもよい。以上の説明では、第1上限値及び第1下限値を用いて警報或いは運転の停止を行う1段階のもの又は第2上限値及び第2下限値をさらに用いて注意、基準値を用いて警報或いは運転の停止を行う2段階のものを挙げているが、これらは一例であり、さらに多くの基準値を用いて、注意或いは警報を2段階以上で行ってもよい。また、半田片投入状態以外の状態のときにも同様に基準値の範囲が設けられており、基準値の範囲と測定された分岐流量とを比較することで、半田付けの工程が正常に行われているか判定する。
【0113】
また、時間と圧力に関係なく、半田が溶融もしくは流出すれば半田孔51内の圧力Pは最大値まで増加する。制御手段Contは、半田孔51内の圧力Pのピーク値(ここでは、圧力Pd)付近の値を検出したときに、半田の溶融が行われたと判定することもできる。
【0114】
(汚れ状態の判定)
制御手段Contにおいて、予め圧力Pa~Peの基準となる値をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75から取得した半田孔51内の圧力Pのデータと比較することで、半田孔51の汚れ状態を判定することもできる。あるいはまた、制御手段Contにおいて、鏝先5と基板CBとは非接触状態、鏝先5と基板CBとの接触、鏝先5への半田片Whの投入、加熱溶融、鏝先5からの溶融半田の流出、鏝先5の基板CBからの離間といった一連の半田付け工程における半田孔51内の窒素ガスの圧力の基準となる経時変化をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75から取得した半田孔51内の圧力Pの経時変化と比較することで半田孔51の汚れ状態を判定することも可能である。
【0115】
第3領域Ar3すなわち半田孔51への半田片Whの投入段階において半田孔51の汚れ状態を判定する場合を例に説明する。
図16に、半田片Whが半田孔51へ投入された状態図を示す。
図11示すような半田孔51が汚れていない初期状態では半田孔51内の圧力はPcである。一方、
図16に示すような半田孔51や排気孔53aの内周壁にドロスなどの付着物が付着している状態では、半田孔51および排気孔53aの窒素ガスが通過する流路面積が小さくなっているところ、半田片Whが投入されることによって流路面積はさらに小さくなるため、半田孔51内の圧力は初期状態の圧力Pcよりも高い圧力Pc’となる(
図15の破線)。制御手段Contは、初期状態における圧力Pcを予め記憶しておき、測定された半田孔51内の圧力と圧力Pcとを比較して半田孔の汚れ状態を判定することが可能となる。
【0116】
(イモ半田の判定)
またさらに、鏝先5aの以上のような状態の変化の外、基板CBのランドLdと電子部品Epのピン端子Pとの半田付け状態を判定することも可能である。例えば
図17(a)に示すように、ランドLdとピン端子Pが正常に半田付けされた場合には半田は円錐形状となる。一方、予備加熱が不十分な場合などには
図17(b)に示すように半田が盛り上がった状態となる(イモ半田)。
【0117】
そこで、制御手段Contが半田の溶融が行われたと判定した後、鏝先5aとソルダーレジストSRとの接触が検知された初期位置から距離GだけソルダーレジストSRから鏝先5aを離間させ、半田孔51内の圧力Pの変化によって半田付け状態を判定する。すなわち、鏝先5aをソルダーレジストSRから距離Gだけ離間させ所定時間保持して半田孔51内の圧力Pを測定する。
図17(a)に示すように半田付けが正常になされていた場合には、鏝先5aをソルダーレジストSRから距離G離すことによって円錐状の半田と鏝先5の半田孔51内周面との間に隙間が生じ、その隙間から半田孔51内の窒素ガスが外部に流出するので、半田孔51内の圧力Pは急激に減少して圧力Paと同じか略同じとなる。
【0118】
これに対して
図17(b)に示すようにイモ半田が形成されていた場合には、鏝先5aをソルダーレジストSRから距離G離してもドーム状に盛り上がった半田と鏝先5aの半田孔51内周面とは依然として接触しているか、隙間があったとしても僅かであるため、半田孔51内の圧力Pは減少しないか、減少しても微量である。したがって、このような半田孔51内の圧力Pの変化を測定することによって半田付け状態が判断可能となる。
【0119】
なお、鏝先5aとソルダーレジストSRとの離間距離Gは、半田付けが正常な場合には半田と半田孔51の内周面とが接触せず、イモ半田が形成された場合には半田と半田孔51の内周面とが接触する距離であって、供給される半田片Whの体積や半田孔51の形状などを考慮し、また予備実験などに基づいて適宜決定すればよい。離間距離Gは通常0.2mm~2mmの範囲である。また、鏝先5aとソルダーレジストSRとを距離Gまで離間させる際の鏝先5aの離間速度に特に限定はないが、圧力Pの測定精度などの観点からは0.1mm/sec~10mm/secの範囲が好ましい。より好ましくは0.2mm/sec~2mm/secの範囲である。また、鏝先5aを離間距離Gで保持する時間は0.1sec~2secの範囲が好ましい。
【0120】
このような異常判定をも行うためには、制御手段Contは、予め、
図15に示すような、半田付け1回における分岐流量の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、圧力測定部75からの分岐流量のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで鏝先の状態を判定するようにする。このような判定方法を用いることで、鏝先の状態をより正確に判定することができる。
【0121】
本実施形態では、装置本体A1が半田付けを行うときにとり得る状態として、(a)基準状態、(b)鏝先接触状態、(c)半田片投入状態、(d)半田片溶融状態、(e)半田片流出状態、(f)鏝先離間状態の6つの状態を挙げているが、これ以外の状態を判定するようにしてもよい。
【0122】
(第1変形例)
上述した実施形態では、半田片Whの太さ及び長さが一定である場合で説明している。しかしながら、糸半田Wの送りには、ばらつきが生じる場合がある。また、半田付けを行う面積が大きい等によって、半田片Whの形、大きさを意図的に変更する場合もある。このような場合、制御手段Contは、鏝先接触状態の圧力Pbから圧力Pが変動したときの変動の大きさ、変動の挙動に基づいて、投入された半田片Whの形状、大きさ等を判定してもよい。なお、異なる大きさ、形状の半田片を投入する可能性がある場合、制御手段Contは、各大きさ、形状の半田片Whごとに、各状態における半田孔51内の圧力Pの基準値及び(又は)その時間変化を示すテーブルをデータベースとして備えていることが好ましい。
【0123】
(第2変形例)
上述の実施形態では、鏝先5aが半田を溶融できる高温の状態にある場合で説明している。しかしながら、ヒーター41の故障等によって鏝先5aが半田を溶融するために設定された正常温度範囲内から外れる場合もあり得る。鏝先5aを通過する窒素ガスは、鏝先5aの温度によって、膨張する程度や粘度が異なるため、流路抵抗も増減し、その結果、窒素ガスの圧力も変化する。例えば、鏝先5aの温度が低下すると窒素ガスの体積は減少し、粘度も低くなるので半田孔51における窒素ガスの圧力は低下する。このことを利用して、制御手段Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5aが基準状態のときの圧力Paを記憶しておき、記憶している圧力Paと計測した圧力Pとに基づいて、鏝先5aの温度を判定することが可能である。
【0124】
また、供給されるガスの種類が、窒素と空気或いは酸素との混合ガスのように変化した場合も、流路抵抗が変化するため、半田孔51内の圧力Pに差異が生じる。このことを利用して、制御手段Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5aが基準状態のときの圧力Paを記憶しておき、記憶している圧力Paと計測した圧力Pとに基づいて、供給されているガスが窒素ガス(供給されるべきガス)であるか否か判定できる。これにより、制御手段Contは、例えば、ガス配管接続の誤りを検出することが可能である。
【0125】
第1変形例および第2変形例の動作は、例えば、一定の周期ごとに行うものとすることができる。一定の周期とは、例えば、時間で管理してもよいし、半田付け回数で管理してもよい。また、半田付け装置APの電源投入直後及び工程終了時に行うようにしてもよい。また、ランダムなタイミングで行うようにしてもよい。
【0126】
以上説明した半田付け装置及び半田付け方法の実施形態はその一例を示したものであり、本発明の効果を阻害しない範囲において種々の変形等は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明に係る鏝先は、溶融半田から発生するヒュームを迅速に外部に排出でき、且つ排出されたヒュームが基板上の電子部品に当たるのを抑制することができる。また溶融した半田の排気孔から外部への流出を防止できる。
【符号の説明】
【0128】
AP 半田付け装置
A1 装置本体
4 ヒーターユニット(熱源)
41 ヒーター
42 ヒーターブロック
5a,5b,5c,5d,5e,5f 鏝先
50 本体部
51 半田孔
52 圧力測定用孔
53a,53b,53c,53d 排気孔
54 排気孔の内周面側の開口
55 排気孔の外周面側の開口
59 ガス解放孔
510 拡径部
6 半田送り機構
7 ガス供給部
75 圧力測定部
CB プリント回路基板
C1 鏝先の本体部の中心軸線
Cont 制御手段
D 半田片の溶融領域
Ep 電子部品
GS ガス供給源
MS 溶融半田
Ld ランド
P ピン端子
SR ソルダーレジスト
Th スルーホール
W 糸半田
Wh 半田片