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特開2023-113232有機EL素子及び有機EL素子を備える有機EL表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113232
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】有機EL素子及び有機EL素子を備える有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/10 20230101AFI20230808BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230808BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H05B33/14 B
H01L27/32
G09F9/30 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015437
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】野口 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 尚光
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC08
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD58
3K107DD68
3K107DD69
3K107FF00
3K107FF13
3K107FF19
5C094BA27
5C094FB01
5C094JA02
(57)【要約】
【課題】光の色度変化を抑制可能な有機EL素子及び当該有機EL素子を含む有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子は、第1電極と、第1電極上に位置する有機発光層と、有機発光層上に位置する第2電極と、を備える。有機発光層は、第1光を発生する第1ドーパントと、第1光よりも短波長である第2光を発生する第2ドーパントとを含み、第1ドーパントのHOMOの絶対値は、第2ドーパントのHOMOの絶対値よりも大きく、第1ドーパントのLUMOの絶対値は、第2ドーパントのLUMOの絶対値よりも大きく、第2ドーパントの発光スペクトルの少なくとも一部は、第1ドーパントの吸収スペクトルと重なる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極上に位置する有機発光層と、
前記有機発光層上に位置する第2電極と、を備え、
前記有機発光層は、第1光を発生する第1ドーパントと、前記第1光よりも短波長である第2光を発生する第2ドーパントとを含み、
前記第1ドーパントのHOMOの絶対値は、前記第2ドーパントのHOMOの絶対値よりも大きく、
前記第1ドーパントのLUMOの絶対値は、前記第2ドーパントのLUMOの絶対値よりも大きく、
前記第2ドーパントの発光スペクトルの少なくとも一部は、前記第1ドーパントの吸収スペクトルと重なる、
有機EL素子。
【請求項2】
前記第2ドーパントの前記発光スペクトルの5%以上が、前記第1ドーパントの前記吸収スペクトルと重なる、請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記有機発光層は、ホール輸送性を示す第1ホストと、電子輸送性を示す第2ホストとをさらに含み、
前記第1ホストのHOMOの絶対値と、前記第2ホストのHOMOの絶対値とのそれぞれは、前記第1ドーパントのHOMOの絶対値及び前記第2ドーパントのHOMOの絶対値よりも大きく、
前記第1ホストのLUMOの絶対値は、前記第1ドーパントのLUMOの絶対値及び前記第2ドーパントのLUMOの絶対値よりも小さく、
前記第2ホストのLUMOの絶対値は、前記第2ドーパントのLUMOの絶対値よりも大きく、前記第1ドーパントのLUMOの絶対値以下である、請求項1または2に記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記第2ドーパントの吸収スペクトルは、前記第1ホストの発光スペクトルと、前記第2ホストの発光スペクトルとの少なくとも一方に重なる、請求項3に記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記第2ドーパントの吸収スペクトルの50%以上が、前記第1ホストの前記発光スペクトルと、前記第2ホストの前記発光スペクトルとの少なくとも一方に重なる、請求項4に記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記第1ホストの前記発光スペクトルの80%以上が、前記第2ホストの前記発光スペクトルに重なる、請求項4または5に記載の有機EL素子。
【請求項7】
前記第2ドーパントの前記吸収スペクトルのうち前記第1ホストの前記発光スペクトルに重なる第1割合、及び/又は、前記第2ドーパントの前記吸収スペクトルのうち前記第2ホストの前記発光スペクトルに重なる第2割合は、前記第1ドーパントの前記吸収スペクトルのうち前記第1ホストの前記発光スペクトルに重なる第3割合、及び/又は、前記第1ドーパントの前記吸収スペクトルのうち前記第2ホストの前記発光スペクトルに重なる第4割合よりも大きい、請求項3~6のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項8】
前記第1割合、及び/又は、前記第2割合は、前記第3割合、及び/又は、前記第4割合の1.5倍以上である、請求項7に記載の有機EL素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の有機EL素子を備える有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子及び有機EL素子を備える有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種表示装置に有機EL材料(EL:Electro-Luminescence)を発光物質として用いた有機EL素子が用いられる。例えば下記特許文献1には、フェニルアントラセン誘導体を、有機EL素子の有機化合物層、特に好ましくは青色発光用の発光層に用いる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-12600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL素子においては、複数の発光物質が含まれることがある。この場合、各発光物質の劣化速度の違いなどに起因して、有機EL素子から放出される光の色度は、当該有機EL素子の使用に伴って変化していくことがある。
【0005】
本発明の一側面は、光の色度変化を抑制可能な有機EL素子及び当該有機EL素子を備える有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る有機EL素子は、第1電極と、第1電極上に位置する有機発光層と、有機発光層上に位置する第2電極と、を備え、有機発光層は、第1光を放出する第1ドーパントと、第1光よりも短波長である第2光を放出する第2ドーパントとを含み、第1ドーパントのHOMOの絶対値は、第2ドーパントのHOMOの絶対値よりも大きく、第1ドーパントのLUMOの絶対値は、第2ドーパントのLUMOの絶対値よりも大きく、第2ドーパントの発光スペクトルの少なくとも一部は、第1ドーパントの吸収スペクトルと重なる。
【0007】
この有機EL素子によれば、有機発光層において、ホールは第1ドーパントよりも第2ドーパントに集中しやすく、電子は第2ドーパントよりも第1ドーパントに集中しやすい。この場合、ホール及び電子の両方が第1ドーパント及び第2ドーパントのいずれかに集中しにくくなるので、第1ドーパント及び第2ドーパントのいずれかの劣化促進を抑制できる。よって、第1ドーパント及び第2ドーパントのいずれかに顕著な劣化が発生することに起因する、有機発光層から放出される光の色度変化を抑制できる。加えて、第2ドーパントの発光スペクトルの少なくとも一部は、第1ドーパントの吸収スペクトルと重なる。この場合、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動が生じやすい。また、第2ドーパントの劣化に伴って、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動も減少しやすくなる。このため、第2ドーパントの劣化に基づく第2光の発光強度の低下に応じて第1光の発光強度も低下するので、有機発光層から放出される第1光の強度と第2光の強度との割合変化も抑制できる。
【0008】
第2ドーパントの発光スペクトルの5%以上が、第1ドーパントの吸収スペクトルと重なってもよい。この場合、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動が良好に生じやすい。
【0009】
有機発光層は、ホール輸送性を示す第1ホストと、電子輸送性を示す第2ホストとをさらに含み、第1ホストのHOMOの絶対値と、第2ホストのHOMOの絶対値とのそれぞれは、第1ドーパントのHOMOの絶対値及び第2ドーパントのHOMOの絶対値よりも大きく、第1ホストのLUMOの絶対値は、第1ドーパントのLUMO及び第2ドーパントのLUMOの絶対値よりも小さく、第2ホストのLUMOの絶対値は、第2ドーパントのLUMOの絶対値よりも大きく、第1ドーパントのLUMOの絶対値以下でもよい。この場合、有機発光層において、ホールは第1ホストに集中しにくく各ドーパントに分散しやすくなり、かつ、電子は第1ホスト及び第2ドーパントに集中しにくい。
【0010】
第2ドーパントの吸収スペクトルは、第1ホストの発光スペクトルと、第2ホストの発光スペクトルとの少なくとも一方に重なってもよい。この場合、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントへのエネルギー移動が生じやすいので、第2ドーパントから第2光が放出されやすくなる。
【0011】
第2ドーパントの吸収スペクトルの50%以上が、第1ホストの発光スペクトルと、第2ホストの発光スペクトルとの少なくとも一方に重なってもよい。この場合、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントへのエネルギー移動がより生じやすくなる。
【0012】
第1ホストの発光スペクトルの80%以上が、第2ホストの発光スペクトルに重なってもよい。この場合、第1ホスト及び第2ホストの両方から第2ドーパントへのエネルギー移動が生じやすくなる。
【0013】
第2ドーパントの吸収スペクトルのうち第1ホストの発光スペクトルに重なる第1割合、及び/又は、第2ドーパントの吸収スペクトルのうち第2ホストの発光スペクトルに重なる第2割合は、第1ドーパントの吸収スペクトルのうち第1ホストの発光スペクトルに重なる第3割合、及び/又は、第1ドーパントの吸収スペクトルのうち第2ホストの発光スペクトルに重なる第4割合よりも大きくてもよい。この場合、有機発光層において、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントへのエネルギー移動は、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第1ドーパントへのエネルギー移動よりも支配的になる。このため、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントを介して第1ドーパントへのエネルギー移動が生じやすくなる。
【0014】
第1割合、及び/又は、第2割合は、第3割合、及び/又は、第4割合の1.5倍以上でもよい。この場合、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントを介して第1ドーパントへのエネルギー移動がより生じやすくなる。
【0015】
本発明の別の一側面に係る有機EL表示装置は、上記有機EL素子を備える。この場合、光の色度変化を抑制可能な上記有機EL素子を備える有機EL表示装置を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、光の色度変化を抑制可能な有機EL素子及び当該有機EL素子を備える有機EL表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
図2図2は、有機EL素子のバンド構造を示す図である。
図3図3(a)は、第1ドーパントの発光スペクトル及び吸光スペクトルと、第2ドーパントの発光スペクトルとを示す図であり、図3(b)は、第2ドーパントの発光スペクトル及び吸光スペクトルと、第1ホスト及び第2ホストの発光スペクトルとを示す図である。
図4図4は、図3(a),(b)を合わせた図である。
図5図5(a)は、第1比較例に係る有機EL素子を示す概略断面図であり、図5(b)は、第2比較例に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
図6図6は、各有機EL素子の輝度寿命測定結果を示す図である。
図7図7は、各有機EL素子の色度変化測定結果を示す図である。
図8図8は、有機EL表示装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。図1に示されるように、本実施形態に係る有機EL素子1は、電流が供給されることによって発光する素子である。有機EL素子1は、例えば白色光を発光可能な素子である。白色光は、例えば、赤色光、緑色光及び青色光が混合することによって生成されてもよいし、黄色光及び青色光が混合することによって生成されてもよい。有機EL素子1は、第1電極2、第2電極3、ホール注入層4,ホール輸送層5、発光層6、第1電子輸送層7、及び第2電子輸送層8を有する。有機EL素子1においては、順に積層されるホール注入層4、ホール輸送層5、発光層6、第1電子輸送層7、及び第2電子輸送層8が、第1電極2と第2電極3との間に位置する。図1では、第1電極2が最も下側に位置し、第2電極3が最も上側に位置する。第1実施形態では、ホール注入層4、ホール輸送層5、発光層6、第1電子輸送層7、及び第2電子輸送層8のそれぞれは、有機材料を含む。ホール注入層4、ホール輸送層5、発光層6、第1電子輸送層7、及び第2電子輸送層8のそれぞれの厚さは、例えば5nm以上1000nm以下である。
【0020】
第1電極2は、陽極として機能する透明導電層であり、例えば透明基板上等に形成される。第1電極2を構成する材料としては、例えばITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の透光性を有する導電材料が用いられる。第1電極2は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)によって、上記透明基板上に成膜した透明導電膜をパターニングすることによって形成される。なお、第1電極2と上記透明基板との間には、透明のバリア層などが設けられ得る。
【0021】
第2電極3は、陰極として機能する導電層である。第2電極3を構成する材料(導電材料)は、例えばアルミニウム、銀等の金属である。当該導電材料には、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)が含まれてもよいし、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ITO(酸化インジウムスズ)等の透光性を有する材料が含まれてもよい。導電材料には、複数の導電材料が含まれてもよい。第2電極3は、例えばPVD法によって形成される。第2電極3の直下には、電子注入性の高い物質(電子注入材料)が設けられ得る。電子注入材料が設けられることによって、第2電子輸送層8、第1電子輸送層7、及び発光層6に電子が到達しやすくなる。電子注入材料は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物である。当該化合物は、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物等である。
【0022】
ホール注入層4は、第1電極2からホールが流れ込む層であり、第1電極2の直上に位置する。ホール注入層4が設けられることによって、ホール輸送層5及び発光層6にホールが到達しやすくなる。ホール注入層4は、ホール注入性を有する材料として、例えば、アリールアミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体等を含む。なお、例えば、アリールアミン誘導体は、アリールアミン自体も含む概念であり、他の誘導体も同様である。
【0023】
ホール輸送層5は、ホール注入層4に流れ込んだホールを発光層6へ輸送する層であり、ホール注入層4の直上であって第1電極2と発光層6との間に位置する。ホール輸送層5は、ホール輸送性を有する材料(ホール輸送材料)として、低分子材料、高分子材料のいずれを含んでもよい。低分子材料としては、例えば芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、テトラフェニルジアミノビフェニル誘導体などが挙げられる。高分子材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(Pani/PSS)などが挙げられる。ホール輸送層5は、上記低分子材料と上記高分子材料とのうち、1または複数の材料を含み得る。ホール輸送層5は、単層構造を有してもよいし、積層構造を有してもよい。ホール輸送層5が積層構造を有する場合、各層に含まれるホール輸送材料は、互いに異なり得る。
【0024】
発光層6は、注入されるホール及び電子の結合に伴うエネルギー放出を利用して発光する層(有機発光層)である。発光層6は、ホール輸送層5の直上であって第1電極2と第2電極3との間に位置する。発光層6は、ホスト及びドーパントを含む。発光層6において、ホストとドーパントとの合計質量に対するホストの比率は、50%より大きい。換言すると、発光層6において、ホストの含有量は、ドーパントの含有量よりも大きい。発光層6におけるドーパントの含有量は、例えば、0.01質量%以上、0.1質量%以上または1質量%以上であり、30質量%以下、20質量%以下または10質量%以下である。発光層6に含まれるホスト及びドーパントの詳細な説明は、後述する。
【0025】
第1電子輸送層7及び第2電子輸送層8のそれぞれは、電子を第2電極3から発光層6へ輸送する層であり、発光層6の直上であって発光層6と第2電極3との間に位置する。第2電子輸送層8は、第1電子輸送層7と第2電極3との間に位置する。第1電子輸送層7及び第2電子輸送層8のそれぞれは、電子輸送性を有する材料(電子輸送材料)として、低分子材料、高分子材料のいずれを含んでもよい。低分子材料としては、例えば、アントラセン誘導体、キノリン誘導体、ペリレン誘導体、スチリルアミン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体並びにこれらの化合物を配位子とする金属錯体などが挙げられる。高分子材料としては、ポリキノキサリン、ポリキノリンなどが挙げられる。第1電子輸送層7に含まれる電子輸送材料と、第2電子輸送層8に含まれる電子輸送材料とは、互いに異なり得る。また、第1電子輸送層7に含まれる電子輸送材料と、第2電子輸送層8に含まれる電子輸送材料との少なくとも一方は、発光層6に含まれるホストと異なってもよい。
【0026】
次に、発光層6のホスト及びドーパントについて説明する。発光層6は、2種類のホスト(第1ホスト及び第2ホスト)と、2種類の蛍光ドーパント(第1ドーパント及び第2ドーパント)とを含む。すなわち、発光層6は、4つの異なる物質を含む層(4元構成層)である。第1実施形態では、発光層6に含まれる第1ホスト及び第2ホストと、第1ドーパント及び第2ドーパントとのそれぞれは、以下に記載される条件を満たす材料である。
【0027】
第1ホスト及び第2ホストのそれぞれは、電子とホールとの再結合により励起子が生成すると共に、当該励起子がエネルギーを放出して基底状態に戻る有機物材料である。第1ホストは、ホール輸送性を示す材料である。発光層6において、第1ホストと第2ホストとの合計質量に対する第1ホストの比率は、1%以上99%以下である。本実施形態では、ホール輸送層5から発光層6へのホールの移動に伴うエネルギーロス低減の観点から、ホール輸送層5に含まれるホール輸送材料は、第1ホストと同一である。また、第2ホストは、電子輸送性を示す材料である。第1電子輸送層7から発光層6への電子の移動に伴うエネルギーロス低減の観点から、第2ホストは、第1電子輸送層7に含まれる電子輸送材料と同一である。
【0028】
第1ドーパント及び第2ドーパントのそれぞれは、電子とホールとの再結合により励起子が生成すると共に、当該励起子がエネルギーを放出して基底状態に戻る際に蛍光発光する有機物材料(ドーパント材料)である。第1ドーパントによって発生する光(第1光)の波長は、第2ドーパントによって発生する光(第2光)の波長よりも長い。換言すると、第2光は、第1光よりも短波長である。発光層6において、第1ドーパントと第2ドーパントとの合計質量に対する第1ドーパントの比率は、0.01%以上99.9%以下である。本実施形態では、第1ドーパントは黄色発光用のドーパントであり、第2ドーパントは青色発光用のドーパントである。ドーパント材料は、例えば、有機金属錯体化合物、芳香族炭化水素化合物及びその誘導体、及びそれらの誘導体、スチリルアミン誘導体、テトラアリールジアミン誘導体等である。芳香族炭化水素化合物は、例えば、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペリレン、ベンゾフルオランテン、ナフトフルオランテン等である。
【0029】
図2は、有機EL素子のバンド構造を示す図である。図2には、ホール注入層4、ホール輸送層5、発光層6、第1電子輸送層7、及び第2電子輸送層8のそれぞれのHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道),LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、最低空軌道)が示される。図2に示されるように、発光層6には、2種類のホストのHOMOの絶対値及びLUMOの絶対値と、2種類のドーパントのHOMOの絶対値及びLUMOの絶対値とが示される(以下では、HOMOの絶対値と、LUMOの絶対値とのそれぞれは、単に「HOMO」、「LUMO」と記載される)。発光層6を示すブロックには、2つのHOMOと、2つのLUMOが含まれる。当該2つのHOMOのうち、小さい方は第1ホストのHOMOを示し、大きい方は第2ホストのHOMOを示す。当該2つのLUMOのうち、小さい方は第1ホストのLUMOを示し、大きい方は第2ホストのLUMOを示す。また、符号11は、第1ドーパントのHOMO,LUMOを示し、符号12は、第2ドーパントのHOMO,LUMOを示す。なお、本実施形態では、第1電子輸送層7のHOMOは第2電子輸送層8のHOMOよりも大きく、第1電子輸送層7のLUMOは第2電子輸送層8のLUMOよりも小さい。
【0030】
図2に示されるように、第1ホストのHOMOと、第2ホストのHOMOとのそれぞれは、第1ドーパントのHOMO及び第2ドーパントのHOMOよりも大きい。これにより、発光層6における第1ホストのホールは、第2ホストよりも第1ドーパント及び第2ドーパントに移動しやすい。また、第2ホストのHOMOは、第1ホストのHOMOよりも大きい。これにより、第1ホストから第2ホストへのホールの移動が発生しにくい。第1ホストのLUMOは、第1ドーパントのLUMO及び第2ドーパントのLUMOよりも小さい。これにより、発光層6における第2ホストの電子は、第1ホストよりも第1ドーパント及び第2ドーパントに移動しやすい。加えて、第2ホストのLUMOは、第2ドーパントのLUMOよりも大きく、第1ドーパントのLUMO以下である。
【0031】
第1ドーパントのHOMOは、第2ドーパントのHOMOよりも大きい。これにより、発光層6に流入したホールは、第1ドーパントよりも第2ドーパントに集中しやすい。よって、発光層6において、第2ドーパントはホールトラップ材料として機能し、第1電子輸送層7へのホールの移動が抑制される。また、発光層6に流入するホールの多くは第2ドーパントに移動し、当該ホールの一部は第1ドーパントに移動する。ホストから各ドーパントへのホールの移動バランスの観点から、第1ドーパントのHOMOと第2ドーパントのHOMOとの差(第1差)は、例えば0.2以下、0.18以下、0.15以下、0.1以下もしくは0.05以下である。第2ドーパントへホールを集中させる観点から、上記第1差は、0.1以上でもよい。第1ドーパントへもホールを移動させる観点から、上記第1差は、0.18以下でもよい。
【0032】
第1ドーパントのLUMOは、第2ドーパントのLUMOよりも大きい。これにより、発光層6に流入した電子は、第2ドーパントよりも第1ドーパントに集中しやすい。よって、発光層6において、第1ドーパントは電子トラップ材料として機能し、ホール輸送層5への電子の移動が抑制される。また、発光層6に流入する電子の多くは第1ドーパントに移動し、当該電子の一部は第2ドーパントに移動する。ホストから各ドーパントへの電子の移動バランスの観点から、第1ドーパントのLUMOと第2ドーパントのLUMOとの差(第2差)は、例えば0.5以下、0.3以下、0.25以下、0.2以下、0.15以下、0.1以下もしくは0.05以下である。第1ドーパントへ電子を集中させる観点から、上記第2差は、0.1以上でもよい。第2ドーパントへも電子を移動させる観点から、上記第2差は、0.25以下でもよい。本実施形態では、第1ドーパントのLUMOは、第2ホストのLUMOと同一であり、これにより第2ホストから第1ドーパントへの電子移動に伴うエネルギーロスが良好に低減される。
【0033】
図3(a)は、第1ドーパントの発光スペクトル及び吸光スペクトルと、第2ドーパントの発光スペクトルとを示す図であり、図3(b)は、第2ドーパントの発光スペクトル及び吸光スペクトルと、第1ホスト及び第2ホストの発光スペクトルとを示す図である。図3(a),(b)のそれぞれにおいて、横軸は波長を示し、縦軸は強度を示す。図3(a)において、プロット31は第1ドーパントの発光スペクトルであり、プロット32は第1ドーパントの吸光スペクトルであり、プロット33は第2ドーパントの発光スペクトルである。図3(b)において、プロット34は第2ドーパントの吸光スペクトルであり、プロット35は第1ホストの発光スペクトルであり、プロット36は第2ホストの発光スペクトルである。なお、図3(a),(b)における縦軸は、スペクトルの最大値を基準として規格化されている。
【0034】
図3(a)において、プロット31によって画定される領域を領域31aとする。より具体的には、領域31aは、プロット31と、横軸と、縦軸とによって画定される領域に相当する。同様に、プロット32によって画定される領域を領域32aとし、プロット33によって画定される領域を領域33aとする。図3(b)において、プロット34によって画定される領域を領域34aとし、プロット35によって画定される領域を領域35aとし、プロット36によって画定される領域を領域36aとする。以下では、領域31aと領域32aとが互いに重なることは、プロット31(すなわち、第1ドーパントの発光スペクトル)とプロット32(すなわち、第1ドーパントの吸収スペクトル)とが重なることに相当する。
【0035】
図3(a)に示されるように、領域33aの少なくとも一部は、領域32aと重なる。この場合、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動が発生する。当該エネルギー移動は、例えば第1ドーパントが、第2ドーパントが基底状態に戻るときに放出されるエネルギーを受け取ることによって発生する。領域32a,33aの重なり度合いが大きいほど、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動が発生しやすい。本実施形態では、エネルギー効率化の観点から、領域33aの5%以上が、領域32aと重なる。領域33aの10%以上、30%以上、もしくは50%以上が、領域32aと重なってもよい。
【0036】
図3(b)に示されるように、領域34aは、領域35aと、領域36aとの少なくとも一方に重なる。この場合、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントへのエネルギー移動が発生する。当該エネルギー移動は、例えば第2ドーパントが、第1ホストが基底状態に戻るときに放出されるエネルギーを受け取ることによって発生する。本実施形態では、領域34aは、領域35aと、領域36aとの両方に重なる。領域34aと、領域35a,36aの重なり度合いが大きいほど、第1ホスト及び第2ホストから第2ドーパントへのエネルギー移動が発生しやすい。本実施形態では、エネルギー効率化の観点から、領域34aの50%以上(好ましくは80%以上)が、領域35a,36aとの少なくとも一方に重なる。また、領域35aの50%以上(好ましくは80%以上)が、領域36aに重なってもよい。
【0037】
図4は、図3(a),(b)を合わせた図である。図4において、領域34aのうち領域35aに重なる領域は、領域34aのうち領域35aに重なる第1割合(図4においては、領域34aのうち領域35aが重なる部分の割合)に相当する。同様に、領域34aのうち領域36aに重なる領域は、領域34aのうち領域36aに重なる第2割合(図4においては、領域34aのうち領域36aが重なる部分の割合)に相当し、領域32aのうち領域35aに重なる領域は、領域32aのうち領域35aに重なる第3割合(図4においては、領域32aのうち領域35aが重なる部分の割合)に相当し、領域32aのうち領域36aに重なる領域は、領域32aのうち領域36aに重なる第4割合(図4においては、領域32aのうち領域36aが重なる部分の割合)に相当する。
【0038】
第1ホスト及び/又は第2ホストから第2ドーパントへのエネルギー移動を支配的にする観点から、第1割合、及び/又は、第2割合は、第3割合、及び/又は、第4割合よりも大きい。上記観点は、第1ホスト及び/又は第2ホストから第1ドーパントへのエネルギー移動よりも、第1ホスト及び/又は第2ホストから第2ドーパントへのエネルギー移動を発生させやすくする観点に相当する。第1割合、及び/又は、第2割合は、例えば、第3割合、及び/又は、第4割合の1.2倍以上である。本実施形態では、第1割合と第2割合とのそれぞれは、第3割合と第4割合とのそれぞれよりも大きく、1.5倍以上である。
【0039】
以上に説明した本実施形態に係る有機EL素子1によれば、発光層6において、ホールは第1ドーパントよりも第2ドーパントに集中しやすく、電子は第2ドーパントよりも第1ドーパントに集中しやすい。この場合、ホール及び電子の両方が第1ドーパント及び第2ドーパントのいずれかに集中しにくくなるので、第1ドーパント及び第2ドーパントのいずれかの劣化促進を抑制できる。よって、第1ドーパント及び第2ドーパントのいずれかに顕著な劣化が発生することに起因する、発光層6から放出される光の色度変化を抑制できる。加えて、領域33aの少なくとも一部は、領域32aと重なる。この場合、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動が生じやすい。また、第2ドーパントの劣化に伴って、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動も減少しやすくなる。このため、第2ドーパントの劣化に基づく第2光の発光強度の低下に応じて第1光の発光強度も低下するので、発光層6から放出される第1光の強度と第2光の強度との割合変化も抑制できる。
【0040】
さらには、発光層6においてホールを第2ドーパントに集中しやすくし、電子を第1ドーパントに集中しやすくすることによって、発光層6からホール輸送層5への電子の抜け、並びに、発光層6から第1電子輸送層7へのホールの抜けが発生しにくくなる。これにより、上記電子によるホール輸送材料の劣化と、上記ホールによる電子輸送材料の劣化とが抑制されるので、有機EL素子1の寿命を向上できる。
【0041】
本実施形態では、第2ドーパントの発光スペクトルの5%以上が、第1ドーパントの吸収スペクトルと重なる。このため、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動が良好に生じやすい。第2ドーパントの発光スペクトルの50%以上が、第1ドーパントの吸収スペクトルと重なってもよい。この場合、第2ドーパントから第1ドーパントへのエネルギー移動がより良好に生じやすくなる。
【0042】
本実施形態では、発光層6は、ホール輸送性を示す第1ホストと、電子輸送性を示す第2ホストとを含み、第1ホストのHOMOと、第2ホストのHOMOとのそれぞれは、第1ドーパントのHOMO及び第2ドーパントのHOMOよりも大きく、第1ホストのLUMOは、第1ドーパントのLUMO及び第2ドーパントのLUMOよりも小さく、第2ホストのLUMOは、第2ドーパントのLUMOよりも大きく、第1ドーパントのLUMO以下である。このため、発光層6において、ホールは第1ホストに集中しにくく各ドーパントに分散しやすくなり、かつ、電子は第1ホスト及び第2ドーパントに集中しにくい。
【0043】
本実施形態では、第2ドーパントの吸収スペクトルは、第1ホストの発光スペクトルと、第2ホストの発光スペクトルとの少なくとも一方に重なる。このため、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントへのエネルギー移動が生じやすいので、第2ドーパントから第2光が放出されやすくなる。
【0044】
本実施形態では、第2ドーパントの吸収スペクトルの50%以上が、第1ホストの発光スペクトルと、第2ホストの発光スペクトルとの少なくとも一方に重なる。このため、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントへのエネルギー移動がより生じやすくなる。
【0045】
本実施形態では、第1ホストの発光スペクトルの80%以上が、第2ホストの発光スペクトルに重なる。このため、第1ホスト及び第2ホストの両方から第2ドーパントへのエネルギー移動が生じやすくなる。
【0046】
本実施形態では、領域34aのうち領域35aに重なる第1割合、及び/又は、領域34aのうち領域36aに重なる第2割合は、領域32aのうち領域35aに重なる第3割合、及び/又は、領域32aのうち領域36aに重なる第4割合よりも大きくてもよい。この場合、有機発光層において、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントへのエネルギー移動は、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第1ドーパントへのエネルギー移動よりも支配的になる。このため、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントを介して第1ドーパントへのエネルギー移動が生じやすくなる。
【0047】
本実施形態では、第1割合、及び/又は、第2割合は、第3割合、及び/又は、第4割合の1.5倍以上でもよい。この場合、第1ホスト及び第2ホストの少なくとも一方から第2ドーパントを介して第1ドーパントへのエネルギー移動がより生じやすくなる。
【0048】
以下では、図5に示される比較例などを参照しながら、上記実施形態に係る発明の作用効果の一つを説明する。図5(a)は、第1比較例に係る有機EL素子を示す概略断面図であり、図5(b)は、第2比較例に係る有機EL素子を示す概略断面図である。図5(a)に示されるように、第1比較例に係る有機EL素子100は、上記実施形態の有機EL素子1と異なり、発光層6の代わりに、電子輸送性材料であるホスト、上記第1ドーパント及び上記第2ドーパントを有する発光層106を有する。すなわち、有機EL素子100は、4元構成層である発光層を有さない。図5(b)に示されるように、第2比較例に係る有機EL素子100Aは、上記実施形態の有機EL素子1と異なり、発光層6の代わりに、第1発光層106A及び第2発光層106Bを有する。第1発光層106Aは、上記第1ホスト、上記第2ホスト及び上記第1ドーパントを有する。第2発光層106Bは、上記第1ホスト、上記第2ホスト及び上記第2ドーパントを有する。
【0049】
図6は、各有機EL素子の輝度寿命測定結果を示す図である。図6において、横軸は駆動時間を示し、縦軸は輝度残存率を示す。図7において、プロット51は、上記実施形態に係る有機EL素子1の輝度寿命測定結果を示し、プロット52は、第1比較例に係る有機EL素子100の輝度寿命測定結果を示し、プロット53は、第2比較例に係る有機EL素子100Aの輝度寿命測定結果を示す。なお、輝度寿命測定に用いられる有機EL素子1,100,100Aにおいて、第1電極2、第2電極3、ホール注入層4、ホール輸送層5、第1電子輸送層7及び第2電子輸送層8は、同一条件にて形成された。また、当該有機EL素子1,100,100Aにおいて、発光層6,106と第1発光層106Aとは、ホストとドーパントとの混合比が異なること以外は同一条件にて形成された。上記有機EL素子100Aにおいて、第2発光層106Bはドーパントの種類が異なること以外は第1発光層106Aと同一条件にて形成された。
【0050】
図6に示されるように,有機EL素子1においては、5000時間駆動したときの輝度残存率が60%以上である。これに対して、有機EL素子100,100Aにおいては、5000時間駆動したときの輝度残存率が50%未満である。このことから、上述した条件を満たす4元構成層である発光層6を備える有機EL素子1は、発光層6を備えない有機EL素子100,100Aよりも長寿命になることがわかる。
【0051】
図7は、各有機EL素子の色度変化測定結果を示す図である。図7において、横軸は駆動時間を示し、縦軸は色度変化量を示す。図7において、プロット61は、上記実施形態に係る有機EL素子1の色度変化測定結果を示し、プロット62は、第1比較例に係る有機EL素子100の色度変化測定結果を示し、プロット63は、第2比較例に係る有機EL素子100Aの色度変化測定結果を示す。プロット61~63のそれぞれは、駆動直後に発生する光と、所定時間駆動した後に発生する光との色度変化を示す。なお、色度変化測定に用いられる有機EL素子1,100,100Aは、輝度寿命測定に用いられる有機EL素子1,100,100Aと同様の条件にて形成される。
【0052】
図7に示されるように,有機EL素子1においては、約10000時間駆動したときであっても色度はほぼ変化しなかった。これに対して、有機EL素子100,100Aにおいては、約5000時間駆動したときに色度の絶対値が0.01程度変化する。このことから、上述した条件を満たす4元構成層である発光層6を備える有機EL素子1は、発光層6を備えない有機EL素子100,100Aよりも色度変化しないことがわかる。
【0053】
次に、図8を参照しながら有機EL素子の応用例について説明する。図8は、有機EL表示装置の概略斜視図である。図8に示される有機EL表示装置20は、上述した有機EL素子1,1A,1Bのいずれかを備える装置である。有機EL表示装置20は、アクティブマトリックス型表示装置でもよいし、パッシブマトリックス型表示装置でもよいし、セグメント型表示装置でもよい。有機EL表示装置20がアクティブマトリクス型表示装置である場合、各有機EL素子に対応するトランジスタ等が設けられ得る。
【0054】
有機EL表示装置20は、互いに積層している第1基板21及び第2基板22と、表示部23と、配線部24と、集積回路25と、FPC26(フレキシブルプリント基板)と、保護樹脂27とを備える。以下では、第1基板21と第2基板22とが互いに積層する方向を、単に「積層方向」として説明する。積層方向は、第1基板21及び第2基板22の厚さ方向に相当する。
【0055】
第1基板21は、封止基板として機能する基板であり、第2基板22に対向するように設けられている。第1基板21は、例えばガラス基板、セラミックス基板、金属基板、又は可撓性を有する基板(例えば、プラスチック基板)である。第2基板22は、表示部23及び配線部24が設けられる素子基板であり、積層方向から見て表示部23を囲う封止部(不図示)を介して第1基板21と一体化されている。第2基板22は、例えばガラス基板、又は可撓性を有する基板(例えば、プラスチック基板等)であり、透光性を有している。第1基板21と第2基板22とのそれぞれは、積層方向から見て矩形状を有する。
【0056】
表示部23は、多数の有機EL素子が配置される部分であり、第2基板22上に設けられる。表示部23は、第1基板21、第2基板22、及び封止部によって囲まれて封止された封止空間内に設けられる。なお、封止空間内には、乾燥剤、充填材等が設けられてもよい。配線部24は、複数の引き回し配線を含む部分であり、第1領域24a及び第2領域24bを有する。第1領域24aには表示部23と集積回路25とを接続する引き回し配線(不図示)が設けられ、第2領域24bには集積回路25とFPC26とを接続する引き回し配線(不図示)が設けられる。
【0057】
集積回路25は、有機EL表示装置20の動作を制御する駆動回路であり、例えばICチップ等である。第2基板22上に搭載される集積回路25の数は、1つでもよいし、複数でもよい。FPC26は、有機EL表示装置20と外部装置とを接続する部材であり、例えば可撓性を有するプラスチック基板を用いて形成される。FPC26に接続される外部装置は、例えば電源及び電流制御回路等である。保護樹脂27は、配線部24及び集積回路25を保護するために設けられる樹脂である。保護樹脂27は、例えば種々の硬化性樹脂である。
【0058】
本発明による有機EL素子は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。上記実施形態において、第1基板及び第2基板の両方は、積層方向から見て矩形状に限られない。例えば、積層方向から見て第1基板及び第2基板の両方は、多角形状を有してもよいし、略円形状を有してもよい。
【0059】
上記実施形態では、第1ドーパント及び第2ドーパントのそれぞれは、図4に示される発光スペクトル及び吸光スペクトルを示すが、これに限られない。同様に、第1ホスト及び第2ホストのそれぞれは、図4に示される発光スペクトルを示すが、これに限られない。
【0060】
上記実施形態では、ホール輸送層に含まれるホール輸送材料と、第1ホストとが互いに同一であるが、これに限られない。ホール輸送層に含まれるホール輸送材料と、第1ホストとは、互いに異なってもよい。同様に、電子輸送層に含まれる電子輸送材料と、第2ホストとが互いに同一であるが、これに限られない。電子輸送層に含まれる電子輸送材料と、第2ホストとは、互いに異なってもよい。
【0061】
上記実施形態では、第1電子輸送層のHOMOは第2電子輸送層のHOMOよりも大きく、第1電子輸送層のLUMOは第2電子輸送層のLUMOよりも小さいが、これに限られない。第1電子輸送層のHOMOは第2電子輸送層のHOMO以下でもよいし、第1電子輸送層のLUMOは第2電子輸送層のLUMO以上でもよい。また、上記実施形態では、有機EL素子は、寿命の観点から第1電子輸送層及び第2電子輸送層を有するが、これに限られない。有機EL素子は、第1電子輸送層及び第2電子輸送層の一方のみを有してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,100,100A…有機EL素子、2…第1電極、3…第2電極、4…ホール注入層,5…ホール輸送層、6…発光層、7…第1電子輸送層、8…第2電子輸送層、20…有機EL表示装置、21…第1基板、22…第2基板、23…表示部、24…配線部、25…集積回路、26…FPC、27…保護樹脂、31a~36a…領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8