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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113237
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】乗り心地推定装置及び学習方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/00 20060101AFI20230808BHJP
   G01P 15/18 20130101ALN20230808BHJP
【FI】
G01P15/00 Z
G01P15/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015444
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松田 匡生
(72)【発明者】
【氏名】山根 康志
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭仁
(57)【要約】
【課題】車両の乗り心地の推定精度を高くすること。
【解決手段】乗り心地推定装置は、車両の挙動を示す車両挙動データを取得するデータ取得部M11と、車両の挙動に対する車両の乗り心地の変化を推定する機械学習を行った学習器M14に、データ取得部M11により取得された車両挙動データを入力することによって学習器M14から出力された出力値Yを取得する乗り心地変化取得部M12と、乗り心地変化取得部M12により取得された出力値Yに基づいて、車両の乗り心地Pを導出する乗り心地導出部M13とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の挙動を示す車両挙動データを取得するデータ取得部と、
前記車両の挙動に対する当該車両の乗り心地の変化を推定する機械学習を行った学習器に、前記データ取得部により取得された前記車両挙動データを入力することによって当該学習器から出力された出力値を取得する乗り心地変化取得部と、
前記乗り心地変化取得部により取得された前記出力値に基づいて、前記車両の乗り心地を導出する乗り心地導出部と、
を備えている乗り心地推定装置。
【請求項2】
前記学習器は、前記車両の乗り心地の変化のうち前記車両の乗り心地の悪化のみを推定する機械学習を行ったものである、
請求項1に記載の乗り心地推定装置。
【請求項3】
前記乗り心地変化取得部は、前記車両挙動データを所定周期毎に前記学習器に入力し、前記車両挙動データが前記学習器に入力される毎に当該学習器から出力される前記出力値を取得し、
前記乗り心地導出部は、前記所定周期よりも長い所定の積算周期の間に前記学習器から出力された複数の前記出力値を積算し、積算された出力値の積算値に基づいて前記車両の乗り心地を導出する、
請求項1又は請求項2に記載の乗り心地推定装置。
【請求項4】
車両の挙動に対する当該車両の乗り心地を推定するために用いられる学習モデルの学習方法であって、
前記車両の乗り心地の変化を取得する乗り心地変化取得ステップと、
前記乗り心地変化取得ステップで取得された前記車両の乗り心地の変化に対応する前記車両の挙動を取得する車両挙動取得ステップと、
前記車両挙動取得ステップで取得された前記車両の挙動を前記学習モデルに入力して、当該学習モデルから出力された出力値を取得する出力値取得ステップと、
前記出力値取得ステップで取得された前記出力値と、前記乗り心地変化取得ステップで取得された前記車両の乗り心地の変化とに基づいて、前記学習モデルのパラメータを更新する学習モデル更新ステップと、
を含む学習方法。
【請求項5】
前記乗り心地変化取得ステップでは、前記車両の乗り心地の変化のうち前記車両の乗り心地の悪化のみを取得し、
前記車両挙動取得ステップでは、前記車両の乗り心地の変化のうち前記車両の乗り心地の悪化に対応する前記車両の挙動のみを取得する、
請求項4に記載の学習方法。
【請求項6】
前記乗り心地変化取得ステップでは、前記車両の乗り心地の変化のうち変化量が所定量以上である前記車両の乗り心地の変化のみを取得し、
前記車両挙動取得ステップでは、前記車両の乗り心地の変化のうち変化量が前記所定量以上である前記車両の乗り心地の変化に対応する前記車両の挙動のみを取得する、
請求項4又は請求項5に記載の学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り心地推定装置及び学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の加速度及び加々速度を入力変数としてニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力された変数に基づいて車両の運動を評価する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-244065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置で用いられるニューラルネットワークの機械学習では、4段階の運動評価ラベル(良好/満足/不満/不可)が教師データとして用いられる。教師データを取得する場合、車両に搭乗した評価者は、車両の挙動に対するラベルを自身の感性に従って選ぶ。この場合、車両を同じように走行させても、評価者によって選ばれるラベルが評価者毎に異なることがある。そのため、こうしたラベルを教師データとする機械学習によって生成されたニューラルネットワークを用いて車両の乗り心地を推定する場合、その推定精度が高いとは言いがたい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための乗り心地推定装置は、車両の挙動を示す車両挙動データを取得するデータ取得部と、前記車両の挙動に対する当該車両の乗り心地の変化を推定する機械学習を行った学習器に、前記データ取得部により取得された前記車両挙動データを入力することによって当該学習器から出力された出力値を取得する乗り心地変化取得部と、前記乗り心地変化取得部により取得された前記出力値に基づいて、前記車両の乗り心地を導出する乗り心地導出部と、を備えている。
【0006】
車両に搭乗した評価者が自身の感性に従って車両の挙動に対する乗り心地の評価を行う場合、乗り心地が変わったことに対する評価は、乗り心地に関する評価と比較して評価者毎にばらつきにくい。上記構成では、乗り心地の変化を推定する機械学習が行われた学習器に車両挙動データを入力することによって当該学習器から出力された出力値が取得され、当該出力値に基づいて車両の乗り心地が導出される。そのため、車両の乗り心地の推定精度を高くすることができる。
【0007】
上記課題を解決するための学習方法は、車両の挙動に対する当該車両の乗り心地を推定するために用いられる学習モデルの学習方法である。この学習方法は、前記車両の乗り心地の変化を取得する乗り心地変化取得ステップと、前記乗り心地変化取得ステップで取得された前記車両の乗り心地の変化に対応する前記車両の挙動を取得する車両挙動取得ステップと、前記車両挙動取得ステップで取得された前記車両の挙動を前記学習モデルに入力して、当該学習モデルから出力された出力値を取得する出力値取得ステップと、前記出力値取得ステップで取得された前記出力値と、前記乗り心地変化取得ステップで取得された前記車両の乗り心地の変化とに基づいて、前記学習モデルのパラメータを更新する学習モデル更新ステップと、を含む。
【0008】
車両の乗り心地の変化に対応する車両の挙動と、当該乗り心地の変化を学習モデルに入力したことによって当学習モデルから出力された出力値とに基づいて、学習モデルのパラメータが更新される。このような学習を行うことにより、車両の挙動に対する当該車両の乗り心地を精度良く推定できる学習済モデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の乗り心地推定装置を備える車両を示す構成図である。
図2図2は、乗り心地推定装置の機能を示す構成図である。
図3図3は、同乗り心地推定装置で実行される乗り心地推定処理を示すフローチャートである。
図4図4において、(A)は学習器の出力値の推移を示すタイムチャートであり、(B)は乗り心地の推移を示すタイムチャートである。
図5図5は、データ記録装置を示す構成図である。
図6図6は、データ記録装置で実行されるデータ収集処理を示すフローチャートである。
図7図7において、(A)~(C)は車両の挙動の推移を示すタイムチャートであり、(D)は官能値の変化量の推移を示すタイムチャートである。
図8図8は、学習データ生成装置を示す構成図である。
図9図9は、学習データ生成装置で実行される学習データ生成処理を示すフローチャートである。
図10図10は、学習装置を示す構成図である。
図11図11は、学習装置で実行される学習済モデル生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、乗り心地推定装置の一実施形態を図1図11に従って説明する。
<車両>
図1は、本実施形態の乗り心地推定装置20を備える車両10を示す構成図である。車両10は、車両10の挙動を検出する複数種類のセンサと、通知装置16とを備えている。車両10は、センサとして、車輪速センサ11と前後加速度センサ12と横加速度センサ13とヨーレートセンサ14とを備えている。車輪速センサ11は車両10の車輪の回転速度である車輪速Vwを検出する。前後加速度センサ12は車両10の前後加速度Gxを検出する。横加速度センサ13は車両10の横加速度Gyを検出する。ヨーレートセンサ14は車両10のヨーレートYrを検出する。乗り心地推定装置20には複数種類のセンサ11~14の検出信号が入力される。
【0011】
通知装置16は、乗り心地推定装置20が出力した情報を運転者に通知する。通知装置16は、表示によって作業者に報知する画面であってもよいし、音声によって作業者に報知するスピーカーであってもよい。
【0012】
<乗り心地推定装置>
図1及び図2を参照し、乗り心地推定装置20について説明する。図2は乗り心地推定装置20の機能を示す構成図である。
【0013】
図1に示すように、乗り心地推定装置20は処理回路21を備えている。処理回路21は制御部22と第1記憶部23と第2記憶部24とを有している。例えば制御部22はCPUである。第1記憶部23には、制御部22により実行される制御プログラムが記憶されている。第2記憶部24には、車両10の挙動に対する車両10の乗り心地の変化を推定する機械学習を行った学習済モデルLMが記憶されている。例えば学習済モデルLMは順伝搬型のニューラルネットワークである。学習済モデルLMの学習方法については後述する。
【0014】
図2に示すように、制御部22は、第1記憶部23に記憶されている制御プログラムを実行することにより、データ取得部M11と乗り心地変化取得部M12と乗り心地導出部M13として機能する。また本実施形態では、学習済モデルLMにより、学習器M14が構築されている。
【0015】
学習器M14は、車両10の挙動を示す車両挙動データが入力されると、入力されたデータに応じた出力値Yを出力する。出力値Yは、乗り心地の悪化を示す指標値である。本実施形態では学習器M14は、乗り心地が悪化した場合には負の値を出力値Yとして出力する。この際、学習器M14は、乗り心地の悪化度合いが大きいほど絶対値が大きくなるように出力値Yを出力する。一方、学習器M14は、乗り心地が悪化していない場合には0(零)を出力値Yとして出力する。
【0016】
データ取得部M11は車両挙動データを取得する。データ取得部M11は、複数のセンサ11~14の検出値(すなわち、車輪速Vw、前後加速度Gx、横加速度Gy及びヨーレートYr)を車両挙動データとして取得する。またデータ取得部M11は、検出値を加工した値を車両挙動データとして取得する。具体的には、データ取得部M11は、前後加速度Gxを時間微分した値である前後ジャークGJxと、横加速度Gyを時間微分した値である横ジャークGJyと、ヨーレートYrを時間微分した値である回転角加速度DYrとを取得する。回転角加速度DYrはヨーレートYrの単位時間あたりの変化量に相当する。
【0017】
乗り心地変化取得部M12は、データ取得部M11により取得された複数種類の車両挙動データを学習器M14に入力することによって学習器M14から出力された出力値Yを取得する。以降の記載において、学習器M14に入力される複数種類の車両挙動データを「車両挙動データ群X」ともいう。
【0018】
乗り心地変化取得部M12は、乗り心地変化取得部M12により出力された出力値Yに基づいて、車両10の乗り心地Pを導出する。そして乗り心地変化取得部M12は、乗り心地Pを車両10の乗員に対して通知装置16から通知させる。
【0019】
<乗り心地推定処理>
図3を参照し、車両10の乗り心地を推定する処理の流れである乗り心地推定処理を説明する。図3は乗り心地推定処理を示すフローチャートである。乗り心地推定処理に対応する制御プログラムは、制御部22によって所定の制御サイクル毎に実行される。
【0020】
ステップS11において、制御部22は実行回数Nを1インクリメントする。実行回数Nは、車両10の運転スイッチがオンとなってからの乗り心地推定処理の実行回数である。運転スイッチがオフになると、実行回数Nが0(零)にリセットされる。
【0021】
ステップS13において、制御部22は、データ取得部M11として機能することにより、車両挙動データ群X(N)を取得する。すなわち、制御部22は、車輪速Vw、前後加速度Gx、前後ジャークGJx、横加速度Gy、横ジャークGJy、ヨーレートYr及び回転角加速度DYrを取得する。
【0022】
ステップS15において、制御部22は、乗り心地変化取得部M12として機能することにより、ステップS13で取得した車両挙動データ群X(N)を学習器M14に入力する。続くステップS17において、制御部22は、乗り心地変化取得部M12として機能することにより、学習器M14から出力された出力値Y(N)を取得する。この出力値Y(N)は、ステップS15で学習器M14に入力された車両挙動データ群X(N)に応じた値であると云える。乗り心地推定処理の実行サイクルが「所定周期」に対応する。そのため、制御部22は、車両挙動データ群X(N)を所定周期毎に学習器M14に入力し、車両挙動データ群X(N)が学習器M14に入力される毎に学習器M14から出力される出力値Y(N)を取得していると云える。
【0023】
ステップS19において、制御部22は、実行回数Nが所定の積算回数Mよりも大きいか否かを判定する。積算回数Mとして2以上の整数が設定されている。制御部22は、実行回数Nが積算回数Mよりも大きい場合(S19:YES)、ステップS21の処理に移行し、実行回数Nが積算回数M以下である場合(S19:NO)、今回の処理を終了する。
【0024】
ステップS21において、制御部22は、乗り心地導出部M13として機能することにより、直近のM個の出力値Y(N-M),Y(N-M+1),…,Y(N)を積算した値である積算値Zを導出する。乗り心地推定処理の実行サイクルの時間の長さと積算回数Mとの積が「所定の積算周期」に対応するため、所定の積算周期は、乗り心地推定処理の実行サイクルである所定周期よりも長い。本実施形態では、制御部22は、所定の積算周期の間に学習器M14から出力されたM個の出力値Y(N-M),Y(N-M+1),…,Y(N)を積算することにより、積算値Zを導出する。
【0025】
ステップS23において、制御部22は、乗り心地導出部M13として機能することにより、積算値Zに基づいて、乗り心地Pを導出する。本実施形態では、制御部22は、乗り心地が悪いほど値が小さくなるように乗り心地Pを導出する。具体的には、制御部22は、所定の基準値Zbから積算値Zを引いた値を乗り心地Pとして導出する。例えば基準値Zbとして100が設定されている。この場合、乗り心地Pが100であるときには、現時点での車両10の乗り心地が最良である。一方、乗り心地Pが100から小さくなるほど、現時点での車両10の乗り心地が悪化している。
【0026】
ステップS25において、制御部22は、乗り心地導出部M13として機能することにより、ステップS23で導出した乗り心地Pを車両10の乗員に対して通知装置16から通知させる。その後、制御部22は今回の処理を終了する。
【0027】
なお、図4は、車両10の走行中における出力値Yと乗り心地Pとの推移の一例を示すタイムチャートである。図4(A)に示すように出力値Yが変化する場合、乗り心地Pは図4(B)に示すように推移する。例えば、タイミングt11からタイミングt12までの期間のように出力値Yの絶対値が比較的小さい場合、時系列的に連続する直近のM個の出力値Yを積算した値である積算値Zの絶対値はあまり大きくならないため、乗り心地Pは比較的大きい。すなわち、当該期間では、車両10の乗り心地が比較的良好であると推測される。一方、タイミングt13からタイミングt14までの期間のように出力値Yの絶対値が比較的大きい状態が継続する場合、積算値Zの絶対値が大きくなるため、乗り心地Pは比較的小さい。すなわち、当該期間では、車両10の乗り心地が悪いと推測される。
【0028】
<学習方法>
次に、学習済モデルLMの学習モデルの学習方法について説明する。学習モデルを学習する場合、学習に必要なデータを収集する処理、収集したデータから機械学習に用いる学習データを生成する処理、及び、学習データを用いた機械学習を行う処理が順次実行される。そこで、以降では、こうした複数の処理について順番に説明する。
【0029】
<データ収集>
図5から図7を参照し、学習モデルの機械学習に必要なデータの収集について説明する。
【0030】
図5はデータ記録装置30を示す構成図である。データの収集時にはデータ記録装置30は車両10に配置される。例えばデータ記録装置30は車載の装置であってもよいし、データの収集時に評価者が車両10に持ち込む装置であってもよい。ここでいう「評価者」とは、実際に車両10に搭乗して車両10の乗り心地を評価する作業者である。
【0031】
データ記録装置30は、自身が取得したデータを記憶装置45に記憶させる。例えば、記憶装置45は不揮発性のメモリを有している。
データ記録装置30には、車両10の挙動を検出する複数種類のセンサの検出信号が入力される。データ記録装置30に検出信号を入力するセンサは、図1に示した乗り心地推定装置20に検出信号を入力するセンサと同じである。本実施形態では、データ記録装置30には、車輪速センサ11、前後加速度センサ12、横加速度センサ13及びヨーレートセンサ14の検出信号が入力される。
【0032】
データ記録装置30には、ビジュアルアナログスケール41から信号が入力される。ビジュアルアナログスケール41は、評価者が乗り心地を評価する際に操作する操作装置である。評価者は、ビジュアルアナログスケール41を用いることにより、車両10の乗り心地を100点満点で評価することができる。なお、ビジュアルアナログスケール41が示す数値を「評価点EP」という。
【0033】
ここでビジュアルアナログスケール41を用いた評価者による車両10の乗り心地の評価手法について説明する。評価者は、車両10の乗り心地を評価する場合、車両10の運転席以外の席、すなわち助手席又は後部座席に着座する。評価者は、評価の開始前では評価点EPが100点となるようにビジュアルアナログスケール41を操作する。そして評価者が搭乗した車両10が走行を開始すると、評価者は、車両10の乗り心地が変化したと感じた場合のうち車両10の乗り心地が悪化したと感じた場合のみ、ビジュアルアナログスケール41を操作する。詳しくは、評価者は、乗り心地が悪化したと感じた場合、悪化度合いが大きいほど評価点EPが大幅に低下するようにビジュアルアナログスケール41を操作する。一方、評価者は、乗り心地が悪化したと感じていない場合、すなわち乗り心地が変わらない場合や乗り心地が良化したと感じた場合、ビジュアルアナログスケール41を操作しない、すなわち評価点EPを変更しない。
【0034】
データ記録装置30は制御部31と記憶部32とを備えている。例えば制御部31はCPUである。記憶部32には、制御部31により実行される制御プログラムが記憶されている。
【0035】
制御部31は、記憶部32に記憶されている制御プログラムを実行することにより、車両挙動推移記録部M21及び官能値推移記録部M22として機能する。
車両挙動推移記録部M21は、複数種類のセンサ11~14の検出値及びそれらを加工した値の推移を、車両10の挙動の推移として記憶装置45に記憶させる。すなわち、車両挙動推移記録部M21は、検出値の推移として、車輪速Vwの推移、前後加速度Gxの推移、横加速度Gyの推移及びヨーレートYrの推移を記憶装置45に記憶させる。車両挙動推移記録部M21は、前後ジャークGJx、横ジャークGJy及び回転角加速度DYrを導出し、前後ジャークGJxの推移、横ジャークGJyの推移及び回転角加速度DYrの推移を記憶装置45に記憶させる。
【0036】
官能値推移記録部M22は、ビジュアルアナログスケール41が示す評価点EPの変化率である官能値SVを導出し、こうした官能値SVの推移を記憶装置45に記憶させる。官能値SVの導出処理は所定の制御サイクル毎に実行されるため、官能値推移記録部M22は、評価点EPの最新値から評価点EPの前回値を引いた値を官能値SVとして導出する。評価点EPが低下している場合、評価点EPの最新値は評価点EPの前回値よりも低いため、官能値SVは負の値となる。上述したように時間が経過するにつれて評価点EPが低くなることはあっても、時間が経過するにつれて評価点EPが高くなることはない。そのため、官能値推移記録部M22は、車両10の乗り心地が悪化した場合の評価点EPの変化を官能値SVとして記録していると云える。
【0037】
<データ収集処理>
図6を参照し、データを収集する処理の流れであるデータ収集処理について説明する。図6はデータ収集処理を示すフローチャートである。データ収集処理に対応する制御プログラムは、制御部31によって所定の制御サイクル毎に実行される。
【0038】
ステップS31において、制御部31は、車両挙動推移記録部M21として機能することにより、車両10の挙動、すなわち車輪速Vw、前後加速度Gx、前後ジャークGJx、横加速度Gy、横ジャークGJy、ヨーレートYr及び回転角加速度DYrを記憶装置45に記憶させる。
【0039】
ステップS33において、制御部31は、官能値推移記録部M22として機能することにより、官能値SVを導出して記憶装置45に記憶させる。その後、制御部31は今回の処理を終了する。
【0040】
本実施形態では、評価者に車両10の乗り心地を評価させる場合、複数の走行パターンで車両10を走行させる。複数の走行パターンのうち、第1走行パターンは、急加速及び急減速を複数回実行させるパターンである。第1走行パターンで車両10を走行させる場合には車両10を急旋回させない。複数の走行パターンのうち、第2走行パターンは、右方向への急旋回及び左方向への急旋回を複数回実行させるパターンである。第2走行パターンで車両10を走行させる場合、車両10に急加速や急減速を行わせない。
【0041】
制御部31は、第1走行パターンでの車両10の走行が開始されると、上記のデータ収集処理を所定の制御サイクル毎に繰り返し実行する。そして第1走行パターンでの車両10の走行が終了すると、制御部31はデータ収集処理の繰り返しの実行を終了する。同様に第2走行パターンでの車両10の走行が開始されると、制御部31は上記のデータ収集処理を所定の制御サイクル毎に繰り返し実行する。そして第2走行パターンでの車両10の走行が終了すると、制御部31はデータ収集処理の繰り返しの実行を終了する。
【0042】
図7(A),(B),(C)は、記憶装置45に記憶された車両10の挙動の推移を示すタイムチャートである。記憶装置45には、図7(A)に示す車輪速Vwの推移、図7(B)に示す前後加速度Gxの推移、図7(C)に示す前後ジャークGJxの推移、横加速度Gyの推移、横ジャークGJyの推移、ヨーレートYrの推移及び回転角加速度DYrの推移と、官能値SVの推移とが同期して記憶される。
【0043】
なお、本実施形態では、車両10の挙動及び官能値SVを記憶装置45に逐次記憶させることにより、車両10の挙動の推移及び官能値SVの推移が記憶装置45に記憶されるようになっているが、これに限らない。例えば評価者が乗り心地を評価するための車両10の走行が終了するまでの車両10の挙動の推移及び官能値SVの推移をデータ記録装置30に一時的に記憶しておき、車両10の走行終了後に、データ記録装置30に記憶されている車両10の挙動の推移及び官能値SVの推移を記憶装置45に一括に移管させるようにしてもよい。
【0044】
<学習データの生成>
図8及び図9を参照し、記憶装置45に記憶した車両10の挙動の推移及び官能値SVの推移に基づいた学習モデルの機械学習用の学習データLDの生成について説明する。
【0045】
図8は、学習データLDを生成する学習データ生成装置50を示す構成図である。学習データ生成装置50は制御部51と第1記憶部52と第2記憶部53とを備えている。例えば制御部51はCPUである。第1記憶部52には、制御部51により実行される制御プログラムが記憶されている。第2記憶部53には学習データLDが記憶される。
【0046】
制御部51は、第1記憶部52に記憶されている制御プログラムを実行することにより、悪化タイミング特定部M31、学習用データ用車両挙動取得部M32、学習データ用官能値変化取得部M33及び学習データ生成部M34として機能する。
【0047】
悪化タイミング特定部M31は、官能値SVが悪化したタイミングを特定する。悪化タイミング特定部M31により官能値SVが悪化したと特定されたタイミングを「悪化タイミング」という。悪化タイミング特定部M31は、官能値SVが小さくなるタイミングのうち、官能値SVの低下速度が所定低下速度以上となるタイミングを悪化タイミングとして特定する。例えば、悪化タイミング特定部M31は、官能値SVの推移を基に、官能値SVの低下速度の推移を導出する。そして悪化タイミング特定部M31は、導出した官能値SVの低下速度の推移を基に、官能値SVの低下速度が所定低下速度以上となるタイミングを探すことによって悪化タイミングを特定する。官能値SVの低下速度を車両10の乗り心地の変化とした場合、所定低下速度が「所定量」に相当し、悪化タイミングにおける官能値SVの低下速度が「車両10の乗り心地の変化が所定量以上である場合の車両10の乗り心地の変化」に相当する。
【0048】
学習用データ用車両挙動取得部M32は、悪化タイミング特定部M31によって特定された悪化タイミングにおける車両10の挙動を取得する。具体的には、学習用データ用車両挙動取得部M32は、悪化タイミングにおける車輪速Vw、前後加速度Gx、前後ジャークGJx、横加速度Gy、横ジャークGJy、ヨーレートYr及び回転角加速度DYrを取得する。
【0049】
学習データ用官能値変化取得部M33は、悪化タイミング特定部M31によって特定された悪化タイミングにおける官能値SVの変化を取得する。具体的には、学習データ用官能値変化取得部M33は、悪化タイミングにおける官能値SVの低下速度を、官能値SVの変化量ΔSVとして取得する。図7(D)には、記憶装置45に記憶された官能値SVの推移に基づいて導出した官能値SVの変化量ΔSVの推移が示されている。
【0050】
学習データ生成部M34は、学習用データ用車両挙動取得部M32により取得された悪化タイミングにおける車両10の挙動を説明変数とし、学習データ用官能値変化取得部M33により取得された悪化タイミングにおける官能値SVの変化を目的変数とする学習データLDを生成する。本実施形態では、説明変数は、悪化タイミングにおける車輪速Vw、前後加速度Gx、前後ジャークGJx、横加速度Gy、横ジャークGJy、ヨーレートYr及び回転角加速度DYrである。目的変数は、悪化タイミングにおける官能値SVの変化量ΔSVである。
【0051】
<学習データ生成処理>
図9を参照し、学習データLDを生成する処理の流れである学習データ生成処理について説明する。図9は学習データ生成処理を示すフローチャートである。学習データ生成処理に対応する制御プログラムは、制御部51によって所定の制御サイクル毎に実行される。
【0052】
ステップS41において、制御部51は、悪化タイミング特定部M31として機能することにより、悪化タイミングを探索する。具体的には、制御部51は、記憶装置45に記憶されている官能値SVの推移の中から悪化タイミングを探索する。ステップS43において、制御部51は、悪化タイミングを見つけた場合(YES)、ステップS45の処理を実行し、悪化タイミングを見つけていない場合(NO)、今回の処理を終了する。
【0053】
ステップS45において、制御部51は、学習データ用官能値変化取得部M33として機能することにより、ステップS41で見つけた悪化タイミングにおける官能値SVの変化量ΔSVを取得する。本実施形態では、ステップS45が、車両10の乗り心地の変化を取得する「乗り心地変化取得ステップ」に対応する。
【0054】
ステップS47において、制御部51は、学習データ用官能値変化取得部M33として機能することにより、ステップS43で見つけた悪化タイミングにおける車両10の挙動を取得する。ここで取得される車両10の挙動は、ステップS45で取得された官能値SVの変化量ΔSVに対応する車両10の挙動である。したがって本実施形態では、ステップS47が、乗り心地変化取得ステップで取得された官能値SVの変化量ΔSVに対応する車両10の挙動を取得する「車両挙動取得ステップ」に対応する。
【0055】
ステップS49において、制御部51は、学習データ生成部M34として機能することにより、ステップS45で取得した官能値SVの変化量ΔSVを目的変数とし、ステップS47で取得した車両10の挙動を説明変数とする学習データLDを生成する。ステップS49を、乗り心地変化ステップで取得された官能値SVの変化量ΔSVを目的変数とし、車両挙動ステップで取得された車両10の挙動を説明変数として、学習データLDを生成する「学習データ生成ステップ」という。その後、制御部51は今回の処理を終了する。
【0056】
<学習済モデルLMの生成>
図10及び図11を参照し、学習済モデルLMの生成について説明する。
図10は学習装置60を示す構成図である。学習装置60は、学習データ生成装置50により生成された学習データLDに基づいて、車両10の乗り心地を推定する機械学習を行う。こうした機械学習の結果が、学習済モデルLMである。
【0057】
学習装置60は制御部61と第1記憶部62と第2記憶部63とを備えている。例えば制御部61はCPUである。第1記憶部62には、制御部61により実行される制御プログラムが記憶されている。第2記憶部63には、機械学習の結果である学習結果LRが制御部61によって記憶される。学習結果LRの初期値は、学習モデルのテンプレートにより与えてもよいし、オペレータの入力により与えてもよい。
【0058】
以降では、学習モデルがニューラルネットワークであるとして具体的に説明するが、学習モデルはニューラルネットワークに限定されるものではない。学習モデルがニューラルネットワークである場合、学習結果LRは各ニューロン間の結合の重みと各ニューロンの閾値である。
【0059】
制御部61は、第1記憶部62に記憶されている制御プログラムを実行することにより、出力値取得部M41及び学習モデル更新部M42として機能する。また本実施形態では、学習結果LRが記憶される第2記憶部63が、学習モデルM43として機能する。
【0060】
出力値取得部M41は、学習データLDの説明変数である車両10の挙動、すなわち悪化タイミングにおける車輪速Vw、前後加速度Gx、前後ジャークGJx、横加速度Gy、横ジャークGJy、ヨーレートYr及び回転角加速度DYrを学習モデルM43に入力する。また出力値取得部M41は、車両10の挙動を入力した学習モデルM43から出力された出力値Yaを取得する。
【0061】
学習モデル更新部M42は、出力値取得部M41により取得された出力値Yaと、学習データLDの目的変数である官能値SVの変化量ΔSVとに基づいて、学習モデルM43を更新する。具体的には、学習モデル更新部M42は、出力値Yaが学習データLDの目的変数に近づくように学習モデルM43のパラメータを更新する。例えば、学習モデル更新部M42は、出力値Yaと学習データLDの目的変数との誤差が小さくなるように各ニューロン間の結合の重み及び各ニューロンの閾値を更新する。この際、学習モデル更新部M42は、周知の通時的誤差逆伝搬(Back propagation through time)法や確率的勾配降下(Stochastic gradient descent)法などを用いることができる。
【0062】
<学習済モデル生成処理>
図11を参照し、学習済モデルLMを生成する処理の流れである学習済モデル生成処理について説明する。図11は学習済モデル生成処理を示すフローチャートである。学習済モデル生成処理に対応する制御プログラムは、制御部61によって所定の制御サイクル毎に実行される。
【0063】
ステップS61において、制御部61は、学習モデルM43の機械学習が未完了であるか否かを判定する。例えば、制御部61は、学習済モデル生成処理の実行回数が設定値以上である場合には機械学習が完了したと判定し、当該実行回数が設定値未満である場合には機械学習が完了していないと判定する。制御部61は、機械学習が完了していないと判定した場合(S61:YES)、ステップS63の処理に移行し、機械学習が完了したと判定した場合(S61:NO)、今回の処理を終了する。
【0064】
ステップS63において、制御部61は、出力値取得部M41として機能することにより、学習データLDの説明変数を学習モデルM43に入力する。続くステップS65において、制御部61は、出力値取得部M41として機能することにより、学習モデルM43から出力された出力値Yaを取得する。本実施形態では、ステップS63,S65が、車両挙動ステップで取得された車両10の挙動を学習モデルM43に入力して、学習モデルM43から出力された出力値Yaを取得する「出力値取得ステップ」に対応する。
【0065】
ステップS67において、制御部61は、学習モデル更新部M42として機能することにより、ステップS65で取得した出力値Yaと、学習データLDの目的変数とを比較する。そしてステップS69において、制御部61は、学習モデル更新部M42として機能することにより、ステップS67での比較結果に基づいて、学習モデルM43のパラメータを更新する。本実施形態では、ステップS67,S69が、出力値取得ステップで取得された出力値Yaと、乗り心地変化ステップで取得された官能値SVの変化量ΔSVとに基づいて、学習モデルM43のパラメータを更新する「学習モデル更新ステップ」に対応する。その後、制御部61は今回の処理を終了する。
【0066】
<本実施形態の効果>
(1)評価者が自身の感性に従って車両10の挙動に対する乗り心地の評価を行う場合、乗り心地の変化に関する評価は、乗り心地に関する評価と比較して評価者毎にばらつきにくい。この点、学習データLDは、評価者が車両10の乗り心地が変化したと感じたときの官能値SVの変化量ΔSVを目的変数として含んでいる。そして、当該学習データLDを用いた機械学習によって、学習済モデルLMが生成される。
【0067】
本実施形態では、こうした学習済モデルLMが乗り心地推定装置20に設けられている。乗り心地推定装置20では、車両10の挙動を示す車両挙動データ群Xを学習済モデルLMに入力すると、学習済モデルLMから出力値Yが出力される。出力値Yは、車両10の乗り心地の悪化度合いを示す値である。こうした出力値Yに基づいて乗り心地Pが導出される。したがって、乗り心地を示すラベルを入力変数とするニューラルネットワークを用いて乗り心地を導出する場合と比較し、車両10の乗り心地の推定精度を高くすることができる。
【0068】
(2)人間は、乗り心地の良化よりも乗り心地の悪化のほうを敏感に感じ取りやすい傾向を有している。本実施形態では、乗り心地の変化のうち乗り心地の悪化時に取得した各種のパラメータに基づいて学習データLDが生成され、当該学習データLDを用いて学習済モデルLMが生成される。こうした学習済モデルLMを乗り心地推定装置20に設けることにより、乗り心地推定装置20による車両10の乗り心地の推定精度を高くすることができる。
【0069】
(3)評価者に車両10の乗り心地を評価させる場合、ビジュアルアナログスケール41が用いられる。そのため、評価者は車両10の乗り心地が悪化したと感じた場合、ビジュアルアナログスケール41の操作によって乗り心地の悪化度合いを表現できる。そしてビジュアルアナログスケール41が示す評価点EPの低下量に基づいて官能値SVの変化量ΔSVが導出され、当該変化量ΔSVを含む学習データLDを用いて学習モデルの機械学習が行われる。そのため、こうした機械学習によって生成された学習済モデルLMに車両10の挙動が入力されると、学習済モデルLMは、推定される乗り心地の悪化度合いに応じた値を出力値Yとして出力することができる。したがってこうした学習済モデルLMを乗り心地推定装置20に設けることにより、乗り心地推定装置20による車両10の乗り心地の推定精度を高くすることができる。
【0070】
(4)本実施形態では、官能値SVの変化量ΔSVの絶対値が所定値以上である場合に、車両10の乗り心地が悪化したと評価者が感じたと判断し、そのときの変化量ΔSV及び車両10の挙動に基づいて学習データLDを生成するようにした。これにより、車両10の乗り心地が悪化したと評価者が感じていない場合の変化量ΔSV及び車両10の挙動を含まない学習データLDを生成することができる。こうした学習データLDを用いて機械学習を行うことにより、誤学習の発生を抑制することができる。
【0071】
(5)乗り心地推定装置20では、時系列で連続する複数の出力値Yを積算した値である積算値Zに基づいて、乗り心地Pが導出される。これにより、所定期間内の車両10の挙動の推移を乗り心地Pに反映させることができる。その結果、1つの出力値Yに基づいて乗り心地Pを導出する場合と比較し、車両10の乗り心地の推定精度を高くすることができる。
【0072】
(6)本実施形態では、車両10の挙動は、加速度Gx,Gy及びジャークGJx,GJyに加え、ヨーレートYr及び回転角加速度DYrを含んでいる。このように複数種類の車両10の挙動を用いて学習モデルに機械学習を施したり、学習済モデルLMに複数種類の車両10の挙動を入力したりすることにより、乗り心地推定装置20によって乗り心地を推定できる機会を増やすことができる。言い換えると、車両10の加減速に起因する乗り心地の悪化だけではなく、車両10の旋回に起因する乗り心地の悪化を推測することができる。
【0073】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
・学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは、車輪速Vw、前後加速度Gx、前後ジャークGJx、横加速度Gy、横ジャークGJy、ヨーレートYr及び回転角加速度DYrのうちの一部のみを含むものであってもよい。すなわち、学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは回転角加速度DYrを含まなくてもよい。学習データLDの説明変数や車両挙動データ群XはヨーレートYrを含まなくてもよい。学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは横ジャークGJyを含まなくてもよい。学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは横加速度Gyを含まなくてもよい。学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは前後ジャークGJxを含まなくてもよい。学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは前後加速度Gxを含まなくてもよい。学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは車輪速Vwを含まなくてもよい。
【0075】
・学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xに含まれる前後加速度は、前後加速度センサ12の検出値ではなく、車輪速Vwを時間微分した値であってもよい。
・学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xに含まれるヨーレートは、ヨーレートセンサ14の検出値ではなく、横加速度Gyに基づいて演算したヨーレートであってもよい。
【0076】
・学習データLDの説明変数や車両挙動データ群Xは、運転者のアクセル操作量やブレーキ操作量やステアリング操作量などの運転者による車両操作量を含んでいてもよい。
・上記実施形態では、車両10の乗り心地が悪化したと評価者が感じた場合の官能値SVの変化量ΔSVや車両10の挙動のみに基づいて学習データLDを生成しているが、これに限らない。例えば、車両10の乗り心地が良化したと評価者が感じた場合の官能値SVの変化量ΔSVや車両10の挙動も用いて学習データLDを生成してもよい。この場合、評価者に車両10の乗り心地を評価させる場合、車両10の乗り心地が良くなったと感じたときには評価点EPが高くなるように評価者にビジュアルアナログスケール41を操作させることになる。
【0077】
・上記実施形態では、学習済モデルLMをニューラルネットワークで構築しているが、これに限らない。例えば学習済モデルは、複数の決定木の多数決によって乗り心地の悪化度合いを示す出力値を決定するランダムフォレストであってもよい。
【0078】
・上記実施形態では、乗り心地推定装置が車両10に搭載されている場合について説明しているが、乗り心地推定装置は車両10に搭載されていなくてもよい。例えば、車外に設置されているサーバ装置に乗り心地推定装置が設けられていてもよい。この場合、車両10は、自身で取得した車両挙動データをサーバ装置に送信する。サーバ装置の乗り心地推定装置は、車両10から送信された車両挙動データを取得し、当該車両挙動データを学習器M14に入力し、学習器M14の出力値Yに基づいて車両10の乗り心地Pを導出する。なお、乗り心地推定装置が導出した乗り心地Pを車両10の乗員に通知するようにしてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、車両10に設けられている乗り心地推定装置が学習器を有しているが、乗り心地推定装置は学習器を有していなくてもよい。例えば、学習器は、車外に設置されているサーバ装置に設けられていてもよい。この場合、乗り心地推定装置は、取得した車両挙動データをサーバ装置に送信する。サーバ装置は、受信した車両挙動データを学習器に入力し、当該学習器から出力値Yを取得し、当該出力値Yを車両10に送信する。そして車両10の乗り心地推定装置は、出力値Yを取得し、当該出力値Yに基づいて乗り心地Pを導出する。
【0080】
・乗り心地推定装置20の処理回路21は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。
【0081】
・上記実施形態では、通知装置16は車載の装置であるが、これに限らない。例えば、車両10の乗員が車内に持ち込んだ携帯型の通信機器であってもよい。携帯型の通信機器は、例えば、スマートフォンやタブレット端末である。
【0082】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記データ取得部は、前記車両のヨーレート及び前記車両のヨーレートの変化量のうち少なくとも一方を前記車両挙動データとして取得する、乗り心地推定装置。
【0083】
(ロ)前記データ取得部は、複数種類の前記車両挙動データを取得し、
前記乗心地変化取得部は、前記データ取得部により取得された前記複数種類の車両挙動データを前記学習器に入力する、乗り心地推定装置。
【0084】
(ハ)前記乗心地変化取得ステップでは、ビジュアルアナログスケールにより示された前記車両の乗心地の変化を取得する、学習方法。
(ニ)前記乗心地変化取得ステップでは、前記ビジュアルアナログスケールにより示された前記車両の乗り心地の悪化を前記乗心地の変化として取得する、学習方法。
【符号の説明】
【0085】
10…車両
11~14…センサ
20…乗り心地推定装置
M11…データ取得部
M12…乗り心地変化取得部
M13…乗り心地導出部
M14…学習器
M43…学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11