(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113255
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】尿失禁センサ、尿失禁検知装置、および尿失禁検知システム
(51)【国際特許分類】
A61F 13/42 20060101AFI20230808BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61F13/42 F
A61F5/44 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015469
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】505000480
【氏名又は名称】フィンガルリンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】名郷根 正昭
(72)【発明者】
【氏名】津田 修
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝洋
【テーマコード(参考)】
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200DF04
3B200DF05
4C098AA09
4C098CC39
4C098CD09
(57)【要約】
【課題】尿漏れ対策が施された尿失禁おむつ等を使用しても、装着時の違和感、不愉快さを伴うことなく尿失禁を検出できる尿失禁センサを提供する。
【解決手段】おむつ22の外側に取り付けられる尿失禁センサ14であって、おむつ22の内側領域の誘電率の変化を検知するキャパシタンス方式の尿失禁センサ14。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おむつの外側に取り付けられる尿失禁センサであって、
前記おむつの内側領域の誘電率の変化を検知するキャパシタンス方式の尿失禁センサ。
【請求項2】
パルス電流が印加される第1電極板および第2電極板を備え、
前記誘電率の変化に応じて、前記パルス電流の周波数が変化する、請求項1に記載の尿失禁センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の尿失禁センサと、
前記尿失禁センサに接続され、前記おむつの使用者の尿失禁を検知する検知部と、
を備えた、尿失禁検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記尿失禁センサにパルス電流を印加し、前記尿失禁センサからのパルス電流の周波数の変化から前記誘電率の変化を求め、前記誘電率の変化に基づいて前記尿失禁を検知する、請求項3に記載の尿失禁検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記誘電率の変化量に基づいて、前記尿失禁による尿の量を検知する、請求項4に記載の尿失禁検知装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載の尿失禁検知装置と、
前記検知部の検知結果を受信する受信器と、
を備えた、尿失禁検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿失禁を検知するための尿失禁センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な尿失禁センサは、おむつの外側に貼付け、尿失禁時、おむつから漏れた尿の温度、湿度の変化を捉える方式である。一般的な尿失禁センサは、外側に尿漏れが生じる一般的なおむつに対しては利用可能であるが、失禁おむつ及び失禁パンツの様に失禁時、おむつの外側に尿漏れが生じない様な失禁対策されたおむつ、パンツなどには利用できない。しかしながら、尿失禁に悩む要介護者等から見れば、失禁時におむつから尿漏れを伴う一般的なおむつよりも失禁用のおむつが有効であり、おむつの外側に尿漏れの無い安心感が出る。
【0003】
他に既存技術として、おむつの内側に貼付け、尿漏れ時のインピーダンス変化を捉える電極を備えたタイプの廉価版の尿失禁センサもある(例えば、特許文献1)。この尿失禁センサは、失禁前のインピーダンス値と尿失禁時のインピーダンス値の変化を捉える方式であり、尿失禁時に漏れた尿が電極に接触しないとインピーダンス値に確実に変化が現れない。またおむつの内側に電極を貼り付ける方式の為、装着時の違和感、不愉快さなどがあり普及しない一因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な尿失禁センサによって、おむつの外側より尿失禁を検出しようとすると、おむつの外側に尿が漏れる現象を承知の上、漏れた尿の温度と、その周りの湿度の変化をとらえる必要がある。これは要介護者側から見ると、不安要素を抱えたまま使用する事になり使い勝手の面で非常に大きなリスクとなる。また、要介護者は、一般的なおむつよりも尿失禁用おむつを選ぶ確率が高くなるが、尿失禁用おむつでは尿漏れ対策が施されており、一番外側の面には防水シールがあり、漏れない構造の商品が多い。このような尿漏れ対策が施された尿失禁おむつやパンツを使用しても、装着時の違和感、不愉快さを伴うことなく尿失禁を検出できる尿失禁センサが要望されている。
【0006】
本発明は、上記の問題を克服する尿失禁センサの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意研究を重ねた結果、おむつの外側に漏れた尿の温度および湿度の変化を検出する方式でなく、失禁用おむつの様に外側に尿漏れが生じなくても、キャパシタンスの変化により尿失禁を検出することで、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
項1.
おむつの外側に取り付けられる尿失禁センサであって、
前記おむつの内側領域の誘電率の変化を検知するキャパシタンス方式の尿失禁センサ。
項2.
パルス電流が印加される第1電極板および第2電極板を備え、
前記誘電率の変化に応じて、前記パルス電流の周波数が変化する、項1に記載の尿失禁センサ。
項3.
項1または2に記載の尿失禁センサと、
前記尿失禁センサに接続され、前記おむつの使用者の尿失禁を検知する検知部と、
を備えた、尿失禁検知装置。
項4.
前記検知部は、前記尿失禁センサにパルス電流を印加し、前記尿失禁センサからのパルス電流の周波数の変化から前記誘電率の変化を求め、前記誘電率の変化に基づいて前記尿失禁を検知する、項3に記載の尿失禁検知装置。
項5.
前記検知部は、前記誘電率の変化量に基づいて、前記尿失禁による尿の量を検知する、項4に記載の尿失禁検知装置。
項6.
項3~5のいずれかに記載の尿失禁検知装置と、
前記検知部の検知結果を受信する受信器と、
を備えた、尿失禁検知システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、尿漏れ対策が施された尿失禁おむつ等を使用しても、装着時の違和感、不愉快さを伴うことなく尿失禁を検出できる尿失禁センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)および(b)はそれぞれ、尿失禁センサの作製手順を示す平面図および断面図である。
【
図2】(a)および(b)はそれぞれ、尿失禁センサの作製手順を示す平面図および断面図である。
【
図3】(a)および(b)はそれぞれ、尿失禁センサの作製手順を示す平面図および断面図である。
【
図4】(a)および(b)はそれぞれ、尿失禁センサの作製手順を示す平面図および断面図である。
【
図5】(a)および(b)はそれぞれ、尿失禁センサの作製手順を示す平面図および断面図である。
【
図6】(a)および(b)はそれぞれ、尿失禁センサの作製手順を示す平面図および断面図である。
【
図7】尿失禁検知装置の全体構成を示す概略図である。
【
図8】失禁用おむつに尿失禁検知装置を装着した状態を示す斜視図である。
【
図9】尿失禁を検知する原理を説明するための断面図である。
【
図10】尿失禁を検知する原理を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図10を参照して説明する。
【0012】
(装置の作製手順)
図1~
図6は、本実施形態に係る尿失禁センサの作製手順を示している。
【0013】
図1に示すように、電極素材であるアルミフォイルを櫛状に切り抜き又は型抜きした+の電極板1と-の電極板2を用意し、電極板1、2の櫛状部分を入れ子に配置する。アルミフォイルの厚さは、一般に市販されているアルミフォイルのように0.05mm~0.2mmであってもよく、0.1mm~0.05mmであることが好ましく、おむつに装着する事を想定すると、0.05mmの厚さが最適と言える。また、電極板1、2の表面は、アルマイトなど表面処理が施されていてもよい。電極板1、2の長手方向の長さ、及び縦方向の長さ、並びに、櫛状部分の形状及び間隔は、おむつの大きさに応じて自由に設定できる。電極板1の一端には穴3が設けられ、電極板2の一端には穴4が設けられている。
【0014】
続いて、
図2に示すように、絶縁シート5、6を電極板1、2の両面に貼り付ける。導電性の電極板1、2が直接肌に触れた場合、電極板1、2から微弱ではあるが生体に対し電流が流れる可能性があるため、絶縁シート5、6により電極板1、2の両面を覆う事で、生体に対し安全が保たれる構造になる。また、絶縁シート5、6における電極板1、2の穴3、4に対応する位置には、穴7が設けられている。穴7は、穴3、4より大きいことが好ましく、後述するスナッパーゲンコ8、9およびスナッパーアタマ10の外径より2~4mm以上大きいことが好ましい。
【0015】
続いて、
図3に示すように、穴3、4及び穴7を貫通するように、スナッパーゲンコ8、9を差込み、さらにスナッパーアタマ10を裏側より差込み圧接する。これにより、スナッパーゲンコ8、9及びスナッパーアタマ10と電極板1、2とが電気的に接続される。
【0016】
続いて、
図4に示すように、圧接したスナッパーアタマ10の金属部分にスナッパーアタマ用の絶縁シール11を貼り付ける。絶縁シール11によって、スナッパーアタマ10の金属部分が生体に触れて生体に電流が流れることを防止して、安全性を保つことができる。
【0017】
続いて、
図5に示すように、
図4に示す仕掛品の絶縁シール11側の面に両面接着テープ12を貼り付ける。
【0018】
さらに、
図6に示すように、両面接着テープ12に離形台紙13を貼り付けることにより、本実施形態に係るキャパシタンス方式の尿失禁センサ14が完成する。尿失禁センサ14の使用時には、離形台紙13を剥し、両面接着テープ12をおむつの外側に押し付けることにより、尿失禁センサ14をおむつに取り付ける。
【0019】
(全体構成)
図7は、本実施形態に係る尿失禁検知装置30の全体構成を示す概略図である。尿失禁検知装置30は、
図6に示す尿失禁センサ14と、無線送受信部(検知部)21とを備えており、無線送受信部21が接続コード18によって尿失禁センサ14に接続されている。尿失禁センサ14において、接続コード18はスナッパーゲンコ8、9に取り付けられている。
【0020】
無線送受信部21は、尿失禁センサ14からの電気信号に基づいて、おむつ22の使用者の尿失禁を検知する装置であり、リチウム1次電池15、周波数/電圧変換器16、パルス発振器17、マイクロプロセッサユニット19及び無線送受信用通信モジュール20を備えている。リチウム1次電池15は、無線送受信部21を駆動するための電源であり、例えばボタン型電池(品番:CR2032)を使用することができる。パルス発振器17は、尿失禁センサ14の電極板1、2に所定の周波数のパルス電流を印加する。後述するように、尿失禁が発生すると、パルス電流の周波数が尿漏れ量に応じて変化する。周波数/電圧変換器16は、尿失禁センサ14から受信したパルス電流の周波数をアナログ電圧に変換し、変換したアナログ電圧をマイクロプロセッサユニット19へ入力する。マイクロプロセッサユニット19は、アナログ電圧をAD変換し、パルス電流の周波数の変化に基づいて尿失禁の有無及び尿漏れ量を検知する。
【0021】
また、検知された尿失禁の有無及び尿漏れ量のデータは、無線送受信用通信モジュール20を介してスマホ等の受信器にリアルタイムで無線送信できる。なお、無線送受信用通信モジュール20は、検知された尿漏れ量が閾値以上である場合に、上記データを送信してもよい。
【0022】
無線送受信部21は、小型のリチウム1次電池15で駆動可能なように省電力化されていることにより、装置の小型化を図っている。本実施形態では、無線送受信部21を連続使用で200時間、1日8時間使用の場合は、1ケ月間運用可能である。なお、リチウム1次電池15として電池容量の大きい電池を使用する事で、無線送受信部21の使用時間を更に長くできる。
【0023】
図8は、失禁用おむつ22に尿失禁検知装置30を装着した状態を示す斜視図である。失禁用おむつ22は、尿失禁が発生しても構造的に尿が外側には染み出さないようシールされており、尿失禁センサ14、尿失禁センサ14及び接続コード18は、失禁用おむつ22の外側に取り付けられる。
【0024】
図9および
図10はそれぞれ、尿失禁センサ14が尿失禁を検知する原理を説明するための断面図および平面図である。失禁用おむつ22は、外側に防水性の尿漏れ防止シール25を有しており、尿失禁センサ14は、失禁用おむつ22の尿漏れ防止シール25上に貼り付けられている。
【0025】
失禁用おむつ22の尿失禁センサ14が貼り付けられた部分の内側領域(尿検出エリア)の誘電率が、液体の有無によって変化する。尿検出エリアの誘電率が変化すると、パルス発振器17から供給されたパルス電流の周波数が変化する。具体的には、尿失禁が発生した場合、尿24の量が増えるほど尿検出エリアの誘電率が高くなり、電極板1、2の各櫛状部分間の浮遊キャパシタ23の静電容量が大きくなり、パルス電流の周波数が低下する。したがって、無線送受信部21では、尿失禁センサ14からのパルス電流の周波数の変化に基づいて尿失禁の有無及び尿の量を検出することができる。すなわち、尿24を誘電体と見なし、誘電体の量を誘電率測定法であるキャパシタンス測定法を用いて測定することにより、尿失禁センサ14は直接尿に触れる事なしに尿失禁の有無及び尿の量を検出できる。また、失禁用おむつの様に尿を貯め込む吸水布、消臭不織布、防水布の厚みをカバーして尿量検出ができる。
【0026】
なお、無線送受信部21の消費電力を抑えるため、例えば1秒に1回誘電率を測定し、4回測定した平均値を4秒に1回無線によりスマホ等にリアルタイムで送る様に構成してもよい。
【0027】
(付記事項)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 電極板(+)
2 電極板(-)
3 穴(スナッパーゲンコ接続穴)
4 穴(スナッパーゲンコ接続穴)
5 絶縁シート(表側)
6 絶縁シート(裏側)
7 穴(スナッパーゲンコ逃げ穴)
8 スナッパーゲンコ
9 スナッパーゲンコ
10 スナッパーアタマ
11 スナッパーアタマ用絶縁シール
12 両面接着テープ
13 離形台紙
14 キャパシタンス方式尿失禁センサ
15 リチウム1次電池
16 周波数/電圧変換器
17 パルス発振器
18 接続コード
19 マイクロプロセッサユニット
20 無線送受信用通信モジュール
21 無線送受信部(検知部)
22 失禁用おむつ
23 浮遊キャパシタンス
24 尿
25 尿漏れ防止シール
30 尿失禁検知装置