(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113266
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】スチームトラップ管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
G05B23/02 V
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015488
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】谷山 浩一
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA17
3C223BA03
3C223CC02
3C223EB02
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】管理装置の処理負荷を軽減することが可能なスチームトラップ管理システムを得る。
【解決手段】管理装置としてのサーバ装置6は、あるスチームトラップに関して、第1算出部821が算出した今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合、第2算出部822による今回の蒸気漏洩量の算出処理を省略して、第2算出部822が算出した前回の蒸気漏洩量を今回の蒸気漏洩量として使用する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスチームトラップの状態を管理するスチームトラップ管理システムであって、
前記複数のスチームトラップの各々に装着された計測装置と、
管理装置と、
を備え、
前記計測装置は、
前記スチームトラップの振動を測定し、その測定結果を示す測定データを出力する測定部と、
前記測定データを送信する送信部と、
を有し、
前記管理装置は、
前記送信部が送信した前記測定データを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記測定データに基づいて前記スチームトラップの劣化値を算出する第1算出部と、
前記第1算出部が算出した前記劣化値に基づいて前記スチームトラップの蒸気漏洩量を算出する第2算出部と、
を有し、
前記管理装置は、
前記劣化値及び前記蒸気漏洩量の算出処理を定期的に実行し、
あるスチームトラップに関して、前記第1算出部が算出した今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合、前記第2算出部による今回の蒸気漏洩量の算出処理を省略して、前記第2算出部が算出した前回の蒸気漏洩量を今回の蒸気漏洩量として使用する、スチームトラップ管理システム。
【請求項2】
前記管理装置はさらに、あるスチームトラップに関して、前記受信部が受信した今回の測定データが前回の測定データと同一である場合、前記第1算出部による今回の劣化値の算出処理を省略して、前記第1算出部が算出した前回の劣化値を今回の劣化値として使用する、請求項1に記載のスチームトラップ管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記測定データと予め設定されたしきい値とを比較することにより、劣化値を複数段階に設定する、請求項1又は2に記載のスチームトラップ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームトラップの状態を管理するためのスチームトラップ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、熱交換又は放熱等によって配管系内に復水(ドレン)が生じることがある。この復水を配管系内に滞留させると運転効率が低下する原因となるため、一般には、配管系の適所にスチームトラップを設置し、このスチームトラップによって復水を配管系の外部に排出するようにしている。
【0003】
経年劣化又は作動不良等によってスチームトラップのシール性能が損なわれると、蒸気配管系内の蒸気がスチームトラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招くこととなる。そのため、スチームトラップの状態を点検する作業が定期的に行われる。
【0004】
プラント内の主要な配管系に設置されているスチームトラップには、固定型の計測装置が装着される。計測装置は、当該スチームトラップの温度及び振動を1日に1回等の定期的に測定し、その測定の結果を示す測定データをサーバ装置に送信する。サーバ装置は、受信した測定データに基づいて当該スチームトラップの状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを管理する。
【0005】
また、大型のプラントでは数千から数万個のスチームトラップが設置されることもあるため、そのような膨大な数のスチームトラップの状態を管理するための管理情報として、管理台帳が使用されることがある。
【0006】
下記特許文献1には、管理対象である全スチームトラップの各々に関して、通し番号(トラップID)等の識別情報と、製造メーカ名及び型式等の属性情報と、使用圧力及び設定温度等の動作情報と、過去の診断結果とが記述された管理台帳が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サーバ装置は、各スチームトラップの診断データとして、劣化値及び蒸気漏洩量を算出する。サーバ装置は、測定データに基づいて劣化値を算出し、劣化値に基づいて蒸気漏洩量を算出する。
【0009】
しかし、1日に1回等の定期的に、数千から数万個のスチームトラップの全てに関して劣化値及び蒸気漏洩量の算出処理を実行したのでは、サーバ装置の処理負荷が過大となる。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、管理装置の処理負荷を軽減することが可能なスチームトラップ管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るスチームトラップ管理システムは、複数のスチームトラップの状態を管理するスチームトラップ管理システムであって、前記複数のスチームトラップの各々に装着された計測装置と、管理装置と、を備え、前記計測装置は、前記スチームトラップの振動を測定し、その測定結果を示す測定データを出力する測定部と、前記測定データを送信する送信部と、を有し、前記管理装置は、前記送信部が送信した前記測定データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記測定データに基づいて前記スチームトラップの劣化値を算出する第1算出部と、前記第1算出部が算出した前記劣化値に基づいて前記スチームトラップの蒸気漏洩量を算出する第2算出部と、を有し、前記管理装置は、前記劣化値及び前記蒸気漏洩量の算出処理を定期的に実行し、あるスチームトラップに関して、前記第1算出部が算出した今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合、前記第2算出部による今回の蒸気漏洩量の算出処理を省略して、前記第2算出部が算出した前回の蒸気漏洩量を今回の蒸気漏洩量として使用する。
【0012】
本態様によれば、管理装置は、あるスチームトラップに関して、第1算出部が算出した今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合、第2算出部による今回の蒸気漏洩量の算出処理を省略して、第2算出部が算出した前回の蒸気漏洩量を今回の蒸気漏洩量として使用する。このように、今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合には第2算出部による今回の蒸気漏洩量の算出処理を省略することによって、管理装置の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記管理装置はさらに、あるスチームトラップに関して、前記受信部が受信した今回の測定データが前回の測定データと同一である場合、前記第1算出部による今回の劣化値の算出処理を省略して、前記第1算出部が算出した前回の劣化値を今回の劣化値として使用する。
【0014】
本態様によれば、管理装置は、あるスチームトラップに関して、受信部が受信した今回の測定データが前回の測定データと同一である場合、第1算出部による今回の劣化値の算出処理を省略して、第1算出部が算出した前回の劣化値を今回の劣化値として使用する。このように、今回の測定データが前回の測定データと同一である場合には第1算出部による今回の劣化値の算出処理を省略することによって、管理装置の処理負荷をさらに軽減することが可能となる。
【0015】
上記態様において、前記管理装置は、前記測定データと予め設定されたしきい値とを比較することにより、劣化値を複数段階に設定する。
【0016】
本態様によれば、測定データとしきい値との比較という簡単な処理によって、劣化値を複数段階に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管理装置の処理負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システムの構成を簡略化して示す図である。
【
図3】データ処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】サーバ装置の制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0020】
<システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100の適用対象は、蒸気配管系を備えたプラント等の施設である。蒸気配管系を備えたプラント等においては、熱交換又は放熱等によって配管系内に復水(ドレン)が生じることがある。この復水を配管系内に滞留させると運転効率が低下する原因となるため、配管系の適所に複数のスチームトラップが設置され、このスチームトラップによって復水を配管系の外部に排出するようにしている。
図1に示した例では、説明の簡略化のため、6個のスチームトラップST11~ST13,ST21~ST23のみを図示している。
【0021】
スチームトラップ管理システム100は、固定型の計測装置11~13,21~23と、中継器1,2と、親機3と、ノートパソコン又はタブレット端末等のデータ処理装置5と、クラウドサーバ等のサーバ装置6(管理装置)とを備えている。
【0022】
中継器1,2及び親機3は、無線ルータ等の任意の通信機器である。計測装置11~13と中継器1とは任意の通信方式によって相互に無線通信が可能であり、計測装置21~23と中継器2とは任意の通信方式によって相互に無線通信が可能であり、中継器1,2と親機3とは任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。親機3及びデータ処理装置5とサーバ装置6とは、公衆回線網等の任意の通信ネットワーク4を介して、IP等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。
【0023】
プラント内の主要な配管系に設置されているスチームトラップST11~ST13,ST21~ST23には、固定型の計測装置11~13,21~23が装着される。計測装置11~13,21~23は、スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23の温度及び振動を1日に1回等の定期的に測定し、その測定の結果を示す測定データを、中継器1,2、親機3、及び通信ネットワーク4を介してサーバ装置6に送信する。サーバ装置6は、受信した測定データに基づいてスチームトラップST11~ST13,ST21~ST23の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを管理する。
【0024】
図2は、計測装置11の構成を示すブロック図である。他の計測装置12,13,21~23の構成もこれと同様である。計測装置11は、測定部41、制御部42、及び通信部43を有している。
【0025】
測定部41は、温度センサ44及び振動センサ45を含む。温度センサ44は、熱電対、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。計測装置11の探針(図略)が測定対象であるスチームトラップST11に押し当てられた状態で固定されていることにより、温度センサ44は、スチームトラップST11の表面温度を測定し、その測定結果を示す温度データを出力する。振動センサ45は、圧電素子、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。上記探針が測定対象であるスチームトラップST11に押し当てられた状態で固定されていることにより、振動センサ45は、測定対象であるスチームトラップST11の振動強度を測定し、その測定結果を示す振動データを出力する。測定部41によるスチームトラップST11の温度及び振動の測定は、1日に1回等の定期的に実行される。
【0026】
通信部43は、任意の無線通信方式に対応した通信機器を用いて構成されている。
【0027】
制御部42は、CPU等を用いて構成されている。制御部42は、測定部41から入力された測定データ(温度データ及び振動データ)を、通信部43に入力する。通信部43は、当該測定データを、中継器1、親機3、及び通信ネットワーク4を介してサーバ装置6に送信する。
【0028】
図3は、データ処理装置5の構成を示すブロック図である。データ処理装置5は、制御部61、操作部63、表示部64、記憶部65、及び通信部66を有している。
【0029】
操作部63は、作業者が各種の情報を入力するためのキーボード又はマウス等によって構成されている。表示部64は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部63と表示部64とが一体として構成されても良い。
【0030】
記憶部65は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。
【0031】
通信部66は、IP等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されている。
【0032】
制御部61は、CPU等を用いて構成されている。制御部61は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、管理台帳作成部62を有している。
【0033】
管理台帳作成部62は、複数のスチームトラップST11~ST13,ST21~ST23を管理するための管理台帳91を作成する。管理台帳作成部62は、過去に管理台帳91が作成されていない新規のプラントに関しては、後述するエリアマップ情報に基づいて新規に管理台帳91を作成する。また、管理台帳作成部62は、過去に管理台帳91が作成されている既存のプラントに関しては、サーバ装置6によって管理されている既存の管理台帳91をサーバ装置6から取得し、最新のエリアマップ情報に基づいて当該管理台帳91を更新することによって、最新の管理台帳91を作成する。また、制御部61は、管理台帳作成部62が作成した管理台帳91を通信部66に入力する。通信部66は、入力された管理台帳91を、通信ネットワーク4を介してサーバ装置6に送信する。
【0034】
図4は、サーバ装置6の構成を示すブロック図である。サーバ装置6は、通信部71、制御部72、及び記憶部73を有している。
【0035】
通信部71は、IP等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されており、通信ネットワーク4を介して親機3及びデータ処理装置5の通信部66と相互に通信可能である。
【0036】
記憶部73は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。記憶部73は、通信部66がデータ処理装置5から受信した管理台帳91を記憶している。
【0037】
制御部72は、CPU等を用いて構成されている。制御部72は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部81、診断部82、及び管理台帳更新部83を有している。
【0038】
取得部81は、通信部71が計測装置11~13,21~23から受信した測定データ(温度データ及び振動データ)を、通信部71から取得する。
【0039】
診断部82は、取得部81が取得した測定データに基づいて各スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する。
【0040】
図5は、診断部82が有する機能を示す図である。診断部82は、第1算出部821と第2算出部822とを有している。
【0041】
第1算出部821は、通信部71が受信した測定データに基づき、温度値及び/又は振動強度値から劣化値を求める既知の計算式を用いて、各スチームトラップの劣化値を算出する。劣化値は、例えばシール性能劣化値である。シール性能劣化値Vcは、振動強度値Vi、スチームトラップの種類に応じたタイプ係数η、補正係数a、基準蒸気圧力Ps、及び使用蒸気圧力Pを用いて、例えば、
Vc=Vi・η・{1+a・(Ps-P)/P}
なる計算式を用いて算出することができる。
【0042】
第2算出部822は、第1算出部821が算出した劣化値に基づき、劣化値から蒸気漏洩量を求める既知の計算式を用いて、各スチームトラップの蒸気漏洩量を算出する。蒸気漏洩量Qは、スチームトラップ開弁時の流出蒸気量を求める関数式q、等価漏洩ノズル経(スチームトラップ開弁時における蒸気の最小通過断面積を円面積に換算したときの直径)d、使用蒸気圧力P、型式係数z、及びシール性能劣化値Vcを用いて、例えば、
Q=q(d,P,z)・Vc/100
なる計算式を用いて算出することができる。
【0043】
管理台帳更新部83は、診断部82が求めた各スチームトラップの劣化値及び蒸気漏洩量を含む診断結果情報I5を追記するように、記憶部73に記憶されている管理台帳91を更新する。
【0044】
<管理台帳の作成>
スチームトラップ管理システム100の管理者又は作業者は、データ処理装置5を用いて管理台帳91を作成する。管理台帳91の作成処理は、管理台帳作成部62によって実行される。
【0045】
データ処理装置5は、対象のプラント内に設置されている全てのスチームトラップの情報を示すエリアマップ情報を、プラントの管理端末等から取得する。当該管理端末が通信ネットワーク4に接続されている場合には、データ処理装置5は、当該管理端末から通信ネットワーク4を介してエリアマップ情報を取得する。
【0046】
管理台帳作成部62は、エリアマップ情報に含まれている全てのスチームトラップに関する情報を並べて、管理台帳91を作成する。
【0047】
図6は、管理台帳91の一例を示す図である。管理台帳91には、全てのスチームトラップの各々に関し、タイプ情報I1、識別情報I2、属性情報I3、動作情報I4、及び診断結果情報I5が記述されている。
【0048】
タイプ情報I1は、そのスチームトラップに計測装置が装着されている場合(つまり固定型の計測装置による測定対象のスチームトラップである場合)には、「固定」と表記される。また、タイプ情報I1は、そのスチームトラップに計測装置が装着されていない場合(つまり可搬型の診断装置による診断対象のスチームトラップである場合)には、「可搬」と表記される。識別情報I2は、トラップナンバーであり、この例では
図1に示した参照符号を用いている。トラップナンバーは、各スチームトラップに割り当てられた固有の識別番号(ID)である。属性情報I3は、各スチームトラップの製造メーカ名及び型式名を含む。但し、型式名よりも詳細な品番情報が属性情報I3にさらに含まれても良い。動作情報I4は、使用圧力及び設定温度を含む。
【0049】
各スチームトラップに関するタイプ情報I1、識別情報I2、属性情報I3、及び動作情報I4が上記エリアマップ情報に含まれている場合には、管理台帳作成部62は、これらの情報を当該エリアマップ情報から抽出することが可能である。あるいは、これらの情報が上記エリアマップ情報に含まれていない場合には、管理者又は作業者によるキーボード入力等に応じて、操作部63から制御部61にこれらの情報が入力されても良い。
【0050】
診断結果情報I5は、診断日、劣化値、及び蒸気漏洩量を含む。診断が実施される前の事前準備の段階では、診断日、劣化値、及び蒸気漏洩量の項目は空欄となっている。
【0051】
通信部66は、管理台帳作成部62が作成した管理台帳91を、通信ネットワーク4を介してサーバ装置6に送信する。サーバ装置6において、通信部71は、通信部66から送信された管理台帳91を受信する。制御部72は、通信部71が受信した管理台帳91を記憶部73に記憶する。
【0052】
<固定型の計測装置による測定>
計測装置11~13,21~23は、スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23の温度及び振動を1日に1回等の定期的に測定する。また、計測装置11~13,21~23は、その測定の結果を示す測定データを、中継器1,2、親機3、及び通信ネットワーク4を介してサーバ装置6に送信する。
【0053】
サーバ装置6の通信部71は、計測装置11~13,21~23から送信された測定データを受信する。制御部72は、通信部71が受信した測定データに基づいて、各スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23の状態を診断する。制御部72は、その診断結果に基づいて、1日に1回等の定期的に、記憶部73に記憶されている管理台帳91を更新する。
【0054】
図7は、サーバ装置6の制御部72が実行する処理の流れを示すフローチャートである。まずステップS01において取得部81は、通信部71が計測装置11~13,21~23から受信した今回の測定データを、通信部71から取得する。
【0055】
次にステップS02において診断部82は、各スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23に関して、今回の測定データが前回(例えば昨日)の測定データと同一であるか否かを判定する。診断部82は、今回の測定データと前回の測定データとの差が所定のしきい値未満である場合には、今回の測定データは前回の測定データと同一であると判定する。一方、今回の測定データと前回の測定データとの差が当該しきい値以上である場合には、診断部82は、今回の測定データは前回の測定データと同一ではないと判定する。
【0056】
今回の測定データが前回の測定データと同一である場合(ステップS02:YES)、次にステップS03において制御部72は、第1算出部821による劣化値の算出処理及び第2算出部822による蒸気漏洩量の算出処理を省略して、そのスチームトラップに関しては、前回の劣化値及び蒸気漏洩量を今回の劣化値及び蒸気漏洩量として使用する。
【0057】
今回の測定データが前回の測定データと同一でない場合(ステップS02:NO)、次にステップS04において制御部72は、第1算出部821によって今回の劣化値の算出処理を実行する。
【0058】
次にステップS05において診断部82は、各スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23に関して、今回の劣化値が前回(例えば昨日)の劣化値と同一であるか否かを判定する。診断部82は、今回の劣化値と前回の劣化値との差が所定のしきい値未満である場合には、今回の劣化値は前回の劣化値と同一であると判定する。一方、今回の劣化値と前回の劣化値との差が当該しきい値以上である場合には、診断部82は、今回の劣化値は前回の劣化値と同一ではないと判定する。あるいは、診断部82は、劣化値を例えば10段階の劣化レベル(リークレベル)に分類し、劣化レベルが同一の分類に属する場合には劣化値が同一であり、劣化レベルが異なる分類に属する場合には劣化値が同一でないと判定しても良い。また、診断部82は、今回の振動データと予め設定された所定のしきい値とを比較することにより、劣化値を複数段階の劣化程度(例えば「正常」「漏れ小」「漏れ中」「漏れ大」の4段階)のいずれかに設定しても良い。この場合、振動データとしきい値との比較という簡単な処理によって、劣化値を複数段階に設定することが可能となる。
【0059】
今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合(ステップS05:YES)、次にステップS06において制御部72は、第2算出部822による蒸気漏洩量の算出処理を省略して、そのスチームトラップに関しては、前回の蒸気漏洩量を今回の蒸気漏洩量として使用する。
【0060】
今回の劣化値が前回の劣化値と同一でない場合(ステップS05:NO)、次にステップS07において制御部72は、第2算出部822によって今回の蒸気漏洩量の算出処理を実行する。
【0061】
ステップS03に続いて、次にステップS08において管理台帳更新部83は、前回の劣化値及び前回の蒸気漏洩量を今回の劣化値及び今回の蒸気漏洩量として使用して、管理台帳91を更新する。ステップS06に続いて、次にステップS08において管理台帳更新部83は、今回の劣化値及び前回の蒸気漏洩量を今回の劣化値及び今回の蒸気漏洩量として使用して、管理台帳91を更新する。ステップS07に続いて、次にステップS08において管理台帳更新部83は、今回の劣化値及び今回の蒸気漏洩量を使用して、管理台帳91を更新する。
【0062】
具体的に、管理台帳更新部83は、診断部82が作成した診断結果情報I5を、記憶部73に記憶されている管理台帳91のうち、識別情報I2によって特定される対応箇所に追記する。診断結果情報I5が管理台帳91の対応箇所に追記されることにより、各スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23の診断結果情報I5が、各スチームトラップST11~ST13,ST21~ST23の識別情報I2に関連付けられて、記憶部73に記憶されることとなる。
【0063】
変形例として、ステップS02,S03を省略することにより、劣化値に関しては常に第1算出部821によって今回の劣化値の算出処理を実行しても良い。また、本実施の形態の例では劣化値の算出と蒸気漏洩量の算出との二段階の算出処理について説明したが、三段階以上の算出処理において、前段の算出結果が同一であればその次段以降の算出処理を省略する構成としても良い。
【0064】
<まとめ>
本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、管理装置としてのサーバ装置6は、あるスチームトラップに関して、第1算出部821が算出した今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合、第2算出部822による今回の蒸気漏洩量の算出処理を省略して、第2算出部822が算出した前回の蒸気漏洩量を今回の蒸気漏洩量として使用する。このように、今回の劣化値が前回の劣化値と同一である場合には第2算出部822による今回の蒸気漏洩量の算出処理を省略することによって、サーバ装置6の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0065】
また、本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、サーバ装置6は、あるスチームトラップに関して、通信部71が受信した今回の測定データが前回の測定データと同一である場合、第1算出部821による今回の劣化値の算出処理を省略して、第1算出部821が算出した前回の劣化値を今回の劣化値として使用する。このように、今回の測定データが前回の測定データと同一である場合には第1算出部821による今回の劣化値の算出処理を省略することによって、サーバ装置6の処理負荷をさらに軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
6 サーバ装置
11~13,21~23 計測装置
41 測定部
43 通信部
51 測定部
71 通信部
72 制御部
81 取得部
82 診断部
821 第1算出部
822 第2算出部
83 管理台帳更新部
91 管理台帳
100 スチームトラップ管理システム
ST11~ST13,ST21~ST23 スチームトラップ