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特開2023-113273カメラユニット及びモニタリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113273
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】カメラユニット及びモニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B22D17/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015499
(22)【出願日】2022-02-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り プレス技術,第59巻第11号(通巻753号),第80-88頁 株式会社日刊工業新聞社 月刊機械と工具,第11巻第10号(通巻127号),第59-67頁 日本工業出版 月刊プラスチックエージ,第67巻11月号第819号,第50-58頁 株式会社プラスチックスエージ https://premium.ipros.jp/kmc-j/product/detail/2000626068/
(71)【出願人】
【識別番号】512319232
【氏名又は名称】株式会社KMC
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀三
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 声喜
(57)【要約】
【課題】悪環境でのモニタリングを可能とするカメラユニット及びモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】カメラユニットは、レンズを有するカメラモジュールと、外装部と、前記外装部に区画され前記カメラモジュールを収容する空間部と、前記外装部に設けられ前記空間部と連通し前記レンズの表面に対向して前記レンズを露出するレンズ穴と、前記レンズ穴と前記レンズの表面との間に位置し前記空間部及び前記レンズ穴と連通する吐出流路と、を有するケースと、前記外装部に設けられ前記空間部と連通し、前記空間部に気体を導入して前記空間部を陽圧にすることで前記気体を前記吐出流路を介して前記レンズの表面を通過して前記レンズ穴からパージする気体導入流路と、を具備する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを有するカメラモジュールと、
外装部と、前記外装部に区画され前記カメラモジュールを収容する空間部と、前記外装部に設けられ前記空間部と連通し前記レンズの表面に対向して前記レンズを露出するレンズ穴と、前記レンズ穴と前記レンズの表面との間に位置し前記空間部及び前記レンズ穴と連通する吐出流路と、前記空間部に気体を導入して前記空間部を陽圧にすることで前記気体を前記吐出流路を介して前記レンズの表面を通過して前記レンズ穴からパージするための気体導入流路と、を有するケースと、
を具備するカメラユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラユニットであって、
前記レンズ穴及び前記気体導入流路は、前記レンズの光軸方向に対向する前記外装部の部位にそれぞれ設けられ、且つ、前記光軸方向に直交する少なくとも一方向に離間して設けられる
カメラユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカメラユニットであって、
前記レンズ穴の直径は前記レンズの直径以上であり、
前記レンズ穴の中心は前記レンズの中心と一致する
カメラユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のカメラユニットであって、
前記気体導入流路は、前記外装部に設けられ前記空間部と連通するプラグユニットにより構成される
カメラユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のカメラユニットであって、
前記空間部に収容され、発熱する発熱部品をさらに具備し、
前記発熱部品は、前記気体導入流路から前記吐出流路に至る前記気体の流路である内部流路に配置される
カメラユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のカメラユニットであって、
前記吐出流路の前記気体の流れ方向に直交する方向の幅は、前記内部流路の前記気体の流れ方向に直交する方向の幅より小さい
カメラユニット。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のカメラユニットであって、
前記発熱部品は、前記カメラモジュールを制御するコントローラモジュールを含む
カメラユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のカメラユニットであって、
前記カメラモジュールは、温度センサを有し、被写体の温度を検出してサーモグラフィデータを生成するサーモカメラモジュールである
カメラユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のカメラユニットであって、
前記コントローラモジュールは、前記カメラモジュールが検出した温度を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状に配置したCSV形式の温度データを生成し、送信する
カメラユニット。
【請求項10】
請求項9に記載のカメラユニットであって、
前記外装部に設けられたアンテナモジュールをさらに具備し、
前記コントローラモジュールは、前記サーモグラフィデータ又は前記温度データを前記アンテナモジュールを介して無線送信する
カメラユニット。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のカメラユニットであって、
前記空間部に収容され、レンズと、被写体を撮影して画像データを生成するイメージセンサとを有するイメージングモジュールをさらに具備し、
前記外装部は、前記イメージングモジュールのレンズを露出する別のレンズ穴をさらに有し、
前記吐出流路は、前記別のレンズ穴と前記イメージングモジュールの前記レンズの表面との間に位置し、前記空間部及び前記別のレンズ穴と連通する
カメラユニット。
【請求項12】
請求項11に記載のカメラユニットであって、
前記コントローラモジュールは、前記イメージングモジュールが生成した前記画像データを、前記温度データとともに前記アンテナモジュールを介して無線送信する
カメラユニット。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のカメラユニットであって、
前記空間部の温度を検出する内部温度センサ
をさらに具備するカメラユニット。
【請求項14】
レンズと、温度センサとを有し、被写体の温度を検出してサーモグラフィデータを生成するサーモカメラモジュールであるカメラモジュールと、
前記カメラモジュールを制御し、
前記カメラモジュールが生成したサーモグラフィデータを、ネットワークを介さずに送信し、
前記カメラモジュールが検出した温度の数値を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状に配置したCSV形式の温度データを生成し、前記ネットワークを介して又は介さずに送信する
コントローラモジュールと、
を有するカメラユニットと、
前記サーモグラフィデータを受信すると、前記サーモグラフィデータに基づきサーモグラフィを表示し、又は
前記CSV形式の温度データを受信すると、前記CSV形式の温度データに基づき、温度を表現する色彩要素を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状に配置したサーモグラフィを生成し表示する
表示制御部を有する端末装置と、
を具備するモニタリングシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のモニタリングシステムであって、
前記端末装置は、前記CSV形式の温度データに含まれる特定の検出点の温度をモニタリングするモニタリング部をさらに有する
モニタリングシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のモニタリングシステムであって、
前記モニタリング部は、前記特定の検出点の温度が閾値に到達したか否かを判断する
モニタリングシステム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のモニタリングシステムであって、
前記モニタリング部は、前記被写体の放射率を設定する
モニタリングシステム。
【請求項18】
請求項14乃至17のいずれか一項に記載のモニタリングシステムであって、
前記カメラユニットは、
外装部と、前記外装部に区画され前記カメラモジュールを収容する空間部と、前記外装部に設けられ前記空間部と連通し前記レンズの表面に対向して前記レンズを露出するレンズ穴と、前記レンズ穴と前記レンズの表面との間に位置し前記空間部及び前記レンズ穴と連通する吐出流路と、前記空間部に気体を導入して前記空間部を陽圧にすることで前記気体を前記吐出流路を介して前記レンズの表面を通過して前記レンズ穴からパージするための気体導入流路と、を有するケース
をさらに有し、前記空間部に収容される
モニタリングシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のモニタリングシステムであって、
前記カメラユニットは、レンズと、被写体を撮影して画像データを生成するイメージセンサとを有するイメージングモジュールをさらに有し、
前記コントローラモジュールは、前記イメージングモジュールが生成した前記画像データを、前記CSV形式の温度データ又は前記サーモグラフィデータとともに送信し、
前記端末装置の前記表示制御部は、受信した前記画像データが前記2次元的なマトリクスと位置的に一致する様に、前記画像データを前記サーモグラフィに重畳して表示する
モニタリングシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のモニタリングシステムであって、
前記イメージングモジュールは、前記空間部に収容され、
前記外装部は、前記イメージングモジュールのレンズを露出する別のレンズ穴をさらに有し、
前記吐出流路は、前記別のレンズ穴と前記イメージングモジュールの前記レンズの表面との間に位置し、前記空間部及び前記別のレンズ穴と連通する
モニタリングシステム。
【請求項21】
請求項14乃至20の何れか一項に記載のモニタリングシステムであって、
前記カメラユニットは、前記外装部に設けられたアンテナモジュールをさらに有し、
前記カメラユニット及び前記端末装置は、アクセスポイントを介して通信可能に接続される
モニタリングシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のモニタリングシステムであって、
前記アクセスポイントのSSID、パスワード及びIPアドレスを取得し、前記アクセスポイントのSSID、パスワード及びIPアドレスを、所定距離範囲内に位置する前記カメラユニットにネットワークを介して設定することで、前記カメラユニットと前記アクセスポイントとのネットワーク通信接続を確立するセットアップ用端末
をさらに具備するモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズを有するカメラモジュールを備えるカメラユニットと、このカメラユニットを備えるモニタリングシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛・アルミなどのダイカスト鋳造において金型表面温度の異常上昇が原因の鋳造不良は大きな課題となっている。表面温度上昇により設定のサイクルタイムで凝固不足やガスが鋳造内部にたまり、変形や寸法不良が発生する。金型表面の温度上昇の要因は金型内冷却効率の劣化、例えば冷却水の劣化や冷却配管のサビ・異物混入などによる詰まりなどが原因である。また、金型劣化や鋳造環境の温度変化、鋳造条件の変動でも金型表面温度上昇があり、1日の量産中にも変化があり、鋳造不良が発生し大きな問題となっている。対策には、金型温度・冷却水温度、温調機の監視と共に直接金型表面温度の監視が必要である。
【0003】
金型表面温度の監視ニーズはダイカスト金型だけでなく、射出成形においても同様で成形品不良に直結する量産中の金型表面温度の異常上昇の監視は、変形や寸法不良等成形不良を防止する上で必須とされる。他、ゴム型、真空成型、最近ではプレス金型でも金型表面温度の変化が部品不良に関連していることが分かってきて、その金型表面温度測定のニーズが高まっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】双葉電子工業株式会社、"モールドマーシャリングシステム樹脂温度計測システムカタログ"、[online]、[令和2年9月11日検索]、インターネット〈URL: https://premium.ipros.jp/futaba/catalog/detail/439484/〉
【非特許文献2】株式会社チノー、"小形熱画像センサTPシリーズ"、[online]、[令和2年9月11日検索]、インターネット〈URL: https://www.chino.co.jp/wp/wp-content/themes/chino/pdf/tp-l.pdf〉
【非特許文献3】理化工業株式会社、"金型の表面温度監視(マグネット式カメラモジュール)"、[online]、[令和2年9月11日検索]、インターネット〈URL: https://www.rkcinst.co.jp/applications/7897/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金型表面温度測定の一方式として、熱電対センサにより直接金型表面を測定する方式(非特許文献1及び非特許文献3)がある。しかしながら直接測定方式では、金型内部に装着するため、金型構造の複雑化や改造が必要になる事や金型毎に設置が必要でコスト的に費用がかさむ。
【0006】
金型表面温度測定の別の方式として、非接触でカメラや赤外センサ等のサーモセンサによる遠隔測定方式(非特許文献2)がある。しかしながら遠隔測定方式では、外部にセンサを設置する為、特にダイカスト金型の場合、400度近い金型付近温度の環境で、凝固時の発生ガスやスプレー、エアブロー、粉塵、溶融材料の飛び散りなどの悪環境での測定が必要となり、有効なセンサシステムは実用化がされていない。一方、射出成形金型は、比較的環境温度や粉塵、ガスなどの影響を受けにくいものの、射出成形には小型の製品も多く、マクロ的な温度分布測定では細部の温度変化測定に適さないという課題があり有効な金型表面カメラモジュールシステムは実用化されていない。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、悪環境でのモニタリングを可能とするカメラユニット及びモニタリングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態に係るカメラユニットは、
レンズを有するカメラモジュールと、
外装部と、前記外装部に区画され前記カメラモジュールを収容する空間部と、前記外装部に設けられ前記空間部と連通し前記レンズの表面に対向して前記レンズを露出するレンズ穴と、前記レンズ穴と前記レンズの表面との間に位置し前記空間部及び前記レンズ穴と連通する吐出流路と、前記空間部に気体を導入して前記空間部を陽圧にすることで前記気体を前記吐出流路を介して前記レンズの表面を通過して前記レンズ穴からパージするための気体導入流路と、を有するケースと、
を具備する。
【0009】
本実施形態によれば、気体の流通によりカメラモジュールのレンズの表面をクリーンに保つことで、ガスや粉塵のある悪環境での高精度なモニタリングが可能となる。
【0010】
前記レンズ穴及び前記気体導入流路は、前記レンズの光軸方向に対向する前記外装部の部位にそれぞれ設けられ、且つ、前記光軸方向に直交する少なくとも一方向に離間して設けられてもよい。
【0011】
この配置により、気体が万遍無く流通しやすくなる。
【0012】
前記レンズ穴の直径は前記レンズの直径以上であり、
前記レンズ穴の中心は前記レンズの中心と一致してもよい。
【0013】
この配置により、レンズの表面とレンズ穴とが吐出流路を介して空間を空けて配置されるにも拘らず、レンズの視野角を担保することが出来る。
【0014】
前記気体導入流路は、前記外装部に設けられ前記空間部と連通するプラグユニットにより構成されてもよい。
【0015】
気体導入流路がプラグユニットにより構成されることで、空間部を効率的に陽圧にすることが出来る。
【0016】
前記空間部に収容され、発熱する発熱部品をさらに具備し、
前記発熱部品は、前記気体導入流路から前記吐出流路に至る前記気体の流路である内部流路に配置されてもよい。
【0017】
カメラモジュール自体が発熱して、また、周辺の発熱部品が発熱してカメラモジュールの温度が上昇すると、カメラモジュールの検出性能が落ちるおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、発熱部品が配置された内部流路を気体が流通し、その気体はレンズ穴から排出されるので、発熱部品の温度の上昇を抑制することが出来る。これにより、カメラモジュールの温度の上昇を抑制することが出来、カメラモジュールの検出性能が落ちるのを防止することが出来る。
【0018】
前記吐出流路の前記気体の流れ方向に直交する方向の幅は、前記内部流路の前記気体の流れ方向に直交する方向の幅より小さくてもよい。
【0019】
このため、内部流路を流れてきた気体は、狭い吐出流路で相対的に速く流れることになり、相対的に速い速度でレンズの表面を通過してレンズ穴から環境に向けて噴出する。これにより、気体がレンズの表面を洗浄するとともに、環境からレンズ穴の内側に向けて異物が侵入するのを防ぐことが出来る。
【0020】
前記発熱部品は、前記カメラモジュールを制御するコントローラモジュールを含んでもよい。
【0021】
前記カメラモジュールは、温度センサを有し、被写体の温度を検出してサーモグラフィデータを生成するサーモカメラモジュールでもよい。
【0022】
前記コントローラモジュールは、前記カメラモジュールが検出した温度を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状に配置したCSV形式の温度データを生成し、送信してもよい。
【0023】
これにより、検出点の位置がCSV形式の2次元的なマトリクスのセル位置で表現され、温度がその位置に紐づけられる。これにより、被写体の検出点の温度を示す温度データを、小データ量の形式で生成することが出来る。
【0024】
カメラユニットは、
前記外装部に設けられたアンテナモジュールをさらに具備し、
前記外装部に設けられたアンテナモジュールをさらに具備し、
前記コントローラモジュールは、前記サーモグラフィデータ又は前記温度データを前記アンテナモジュールを介して無線送信してもよい。
【0025】
カメラユニットと外部装置とが有線接続されると、工作機械等の可動式の機械の可動部の動き、機械内の部品の取り外し又は交換時に配線が部品に引っ掛かること、等によって、配線が断線することがある。その結果、カメラユニットと外部装置との通信接続が遮断する。これに対して、本実施形態によれば、カメラユニットの通信接続を無線とすることで、通信接続の遮断を防止することができる。
【0026】
カメラユニットは、
前記空間部の温度を検出する内部温度センサ
をさらに具備してもよい。
【0027】
これにより、カメラユニット内の空間部の温度が閾値より上昇した場合、温度異常を通知することができる。
【0028】
前記空間部に収容され、レンズと、被写体を撮影して画像データを生成するイメージセンサとを有するイメージングモジュールをさらに具備し、
前記外装部は、前記イメージングモジュールのレンズを露出する別のレンズ穴をさらに有し、
前記吐出流路は、前記別のレンズ穴と前記イメージングモジュールの前記レンズの表面との間に位置し、前記空間部及び前記別のレンズ穴と連通してもよい。
【0029】
本実施形態によれば、気体の流通によりイメージングモジュールのレンズの表面もクリーンに保つことが可能となる。
【0030】
前記コントローラモジュールは、前記イメージングモジュールが生成した前記画像データを、前記温度データとともに前記アンテナモジュールを介して無線送信してもよい。
【0031】
本開示の一形態に係るモニタリングシステムは、
レンズと、温度センサとを有し、被写体の温度を検出してサーモグラフィデータを生成するサーモカメラモジュールであるカメラモジュールと、
前記カメラモジュールを制御し、
前記カメラモジュールが生成したサーモグラフィデータを、ネットワークを介さずに送信し、
前記カメラモジュールが検出した温度の数値を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状に配置したCSV形式の温度データを生成し、前記ネットワークを介して又は介さずに送信する
コントローラモジュールと、
を有するカメラユニットと、
前記サーモグラフィデータを受信すると、前記サーモグラフィデータに基づきサーモグラフィを表示し、又は
前記CSV形式の温度データを受信すると、前記CSV形式の温度データに基づき、温度を表現する色彩要素を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状に配置したサーモグラフィを生成し表示する
表示制御部を有する端末装置と、
を有する端末装置と、
を具備する。
【0032】
本実施形態によれば、コントローラモジュールは、ネットワークNを介して接続された第1の端末装置には、サーモグラフィをCSV形式の温度データに変換して送信する。第1の端末装置は、CSV形式の温度データをサーモグラフィに変換して表示する。一方、コントローラモジュールは、ネットワークを介さずにアクセスポイントを介して接続された第2の端末装置には、サーモグラフィをそのまま送信する。これにより、ネットワークを介した通信では小データ量のCSV形式の温度データを送信することでトラフィック増加を防ぐことができ、ネットワークを介さない通信ではサーモグラフィをそのまま送信することでリアルタイムな表示を実現できる。
【0033】
前記端末装置は、前記CSV形式の温度データに含まれる特定の検出点の温度をモニタリングするモニタリング部をさらに有してもよい。
【0034】
例えば、モニタリング部は、全ての検出点の温度ではなく、特定の数個の検出点の温度をモニタリングする。特定の数個の検出点として、モニタすべき検出点、即ち、金型表面温度の変化が部品不良に関連し得る箇所を設定すればよい。
【0035】
前記モニタリング部は、前記特定の検出点の温度が閾値に到達したか否かを判断してもよい。
【0036】
これにより、成形品の品質が担保できる上限値及び/又は下限値に到達したか等を判断できる。
【0037】
前記モニタリング部は、前記被写体の放射率を設定してもよい。
【0038】
材質等に応じて放射率を設定する放射率設定機能を有してもよい。放射率は、物体からの熱放射のしやすさを表したものであり、同一物質でも表面が粗いと放射率が高くなる。これにより、材質に応じて放射率しておけば、材料に応じて適切なモニタリングができる。これとともに、経年劣化による表面の粗さの変化に気づくことができ、表面の粗さの変化に応じて放射率の設定を変更することで、経年劣化がある場合でも適切なモニタリングができる。
【0039】
前記カメラユニットは、
外装部と、前記外装部に区画され前記カメラモジュールを収容する空間部と、前記外装部に設けられ前記空間部と連通し前記レンズの表面に対向して前記レンズを露出するレンズ穴と、前記レンズ穴と前記レンズの表面との間に位置し前記空間部及び前記レンズ穴と連通する吐出流路と、前記外装部に設けられ前記空間部と連通し、前記空間部に気体を導入して前記空間部を陽圧にすることで前記気体を前記吐出流路を介して前記レンズの表面を通過して前記レンズ穴からパージするための気体導入流路と、を有するケース
をさらに有し、前記空間部に収容されてもよい。
【0040】
本実施形態によれば、気体の流通によりカメラモジュールのレンズの表面をクリーンに保つことで、ガスや粉塵のある悪環境での高精度なモニタリングが可能となる。
【0041】
前記カメラユニットは、レンズと、被写体を撮影して画像データを生成するイメージセンサとを有するイメージングモジュールをさらに有し、
前記コントローラモジュールは、前記イメージングモジュールが生成した前記画像データを、前記CSV形式の温度データ又は前記サーモグラフィデータとともに送信し、
前記端末装置の前記表示制御部は、受信した前記画像データが前記2次元的なマトリクスと位置的に一致する様に、前記画像データを前記サーモグラフィに重畳して表示してもよい。
【0042】
画像データが2次元的なマトリクスと位置的に一致する様に、画像データをサーモグラフィに重畳して表示することにより、被写体のどの部位の温度がどの程度なのか、視覚的に容易に理解しやすくなる。
【0043】
前記外装部は、前記イメージングモジュールのレンズを露出する別のレンズ穴をさらに有し、
前記吐出流路は、前記別のレンズ穴と前記イメージングモジュールの前記レンズの表面との間に位置し、前記空間部及び前記別のレンズ穴と連通してもよい。
【0044】
本実施形態によれば、気体の流通によりイメージングモジュールのレンズの表面もクリーンに保つことが可能となる。
【0045】
前記カメラユニットは、前記外装部に設けられたアンテナモジュールをさらに有し、
前記カメラユニット及び前記端末装置は、アクセスポイントを介して通信可能に接続されてもよい。
【0046】
モニタリングシステムは、
前記アクセスポイントのSSID、パスワード及びIPアドレスを取得し、前記アクセスポイントのSSID、パスワード及びIPアドレスを、所定距離範囲内に位置する前記カメラユニットにネットワークを介して設定することで、前記カメラユニットと前記アクセスポイントとのネットワーク通信接続を確立するセットアップ用端末
をさらに具備してもよい。
【0047】
本実施形態によれば、カメラユニットの通信接続を無線とすることで、カメラユニットと外部装置との通信接続の遮断を防止することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、悪環境でのモニタリングを可能とするカメラユニット及びモニタリングシステムを提供できる。
【0049】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の一実施形態に係るモニタリングシステムの概要を示す。
図2】カメラユニット及び端末装置のハードウェア構成及び機能的構成を示す。
図3】端末装置に表示される画面の一例を示す。
図4】カメラユニットを示す正面図である。
図5】カメラユニットを模式的に示す図4のA-A線断面図である。
図6】カメラユニットにおける気体の流れを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
【0052】
1.モニタリングシステムの概要
【0053】
図1は、本発明の一実施形態に係るモニタリングシステムの概要を示す。
【0054】
モニタリングシステム1は、少なくとも1個のカメラユニット10(本実施形態では、第1のカメラユニット10A及び第2のカメラユニット10B)と、少なくとも1個の端末装置40(本実施形態では、第1の端末装置40A及び第2の端末装置40B)とを少なくとも有する。モニタリングシステム1は、セットアップ用端末50をさらに有してもよい。
【0055】
第1のカメラユニット10A及び第2のカメラユニット10Bのハードウェア構成及び機能的構成は同様である。以下、第1のカメラユニット10A及び第2のカメラユニット10Bを区別せずに単数のカメラユニット10を説明するとき、単にカメラユニット10と称する。
【0056】
第1のカメラユニット10Aは、可動側金型C1(コア)に取り付けられる。第2のカメラユニット10Bは、固定側金型C2(キャビティ)に取り付けられる。可動側金型C1及び固定側金型C2のペアは、典型的には、ダイカスト金型、射出成形金型、ゴム成形金型、真空成形金型又はプレス金型のペアである。第1のカメラユニット10A及び第2のカメラユニット10Bの複数のペアは、典型的には、同じサイト(製造工場等)に設置された複数(例えば、数十個)の対象機の固定側金型C2及び可動側金型C1にそれぞれ設置される。
【0057】
第1のカメラユニット10Aは、固定側金型C2の表面の温度(固定側金型表面温度T2)を検出可能である。具体的には、第1のカメラユニット10Aは、固定側金型表面温度T2として、固定側金型C2の表面(成形品の作製面)を2次元(マトリックス状)に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(固定側金型表面エリア温度)を検出可能である。図示のように、第1のカメラユニット10Aが固定側金型C2の表面の略全域を撮影可能となるように(図中破線)、第1のカメラユニット10Aが可動側金型C1の任意の位置に取り付けられる。第1のカメラユニット10Aは、可動側金型C1に取り付け(例えば、可動側金型C1に接着した取り付け治具に嵌める)可能な小型サイズ及び軽さでよい。第1のカメラユニット10Aは、バッテリ(図示せず)を内蔵する。
【0058】
第2のカメラユニット10Bは、可動側金型C1の表面の温度(可動側金型表面温度T1)を検出可能である。具体的には、第2のカメラユニット10Bは、可動側金型表面温度T1として、可動側金型C1の表面(成形品の作製面)を2次元(マトリックス状)に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(可動側金型表面エリア温度)を検出可能である。図示のように、第2のカメラユニット10Bが可動側金型C1の表面の略全域を撮影可能となるように(図中破線)、第2のカメラユニット10Bが固定側金型C2の任意の位置に取り付けられる。第2のカメラユニット10Bは、可動側金型C1に取り付け(例えば、固定側金型C2に接着した取り付け治具に嵌める)可能な小型サイズ及び軽さでよい。第2のカメラユニット10Bは、バッテリ(図示せず)を内蔵する。
【0059】
アクセスポイント30は、カメラユニット10から通信可能範囲内に設置される。カメラユニット10は、アクセスポイント30に無線通信可能に接続される。アクセスポイント30は、ネットワークNに接続される。典型的には、ネットワークNは、製造工場等に設置された無線LANである。第1の端末装置40Aは、ネットワークNに接続される。カメラユニット10及び第1の端末装置40Aは、ネットワークNを介して無線通信可能に接続される。一方、第2の端末装置40Bは、モバイル端末であり、アクセスポイント30から所定距離範囲内に位置するとき、アクセスポイント30に接続される。カメラユニット10及び第2の端末装置40Bは、アクセスポイント30を介して且つネットワークNを介さず無線通信可能に接続される。例えば、第2の端末装置40Bは、カメラユニット10が設置された対象機の至近距離にいる作業員等のユーザが所持するモバイル端末(タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ等)であり、一方、第1の端末装置40Aは対象機の管理用のコンピュータ(据え置き型、モバイル型等)である。
【0060】
第1の端末装置40A及び第2の端末装置40Bのハードウェア構成及び機能的構成は同様である。以下、第1の端末装置40A及び第2の端末装置40Bを区別せずに単数の端末装置40を説明するとき、単に端末装置40と称する。
【0061】
端末装置40は、カメラユニット10から温度データを受信して処理する。端末装置40は、汎用のパーソナルコンピュータ又は専用のコンピュータである。端末装置40が汎用のパーソナルコンピュータである場合、本実施形態のモニタリングシステムを実現する情報処理プログラムを、可搬型の非一過性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録した上で、又は、インターネット等を介してダウンロードした上で、汎用のパーソナルコンピュータにインストールすればよい。端末装置40が専用のコンピュータである場合、本実施形態のモニタリングシステムを実現する情報処理プログラムをインストールした専用のコンピュータを出荷すればよい。
【0062】
セットアップ用端末50は、アクセスポイント30を介して且つネットワークNを介さずに、カメラユニット10と無線通信する。セットアップ用端末50は、カメラユニット10とアクセスポイント30とのネットワークNを介した無線ネットワーク通信接続を確立(初期設定)する。まず、ユーザがセットアップ用端末50を操作して、セットアップ用のIPアドレスを汎用のウェブブラウザにマニュアルで入力し、セットアップ用のウェブサイトにアクセスする。ユーザは、セットアップ用のウェブサイトに、アクセスポイント30のSSID、パスワード及びIPアドレスをマニュアルで入力する。これにより、セットアップ用端末50は、アクセスポイント30のSSID、パスワード及びIPアドレスを取得する。セットアップ用端末50は、アクセスポイント30のSSID、パスワード及びIPアドレスを、所定距離範囲内に位置するカメラユニット10にネットワークを介して設定することで、カメラユニット10とアクセスポイント30とのネットワーク通信接続を確立する。セットアップ用端末50は、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン等である。なお、第2の端末装置40Bがセットアップ用端末50の機能を有してもよい。
【0063】
2.カメラユニット及び端末装置のハードウェア構成及び機能的構成
【0064】
図2は、カメラユニット及び端末装置のハードウェア構成及び機能的構成を示す。
【0065】
カメラユニット10は、カメラモジュール100と、コントローラモジュール110と、アンテナモジュール120とを有する。
【0066】
カメラモジュール100は、例えば、レンズ101及びシャッタを有する長波長赤外線(LWIR)カメラモジュールである。カメラモジュール100は、温度センサ102(例えば、非冷却VOxマイクロボロメータ)を有し、被写体の温度を検出するサーモカメラモジュールである。カメラモジュール100は、80x60ピクセル(ピクセルサイズ17μm)又は160x120ピクセル(ピクセルサイズ12μm)程度の解像度で、被写体の表面の温度を検出し、サーモグラフィデータを生成する。
【0067】
アンテナモジュール120は、例えば、ダイポールアンテナである。
【0068】
コントローラモジュール110は、例えば、CPU、RAM及びWi-Fi(登録商標)モジュールを有するマイクロコントローラである。カメラモジュール100及びコントローラモジュール110は、SPI(Serial Peripheral Interface)及びI2C(Inter-Integrated Circuit)等のシリアルバスを介して接続される。例えば、コントローラモジュール110はI2Cを介してカメラモジュール100を制御し、カメラモジュール100はSPIを介してコントローラモジュール110にデータを送信する。
【0069】
カメラユニット10は、内部温度センサをさらに有する。内部温度センサは、典型的には、コントローラモジュール110に実装される。内部温度センサは、カメラユニット10内の空間部132(後述)の温度を検出する。コントローラモジュール110は、内部温度センサが検出したカメラユニット10内の空間部132の温度が閾値より上昇した場合、温度異常を通知する機能を有する。
【0070】
コントローラモジュール110は、カメラモジュール100が生成したサーモグラフィデータをそのまま第2の端末装置40Bに無線送信する。また、コントローラモジュール110は、内部温度センサが検出した温度が閾値より上昇した場合、温度異常を第2の端末装置40Bに無線通知する。
【0071】
さらに、コントローラモジュール110は、カメラモジュール100のサーモグラフィデータに基づきCSV形式の温度データを生成し、第1の端末装置40Aに送信する。具体的には、コントローラモジュール110は、カメラモジュール100が検出した温度を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状に配置したCSV形式の温度データを生成する。例えば、カメラモジュール100が80x60ピクセルの解像度で、被写体の表面の温度を検出可能である場合を説明する。この場合、コントローラモジュール110は、CSV形式の2次元的なマトリクス状の80x60個のセルに、その位置に対応する被写体の温度を数値(例えば、5桁)で入力する。これにより、80x60個の検出点の位置がCSV形式の2次元的なマトリクスのセル位置で表現され、温度がその位置に紐づけられる。これにより、被写体の80x60個の検出点の温度を示す温度データを、小データ量の形式で生成することが出来る。コントローラモジュール110は、生成したCSV形式の温度データを、アンテナモジュール120を介して第1の端末装置40Aに無線送信する。また、コントローラモジュール110は、内部温度センサが検出した温度が閾値より上昇した場合、温度異常を第1の端末装置40Aに無線通知する。
【0072】
端末装置40は、CPU、ROM及びRAMを有する制御回路410と、通信インタフェース420と、表示装置430(ディスプレイ)とを有する。制御回路410のCPUは、ROMに記録された情報処理プログラムをRAMにロードして実行することにより、受信部411、表示制御部412及びモニタリング部413として動作する。
【0073】
端末装置40の表示制御部412は、受信部411がサーモグラフィデータを受信すると、サーモグラフィデータに基づきサーモグラフィを表示する。一方、表示制御部412は、受信部411がCSV形式の温度データを受信すると、CSV形式の温度データに基づきサーモグラフィを生成し表示する。具体的には以下の通りである。
【0074】
第2の端末装置40Bの受信部411は、通信インタフェース420を介して、カメラモジュール100から送信されたサーモグラフィデータを受信する。
【0075】
第2の端末装置40Bの表示制御部412は、カメラモジュール100から受信したサーモグラフィデータに基づきサーモグラフィを表示装置430に表示する。例えば、表示制御部412は、ウェブブラウザを利用してサーモグラフィを表示すればよい。
【0076】
第1の端末装置40Aの受信部411は、通信インタフェース420を介して、カメラモジュール100から送信されたCSV形式の温度データを受信する。
【0077】
第1の端末装置40Aの表示制御部412は、カメラモジュール100から受信したCSV形式の温度データに基づき表示情報を生成し表示装置430に表示する。具体的には、表示制御部412は、カメラモジュール100から受信したCSV形式の温度データに基づき、温度を表現する色彩要素を検出点の位置を表現する2次元的なマトリクス状(本例では、80x60)に配置したサーモグラフィを表示情報として生成し、表示装置430に表示する。本実施形態で「色彩要素」は、カラーグラデーション又はグレースケールを意味する。これにより、被写体の検出点の温度を示す温度データが小データ量のCSV形式でありがなら、視認性の高い細かなサーモグラフィで温度情報を表示することが出来る。さらに、表示制御部412は、カメラモジュール100から受信したCSV形式の温度データをCSV形式で表示、即ち、マトリクス状のセル形式で数値を表示してもよい。これにより、ユーザは各検出点の温度を数値で知ることが出来る。
【0078】
第1の端末装置40Aのモニタリング部413は、カメラモジュール100から受信した温度データに含まれる特定の検出点の温度をモニタリングする。例えば、モニタリング部413は、80x60個の全ての検出点の温度ではなく、特定の数個の検出点の温度をモニタリングする。特定の数個の検出点として、モニタすべき検出点、即ち、金型表面温度の変化が部品不良に関連し得る箇所を設定すればよい。例えば、モニタリング部413は、特定の数個の検出点について、温度が所定の閾値(成形品の品質が担保できる上限値及び/又は下限値)に到達したか、金型表面エリア温度の勾配(温度差)が所定の閾値(成形品の品質が担保できる上限値及び/又は下限値)に到達したか、等を判断して判断結果を表示したり、温度の平均値、最大値及び最低値を算出して算出結果を表示したりすればよい。
【0079】
第1の端末装置40Aのモニタリング部413は、被写体である可動側金型C1及び固定側金型C2の材質等に応じて放射率を設定する放射率設定機能を有してもよい。放射率は、物体からの熱放射のしやすさを表したものであり、同一物質でも表面が粗いと放射率が高くなる。これにより、可動側金型C1及び固定側金型C2の材質に応じて放射率しておけば、材料に応じて適切なモニタリングができる。これとともに、経年劣化による表面の粗さの変化に気づくことができ、表面の粗さの変化に応じて放射率の設定を変更することで、経年劣化がある場合でも適切なモニタリングができる。第1の端末装置40Aのモニタリング部413は、被写体である可動側金型C1及び固定側金型C2の金型表面温度T1、T2を熱電対等で実測した値に補正する実測定値補正設定を有してもよい。モニタリング部413は、複数の検出点毎に異なる閾値を設定してもよい。モニタリング部413は、複数の検出点毎に異なる放射率をそれぞれ設定し、複数の検出点毎にそれぞれ実測定値補正を行ってもよい。また、複数の検出点は独立した1点でもよいし、隣接する複数の検出点の集合が検出対象のエリアを構成してもよい。
【0080】
第1の端末装置40Aの表示制御部412は、モニタリング部413の判定結果や算出結果をさらに表示装置430に表示する。
【0081】
本実施形態によれば、コントローラモジュール110は、ネットワークNを介して接続された第1の端末装置40Aには、サーモグラフィをCSV形式の温度データに変換して送信する。第1の端末装置40Aは、CSV形式の温度データをサーモグラフィに変換して表示する。一方、コントローラモジュール110は、ネットワークNを介さずにアクセスポイント30を介して接続された第2の端末装置40Bには、サーモグラフィをそのまま送信する。これにより、ネットワークNを介した通信では小データ量のCSV形式の温度データを送信することでトラフィック増加を防ぐことができ、ネットワークNを介さない通信ではサーモグラフィをそのまま送信することでリアルタイムな表示を実現できる。
【0082】
なお、カメラユニット10のコントローラモジュール110は、第2の端末装置40Bに対しても、CSV形式の温度データを送ってもよい。これにより、第2の端末装置40Bのモニタリング部413も、カメラモジュール100から受信した温度データに含まれる特定の検出点の温度をモニタリングすることが出来る。第2の端末装置40Bのモニタリング部413も、放射率設定機能及び実測定値補正設定を有してもよい。
さらに、表示制御部412は、カメラモジュール100から受信したCSV形式の温度データをCSV形式で表示、即ち、マトリクス状のセル形式で数値を表示してもよい。これにより、作業者等のユーザは各検出点の温度を数値で知ることが出来る。
【0083】
典型的には、センサデバイスと外部装置(本実施形態のカメラユニット10と端末装置40に相当)とは、有線接続される。すると、工作機械等の可動式の機械の可動部の動き、機械内の部品の取り外し又は交換時に配線が部品に引っ掛かること、等によって、配線が断線することがある。その結果、センサデバイスと外部装置との通信接続が遮断する。これに対して、本実施形態によれば、可動式の機械に設置されたカメラユニット10と端末装置40との通信接続を無線とすることで、通信接続の遮断を防止することができる。
【0084】
3.表示画面の一例
【0085】
図3は、端末装置に表示される画面の一例を示す。
【0086】
端末装置40の表示制御部412は、可動側金型C1の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(可動側金型表面エリア温度)を示すマトリクス状のサーモグラフィ521を画面520に表示する。表示制御部412は、固定側金型C2の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(固定側金型表面エリア温度)を示すマトリクス状のサーモグラフィ522を画面520に表示する。要するに、表示制御部412は、同じサイクルで検出され同期された可動側金型表面温度T1及び固定側金型表面温度T2を、単一の画面520に表示する。
【0087】
端末装置40の表示制御部412は、モニタリング部413の判定結果や算出結果を表示装置430に表示する。例えば、表示制御部412は、各値が各閾値を超えた場合、閾値を超えた値(温度)の金型表面の位置が視覚的に解るように比較結果を表示する(色を変える等の強調表示によるアラーム)。
【0088】
表示制御部412は、可動側金型表面エリア温度の平均値、最大値及び最低値523と、固定側金型表面エリア温度の平均値、最大値及び最低値524とを画面520に表示する。例えば、可動側金型C1の動作の1サイクル毎に、第1のカメラユニット10Aは固定側金型表面温度T2を検出及び出力し、第2のカメラユニット10Bは可動側金型表面温度T1を検出及び出力する。表示制御部412は、1サイクル毎に受信する可動側金型表面エリア温度の平均値及び固定側金型表面エリア温度の平均値の時系列的変遷をグラフ525、526として表示してもよい。
【0089】
4.カメラユニットの構造
【0090】
図4は、カメラユニットを示す正面図である。図5は、カメラユニットを模式的に示す図4のA-A線断面図である。
【0091】
上述の様に、カメラユニット10は、レンズ101を有するカメラモジュール100と、コントローラモジュール110と、アンテナモジュール120とを有する。カメラユニット10は、さらに、ケース130を有する。
【0092】
ケース130は、外装部131と、外装部131に区画された内側の収容空間である空間部132と、プラグユニット140とを有する。外装部131にはアンテナモジュール120が設けられる。アンテナモジュール120はSMA変換ケーブル(不図示)を介して高出力タイプチップであるアンテナ用チップ121に接続される。空間部132は、コントローラモジュール110、アンテナ用チップ121及びカメラモジュール100等を収容する。外装部131の前面部133には、レンズ穴134が設けられる。外装部131の後面部136、即ち、前面部133に対してレンズ101の光軸方向(Y方向)に対向する部位には、プラグユニット140が設けられる。レンズ穴134及びプラグユニット140は、レンズ101の光軸方向(Y方向)に直交する少なくとも一方向(Z方向)に離間して設けられる。言い換えれば、レンズ穴134及びプラグユニット140は、レンズ101の光軸方向(Y方向)に離間して設けられるが、レンズ101の光軸方向(Y方向)に対向(対面)せずZ方向に離間した(ずれた)位置に距離を空けて配置される。
【0093】
レンズ穴134は、単なる貫通孔であり、レンズ穴134をカバー可能なシャッタや透明カバー等は設けられていない。レンズ穴134は、レンズ101の表面に対向しレンズ101を外部環境に向けて露出する。レンズ101の表面やカメラモジュール100の表面は、レンズ穴134を区画する外装部131に接触しているのではなく、外装部131に対してレンズ101の光軸方向(Y方向)に空間を空けて配置される。これにより、レンズ穴134は、空間部132と連通するとともに外部環境と連通する。レンズ穴134と空間部132との間は吐出流路137である。即ち、吐出流路137は、レンズ穴134とレンズ101の表面との間に位置し、空間部132及びレンズ穴134と連通する空間領域である。レンズ穴134の直径はレンズ101の直径以上であり、典型的には、レンズ穴134の中心はレンズ101の中心と一致又は略一致する。この配置により、レンズ101の表面とレンズ穴134とが吐出流路137を介して空間を空けて配置される(即ち、レンズ101が奥まって配置される)にも拘らず、レンズ101の視野角を担保することが出来る。
【0094】
プラグユニット140は、上述の様に、ケース130の外装部131の後面部136に設けられる。プラグユニット140は、ブラインドプラグ141と、外装部131に設置されたスピードコントローラ142とを含む。プラグユニット140は、空間部132と連通する。プラグユニット140は空間部132と連通し、空間部132は吐出流路137を介してレンズ穴134と連通する。プラグユニット140は、気体導入流路を構成し、空間部132を効率的に陽圧にする。
【0095】
上述の様に、コントローラモジュール110、アンテナ用チップ121及びカメラモジュール100等は、空間部132に収容される。コントローラモジュール110、アンテナ用チップ121及びカメラモジュール100は、発熱する発熱部品である。これら発熱部品は全て、プラグユニット140から吐出流路137に至る気体の流路である内部流路138(即ち、吐出流路137を除く空間部132の大部分の空間領域)に配置される。
【0096】
図6は、カメラユニットにおける気体の流れを模式的に示す。
【0097】
カメラユニット10における気体の流れを説明する。気体は、典型的には空気である。気体導入流路を構成するプラグユニット140は、ブラインドプラグ141からスピードコントローラ142を経て空間部132に気体を導入して(矢印A)、空間部132を陽圧にする。プラグユニット140は、空間部132を陽圧にすることで、気体を空間部132の中に停滞させずに、内部流路138を経て(矢印B)、吐出流路137を介してレンズ101の表面を通過させ(矢印C)、レンズ穴134からパージする(矢印D)。上述の様に、プラグユニット140及びレンズ穴134は、Z方向に離間して設けられる。この配置により、気体が内部流路138をZ方向に万遍無く流通しやすくなる。このため、気体がプラグユニット140からレンズ穴134に向かってZ方向に内部流路138を通過することで、内部流路138に配置された発熱部品(コントローラモジュール110、アンテナ用チップ121及びカメラモジュール100)が冷却される。
【0098】
カメラモジュール100自体が発熱して、また、周辺の発熱部品(コントローラモジュール110及びアンテナ用チップ121)が発熱してカメラモジュール100の温度が上昇すると、カメラモジュール100の検出性能が落ちるおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、発熱部品(コントローラモジュール110、アンテナ用チップ121及びカメラモジュール100)が配置された内部流路138を気体が流通し、その気体はレンズ穴134から排出されるので、発熱部品の温度の上昇を抑制することが出来る。これにより、カメラモジュール100の温度の上昇を抑制することが出来、カメラモジュール100の検出性能が落ちるのを防止することが出来る。
【0099】
吐出流路137の気体の流れ方向(X方向又はZ方向)に直交する方向(Y方向)の幅は、内部流路138の気体の流れ方向(Z方向)に直交する方向(Y方向)の幅より小さい。言い換えれば、吐出流路137の流路幅は、内部流路138の流路幅より狭い。このため、内部流路138を流れてきた気体は、狭い吐出流路137で相対的に速く流れることになり、相対的に速い速度でレンズ101の表面を通過してレンズ穴134から環境に向けて噴出する。これにより、気体がレンズ101の表面を洗浄するとともに、環境からレンズ穴134の内側に向けて異物(ガスやスプレー、エアブロー、粉塵、溶融材料の飛び散りなど)が侵入するのを防ぐことが出来る。
【0100】
以上の様に、本実施形態によれば、気体の流通により、カメラモジュール100の温度の上昇を抑制してカメラモジュール100の検出性能が落ちるのを防止し、同時に、カメラモジュール100のレンズ101の表面をクリーンに保つことで、ガスや粉塵のある悪環境でのモニタリングが可能となる。
【0101】
5.変形例
【0102】
カメラユニット10は、サーモカメラモジュールであるカメラモジュール100に加えて、イメージングモジュール(不図示)をさらに有してもよい。イメージングモジュールは、空間部132に収容され、レンズと、被写体を撮影して画像データを生成するイメージセンサとを有する。ケース130の外装部131の前面部133には、カメラモジュール100のレンズ101を露出するレンズ穴134に加えて、イメージングモジュールのレンズを露出する別のレンズ穴がさらに設けられる。吐出流路137は、レンズ穴134とレンズ101の表面との間に位置して空間部132及びレンズ穴134と連通するとともに、別のレンズ穴とイメージングモジュールのレンズの表面との間に位置して空間部132及び別のレンズ穴と連通する。つまり、内部流路138を流れてきた気体は、カメラモジュール100のレンズ及びイメージングモジュールのレンズの表面を通過して、レンズ穴134及び別のレンズ穴から噴出する。これにより、カメラモジュール100のレンズ101とともにイメージングモジュールのレンズもクリーンに保つことが出来る。
【0103】
カメラユニット10のコントローラモジュール110は、イメージングモジュールが生成した画像データを、CSV形式の温度データ又はサーモグラフィデータとともにアンテナモジュール120を介して端末装置40に無線送信する。
【0104】
端末装置40の受信部411は、通信インタフェース420を介して、カメラモジュール100から送信された画像データを、温度データとともに受信する。端末装置40の表示制御部412は、画像データが2次元的なマトリクスと位置的に一致する様に、画像データをサーモグラフィに重畳して表示装置430に表示する。これにより、被写体である金型のどの部位の温度がどの程度なのか、視覚的に容易に理解しやすくなる。
【0105】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
1 モニタリングシステム
10 カメラユニット
100 カメラモジュール
101 レンズ
102 温度センサ
10A 第1のカメラユニット
10B 第2のカメラユニット
110 コントローラモジュール
120 アンテナモジュール
121 アンテナ用チップ
130 ケース
131 外装部
132 空間部
133 前面部
134 レンズ穴
136 後面部
137 吐出流路
138 内部流路
140 プラグユニット
141 ブラインドプラグ
142 スピードコントローラ
30 アクセスポイント
40A 第1の端末装置
40B 第2の端末装置
410 制御回路
411 受信部
412 表示制御部
413 モニタリング部
420 通信インタフェース
430 表示装置
50 セットアップ用端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6