(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113276
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】リンク機構
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B25J19/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015505
(22)【出願日】2022-02-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「ミリ波帯におけるロボット等のワイヤフリー化に向けた無線制御技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 和司
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和伸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義規
(72)【発明者】
【氏名】大平 昌敬
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS05
3C707BS10
3C707BS11
3C707BS27
3C707CY12
3C707JS07
3C707KS21
3C707KV01
3C707KX10
(57)【要約】
【課題】リンクの筐体の強度を低下させることなく、リンクに設けられたアンテナによって制御用の電波を受信できるようにするリンク機構を提供する。
【解決手段】リンク機構1は、駆動手段によって駆動される関節によって連結された複数のリンク11~14と、リンク11~13に設けられたリンク側アンテナ21~23とを備える。リンク側アンテナ21~23の設けられているリンク11~13は、リンク側アンテナ21~23を用いた無線通信で用いられる周波数帯を透過する周波数選択板の筐体31~33を有しており、筐体31~33の内部にリンク側アンテナ21~23がそれぞれ配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段によって駆動される関節によって連結された複数のリンクと、
前記複数のリンクの少なくともいずれかに設けられた1以上のリンク側アンテナと、を備え、
前記複数のリンクのうち、前記リンク側アンテナの設けられているリンクは、前記リンク側アンテナを用いた無線通信で用いられる周波数帯を透過する周波数選択板の筐体を有しており、当該筐体内に前記リンク側アンテナが配置されている、リンク機構。
【請求項2】
前記周波数選択板において、複数の共振素子が4回対称または6回対称となるように周期的に配置されている、請求項1記載のリンク機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信のための1以上のリンク側アンテナを有するリンク機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアーム等のリンク機構において、断線事故を防止する観点などから、配線を無線化することが望まれている。そのため、例えば、リンク機構の基端側が接続されたベースと、リンクとの間で無線通信を行うことによって、リンク機構内での配線を低減することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リンクに配置されたアンテナで制御信号を受信し、その受信した制御信号に基づいて関節等の制御を行う場合には、リンクに配置されたアンテナが電波を受信することができるようにするため、リンクの金属の筐体においてアンテナの箇所に孔をあけるか、または、樹脂の筐体にする必要があった。アンテナの箇所に孔をあける場合でも、樹脂の筐体にする場合でも、リンクの強度が低下すると共に、雑音もアンテナに到達するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、リンクの筐体の強度を低下させることなく、リンクに設けられたアンテナによって制御用の電波を選択的に受信することができるリンク機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるリンク機構は、駆動手段によって駆動される関節によって連結された複数のリンクと、複数のリンクの少なくともいずれかに設けられた1以上のリンク側アンテナと、を備え、複数のリンクのうち、リンク側アンテナの設けられているリンクは、リンク側アンテナを用いた無線通信で用いられる周波数帯を透過する周波数選択板の筐体を有しており、筐体内にリンク側アンテナが配置されている、ものである。
【0007】
このような構成により、リンク側アンテナの設けられているリンクの筐体の強度を向上させることができる。周波数選択板は、通常、金属板を有しているからである。また、所望の周波数帯の電波のみが周波数選択板を透過するようにできるため、所望の周波数帯以外の周波数の雑音を低減することもできるようになる。
【0008】
また、本発明の一態様によるリンク機構では、周波数選択板において、複数の共振素子が4回対称または6回対称となるように周期的に配置されていてもよい。
【0009】
このような構成により、より多様な偏波の信号が周波数選択板を透過できるようになり、関節の角度が変化したとしても、リンク側アンテナにおいて所望の信号を適切に受信できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によるリンク機構によれば、リンク側アンテナの設けられているリンクの筐体の強度を向上させることができると共に、雑音を低減することもできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態によるリンク機構制御装置の構成を示す模式図
【
図2】同実施の形態における周波数選択板について説明するための模式図
【
図3A】同実施の形態における周波数選択板を示す平面図
【
図3B】同実施の形態における周波数選択板における金属板を示す平面図
【
図5A】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5B】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5C】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5D】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5E】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5F】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5G】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5H】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5I】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5J】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図5K】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図6A】同実施の形態における周波数選択板を示す平面図
【
図6B】同実施の形態における周波数選択板における金属板を示す平面図
【
図8A】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8B】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8C】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8D】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8E】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8F】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8G】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8H】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8I】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【
図8J】同実施の形態における周波数選択板のSパラメータの周波数特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるリンク機構制御装置及びリンク機構について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるリンク機構は、基端側アンテナとの間で電波を送受信するためのリンク側アンテナの設けられたリンクが、両アンテナ間の無線通信で用いられる周波数帯を透過する周波数選択板の筐体を有しており、リンク側アンテナが、その筐体内に配置されているものである。
【0013】
図1は、本実施の形態によるリンク機構制御装置100の構成を示す模式図である。本実施の形態によるリンク機構制御装置100は、リンク機構1と、基端側アンテナ3と、アクセスポイント4と、制御部5とを備える。リンク機構1は、駆動手段によって駆動される関節41~43によって連結された複数のリンク11~14と、リンク11~13内にそれぞれ配置されたリンク側アンテナ21~23とを備える。複数のリンク11~14のうち、基端側のリンク11は、ベース2に固定されていてもよく、または、ベース2に対して旋回可能に接続されていてもよい。また、リンク11とリンク12、リンク12とリンク13、リンク13とリンク14はそれぞれ、関節41~43によって回動可能に連結されている。
【0014】
なお、本実施の形態では、リンク機構1が、4個のリンク11~14を有する場合について主に説明するが、リンク機構1が有するリンクの個数は問わない。例えば、リンク機構1は、2個もしくは3個のリンクを有してもよく、または、5個以上のリンクを有してもよい。複数のリンクは、通常、直列に連結される。また、本実施の形態では、リンク機構1の最先端に存在するハンド部(エンドエフェクタ)も、一つのリンクであるとして説明する。各リンク12~14に対する電力の供給は、例えば、配線を用いて行われてもよく、または、関節部分での無線給電によって行われてもよい。後者の場合には、例えば、上記特許文献1に記載されている関節部分における無線給電が行われてもよい。配線を低減する観点からは、各リンク12~14に対する電力の供給が、関節部分における無線給電によって行われることが好適である。ある関節における無線給電は、例えば、その関節における第1のリンク側に設けられた非接触電力伝送用の送電コイルと、その関節における第2のリンク側に設けられた非接触電力伝送用の受電コイルとを用いて行われてもよい。なお、第1及び第2のリンクは、その関節において接続されており、第1のリンクが基端側であり、第2のリンクが先端側である。また、受電コイルは、送電コイルから非接触で送電された電力を受電する。なお、リンク11については、例えば、ベース2に固定されている場合には、配線を用いて電力が供給され、ベース2に対して旋回可能に接続されている場合には、無線給電によって電力が供給されてもよい。
【0015】
本実施の形態では、リンク11~13にそれぞれリンク側アンテナ21~23が設けられている場合について説明するが、そうでなくてもよい。例えば、リンク11がベース2に固定されている場合には、リンク11にはリンク側アンテナ21が設けられていなくてもよい。また、リンク14においても制御信号に基づいた制御が行われる場合には、リンク14にもリンク側アンテナが設けられていてもよい。また、例えば、制御信号の送受信が不要であるリンクや関節を介した配線の設けられているリンクについては、リンク側アンテナが設けられていなくてもよい。また、例えば、基端側の関節の回転に応じて、先端側の関節を回転させる回転伝達機構のみを有するリンクが存在してもよい。この場合には、回転伝達機構のみを有するリンクは、信号を送受信する必要がないため、リンク側アンテナが備えられていなくてもよい。なお、回転伝達機構は、例えば、プーリとベルト、またはギヤなどによって構成されてもよい。このように、リンク機構1は、例えば、1個のリンク側アンテナを有してもよく、または、2個以上のリンク側アンテナを有してもよい。リンク機構1が2個以上のリンク側アンテナを有する場合には、2個以上のリンク側アンテナは、通常、それぞれ異なるリンクに設けられることが好適である。
【0016】
リンク11~14は、それぞれ筐体31~34を有している。なお、複数のリンク11~14のうち、リンク側アンテナ21~23の設けられているリンク11~13については、リンク側アンテナ21~23を用いた無線通信で用いられる周波数帯を透過する周波数選択板(FSS:Frequency Selective Surface)の筐体31~33を有しているものとする。そして、各リンク11~13においては、筐体31~33内にリンク側アンテナ21~23がそれぞれ配置されているものとする。なお、筐体31~33は、例えば、金属や炭素繊維で構成されたフレームに周波数選択板を取り付けることによって構成されてもよく、周波数選択板を筐体の形状に変形させることによって構成されてもよい。リンク11~13が、周波数選択板の筐体31~33を有しているとは、例えば、筐体31~33の全体が周波数選択板によって構成されていることであってもよく、または、筐体31~33のうち、基端側アンテナ3とリンク側アンテナ21~23との間の無線通信で用いられる電波が通過する箇所が少なくとも周波数選択板によって構成されていることであってもよい。
【0017】
図2で示されるように、周波数選択板8は、ある周波数f1は透過するが、他の周波数f2は透過させない板状の部材である。例えば、基端側アンテナ3とリンク側アンテナ21~23との間の無線通信において、60GHz帯の信号が送受信される場合には、周波数選択板8は、60GHz帯の信号を透過させ、その他の周波数の信号を減衰させるバンドパスフィルタとして機能してもよい。本実施の形態による周波数選択板8は、特定の周波数帯の無線信号のみを通過させるものであるため、通常、複数の共振素子が周期的に配置されているホール型の周波数選択板である。複数の共振素子は、例えば、同一形状であってもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、隣接する共振素子において、ホールの大きさが異なっていてもよい。この場合であっても、同一形状の複数の共振素子が周期的に配置されていることが好適である。なお、周波数選択板8の具体例については後述する。
【0018】
なお、内部にリンク側アンテナ21~23が配置されていないリンク14の筐体34は、例えば、周波数選択板によって構成されてもよく、または任意の他の材料によって構成されてもよい。後者の場合に、強度を向上させる観点からは、筐体34は、例えば、金属によって構成されてもよい。
【0019】
本実施の形態では、リンク機構1がロボットアームである場合について主に説明するが、リンク機構1は、ロボットアーム以外であってもよい。ロボットアーム以外のリンク機構1としては、例えば、4足歩行ロボットの脚、ヒューマノイドロボットの腕や脚、クレーンなどのリンク機構などを挙げることができる。
【0020】
各リンク11~14は、例えば、基端側または先端側の関節を駆動する駆動手段や、駆動手段の回転軸の変位を取得するロータリエンコーダなどのセンサ、制御信号に基づいて駆動手段を駆動制御する制御回路、リンク側アンテナ21~23を介して制御部5との通信を行う通信手段などを有していてもよい。駆動手段やセンサ、制御回路、通信手段などは、例えば、リンク側アンテナの設けられたリンクに備えられていてもよい。なお、制御信号等の送受信以外のリンク機構1に関する構成は、従来のロボットアーム等のリンク機構と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0021】
基端側アンテナ3は、リンク機構1の各関節41~43が任意の角度である状態において、リンク側アンテナ21~23のそれぞれと無線通信できるように、リンク機構1の基端側の位置に設けられている。なお、
図1では、基端側アンテナ3がベース2上に設けられている場合について示しているが、そうでなくてもよい。ベース2以外のリンク機構1の基端側の位置に、基端側アンテナ3が設けられていてもよい。ただし、基端側アンテナ3は、リンク機構1の基端の周囲に設けられていることが好適である。基端側アンテナ3の個数は問わない。基端側アンテナ3は、例えば、1個であってもよく、または、2個以上であってもよい。
【0022】
アクセスポイント4は、基端側アンテナ3から複数のリンク側アンテナ21~23のそれぞれに制御信号を無線で送信する。また、アクセスポイント4は、複数のリンク側アンテナ21~23から基端側アンテナ3に無線で送信された信号を、基端側アンテナ3を介して受信してもよい。アクセスポイント4は、例えば、無線LANの基地局に相当するものであると考えてもよい。したがって、アクセスポイント4は、リンク11~13に設けられた通信手段との無線通信を行うものであってもよい。
【0023】
基端側アンテナ3とリンク側アンテナ21~23との間の無線通信で用いられる電波の波長は特に限定されないが、例えば、10mm以下であってもよい。すなわち、制御信号は、例えば、10mm以下の波長の電波を用いて基端側アンテナ3からリンク側アンテナ21~23に送信されてもよく、リンク11~13から送信される信号は、例えば、10mm以下の波長の電波を用いてリンク側アンテナ21~23から基端側アンテナ3に送信されてもよい。その電波は、例えば、ミリ波であってもよく、サブミリ波であってもよく、テラヘルツ波であってもよく、その他の10mm以下の波長の電波であってもよい。本実施の形態では、制御信号等がミリ波によって送信される場合について主に説明する。
【0024】
無線LANなどで使用される2.45GHzや5GHzなどのように、波長の長い電波を用いた無線通信では、幅広い周波数帯域を確保することが難しくなる。リンク機構1には、通常、複数の駆動手段や複数のセンサが設けられており、それらがそれぞれ通信を行う必要があるため、広い周波数帯域が求められる。そのためには、より波長の短いミリ波や、サブミリ波、テラヘルツ波によって無線通信を行うことが好適である。
【0025】
一方、ミリ波などの波長の短い電波を用いた無線通信は、送受信アンテナ間での見通しが確保できない場合に、伝達する電波が大きく減衰し、通信が成立しないことがある。そのため、ミリ波などを用いた無線通信が行われる場合には、基端側アンテナ3とリンク側アンテナ21~23とが、周波数選択板8を無視した際に、見通し内通信となるように、すなわち両アンテナ間に障害物のない状態で通信できるように配置されることが好適である。
【0026】
制御部5は、アクセスポイント4による制御信号の送信を制御する。制御部5は、アクセスポイント4に、各リンク11~13に対応する制御信号をそれぞれ送信させてもよい。制御部5は、制御信号に基づいて、リンク機構1における各関節41~43を駆動させることになる。したがって、制御部5は、制御信号によってリンク機構1の動作を制御することになる。なお、制御部5は、例えば、その送信の制御を、リンク機構1から送信される、センサによるセンシング結果(例えば、回転軸の変位)を用いたフィードバック制御によって行ってもよい。この場合には、制御部5は、各リンク11~13にから送信されたセンシング結果を、アクセスポイント4を介して受信し、それを用いて、アクセスポイント4を介した制御信号の送信を行ってもよい。なお、制御信号の伝達経路が有線から無線になった以外は、制御部5による制御の内容は従来のリンク機構の制御と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0027】
リンク側アンテナ21~23は、それぞれリンク11~13に設けられた通信手段と接続されており、リンク側アンテナ21~23で受信された信号は、その通信手段に渡されて、各リンク11~13における各関節41~43の駆動等の制御等に用いられることになる。各リンク11~13が有する制御回路は、センサによって取得されたセンシング結果を、通信手段やリンク側アンテナ21~23を介して、基端側アンテナ3に無線送信してもよい。また、各リンク11~13から送信される信号は、その通信手段及び各リンク側アンテナ21~23を介して送信され、基端側アンテナ3で受信される。基端側アンテナ3で受信された信号は、アクセスポイント4を介して制御部5に渡され、その信号に応じた制御等が行われることになる。本実施の形態では、基端側アンテナ3からリンク側アンテナ21~23への信号の送信と、逆方向の信号の送信とがそれぞれ行われる場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。基端側アンテナ3からリンク側アンテナ21~23への信号の送信のみが行われてもよい。この場合には、例えば、基端側アンテナ3から各リンク側アンテナ21~23に、各関節41~43の回転軸の変位に関する指示が送信され、その指示に応じて、各リンク11~13において、駆動手段に関するフィードバック制御が行われてもよい。
【0028】
次に、周波数選択板の具体例について説明する。ここでは、4回対称である周波数選択板と、2回対称である周波数選択板とについて説明する。
【0029】
[4回対称の周波数選択板]
図3Aは、同一形状のホールをそれぞれ有する複数の共振素子が周期的に配置されている周波数選択板8の一例を示す図である。
図4は、
図3AのIV-IV線断面図である。
図4で示されるように、周波数選択板8は、周期的に配置された複数のホール51aを有する金属板51と、金属板51の両面にそれぞれ配置された一対の誘電体板52,53と、一対の誘電体板52,53の外面側、すなわち金属板51と反対側にそれぞれ設けられ、ホール51aに対応する位置に孔54a,55aを有する一対の金属箔54,55とを有していてもよい。周波数選択板8において、各共振素子は、ホール51aと、そのホール51aの開口部に誘電体板52,53を介してそれぞれ配置された、孔54a,55aを有する金属箔54,55とによって構成されている。
【0030】
図3Bは、金属板51を示す平面図である。
図3B、
図4で示されるように、金属板51の貫通孔である各ホール51aは、円柱形状であり、その中心軸が金属板51の法線方向に延びている。なお、
図3A、
図3Bは、周波数選択板8における一部の共振素子及びホール51aを示すものであり、x軸方向及びy軸方向に配置されている共振素子及びホール51aの個数は問わない。
【0031】
図5A~
図5Kは、周波数選択板8に関するSパラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。なお、そのシミュレーションでは、金属板51が0.5mm厚のアルミ板であり、誘電体板52,53の厚さが0.254mm、比誘電率ε
rが2.19であるとした。また、金属板51において、直径2.0mmのホール51aがx軸方向及びy軸方向において2.3mmごとに無限に配置されているものとした。また、金属箔54,55は銅箔であり、孔54a,55aは外直径が1.8mm、内直径が1.4mmである円環形状であり、円環形状の孔54a,55aの中心が、円柱形状のホール51aの中心軸上に位置しているものとした。
【0032】
図5Aは、周波数選択板8の垂直方向からx軸方向に偏波した電波を入射した際のSパラメータの広帯域特性を示すグラフである。なお、周波数選択板8において、59~62GHzの電波が透過するようにしたいため、
図5A~
図5Kの各グラフにおいて、59,62GHzに破線を引いている。
図5Aで示されるように、目的とする周波数帯において、S
11は十分低い値となっており、S
21は0dB付近になっている。Sパラメータのうち、S
11は反射の強度を示し、S
21は透過特性を示すため、
図5Aによって、周波数選択板8が、目的とする周波数帯のバンドパスフィルタとして機能していることが分かる。
【0033】
図5B、
図5Cは、周波数選択板8の垂直方向からx軸方向及びy軸方向に偏波した電波をそれぞれ入射した際のSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
図3A、
図4で示される周波数選択板8は、複数の共振素子が4回対称となるように周期的に配置されている。すなわち、周波数選択板8の平面方向に垂直な方向の軸であって、あるホール51aの代表点(例えば、中心や重心など)を通る軸に対して、複数の共振素子(複数のホール51aや複数の円環形状の孔54a,55a)が4回対称となるように配置されている。したがって、
図5B、
図5Cで示されるように、偏波がx軸方向であってもy軸方向であっても、Sパラメータの周波数特性は同様のものになる。
【0034】
図5D、
図5F、
図5H、
図5Jは、周波数選択板8に水平偏波(TE波)の電波が入射した際のSパラメータの周波数特性を示すグラフである。また、
図5E、
図5G、
図5I、
図5Kは、周波数選択板8に垂直偏波(TM波)の電波が入射した際のSパラメータの周波数特性を示すグラフである。なお、
図5D、
図5Eでは、電波の入射角を10度としており、
図5F、
図5Gでは、電波の入射角を20度としており、
図5H、
図5Iでは、電波の入射角を30度としており、
図5J、
図5Kでは、電波の入射角を40度としている。このシミュレーションでは、電波の入射面がx軸方向となるようにした。
図5A~
図5Kのシミュレーション結果から分かるように、周波数選択板8では、電波の入射角、及び偏波の方向に関係なく、目的とする周波数帯において、S
21は0dBに近い値となっており、S
11はS
21と比較して十分低い値となっている。したがって、周波数選択板8は、電波の入射角や偏波の方向に関係なく、目的とする周波数帯のバンドパスフィルタとして機能していることが確認された。そのため、周波数選択板8を用いてリンク11~13の筐体31~33を構成することによって、基端側アンテナ3と、リンク側アンテナ21~23との間において、目的とする周波数帯(59~62GHz)の無線通信を実現できると共に、他の周波数帯のノイズの影響を低減できることが確認された。
【0035】
なお、ここでは、周波数選択板8のホール51aが円柱形状である場合について説明したが、ホール51aは、例えば、軸が金属板51の法線方向に延びている多角柱形状(例えば、正四角柱形状、正六角柱形状、正八角柱形状など)であってもよく、その他の形状であってもよい。この場合には、金属箔54,55の孔54a,55aも、ホール51aに応じた形状となってもよい。また、この場合であっても、周波数選択板8は、ホール51aが円柱形状であるときと同様に、4回対称となっていることが好適である。
【0036】
[2回対称の周波数選択板]
図6Aは、同一形状のホールをそれぞれ有する複数の共振素子が周期的に配置されている周波数選択板9の別の一例を示す図である。
図7は、
図6AのVII-VII線断面図である。
図7で示されるように、周波数選択板9は、周期的に配置された複数のホール61aを有する金属板61と、金属板61の両面にそれぞれ配置された一対の誘電体板62,63と、一対の誘電体板62,63の外面側、すなわち金属板61と反対側にそれぞれ設けられ、ホール61aに対応する位置に孔64a,65aを有する一対の金属箔64,65とを有していてもよい。周波数選択板9において、各共振素子は、ホール61aと、そのホール61aの開口部に誘電体板62,63を介してそれぞれ配置された、孔64a,65aを有する金属箔64,65とによって構成されている。
【0037】
図6Bは、金属板61を示す平面図である。
図6B、
図7で示されるように、金属板61の貫通孔である各ホール61aは、四角柱形状(直方体形状)である。その四角柱形状の4個の側面は、金属板61の法線方向に延びている。なお、
図6A、
図6Bは、周波数選択板9における一部の共振素子及びホール61aを示すものであり、x軸方向及びy軸方向に配置されている共振素子及びホール61aの個数は問わない。
【0038】
図8A~
図8Jは、周波数選択板9に関するSパラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。なお、そのシミュレーションでは、金属板61が0.5mm厚のアルミ板であり、誘電体板62,63の厚さが0.254mm、比誘電率ε
rが2.19であるとした。また、金属板61において、x軸方向の長さが1.0mm、y軸方向の長さが2.4mmであるホール61aが、x軸方向については2.1mmごとに無限に配置されており、y軸方向については2.6mmごとに無限に配置されているものとした。また、金属箔64,65は銅箔であり、孔64a,65aはx軸方向の長さが0.2mmであり、y軸方向の長さが2.1mmである矩形状であり、平面視において、矩形状の孔64a,65aの中心(重心)が、四角柱形状のホール61aの中心(重心)と一致しているものとした。
【0039】
図8A~
図8Jは、周波数選択板9に電波を入射した際のSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
図8A~
図8Jにおいても、59,62GHzに破線を引いている。
図8A、
図8Bは、周波数選択板9の垂直方向からx軸方向及びy軸方向に偏波した電波をそれぞれ入射した際のSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
図6A、
図7で示される周波数選択板9は、複数の共振素子が2回対称となるように周期的に配置されている。すなわち、周波数選択板9の平面方向に垂直な方向の軸であって、あるホール61aの代表点(例えば、中心や重心など)を通る軸に対して、複数の共振素子(複数のホール61a)が2回対称となるように配置されている。したがって、
図8A、
図8Bで示されるように、周波数選択板9は、x軸方向の偏波は透過するが、y軸方向の偏波は透過しないことになる。
【0040】
図8C、
図8E、
図8G、
図8Iは、周波数選択板9に水平偏波(TE波)の電波が入射した際のSパラメータの周波数特性を示すグラフである。また、
図8D、
図8F、
図8H、
図8Jは、周波数選択板9に垂直偏波(TM波)の電波が入射した際のSパラメータの周波数特性を示すグラフである。なお、
図8C、
図8Dでは、電波の入射角を10度としており、
図8E、
図8Fでは、電波の入射角を20度としており、
図8G、
図8Hでは、電波の入射角を30度としており、
図8I、
図8Jでは、電波の入射角を40度としている。このシミュレーションでは、電波の入射面がx軸方向となるようにした。
図8A~
図8Jのシミュレーション結果から分かるように、周波数選択板9では、電波の入射角に関係なく、目的とする周波数帯において、x軸方向に偏波している電波について、S
21は0dBに近い値となっており、S
11はS
21と比較して十分低い値となっているのに対して、y軸方向に偏波している電波について、S
11は0dBに近い値となっており、S
21はS
11と比較して十分低い値となっている。したがって、周波数選択板9は、x軸方向に偏波している電波については、電波の入射角に関係なく、目的とする周波数帯のバンドパスフィルタとして機能しているが、y軸方向に偏波している電波については、目的とする周波数帯を減衰させていることが確認された。そのため、周波数選択板9を用いてリンク11~13の筐体31~33を構成する際には、基端側アンテナ3と、リンク側アンテナ21~23との間において、x軸方向に偏波した電波を用いた無線通信が行われるように構成することが好適である。例えば、リンク機構1の基端側がベース2に対して旋回しない場合には、このような無線通信を実現することが可能である。
【0041】
なお、ここでは、周波数選択板9のホール61aが四角柱形状である場合について説明したが、ホール61aは、例えば、軸が金属板61の法線方向に延びている楕円柱形状であってもよく、その他の形状であってもよい。この場合であっても、周波数選択板9は、ホール61aが四角柱形状であるときと同様に、2回対称となっていてもよい。
【0042】
また、4回対称及び2回対称の周波数選択板の一例について説明したが、所望の周波数帯を透過させる周波数選択板としては、種々のものを用いることができる。例えば、4回対称や2回対称以外の回転対称性(例えば、6回対称性など)を有する周波数選択板が筐体31~33に用いられてもよい。複数の共振素子が6回対称性を有する周波数選択板は、例えば、円柱形状や正六角柱形状のホールが6回対称となるように配置された金属板を有するものであってもよい。また、
図4や
図7とは異なる層構造の周波数選択板が用いられてもよい。また、例えば、周波数選択板の強度を向上させたい場合には、周波数選択板における金属板を厚くしてもよい。
【0043】
次に、リンク機構制御装置100の動作について簡単に説明する。制御部5は、リンク機構1の各関節41~43を制御する際に、各関節41~43の駆動を制御するための制御信号を、アクセスポイント4に渡す。すると、アクセスポイント4は、それらの制御信号を、基端側アンテナ3を介して送信する。送信された制御信号は、筐体31~33の周波数選択板を透過してリンク側アンテナ21~23によって受信され、各リンク11~13の通信手段を介して制御回路に渡される。そして、制御回路は、その制御信号に応じて駆動手段を制御する。また、各リンク11~13の制御回路は、ロータリエンコーダなどのセンサによるセンシング結果を取得し、通信手段、リンク側アンテナ21~23を介して送信する。それらのセンシング結果は、筐体31~33の周波数選択板を透過して基端側アンテナ3で受信され、アクセスポイント4を介して制御部5に渡される。制御部5は、受け取ったセンシング結果を用いて、新たな制御信号を生成して送信する。このようにして、制御部5によってリンク機構1の動作が制御されることになる。
【0044】
以上のように、本実施の形態によるリンク機構1によれば、リンク11~13において、リンク側アンテナ21~23を筐体31~33の内部に配置することによって、リンク側アンテナ21~23が筐体31~33によって保護されるようにすることができる。筐体31~33は、金属板を有する周波数選択板を用いて構成されているため、リンク側のアンテナが樹脂製のレドーム内に存在する場合よりも、リンク側アンテナ21~23の安全性を高めることができる。また、その筐体31~33を、リンク側アンテナ21~23を用いた無線通信で用いられる周波数帯を透過する周波数選択板で構成することによって、筐体31~33による電波の遮蔽の影響を低減することができ、基端側アンテナ3とリンク側アンテナ21~23との間で適切な無線通信を実現することができるようになる。また、金属板を有する周波数選択板によって筐体31~33を構成することにより、筐体31~33を樹脂で構成した場合と比較して、リンク11~13の強度を向上させることができる。また、ホール型の周波数選択板は、所望の周波数帯のみを透過させるバンドパスフィルタとして機能するため、RF基板などからのノイズを低減できるという効果も得られる。
【0045】
なお、リンクにおいて、アンテナのみを筐体の外側に配置することも考えられるが、ミリ波などの波長の短い電波を送受信する場合には、通信手段とアンテナとを繋ぐケーブルにおける損失が大きくなり、ケーブルのコストも高くなる。さらに、アンテナと通信手段とが一体になった汎用品が存在するため、そのような汎用品を用いてリンク機構を構成したいという要望もある。このように、アンテナのみを筐体外に配置することは困難であるため、本実施の形態によるリンク機構1のように、リンク側アンテナ21~23を周波数選択板の筐体31~33内に配置することが好適となる。
【0046】
また、リンク機構1が、複数のリンク11~14の少なくともいずれかに設けられた1以上のリンク側アンテナを有することによって、リンク機構1の少なくとも一部の関節において、関節を介した配線を減らすことができ、リンク機構1の全体として、配線の低減を実現することができるというメリットがある。
【0047】
また、例えば、リンク機構1の関節において無線給電も行うことによって、関節部分におけるすべての配線がなくなった場合には、可動範囲が限定されないことになり、関節において一方向に任意の回数だけ回転することも可能になる。また、配線が少なくなることに応じて、リンク機構1を軽量化することができ、少ないトルクで各関節を回転させることができるようになり、省エネルギーにも寄与することになる。
【0048】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1 リンク機構
8、9 周波数選択板
11、12、13、14 リンク
21、22、23 リンク側アンテナ
31、32、33、34 筐体
100 リンク機構制御装置