(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113277
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】監視支援システム
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20230808BHJP
F02B 39/16 20060101ALI20230808BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20230808BHJP
B63B 79/30 20200101ALI20230808BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D45/00 369
F02D45/00 368S
F02B39/16 F
B63B49/00 Z
B63B79/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015510
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】523085083
【氏名又は名称】日立造船マリンエンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】小林 達也
【テーマコード(参考)】
3G005
3G384
【Fターム(参考)】
3G005DA02
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA23
3G005FA57
3G005JA16
3G005JA17
3G384AA03
3G384AA26
3G384BA08
3G384BA47
3G384CA25
3G384DA33
3G384DA42
3G384DA64
3G384ED07
3G384FA18Z
3G384FA45Z
(57)【要約】
【課題】過給機付ディーゼルエンジンの燃料消費率を精度良く評価する。
【解決手段】監視支援システム6の記憶部は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時において第1センサ群にて取得される所定の第1パラメータ群の各パラメータの測定値を所定の標準状態に換算した基準測定値と過給機効率との関係を示す第1相関情報を記憶する。補正部は、船舶100の航行時において、第1センサ群にて取得される第1パラメータ群の測定値を標準状態に換算して第1補正測定値を取得する。演算部は、第1パラメータ群の第1補正測定値と第1相関情報とに基づいて、過給機効率の変化量を求める。これにより、ディーゼルエンジン1の過給機効率を、海象条件等の影響を排除して精度良く評価することができる。また、当該過給機効率を用いて燃料消費率を算出することにより、ディーゼルエンジン1の燃料消費率を精度良く評価することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載される過給機付ディーゼルエンジンの監視支援システムであって、
過給機付ディーゼルエンジンの陸上試験時において、前記過給機付ディーゼルエンジンに設けられた第1センサ群にて取得される所定の第1パラメータ群の各パラメータの測定値を所定の標準状態に換算した基準測定値と過給機効率との関係を示す第1相関情報を記憶する記憶部と、
前記過給機付ディーゼルエンジンを搭載した船舶の航行時において、第1センサ群にて取得される前記第1パラメータ群の測定値を前記標準状態に換算して第1補正測定値を取得する補正部と、
前記第1パラメータ群の前記第1補正測定値と前記第1相関情報とに基づいて、過給機効率の変化量を求める演算部と、
を備え、
前記第1パラメータ群は、前記過給機付ディーゼルエンジンの過給機入口排気温度および過給機出口排気温度を含むことを特徴とする監視支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視支援システムであって、
継続的に求められる前記過給機効率の変化量の時系列を表示部に表示させる時系列表示部をさらに備えることを特徴とする監視支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の監視支援システムであって、
前記過給機効率の変化量が所定の閾値以上である場合に警報が発せられることを特徴とする監視支援システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の監視支援システムであって、
前記記憶部は、前記過給機付ディーゼルエンジンの陸上試験時において、前記過給機付ディーゼルエンジンに設けられた第2センサ群にて取得される所定の第2パラメータ群の各パラメータの測定値を前記標準状態に換算した基準測定値と燃料消費率との関係を示す第2相関情報を記憶し、
前記補正部は、前記過給機付ディーゼルエンジンを搭載した船舶の航行時において、第2センサ群にて取得される前記第2パラメータ群の測定値を前記標準状態に換算して第2補正測定値を取得し、
前記演算部は、前記過給機効率、前記第2パラメータ群の前記第2補正測定値および前記第2相関情報に基づいて前記燃料消費率の変化率を求め、
前記第2パラメータ群は、前記過給機付ディーゼルエンジンの燃焼最大圧力および供給空気温度を含むことを特徴とする監視支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の監視支援システムであって、
継続的に求められる前記燃料消費率の変化率の時系列を表示部に表示させる時系列表示部をさらに備えることを特徴とする監視支援システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の監視支援システムであって、
前記燃料消費率の変化率が所定の閾値以上である場合に警報が発せられることを特徴とする監視支援システム。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1つに記載の監視支援システムであって、
前記過給機効率の変化量および前記第2パラメータ群から、前記燃料消費率の変化率の増大に対する寄与率が高い1つ以上のパラメータを抽出して表示部に表示させる変化要因表示部をさらに備えることを特徴とする監視支援システム。
【請求項8】
船舶に搭載される過給機付ディーゼルエンジンの監視支援システムであって、
過給機付ディーゼルエンジンの陸上試験時において、前記過給機付ディーゼルエンジンに設けられたセンサにて取得される供給空気圧力の測定値を所定の標準状態に換算した基準供給空気圧力を記憶する記憶部と、
前記過給機付ディーゼルエンジンを搭載した船舶の航行時において、前記センサにて取得される供給空気圧力の測定値を前記標準状態に換算して補正供給空気圧力を取得する補正部と、
前記基準供給空気圧力に対する前記補正供給空気圧力の割合に基づいて過給機のサージング安定性を示すサージング指標を取得する演算部と、
を備えることを特徴とする監視支援システム。
【請求項9】
請求項8に記載の監視支援システムであって、
継続的に求められる前記サージング指標の時系列を表示部に表示させる時系列表示部をさらに備えることを特徴とする監視支援システム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の監視支援システムであって、
前記サージング指標が所定の閾値以上である場合に警報が発せられることを特徴とする監視支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される過給機付ディーゼルエンジンの監視支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の推進用主機について、当該主機を構成する各種装置の汚損や経年劣化等により、燃料消費量が増大することが知られている。したがって、適切な時期に主機のメンテナンス等を行うために、主機の燃料消費量が、工場出荷時等の初期状態からどの程度増加しているかを正確に把握することが望まれる。
【0003】
特許文献1では、船舶の航行中に燃料消費量検出器で検出された燃料消費量を、初期の推進軸出力と燃料消費量との関係を定めた基準燃料曲線と対比可能な補正燃料消費量に換算し、当該補正燃料消費量と基準燃料曲線上の燃料消費量とを比較して燃料消費量増加率を算出する船舶性能解析システムが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、船速検出器で検出された船速、燃料消費量検出器で検出された燃料消費量、および、線速と燃料消費量との関係を示す基準性能曲線を用いて、性能悪化率を算出し、航路と性能悪化率との相関関係、および、運航時期と性能悪化率との相関関係を学習して、性能悪化率の将来的な変化を予測する船舶性能解析システムが提案されている。
【0005】
一方、特許文献3では、船舶に搭載されたディーゼル主機関の性能データを、船舶の通信手段からインマルサットを利用したネットワークを介してディーゼル主機関メーカに送信し、ディーゼル主機関メーカにおいて当該性能データに基づいて性能解析を行い、性能解析結果を船舶および運航管理会社へと送信するディーゼル主機関診断システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6898795号公報
【特許文献2】特許第6970545号公報
【特許文献3】特開2002-221076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、船舶の航行中に燃料消費量検出器で検出される燃料消費量は、上述のように、主機を構成する各種装置の汚損等による影響だけでなく、航行中の海域の海象条件等による影響も受けて変化する。したがって、特許文献1および特許文献2の船舶性能解析システムでは、燃料消費量検出器により検出される燃料消費量が増大した場合、当該燃料消費量の増大が、主機のメンテナンスにより改善可能なものか否かを精度良く評価することはできない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、過給機付ディーゼルエンジンの燃料消費率および/または過給機の健全性を精度良く評価することを一の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、船舶に搭載される過給機付ディーゼルエンジンの監視支援システムであって、過給機付ディーゼルエンジンの陸上試験時において、前記過給機付ディーゼルエンジンに設けられた第1センサ群にて取得される所定の第1パラメータ群の各パラメータの測定値を所定の標準状態に換算した基準測定値と過給機効率との関係を示す第1相関情報を記憶する記憶部と、前記過給機付ディーゼルエンジンを搭載した船舶の航行時において、第1センサ群にて取得される前記第1パラメータ群の測定値を前記標準状態に換算して第1補正測定値を取得する補正部と、前記第1パラメータ群の前記第1補正測定値と前記第1相関情報とに基づいて、過給機効率の変化量を求める演算部とを備え、前記第1パラメータ群は、前記過給機付ディーゼルエンジンの過給機入口排気温度および過給機出口排気温度を含む。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の監視支援システムであって、継続的に求められる前記過給機効率の変化量の時系列を表示部に表示させる時系列表示部をさらに備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の監視支援システムであって、前記過給機効率の変化量が所定の閾値以上である場合に警報が発せられる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の監視支援システムであって、前記記憶部は、前記過給機付ディーゼルエンジンの陸上試験時において、前記過給機付ディーゼルエンジンに設けられた第2センサ群にて取得される所定の第2パラメータ群の各パラメータの測定値を前記標準状態に換算した基準測定値と燃料消費率との関係を示す第2相関情報を記憶し、前記補正部は、前記過給機付ディーゼルエンジンを搭載した船舶の航行時において、第2センサ群にて取得される前記第2パラメータ群の測定値を前記標準状態に換算して第2補正測定値を取得し、前記演算部は、前記過給機効率、前記第2パラメータ群の前記第2補正測定値および前記第2相関情報に基づいて前記燃料消費率の変化率を求め、前記第2パラメータ群は、前記過給機付ディーゼルエンジンの燃焼最大圧力および供給空気温度を含む。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の監視支援システムであって、継続的に求められる前記燃料消費率の変化率の時系列を表示部に表示させる時系列表示部をさらに備える。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の監視支援システムであって、前記燃料消費率の変化率が所定の閾値以上である場合に警報が発せられる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の監視支援システムであって、前記過給機効率の変化量および前記第2パラメータ群から、前記燃料消費率の変化率の増大に対する寄与率が高い1つ以上のパラメータを抽出して表示部に表示させる変化要因表示部をさらに備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、船舶に搭載される過給機付ディーゼルエンジンの監視支援システムであって、過給機付ディーゼルエンジンの陸上試験時において、前記過給機付ディーゼルエンジンに設けられたセンサにて取得される供給空気圧力の測定値を所定の標準状態に換算した基準供給空気圧力を記憶する記憶部と、前記過給機付ディーゼルエンジンを搭載した船舶の航行時において、前記センサにて取得される供給空気圧力の測定値を前記標準状態に換算して補正供給空気圧力を取得する補正部と、前記基準供給空気圧力に対する前記補正供給空気圧力の割合に基づいて過給機のサージング安定性を示すサージング指標を取得する演算部とを備える。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の監視支援システムであって、継続的に求められる前記サージング指標の時系列を表示部に表示させる時系列表示部をさらに備える。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の監視支援システムであって、前記サージング指標が所定の閾値以上である場合に警報が発せられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、過給機付ディーゼルエンジンの燃料消費率および/または過給機の健全性を精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一の実施の形態に係る監視支援システムの構成を示す図である。
【
図4】監視支援システムの機能を示すブロック図である。
【
図5】監視支援システムの機能を示すブロック図である。
【
図6】ディーゼルエンジンの監視支援の流れを示す図である。
【
図7】基準測定値と過給機効率との関係を示す図である。
【
図8】基準測定値と燃料消費率との関係を示す図である。
【
図9】過給機効率と燃料消費率との関係を示す図である。
【
図10】過給機効率の変化量の時系列を示す図である。
【
図11】燃料消費率の変化率の時系列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る監視支援システム6の構成の一例を示す図である。監視支援システム6は、船舶100に搭載される過給機付ディーゼルエンジン1(以下、単に「ディーゼルエンジン1」とも呼ぶ。)を監視するシステムである。ディーゼルエンジン1は、例えば、2ストロークエンジンである。ディーゼルエンジン1は、例えば、4ストロークエンジンであってもよい。
【0022】
図1に例示する監視支援システム6は、ディーゼルエンジン1の製造メーカ701に設置されるコンピュータ702と、船舶100に設置されるコンピュータ101と、インターネット704と、により構成される遠隔監視支援システムである。インターネット704は、通信衛星等による移動体通信を利用して、コンピュータ702とコンピュータ101とを相互に通信可能に接続する。
【0023】
コンピュータ702は、例えば、サーバとして機能する通常のコンピュータである。コンピュータ702は、
図2に示すように、プロセッサ71と、メモリ72と、入出力部73と、バス74とを備える。バス74は、プロセッサ71、メモリ72および入出力部73を接続する信号回路である。メモリ72は、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサ71は、メモリ72に記憶されるプログラム等に従って、メモリ72等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算等)を実行する。入出力部73は、操作者からの入力を受け付けるキーボード75およびマウス76、並びに、プロセッサ71からの出力等を表示するディスプレイ77を備える。
図1に示すコンピュータ101は、コンピュータ702と略同様の構成を有する通常のコンピュータである。
【0024】
図3は、ディーゼルエンジン1の構成を示す図である。
図3では、ディーゼルエンジン1の一部の構成を断面にて示している。ディーゼルエンジン1は、シリンダ2と、ピストン3と、排気弁25と、燃料供給部26と、掃気流路41と、排気流路42と、空気冷却器43と、過給機5とを備える。シリンダ2は、
図3中の上下方向に延びる中心軸を中心とする有蓋略円筒状の部材である。ピストン3は、当該中心軸を中心とする略円柱状の部材であり、その上部はシリンダ2の内部に配置される。ピストン3は、上下方向に移動可能である。なお、
図3中の上下方向は、必ずしも重力方向に平行である必要はない。
【0025】
シリンダ2は、シリンダライナ21と、シリンダカバー22とを備える。シリンダライナ21は、略円筒状の部材である。シリンダカバー22は、シリンダライナ21の上部に取り付けられる略有蓋円筒状の部材である。シリンダカバー22は、シリンダライナ21の上部開口を覆う。シリンダライナ21の下端部近傍には、複数の貫通孔が周状に設けられる。当該複数の貫通孔は、シリンダ2内に後述の掃気を供給する掃気ポート23である。掃気ポート23は、掃気流路41に接続される。
【0026】
掃気流路41は、掃気室411と、掃気レシーバ412とを備える。掃気室411は、シリンダライナ21の掃気ポート23の周囲に設けられる空間(すなわち、掃気配管)である。掃気ポート23は、掃気室411を介して掃気レシーバ412に連通する。掃気レシーバ412は、掃気室411へと掃気を供給する略円筒状の大型容器である。
【0027】
シリンダカバー22の上端部には、シリンダ2内のガスをシリンダ2外に排出する排気ポート24が設けられる。排気ポート24の平面視における形状(すなわち、
図3中の上下方向から見た形状)は略円形である。排気ポート24は、排気流路42に接続される。排気流路42は、排気配管421と、排気レシーバ422とを備える。排気配管421は、排気ポート24と排気レシーバ422とを接続する配管である。排気レシーバ422は、排気配管421からの排気を受ける略円筒状の大型容器である。
【0028】
実際のディーゼルエンジン1では、複数のシリンダ2が併設されており、当該複数のシリンダ2が、1つの掃気レシーバ412、および、1つの排気レシーバ422に接続されている。すなわち、掃気レシーバ412は、複数のシリンダ2に掃気を分配供給するための掃気マニホールドである。また、排気レシーバ422は、複数のシリンダ2から排出された排気が集められる排気マニホールド(排気集合管ともいう。)である。
【0029】
排気弁25は、上下方向において排気ポート24と重なる位置に配置され、排気ポート24を開閉する。排気弁25は、弁体251と、弁棒252とを備える。弁体251は、排気ポート24の下方に位置する略円錐状の部位である。平面視における弁体251の直径は、平面視における排気ポート24の直径よりも大きい。弁棒252は、弁体251の上端部から上方に延びる略円柱状の部位である。弁棒252の上端部は、シリンダ2の上方に設けられた排気弁油圧シリンダ253の内部に収容され、上下方向に移動可能に支持される。排気弁油圧シリンダ253は駆動油ポンプ254に接続される。
【0030】
排気弁25は、排気弁油圧シリンダ253および駆動油ポンプ254により上下方向に移動される。
図3中において実線にて示すように、排気弁25の弁体251が排気ポート24から下方に離間している状態では、排気ポート24が開放されており、シリンダ2内のガスが排気ポート24を介してシリンダ2外に排出される。一方、弁体251が
図3中において二点鎖線にて示す位置に位置する状態では、弁体251が排気ポート24の周縁部に接触し、排気ポート24を閉塞するため、シリンダ2内のガスは排気ポート24から排出されない。以下の説明では、
図3中において実線にて示す排気弁25の位置を「開放位置」と呼び、二点鎖線にて示す排気弁25の位置を「閉塞位置」と呼ぶ。排気弁25は、開放位置と、開放位置よりも上側の閉塞位置との間で、上下方向に移動可能である。
【0031】
ピストン3は、シリンダ2内において
図3中の上下方向に移動可能である。
図3中にて二点鎖線にて示すピストン3の位置が上死点であり、実線にて示すピストン3の位置が下死点である。ピストン3は、ピストンクラウン31と、ピストンロッド32とを備える。ピストンクラウン31は、シリンダライナ21に挿入された厚い略円板状の部位である。ピストンロッド32は、上端がピストンクラウン31の下面に接続された略円柱状の部位である。ピストンロッド32の下端は、図示省略のクランク機構に接続される。
図3に例示するディーゼルエンジン1では、シリンダライナ21、シリンダカバー22、排気弁25、および、ピストンクラウン31の上面(すなわち、ピストン3の上面)にて囲まれる空間が、燃料および空気を燃焼するための燃焼室20である。
【0032】
燃料供給部26は、燃料噴射部261と、燃料供給ポンプ262とを備える。燃料噴射部261は、先端部を燃焼室20に向けてシリンダカバー22に取り付けられるノズルである。燃料供給ポンプ262は、燃料配管を介して燃料タンク(図示省略)に接続され、燃料タンク内の燃料を燃料噴射部261へと送出する。燃料噴射部261は、燃料供給ポンプ262から供給された燃料を、燃焼室20に向けて噴射する。
図3に例示するディーゼルエンジン1では、燃料噴射部261から噴射される燃料は液状または気体である。
【0033】
過給機5は、タービン51と、コンプレッサ52とを備えるターボチャージャである。タービン51は、排気レシーバ422に接続される。コンプレッサ52は、空気冷却器43を介して掃気レシーバ412に接続される。タービン51は、タービンロータ511と、ノズルリング512とを備える。タービンロータ511は、タービン51に供給される排気により回転する羽根車である。ノズルリング512は、タービンロータ511の手前側に配置され、タービンロータ511に流入する排気の流速を調節する。具体的には、ノズルリング512の開口面積が大きくされることにより、タービンロータ511に供給される排気の流速が低下し、ノズルリング512の開口面積が小さくされることにより、タービンロータ511に供給される排気の流速が増大する。
【0034】
過給機5では、排気を利用してタービン51を回転させ、タービン51の回転を動力として、コンプレッサ52により吸気が加圧されて掃気が生成される。具体的には、過給機5では、排気レシーバ422からタービン51へと送り込まれた排気により、タービンロータ511が回転する。コンプレッサ52では、タービンロータ511の回転によりコンプレッサインペラ(図示省略)が回転し、ディーゼルエンジン1の外部から吸気路44を介して取り込んだ吸気(空気)を加圧して圧縮する。なお、コンプレッサ52は、吸気路44を介することなく、機関室内の空気を直接的に取り込んでもよい。加圧された空気(すなわち、上述の掃気)は、空気冷却器43にて海水等の冷媒を利用して冷却された後、掃気レシーバ412に供給され、掃気レシーバ412から掃気ポート23を介して燃焼室20へと供給される。
【0035】
ディーゼルエンジン1において、ピストン3が下死点から上昇して上死点近傍に位置する際には、排気弁25は閉塞位置に位置しており、排気ポート24は閉塞されている。このため、燃焼室20内のガス(すなわち、掃気)が圧縮される。そして、ピストン3が上死点に到達すると、燃料噴射部261から燃焼室20内に燃料が噴射される。燃料噴射部261からの燃料の噴射タイミングは、ピストン3が上死点に到達する直前または到達した直後でもよく、ピストン3が上死点から所定のクランク角度(例えば、約3°)に対応する距離だけ下降したタイミングでもよい。燃焼室20では、気化した燃料が自着火して、燃焼室20内の燃料の燃焼(または爆発)が生じる。これにより、ピストン3が押し下げられ、下死点に向かって移動する。なお、燃焼室20内のガスは、必ずしも自着火する必要はなく、点火プラグ等を用いて燃焼室20内のガスの着火が行われてもよい。また、上述のクランク角度とは、クランク機構におけるクランクの回転位置を示す。
【0036】
燃焼室20内の燃料の燃焼(または爆発)後、ピストン3が下死点に到達する前に、排気弁25が閉塞位置から開放位置へと下降して排気ポート24が開放される。これにより、燃焼室20内の燃焼済みガスの排出が開始される。燃焼室20から排出されたガス(すなわち、排気)は、排気レシーバ422に集められ、必要に応じて浄化装置(図示省略)による脱硝処理が行われた後、既述のように、過給機5のタービン51に供給される。タービン51を通過した排気は、煙道を介してディーゼルエンジン1の外部へと排出される。
【0037】
ピストン3が下死点近傍まで下降し、ピストンクラウン31の上面が掃気ポート23よりも下側まで移動すると、掃気ポート23が開放され、燃焼室20と掃気室411とが掃気ポート23を介して連通する。これにより、掃気室411内の掃気が燃焼室20内に供給される。
【0038】
ピストン3は下死点に到達した後、上昇に転じる。ピストンクラウン31の上面が掃気ポート23よりも上側まで上昇することにより、掃気ポート23が閉塞され、燃焼室20内への掃気の供給が停止される。続いて、排気ポート24が排気弁25により閉塞され、燃焼室20が密閉される。ピストン3がさらに上昇することにより、燃焼室20内の掃気が圧縮される。そして、ピストン3が上死点近傍に到達すると、既述のように、燃料噴射部261から燃焼室20内に燃料が噴射され、燃焼室20内にて上述の燃焼が生じる。ディーゼルエンジン1では、上記動作が繰り返される。
【0039】
図4は、コンピュータ702により実現される監視支援システム6の機能を示すブロック図である。
図4に示すように、コンピュータ702では、記憶部61と、補正部62と、演算部63とが監視支援システム6の機能として実現される。コンピュータ702は、航行中の船舶100のコンピュータ101からインターネット704を介して継続的に送信されるディーゼルエンジン1に関する各種測定値を受け付ける。
【0040】
記憶部61は、主にメモリ72(
図2参照)により実現され、船舶100から送られた上記各種測定値を記憶する。また、記憶部61は、ディーゼルエンジン1に関する第1相関情報および第2相関情報を予め記憶する。第1相関情報は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時における各種特性と、ディーゼルエンジン1の過給機5の効率である過給機効率との関係を示す情報である。当該各種特性とは、ディーゼルエンジン1の陸上試験時において、ディーゼルエンジン1に設けられた第1センサ群(後述)にて直接的に取得される所定の第1パラメータ群の各パラメータの測定値を、所定の標準状態に換算した基準測定値である。当該第1パラメータ群は、ディーゼルエンジン1の過給機入口排気温度および過給機出口排気温度をパラメータとして含む。過給機入口排気温度は、過給機5に流入する排気の過給機5の入口における温度であり、過給機出口排気温度は、過給機5から排出される排気の過給機5の出口における温度である。
【0041】
なお、第1パラメータ群は、過給機入口排気温度および過給機出口排気温度以外のパラメータを含んでいてもよい。例えば、第1パラメータ群は、従来の船舶に通常設けられているセンサにより測定されるパラメータであって、過給機入口排気温度および過給機出口排気温度ではないものを含んでいてもよく、従来の船舶には通常設けられないセンサにより測定されるパラメータ(例えば、過給機5に流入する排気の圧力、過給機5から排出される排気の圧力、過給機5の入口側に設けられる空気フィルタによる差圧、および、過給機5の出口側における空気圧力等)を含んでいてもよい。なお、第1パラメータ群の測定に係る構成の簡素化という観点からは、従来の船舶には通常設けられないセンサにより測定されるパラメータは、第1パラメータ群に含まれていない方が好ましい。
【0042】
上述の標準状態とは、例えば、ISO(国際標準化機構)が規定する標準大気条件(大気圧100kPa、大気温度298K(約25℃)、相対湿度31.65%)を満たす状態である。また、当該標準状態は、ディーゼルエンジン1の掃気温度310K(約37℃)という条件も含んでいてもよい。当該掃気温度は、燃焼室20に供給される(すなわち、燃焼室20に流入する)掃気の燃焼室20の入口における温度である。上述の測定値から基準測定値への換算には、ISOにより提示されている修正式を用いることができる。なお、当該標準状態は、ISOの標準大気条件以外の状態であってもよい。
【0043】
第2相関情報は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時における各種特性と、ディーゼルエンジン1の燃料消費率との関係を示す情報である。当該各種特性とは、ディーゼルエンジン1の陸上試験時において、ディーゼルエンジン1に設けられた第2センサ群(後述)にて直接的に取得される所定の第2パラメータ群の各パラメータの測定値を、上述の標準状態に換算した基準測定値である。当該第2パラメータ群は、ディーゼルエンジン1の燃焼最大圧力、および、掃気温度をパラメータとして含む。燃焼最大圧力は、後述する燃焼室20における燃焼時の最大圧力であり、掃気温度は、上述のように、燃焼室20に供給される掃気の燃焼室20の入口における温度である。なお、第2パラメータ群は、燃焼最大圧力および掃気温度以外のパラメータを含んでいてもよい。例えば、第2パラメータ群は、従来の船舶に通常設けられているセンサにより測定されるパラメータであって、燃焼最大圧力および掃気温度ではないものを含んでいてもよく、従来の船舶には通常設けられないセンサにより測定されるパラメータを含んでいてもよい。なお、第2パラメータ群の測定に係る構成の簡素化という観点からは、従来の船舶には通常設けられないセンサにより測定されるパラメータは、第2パラメータ群に含まれていない方が好ましい。
【0044】
補正部62は、主にプロセッサ71により実現され、船舶100の航行時における上述の第1パラメータ群の測定値を上記標準状態に換算して第1補正測定値を取得する。また、補正部62は、船舶100の航行時における上述の第2パラメータ群の測定値を上記標準状態に換算して第2補正測定値を取得する。第1パラメータ群および第2パラメータ群の測定値から第1補正測定値および第2補正測定値への換算には、上述のように、ISOにより提示されている修正式を用いることができる。
【0045】
演算部63は、主にプロセッサ71(
図2参照)により実現され、第1パラメータ群の第1補正測定値と第1相関情報とに基づいて、過給機効率の変化量を求める。また、演算部63は、当該過給機効率の変化量、第2パラメータ群の第2補正測定値、および、第2相関情報に基づいて、燃料消費率の変化率を求める。燃料消費率の変化率は、燃料消費率が増大する側への変化をプラスとして表す。演算部63により求められた過給機効率の変化量および燃料消費率の変化率は、コンピュータ702から船舶100のコンピュータ101(
図1参照)へと継続的に送信され、コンピュータ101のメモリ(図示省略)に格納される。
【0046】
記憶部61は、また、上述の第1相関情報および第2相関情報に加えて、基準掃気圧力も記憶する。基準掃気圧力は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時(すなわち、陸上での試運転時)において、ディーゼルエンジン1に設けられたセンサにて取得される掃気圧力の測定値を、上述の標準状態に換算したものである。当該掃気圧力は、燃焼室20に供給される掃気の燃焼室20の入口における圧力である。補正部62は、船舶100の航行時における掃気圧力の測定値を、上記標準状態に換算して補正掃気圧力を取得する。陸上試験時の掃気圧力の測定値から基準掃気圧力への換算、および、航行時の掃気圧力の測定値から補正掃気圧力への換算には、上述のように、ISOにより提示されている修正式を用いることができる。演算部63は、基準掃気圧力に対する補正掃気圧力の割合に基づいて、過給機5のサージング安定性を示すサージング指標を取得する。サージング安定性は、過給機5の健全性を評価する指標の1つである。演算部63により求められたサージング指標は、コンピュータ702から船舶100のコンピュータ101へと継続的に送信され、コンピュータ101のメモリ(図示省略)に格納される。
【0047】
図5は、
図1に示すコンピュータ101により実現される監視支援システム6の機能を示すブロック図である。
図5に示すように、コンピュータ101では、時系列表示部64と、警報発令部65と、変化要因表示部66とが監視支援システム6の機能として実現される。
【0048】
時系列表示部64は、主にコンピュータ101のプロセッサ(図示省略)により実現され、上述の演算部63により継続的に求められる過給機効率の変化量の時系列を、コンピュータ101の表示部であるディスプレイ102(
図1参照)に表示させる。また、時系列表示部64は、演算部63により継続的に求められる燃料消費率の変化率の時系列を、コンピュータ101のディスプレイ102に表示させる。さらに、時系列表示部64は、演算部63により継続的に求められるサージング指標の時系列を、コンピュータ101のディスプレイ102に表示させる。
【0049】
警報発令部65は、主にコンピュータ101のプロセッサ(図示省略)により実現され、上述の過給機効率の変化量が所定の閾値(以下、「第1閾値」とも呼ぶ。)以上である場合、コンピュータ101のオペレータ等に警報を発する。また、警報発令部65は、上述の燃料消費率の変化率が所定の閾値(以下、「第2閾値」とも呼ぶ。)以上である場合、上記オペレータ等に警報を発する。さらに、警報発令部65は、上述のサージング指標が所定の閾値(以下、「第3閾値」とも呼ぶ。)以上である場合、上記オペレータ等に警報を発する。警報発令部65により発される警報は、例えば、ディスプレイ102への警告文の表示や警報音の発信である。
【0050】
変化要因表示部66は、主にコンピュータ101のプロセッサ(図示省略)により実現され、過給機効率の変化量の増大に対する寄与率が高い1つ以上のパラメータを、上述の第1パラメータ群から抽出してディスプレイ102に表示させる。また、変化要因表示部66は、燃料消費率の変化率の増大に対する寄与率が高い1つ以上のパラメータを、上述の第2パラメータ群から抽出してディスプレイ102に表示させる。
【0051】
なお、時系列表示部64、警報発令部65、変化要因表示部66は、船舶100のコンピュータ101に代えて、または、コンピュータ101に加えて、船舶100の運行会社に設置されたコンピュータ等(図示省略)により実現されてもよい。
【0052】
図3に例示するディーゼルエンジン1では、各種パラメータを測定するセンサ671~675が設けられる。センサ671~675は、監視支援システム6による監視支援が行われない従来の船舶のディーゼルエンジンにおいても、一般的に設けられるものである。また、ディーゼルエンジン1では、図示省略のセンサにより、上述の標準状態への換算に利用される大気圧力、大気温度および相対湿度等も測定されている。
【0053】
センサ671は、例えば過給機5近傍に設けられ、タービン51に供給される燃焼室20からの排気の入口温度である上述の過給機入口排気温度を測定する。センサ672は、例えば過給機5近傍に設けられ、タービン51から排出される排気の出口温度である上述の過給機出口排気温度を測定する。センサ673は、例えば、燃焼室20近傍に設けられ、燃焼室20における上述の燃焼最大圧力を測定する。センサ674は、掃気室411近傍に設けられ、燃焼室20に供給される掃気の入口温度である上述の掃気温度を測定する。センサ675は、掃気室411近傍に設けられ、燃焼室20に供給される掃気の入口圧力(すなわち、燃焼室20の入口における掃気の圧力であり、以下、単に「掃気圧力」とも呼ぶ。)を測定する。
【0054】
センサ671~672は、上述の第1センサ群に含まれる。センサ671により測定されるパラメータである過給機入口排気温度、および、センサ672により測定されるパラメータである過給機出口排気温度は、上述の第1パラメータ群に含まれる。また、センサ673~674は、上述の第2センサ群に含まれる。センサ673により測定されるパラメータである燃焼最大圧力、および、センサ674により測定されるパラメータである掃気温度は、上述の第2パラメータ群にも含まれる。ディーゼルエンジン1では、センサ671~675に加えて、他のパラメータを測定する他のセンサが設けられてよい。また、1つまたは複数のセンサが、第1センサ群および第2センサ群の双方に含まれてもよい。
【0055】
図6は、監視支援システム6によるディーゼルエンジン1の監視支援の流れを示す図である。監視支援システム6では、予め、上述の第1相関情報および第2相関情報が取得され、コンピュータ702の記憶部61に記憶される。また、監視支援システム6では、後述する第3相関情報も取得され、記憶部61に記憶される(ステップS11)。
【0056】
ステップS11では、まず、ディーゼルエンジン1の陸上試験時に、第1パラメータ群および第2パラメータ群に含まれる各パラメータを様々に変更しつつ、過給機効率および燃料消費率が測定される。また、過給機効率および燃料消費率の測定時には、標準状態への換算に利用される大気圧力、大気温度および相対湿度等も測定される。
【0057】
続いて、上記各パラメータに関して、第1センサ群および/または第2センサ群に含まれる対応するセンサの測定値を、上述の標準状態に換算して基準測定値を得る。当該測定値から基準測定値への換算には、上述のように、ISOにより提示されている修正式を用いる。
【0058】
次に、第1パラメータ群に含まれる各パラメータに関して、基準測定値と過給機効率との関係を求め、第1相関情報として記憶部61に格納する。具体的には、
図7に例示するように、過給機効率を横軸とし、一のパラメータの基準測定値を縦軸として、複数の基準測定値について過給機効率をプロットし、プロット結果の近似式(例えば、直線近似した式)を、当該一のパラメータに係る相関情報として得る。第1パラメータ群に含まれる他のパラメータについても同様に、各パラメータに係る相関情報を得る。そして、第1パラメータ群に含まれる各パラメータに係る相関情報をまとめて、第1相関情報として記憶部61に格納する。
【0059】
また、第2パラメータ群に含まれる各パラメータに関して、基準測定値と燃料消費率との関係を求め、第2相関情報として記憶部61に格納する。具体的には、
図8に例示するように、燃料消費率(g/kWh)を横軸とし、一のパラメータの基準測定値を縦軸として、複数の基準測定値について燃料消費率をプロットし、プロット結果の近似式(例えば、直線近似した式)を、当該一のパラメータに係る相関情報として得る。第2パラメータ群に含まれる他のパラメータについても同様に、各パラメータに係る相関情報を得る。そして、第2パラメータ群に含まれる各パラメータに係る相関情報をまとめて、第2相関情報として記憶部61に格納する。
【0060】
ステップS11では、さらに、過給機効率と燃料消費率との関係を求め、第3相関情報として記憶部61に格納する。具体的には、
図9に例示するように、上記のように求めた燃料消費率および過給機効率をそれぞれ横軸および縦軸として、複数の過給機効率について燃料消費率をプロットし、プロット結果の近似式(例えば、直線近似した式)を、第3相関情報として記憶部61に格納する。
【0061】
第1相関情報、第2相関情報および第3相関情報は、上述のように、ディーゼルエンジン1の陸上試験時の測定結果に基づいて求められるため、第1相関情報、第2相関情報および第3相関情報には、船舶100の航行時における海象条件等の影響は含まれていない。
【0062】
第1相関情報、第2相関情報および第3相関情報は、上述のように、1台のディーゼルエンジン1の陸上試験結果に基づいて求められてもよいが、複数台のディーゼルエンジンの陸上試験結果に基づいて求められてもよい。例えば、複数台のディーゼルエンジンの陸上試験結果をまとめて扱い、上記と同様に、第1パラメータ群に含まれる各パラメータに関して、基準測定値と過給機効率との関係を求め、当該複数台のディーゼルエンジンに共通の第1相関情報として記憶部61に格納する。また、第2パラメータ群に含まれる各パラメータに関して、基準測定値と燃料消費率との関係を求め、当該複数台のディーゼルエンジンに共通の第2相関情報として記憶部61に格納する。さらに、過給機効率と燃料消費率との関係を求め、当該複数台のディーゼルエンジンに共通の第3相関情報として記憶部61に格納する。
【0063】
上述の複数台のディーゼルエンジンは、例えば、同一種類(すなわち、同一機種)かつ同一気筒数のディーゼルエンジンである。あるいは、当該複数台のディーゼルエンジンは、同一種類のディーゼルエンジンであり、異なる気筒数のディーゼルエンジンを含んでいてもよい。また、当該複数台のディーゼルエンジンは、異なる種類(すなわち、異なる機種)のディーゼルエンジンを含んでいてもよい。
【0064】
監視支援システム6では、航行中の船舶100において、センサ671~675(
図3参照)により取得される各パラメータの測定値が、機関室等に設けられたデータロガー(図示省略)により定期的に記録され、ブリッジ等に設けられたコンピュータ101(
図1参照)へと送信される(ステップS12)。コンピュータ101は、当該測定値を、メモリ(図示省略)に格納するとともに、コンピュータ702(
図1参照)へと送信する。
【0065】
コンピュータ702では、コンピュータ101から送信された各種パラメータの測定値が、記憶部61(
図4参照)により記憶される。そして、補正部62により、第1センサ群にて取得された第1パラメータ群の測定値(例えば、センサ671~672にて取得された過給機入口排気温度および過給機出口排気温度の測定値)が、上述の標準状態に換算されて第1補正測定値が取得される。また、補正部62により、第2センサ群にて取得された第2パラメータ群の測定値(例えば、センサ673~674にて取得された燃焼最大圧力および掃気温度の測定値)が、上述の標準状態に換算されて第2補正測定値が取得される。さらに、補正部62により、センサ675にて取得された掃気圧力の測定値が、上述の標準状態に換算されて補正掃気圧力が取得される(ステップS13)。
【0066】
続いて、演算部63により、第1パラメータ群の第1補正測定値と第1相関情報とに基づいて、過給機効率の変化量が求められる。具体的には、例えば、第1パラメータ群の各パラメータの第1補正測定値と、ディーゼルエンジン1の出力に対応する当該各パラメータの初期値との差を求める。当該初期値は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時における上記出力に対応する各パラメータの測定値を標準状態に換算したものである。そして、第1相関情報のうち当該各パラメータに対応する近似式の傾きに当該差を乗算することにより、各パラメータに対応する過給機効率の変化量が求められる。過給機効率の変化量は、過給機効率が低下する側(すなわち、悪化する側)への変化をプラスとして表す。
【0067】
その後、第1パラメータ群に含まれる全パラメータにそれぞれ対応する過給機効率の変化量に基づいて、上述の過給機効率の変化量が求められる。当該過給機効率の変化量は、例えば、第1パラメータ群に含まれる全パラメータにそれぞれ対応する過給機効率の変化量の算術平均として求められる(ステップS14)。
【0068】
演算部63では、また、第2パラメータ群の第2補正測定値、第2相関情報、上述の過給機効率の変化量、および、第3相関情報に基づいて、燃料消費率の変化率が求められる。具体的には、例えば、第2パラメータ群の各パラメータの第2補正測定値と、ディーゼルエンジン1の出力に対応する当該各パラメータの初期値との差を求める。当該初期値は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時における上記出力に対応する各パラメータの測定値を標準状態に換算したものである。そして、第2相関情報のうち当該各パラメータに対応する近似式の傾きに当該差を乗算することにより、各パラメータに対応する燃料消費率の変化量が求められる。燃料消費率の変化量は、燃料消費率が増大する側(すなわち、悪化する側)への変化をプラスとして表す。
【0069】
また、ステップS14にて求められた過給機効率の変化量を、第3相関情報における近似式の傾きに乗算することにより、過給機効率の変化量に対応する燃料消費率の変化量が求められる。
【0070】
その後、第2パラメータ群に含まれる全パラメータにそれぞれ対応する燃料消費率の変化量、および、過給機効率に対応する燃料消費率の変化量に基づいて、上述の燃料消費率の変化率が求められる。当該燃料消費率の変化率は、例えば、第2パラメータ群に含まれる全パラメータにそれぞれ対応する燃料消費率の変化量、および、過給機効率に対応する燃料消費率の変化量を合計し、ディーゼルエンジン1の出力に対応する燃料消費率の初期値(すなわち、ディーゼルエンジン1の陸上試験時における当該出力に対応する燃料消費率を標準状態に換算したもの)によって除算することにより求められる(ステップS15)。
【0071】
演算部63では、さらに、基準掃気圧力に対する補正掃気圧力の割合に基づいて、過給機5のサージング安定性を示すサージング指標が取得される。具体的には、例えば、補正掃気圧力を、ディーゼルエンジン1の出力に対応する基準掃気圧力によって除算することにより、基準掃気圧力に対する補正掃気圧力の割合が求められる。そして、当該割合から1を減算することによりサージング指標が得られる(ステップS16)。当該サージング指標が0以下であれば、サージング安定性が高く、過給機5のサージングは生じる可能性が低い。一方、当該サージング指標が0よりも大きい場合、サージング安定性は低く、サージング指標が大きくなるに従って、過給機5のサージングが生じる可能性が高くなる。
【0072】
ステップS14~S16にて取得された過給機効率の変化量、燃料消費率の変化率、および、サージング指標は、コンピュータ702から船舶100のコンピュータ101へと送信される。このとき、第1パラメータ群の各パラメータに対応する過給機効率の変化量、および、第2パラメータ群の各パラメータに対応する燃料消費率の変化率も、コンピュータ702からコンピュータ101へと送信される。第2パラメータ群の各パラメータに対応する(すなわち、各パラメータに起因する)燃料消費率の変化率は、演算部63において、第2パラメータ群の各パラメータに対応する燃料消費率の変化量を、ディーゼルエンジン1の出力に対応する燃料消費率の上記初期値により除算することにより求められる。
【0073】
コンピュータ101では、
図10中において折れ線グラフ91にて示すように、演算部63により継続的に求められた過給機効率の変化量の時系列が、時系列表示部64(
図5参照)によりディスプレイ102に表示される(ステップS17)。
図10中の横軸は日時を示し、縦軸は過給機効率の変化量を示す。
図10では、縦軸の下側に向かうに従って、過給機効率が悪化する方への変化量が大きくなる。
【0074】
コンピュータ101では、上述のように、過給機効率の変化量が第1閾値(例えば、3%)以上になると、警報発令部65によりオペレータ等に向けて警報が発令される。警報を受けたオペレータは、例えば、過給機入口排気温度や過給機出口排気温度に関連する構成のメンテナンスやチューニングを行う。例えば、ノズルリング512の清掃および/またはパーツ交換等がオペレータにより行われる。これにより、過給機効率の悪化を改善することができる。
【0075】
コンピュータ101では、
図11中において折れ線グラフ94にて示すように、演算部63により継続的に求められた燃料消費率の変化率の時系列が、時系列表示部64によりディスプレイ102に表示される(ステップS18)。
図11中の横軸は日時を示し、縦軸は燃料消費率の変化率を示す。
図11に示す例では、第2パラメータ群の各パラメータおよび過給機効率にそれぞれ対応する燃料消費率の変化率も、ディスプレイ102に表示される。
図11中の折れ線グラフ95,96はそれぞれ、ディーゼルエンジン1の燃焼最大圧力および掃気温度にそれぞれ対応する燃料消費率の変化率を示す。また、折れ線グラフ97は、過給機効率に対応する燃料消費率の変化率を示す。
図11に示す例では、折れ線グラフ95~97の合計が、折れ線グラフ94となっている。
【0076】
コンピュータ101では、また、変化要因表示部66により、燃料消費率の変化率の増大に対する寄与率が高い1つ以上のパラメータが、第2パラメータ群および過給機効率の中から抽出されてディスプレイ102に表示される。変化要因表示部66は、例えば、過給機効率および第2パラメータ群のうち燃料消費率の変化率が最も大きい1つのパラメータを抽出し、
図11に示すグラフ中において、当該パラメータに対応する折れ線グラフを点滅させる等して、他の折れ線グラフから区別する。あるいは、変化要因表示部66は、過給機効率および第2パラメータ群のうち燃料消費率の変化率が所定値(例えば、1%)以上である1つまたは複数のパラメータを抽出し、
図11に示すように、当該1つまたは複数のパラメータを示す凡例を太枠で囲む等して、他のパラメータを示す凡例から区別してもよい。
【0077】
コンピュータ101では、上述のように、燃料消費率の変化率が第2閾値(例えば、3%)以上になると、警報発令部65によりオペレータ等に向けて警報が発令される。警報を受けたオペレータは、例えば、変化要因表示部66により抽出されたパラメータに係る構成のメンテナンスやチューニングを行う。変化要因表示部66により燃焼最大圧力が抽出されている場合、例えば、燃料噴射部261から燃焼室20への燃料の噴射タイミングが調整される。変化要因表示部66により掃気温度が抽出されている場合、例えば、掃気を冷却する空気冷却器43における冷媒の流量が調整される。変化要因表示部66により過給機効率が抽出されている場合、上述の過給機効率に関する構成の調整や、過給機5の清掃および/またはパーツ交換等を行う。また、過給機5のタービンロータ511が可変ピッチである場合、タービンロータ511のピッチが調整されてもよい。これにより、燃料消費率の悪化を改善することができる。
【0078】
コンピュータ101では、
図12中において折れ線グラフ98にて示すように、演算部63により継続的に求められたサージング指標の時系列が、時系列表示部64によりディスプレイ102に表示される(ステップS19)。
図12中の横軸は日時を示し、縦軸はサージング指標を示す。コンピュータ101では、上述のように、サージング指標が第3閾値(例えば、0.1)以上になると、警報発令部65によりオペレータ等に向けて警報が発令される。
【0079】
警報を受けたオペレータは、例えば、サージング指標の悪化の原因と考えられる構成のメンテナンスやチューニングを行う。当該構成が過給機5である場合、過給機効率に関する上記調整と略同様の調整が行われる。また、当該構成に過給機5および空気冷却器43が含まれている場合、まず、サージング指標の悪化の主原因がどちらであるかが判定される。例えば、空気冷却器43の入口圧力と出口圧力との差(以下、「入出圧力差」とも呼ぶ。)が、空気冷却器43の入口および出口に接続された水柱差圧マノメータ等を用いて測定される。そして、当該入出圧力差が所定値よりも大きい場合、空気冷却器43が主原因と判断され、空気冷却器43の清掃や交換が行われる。また、当該差が所定値よりも小さい場合、過給機5が主原因と判断され、過給機5に対して上記と同様の調整が行われる。これにより、サージング安定性の悪化を改善することができる。
【0080】
なお、ディーゼルエンジン1が4ストロークエンジンである場合、燃焼室20に供給される空気は「給気」と呼ばれるため、上述のセンサ674により測定される空気の温度は「給気温度」とも呼ばれ、センサ675により測定される空気の圧力は「給気圧力」とも呼ばれる。上述の掃気および給気をまとめて「供給空気」と呼ぶと、センサ674は、燃焼室20に供給される供給空気の入口温度である供給空気温度を測定する温度センサであり、センサ675は、燃焼室20に供給される供給空気の入口圧力である供給空気圧力を測定する圧力センサである。また、上述の基準掃気圧力および補正掃気圧力はそれぞれ、基準供給空気圧力および補正供給空気圧力である。
【0081】
以上に説明したように、船舶100に搭載される過給機付ディーゼルエンジン(すなわち、ディーゼルエンジン1)の監視支援システム6は、記憶部61と、補正部62と、演算部63とを備える。記憶部61は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時において、ディーゼルエンジン1に設けられた第1センサ群(例えば、センサ671~672)にて取得される所定の第1パラメータ群の各パラメータの測定値を所定の標準状態に換算した基準測定値と過給機効率との関係を示す第1相関情報を記憶する。補正部62は、ディーゼルエンジン1を搭載した船舶100の航行時において、当該第1センサ群にて取得される第1パラメータ群の測定値を標準状態に換算して第1補正測定値を取得する。演算部63は、第1パラメータ群の第1補正測定値と第1相関情報とに基づいて、過給機効率の変化量を求める。当該第1パラメータ群は、ディーゼルエンジン1の過給機入口排気温度および過給機出口排気温度を含む。
【0082】
監視支援システム6において、演算部63にて用いられる第1相関情報は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時の測定結果に基づいて求められる。このため、第1相関情報には、船舶100の航行時における海象条件等の影響は含まれていない。したがって、監視支援システム6では、ディーゼルエンジン1の過給機効率の変化量を、海象条件等の影響を排除して精度良く評価することができる。また、当該過給機効率を用いて燃料消費率を算出することにより、ディーゼルエンジン1の燃料消費率を精度良く評価することができる。
【0083】
上述のように、監視支援システム6は、継続的に求められる過給機効率の変化量の時系列を表示部(すなわち、ディスプレイ102)に表示させる時系列表示部64をさらに備えることが好ましい。これにより、ディスプレイ102を見たオペレータ等が、過給機効率の変化量のトレンドを容易に認識することができる。
【0084】
上述のように、監視支援システム6では、過給機効率の変化量が所定の閾値(上記例では、第1閾値)以上である場合に警報が発せられることが好ましい。これにより、オペレータ等が、過給機効率を回復させるための処置が必要な程度まで過給機効率が悪化したことを容易に認識することができる。
【0085】
上述のように、記憶部61は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時において、ディーゼルエンジン1に設けられた第2センサ群(例えば、センサ673~674)にて取得される所定の第2パラメータ群の各パラメータの測定値を標準状態に換算した基準測定値と燃料消費率との関係を示す第2相関情報を記憶することが好ましい。補正部62は、ディーゼルエンジン1を搭載した船舶100の航行時において、当該第2センサ群にて取得される第2パラメータ群の測定値を標準状態に換算して第2補正測定値を取得することが好ましい。演算部63は、上述の過給機効率、第2パラメータ群の第2補正測定値および第2相関情報に基づいて燃料消費率の変化率を求めることが好ましい。当該第2パラメータ群は、ディーゼルエンジン1の燃焼最大圧力および供給空気温度(上記例では、掃気温度)を含むことが好ましい。
【0086】
監視支援システム6において、演算部63にて用いられる過給機効率およびその変化量は、上述のように、船舶100の航行時における海象条件等の影響を排除して求められたものである。また、演算部63にて用いられる第2相関情報は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時の測定結果に基づいて求められる。このため、第2相関情報には、船舶100の航行時における海象条件等の影響は含まれていない。したがって、監視支援システム6では、ディーゼルエンジン1の燃料消費率を、海象条件等の影響を排除して精度良く評価することができる。
【0087】
上述のように、監視支援システム6は、継続的に求められる燃料消費率の変化率の時系列を表示部(すなわち、ディスプレイ102)に表示させる時系列表示部64をさらに備えることが好ましい。これにより、ディスプレイ102を見たオペレータ等が、燃料消費率の変化率のトレンドを容易に認識することができる。
【0088】
上述のように、監視支援システム6では、燃料消費率の変化率が所定の閾値(上記例では、第2閾値)以上である場合に警報が発せられることが好ましい。これにより、オペレータ等が、燃料消費率を回復させるための処置が必要な程度まで燃料消費率が悪化したことを容易に認識することができる。
【0089】
上述のように、監視支援システム6は、上記過給機効率の変化量および第2パラメータ群から、燃料消費率の変化率の増大に対する寄与率が高い1つ以上のパラメータを抽出して表示部(すなわち、ディスプレイ102)に表示させる変化要因表示部66をさらに備えることが好ましい。これにより、ディスプレイ102を見たオペレータ等が、燃料消費率を回復させるための処置が必要な構成を容易に認識することができる。
【0090】
上述のように、船舶100に搭載される過給機付ディーゼルエンジン(すなわち、ディーゼルエンジン1)の監視支援システム6は、記憶部61と、補正部62と、演算部63とを備える。記憶部61は、ディーゼルエンジン1の陸上試験時において、ディーゼルエンジン1に設けられたセンサ(すなわち、センサ675)にて取得される供給空気圧力(上記例では、掃気圧力)の測定値を所定の標準状態に換算した基準供給空気圧力(上記例では、基準掃気圧力)を記憶する。補正部62は、ディーゼルエンジン1を搭載した船舶100の航行時において、センサ675にて取得される供給空気圧力の測定値を標準状態に換算して補正供給空気圧力(上記例では、補正掃気圧力)を取得する。演算部63は、基準供給空気圧力に対する補正供給空気圧力の割合に基づいて過給機5のサージング安定性を示すサージング指標を取得する。これにより、過給機5のサージング安定性を精度良く評価することができ、過給機5の健全性を精度良く評価することができる。
【0091】
上述のように、監視支援システム6は、継続的に求められるサージング指標の時系列を表示部(すなわち、ディスプレイ102)に表示させる時系列表示部64をさらに備えることが好ましい。これにより、ディスプレイ102を見たオペレータ等が、サージング安定性のトレンドを容易に認識することができる。
【0092】
上述のように、監視支援システム6では、サージング指標が所定の閾値(上記例では、第3閾値)以上である場合に警報が発せられることが好ましい。これにより、オペレータ等が、サージング安定性を回復させるための処置が必要な程度までサージング安定性が悪化したことを容易に認識することができる。
【0093】
上述の監視支援システム6では、様々な変更が可能である。
【0094】
例えば、ディーゼルエンジン1の陸上試験時において、ディーゼルエンジン1の各センサの測定値から基準測定値への換算は、監視支援システム6の補正部62により行われてもよい。
【0095】
監視支援システム6の記憶部61、補正部62および演算部63を実現するコンピュータ702は、上述の例では、ディーゼルエンジン1の製造メーカ701に設置されるが、他の場所(例えば、船舶100の運行会社等)に設置されてもよい。また、記憶部61、補正部62および演算部63は、船舶100に設置されるコンピュータ101により実現されてもよい。また、監視支援システム6は、クラウド上で構築され、WEBアプリケーションとして提供されてもよい。
【0096】
監視支援システム6では、時系列表示部64、警報発令部65および/または変化要因表示部66は省略されてもよい。
【0097】
監視支援システム6では、必ずしも、燃料消費率の変化率は求められる必要はなく、第2相関情報も記憶部61に記憶される必要はない。また、監視支援システム6では、過給機効率の変化量およびサージング指標のうち、少なくとも一方が演算部63において求められればよい。
【0098】
上記説明では、ディーゼルエンジン1の陸上試験時に第1パラメータ群の測定を行う第1センサ群と、船舶100の航行時に第1パラメータ群の測定を行う第1センサ群とは同一であるものとしているが、陸上試験時の第1センサ群と航行時の第1センサ群とは、同じ種類のセンサであれば、異なるものが利用されてもよい。例えば、陸上試験に用いられた第1センサ群は試験後にディーゼルエンジン1から取り外され、ディーゼルエンジン1が船舶100に搭載される際に、当該第1センサ群と同じ種類であって別の第1センサ群がディーゼルエンジン1に取り付けられてもよい。
【0099】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0100】
1 ディーゼルエンジン
6 監視支援システム
61 記憶部
62 補正部
63 演算部
64 時系列表示部
65 警報発令部
66 変化要因表示部
100 船舶
102 ディスプレイ
671~675 センサ
S11~S16 ステップ