(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113289
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】脱酸素剤包装材料用の紙基材及び脱酸素剤包装材料
(51)【国際特許分類】
D21H 19/18 20060101AFI20230808BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
D21H19/18
D21H27/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015540
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】名越 応昇
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG08
4L055AG19
4L055AG51
4L055AG72
4L055AG82
4L055AG87
4L055AH01
4L055AH09
4L055AH16
4L055AH17
4L055AJ02
4L055BE08
4L055BE10
4L055BE11
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA14
4L055EA20
4L055FA19
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】課題は、通気性を有しつつ、撥水性及び耐油性を有しながらPFASを用いない脱酸素剤包装材料用の紙基材を提供することであり、さらに前記紙基材を用いた脱酸素剤包装材料を提供することである。
【解決手段】課題は、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含有する脱酸素包装材料用の紙基材によって、並びに前記紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層を有する脱酸素剤用包装材料によって解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含有する脱酸素包装材料用の紙基材。
【請求項2】
前記ワックスの含有量が、紙基材に対して2g/m2以上7g/m2以下である請求項1に記載の紙基材。
【請求項3】
前記ワックスを含む塗工液の塗工により両面に前記ワックスを含有する請求項1に記載の紙基材。
【請求項4】
前記ワックスを含む含浸液の含浸により前記ワックスを含有する請求項1に記載の紙基材。
【請求項5】
前記ワックスの塗工量が紙基材において片面あたり1g/m2以上3.5g/m2以下である請求項3に記載の紙基材。
【請求項6】
前記ワックスの含浸量が紙基材において2g/m2以上7g/m2以下である請求項4に記載の紙基材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層を有する脱酸素剤用包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸素剤包装体を構成する脱酸素剤を包装するための脱酸素剤包装材料に関し、及び脱酸素剤包装材料を形成するための紙基材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品及び医薬品などを長期保存する方法の一つとして、食品及び医薬品などの包装容器内に脱酸素剤を封入する方法がある。前記方法では、ガスバリア性の密封袋又は密封容器内に食品及び医薬品などの収容物並びに脱酸素剤を同封し、袋及び容器内の酸素を脱酸素剤に吸収させ、袋及び容器内の雰囲気を実質的に無酸素状態に保つことにより、酸化による収容物の劣化、又は細菌及び微生物の増殖及び活動などを抑える。通常、収容物と同封する脱酸素剤は、収容物に対する安全性を有するかつ通気性を有する包装材料で包装した脱酸素剤包装体として使用する。例えば、脱酸素剤と、前記脱酸素剤を収納する通気性の包材とからなる脱酸素剤包装体であって、前記脱酸素剤は、多孔質の担持体と、前記担持体に担持された酸素吸収組成物とを含む造粒物と、前記造粒物の表面に付着する親水性無機微粒子と、を含む複合粒子であり、前記酸素吸収組成物は、酸素吸収性物質を含む液剤、アルカリ性化合物、および遷移金属化合物を含み、前記包材は、JIS P8117:2009に従って測定した透気度が5000~10000秒である脱酸素剤包装体が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
脱酸素剤用の包装材料では、例えば、通気性材料からなる外層と、通気性を有しかつ最内層がヒートシール可能な材料からなる内層とを積層してなり、前記外層又は内層のいずれか一方の積層面を紙、他方の積層面をヒートシール性材料とし、前記内層と外層とを接着剤を用いることなく熱圧着した通気性包装材料(例えば、特許文献2参照)、他に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂層、紙層、バイオマス由来のヒートシール性熱可塑性樹脂層の少なくとも3層を積層して成る脱酸素剤包装材料などが公知である(例えば、特許文献3参照)。これら脱酸素剤用包装材料では、基材を紙とし、前記紙の表面に通気性を有する樹脂層及び前記紙の裏面に通気性を有するヒートシール性樹脂層を有する構成が多い。そして、特許文献2は、紙の熱圧着する面に撥水及び/又は撥油剤が塗布されていることを特徴とする態様を有する。特許文献3は、例えば、紙層に用いられる素材として紙にフッ素等の撥水剤を塗布して耐油性を持たせたものが使用される。
【0004】
脱酸素剤包装材料は、酸素が通過できる通気性を有しつつ、収容物からの水分乃至油分を遮断する必要がある。上記特許文献2及び特許文献3に記載されるが如くの脱酸素剤包装材料では、基材の紙が撥水性、耐水性、撥油性及び/又は耐油性を有する。従来は、撥水性、耐水性、撥油性及び/又は耐油性を紙に付与するために、フッ素系化合物を使用する。例えば、脱酸素剤包装紙としても用いられる、含フッ素共重合体などフッ素系化合物を添加したパルプスラリーから得られた紙からなる耐水耐油紙が公知である(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-167217号公報
【特許文献2】特開平03-096334号公報
【特許文献3】特開2012-218411号公報
【特許文献4】国際公開第2019/124121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来からの一つの態様として、脱酸素剤包装材料は、通気性を有する樹脂層、撥水性及び耐油性とを有する紙基材、並びにヒートシール層から成る。従来は、撥水性及び耐油性を有する紙基材は、フッ素系化合物を含有する。しかしながら、世界的に永遠に残る化学物質(フォーエバー・ケミカル)の使用を避ける取り組みがなされている。PFAS(フッ素系化合物の総称)は、非粘着性、撥油性、撥水性が高く、及び汚れ難いという特徴を有するものの、フォーエバー・ケミカルの代表格であり、健康被害との関連性が報告されるなどにより規制対象である。
【0007】
以上を鑑み、本発明の目的は、脱酸素剤包装体とした際に脱酸素剤への通気を阻害しないように通気性を有しつつ、撥水性及び耐油性を有しながらPFASを用いない脱酸素剤包装材料用の紙基材を提供することであり、前記紙基材を用いてPFASを用いない脱酸素剤包装材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の目的は、以下によって達成される。
【0009】
[1]融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含有する脱酸素包装材料用の紙基材。
【0010】
[2]上記ワックスの含有量が、紙基材に対して2g/m2以上7g/m2以下である上記[1]に記載の紙基材。
【0011】
[3]上記ワックスを含む塗工液の塗工により両面に上記ワックスを含有する上記[1]に記載の紙基材。
【0012】
[4]上記ワックスを含む含浸液の含浸により上記ワックスを含有する上記[1]に記載の紙基材。
【0013】
[5]上記ワックスの塗工量が紙基材において片面あたり1g/m2以上3.5g/m2以下である上記[3]に記載の紙基材。
【0014】
[6]上記ワックスの含浸量が紙基材において2g/m2以上7g/m2以下である上記[4]に記載の紙基材。
【0015】
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層を有する脱酸素剤用包装材料。なお、本明細書において、紙基材の「表面」及び「裏面」という記載は紙基材の面側を区別するための便宜上の表現であり、化学的又は物理的に何らかの特定による紙基材の表裏を表す意味ではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、撥水性及び耐油性を有しながらPFASを用いない脱酸素剤包装材料用の紙基材を提供することでき、さらに前記紙基材を用いてPFASを用いない脱酸素剤包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。
脱酸素剤包装材料用の紙基材は、ワックスを含有する。ワックスは、従来公知のものである。ワックスとは、温度を下げると固体で加熱すると液体となる有機系物質であって、ワックスは、動植物由来又は石油由来の天然ワックスと人工的に製造した合成ワックスとの二種に大きく分類される。ワックスには多くの種類が既に知られる。ワックスは、例えば、天然ワックスでは、生物系として、動物由来の蜜蝋、セラックワックス及びイボタ蝋、植物由来のカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス及び木蝋、化石系として、原油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム及びスラックワックス、鉱物由来のモンタンワックス、セレシン及びオゾケライト、合成ワックスでは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びフィッシャー・トロプシュワックス、並びに機能性ワックス、配合ワックス及び酸化ワックスなどの変性ワックスなどを挙げることができる。ワックスの融点は、ひまし油由来のポリアミドを主成分に有する180℃を超える高融点ワックス、融点が100℃以上である原油由来のワックス、鉱物由来のワックス、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスなどの合成ワックス、融点を30℃付近に有するバター状のワックスなど種々存在する。ワックスは、例えば、山桂産業社、中京油脂社、日本精蝋社及びビックケミー・ジャパン社などから市販される。
【0018】
脱酸素剤包装材料用の紙基材が含有するワックスは、融点が50℃以上80℃以下である。前記融点のワックスを含有することで、紙基材は、通気性を有しつつ撥水性及び耐油性を有する。融点が80℃超のワックスでは、主に通気性が悪化して脱酸素剤用包装材料に適さない。融点が50℃未満のワックスでは、撥水性及び/又は耐油性が悪化して脱酸素剤用包装材料に適さない。この理由は、不明である。本発明者らは、紙基材を構成する下記するパルプが形成する空隙をワックスがパルプに吸着して通気性を有する程度に微細構造化し、撥水性及び/又は耐油性を発現する、と考える。
【0019】
いくつかの実施態様において、脱酸素剤包装材料用の紙基材は、ワックスの含有量が、紙基材に対して2g/m2以上7g/m2以下である。この理由は、紙基材の通気性、並びに撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。
【0020】
いくつかの実施態様において、ワックスは、パラフィンワックスを含有する。この理由は、パラフィンワックスの融点が概ね上記範囲にあって、通気性を有しつつ撥水性及び/又は耐油性を良化することができるからである。ワックスは、上記融点の範囲であればパラフィンワックス以外の他ワックスを含むことができる。少なくとも一つの実施態様において、上記理由から、ワックス中のパラフィンワックスの含有比率は、50質量%以上である。
【0021】
パラフィンワックスは、従来公知のワックスである。パラフィンワックスは、いわゆる原油由来の石油ワックスに属し、石油精製において減圧蒸留留出油から分離及び精製して製造されるワックスである。さらに石油ワックスは、JIS K2235:1991によって、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの三種に大別される。同様に分離及び精製されるマイクロクリスタリンワックスが分子量500~800で炭素数30~60程度、大きい主鎖に側鎖を持つ分岐炭化水素(イソパラフィン)又は環状炭化水素(シクロパラフィン)が主成分であるのに対し、パラフィンワックスは、分子量が300~550と狭く、直鎖状炭化水素が主成分で炭素数が大体20~40の範囲である。
【0022】
ワックスを含有する前の紙基材は、製紙分野で従来公知の抄紙方法で下記紙料を抄造することで基本的に得ることができる原紙である。脱酸素包装材料用の紙基材は、前記原紙にワックスを含有させて得ることができる。前記原紙にワックスを含有させる方法は、塗工紙分野で従来公知の塗工装置を用いてワックスを含有する塗工液を原紙に塗工する方法、及び製紙分野で従来公知の含浸方法を用いてワックスを含有する含浸液に原紙を含浸する方法などを挙げることができる。あるいは、下記紙料にワックスを添加して抄造する方法を挙げることができる。
【0023】
いくつかの実施態様において、原紙にワックスを含有させる方法は、塗工装置を用いてワックスを含有する塗工液を原紙の両面に対して塗工する方法である。すなわち、いくつかの実施態様において、脱酸素剤包装材料用の紙基材は、ワックスを含む塗工液の塗工により両面にワックスを含有する。この理由は、紙料にワックスを添加して抄造する方法よりも、紙基材の通気性、撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。
塗工装置の例としては、塗工方式のサイズプレス、フィルムプレスコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、及びフィルムトランスファーコーターなどを挙げることができる。
【0024】
いくつかの実施態様において、紙基材がワックスを含む塗工液の塗工により両面にワックスを含有する場合、ワックスの塗工量が紙基材において片面あたり1g/m2以上3.5g/m2以下である。この理由は、紙基材の通気性、撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。
【0025】
いくつかの実施態様において、原紙にワックスを含有させる方法は、含浸方法を用いてワックスを含有する含浸液に原紙を含浸する方法である。すなわち、いくつかの実施態様において、脱酸素剤包装材料用の紙基材は、ワックスを含む含浸液の含浸によりワックスを含有する。この理由は、紙料にワックスを添加して抄造する方法よりも、紙基材の通気性、撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。含浸方法は、例えば、従来公知の含浸装置を用いる方法を挙げることができる。含浸装置の例としてはポンド方式のサイズプレスなどを挙げることができる。
【0026】
いくつかの実施態様において、紙基材がワックスを含む含浸液の含浸によりワックスを含有する場合、紙基材が有することになるワックスの含浸量が紙基材において2g/m2以上7g/m2以下である。この理由は、紙基材の通気性、撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。
【0027】
上記原紙は、例えば、木材パルプ及び/又は非木材パルプから成るスラリーに対して、填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、バインダー、濾水性向上剤、pH調整剤、カチオン性樹脂及び多価陽イオン塩等のカチオン化剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、並びに耐水化剤等の製紙分野で従来公知の各種添加剤を必要に応じて添加した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性の条件で、従来公知の抄紙方法によって抄造した抄造紙、前記抄造紙に対してカレンダー処理を施した抄造紙、前記抄造紙に対して表面サイズ剤を含むサイズプレス液でサイズプレスした普通紙、及び前記普通紙に対してカレンダー処理を施した普通紙などを挙げることができる。さらに、前記原紙の例としては、片艶クラフト紙等の片艶紙、両艶クラフト紙等の両艶紙、未晒クラフト紙、晒クラフト紙、クラフト伸長紙、グラシン紙、再生紙及び塗工紙などを挙げることができる。
【0028】
抄造は、例えば、従来公知の抄紙機を用いる方法を挙げることができる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機などを挙げることができる。
【0029】
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性及び厚みを平均化する処理である。カレンダー処理は、例えば、従来公知のカレンダー装置を用いる方法を挙げることができる。カレンダー装置の例としては、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
【0030】
サイズプレスは、製紙分野で従来公知の方法である。サイズプレスは、例えば、塗工方式のサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー及びフィルムプレスなどのロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールメタリングサイズプレス、並びにブレードメタリングサイズプレスを挙げることができ、ポンド方式のサイズプレスとしてインクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、及びタブサイズプレスなどを挙げることができる。
サイズプレスに用いる表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤は、例えば、澱粉系サイズ剤、セルロース系サイズ剤、ポリビニルアルコール系サイズ剤、スチレンアクリル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレンマレイン酸系サイズ剤、及びアクリルアミド系サイズ剤などを挙げることができる。
【0031】
木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプの例としては、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、BCTMP(Bleached ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)、CGP(ChemiGroundwood Pulp)などの機械パルプ、及びDIP(DeInked Pulp)などの古紙パルプを挙げることができる。木材としては、例えば、針葉樹及び広葉樹を挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維を原料とするパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。
木材パルプ及び/又は非木材パルプは、前記木材パルプ及び前記非木材パルプから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0032】
いくつかの実施態様において、上記パルプの濾水度は、380ml以上530ml以下である。この理由は、脱酸素剤包装材料の紙基材として通気性、並びに撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。濾水度は、ISO5627-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part 2 Canadian Standard freeness method」に準じて求められるCSF濾水度である。
【0033】
いくつかの実施態様において、ワックスを含有する前の紙基材である上記原紙は、坪量が30g/m2以上70g/m2以下である。この理由は、脱酸素剤包装材料の紙基材として通気性、並びに撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。
【0034】
いくつかの実施態様において、ワックスを含有する前の紙基材である上記原紙は、密度が0.55g/cm3以上0.75g/cm3以下である。この理由は、脱酸素剤包装材料の紙基材として通気性、並びに撥水性及び/又は耐油性が良化するからである。原紙の密度は、ISO534:2011「Paper and board-Determination of thickness, density and specific volume」に準じて求められる値である。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明の紙基材を用いる脱酸素剤包装材は、本発明の紙基材の表面に通気性を有する樹脂層及び紙基材の裏面に通気性を有するヒートシール性樹脂層を有する。本発明の紙基材を用いる前記脱酸素剤包装材は、特許文献2乃至3に記載されるが如く、本発明の紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層を設ける及び紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層を設けることにより得ることができる。このように、通気性を有する樹脂層、紙基材及び通気性を有するヒートシール性樹脂層の構成を有する脱酸素剤包装材料は、本発明の紙基材を用いることで、酸素が通過できる通気性を有しながらPFASを用いないで撥水性及び耐油性を有する。
ここで、このような脱酸素剤包装材料では、収容された脱酸素剤に対向する面は、通気性を有するヒートシール性樹脂層を有する側である。
【0036】
紙基材の表面に対して設ける通気性を有する樹脂層は、脱酸素剤包装材料分野で従来公知の樹脂から成る層である。前記樹脂層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルなど樹脂のプラスチックフィルムを積層、樹脂をラミネート又は樹脂を塗工することにより得ることができる。前記樹脂層は、一般に、穿孔又は開孔などにより通気性を有する。
【0037】
紙基材の裏面に対して設ける透気性を有するヒートシール性樹脂層は、脱酸素剤包装材料分野及びヒートシール材料分野で従来公知のヒートシール性を有する熱可塑性樹脂から成る層である。前記ヒートシール性樹脂層は、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂のプラスチックフィルムを積層、熱可塑性樹脂をラミネート又は熱可塑性樹脂を塗工することにより得ることができる。
前記ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン並びにオレフィン系共重合樹脂、オレフィンとビニル化合物との共重合樹脂、オレフィンと各種(メタ)アクリル化合物との共重合樹脂、オレフィンと不飽和カルボン酸との共重合樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィンと各種(メタ)アクリル化合物と各種不飽和カルボン酸との三元共重合樹脂、スチレン系単量体と各種(メタ)アクリル化合物との共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート、並びにポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。いくつかの実施態様において、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。前記ヒートシール性樹脂層は、一般に、穿孔又は開孔などにより通気性を有する。
【0038】
脱酸素剤包装材料が収容することができる脱酸素剤は、従来公知のものであって、特に限定されない。脱酸素剤は、例えば、鉄を主剤とする無機系のもの、アスコルビン酸系の酸素吸収物質を主剤とする有機系のもの、及び特許文献1に記載されるが如くのグリセリンなどを挙げることができる。
【0039】
いくつかの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含有する。
少なくとも一つの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含有し、前記ワックスの含有量が紙基材に対して2g/m2以上7g/m2以下である。
【0040】
いくつかの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含有しなおかつワックスを含有する前の紙基材の密度が0.55g/cm3以上0.75g/cm3以下である。
少なくとも一つの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含有しなおかつワックスを含有する前の紙基材の密度が0.55g/cm3以上0.75g/cm3以下であり、前記ワックスの含有量が紙基材に対して2g/m2以上7g/m2以下である。
【0041】
いくつかの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、及び前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含む塗工液の塗工により両面に含有する。
少なくとも一つの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含む塗工液の塗工により両面に含有し、前記ワックスの塗工量が紙基材において片面あたり1g/m2以上3.5g/m2以下である。
【0042】
いくつかの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、及び前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含む含浸液の含浸により含有する。
少なくとも一つの実施態様において、脱酸素剤包装材料は、紙基材と、前記紙基材の表面に対して通気性を有する樹脂層と、前記紙基材の裏面に対して通気性を有するヒートシール性樹脂層とを有し、前記紙基材が、融点が50℃以上80℃以下であるワックスを含む含浸液の含浸により含有し、前記ワックスの含有量が紙基材に対して2g/m2以上7g/m2以下である。
【実施例0043】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表わす。塗工量及び含浸量は乾燥固形分量を示す。
【0044】
実施例及び比較例に使用する紙基材を以下の手順により作製した。
【0045】
<紙基材>
(原紙)
LBKP/NBKP=80/20質量部からなるパルプスラリーに、二酸化チタン填料10質量部、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤1.5質量部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系湿潤紙力剤1質量部、硫酸アルミニウム定着剤2質量部、アルミン酸ナトリウムpH調整剤0.5質量部を添加して調成した紙料を長網抄紙機にて坪量51g/m2となるように抄造し、スチーム加熱多筒シリンダ乾燥機で乾燥して抄造紙を得た。得られる抄造紙の密度を調整すべく抄紙機のプレスパート条件を制御した。さらに、前記抄造紙に密度乃至厚さを調整すべく必要に応じてカレンダー処理を施して原紙を得た。得た原紙の密度は表1に記載する。
【0046】
ワックスを原紙に含有させる方法は下記2種類の方法を採用した。採用した方法は、表1に記載する。
【0047】
(ワックスの含有方法=塗工)
原紙にワックスを含有させて紙基材を得る方法は、塗工方式のサイズプレスであるロッドメタリングサイズプレスを用いた。得た紙基材は、ワックスを含有する塗工液を塗工方式のサイズプレスによって原紙の両面に塗工及び乾燥されてワックスを含有した。ワックスの塗工量は、紙基材の片面あたりとして表1に記載する。
【0048】
(ワックスの含有方法=含浸)
原紙にワックスを含有させて紙基材を得る方法は、ポンド方式のサイズプレスであるホリゾンタルサイズプレスを用いた。得た紙基材は、ワックスを含有する含浸液をポンド方式のサイズプレスによって原紙へ含浸及び乾燥されてワックスを含有した。紙基材におけるワックスの含浸量は、表1に記載する。
【0049】
<脱酸素剤包装材料>
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚さ:15μm)に冷針開孔を施し(孔径:0.5mm、開孔ピッチ:縦3mm、横3mm)、得られた開孔フィルムを、紙基材の表面に対して積層した。続いて、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムに熱針開孔を施した開孔フィルム(厚み:40μm)を紙基材の裏面に対して積層し、脱酸素剤用包装材料を得た。
【0050】
【0051】
表1に記載のワックスなどは以下のものを採用した。
WAX1:パラフィンワックス115(融点47℃、日本精蝋社)
WAX2:パラフィンワックス120(融点50℃、日本精蝋社)
WAX3:蜜蝋(融点62℃)
WAX4:パラフィンワックス145(融点63℃、日本精蝋社
WAX5:パラフィンワックス155(融点69℃、日本精蝋社)
WAX6:マイクロクリスタリンワックスHi-Mic-1045
(融点72℃、日本精蝋株式会社℃)
WAX7:合成ワックスFT-0070(融点72℃、日本精蝋社)
WAX8:パラフィンワックスHNP-9(融点75℃、日本精蝋社)
WAX9:ライスワックスWF(融点75℃、山桂産業社)
WAX10:マイクロクリスタリンワックスHi-Mic-1070
(融点80℃、日本精蝋社)
WAX11:マイクロクリスタリンワックスHi-Mic-1090
(融点88℃、日本精蝋社)
WAX12:マイクロクリスタリンワックスHI-Mic-2095
(融点101℃、日本精蝋社)
フッ素系:フッ素系化合物の耐油剤(AG-530、旭硝子社)
【0052】
各実施例及び各比較例について下記の事項を評価した。
【0053】
<通気性>
包装材料の通気性は、ガーレー透気度の測定によって評価した。包装材料のガーレー透気度は、ISO5636-5:2013「Paper and board-Determination of air permeance (medium range)-Part5:Gurley method」に準じて、東洋精機製作所社製B型ガーレーデンソメーターを用いて測定した。ガーレー透気度は、一定圧力差のもとで一定体積の空気が一定面積の紙を通過する秒数であり、数値が小さいほど通気性が高い。包装材料の通気性を、測定結果から下記の基準で評価を行った。本発明において、脱酸素剤包装材料の紙基材及び包装材料は、評価A、B又はCであれば酸素が通過できる通気性を有するものとする。
A:20秒以下。
B:20秒超、30秒以下。
C:30秒超、40秒以下。
D:40秒超。
【0054】
<撥水性>
包装材料の撥水性は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000「紙及び板紙-はっ水性試験方法」で規定された試験結果によって評価した。前記試験方法では撥水性をR0、R2、R4、R6、R7、R8、R9及びR10と区分し、数値が大きいほど撥水性が高い。包装材料の撥水性を、結果から下記の基準で評価を行った。本発明において、脱酸素剤包装材料の紙基材及び包装材料は、評価A、B又はCであれば撥水性を有するものとする。
A:R8以上である。
B:R7である。
C:R6である。
D:R4以下である。
【0055】
<耐油性>
包装材料の耐油性は、TAPPI UM557「Repellency of Paper and Board to Grease, Oil, and Waxes(Kit Test)」で規定された試験結果によって評価した。前記KIT試験では耐油性を1級~12級まで区分し、数値が大きい級ほど耐油性が高い。包装材料の耐油性を、結果から下記の基準で評価を行った。本発明において、脱酸素剤包装材料の紙基材及び包装材料は、評価A、B又はCであれば耐油性を有するものとする。
A:7級以上である。
B:6級である。
C:5級である。
D:4級以下である。
【0056】
評価結果を表1に示す。
【0057】
表1から、本発明の構成を満足する実施例1~22の紙基材であって、それを用いた包装材料は、通気性を有しつつ、耐水性及び耐油性を有しながらPFASを含有しない脱酸素剤包装材料に適する包装材料であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~4の紙基材であって、それを用いた包装材料は、上記のような効果を満足できないと分かる。比較例5は、通気性を有しつつ、耐水性及び耐油性を有するものの、PFASを用いる。
【0058】
また、主に実施例1~5の間の対比から、ワックスを含有する前の紙基材である原紙の密度が0.55g/cm3以上0.75g/cm3以下である紙基材を用いた包装材料は、通気性、撥水性及び耐油性が良化すると分かる。