(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113308
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20230808BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G08B17/06 K
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015579
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舛永 鈴菜
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AA06
5C085BA12
5C085CA15
5C085FA11
5C085FA14
5G405AA01
5G405AB01
5G405AB02
5G405AB03
5G405AD07
5G405CA21
5G405FA06
5G405FA09
(57)【要約】
【課題】感知器カバーの外観性を損ねない排水構造を提供すること。感知器カバーの内面に付着した水を排水するに際して、排水経路が感知器本体などの収容物に干渉しないようにすること。
【解決手段】感知器は、室内の状態変化を感知する感知部と、感知部が実装される基板と、基板が配置される感知器本体を備えると共に、感知部と基板と感知器本体が内部に収容される感知器カバーを備え、感知器カバーは、感知器本体を覆う底部と、底部の中央に設けられ感知部に臨む開口部を備え、底部の内面には、内面上の水を開口部に導く排水経路が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の状態変化を感知する感知部と、前記感知部が実装される基板と、前記基板が配置される感知器本体を備えると共に、前記感知部と前記基板と前記感知器本体が内部に収容される感知器カバーを備える感知器であって、
前記感知器カバーは、前記感知器本体を覆う底部と、前記底部の中央に設けられ前記感知部に臨む開口部を備え、
前記底部の内面には、前記内面上の水を前記開口部に導く排水経路が設けられていることを特徴とする感知器。
【請求項2】
前記底部の内面には、前記基板の外側を囲む囲壁リブが設けられ、
前記囲壁リブには、当該囲壁リブの外側の前記内面を前記囲壁リブの内側の前記内面に繋げる切り欠き部が設けられ、
前記排水経路は、前記切り欠き部を通って流れる水を前記開口部に導くことを特徴とする請求項1記載の感知器。
【請求項3】
前記排水経路は、前記切り欠き部から前記開口部に延びる一対のガイド壁で区画されていることを特徴とする請求項2記載の感知器。
【請求項4】
前記ガイド壁は、前記開口部に配置される光放出部材の支持枠を兼ねることを特徴とする請求項3記載の感知器。
【請求項5】
前記開口部の周囲には、前記底部の外側に突出して前記感知部を保護する保護リブが設けられ、
前記排水経路は、前記保護リブに臨むように設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災用の感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災等の防災用感知器は、煙や熱、或いはCOなどの有害ガスを単独または複合で感知する感知部を備えると共に、感知部が感知した信号を受信機に送信するための電子回路が実装された感知器本体を備える。そして、感知部や感知器本体が収容される感知器カバーを備えている。
【0003】
感知器カバーは、中央に前述した感知部を露出させるための開口を有するカバー部材を備えている。このカバー部材は、内面が天井面に対面していることで、天井に生じる結露水等の水が滴下してカバー部材の内面等に付着することがある。このため、カバー部材には、内面に付着した水を感知部や感知器本体に触れさせること無く排水する排水構造が設けられている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感知器カバーの排水構造は、前述した従来技術によると、カバー部材の内面に水を排水する排水溝を設け、排水溝の底部に排水溝に流れ込んだ水を排出する水抜き孔を設けている。この従来技術によると、水抜き孔がカバー部材の下面側に貫通して開口するので、外から水抜き孔が視認されることなり、外観性を損ねる。また、視認性を考慮すると外から視認される水抜き孔の向きを、同室内の複数の感知器で一定方向に揃える必要が生じ、施工性が悪化する問題が生じる。
【0006】
これに対して、前述した排水溝や水抜き孔を設けること無く、カバー部材の内面に付着した水を内面の傾斜で自然にカバー部材の開口に導こうとすると、水の排水経路が特定されないことになり、内部に収容されている感知器本体などの収容物に排水経路が干渉する虞があり、電子部品等が水に濡れて不具合を起こす懸念があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、感知器カバーの外観性を損ねない排水構造を提供すること、感知器カバーの内面に付着した水を排水するに際して、排水経路が感知器本体などの収容物に干渉しないようにすること、が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の感知器は、以下の構成を具備するものである。
室内の状態変化を感知する感知部と、前記感知部が実装される基板と、前記基板が配置される感知器本体を備えると共に、前記感知部と前記基板と前記感知器本体が内部に収容される感知器カバーを備える感知器であって、前記感知器カバーは、前記感知器本体を覆う底部と、前記底部の中央に設けられ前記感知部に臨む開口部を備え、前記底部の内面には、前記内面上の水を前記開口部に導く排水経路が設けられていることを特徴とする感知器。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明の感知器は、感知器カバーの底部の内面に、内面上の水を底部中央の開口部に導く排水経路が設けられているので、外から見える水抜き孔などが不要になる。また、感知器カバーの底部中央に設けられている開口部は、感知器カバーの内部に収容されている感知部に対して気流を流入させるものであり、新たに排水用の開口部を設ける必要が無い。
【0010】
これによると、感知器カバーの外観を損ねることが無く、また、施工時の方向性を考慮する必要が無いので施工性を向上させることができる。そして、新たに排水用の開口部を設けることなく、感知器カバーの底部の内面に特定の排水経路を設けることで、感知器カバーの収容物に干渉しないように排水経路を設定することができ、電子部品等の水濡れによる不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る感知器の分解斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る感知器の外観斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係る感知器の断面図(
図2におけるA-A断面図)。
【
図4】本発明の実施形態に係る感知器の感知器カバーを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。また、この発明の感知器を説明するために用いる「前」「後(背)」「左」「右」等の位置や方向等を示す語は、感知器の設置状態における位置や方向に従って用いているものである。
【0013】
図1~
図3に示すように、本発明の実施形態に係る感知器1は、感知部2と基板3と感知器本体4を備えると共に、これらの感知部2と基板3と感知器本体4が内部に収容される感知器カバー10を備えている。
【0014】
感知部2は、室内の状態変化を感知するセンサであり、図示の例では、棒状のサーミスタを用いた感熱素子を示しているが、これに限らず、煙を感知する光電式の煙感知部、COなどの有害ガスを感知するガスセンサ、或いはこれらを複合感知する複合感知部などであってもよい。感知部2は、感知部2の出力を信号処理する電子回路を備える基板3に実装されている。基板3に感知部2を実装することで、前述した電子回路と感知部2が電気的に接続される。
【0015】
感知部2を実装した基板3は、感知器本体4の前面に配置される。感知器本体4は、天井などの被取り付け箇所に取り付けられる、感知器用ベース(図示省略)に取り付けるための取り付け部40を有する枠体41を備えている。枠体41には、基板3が接続された本体部42が一体成形されている。前述した取り付け部40に、接続具43の一端側が接続され、接続具43の他端側は、天井等の被取り付け箇所に設けられる接続部にネジ5によって接続される。本体部42は、基板3の電子回路が処理した信号を送信する通信回路を具備しており、前述した接続具43は、感知器本体4を天井などの被取り付け箇所に機械的に取り付けると共に、本体部42の通信回路を天井等に設けた通信配線に接続する。
【0016】
感知器カバー10は、天井などに取り付けられた感知器本体4に対して着脱自在に取り付けられる。感知器カバー10は、感知器本体4を覆う底部10Aと、底部10Aの外縁に設けられる外周壁部10Bと、底部10Aの中央に設けられる開口部10Cを備えている。底部10Aからは、取り付け孔11Aを有する取り付けリブ11が突出しており、この取り付けリブ11の取り付け孔11Aに感知器本体4の枠体41に設けた係合突起41Aを係合させることで、感知器カバー10は、感知器本体4に対して着脱自在に取り付けられる。
【0017】
感知器カバー10における底部10Aの内面には、各種のリブが立設されている。図示の例では、外周壁部10Bの内側に沿って外側リブ12が設けられ、底部10Aの中間位置に、基板3の周囲を囲む囲壁リブ13が設けられている。また、底部10Aにおける開口部10Cの周囲には内側リブ14、15が設けられている。
【0018】
また、感知器カバー10における底部10Aの外面には、開口部10Cの周囲に、底部10Aの外側に突出して感知部2を保護する保護リブ16が設けられている。保護リブ16は、感知部2に臨む開口部10Cの周りに設けられており、開口部10Cの中心に位置する感知部2を囲んで機械的な衝撃等から保護する機能を有している。
【0019】
なお、感知器カバー10の底部10A中央に設けられる開口部10Cは、感知器カバー10の内部に収容させる感知部2(サーミスタなど)に対して室内の気流や火災時の熱気流を感知させるために設ける気流の入口であり、感知器カバー10の機能上不可欠な部位である。
【0020】
感知器カバー10には、前述した感知器本体4などに加えて、光放出部材6が収容されている。光放出部材6は、基板3に実装される発光素子7が発する光を導光して、開口部10C内で光を放出させるものであり、感知器1の作動時に発光素子7が発光して光放出部材6から光が放出されることで、感知器1の動作状態を外部に認知させる。光放出部材6は、光放出部6Aが開口部10C内に配置され、光放出部6Aの外側に延設される支持部6Bが前述した内側リブ14,15や囲壁リブ13の切り欠きに支持されている。
【0021】
このような感知器1は、感知器カバー10において、底部10Aの内面上の水を開口部10Cに導く排水経路が設けられている。この排水経路は、
図4に示すように、底部10Aの内面上で区画されている。また、底部10Aの内面には、内面上の水が区画された排水経路を流れるように傾斜が形成されており、更に、排水経路においては、排水経路に入った水が開口部10Cに向けて流れるように傾斜が形成されている。
【0022】
図4において、具体的な排水経路の一例を説明する。感知器カバー10の底部10Aの内面は、開口部10Cを囲むように略周状に囲壁リブ13が設けられ、囲壁リブ13の内側に基板3を備えた本体部42が位置するように感知器本体4で覆われている。このため、天井などから滴下する水は、底部10Aの内面における囲壁リブ13の外側の領域Sに付着する。この領域Sは、底部10Aの中心(開口部10Cの中心)に向かって低くなる傾斜面を有している(
図3参照)。これにより、領域Sに付着した水は、
図4に示す太線矢印のように、先ず、囲壁リブ13の外側に移動し、領域S内で更に低い位置に移動する。
【0023】
囲壁リブ13には、囲壁リブ13の外側における底部10Aの内面(領域S)を囲壁リブ13の内側における底部10Aの内面に繋げる切り欠き部13Aが設けられている。図示の例では、切り欠き部13Aは、開口部10Cの周囲に、排水経路が対向するような配置で2つ設けられているが、その数は適宜変更可能である。例えば、切り欠き部13Aの配置を、開口部10Cの周囲に十字になるように4か所に設けると、2つのみ設けた場合より排水経路のばらつきを減らすことができる。
【0024】
そして、この切り欠き部13Aの入口が領域S内で最も低い位置になるように、領域Sにおける傾斜が形成されている。これにより、領域Sに付着した水は、囲壁リブ13の切り欠き部13Aに移動する。そして、切り欠き部13Aから開口部10Cに向かって低くなる傾斜によって、切り欠き部13Aを通った水が開口部10Cに導かれる。図示の太線矢印は、前述した水の流れによる排水経路を示している。
【0025】
また、図示の例では、前述した排水経路が、切り欠き部13Aから開口部10Cに延びる一対のガイド壁17で区画されている。このように排水経路をガイド壁17で区画することで、底部10Aの内面において、水の不要な広がりを抑制することができ、排水経路が収容物に干渉することを回避することができる。
【0026】
そして、図示の例では、前述した排水経路は、開口部10Cの下流側において前述した保護リブ16に臨むように設けられている。これによると、排水経路を通って開口部10Cに到達した水が、保護リブ16を伝って感知部2の先端より低い位置に導かれるので、水の流れによって感知部2が濡れてしまうことを回避することができる。
【0027】
なお、図示の例では、排水経路を形成するガイド壁17は、開口部10Cに配置される前述した光放出部材6の支持枠を兼ねている。すなわち、光放出部6の支持部6Bがガイド壁17に嵌った状態で支持される。これによると、光放出部材6の支持構造を利用して区画された排水経路を形成することができるので、底部10A内のスペースを効率良く利用して特定された排水経路を形成することができる。
【0028】
このような感知器1によると、感知器カバー10における底部10Aの内面に区画された排水経路を形成し、その排水経路が底部10Aの開口部10Cに至るようにし、感知器カバー10における気流の入口である開口部10Cを排水用として兼用しているので、別途、水抜き孔としての開口や孔を感知器カバー10の一部に開けることが不要になる。このため、
図2に示すように、外観上は全く視認されない排水構造を形成することができる。これによって外観性を向上させることができると共に、施工時の方向性を考慮する必要が無いので施工性を向上させることができる。
【0029】
また、感知器カバー10の底部10Aの内面に区画されている排水経路は、感知器カバー10の収容物に対して隔離された経路に形成することができるので、排水経路が感知器カバー10の収容物に干渉して電子部品などが水濡れする不具合を回避することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:感知器,2:感知部,3:基板,4:感知器本体,5:ネジ,
6:光放出部材,6A:光放出部,6B:支持部,7:発光素子,
10:感知器カバー,10A:底部,10B:外周壁部,10C:開口部,
11:取り付けリブ,11A:取り付け孔,12:外側リブ,13:囲壁リブ,
13A:切り欠き部,
14,15:内側リブ,16:保護リブ,17:ガイド壁,
40:取り付け部,41:枠体,41A:係合突起,
42:本体部,43:接続具,S:領域