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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113309
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】導波管スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/12 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
H01P1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015581
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健一
【テーマコード(参考)】
5J012
【Fターム(参考)】
5J012AA03
(57)【要約】
【課題】対向する2つの導波管間の隙間が広がっても周波数特性が劣化しにくく、透過周波数帯域が広い導波管スイッチを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの導波路11,21がそれぞれ形成された2つの導波管10,20の端面10b,20aが、所定の隙間gを開けて平行に対向する導波管スイッチ1であって、各導波路11,21は、方形導波路12,22と、方形導波路12,22に連続し、2つの導波管10,20のいずれかの端面10b,20aに開口するホーン型導波路13,23と、を含み、ホーン型導波路13,23の断面寸法は、ホーン型導波路13,23と方形導波路12,22との導波路境界において方形導波路12,22の断面寸法に等しく、導波路境界から端面10b,20aに向かって連続的に変化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導波路(11,21)がそれぞれ形成された2つの導波管(10,20)の端面(10b,20a)が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管スイッチ(1)であって、
各前記導波路は、方形導波路(12,22)と、前記方形導波路に連続し、前記2つの導波管のいずれかの前記端面に開口するホーン型導波路(13,23)と、を含み、
前記ホーン型導波路の断面寸法は、前記ホーン型導波路と前記方形導波路との導波路境界(B1,B2)において前記方形導波路の断面寸法に等しく、前記導波路境界から前記端面に向かって連続的に変化することを特徴とする導波管スイッチ。
【請求項2】
前記方形導波路及び前記ホーン型導波路の開口の形状は共に長方形であり、
前記方形導波路の開口の長辺方向を水平方向とし、前記方形導波路の開口の短辺方向を垂直方向とした場合に、前記ホーン型導波路の開口の長辺方向は前記垂直方向に平行であり、前記ホーン型導波路の開口の短辺方向は前記水平方向に平行であることを特徴とする請求項1に記載の導波管スイッチ。
【請求項3】
前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記ホーン型導波路の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝(25)が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導波管スイッチ。
【請求項4】
ベース部(31)と、
前記ベース部に固定され、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路(41,42,43)が第1の端面(40a)から第2の端面(40b)まで貫通して形成された第1の固定導波管ブロック(40)と、
前記ベース部に固定され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に平行な第3の端面(50a)を有し、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路(51)が前記第3の端面から第4の端面(50b)まで貫通して形成された第2の固定導波管ブロック(50)と、
前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第5の端面(60a)と、前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第6の端面(60b)とを有し、金属壁で囲まれた複数の導波路(61,62,63)が、前記第5の端面から前記第6の端面まで貫通して形成され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面及び前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に対して平行にスライド移動可能な状態で前記ベース部に支持された可動導波管ブロック(60)と、
前記ベース部に設けられ、前記可動導波管ブロックをスライド移動させる駆動装置(70)と、を有し、
前記可動導波管ブロックは、前記第1の固定導波管ブロック及び前記第2の固定導波管ブロックに対してスライド移動し、異なる複数の位置で、前記可動導波管ブロックの前記複数の導波路のいずれかが、前記第1の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかと前記第2の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかとの間を選択的に接続し、
前記第1の固定導波管ブロックの前記少なくとも1つの導波路は、前記第1の端面に開口する第1の方形導波路(41a,42a,43a)と、前記第1の方形導波路に連続し、前記第2の端面に開口する第1のホーン型導波路(41b,42b,43b)と、を含み、
前記第2の固定導波管ブロックの前記少なくとも1つの導波路は、前記第4の端面に開口する第2の方形導波路(51a)と、前記第2の方形導波路に連続し、前記第3の端面に開口する第2のホーン型導波路(51b)と、を含み、
前記可動導波管ブロックの各前記導波路は、第3の方形導波路(61a,62a,63a)と、前記第3の方形導波路に連続し、前記第5の端面に開口する第3のホーン型導波路(61b,62b,63b)と、前記第3の方形導波路に連続し、前記第6の端面に開口する第4のホーン型導波路(61c,62c,63c)と、を含み、
前記第1のホーン型導波路の断面寸法は、前記第1のホーン型導波路と前記第1の方形導波路との第1の導波路境界(B41,B42,B43)において前記第1の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第1の導波路境界から前記第2の端面に向かって連続的に変化し、
前記第2のホーン型導波路の断面寸法は、前記第2のホーン型導波路と前記第2の方形導波路との第2の導波路境界(B51)において前記第2の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第2の導波路境界から前記第3の端面に向かって連続的に変化し、
前記第3のホーン型導波路の断面寸法は、前記第3のホーン型導波路と前記第3の方形導波路との第3の導波路境界(B61b,B62b,B63b)において前記第3の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第3の導波路境界から前記第5の端面に向かって連続的に変化し、
前記第4のホーン型導波路の断面寸法は、前記第4のホーン型導波路と前記第3の方形導波路との第4の導波路境界(B61c,B62c,B63c)において前記第3の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第4の導波路境界から前記第6の端面に向かって連続的に変化することを特徴とする導波管スイッチ。
【請求項5】
前記第1及び前記第2の方形導波路、並びに、前記第1乃至前記第4のホーン型導波路の開口の形状はいずれも長方形であり、
前記第1及び前記第2の方形導波路の開口の長辺方向を水平方向とし、前記第1及び前記第2の方形導波路の開口の短辺方向を垂直方向とした場合に、前記第1乃至前記第4のホーン型導波路の開口の長辺方向は前記垂直方向に平行であり、前記第1乃至前記第4のホーン型導波路の開口の短辺方向は前記水平方向に平行であることを特徴とする請求項4に記載の導波管スイッチ。
【請求項6】
前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面と、前記可動導波管ブロックの前記第5の端面との少なくとも一方において、各前記導波路の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝(25)が設けられているとともに、
前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面と、前記可動導波管ブロックの前記第6の端面との少なくとも一方において、各前記導波路の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝(25)が設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の導波管スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管スイッチに関し、特に、金属壁で囲まれた導波路を有する導波管の伝搬経路を切り替えるための導波管スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
今後更なる増大が予想されるモバイルトラフィックに対応するため、数十Gbps級の伝送速度を実現することが可能なミリ波・テラヘルツ波帯を無線通信に利用することが強く求められており、例えばIEEE802.15.3dでは、252~325GHzの使用が検討されている。
【0003】
例えば、WR-3帯域(220~325GHz)の電磁波を伝搬させる伝搬経路としては、内寸が0.864mm×0.432mmの方形導波管が用いられる。このような方形導波管を用いた各種装置では、電磁波の伝搬経路を切り替えるための導波管スイッチが必要になる。導波管スイッチは、互いに対向する方形導波管同士をスライドさせて伝搬経路を切り替えるようになっているので、これらの方形導波管の接合部には隙間が設けられている。しかしながら、この隙間からは電磁波が漏洩し、一方の方形導波管から他方の方形導波管への透過特性を悪化させる。
【0004】
このため、従来、導波管スイッチの導波管開口にチョーク溝を設けて隙間からの漏洩を防ぐ工夫がなされている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された導波管スイッチには、導波管開口の周囲に管内波長λgの1/4の深さの矩形枠状に連続した複数のチョーク溝が、導波管開口の中心位置に対して互いに同心に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6185455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の導波管スイッチは、方形導波管の接合部の隙間が広がると透過特性S21が劣化しやすいという問題があった。また、そもそも、特許文献1に開示された導波管スイッチは、WR-3帯域に対応したものではなく、その透過周波数帯域も狭いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、対向する2つの導波管間の隙間が広がっても周波数特性が劣化しにくく、透過周波数帯域が広い導波管スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る導波管スイッチは、少なくとも1つの導波路がそれぞれ形成された2つの導波管の端面が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管スイッチであって、各前記導波路は、方形導波路と、前記方形導波路に連続し、前記2つの導波管のいずれかの前記端面に開口するホーン型導波路と、を含み、前記ホーン型導波路の断面寸法は、前記ホーン型導波路と前記方形導波路との導波路境界において前記方形導波路の断面寸法に等しく、前記導波路境界から前記端面に向かって連続的に変化する構成である。
【0009】
つまり、本発明に係る導波管スイッチは、互いに対向する2つの導波管が、互いに対向するそれぞれの端面に開口するホーン型導波路を含む構造である。この構成により、本発明に係る導波管スイッチは、対向する2つの導波管間の隙間が広がっても周波数特性が劣化しにくく、透過周波数帯域を広くすることができる。
【0010】
また、本発明に係る導波管スイッチにおいては、前記方形導波路及び前記ホーン型導波路の開口の形状は共に長方形であり、前記方形導波路の開口の長辺方向を水平方向とし、前記方形導波路の開口の短辺方向を垂直方向とした場合に、前記ホーン型導波路の開口の長辺方向は前記垂直方向に平行であり、前記ホーン型導波路の開口の短辺方向は前記水平方向に平行であってもよい。
【0011】
この構成により、本発明に係る導波管スイッチは、方形導波路の開口の長辺方向を水平方向とした場合に、ホーン型導波路の開口の短辺方向が水平方向に平行な構造であるため、高次モードの発生を抑制しながら、2つの導波管の端面間の隙間に漏洩する電力を抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る導波管スイッチにおいては、前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記ホーン型導波路の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝が設けられた構成であってもよい。
【0013】
この構成により、本発明に係る導波管スイッチは、2つの導波管の端面の少なくとも一方において、ホーン型導波路の長方形の開口の周囲を囲む位置にチョーク溝が設けられた場合には、2つの導波管の端面間の隙間からの電磁波漏洩を更に抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る導波管スイッチは、ベース部と、前記ベース部に固定され、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路が第1の端面から第2の端面まで貫通して形成された第1の固定導波管ブロックと、前記ベース部に固定され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に平行な第3の端面を有し、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路が前記第3の端面から第4の端面まで貫通して形成された第2の固定導波管ブロックと、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第5の端面と、前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第6の端面とを有し、金属壁で囲まれた複数の導波路が、前記第5の端面から前記第6の端面まで貫通して形成され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面及び前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に対して平行にスライド移動可能な状態で前記ベース部に支持された可動導波管ブロックと、前記ベース部に設けられ、前記可動導波管ブロックをスライド移動させる駆動装置と、を有し、前記可動導波管ブロックは、前記第1の固定導波管ブロック及び前記第2の固定導波管ブロックに対してスライド移動し、異なる複数の位置で、前記可動導波管ブロックの前記複数の導波路のいずれかが、前記第1の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかと前記第2の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかとの間を選択的に接続し、前記第1の固定導波管ブロックの前記少なくとも1つの導波路は、前記第1の端面に開口する第1の方形導波路と、前記第1の方形導波路に連続し、前記第2の端面に開口する第1のホーン型導波路と、を含み、前記第2の固定導波管ブロックの前記少なくとも1つの導波路は、前記第4の端面に開口する第2の方形導波路と、前記第2の方形導波路に連続し、前記第3の端面に開口する第2のホーン型導波路と、を含み、前記可動導波管ブロックの各前記導波路は、第3の方形導波路と、前記第3の方形導波路に連続し、前記第5の端面に開口する第3のホーン型導波路と、前記第3の方形導波路に連続し、前記第6の端面に開口する第4のホーン型導波路と、を含み、前記第1のホーン型導波路の断面寸法は、前記第1のホーン型導波路と前記第1の方形導波路との第1の導波路境界において前記第1の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第1の導波路境界から前記第2の端面に向かって連続的に変化し、前記第2のホーン型導波路の断面寸法は、前記第2のホーン型導波路と前記第2の方形導波路との第2の導波路境界において前記第2の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第2の導波路境界から前記第3の端面に向かって連続的に変化し、前記第3のホーン型導波路の断面寸法は、前記第3のホーン型導波路と前記第3の方形導波路との第3の導波路境界において前記第3の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第3の導波路境界から前記第5の端面に向かって連続的に変化し、前記第4のホーン型導波路の断面寸法は、前記第4のホーン型導波路と前記第3の方形導波路との第4の導波路境界において前記第3の方形導波路の断面寸法に等しく、前記第4の導波路境界から前記第6の端面に向かって連続的に変化する構成である。
【0015】
つまり、本発明に係る導波管スイッチは、上記の導波管スイッチの構成を可動部(可動導波管ブロック)、第1の固定導波管ブロック、及び第2の固定導波管ブロックに用いた構造である。この構成により、本発明に係る導波管スイッチは、スイッチの透過特性を広帯域にわたって改善し、第1の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間と、第2の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間における意図しない電磁波の漏洩を抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る導波管スイッチは、第1の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間と、第2の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間を従来よりも広げても周波数特性が劣化しにくく、透過周波数帯域を広くすることができる。また、本発明に係る導波管スイッチは、第1の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間と、第2の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間を従来よりも広く取れるため、機械加工精度が緩和され、経年変化への耐性も高くなる。
【0017】
また、本発明に係る導波管スイッチにおいては、前記第1及び前記第2の方形導波路、並びに、前記第1乃至前記第4のホーン型導波路の開口の形状はいずれも長方形であり、前記第1及び前記第2の方形導波路の開口の長辺方向を水平方向とし、前記第1及び前記第2の方形導波路の開口の短辺方向を垂直方向とした場合に、前記第1乃至前記第4のホーン型導波路の開口の長辺方向は前記垂直方向に平行であり、前記第1乃至前記第4のホーン型導波路の開口の短辺方向は前記水平方向に平行であってもよい。
【0018】
つまり、本発明に係る導波管スイッチは、第1及び第2の方形導波路の長辺方向に対して、第1乃至第4のホーン型導波路の開口の短辺方向が平行な構造であるため、高次モードの発生を抑制しながら、第1の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間と、第2の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間に漏洩する電力を抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係る導波管スイッチにおいては、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面と、前記可動導波管ブロックの前記第5の端面との少なくとも一方において、各前記導波路の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝が設けられているとともに、前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面と、前記可動導波管ブロックの前記第6の端面との少なくとも一方において、各前記導波路の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝が設けられている構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明に係る導波管スイッチは、第1の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間と、第2の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間に漏洩する電力を更に抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、対向する2つの導波管間の隙間が広がっても周波数特性が劣化しにくく、透過周波数帯域が広い導波管スイッチを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る導波管スイッチの構造を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る導波管スイッチの導波路の開口の中心を含む断面を示す図であって、(a)はYZ断面を示しており、(b)はXZ断面を示している。
図3】本発明の第1の実施形態に係る導波管スイッチにおけるチョーク構造を示す拡大正面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る導波管スイッチの2つの導波管の端面間の隙間における電界の面内分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
図5】本発明の第1の実施形態に係る導波管スイッチ(チョーク溝なし)の透過特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6】本発明の第1の実施形態に係る導波管スイッチ(チョーク溝あり)の透過特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7】本発明の第2の実施形態に係る導波管スイッチの分解斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る導波管スイッチの側面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る導波管スイッチの平面図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る導波管スイッチの動作説明図(その1)である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る導波管スイッチの動作説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る導波管スイッチの実施形態について、図面を用いて説明する。一般に、導波管スイッチなどの可動部の周りには隙間が必要であるが、機械加工精度の制約から、許容される隙間の大きさには下限がある。また、可動部を支持している機構の摺動部の摩耗などによって隙間が広がることもある。使用周波数が高い(波長が短い)ほど、同じ大きさの隙間でも波長に対して実質的に広くなるため、電磁波の漏洩が増加することになる。本発明に係る導波管スイッチは、このような可動部の周りの隙間における電磁波の漏洩を抑制するものである。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導波管スイッチ1を4分の1に分割して示している。導波管スイッチ1は、2つの導波管10,20の端面10b,20aが、所定の隙間gを開けて平行に対向する構造である。導波管10には導波路11が形成され、導波管20には導波路21が形成されている。なお、後述する第1の固定導波管ブロック40や可動導波管ブロック60のように、導波管10,20には複数の導波路が形成されていてもよい。
【0025】
2つの導波管10,20は、例えば、真鍮、アルミニウム、銅、金などの導電性材料により形成される。これらの導電性材料のうち、アルミニウムは、加工がしやすくコストが安い上に表面粗さを小さくできるため、特に好ましい。
【0026】
図2(a)及び(b)に示すように、導波管10の導波路11は、端面10aに開口する方形導波路12と、方形導波路12に連続し、端面10bに開口するホーン型導波路13と、を含む。方形導波路12とホーン型導波路13は、同一の導電性材料により一体形成されていてもよい。同様に、導波管20の導波路21は、端面20bに開口する方形導波路22と、方形導波路22に連続し、端面20aに開口するホーン型導波路23と、を含む。方形導波路22とホーン型導波路23は、同一の導電性材料により一体形成されていてもよい。なお、図2(a)及び(b)では、後述するチョーク溝25の図示を省略している。
【0027】
方形導波路12,22のZ方向に垂直な断面の形状、ホーン型導波路13,23のZ方向に垂直な断面の形状、方形導波路12の端面10aにおける開口の形状、方形導波路22の端面20bにおける開口の形状、ホーン型導波路13の端面10bにおける開口の形状、及びホーン型導波路23の端面20aにおける開口の形状は、いずれも長方形(正方形の場合を含む)である。
【0028】
方形導波路12,22の開口の長辺方向及び短辺方向、並びに、ホーン型導波路13,23の開口の長辺方向及び短辺方向は、導波路11,21の延伸方向(Z方向)に垂直である。また、方形導波路12,22の開口の長辺方向を水平方向(X方向)とし、方形導波路12,22の開口の短辺方向を垂直方向(Y方向)とした場合に、ホーン型導波路13,23の開口の長辺方向は垂直方向(Y方向)に平行であり、ホーン型導波路13,23の開口の短辺方向は水平方向(X方向)に平行である。
【0029】
ホーン型導波路13の断面寸法は、ホーン型導波路13と方形導波路12との導波路境界B1において方形導波路12の断面寸法に等しく、この導波路境界B1から端面10bに向かって連続的に変化している。同様に、ホーン型導波路23の断面寸法は、ホーン型導波路23と方形導波路22との導波路境界B2において方形導波路22の断面寸法に等しく、この導波路境界B2から端面20aに向かって連続的に変化している。
【0030】
例えば、方形導波路12,22は、断面寸法が0.864mm×0.432mmであり、WR-3帯域(220~325GHz)を透過帯域とするWR-3導波管を構成する。また、ホーン型導波路13,23は、Z方向の長さが例えば3mmであり、断面寸法が、方形導波路12,22との導波路境界B1,B2において0.864mm×0.432mmであり、端面10b,20aにおいて0.73mm×1.15mmである。つまり、ホーン型導波路13,23は、XY平面に平行な断面の面積が、方形導波路12,22との導波路境界B1,B2から端面10b,20aに向かって連続的に増加するように構成されている。
【0031】
なお、ホーン型導波路13,23の開口の短辺方向が水平方向(X方向)に平行であることにより、高次モードの発生を抑えながら、ホーン型導波路13,23のXY平面に平行な断面の面積を端面10b,20aに向かって増加させることができる。
【0032】
図1に示すように、導波管10の端面10b又は導波管20の端面20aのいずれか一方又は両方には、ホーン型導波路13,23の長方形の開口の周囲を囲む位置に、端面10b,20a間の隙間gからの電磁波漏洩を防止するための少なくとも1重のチョーク溝25が設けられていてもよい。以下では、主に、チョーク溝25が導波管20の端面20aに設けられた例について説明する。
【0033】
図3は、導波管20の端面20aに設けられた2重のチョーク溝25を、ホーン型導波路23の開口に近いものから順に符号25-1,25-2を付して示す図である。各チョーク溝25-1,25-2は、所定幅と所定深さを有する矩形枠状に連続した溝であり、ホーン型導波路23の開口の中心位置に対して互いに同心に設けられている。各チョーク溝25-1,25-2の内壁面は、端面20aに対して垂直である。
【0034】
導波管スイッチ1の使用帯域を220~325GHz(WR-3帯域)とした場合の各チョーク溝25の寸法の一例を以下に示す。各チョーク溝25-1,25-2の深さは0.05mmである。チョーク溝25-1の水平方向(X方向)に伸びる箇所の幅は0.29mm、チョーク溝25-1の垂直方向(Y方向)に伸びる箇所の幅は0.24mmである。チョーク溝25-1の外法寸法及び内法寸法は、それぞれ2.21mm×2.17mm及び1.73mm×1.59mmである。また、チョーク溝25-2の水平方向(X方向)に伸びる箇所の幅は0.19mm、チョーク溝25-2の垂直方向(Y方向)に伸びる箇所の幅も0.19mmである。チョーク溝25-2の外法寸法及び内法寸法は、それぞれ3.51mm×3.17mm及び3.13mm×2.79mmである。
【0035】
図4は、図2及び図3に示した構造において、220GHzにおける端面10b,20a間の隙間gの電界の面内分布のシミュレーション結果を、チョーク溝25の4分の1を含む範囲で示している。この図は、黒く見える部分の電界が強いことを示している。ここで、隙間gは0.05mmとしている。なお、図4では、シミュレーション結果の画像に、方形導波路22とホーン型導波路23の開口の位置をそれぞれ示す長方形を重ね合わせて図示している。
【0036】
図4より、ホーン型導波路23の開口の範囲において電界がほぼ均一に強くなっていることが分かる。これは、ホーン型導波路13の開口から前方に放射されてホーン型導波路23の開口に入射する電力(あるいは、ホーン型導波路23の開口から前方に放射されてホーン型導波路13の開口に入射する電力)が、通常の方形導波管同士が対向する場合と比較して大きくなり、隙間gに漏洩する電力が小さくなるためである。
【0037】
図5は、図2に示した構造において、端面10b及び端面20aのいずれにもチョーク溝25が設けられていない場合に、導波管10から導波管20に向かって電磁波が入射する場合の、導波路11と導波路21の間の透過特性S21のシミュレーション結果を示している。ここでは、端面10b,20a間の隙間gを0.05mm、0.1mm、0.2mmの3とおりに変化させている。
【0038】
図5に示すように、隙間gが0.05mmの場合には、WR-3帯域(220~325GHz)を含む広い周波数範囲にわたって、透過特性S21が-0.6dBよりも高く(0dBに近く)なることが確認できた。また、隙間gが0.1mmの場合には、WR-3帯域のほぼ全域にわたって、-0.8dBよりも高い良好な値を示すことが確認できた。また、隙間gが0.2mmの場合には、WR-3帯域のほぼ全域にわたって、透過特性S21が-1.1dBよりも高い値を示すことが確認できた。
【0039】
図6は、図2及び図3に示した構造において、導波管10から導波管20に向かって電磁波が入射する場合の、導波路11と導波路21の間の透過特性S21のシミュレーション結果を示している。ここでも、端面10b,20a間の隙間gを0.05mm、0.1mm、0.2mmの3とおりに変化させている。また、チョーク溝25は、端面10b及び端面20aの両方に設けられているとしている。
【0040】
図6に示すように、隙間gが0.05mmの場合には、WR-3帯域(220~325GHz)を含む広い周波数範囲にわたって、透過特性S21が-0.5dBよりも高く(0dBに近く)なることが確認できた。また、隙間gが0.1mmの場合には、WR-3帯域のほぼ全域にわたって、-0.5dBよりも高い良好な値を示すことが確認できた。また、隙間gが0.2mmの場合には、WR-3帯域を含む広い周波数範囲にわたって、透過特性S21が-1dBよりも高い値を示すことが確認できた。
【0041】
図5及び図6に示したシミュレーション結果から、チョーク溝25がない構成の導波管スイッチ1の透過特性S21よりも、チョーク溝25がある構成の導波管スイッチ1の透過特性S21が更に良好になることが分かる。なお、いずれの場合も、導波管20から導波管10に向かって電磁波が入射する場合の透過特性S12は、導波管10から導波管20に向かって電磁波が入射する場合の透過特性S21と同様であった。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る導波管スイッチ1は、互いに対向する2つの導波管10,20が、互いに対向するそれぞれの端面10b,20aに開口するホーン型導波路13,23を含む構造である。この構成により、本実施形態に係る導波管スイッチ1は、対向する2つの導波管10,20間の隙間gが広がっても周波数特性が劣化しにくく、透過周波数帯域を広くすることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る導波管スイッチ1は、方形導波路12,22の開口の長辺方向を水平方向とした場合に、ホーン型導波路13,23の開口の短辺方向が水平方向に平行な構造である。この構成により、本実施形態に係る導波管スイッチ1は、高次モードの発生を抑制しながら、2つの導波管10,20の端面10b,20a間の隙間gに漏洩する電力を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る導波管スイッチ1は、2つの導波管10,20の端面10b,20aの少なくとも一方において、ホーン型導波路13,23の長方形の開口の周囲を囲む位置にチョーク溝25が設けられた場合には、2つの導波管10,20の端面10b,20a間の隙間gからの電磁波漏洩を更に抑制することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る導波管スイッチ1の構成を含む本発明の第2の実施形態に係る導波管スイッチ2の構成について説明する。
【0046】
図7は、第2の実施形態の導波管スイッチ2の分解斜視図、図8は側面図、図9は平面図である。なお、これらの図には各部の方向が分かりやすいように、X、Y、Zの直交軸を示している。
【0047】
これらの図に示しているように、導波管スイッチ2は、ベース部31、第1の固定導波管ブロック40、第2の固定導波管ブロック50、可動導波管ブロック60、及び駆動装置70を有している。第1の固定導波管ブロック40、第2の固定導波管ブロック50、及び可動導波管ブロック60は、図1等に示したWR-3帯域を透過帯域とする導波管10又は導波管20に相当する。
【0048】
ベース部31は外形が矩形の板状に形成され、その上面31aの一端側には第1の固定導波管ブロック40が固定され、他端側には第2の固定導波管ブロック50が固定されている。
【0049】
第1の固定導波管ブロック40は直方体状に形成され、金属壁で囲まれた所定口径の少なくとも1つ(この例では3つ)の導波路41,42,43が、第1の端面40aからその反対側の第2の端面40bまで貫通するように形成されている。ここで、導波路41~43は、ベース部31の上面31aから同一の高さで、第1の端面40a及び第2の端面40bに直交する向きで、所定間隔をあけて平行に形成されている。
【0050】
これらの導波路41~43の口径及び高さは、後述する第2の固定導波管ブロック50の導波路51と同一である。導波路42は、導波路51の中心を通過する線上に形成されている。また、他の2つの導波路41,43は、それらの開口の中心位置を通る延長線が導波路51の開口の中心位置を通る延長線を対称に挟むように配置される。
【0051】
第1の固定導波管ブロック40の導波路41は、第1の端面40aに開口する第1の方形導波路41aと、第1の方形導波路41aに連続し、第2の端面40bに開口する第1のホーン型導波路41bと、を含む。第1のホーン型導波路41bの断面寸法は、第1のホーン型導波路41bと第1の方形導波路41aとの第1の導波路境界B41において第1の方形導波路41aの断面寸法に等しく、第1の導波路境界B41から第2の端面40bに向かって連続的に変化している。
【0052】
第1の固定導波管ブロック40の導波路42は、第1の端面40aに開口する第1の方形導波路42aと、第1の方形導波路42aに連続し、第2の端面40bに開口する第1のホーン型導波路42bと、を含む。第1のホーン型導波路42bの断面寸法は、第1のホーン型導波路42bと第1の方形導波路42aとの第1の導波路境界B42において第1の方形導波路42aの断面寸法に等しく、第1の導波路境界B42から第2の端面40bに向かって連続的に変化している。
【0053】
第1の固定導波管ブロック40の導波路43は、第1の端面40aに開口する第1の方形導波路43aと、第1の方形導波路43aに連続し、第2の端面40bに開口する第1のホーン型導波路43bと、を含む。第1のホーン型導波路43bの断面寸法は、第1のホーン型導波路43bと第1の方形導波路43aとの第1の導波路境界B43において第1の方形導波路43aの断面寸法に等しく、第1の導波路境界B43から第2の端面40bに向かって連続的に変化している。
【0054】
ここで、第1の方形導波路41a,42a,43aの第1の端面40aへの開口、並びに、第1のホーン型導波路41b,42b,43bの第2の端面40bへの開口の形状はいずれも長方形(正方形の場合を含む)である。また、第1の方形導波路41a,42a,43aの開口の長辺方向を水平方向(X方向)とし、第1の方形導波路41a,42a,43aの開口の短辺方向を垂直方向(Y方向)とした場合に、第1のホーン型導波路41b,42b,43bの開口の長辺方向は上記垂直方向に平行であり、第1のホーン型導波路41b,42b,43bの開口の短辺方向は上記水平方向に平行である。
【0055】
一方、第2の固定導波管ブロック50は、第1の固定導波管ブロック40と外形が同等の直方体状に形成され、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bに、第3の端面50aを所定距離開けて平行に対向させた状態でベース部31に固定されており、金属壁で囲まれた少なくとも1つ(この例では1つ)の導波路51が第3の端面50aからその反対側の第4の端面50bまで貫通するように形成されている。この導波路51の口径及び高さは、第1の固定導波管ブロック40の導波路41~43と同一である。また、導波路51は、第3の端面50a及び第4の端面50bに直交する向きで、導波路42の中心を通過する線上に形成されている。
【0056】
第2の固定導波管ブロック50の導波路51は、第4の端面50bに開口する第2の方形導波路51aと、第2の方形導波路51aに連続し、第3の端面50aに開口する第2のホーン型導波路51bと、を含む。第2のホーン型導波路51bの断面寸法は、第2のホーン型導波路51bと第2の方形導波路51aとの第2の導波路境界B51において第2の方形導波路51aの断面寸法に等しく、第2の導波路境界B51から第3の端面50aに向かって連続的に変化している。
【0057】
ここで、第2の方形導波路51aの第4の端面50bへの開口、及び、第2のホーン型導波路51bの第3の端面50aへの開口の形状はいずれも長方形(正方形の場合を含む)である。また、第2の方形導波路51aの開口の長辺方向を水平方向(X方向)とし、第2の方形導波路51aの開口の短辺方向を垂直方向(Y方向)とした場合に、第2のホーン型導波路51bの開口の長辺方向は上記垂直方向に平行であり、第2のホーン型導波路51bの開口の短辺方向は上記水平方向に平行である。
【0058】
ベース部31の上面31aで、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bと第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aの間には、第2の端面40b及び第3の端面50aに対して平行にスライド移動可能な状態で可動導波管ブロック60が支持されている。可動導波管ブロック60は、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bと第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aとの距離より僅か(例えば200μm)に短い長さと、第1及び第2の固定導波管ブロック40,50の高さとほぼ同じ高さの直方体状に形成され、金属壁で囲まれた複数(この例では、第1の固定導波管ブロック40に形成された導波路41~43の数に対応した3つ)の導波路61,62,63が、第5の端面60aから第6の端面60bまで貫通するように形成されている。ここで、第5の端面60aは、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bに対して隙間g(例えばg=100μm)を開けて平行に対向し、第6の端面60bは、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aに対して隙間g(例えばg=100μm)を開けて平行に対向している。
【0059】
可動導波管ブロック60の導波路61~63の口径及び高さは、第1の固定導波管ブロック40の導波路41~43及び第2の固定導波管ブロック50の導波路51と同一である。導波路62は、第5の端面60a及び第6の端面60bに直交する向きで形成されている。また、他の2つの導波路61,63は、第5の端面60a及び第6の端面60bに対して斜めに形成されている。金属壁で囲まれたこれら複数の導波路61~63は、内部に共振板や誘電体共振器を配置するなどの公知の方法で、ミリ波帯内で異なる通過帯域特性が付与されている。
【0060】
可動導波管ブロック60の導波路61は、第3の方形導波路61aと、第3の方形導波路61aに連続し、第5の端面60aに開口する第3のホーン型導波路61bと、第3の方形導波路61aに連続し、第6の端面60bに開口する第4のホーン型導波路61cと、を含む。第3のホーン型導波路61bの断面寸法は、第3のホーン型導波路61bと第3の方形導波路61aとの第3の導波路境界B61bにおいて第3の方形導波路61aの断面寸法に等しく、第3の導波路境界B61bから第5の端面60aに向かって連続的に変化している。第4のホーン型導波路61cの断面寸法は、第4のホーン型導波路61cと第3の方形導波路61aとの第4の導波路境界B61cにおいて第3の方形導波路61aの断面寸法に等しく、第4の導波路境界B61cから第6の端面60bに向かって連続的に変化している。
【0061】
可動導波管ブロック60の導波路62は、第3の方形導波路62aと、第3の方形導波路62aに連続し、第5の端面60aに開口する第3のホーン型導波路62bと、第3の方形導波路62aに連続し、第6の端面60bに開口する第4のホーン型導波路62cと、を含む。第3のホーン型導波路62bの断面寸法は、第3のホーン型導波路62bと第3の方形導波路62aとの第3の導波路境界B62bにおいて第3の方形導波路62aの断面寸法に等しく、第3の導波路境界B62bから第5の端面60aに向かって連続的に変化している。第4のホーン型導波路62cの断面寸法は、第4のホーン型導波路62cと第3の方形導波路62aとの第4の導波路境界B62cにおいて第3の方形導波路62aの断面寸法に等しく、第4の導波路境界B62cから第6の端面60bに向かって連続的に変化している。
【0062】
可動導波管ブロック60の導波路63は、第3の方形導波路63aと、第3の方形導波路63aに連続し、第5の端面60aに開口する第3のホーン型導波路63bと、第3の方形導波路63aに連続し、第6の端面60bに開口する第4のホーン型導波路63cと、を含む。第3のホーン型導波路63bの断面寸法は、第3のホーン型導波路63bと第3の方形導波路63aとの第3の導波路境界B63bにおいて第3の方形導波路63aの断面寸法に等しく、第3の導波路境界B63bから第5の端面60aに向かって連続的に変化している。第4のホーン型導波路63cの断面寸法は、第4のホーン型導波路63cと第3の方形導波路63aとの第4の導波路境界B63cにおいて第3の方形導波路63aの断面寸法に等しく、第4の導波路境界B63cから第6の端面60bに向かって連続的に変化している。
【0063】
ここで、第3のホーン型導波路61b,62b,63bの第5の端面60aへの開口、並びに、第4のホーン型導波路61c,62c,63cの第6の端面60bへの開口の形状はいずれも長方形(正方形の場合を含む)である。また、第3及び第4のホーン型導波路61b,62b,63b,61c,62c,63cの開口の長辺方向は上記垂直方向(Y方向)に平行であり、第3及び第4のホーン型導波路61b,62b,63b,61c,62c,63cの開口の短辺方向は上記水平方向(X方向)に平行である。
【0064】
図9に示した位置(以下、「中立位置」という)において、中央の導波路62の第5の端面60a側の開口は、第1の固定導波管ブロック40の導波路42の第2の端面40b側の開口と同心に並び、中央の導波路62の第6の端面60b側の開口は、第2の固定導波管ブロック50の導波路51の第3の端面50a側の開口と同心に並ぶ。したがって、図9の中立位置では、第1の固定導波管ブロック40の導波路42と第2の固定導波管ブロック50の導波路51の間が、可動導波管ブロック60の導波路62を介して接続される。
【0065】
また、中立位置において、第5の端面60a側の導波路61,63の開口位置は、第1の固定導波管ブロック40の導波路41,43の開口位置からそれぞれ外側にLだけ離間し、第6の端面60b側の導波路61,63の開口位置は、第2の固定導波管ブロック50の導波路51の開口位置から両側にそれぞれLだけ離間するように設けられている。
【0066】
したがって、図10に示すように、中立位置から可動導波管ブロック60を幅方向(X方向)に-Lだけスライド移動させた第1の位置では、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40b側の導波路41の開口位置と可動導波管ブロック60の第5の端面60a側の一方の導波路61の開口位置とが一致し、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50a側の導波路51の開口位置と可動導波管ブロック60の第6の端面60b側の導波路61の開口位置とが一致して、第1の固定導波管ブロック40の導波路41と第2の固定導波管ブロック50の導波路51の間が、導波路61を介して接続される。
【0067】
また、図11に示すように、中立位置から可動導波管ブロック60を幅方向にLだけスライド移動させた第2の位置では、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40b側の導波路43の開口位置と可動導波管ブロック60の第5の端面60a側の導波路63の開口位置とが一致し、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50a側の導波路51の開口位置と可動導波管ブロック60の第6の端面60b側の導波路63の開口位置とが一致して、第1の固定導波管ブロック40の導波路43と、第2の固定導波管ブロック50の導波路51の間が、導波路63を介して接続される。
【0068】
このようにして、可動導波管ブロック60は、第1の固定導波管ブロック40及び第2の固定導波管ブロック50に対してスライド移動し、異なる複数の位置(中立位置、第1の位置、及び第2の位置)で、導波路61~63のいずれかが、第1の固定導波管ブロック40の導波路41~43のいずれかと、第2の固定導波管ブロック50の導波路51とを選択的に接続させる。
【0069】
なお、この例では、第1の固定導波管ブロック40の導波路42の中心を通る線の延長線上に第2の固定導波管ブロック50の導波路51が位置し、中立位置において可動導波管ブロック60の3つの導波路61~63もその延長線に対して線対称となる構造となっている。一方、第2の固定導波管ブロック50の導波路51が、第1の固定導波管ブロック40の導波路42の中心を通る線の延長線上にない非対称な構造も可能であり、その場合、可動導波管ブロック60の3つの導波路61~63も非対称な配置となる。
【0070】
可動導波管ブロック60は、ベース部31に設けられた駆動装置70によってスライド移動可能に支持されている。この駆動装置70の構造は任意であるが、例えば、ベース部31の下面側から可動導波管ブロック60を支持する支持部材に対し、ステッピングモータの回転運動を直進運動に変換して伝達する構造になっている。この場合、可動導波管ブロック60の位置と移動距離をセンサやエンコーダ等で検出して、少なくとも図9の中立位置、図10の第1の位置、及び図11の第2の位置に選択的に移動できるように制御すればよい。
【0071】
第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bと、可動導波管ブロック60の第5の端面60aとの少なくとも一方において、導波路41~43又は導波路61~63の長方形の開口の周囲を囲む位置には、図3に示したような少なくとも1重のチョーク溝25が設けられている。同様に、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aと、可動導波管ブロック60の第6の端面60bとの少なくとも一方において、導波路51又は導波路61~63の長方形の開口の周囲を囲む位置には、図3に示したような少なくとも1重のチョーク溝25が設けられている。
【0072】
例えば、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40b側における導波路41~43の長方形の開口の周囲を囲む位置と、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50a側における導波路51の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝25が設けられてもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、上記の導波管スイッチ1の構成を可動部(可動導波管ブロック60)、第1の固定導波管ブロック40、及び第2の固定導波管ブロック50に用いた構造である。この構成により、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、スイッチの透過特性を広帯域にわたって改善し、第1の固定導波管ブロック40と可動導波管ブロック60の間の隙間と、第2の固定導波管ブロック50と可動導波管ブロック60の間の隙間における意図しない電磁波の漏洩を抑えることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、第1の固定導波管ブロック40と可動導波管ブロック60の間の隙間と、第2の固定導波管ブロック50と可動導波管ブロック60の間の隙間を従来よりも広げても周波数特性が劣化しにくく、透過周波数帯域を広くすることができる。また、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、第1の固定導波管ブロック40と可動導波管ブロック60の間の隙間と、第2の固定導波管ブロック50と可動導波管ブロック60の間の隙間を従来よりも広く取れるため、機械加工精度が緩和され、経年変化への耐性も高くなる。
【0075】
また、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、第1乃至第4のホーン型導波路41b,42b,43b,51b,61b,62b,63b,61c,62c,63cの開口の長辺方向と短辺方向が、それぞれ垂直方向(Y方向)と水平方向(X方向)に平行な構造である。この構成により、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、高次モードの発生を抑制しながら、第1の固定導波管ブロック40と可動導波管ブロック60の間の隙間と、第2の固定導波管ブロック50と可動導波管ブロック60の間の隙間に漏洩する電力を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bと、可動導波管ブロック60の第5の端面60aとの少なくとも一方において、導波路41~43又は導波路61~63の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝25が設けられた構造である。同様に、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aと、可動導波管ブロック60の第6の端面60bとの少なくとも一方において、導波路51又は導波路61~63の長方形の開口の周囲を囲む位置に、少なくとも1重のチョーク溝25が設けられた構造である。この構成により、本実施形態に係る導波管スイッチ2は、第1の固定導波管ブロック40と可動導波管ブロック60の間の隙間と、第2の固定導波管ブロック50と可動導波管ブロック60の間の隙間に漏洩する電力を更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0077】
1,2 導波管スイッチ
10,20 導波管
10a,10b,20a,20b 端面
11,21 導波路
12,22 方形導波路
13,23 ホーン型導波路
25,25-1,25-2 チョーク溝
31 ベース部
40 第1の固定導波管ブロック
40a 第1の端面
40b 第2の端面
41,42,43 導波路
41a,42a,43a 第1の方形導波路
41b,42b,43b 第1のホーン型導波路
50 第2の固定導波管ブロック
50a 第3の端面
50b 第4の端面
51 導波路
51a 第2の方形導波路
51b 第2のホーン型導波路
60 可動導波管ブロック
60a 第5の端面
60b 第6の端面
61,62,63 導波路
61a,62a,63a 第3の方形導波路
61b,62b,63b 第3のホーン型導波路
61c,62c,63c 第4のホーン型導波路
70 駆動装置
B1 導波路境界
B2 導波路境界
B41,B42,B43 第1の導波路境界
B51 第2の導波路境界
B61b,B62b,B63b 第3の導波路境界
B61c,B62c,B63c 第4の導波路境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11