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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113312
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】回路基板用電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/91 20110101AFI20230808BHJP
【FI】
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015585
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】相原 一輝
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB05
5E223AB26
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB39
5E223CB46
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
5E223EA03
5E223EA13
(57)【要約】
【課題】コネクタ幅方向での大型化を回避しやすく、かつ、端子のばね長を十分に大きく確保できる回路基板用電気コネクタを提供する。
【解決手段】端子10は、固定ハウジング30に保持される固定側被保持部11と、固定側被保持部11よりもコネクタ幅方向で内側に位置し可動ハウジング40に保持される可動側被保持部12と、固定側被保持部11と可動側被保持部12との間に位置し弾性変形可能な中間部13とを有しており、中間部13は、コネクタ高さ方向で屈曲方向を繰り返して反転する複数の弾性部13A~13Dを有しており、複数の弾性部13A~13Dのうち特定の弾性部13Cは、他の弾性部13A,13Bに対して、コネクタ高さ方向で異なって位置しているとともに、コネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に配置され、複数の端子と、前記端子を介して前記回路基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な可動ハウジングとを有し、前記端子が前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとに架け渡されて設けられている回路基板用電気コネクタにおいて、
前記端子は、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、前記固定側被保持部よりもコネクタ幅方向で内側に位置し前記可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部との間に位置し弾性変形可能な中間部とを有しており、
前記中間部は、コネクタ高さ方向で屈曲方向を繰り返して反転する複数の弾性部を有しており、
前記複数の弾性部のうち特定の弾性部は、他の弾性部に対して、コネクタ高さ方向で異なって位置しているとともに、コネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置していることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【請求項2】
前記複数の弾性部は、前記特定の弾性部の他に、前記特定の弾性部と前記可動側被保持部との間に位置する弾性部である可動側弾性部を少なくとも1つ有し、
少なくとも1つの前記可動側弾性部が、前記可動側被保持部に対してコネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置していることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項3】
前記複数の弾性部は、前記特定の弾性部の他に、前記特定の弾性部と前記可動側被保持部との間に位置する弾性部である可動側弾性部と、前記特定の弾性部よりも前記固定側被保持部側に位置する弾性部である固定側弾性部とを有し、
前記特定の弾性部は、可動側傾斜部を介して前記可動側弾性部に連結されているとともに、固定側傾斜部を介して前記固定側弾性部に連結されており、
前記可動側傾斜部および前記固定側傾斜部は、コネクタ幅方向で同じ側に向けて傾斜していることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項4】
前記特定の弾性部は、コネクタ高さ方向で回路基板から離間する側で屈曲された形状をなしており、前記可動側被保持部に対して、コネクタ幅方向で外側に位置しているとともに、コネクタ高さ方向で重複する範囲をもって位置していることとする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項5】
前記端子は、前記中間部と前記固定側被保持部との間に位置する腕部をさらに有し、
前記腕部は、コネクタ幅方向に沿って延びて前記中間部に連続しており、コネクタ高さ方向で弾性変形可能となっていることとする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の回路基板用電気コネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上に配置される回路基板用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板用電気コネクタとして、複数の端子と、端子を介して回路基板に固定される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して相対移動可能な可動ハウジングとを有し、端子が固定ハウジングと可動ハウジングとに架け渡されて設けられている、いわゆるフローティングコネクタが、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のフローティングコネクタにおいて、端子は、金属板部材を板厚方向に打ち抜いて形成されており、一端側で固定ハウジングに保持される固定側柱部と、他端側で可動ハウジングに保持される可動側柱部と、固定側柱部と可動側柱部との間に位置し弾性変形可能な弾性部とを有している。弾性部は、上下方向で屈曲方向を繰り返して反転する3つの波形部、具体的には、上方に凸湾曲した2つの逆U字状の波形部と、2つの逆U字状部の間で下方に凸湾曲した1つのU字状の波形部とを有しており、全体形状が略M字状をなしている(特許文献1の図3(B)、図5等参照)。弾性部は、各波形部の2つの脚部がコネクタ幅方向(特許文献1の図3(B)、図5での左右方向)で、拡がったり狭まったりして変位することでコネクタ幅方向に弾性変形し、これによって、コネクタ幅方向における良好なフローティングが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6438382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、回路基板に実装されるフローティングコネクタにおいては、十分に大きいフローティング量が確保されていることが好ましく、そのためには、端子の弾性部の長さ、すなわち、ばね長を大きくする必要がある。また、コネクタは小型化、例えばコネクタ幅方向での小型化を要求されることが多い。特許文献1のフローティングコネクタでは、端子の弾性部は、上述したように全体形状が略M字状をなしており、全ての波形部(上記3つの波形部)がコネクタ幅方向で互いに異なって位置している。したがって、フローティング量をさらに大きく確保するために端子の弾性部における波形部の数を増やそうとすると、弾性部全体がコネクタ幅方向で大きくなり、ひいてはコネクタ幅方向でのコネクタの大型化につながる可能性がある。この点で、特許文献1のフローティングコネクタには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、コネクタ幅方向での大型化を回避しやすく、かつ、端子のばね長を十分に大きく確保できる回路基板用電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配置され、複数の端子と、前記端子を介して前記回路基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な可動ハウジングとを有し、前記端子が前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとに架け渡されて設けられている。
【0008】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、前記端子は、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、前記固定側被保持部よりもコネクタ幅方向で内側に位置し前記可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部との間に位置し弾性変形可能な中間部とを有しており、前記中間部は、コネクタ高さ方向で屈曲方向を繰り返して反転する複数の弾性部を有しており、前記複数の弾性部のうち特定の弾性部は、他の弾性部に対して、コネクタ高さ方向で異なって位置しているとともに、コネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置していることを特徴としている。
【0009】
本発明では、端子の中間部に設けられた複数の弾性部のうち特定の弾性部が、他の弾性部に対して、コネクタ高さ方向で異なって位置しているとともに、コネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置している。したがって、端子の中間部における弾性部の数を増やして、中間部のばね長を大きくしても、コネクタ幅方向で中間部の少なくとも一部同士が重複して位置するので、従来のように全ての弾性部が重複することなく異なって位置している場合と比べて、コネクタ幅方向での端子の中間部、ひいてはコネクタの大型化を回避しやすくなる。
【0010】
本発明において、前記複数の弾性部は、前記特定の弾性部の他に、前記特定の弾性部と前記可動側被保持部との間に位置する弾性部である可動側弾性部を少なくとも1つ有し、少なくとも1つの前記可動側弾性部が、前記可動側被保持部に対してコネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置していてもよい。このように少なくとも1つの可動側弾性部を可動側被保持部に対してコネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置させることにより、コネクタ幅方向でのコネクタの大型化を回避しつつ、中間部の十分なばね長を確保できる。
【0011】
本発明において、前記複数の弾性部は、前記特定の弾性部の他に、前記特定の弾性部と前記可動側被保持部との間に位置する弾性部である可動側弾性部と、前記特定の弾性部よりも前記固定側被保持部側に位置する弾性部である固定側弾性部とを有し、前記特定の弾性部は、可動側傾斜部を介して前記可動側弾性部に連結されているとともに、固定側傾斜部を介して前記固定側弾性部に連結されており、前記可動側傾斜部および前記固定側傾斜部は、コネクタ幅方向で同じ側に向けて傾斜していてもよい。
【0012】
このように、特定の弾性部と可動側弾性部および固定側弾性部との間に、コネクタ幅方向で同じ側に向けて傾斜する可動側傾斜部および固定側傾斜部を設けることにより、特定の弾性部を大きく傾斜させることなく、可動側傾斜部および固定側傾斜部が傾斜している側に位置させることができる。この結果、特定の弾性部がコネクタ幅方向で弾性変形する際、この特定の弾性部で生じる応力を良好に分散させることができる。
【0013】
本発明において、前記特定の弾性部は、コネクタ高さ方向で回路基板から離間する側で屈曲された形状をなしており、前記可動側被保持部に対して、コネクタ幅方向で外側に位置しているとともに、コネクタ高さ方向で重複する範囲をもって位置していてもよい。このように特定の弾性部をコネクタ高さ方向で可動側被保持部と重複する範囲をもって位置させることにより、コネクタ幅方向のみならず、コネクタ高さ方向でもコネクタの大型化を回避できる。
【0014】
本発明において、前記端子は、前記中間部と前記固定側被保持部との間に位置する腕部をさらに有し、前記腕部は、コネクタ幅方向に沿って延びて前記中間部に連続しており、コネクタ高さ方向で弾性変形可能となっていてもよい。このようにコネクタ高さ方向で弾性変形可能な腕部を端子に設けることにより、コネクタ高さ方向でのフローティング機能を向上させることができる。また、腕部はコネクタ幅方向に沿って延びているので、コネクタ高さ方向で端子ひいてはコネクタの大型化が最小限に留められる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、コネクタ幅方向での大型化を回避しやすく、かつ、端子のばね長を十分に大きく確保できる回路基板用電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るレセプタクルコネクタおよびプラグコネクタの斜視図であり、嵌合接続前の状態を示している。
図2図1のレセプタクルコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、嵌合接続前の状態を示している。
図3図1のレセプタクルコネクタのレセプタクル端子の斜視図である。
図4図1のレセプタクルコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、嵌合接続状態を示している。
図5図1のレセプタクルコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、コネクタ使用中に振動を受けてコネクタ幅方向でフローティングが生じている状態を示している。
図6図1のレセプタクルコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、コネクタ使用中に振動を受けてコネクタ高さ方向でフローティングが生じている状態を示している。
図7図1のレセプタクルコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、コネクタの嵌合接続が完了した時点にてコネクタ幅方向でフローティングが生じている状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るレセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2の斜視図であり、嵌合接続前の状態を示している。レセプタクルコネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。また、レセプタクルコネクタ1の相手接続体(相手コネクタ)としてのプラグコネクタ2は、他の回路基板(図示せず)の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。レセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2は、回路基板の実装面同士が平行となった姿勢で、実装面に対して直角なコネクタ高さ方向(Z軸方向として示される上下方向)で嵌合接続され、電気コネクタ組立体を構成する。本実施形態では、レセプタクルコネクタ1に対してプラグコネクタ2が上方から嵌合接続されるようになっている。
【0019】
レセプタクルコネクタ1は、回路基板の実装面に対して平行な一方向(Y軸方向)を端子配列方向として配列された複数の金属板製のレセプタクル端子10と、複数のレセプタクル端子10を保持する電気絶縁材製(例えば樹脂製)のレセプタクルハウジング20と、端子配列方向におけるレセプタクルハウジング20の両端部で保持される金属製のレセプタクル固定金具50とを有している。
【0020】
図2は、嵌合接続前におけるレセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2の端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、レセプタクル端子10の位置での断面を示している。レセプタクル端子10は2列をなして配列されている。2列のレセプタクル端子10は、端子配列方向(Y軸方向)および上下方向(Z軸方向)の両方向に対して直角なコネクタ幅方向(X軸方向)で互いに対称な向きで対向している。図2に示されるように、レセプタクルハウジング20は、レセプタクル端子10を介して回路基板(図示せず)に固定される固定ハウジング30と、固定ハウジング30に対して相対移動可能な可動ハウジング40とを有している。レセプタクル端子10は、固定ハウジング30と可動ハウジング40とに架け渡されて設けられている。
【0021】
図3は、コネクタ幅方向で対向する2つのレセプタクル端子10を示す斜視図である。レセプタクル端子10は、図2および図3に見られるように、金属板部材をその平坦面を維持したまま板厚方向で打ち抜いて作られた雌型の端子である。レセプタクル端子10は、固定ハウジング30に保持される固定側被保持部11と、可動ハウジング40に保持される可動側被保持部12と、固定側被保持部11と可動側被保持部12との間に位置し弾性変形可能な中間部13と、固定側被保持部11と中間部13との間に位置し弾性変形可能な横腕部14(腕部)と、固定側被保持部11から延出し回路基板に半田接続される接続部15と、可動側被保持部12から延出しプラグコネクタ2と接触する外側接触腕部16および内側接触腕部17とを有している。
【0022】
レセプタクル端子10のさらなる説明に先立ち、固定ハウジング30および可動ハウジング40の構成を図1および図2に基づいて説明する。固定ハウジング30は、図1に示されるように、端子配列方向(Y軸方向)に延びる一対の側壁31と、コネクタ幅方向(X軸方向)に延び一対の側壁31の端部同士を連結する一対の端壁32とを有し、この一対の側壁31および一対の端壁32によって周壁を形成している。この周壁に囲まれて上下方向に貫通する空間は、下方から可動ハウジング40の一部を収容する中央空間33を形成している(図2も参照)。
【0023】
側壁31は、図1に示されるように、端子配列方向での中央域に位置する側壁中央部31Aが、両端域に位置する側壁端部31Bよりも上方に突出して形成されており、この側壁中央部31Aでレセプタクル端子10を配列保持している。図2に示されるように、側壁中央部31Aは、上下方向でレセプタクル端子10の中間部13全体と重複する範囲をもって設けられている。この側壁中央部31Aの下部は、レセプタクル端子10を保持するための端子保持部31A-1をなしている。具体的には、端子保持部31A-1には、上下方向に延びる端子保持孔部31A-1Aが貫通して形成されており、下方から圧入されるレセプタクル端子10の後述の被保持腕部11Bを端子保持孔部31A-1Aで保持するようになっている。
【0024】
また、側壁中央部31Aには、図2に示されるように、レセプタクル端子10の中間部13の一部を収容するための固定側収容部31A-2が側壁中央部31Aの内側面(コネクタ幅方向に対して直角な面)から没入するとともに、端子配列方向で側壁中央部31A全域にわたって形成されている。固定側収容部31A-2は、上下方向における側壁31の上端寄り位置から下端にわたる範囲で上下方向に延びている。また、側壁中央部31Aの上部には、側壁中央部31Aの内壁面よりもコネクタ幅方向内方へ張り出して固定側収容部31A-2の上端を閉塞する天壁31A-3が形成されている。つまり、側壁中央部31Aの内側面(コネクタ幅方向に対して直角な面)が固定側収容部31A-2の側方内壁面をなし、天壁31A-3の下面(上下方向に対して直角な面)が固定側収容部31A-2の上側内壁面をなしている。なお、固定側収容部31A-2の下端は開口している。
【0025】
図2に示されるように、天壁31A-3は、コネクタ幅方向でレセプタクル端子10の中間部13の一部と重複する範囲をもって設けられている。具体的には、天壁31A-3は、後述する第一弾性部13A全体、第二弾性部13Bの一部(コネクタ幅方向での外側部分)、第三弾性部13Cの一部(コネクタ幅方向での外側部分)、および固定側傾斜部13E全体と重複する範囲を有している。
【0026】
側壁端部31Bには、図1に示されるように、可動ハウジング40の上方への移動を規制する規制凹部31B-1が、側壁端部31Bの下面から没入するとともにコネクタ幅方向(側壁端部31Bの壁厚方向)に貫通して形成されている。規制凹部31B-1は、図1に示されるように、可動ハウジング40の後述の被規制部44を下方から収容している。規制凹部31B-1は、その上側内壁面が被規制部44の上面に当接可能に位置することで、被規制部44の上方への移動を規制している。
【0027】
端壁32には、図1に示されるように、レセプタクル固定金具50の一部を収容して圧入保持する端溝部32Aが、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状に形成されている。
【0028】
可動ハウジング40は、固定ハウジング30の中央空間33へ下方から挿入されて配置されており、図1に見られるように、可動ハウジング40の上半部および後述の被規制部44を除く大部分が中央空間33内に収容されている(図2も参照)。可動ハウジング40は、端子配列方向に延びる一対の長壁41と、コネクタ幅方向に延び一対の長壁41の端部同士を連結する一対の短壁42と、一対の長壁41および一対の短壁42から成る周壁に囲まれた空間を下方から閉塞する底壁43(図2参照)と、短壁42の下部からコネクタ幅方向外方へ延出する被規制部44とを有している。上記周壁に囲まれ上方へ開口した空間は、プラグコネクタ2の一部を受け入れるための受入部45をなしている。
【0029】
図2に示されるように、可動ハウジング40において、中央空間33内に収容されている部分は、上下方向でレセプタクル端子10の中間部13の一部、具体的には、後述の第三弾性部13C全体と重複する範囲を有している。
【0030】
長壁41には、図2に示されるように、上下方向での全域にわたって内壁面から没入した可動側収容部41Aが配列形成されている。可動側収容部41Aは、レセプタクル端子10の外側接触腕部16および内側接触腕部17を収容している。
【0031】
底壁43は、図2に示されるように、固定ハウジング30の中央空間33の上半部の空間内に位置している。底壁43には、レセプタクル端子10の可動側被保持部12を下方から収容して圧入保持する底溝部43Aが、端子配列方向で配列されて形成されている。底溝部43Aは、図2に示されるように、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状をなし上下方向で底壁43を貫通しており、可動側収容部41Aに連通している。
【0032】
被規制部44は、短壁42の下部の外側面(コネクタ幅方向に対して直角な面)からコネクタ幅方向外方へ延出している。被規制部44は、その先端部が固定ハウジング30の規制凹部31B-1内に収容されており、規制凹部31B-1の内壁面との間に上下方向および端子配列方向で隙間をもって位置している。したがって、被規制部44ひいては可動ハウジング40は、上記隙間の範囲内で上下方向および端子配列方向に移動可能となっており、被規制部44が規制凹部31B-1の内壁面に当接することでそれ以上の移動を規制されるようになっている。
【0033】
レセプタクル端子10の説明に戻る。レセプタクル端子10の固定側被保持部11は、図2および図3に示されるように、固定ハウジング30の下部に位置する基部11Aと、基部11Aから上方へ向けて延びる被保持腕部11Bと、基部11Aからコネクタ幅方向で内方へ延びる延出部11Cとを有している。被保持腕部11Bは、基部11Aのコネクタ幅方向で外側に寄った位置から、固定ハウジング30の端子保持孔部31A-1A内で直状をなして延びている。被保持腕部11Bは、図3に示されるようにコネクタ幅方向での内側縁(上下方向に延びる縁)に複数の圧入突起11B-1を有しており、この圧入突起11B-1によって端子保持孔部31A-1Aで圧入保持されている。延出部11Cは、基部11Aからコネクタ幅方向内方へ直状をなして延びている。延出部11Cは、図2に示されるように、上下方向で回路基板(図示せず)の実装面(上面)との間に隙間をもって位置している。
【0034】
横腕部14は、図2および図3に示されるように、延出部11Cの先端部(コネクタ幅方向で内側の端部)から、固定側被保持部11の上縁に沿ってコネクタ幅方向外方へ直状に延びて設けられており、中間部13の直下に位置している。横腕部14は、上下方向で固定側被保持部11との間に隙間をもって位置しており、その基端部、すなわち延出部11Cの先端部に連結された部分を支点として、上記隙間の範囲で上下方向に弾性変形可能となっている。
【0035】
このように上下方向で弾性変形可能な横腕部14をレセプタクル端子10に設けることにより、上下方向でのフローティング機能を向上させることができる。横腕部14はコネクタ幅方向に延びているので、横腕部14を設けることによる上下方向でのレセプタクル端子10ひいてはレセプタクルコネクタ1の大型化が最小限に留められている。また、横腕部14は、コネクタ幅方向で中間部13の範囲内に位置しており、これによって、コネクタ幅方向でのレセプタクル端子10ひいてはレセプタクルコネクタ1の大型化が回避されている。なお、中間部13において上下方向での弾性変形量を十分に大きく確保できている場合には、横腕部14を設けることは必須ではない。
【0036】
接続部15は、固定側被保持部11の基部11Aの下部に連続してコネクタ幅方向に延びており、図2に示されるように、その先端が固定ハウジング30外に延出している。接続部15は、その下端で回路基板の実装面の対応回路部に半田接続される。
【0037】
可動側被保持部12は、図2に示されるように、可動ハウジング40の底壁43に保持されている。可動側被保持部12は、図3に示されるようにコネクタ幅方向での内側縁(上下方向に延びる縁)に複数の圧入突起12Aを有しており、この圧入突起12Aによって底壁43の底溝部43Aに下方から圧入されて保持されている。
【0038】
外側接触腕部16は、図2に示されるように、可動側被保持部12のコネクタ幅方向で外側に寄った位置から、可動ハウジング40の可動側収容部41A内を上方へ向けて直状に延びている。外側接触腕部16の上端部には、図2および図3に示されるように、プラグコネクタ2のプラグ端子60(図2参照)との接触のための上側接触部16Aが、コネクタ幅方向で内側へ向けて突出して形成されている。内側接触腕部17は、図2に示されるように、コネクタ幅方向で外側接触腕部16よりも内側に位置し、可動側被保持部12から可動ハウジング40の可動側収容部41A内を上方へ向けて直状に延びている。内側接触腕部17は、図2および図3に示されるように、外側接触腕部16よりも短く形成されており、その上端部が外側接触腕部16の上側接触部16Aの直下に位置している。内側接触腕部17の上端部には、プラグコネクタ2のプラグ端子60との接触のための下側接触部17Aが、コネクタ幅方向で内側へ向けて突出して形成されている。
【0039】
以下、外側接触腕部16と内側接触腕部17とを特に区別する必要がない場合には、これらを「接触腕部16,17」と総称し、上側接触部16Aと下側接触部17Aとを特に区別する必要がない場合には、これらを「接触部16A,17A」と総称する。
【0040】
接触部16A,17Aは、図2に示されるように、接触腕部16,17が自由状態にあるとき、その突出端が可動側収容部41Aから突出して受入部45内に位置している。そして、レセプタクルコネクタ1にプラグコネクタ2が嵌合接続されると、接触部16A,17Aのそれぞれの突出端がプラグ端子60からの押圧力を受け、その結果、接触腕部16,17がコネクタ幅方向で外側へ向けて弾性変形する。
【0041】
中間部13は、図2および図3に示されるように、横腕部14と可動側被保持部12との間に位置し、上下方向(Z軸方向)で屈曲方向を繰り返して反転する4つの弾性部を有しており、コネクタ幅方向、端子配列方向および上下方向で弾性変形可能となっている。具体的には、中間部13は、横腕部14側から可動側被保持部12側へ向かって、第一弾性部13A、第二弾性部13B(固定側弾性部)、第三弾性部13C(特定の弾性部)および第四弾性部13D(可動側弾性部)が順次設けられている。また、第三弾性部13Cは、図2および図3に示すように、固定側傾斜部13Eを介して第二弾性部13Bと連結され、可動側傾斜部13Fを介して第四弾性部13Dと連結されている。
【0042】
第一弾性部13Aは、図3に示されるように、全体として逆J字状をなしており、横腕部14の端部(コネクタ幅方向での外側の端部)から上方へ直状に延びる第一直状部13A-1と、第一直状部13A-1の上端からコネクタ幅方向での内側で下方へ向けて屈曲された形状の第一屈曲部13A-2とを有している。第一弾性部13Aは、第一直状部13A-1の下端部を支点としてコネクタ幅方向に弾性変形可能となっている。
【0043】
第一弾性部13Aは、図2に示されるように、可動ハウジングの底壁43の底面よりも下方に設けられており、かつ、固定ハウジング30の固定側収容部31A-2に収容されている。また、第一弾性部13Aは、固定側収容部31A-2の側方内壁面(コネクタ幅方向に対して直角な壁面)との間にコネクタ幅方向で隙間をもって位置しており、この隙間の範囲内でコネクタ幅方向外方へ向けた弾性変形が可能となっている。
【0044】
第二弾性部13Bは、図3に示されるように、全体としてU字状をなしており、上下方向に延びる2つの第二直状部13B-1と、第二直状部13B-1の下端部同士を連結し上方へ向けて屈曲された形状の第二屈曲部13B-2とを有している。第二弾性部13Bは2つの第二直状部13B-1の間隔を狭めたり拡げたりしながらコネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。
【0045】
第二弾性部13Bは、コネクタ幅方向で第一弾性部13Aよりも内側に設けられており、上下方向で第一弾性部13Aとほぼ同じ範囲に位置している。したがって、第二弾性部13Bは第一弾性部13Aと相俟って横S字状をなしている。また、図2に示されるように、2つの第二直状部13B-1のうちコネクタ幅方向で外側に位置する第二直状部13B-1、および第二屈曲部13B-2のうちコネクタ幅方向で外側に位置する部分は固定側収容部31A-2に収容されている。
【0046】
第三弾性部13Cは、図3に示されるように、全体として逆U字状をなしており、上下方向に延びる2つの第三直状部13C-1と、第三直状部13C-1の上端部同士を連結し下方へ向けて屈曲された形状の第三屈曲部13C-2とを有している。2つの第三直状部13C-1は、図2および図3に示されるように、下方に向かうにつれて互いに離れる方向へ若干傾斜して延びている。第三弾性部13Cは2つの第三直状部13C-1の間隔を狭めたり拡げたりしながらコネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。
【0047】
第三弾性部13Cは、図2に示されるように、中間部13の第一弾性部13A、第二弾性部13Bおよび第四弾性部13Dよりも上方に設けられており、上下方向で可動側被保持部12と重複する範囲をもって位置いる。このように第三弾性部13Cを可動側被保持部12と重複する位置に設けることにより、レセプタクルコネクタ1の上下方向での大型が回避されている。第三弾性部13Cの一部、具体的には、2つの第三直状部13C-1のうちコネクタ幅方向で外側に位置する第三直状部13C-1、および第三屈曲部13C-2のうちコネクタ幅方向で外側に位置する部分は、図2に示されるように、固定側収容部31A-2に収容されている。
【0048】
第三弾性部13Cは、図2に示されるように、固定側収容部31A-2の側方内壁面、すなわち、側壁中央部31A内側面との間にコネクタ幅方向の隙間P1をもって位置しており、この隙間P1の範囲内でコネクタ幅方向外方へ向けた弾性変形が可能となっている。また、第三弾性部13Cは、図2に示されるように、可動ハウジング40の外壁面、具体的には底壁43の側壁面(コネクタ幅方向に対して直角な面)との間にコネクタ幅方向の隙間P2をもって位置しており、この隙間P2の範囲内でコネクタ幅方向内方へ向けた弾性変形が可能となっている。また、第三弾性部13Cは、図2に示されるように、固定側収容部31A-2の上側内壁面、すなわち、天壁31A-3の下面との間にコネクタ幅方向の隙間P3をもって位置しており、この隙間P3の範囲内で上方、すなわち回路基板(図示せず)から離間する方向へ向けた弾性変形が可能となっている。
【0049】
第四弾性部13Dは、図3に示されるように、全体としてU字状をなしており、上下方向に延びる2つの第四直状部13D-1と、第四直状部13D-1の下端部同士を連結し上方へ向けて屈曲された形状の第四屈曲部13D-2とを有している。第四弾性部13Dは2つの第四直状部13D-1の間隔を狭めたり拡げたりしながらコネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。
【0050】
第四弾性部13Dは、コネクタ幅方向で第一弾性部13A、第二弾性部13Bおよび第三弾性部13Cよりも内側に位置し、上下方向で第一弾性部13Aおよび第二弾性部13Bとほぼ同じ範囲に設けられている。また、第四弾性部13Dは、図2に示されるように、上下方向では可動ハウジング40の底壁43の直下に位置し、コネクタ幅方向では可動ハウジング40の長壁41の壁厚の範囲内に位置している。第四弾性部13Dは、図2および図3に示されるように、2つの第四直状部13D-1のうちコネクタ幅方向で内側に位置する第四直状部13D-1、および第四屈曲部13D-2のうちコネクタ幅方向で内側に位置する部分は、上下方向では可動側被保持部12の直下に位置し、コネクタ幅方向では可動側被保持部12の範囲内に位置している。
【0051】
このように本実施形態では、第四弾性部13Dを可動側被保持部12に対してコネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置させることにより、コネクタ幅方向でのレセプタクルコネクタ1の大型化を回避しつつ、中間部13の十分なばね長を確保できる。本実施形態では、コネクタ幅方向で第三弾性部13Cよりも内側で可動側被保持部12と重複する範囲をもつ可動側弾性部として、1つの弾性部、すなわち第四弾性部13Dだけが設けられることとしたが、可動側弾性部は2つ以上設けられていてもよい。
【0052】
固定側傾斜部13Eおよび可動側傾斜部13Fは、図2および図3に示されるように、上方に向かうにつれてコネクタ幅方向で外側へ向けて傾斜して直状に延びている。既述したように第三弾性部13Cは固定側傾斜部13Eを介して第二弾性部13Bと連結され、可動側傾斜部13Fを介して第四弾性部13Dと連結されている。その結果、第三弾性部13Cは、コネクタ幅方向で第一弾性部13Aおよび第二弾性部13Bと重複する範囲をもって位置している。具体的には、第三弾性部13Cのコネクタ幅方向で外側に位置する第三直状部13C-1および第三屈曲部13C-2にわたる部分が、第一弾性部13Aの第一屈曲部13A-2および第二弾性部13Bにわたる部分に対して、コネクタ幅方向で重複して位置している。
【0053】
このように本実施形態では、第三弾性部13Cが、第一弾性部13Aおよび第二弾性部13Bに対して、コネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置しているので、中間部13に複数の弾性部を設けて中間部13のばね長を大きくしても、従来のように全ての弾性部が重複することなく異なって位置している場合と比べて、コネクタ幅方向でのレセプタクル端子10の中間部13、ひいてはレセプタクルコネクタ1の大型化を回避しやすくなる。
【0054】
また、本実施形態では、第三弾性部13Cと第二弾性部13Bおよび第四弾性部13Dとの間に、コネクタ幅方向で同じ側(本実施形態では外側)に向けて傾斜する固定側傾斜部13Eおよび可動側傾斜部13Fを設けることにより、第三弾性部13Cを大きく傾斜させることなく、コネクタ幅方向での外側に位置させることができる。この結果、第三弾性部13Cがコネクタ幅方向で弾性変形する際、第三弾性部13Cで生じる応力を良好に分散させることができる。
【0055】
レセプタクル固定金具50は、金属板部材を板厚方向に屈曲することで作られており、固定ハウジング30の端壁32に保持される被保持板部(図示せず)と、コネクタ幅方向での被保持板部の両端部の下縁で屈曲され端子配列方向外方へ延びる固定部51(図1参照)とを有している。レセプタクル固定金具50は、被保持板部が端壁32の端溝部32Aへ下方から圧入されて保持されるとともに、固定部51の下面で回路基板の実装面に半田接続されて固定される。
【0056】
次に、プラグコネクタ2の構成を、図1および図2に基づいて説明する。プラグコネクタ2は、回路基板の実装面に対して平行な一方向(図1および図2でのY軸方向)を端子配列方向として配列された複数の金属製のプラグ端子60と、複数のプラグ端子60を保持する電気絶縁材製(例えば樹脂製)のプラグハウジング70と、端子配列方向におけるプラグハウジング70の両端部で保持される金属製のプラグ固定金具80とを有している。図1および図2に見られるように、プラグ端子60は2列をなして配列されている。2列のプラグ端子60はコネクタ幅方向で互いに対称な向きで対向している。
【0057】
プラグハウジング70は、図1および図2に示されるように、端子配列方向(Y軸方向)に延びる一対の側壁71と、コネクタ幅方向(X軸方向)に延び一対の側壁71の端部同士を連結する一対の端壁72と、一対の側壁71および一対の端壁72で形成される周壁の上端を閉塞する底壁73と、底壁73から周壁内で起立する中央壁74とを有している。周壁と中央壁74とで囲まれ下方に開口する環状空間は、図2に示されるように、レセプタクルコネクタ1の可動ハウジング40の周壁を下方から受け入れる受入部75を形成している。端壁72には、図1に示されるように、プラグ固定金具80の一部を収容して圧入保持する端溝部72Aが、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状に形成されている。
【0058】
プラグ端子60は、金属帯状片を板厚方向に屈曲して作られた雄型の端子であり、図2に示されるように、一端側に形成された接続部61と、他端側に形成された接触腕部62と、接続部61と接触腕部62とを連結する被保持部63とを有している。接続部61は、プラグハウジング70の底壁73の底面(図1および図2での上面)に沿ってコネクタ幅方向に延びており、回路基板(図示せず)の実装面に形成された対応回路部に半田接続される。接触腕部62は、図2に示されるように、中央壁74の側面に沿って上下方向で直状に延びている。接触腕部62は、受入部75に板面が露呈しており、この板面でレセプタクル端子10の接触部16A,17Aに接触可能となっている。被保持部63は、図2に示されるように、逆L字状に屈曲されており、上下方向に延びる部分でプラグハウジング70の底壁43に一体成形(インサート成形)により保持されている。
【0059】
プラグ固定金具80は、金属板部材を板厚方向に屈曲することで作られており、プラグハウジング70の端壁72に保持される被保持板部(図示せず)と、コネクタ幅方向での被保持板部の両端部の上縁で屈曲され端子配列方向外方へ延びる固定部81(図1参照)とを有している。プラグ固定金具80は、図1に示されるように、被保持板部が端壁72の端溝部72Aへ上方から圧入されて保持されるとともに、固定部81の上面で回路基板の実装面に半田接続されて固定される。
【0060】
次に、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2との嵌合接続動作について、図1図2および図4に基づいて説明する。ここで、図4は、嵌合接続状態におけるレセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2の端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、レセプタクル端子10の位置での断面を示している。
【0061】
まず、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2を、それぞれ対応する回路基板(図示せず)の実装面へ半田接続により実装する。すなわち、レセプタクルコネクタ1は、レセプタクル端子10の接続部15およびレセプタクル固定金具50の固定部51が実装面に半田接続され、プラグコネクタ2は、プラグ端子60の接続部61およびプラグ固定金具80の固定部81が実装面に半田接続されることで、それぞれ回路基板へ取り付けられる。
【0062】
次に、図1および図2に見られるように、プラグコネクタ2を、受入部75(図2参照)を下向きとした姿勢で、レセプタクルコネクタ1の上方に位置させる。しかる後、プラグコネクタ2をそのままの姿勢で降下させ、中央壁74をレセプタクルコネクタ1の可動ハウジング40の受入部45へ上方から進入させる。これと同時に、プラグコネクタ2の受入部75には、可動ハウジング40の周壁が下方から進入する。この結果、図4に示すように、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2とが嵌合する。
【0063】
プラグコネクタ2がレセプタクルコネクタ1に嵌合されると、図4に示されるように、プラグコネクタ2の中央壁74の両側面に位置するプラグ端子60の接触腕部62が、一対のレセプタクル端子10の接触部16A,17Aに当接して、接触腕部16,17をコネクタ幅方向で外側に押し広げるように弾性変形させる。この結果、プラグ端子60の接触腕部62とレセプタクル端子10の接触部16A,17Aとが接圧をもって接触し電気的に導通する。このようにして、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2との嵌合接続動作が完了する。なお、図4では、レセプタクル端子10の接触腕部16,17が図2と同じ位置にあり、接触部16A,17Aと接触腕部62とが重複した状態で示されているが、実際には、この重複している分だけレセプタクル端子10の接触腕部16,17は、コネクタ幅方向で外側に弾性変形している。
【0064】
嵌合接続動作が完了した時点にてレセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2との相対位置にずれがない場合には、レセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2は、図4に示される正規位置にある。この正規位置において、レセプタクル端子10の第三弾性部13Cは、固定ハウジング30の固定側収容部31A-2の側方内壁面との間にコネクタ幅方向における隙間P1、可動ハウジング40の外壁面との間にコネクタ幅方向における隙間P2、固定ハウジング30の固定側収容部31A-2の上側内壁面との間に上下方向における隙間P3を有するように位置している。
【0065】
仮に、コネクタ嵌合が開始される直前にレセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2との相対位置がずれていた場合、コネクタ嵌合過程およびコネクタ嵌合後において、ずれが生じている方向へレセプタクル端子10が弾性変形し、可動ハウジング40が固定ハウジング30に対して相対移動(フローティング)することにより、ずれが吸収された状態で嵌合接続が可能となっている(図7参照)。
【0066】
また、嵌合接続動作が完了した時点において、レセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2が正規位置(図4参照)にある場合でも、その後、例えば振動が生じる環境でコネクタが使用されたときには、レセプタクルコネクタ1の可動ハウジング40のフローティングによって、その振動が吸収される。
【0067】
図5は、コネクタ嵌合接続後、コネクタ使用中に生じた振動を受けて可動ハウジング40がコネクタ幅方向にフローティングしたレセプタクルコネクタ1をプラグコネクタ2とともに示した断面図である。図5では、レセプタクル端子10の位置における、端子配列方向に対して直角な面での断面が示されている。また、この図5では、レセプタクルコネクタ1の可動ハウジング40がコネクタ幅方向(X軸方向)でX1側へフローティングした状態が示されている。可動ハウジング40がX1側へフローティングする場合、図5に示される2つのレセプタクル端子10、すなわちX1側およびX2側に位置する両方のレセプタクル端子10の各弾性部13A~13Dは、X1側へ向けて弾性変形する。つまり、X1側のレセプタクル端子10の中間部13では、各直状部13A-1~13D-1が互いの間隔を狭めるように変形し、X2側のレセプタクル端子10の中間部13では、各直状部13A-1~13D-1が互いの間隔を拡げるように変形する。
【0068】
図5に示されるように、X1側に位置するレセプタクル端子10の第三弾性部13Cは、2つの第三直状部13C-1同士の間隔を狭めながら、第三弾性部13C全体がコネクタ幅方向で外側に倒れるようにして弾性変形する。このような第三弾性部13Cの弾性変形は隙間P1(図4参照)を限度として許容される。このとき、コネクタの使用環境下で生じた振動の振動数がレセプタクル端子10の固有振動数に近づくと、レセプタクル端子10の中間部13の変形量が大きくなっていく。本実施形態では、第三弾性部13Cは、コネクタ幅方向で外側へ向けて上記隙間P1の変形量をもって弾性変形すると、図5に示されるように、コネクタ幅方向での外側(X1側)の第三直状部13C-1の上部が固定側収容部31A-2の側方内壁面に当接し、第三弾性部13Cのそれ以上の変形が規制される。したがって、中間部13が過大に変形することがないので、レセプタクル端子10の塑性変形等による損傷が良好に抑制される。
【0069】
第三弾性部13Cが固定側収容部31A-2の側方内壁面に当接した状態において、レセプタクル端子10の中間部13は、その全体ではなく、当接位置からコネクタ幅方向で内側に位置する部分、すなわち第三弾性部13Cの第三屈曲部13C-2、内側(X2側)の第三直状部13C-1、可動側傾斜部13F、および第四弾性部13Dからなる部分だけが弾性変形可能となる。したがって、第三弾性部13Cが固定側収容部31A-2の側方内壁面に当接している状態では、当接していない状態と比べて、中間部13のばね長が短くなり、その結果、レセプタクル端子10の固有振動数が高くなる。つまり、第三弾性部13Cが固定側収容部31A-2の側方内壁面に当接することにより、コネクタの使用環境下で生じている振動の振動数とレセプタクル端子10の固有振動数の差が大きくなるので、当接前よりも共振が生じにくくなる。
【0070】
また、本実施形態では、中間部13には、第三弾性部13Cと可動側被保持部12との間に位置する第四弾性部13Dおよび可動側傾斜部13Fが設けられており、中間部13が弾性変形して第三弾性部13Cが固定側収容部31A-2の側方内壁面に当接した状態にあるときに弾性変形可能な部分に、第四弾性部13Dおよび可動側傾斜部13Fが含まれている。したがって、第三弾性部13Cと上記側方内壁面とが当接することで当接前と比べて中間部13のばね長が短くなったとしても、第四弾性部13Dおよび可動側傾斜部13Fが弾性変形可能となっていることにより、十分なフローティング量を確保できる。
【0071】
図6は、コネクタ嵌合接続後、コネクタ使用中に生じた振動を受けて可動ハウジング40が上方にフローティングしたレセプタクルコネクタ1をプラグコネクタ2とともに示した断面図である。図5では、レセプタクル端子10の位置における、端子配列方向に対して直角な面での断面が示されている。
【0072】
X1側およびX2側の両側のレセプタクル端子10の第三弾性部13Cの上方への弾性変形は隙間P3(図4参照)を限度として許容される。本実施形態では、第三弾性部13Cは、上方へ向けて上記隙間P3の変形量をもって弾性変形すると、図6に示されるように、第三屈曲部13C-2が固定側収容部31A-2の上側内壁面、すなわち天壁31A-3の下面に当接し、第三弾性部13Cのそれ以上の変形が規制される。したがって、中間部13が過大に変形することがないので、レセプタクル端子10の塑性変形等による損傷が良好に抑制される。
【0073】
第三弾性部13Cが天壁31A-3に当接した状態において、レセプタクル端子10の中間部13は、その全体ではなく、当接位置からコネクタ幅方向で内側に位置する部分、すなわち第三弾性部13Cの内側(X2側)の第三直状部13C-1、可動側傾斜部13F、および第四弾性部13Dからなる部分だけが弾性変形可能となる。したがって、第三弾性部13Cが天壁31A-3に当接している状態では、当接していない状態と比べて、中間部13のばね長が短くなり、その結果、レセプタクル端子10の固有振動数が高くなる。つまり、第三弾性部13Cが天壁31A-3に当接することにより、コネクタの使用環境下で生じている振動の振動数とレセプタクル端子10の固有振動数の差が大きくなるので、当接前よりも共振が生じにくくなる。
【0074】
既述したように、コネクタ嵌合が開始される直前にレセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2との相対位置がずれていた場合、可動ハウジング40がフローティングすることにより、ずれが吸収される。図7は、コネクタ1の嵌合接続が完了した時点において、可動ハウジング40がコネクタ幅方向でフローティングしているレセプタクルコネクタ1をプラグコネクタ2とともに示した断面図である。図7では、レセプタクル端子10の位置における、端子配列方向に対して直角な面での断面が示されている。また、この図7では、レセプタクルコネクタ1の可動ハウジング40はコネクタ幅方向(X軸方向)でX1側へフローティングした状態が示されている。
【0075】
図7図5と比べると分かるように、コネクタ嵌合過程にてコネクタ同士の相対位置のずれを吸収するように可動ハウジング40がフローティングする場合(図7参照)と、コネクタの使用中に振動を受けたことにより可動ハウジング40がフローティングする場合(図5参照)とでは、レセプタクル端子10の弾性変形の形態は異なっている。
【0076】
図7に示されるように、X1側へ向けてフローティングする場合には、X1側に位置するレセプタクル端子10の各弾性部13A~13Dは、各直状部13A-1~13D-1が互いの間隔を狭めるように変形する。その結果、第三弾性部13Cは、X1側に移動した可動ハウジング40のX1側の外壁面に押され、コネクタ幅方向での内側(X2側)の第三直状部13C-1の上部で可動ハウジング40の外壁面に当接する。
【0077】
一方、X2側に位置するレセプタクル端子10においては、第一弾性部13A、第二弾性部13Bおよび第三弾性部13Cがコネクタ幅方向で内側に倒れるようにして弾性変形する。また、これと同時に、第一弾性部13Aの直状部13A-1同士は間隔を狭めるように変形し、第二弾性部13Bの直状部13B-1同士および第三弾性部13Cの直状部13C-1同士は、間隔を広げるように変形する。また、第四弾性部13Dは、直状部13D-1同士が間隔を狭めるように変形する。このように各弾性部13A~13Dが変形する結果、第三弾性部13Cは、コネクタ幅方向での内側(X1側)の第三直状部13C-1の上部で可動ハウジング40のX2側の外壁面に当接する。
【0078】
図7に示される嵌合状態のコネクタ1,2は、コネクタ幅方向における両側のレセプタクル端子10の第三弾性部13Cが可動ハウジング40の両側の外壁面に当接した状態のまま使用される。コネクタ使用中にコネクタ1,2が振動を受けたとき、レセプタクル端子10は、第三弾性部13Cと可動ハウジング40との当接状態を維持したまま弾性変形する。このとき、レセプタクル端子10の中間部13は、その全体ではなく、当接位置からコネクタ幅方向で外側に位置する部分、すなわち第三弾性部13Cの第三屈曲部13C-2、外側の第三直状部13C-1、固定側傾斜部13E、第二弾性部13Bおよび第一弾性部13Aからなる部分だけが弾性変形可能となる。したがって、第三弾性部13Cが可動ハウジング40の外壁面に当接している状態では、当接していない状態と比べて、中間部13のばね長が短くなり、その結果、レセプタクル端子10の固有振動数が高くなる。つまり、第三弾性部13Cが可動ハウジング40に当接することにより、コネクタの使用環境下で生じる振動の振動数とレセプタクル端子10の固有振動数の差が大きくなるので、当接していない場合よりも共振が生じにくくなる。
【0079】
また、本実施形態では、端子の共振の発生が回避されると、レセプタクル端子10の中間部13がコネクタ幅方向および上下方向のみならず、端子配列方向でも大きく振れて変形しにくくなる。端子配列方向での過大な変形が抑制される結果、端子配列方向で互いに隣接するレセプタクル端子10の中間部13同士が不用意に接触して短絡することを良好に回避できる。
【0080】
本実施形態では、レセプタクル端子の中間部に4つの弾性部を有していることとしたが、弾性部の数は適宜設定可能であり、2つ以上設けられていて、そのうちの少なくとも1つの特定の弾性部が他の弾性部に対して、上下方向で異なって位置するとともに、コネクタ幅方向で重複する範囲をもって位置していればよい。このとき、上下方向でコネクタが大きくなっても問題ない場合には、特定の弾性部は他の弾性部よりも下方に設けられてもよい。また、本実施形態では、特定の弾性部がコネクタ幅方向で外側に位置する他の弾性部と重複して設けられることとしたが、これに替えて、特定の弾性部よりも内側に位置する他の弾性部と重複して設けられていてもよい。このとき、特定の弾性部が可動ハウジングと上下方向で重複して位置している場合には、他の弾性部はコネクタ幅方向で可動ハウジングよりも外側に設けられている必要がある。
【符号の説明】
【0081】
1 レセプタクルコネクタ
10 レセプタクル端子
11 固定側被保持部
12 可動側被保持部
13 中間部
13A 第一弾性部
13B 第二弾性部(固定側弾性部)
13C 第三弾性部(特定の弾性部)
13D 第四弾性部(可動側弾性部)
13E 固定側傾斜部
13F 可動側傾斜部
14 横腕部(腕部)
30 固定ハウジング
31 側壁
31A-3 天壁
40 可動ハウジング

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7