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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113315
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/06 20140101AFI20230808BHJP
   B60J 5/00 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
E05B77/06 Z
B60J5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015589
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和則
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】松永 強
(72)【発明者】
【氏名】篠原 拓矢
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250KK02
2E250LL01
2E250MM03
2E250RR11
(57)【要約】
【課題】ドアが不要に開放される事態をより確実に防止する。
【解決手段】オープンリンク20は、レバー本体21、慣性レバー部22、ねじりコイルバネ24を備え、慣性レバー部22は、レバー本体21がアンロック位置に配置され、かつ動作位置に配置された状態でドアハンドルが開操作された場合にのみその操作力をラチェットレバー14aに伝達可能であり、ねじりコイルバネ24は、慣性レバー部22が付勢力に抗して感応位置まで回転した場合にレバー本体21に対して慣性レバー部22を傾動させるように機能し、レバー本体21には、慣性レバー部22が傾動した状態でねじりコイルバネ24によって回転方向に付勢された場合にブロック部22Bに対向することにより、慣性レバー部22が感応位置を経て動作位置に移動するのを阻止する規制突部21Baが設けられている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンロック状態及びロック状態に変化し、ドアハンドルが開操作された際に動作するオープンリンクと、前記オープンリンクを介して操作力が与えられた場合にラッチに対するラチェットの係合状態を解除するラチェットレバーとを備え、前記オープンリンクは前記アンロック状態において前記ドアハンドルが開操作された場合にその操作力を前記ラチェットレバーに伝達可能となるドアラッチ装置であって、
前記オープンリンクは、前記アンロック状態に対応したアンロック位置及び前記ロック状態に対応したロック位置に変位し、かつ前記ドアハンドルの開操作に伴って移動するレバー本体と、前記レバー本体に対して所定の軸心を中心として相対的に回転することにより動作位置と感応位置とに移動可能となる慣性レバー部と、前記レバー本体に対して前記慣性レバー部が前記動作位置に維持されるように回転方向に付勢する解除用付勢部材とを備え、前記慣性レバー部は、前記レバー本体がアンロック位置に配置され、かつ前記動作位置に配置された状態で前記ドアハンドルが開操作された場合にのみその操作力を前記ラチェットレバーに伝達可能であり、
前記レバー本体と前記慣性レバー部との間には、前記慣性レバー部が前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記感応位置まで回転した場合に当該回転とは異なる移動態様で前記レバー本体に対して前記慣性レバー部をシフト位置にシフトさせるシフト用付勢部材と、前記慣性レバー部が前記シフト用付勢部材によって前記シフト位置にシフトされた場合に前記軸心に沿って互いに対向することにより、前記慣性レバー部が前記シフト位置から前記感応位置を経て前記動作位置に移動するのを阻止する規制部材とが設けられていることを特徴とするドアラッチ装置。
【請求項2】
前記レバー本体と前記慣性レバー部との間には、前記慣性レバー部が前記動作位置に配置されている場合に前記軸心に沿って並設され、かつ前記慣性レバー部が前記シフト用付勢部材によって前記シフト位置にシフトされた場合に前記軸心を中心とした周方向に互いに対向するブロック部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記シフト用付勢部材は、前記レバー本体に対して前記慣性レバー部を傾動する方向に付勢することを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記解除用付勢部材は、前記軸心を中心として構成されたねじりコイルバネであり、前記シフト用付勢部材としても機能することを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項5】
前記慣性レバー部及び前記慣性レバー部を収容するハウジングには、前記慣性レバー部が前記シフト位置にシフトされた状態で前記ドアハンドルが予め設定した復帰用のストローク量をもって開操作された場合に互いに当接し、前記慣性レバー部を前記動作位置に復帰させる復帰部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両本体に対してドアを閉じた状態に維持するドアラッチ装置には、車両本体に対して衝撃力が加えられた場合にもドアが不用意に開くことがないように構成されたものが提供されている。例えば、特許文献1に記載のものでは、ドアハンドルが開操作された場合に動作してラチェットレバーを解除動作させるオープンリンクとして、レバー本体及び慣性レバー部を有したものが適用されている。レバー本体は、ドアハンドルの開操作に伴って移動するもので、アンロック位置とロック位置との間を変位可能である。慣性レバー部は、レバー本体に対して動作位置及び非動作位置の間に変位可能に支持されたもので、解除用付勢バネによって動作位置に維持されるように付勢されている。
【0003】
このドアラッチ装置では、側面衝突等によって車両に衝撃力が加えられると、慣性レバー部が解除用付勢バネの付勢力に抗して非動作位置に移動する。非動作位置に移動した慣性レバー部は、レバー本体が移動した場合にも、ラチェットレバーに対して非係合となる。従って、慣性レバー部が非動作位置に配置された状態においては、仮に衝撃力の影響によってドアハンドルが車両本体に対して動いたとしてもドアが不用意に開放する事態を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-26780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、衝突等によって車両本体に衝撃力が加えられた場合には、車両本体に対してドアハンドルがごく短い時間に複数回も開操作方向に動作することが確認されている。上述したドアラッチ装置の慣性レバー部は、非動作位置に移動した後においても解除用付勢バネの付勢力によって動作位置に復帰することになる。従って、慣性レバー部が動作位置に復帰した状態でドアハンドルが開操作方向に動作した場合には、ドアが不用意に開放する事態を招来するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、車両本体に衝撃力が加えられた場合にも、ドアが不要に開放される事態をより確実に防止することのできるドアラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るドアラッチ装置は、アンロック状態及びロック状態に変化し、ドアハンドルが開操作された際に動作するオープンリンクと、前記オープンリンクを介して操作力が与えられた場合にラッチに対するラチェットの係合状態を解除するラチェットレバーとを備え、前記オープンリンクは前記アンロック状態において前記ドアハンドルが開操作された場合にその操作力を前記ラチェットレバーに伝達可能となるドアラッチ装置であって、前記オープンリンクは、前記アンロック状態に対応したアンロック位置及び前記ロック状態に対応したロック位置に変位し、かつ前記ドアハンドルの開操作に伴って移動するレバー本体と、前記レバー本体に対して所定の軸心を中心として相対的に回転することにより動作位置と感応位置とに移動可能となる慣性レバー部と、前記レバー本体に対して前記慣性レバー部が前記動作位置に維持されるように回転方向に付勢する解除用付勢部材とを備え、前記慣性レバー部は、前記レバー本体がアンロック位置に配置され、かつ前記動作位置に配置された状態で前記ドアハンドルが開操作された場合にのみその操作力を前記ラチェットレバーに伝達可能であり、前記レバー本体と前記慣性レバー部との間には、前記慣性レバー部が前記解除用付勢部材の付勢力に抗して前記感応位置まで回転した場合に当該回転とは異なる移動態様で前記レバー本体に対して前記慣性レバー部をシフト位置にシフトさせるシフト用付勢部材と、前記慣性レバー部が前記シフト用付勢部材によって前記シフト位置にシフトされた場合に前記軸心に沿って互いに対向することにより、前記慣性レバー部が前記シフト位置から前記感応位置を経て前記動作位置に移動するのを阻止する規制部材とが設けられていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述したドアラッチ装置において、前記レバー本体と前記慣性レバー部との間には、前記慣性レバー部が前記動作位置に配置されている場合に前記軸心に沿って並設され、かつ前記慣性レバー部が前記シフト用付勢部材によって前記シフト位置にシフトされた場合に前記軸心を中心とした周方向に互いに対向するブロック部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述したドアラッチ装置において、前記シフト用付勢部材は、前記レバー本体に対して前記慣性レバー部を傾動する方向に付勢することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述したドアラッチ装置において、前記解除用付勢部材は、前記軸心を中心として構成されたねじりコイルバネであり、前記シフト用付勢部材としても機能することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述したドアラッチ装置において、前記慣性レバー部及び前記慣性レバー部を収容するハウジングには、前記慣性レバー部が前記シフト位置にシフトされた状態で前記ドアハンドルが予め設定した復帰用のストローク量をもって開操作された場合に互いに当接し、前記慣性レバー部を前記動作位置に復帰させる復帰部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レバー本体に対して慣性レバー部が感応位置まで回転すると、シフト用付勢部材によって慣性レバー部がシフト位置にシフトされ、規制部材が互いに軸心に沿って対向するため、慣性レバー部が感応位置を経て動作位置に移動することが阻止される。従って、慣性レバー部が一旦感応位置に配置された後においては、ドアハンドルが開操作方向に動作された場合にもラチェットレバーが動作することはなく、車両本体に衝撃力が加えられた場合にドアが不用意に開放する事態をより確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態であるドアラッチ装置の外観を車両の後方側から見た図である。
図2図2は、図1においてハウジングを省略した状態の図である。
図3図3は、図1に示したドアラッチ装置の内部構造を車両の内方側から見た図である。
図4図4は、図1に示したドアラッチ装置がアンロック状態となっている場合の内部構造の要部を車両の内方側から見た図である。
図5図5は、図1に示したドアラッチ装置がロック状態となっている場合の内部構造の要部を車両の内方側から見た図である。
図6図6は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクにおいて慣性レバー部が動作位置となっている場合の内部構造の要部を示すもので、(a)は車両の内方側から見た図、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図7図7は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクにおいて慣性レバー部がシフト位置となっている場合の内部構造の要部を示すもので、(a)は車両の内方側から見た図、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図8図8は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクを車両の内方側から見た分解斜視図である。
図9図9は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクを車両の上方側から見た分解斜視図である。
図10図10は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクにおいて慣性レバー部が動作位置となっている場合を示すもので、(a)は車両の内方側から見た図、(b)は車両の後方側から見た図、(c)は車両の外方側から見た図、(d)は車両の内方側、かつ上方側から見た斜視図である。
図11図11は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクにおいて慣性レバー部が動作位置となっている場合の要部断面平面図である。
図12図12は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクにおいて慣性レバー部がシフト位置となっている場合を示すもので、(a)は車両の内方側から見た図、(b)は車両の後方側から見た図、(c)は車両の外方側から見た図、(d)は車両の内方側、かつ上方側から見た斜視図である。
図13図13は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクにおいて慣性レバー部がシフト位置となっている場合の要部断面平面図である。
図14図14は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクにおいて慣性レバー部がシフト位置となっている場合の要部断面側面図である。
図15図15は、図1に示したドアラッチ装置のオープンリンクと、ハウジングとの相対位置を示すもので、(a)は慣性レバー部が動作位置に配置されている状態の斜視図、(b)は慣性レバー部がシフト位置に配置されている状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るドアラッチ装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、車両に搭載した状態においてそれぞれの方向を特定することとしている。
【0015】
図1図3は、本発明の実施の形態であるドアラッチ装置を示したものである。ここで例示するドアラッチ装置は、図には示していないが、四輪自動車の右側に配置された前方ヒンジのサイドドアに搭載され、ドアハンドルによる開操作やキーによる施解錠操作に従って車両本体に設けられたストライカとの係合状態を変更することにより、サイドドアの開閉制御を行うものである。このドアラッチ装置には、ハウジング1の内部にラッチユニット10が設けてある。
【0016】
ラッチユニット10は、ラッチ軸11を介して回転可能に配設したラッチ12と、ラチェット軸13を介して回転可能に配設したラチェット14とを備えて構成したものである。ラッチ軸11及びラチェット軸13は、いずれの車両の前後に沿ってほぼ水平となるように延在している。図示の例では、ハウジング1に設けたストライカ進入溝2よりも車両の上方側となる部分にラッチ軸11が設けてあり、ストライカ進入溝2よりも車両の下方側となる部分においてラッチ軸11よりも車両の内方側となる部分にラチェット軸13が設けてある。ストライカ進入溝2に対しては、サイドドアの閉じ操作により、相対的に車両の内方側となる図1の左方からストライカ(図示せず)が進入することになる。
【0017】
ラッチ12は、ストライカ当接部12a及びフック部12bを有したもので、図示せぬラッチバネの付勢力により、解除方向(図2においては時計回り)に付勢されて噛合待機状態に配置されている。噛合待機状態とは、ストライカ進入溝2に対してフック部12bが上方側に退避する一方、ストライカ当接部12aがストライカ進入溝2の奥方側(図2において右方側)に配置された状態である。サイドドアが閉じられてストライカ進入溝2にストライカが進入すると、ストライカがストライカ当接部12aに当接することにより、ラッチバネの付勢力に抗してラッチ12が図2において反時計回りに回転し、フック部12bがストライカ進入溝2の開口端部側を横切った状態に配置される。
【0018】
ラチェット14は、ラッチ12のフック部12bがストライカ進入溝2に対して横切った状態に配置された際にフック部12bに係合することによりラッチ12の解除方向への回転を阻止するものである。このラチェット14は、図示せぬラチェットバネの付勢力により、ラッチ12に係合する方向(図2においては反時計回り)に付勢されている。従って、ストライカ進入溝2にストライカが進入され、ラッチ12のフック部12bがストライカ進入溝2を横切るように配置されると、ラチェットバネの付勢力によってラチェット14がフック部12bに係合し、その状態が維持されることになる。
【0019】
図4及び図5に示すように、ラチェット14には、ラチェットレバー14aが一体に設けてある。ラチェットレバー14aは、ラチェット軸13においてラチェット14よりも車両の前方側に位置する部分から車両の内方側に向けて延在したものである。ラチェットバネの付勢力に抗してラチェットレバー14aを上方側に押圧すると、ラチェット14が図2において時計回りに回転するため、ラチェット14とラッチ12との係合状態を解除することが可能となる。
【0020】
図3図5に示すように、ハウジング1の内部においてラチェットレバー14aの下方側となる部分には、オープンリンク20が配設してある。オープンリンク20は、アウトサイドハンドルレバー30及びインサイドハンドルレバー40の動作により上下に沿って移動可能、かつロックユニット50の動作により車両の左右に沿った方向の軸心回りに回転してアンロック状態及びロック状態に変化することができるようにハウジング1に配設したものである。
【0021】
アウトサイドハンドルレバー30は、図1及び図2に示すように、車両の前後に沿うアウトサイドレバー軸31により、ラチェット軸13よりも下方側となる部分に回転可能に配設したものである。図には示していないが、アウトサイドハンドルレバー30において車両の外方側に位置する端部には、アウトサイドケーブル32を介してサイドドアのアウトサイドドアハンドルが連係してある。アウトサイドハンドルレバー30において車両の内方側に位置する端部30aには、オープンレバー33が連係可能に配設してある。オープンレバー33は、車両の前後に沿うオープンレバー軸34により、アウトサイドハンドルレバー30よりも車両の内方側、かつアウトサイドレバー軸31よりも下方側となる部分に回転可能に配設したもので、車両の内方側に位置する係合端部33aがオープンリンク20の回転中心部(後述する係合孔21a)に係合している。
【0022】
アウトサイドドアハンドルが開操作されると、アウトサイドケーブル32を介してアウトサイドハンドルレバー30が図2において反時計回りに回転するとともに、オープンレバー33が図2において時計回りに回転することになり、係合端部33aを介してオープンリンク20が上方側に向けて移動することになる。アウトサイドドアハンドルの開操作を止めると、オープンレバー33がリターンバネ35の付勢力によって反時計回りに回転し、オープンリンク20及びアウトサイドハンドルレバー30が元の状態に復帰する。
【0023】
インサイドハンドルレバー40は、図3に示すように、車両の左右に沿うインサイドレバー軸41により、オープンリンク20よりも下方側となる部分に回転可能に配設したもので、その前方側に位置する前端部分40aがオープンリンク20の下端面に対向している。図には示していないが、インサイドハンドルレバー40の下端部には、インサイドケーブル42を介してサイドドアのインサイドドアハンドルが連係してある。
【0024】
インサイドドアハンドルが開操作されると、インサイドケーブル42を介してインサイドハンドルレバー40が図3において時計回りに回転することになり、インサイドハンドルレバー40の前端部分40aを介してオープンリンク20が上方側に向けて移動することになる。このとき、オープンリンク20の上方側への移動に伴ってオープンレバー33が図2において時計回りに回転した状態となる。従って、インサイドドアハンドルの開操作を止めると、オープンレバー33がリターンバネ35の付勢力によって反時計回りに回転し、オープンリンク20及びインサイドハンドルレバー40が元の状態に復帰する。
【0025】
ロックユニット50は、図3に示すように、車両の左右に沿ったロック軸51の軸心回りに回転するロックレバー52を備え、ロックレバー52の係合片52aを介してオープンリンク20に係合するものである。このロックユニット50は、ロックレバー52に連係したアクチュエータユニット53及びロックケーブル54を備えている。アクチュエータユニット53は、車両の使用者が所有するリモコンによってロック操作及びアンロック操作されるものである。ロックケーブル54は、サイドドアに設けられた図示せぬロックノブのロック操作及びアンロック操作をロックレバー52に伝達するものである。
【0026】
このロックユニット50では、アクチュエータユニット53もしくはロックケーブル54がアンロック操作されると、ロックレバー52が図3において時計回りに回転した状態となる。この結果、オープンリンク20は、図示せぬリターンバネの付勢力により、図4に示すように、ほぼ直立したアンロック状態となる。同様に、アクチュエータユニット53もしくはロックケーブル54がロック操作されると、ロックレバー52は、図3において反時計回りに回転した状態となる。この結果、オープンリンク20は、係合片52aを介して図3において反時計回りに回転し、図5に示すように、前傾したロック状態となる。本実施の形態では、図8図14に示すように、上述したオープンリンク20として、レバー本体21及び慣性レバー部22を有して構成したものを適用している。なお、図においては便宜上レバー本体21及び慣性レバー部22に対して異なる態様のドットが施してある。
【0027】
レバー本体21は、下端部に係合孔21a及び支持軸部21bを有するとともに、上端部にロック係合部21cを有したものである。係合孔21aは、車両の左右方向に沿って貫通した異形の孔である。この係合孔21aには、オープンレバー33において車両の内方側に位置する係合端部33aが相対回転可能、かつ上下方向へは相対移動不可となる状態で係合している。支持軸部21bは、係合孔21aに隣接する部分から車両の後方側に向けて突出した円柱状を成すものである。ロック係合部21cは、車両の外方側に向けて突出した突起部であり、上述したロックレバー52の係合片52aに係合している。すなわち、レバー本体21は、アウトサイドドアハンドルやインサイドドアハンドルが開操作された場合、オープンレバー33を介して上方に移動し、かつロックユニット50やロックケーブル54がロック操作された際に前傾したロック位置に配置される一方、ロックユニット50やロックケーブル54がアンロック操作された際にほぼ直立したアンロック位置に配置されるものである。レバー本体21のロック位置及びアンロック位置は、それぞれオープンリンク20のロック状態及びアンロック状態に対応するものである。
【0028】
慣性レバー部22は、上端部に慣性質量部22aを有し、かつ下端部に摺動孔22bを有したものである。慣性質量部22aは、慣性レバー部22において上端部の質量が下端部よりも大きくなるように構成したもので、上端に押圧当接面22cを構成しているとともに、車両の後方側となる部分に復帰用傾斜突部(復帰部)22dを有している。この慣性レバー部22は、摺動孔22bに支持軸部21bを挿通させることにより、支持軸部21bの軸心回りに回転可能、かつ下端部を中心として上端部が後方となるように傾斜して配置することができる状態でレバー本体21に支持してある。
【0029】
支持軸部21bの突出端面には規制板23が設けてあり、また支持軸部21bにおいてレバー本体21と慣性レバー部22との間に位置する部分にはねじりコイルバネ(解除用付勢部材及びシフト用付勢部材)24が設けてある。規制板23は、摺動孔22bの内径よりも大きな外径を有した円板状を成すもので、取付ネジ25によって支持軸部21bの端面に固定してある。ねじりコイルバネ24は、レバー本体21に対して慣性レバー部22が、車両の後方側から見て反時計回りに回転するように付勢するとともに、レバー本体21に対して慣性レバー部22を後方に押圧することにより、下端部を中心として慣性レバー部22の上端部を後方側へ傾動(シフト)させるように機能するものである。
【0030】
これらレバー本体21及び慣性レバー部22には、それぞれブロック部21B,22Bが設けてある。これらのブロック部21B,22Bは、図10及び図11に示すように、摺動孔22bの軸心が支持軸部21bの軸心に対してほぼ平行となり、かつねじりコイルバネ24の回転方向の付勢力によりレバー本体21に対して慣性レバー部22が、車両後方側から見て反時計回りに回転した状態(慣性レバー部22の動作位置)においては、支持軸部21bの軸心に沿って互いに前後に並設された状態となる。一方、図12図14に示すように、レバー本体21に対して慣性レバー部22が、車両の後方側から見て時計回りに回転し、かつ慣性質量部22aが後方側に傾動した状態においては、互いに周方向に対向するようにブロック部21B,22Bが構成してある。
【0031】
さらに、レバー本体21のブロック部21B及び慣性レバー部22のブロック部(規制部材)22Bの間には、規制突部(規制部材)21Ba及び規制凹部22Baが設けてある。規制突部21Baは、ブロック部21Bの上端部から車両の外方側に向けて突出したものである。規制凹部22Baは、ブロック部22Bの前端部において規制突部21Baに対応する部分に形成した凹部である。規制突部21Ba及び規制凹部22Baは、レバー本体21に対して慣性レバー部22が傾動し、かつねじりコイルバネ24の回転方向の付勢力により、レバー本体21に対して慣性レバー部22が、車両の後方側から見て反時計回りに回転した場合(慣性レバー部22のシフト位置)に互いに対向し、レバー本体21に対して慣性レバー部22が動作位置に復帰するのを阻止するように機能する。
【0032】
復帰用傾斜突部22dは、慣性レバー部22がシフト位置に配置された状態で、アウトサイドドアハンドルの開操作やインサイドドアハンドルの開操作が通常よりも大きな復帰用のストローク量をもって行われた場合に、図15に示すように、ハウジング1の復帰用突起(復帰部)1Aに当接することにより、ねじりコイルバネ24の付勢力に抗して慣性レバー部22をレバー本体21に対して車両の外方側に移動させた後、前方側に押圧するものである。すなわち、慣性レバー部22がシフト位置に配置された状態で、アウトサイドドアハンドルの開操作やインサイドドアハンドルの開操作が通常よりも大きな復帰用のストローク量をもって行われた場合には、復帰用傾斜突部22dがハウジング1の復帰用突起1Aに当接することにより、慣性レバー部22がレバー本体21に対して車両の外方側に移動された後、前方側に移動して感応位置となる。これにより、慣性レバー部22は、ねじりコイルバネ24の回転方向の付勢力により、車両の後方側から見て反時計回りに回転し、上述した動作位置に復帰することになる。復帰用傾斜突部22d及び復帰用突起1Aは、オープンリンク20が動作位置に配置されている場合、互いに当接することなくオープンリンク20の上方への移動を許容する一方、オープンリンク20がシフト位置に配置されている状態で上方に移動した場合にのみ互いに当接することができるように構成してある。
【0033】
上記のように構成したドアラッチ装置は、レバー本体21の支持軸部21bが車両の前後に沿い、かつ慣性レバー部22が動作位置に配置された状態で車両に搭載される。通常の使用時においては、ねじりコイルバネ24の回転方向の付勢力によって慣性レバー部22が動作位置に維持されているため、図6に示すように、レバー本体21がアンロック位置に配置されている場合には、つまりオープンリンク20がアンロック状態であれば、慣性レバー部22の押圧当接面22cがラチェットレバー14aの下面に対向した状態となる。これにより、アウトサイドドアハンドルの開操作やインサイドドアハンドルの開操作によってレバー本体21が上方に移動すれば、押圧当接面22cを介してラチェットレバー14aが上方に移動することになり、ラッチ12に対するラチェット14の係合状態が解除され、サイドドアを開放することが可能となる。
【0034】
一方、ロックユニット50やロックケーブル54がロック操作された場合には、レバー本体21及び慣性レバー部22が一体となって前傾したロック状態となり、押圧当接面22cがラチェットレバー14aよりも前方に配置される。従って、アウトサイドドアハンドルの開操作やインサイドドアハンドルの開操作によってレバー本体21が上方に移動しても、慣性レバー部22がラチェットレバー14aに当接することはなく、ラッチ12に対するラチェット14の係合状態が維持され、車両本体に対してサイドドアが閉じた状態のままとなる。
【0035】
上述の車両に対して側面衝突等によって左右方向の衝撃力が加えられ、上端部が慣性質量部22aとなった慣性レバー部22がねじりコイルバネ24の回転方向の付勢力に抗して規制突部21Baを越えるまで回転して感応位置に至ると、慣性レバー部22は、ねじりコイルバネ24の軸方向に沿った付勢力によりレバー本体21に対し、下端部を中心として慣性質量部22aが後方となるように傾斜して配置される(シフト位置)。この結果、ブロック部21B,22Bが互いに周方向に重なった状態となり、ねじりコイルバネ24の回転方向の付勢力によっては、慣性レバー部22が感応位置を経て動作位置に復帰することはない。従って、図7に示すように、レバー本体21がアンロック位置に配置されている場合であっても、慣性レバー部22がシフト位置に配置されると、上端の押圧当接面22cがラチェットレバー14aの下面に対して非対向の状態となる。これにより、この状態からは、アウトサイドドアハンドルの開操作やインサイドドアハンドルの開操作によってレバー本体21が上方に移動したとしても、押圧当接面22cがラチェットレバー14aに当接することはなく、ラッチ12に対するラチェット14の係合状態が維持され、サイドドアが閉じた状態のままとなる。
【0036】
しかも、この状態においては、ブロック部22Bが規制突部21Baを越えた位置においてねじりコイルバネ24の回転方向の付勢力により慣性レバー部22が、車両の後方側から見て反時計回りに回転し、規制突部21Baに対してブロック部22Bの規制凹部22Baが対向した状態に維持されるため、慣性レバー部22の慣性質量部22aがレバー本体21に対して前方側に移動するができない。すなわち、レバー本体21に対して慣性レバー部22がシフト位置に配置された後においては、仮に車両本体に加えられた衝撃力の影響によってアウトサイドドアハンドルやインサイドドアハンドルが動いたとしても、慣性レバー部22が感応位置を経て動作位置に復帰することはなく、この結果、サイドドアが不用意に開放する事態を招来するおそれはない。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、四輪自動車のサイドドアに搭載するドアラッチ装置を例示しているが、その他のタイプの車両に搭載してももちろん良い。この場合、レバー本体の支持軸部が車両の前後に沿い、かつ慣性レバー部の慣性質量部が上方となるように配置すれば、実施の形態と同様、側面衝突等によって車両の左右方向に衝撃力が加えられた場合にドアが不用意に開放する事態を防止することが可能となる。
【0038】
また、上述した実施の形態では、レバー本体21に対して慣性レバー部22が感応位置まで回転した場合に慣性レバー部22を傾動させることでシフト位置にシフトするようにしているが、本発明はこれに限定されず、例えば、慣性レバー部22を支持軸部21bの軸心に沿ってスライドさせることでシフト位置にシフトさせるように構成することも可能である。
【0039】
さらに、上述した実施の形態では、単一のねじりコイルバネ24によりレバー本体21に対して慣性レバー部22を動作位置に維持するように付勢する機能と、慣性レバー部22を感応位置に付勢する機能とを兼用させるようにしているが、それぞれを個別の付勢部材によって構成してももちろん良い。
【0040】
またさらに、上述した実施の形態では、レバー本体21に規制突部21Baを設けるようにしているが、慣性レバー部22に規制突部を設けても良いし、レバー本体21及び慣性レバー部22の双方に規制突部を設けても構わない。
【符号の説明】
【0041】
1 ハウジング
1A 復帰用突起(復帰部)
12 ラッチ
14 ラチェット
14a ラチェットレバー
20 オープンリンク
21 レバー本体
21B ブロック部
21Ba 規制突部(規制部材)
22 慣性レバー部
22B ブロック部(規制部材)
22d 復帰用傾斜突部(復帰部)
23 規制板
24 ねじりコイルバネ(解除用付勢部材、シフト用付勢部材)
図1
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