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特開2023-113334工場内環境改善システム、および工場内環境改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113334
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】工場内環境改善システム、および工場内環境改善方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20230808BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20230808BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230808BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20230808BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/12 A
F24F5/00 Z
F24F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015621
(22)【出願日】2022-02-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り セミナー「事業所向け 省エネセミナー in小牧」、令和3年11月17日 令和3年11月25日、https://www.youtube.com/watch?v=usK0oNaUVQM
(71)【出願人】
【識別番号】598160498
【氏名又は名称】株式会社ハイデック
(71)【出願人】
【識別番号】518308245
【氏名又は名称】上海清環環保科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】518301040
【氏名又は名称】譚洪衛
(71)【出願人】
【識別番号】322000753
【氏名又は名称】松島 誠一
(71)【出願人】
【識別番号】322000764
【氏名又は名称】磯谷 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】大倉 重信
【テーマコード(参考)】
3C011
3L053
3L054
【Fターム(参考)】
3C011EE08
3L053BD04
3L054BE10
(57)【要約】
【課題】空調負担を低減し省エネルギー化を促進しつつ工場内の温度上昇を抑制させて作業環境を改善させることが可能な工場内環境改善システム、および工場内環境改善方法を提供する。
【解決手段】工場内環境改善システムに、工場内に設けられ、加工空間11がカバー12により囲まれている加工機10と、吸気口から空気を吸引して浄化させる空気浄化部21、および空気浄化部21により浄化された浄化空気を冷却する空気冷却部22、が設けられている空気清浄機20と、加工空間11内と吸気口とを繋いでいる吸引ダクト30と、冷媒を冷却する空気を取入れるための空気取入口、および冷媒を冷却した空気を工場内に排出するための空気排出口42を有し、空気取入口に空気冷却部22により冷却された浄化冷却空気が導入されている空冷温調機40と、を具備させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内に設けられ、加工空間がカバーにより囲まれている加工機と、
吸気口から空気を吸引して浄化させる空気浄化部、および該空気浄化部により浄化された浄化空気を冷却する空気冷却部、が一体的に設けられている空気清浄機と、
前記加工空間内と前記吸気口とを繋いでおり、前記加工空間内における切削液のミストを含んだ加工排気を前記空気浄化部に吸引させて浄化させるための吸引ダクトと、
冷媒を冷却する空気を取入れるための空気取入口、および前記冷媒を冷却した空気を前記工場内に排出するための空気排出口を有し、前記空気取入口に前記空気冷却部により冷却された浄化冷却空気が導入されている空冷温調機と
を具備していることを特徴とする工場内環境改善システム。
【請求項2】
前記加工機から前記切削液を回収して貯留すると共に浄化し、浄化した該切削液を前記加工機へ供給する切削液タンクを、更に具備しており、
前記空冷温調機は、前記切削液タンクに貯留されている前記切削液を温調するものであることを特徴とする請求項1に記載の工場内環境改善システム。
【請求項3】
工場内に設けられ、加工空間がカバーにより囲まれている加工機と、
吸気口から空気を吸引して浄化させる空気浄化部、および該空気浄化部により浄化された浄化空気を冷却する空気冷却部、が一体的に設けられている空気清浄機と、
前記加工空間内と前記吸気口とを繋いでいる吸引ダクトと、
冷媒を冷却する空気を取入れるための空気取入口、および前記冷媒を冷却した空気を前記工場内に排出するための空気排出口を有している空冷温調機と
を具備し、
前記吸引ダクトを通して前記加工空間内における切削液のミストを含んだ加工排気を前記空気清浄機により浄化させた上で冷却して浄化冷却空気を生成し、該浄化冷却空気を前記空冷温調機の前記空気取入口に導入させる
ことを特徴とする工場内環境改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機が設けられている工場内の空調負担を低減し環境を改善するための工場内環境改善システム、および工場内環境改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、加工機などが設けられている工場において、空調設備の導入により工場内環境(作業環境)の快適化が促進されている。また、生産性向上や省スペース化のために、加工速度の高速化や加工機や切削液タンクなどの小型化も進められている。しかしながら、加工速度の高速化や加工機などの小型化により、加工機からのオイルミストを含む加工排気の増加や工場内の温度上昇などが生じて作業環境が悪化する問題があった。
【0003】
本願発明者は、上記のような問題について精査したところ、以下のようなことを知見した。まず、加工速度の高速化により、加工機から回収される切削液の温度が上昇していた。この際に、省スペース化により、加工機から回収された切削液が貯留される切削液タンクが小型化されていると、回収した切削液を浄化して再び加工機に供給するまでの間に、切削液の温度を常温まで低下させることが困難となり、常温よりも温度の高い切削液が加工機へ再び供給されてしまう。これにより、加工機では常温よりも温度の高い環境下でワークの加工が行われてしまうため、加工後の常温検査時において、加工精度が公差基準に入っていなかったり、加工精度の公差にバラツキが発生していたりしていた。そのため、切削液タンクに空冷温調機(空冷チラー)を設けることで、加工機に供給される切削液を冷却してその温度を調整するようにしていた。しかしながら、この空冷温調機から高温(50℃~55℃)の排熱が工場内に排出されるため、これが工場内における温度上昇の一因となっていた。
【0004】
また、加工速度の高速化に伴い、ワークに供給される切削液の吐出圧を高くしているため、切削液や切粉が加工空間の内壁などに強く衝突することでミストの発生量が多くなると共に温度が高くなっていた。これにより、加工機からは、ミストを多く含んだ高い温度の加工排気が工場内に排出されており、この加工排気に含まれる微粒子によって工場内の空気が汚染されて環境を悪化させていた。そのため、工場内に空気中の微粒子を捕集するためのミストコレクタを設けて、ミストなどを除去するようにしていた。しかしながら、加工機からの加工排気は工場内において広く拡散するため、工場内の空気全体を浄化するためにはミストコレクタを多く設ける必要があった。また、ミストコレクタでは、吸い込んだミストを除去することはできるものの、吸い込んだ空気の温度を低下させることはできないため、ミストコレクタからは温度が高いままの空気が工場内に放出されていた。
【0005】
更に、加工速度の高速化や高精度加工化などに伴い、加工機などの機械設備の制御盤にかかる負荷が増加し、制御盤の発熱量が増加する。この際に、工場内の温度が上昇していると、制御盤の温度が低下し難くなる。そして、制御盤の温度が高くなりすぎると半導体の高温異常が発生し、トラブル異常が検知されることで機械設備の動作が停止する。所謂、チョコ停と言われる故障が頻発し、生産性が低下する問題があった。
【0006】
上記のような空冷温調機やミストコレクタからの熱は、工場内全体の発熱要因に対して、空冷温調機からの熱が47%、ミストコレクタからの熱が28%、であることを知見した。
【0007】
更に、加工機から工場内に排出される加工排気は、工場内の温度を上昇させるだけでなく、以下のような問題点があった。まず、工場内において加工排気が拡散(充満)していると、工場内で作業している作業者は、加工排気に含まれている切削液のミストに暴露されこととなる。そして、ミストの曝露により、作業者の皮膚や呼吸器に炎症や悪性腫瘍などの障害が発生し、更に、長期に亘って暴露すると皮膚癌などが発生すると言われている。また、加工排気には化学物質、有機物、金属、などの粉塵が含まれているため、それらの粉塵を作業者が吸い込むことで、アレルギー反応による急性過敏症肺炎や、タングステン、コバルト、ニッケルなどを含む超硬合金による肺病変(超硬合金肺)、などが発生すると言われている。このように作業者の健康に悪影響を及ぼす恐れがあることから、工場内をクリーンな環境にする要請があった。
【0008】
そこで、空調設備を増強して工場内の温度を低下させると共に、ミストコレクタを増やして工場内の空気を浄化させることが考えられる。しかしながら、加工機から加工排気を工場内に排出させていると、上述したように加工排気が工場内において広く拡散するため、加工排気に含まれているミストを含む微粒子が空冷温調機や空調設備のフィルタに付着してしまい、付着した微粒子がフィルタに蓄積されることで目詰まりが発生し、空冷温調機や空調設備の負荷が増加して冷却効率が低下してしまう問題がある。また、空調設備の増強は、省エネルギー化の要請に対して逆行してしまう問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、空調負担を低減し省エネルギー化を促進しつつ工場内の温度上昇を抑制させて作業環境を改善させることが可能な工場内環境改善システム、および工場内環境改善方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る工場内環境改善システムは、
「工場内に設けられ、加工空間がカバーにより囲まれている加工機と、
吸気口から空気を吸引して浄化させる空気浄化部、および該空気浄化部により浄化された浄化空気を冷却する空気冷却部、が一体的に設けられている空気清浄機と、
前記加工空間内と前記吸気口とを繋いでおり、前記加工空間内における切削液のミストを含んだ加工排気を前記空気浄化部に吸引させて浄化させるための吸引ダクトと、
冷媒を冷却する空気を取入れるための空気取入口、および前記冷媒を冷却した空気を前記工場内に排出するための空気排出口を有し、前記空気取入口に前記空気冷却部により冷却された浄化冷却空気が導入されている空冷温調機と
を具備している」ことを特徴とする。
【0011】
本構成の工場内環境改善システムでは、まず、加工機の加工空間内における切削液のミストを含んだ加工排気を、吸引ダクトを通して空気清浄機の空気浄化部に吸引し、空気浄化部により加工排気に含まれる微粒子を除去して浄化した上で、空気冷却部により冷却している。これにより、加工機からの加工排気が工場内に排出されることはなく、加工排気が工場内で拡散して工場内の空気が汚染されることはないと共に、加工排気の熱により工場内の温度が上昇することはない。そして、空気清浄機により加工排気を浄化・冷却して生成した浄化冷却空気を、空冷温調機の空気取入口に導入しているため、空冷温調機内において加工排気に含まれていた微粒子が付着することはなく、空冷温調機の負荷の増加を抑制して熱効率を高めることができる。更に、空冷温調機の空気排出口からは、清浄で従来よりも温度の低い排気を工場内に排出させることができ、工場内の温度上昇を抑制させることができる。
【0012】
このように、工場内の温度上昇および空気汚染を抑制することができるため、空調設備やミストコレクタを増設する必要はなく省エネルギー化を促進することができると共に、工場内における作業環境を改善することができる。また、工場内の温度上昇を抑制することができるため、加工機において常温に近い温度でワークを加工することが可能となり、常温検査時における加工精度のバラツキを低減させることが可能となる。また、工場内の温度上昇を抑制することができるため、制御盤における温度上昇を抑制して、高温異常によるチョコ停を低減させることが可能となる。
【0013】
本発明に係る工場内環境改善システムは、上記の構成に加えて、
「前記加工機から前記切削液を回収して貯留すると共に浄化し、浄化した該切削液を前記加工機へ供給する切削液タンクを、更に具備しており、
前記空冷温調機は、前記切削液タンクに貯留されている前記切削液を温調するものである」ことを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、空冷温調機により切削液タンクに貯留されている切削液を冷却して温調された切削液を加工機に供給するようにしているため、加工機から回収される切削液の温度や加工排気の温度を低減させることができ、工場内の温度上昇を抑制させることができる。また、温調された切削液を加工機に供給しているため、加工機において確実に常温に近い温度でワークを加工させることができ、加工精度のバラツキを低減させることができる。
【0015】
本発明に係る工場内環境改善方法は、
「工場内に設けられ、加工空間がカバーにより囲まれている加工機と、
吸気口から空気を吸引して浄化させる空気浄化部、および該空気浄化部により浄化された浄化空気を冷却する空気冷却部、が一体的に設けられている空気清浄機と、
前記加工空間内と前記吸気口とを繋いでいる吸引ダクトと、
冷媒を冷却する空気を取入れるための空気取入口、および前記冷媒を冷却した空気を前記工場内に排出するための空気排出口を有している空冷温調機と
を具備し、
前記吸引ダクトを通して前記加工空間内における切削液のミストを含んだ加工排気を前記空気清浄機により浄化させた上で冷却して浄化冷却空気を生成し、該浄化冷却空気を前記空冷温調機の前記空気取入口に導入させる」
ことを特徴とする。
【0016】
本構成の工場内環境改善方法によれば、上述した工場内環境改善システムと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の効果として、空調負担を低減し省エネルギー化を促進しつつ工場内の温度上昇を抑制させて作業環境を改善させることが可能な工場内環境改善システム、および工場内環境改善方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本発明の一実施形態である工場内環境改善システムの概略構成を示す斜視図であり、(b)は(a)の工場内環境改善システムを別の方向から示す斜視図である。
図2図1の工場内環境改善システムにおける空気清浄機の構成を断面で示す説明図である。
図3図2の空気清浄機における吸気ファンの断面図である。
図4図1の工場内環境改善システムにおける空冷温調機および切削液タンクを概略で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である工場内環境改善システム、および工場内環境改善方法について、図1図4を参照して詳細に説明する。本実施形態の工場内環境改善システムは、工場内における作業環境を改善させるためのものである。なお、図1では、後述する洗浄液配管26および切削液配管52を省略して示している。
【0020】
本実施形態の工場内環境改善システムは、工場内に設けられ、加工空間11がカバー12により囲まれている加工機10と、空気を浄化・冷却することが可能な空気清浄機20と、加工機10と空気清浄機20とを繋いでいる吸引ダクト30と、加工機10へ供給する切削液Cの温度を調整するための空冷温調機40と、を備えている。
【0021】
また、工場内環境改善システムは、加工機10との間で循環する切削液Cを貯留している切削液タンク50と、空気清浄機20により浄化・冷却された浄化冷却空気を空冷温調機40などに送るための冷風ダクト60と、加工機10を制御するための制御盤70と、冷風を吐出可能なスポットクーラー80と、を備えている。
【0022】
加工機10は、フライス盤、旋盤、マシニングセンタ、のような切削加工機である。加工機10の加工空間11内は、加工対象のワークがエンドミルのような切削工具によって切削加工される空間である。この加工空間11には、吸引ダクト30の基端が接続されている。また、加工空間11内では、ワークの加工部位に切削液Cが供給されると共に、切削により発生した切粉を流すための洗浄用の切削液Cが供給される。なお、切粉は、切削液Cと一緒にチップコンベア(図示は省略)に送られ、チップコンベアに送られた切削液Cは切削液タンク50に回収される。
【0023】
空気清浄機20は、図2に示すように、空気を吸引して浄化させる空気浄化部21と、空気浄化部21により浄化された浄化空気を冷却する空気冷却部22と、を一体的に備えている。また、空気清浄機20は、空気を吸引するための吸気ファン23と、吸気ファン23を回転させるためのモータ24と、を備えている。吸気ファン23およびモータ24は、空気浄化部21に設けられている。更に、空気清浄機20は、空気冷却部22を通る冷却水配管25と、内部を洗浄するための洗浄液が流通する洗浄液配管26と、空気浄化部21の下方に設けられており洗浄液を受ける受皿部27と、受皿部27内の洗浄液を排出するためのドレイン配管28と、を備えている。
【0024】
空気浄化部21は、箱状の浄化部ケーシング21aと、浄化部ケーシング21a内を第一室21bと第二室21cとに区画している区画壁部21dと、浄化部ケーシング21aにおける第一室21bの上面において開口している吸気口21eと、浄化部ケーシング21aにおける第二室21cの上面において開口している浄化空気排出口21fと、を備えている。また、空気浄化部21は、区画壁部21dを貫通している貫通口21gと、貫通口21gを囲むように浄化部ケーシング21a内の第一室21bに設けられている第一フィルタ21hと、貫通口21gを閉鎖するように設けられている第二フィルタ21iと、を備えている。更に、空気浄化部21は、浄化部ケーシング21a内の第二室21cに設けられており吸気ファン23を収容する空間を有していると共にモータ24が取付けられているモータブラケット21jと、モータブラケット21jを貫通している貫通孔21kと、浄化部ケーシング21aの下面において開口しており洗浄液を受皿部27へ排出するための複数の排液口21lと、を備えている。
【0025】
空気浄化部21の吸気口21eには、吸引ダクト30の他端が接続されており、吸引ダクト30を通して加工機10の加工空間11内と第一室21bとが連通している。浄化空気排出口21fは、空気冷却部22における後述する浄化空気取入口22bと連通している。
【0026】
貫通口21gは、区画壁部21dの中央付近において円形に開口している。第一フィルタ21hは、網目が比較的細かい金網により有底筒状に形成されている。第二フィルタ21iは、第一フィルタ21hよりも網目が粗い金網により形成されている。モータブラケット21jは、吸気ファン23を収容する空間を区画壁部21dへ向けて浄化部ケーシング21a内に取付けられている。
【0027】
空気冷却部22は、箱状の冷却部ケーシング22aと、冷却部ケーシング22aの下面において開口している浄化空気取入口22bと、冷却部ケーシング22aの側面において開口している浄化冷却空気排出口22cと、冷却部ケーシング22a内に設けられている熱交換部22dと、を備えている。
【0028】
冷却部ケーシング22aは、浄化空気取入口22bが浄化空気排出口21fと一致するように浄化部ケーシング21aの上面に取付けられている。浄化冷却空気排出口22cは、図2において紙面奥側の側面に設けられており、冷風ダクト60における後述するダクト本体61の基端が接続されている。熱交換部22dは、その内部を冷却水配管25が通っている。
【0029】
吸気ファン23は、円環状の前板23aと、円盤状の後板23bと、前板23aと後板23bとの間に取付けられている複数のフィン23cと、それぞれのフィン23cに植設されている複数の捕捉ワイヤ23dと、を備えている。円環状の前板23aは、内径が貫通口21gの内径とほぼ同じである。複数のフィン23cは、図3に示すように、吸気ファン23の回転軸芯周りに一定の間隔で取付けられていると共に、吸気ファン23の中心側から外側へ向かって円弧状に延出している。捕捉ワイヤ23dは、フィン23cにおける円弧状の凸側の面に間隔をあけてブラシ状に植設されている。捕捉ワイヤ23dの長さは、隣接しているフィン23c同士の間隔に合わせて、吸気ファン23の中心へ接近するほど短く形成されている。吸気ファン23は、前板23aを区画壁部21dへ向けて、モータ24の回転軸に取付けられており、その回転軸芯が貫通口21gの軸芯と一致している。
【0030】
モータ24は、区画壁部21dへ向かって回転軸が突出するようにモータブラケット21jに取付けられている。
【0031】
冷却水配管25は、詳細な図示は省略するが、熱交換部22dに対してその下部から進入した上で、その内部で蛇行しながら上方へ延出した後に、熱交換部22dの上部から外方へ延出するように設けられている。
【0032】
洗浄液配管26は、図2に示すように、空気清浄機20の外部で二つに分岐しており、一方が空気浄化部21の第一室21b内に延出していると共に、他方が空気冷却部22内に延出している。第一室21b内の洗浄液配管26は、第一フィルタ21hの外周を廻るように延出しており、第一フィルタ21hへ向けて複数のノズル26aが取付けられている。また、空気冷却部22内の洗浄液配管26は、熱交換部22dの外方を横切るように延出しており、熱交換部22dへ向けて複数のノズル26aが取付けられている。洗浄液配管26の各ノズル26aから洗浄液を噴射することで、第一フィルタ21hおよび熱交換部22dを洗浄することができる。
【0033】
受皿部27は、複数の排液口21lを下方から覆うように浄化部ケーシング21aの下面に取付けられている。ドレイン配管28は、受皿部27の下部と冷却部ケーシング22aの下部とから延出した後に合流して、切削液タンク50に接続されている。なお、空気清浄機20は、切削液タンク50よりも高い位置に設けられており、排液がドレイン配管28を通して切削液タンク50へ自然流下する。
【0034】
空冷温調機40は、詳細な図示は省略するが、冷媒が循環する冷媒流路と、冷媒流路に設けられており冷媒を圧縮するコンプレッサと、コンプレッサにより圧縮された冷媒を空冷するためのコンデンサと、コンデンサにより冷却された冷媒により切削液を冷却するための熱交換器と、を備えている。また、空冷温調機40は、冷媒を冷却する空気を取入れるための空気取入口41と、空気取入口41から取入れた空気をコンデンサへ送るためのファンと、コンデンサにおいて冷媒を冷却した空気を排出するための空気排出口42と、を備えている。
【0035】
空冷温調機40は、切削液タンク50に取付けられており、切削液タンク50よりも上方の側面において空気取入口41が開口していると共に、上面に空気排出口42が開口している(図4を参照)。この空冷温調機40は、熱交換器の部位が切削液タンク50に貯留されている切削液C内に浸漬されている。
【0036】
切削液タンク50は、図4に示すように、切削液Cを貯留するタンク本体51と、加工機10との間で切削液Cを循環させるための切削液配管52と、を備えている。タンク本体51は、底部同士が連通している第一タンク51aおよび第二タンク51bと、第一タンク51aおよび第二タンク51bとは連通していない第三タンク51cと、を有している。第一タンク51aには、空気清浄機20から延出しているドレイン配管28の下流端が接続されている。第三タンク51cは、第二タンク51bを間にして第一タンク51aから遠い部位に設けられており、オーバーフローした切削液Cが第二タンク51bへ流れるように形成されている。第三タンク51cには、空冷温調機40における熱交換器の部位が挿入されている。
【0037】
切削液配管52は、加工機10から排出された切削液Cを第一タンク51aへ送るための戻配管52aと、第二タンク51b内の切削液Cを加工機10におけるワークの加工部位へ送るための第一送配管52bと、第二タンク51b内の切削液Cを切粉の洗浄用として加工機10に送るための第二送配管52cと、第二タンク51b内の切削液Cを第三タンク51cへ送るための第三送配管52dと、から構成されている。第二タンク51bから延出している各送配管は、第一タンク51aから近い順に、第二送配管52c、第一送配管52b、第三送配管52d、の順に並んでいる。
【0038】
また、切削液タンク50は、第一送配管52bを通して第二タンク51b内の切削液Cを加工機10へ送るための第一ポンプ53と、第二送配管52cを通して第二タンク51b内の切削液Cを加工機10へ送るための第二ポンプ54と、第三送配管52dを通して第二タンク51b内の切削液Cを第三タンク51cへ送るための第三ポンプ55と、を備えている。なお、第三ポンプ55は、第一ポンプ53や第二ポンプ54よりも小型のものである。
【0039】
冷風ダクト60は、図1に示すように、空気清浄機20の浄化冷却空気排出口22cと連通しているダクト本管61と、ダクト本管61から分岐している複数のダクト支管62と、各ダクト支管62に設けられており流通する空気(冷風)の流量を調整可能なダンパ63と、を備えている。ダクト本管61は、工場内において作業者に接触しない高さ(例えば、2.5m~3m)に設けられている。
【0040】
ダクト支管62は、空冷温調機40へ延出している第一支管62aと、制御盤70へ延出している第二支管62bと、スポットクーラー80へ向けて延出している第三支管62cと、先端に吹出口64を有する第四支管62dと、を有している。第一支管62aは、先端が空冷温調機40の空気取入口41を外側から覆うように広がっている。この第一支管62aを通して、空気清浄機20からの浄化冷却空気が空冷温調機40の空気取入口41に送られる。第二支管62bは、先端が制御盤70に接続されており、第二支管62bを通して浄化冷却空気が制御盤70内に送られる。第三支管62cは、先端開口がスポットクーラー80の後述する吸気口と対面しており、第三支管62cを通して浄化冷却空気がスポットクーラー80の吸気口へ送られる。第四支管62dは、先端に設けられている吹出口64から工場内へ浄化冷却空気を吹き出すことができる。
【0041】
スポットクーラー80は、冷媒が循環する冷媒回路を有した移動可能な小型の空調機である。スポットクーラー80は、冷媒回路上の熱交換器により冷却された空気を吹き出す吹出口81と、冷媒回路上のコンデンサに空気を送るための吸気口(図示は省略)と、コンデンサにより暖められた空気を排出する排気口82と、を備えている。
【0042】
次に、本実施形態の工場内環境改善システムによる工場内の環境改善について説明する。加工機10では、加工空間11内においてワークを高速で加工すると、加工部位での発熱量が増加するため、当該部位に供給された切削液Cの温度が上昇し、切粉と一緒に高い温度(例えば、40℃~50℃)の汚れた切削液Cが加工機10から排出される。また、ワークの加工速度を高速化に伴い、加工部位に供給する切削液Cの吐出圧を高くする必要があるため、吐出圧の高い切削液Cがワークや加工空間11の内壁などに強く衝突して切削液Cのミストを多く含んだ常温よりも高い温度(例えば、35℃~40℃)の加工排気が発生する。
【0043】
空気清浄機20では、モータ24を駆動して吸気ファン23を回転させると、吸気ファン23の複数のフィン23cの間の空気が遠心力により外方へ吹き飛ばされ、吸気ファン23の中心側が負圧になる。この際に、吸気ファン23の前板23aの開口が区画壁部21dを貫通している貫通口21gと対面しているため、貫通口21gを通して第一室21b内の空気が吸気ファン23へ吸い込まれる。そして、第一室21bは、吸引ダクト30を通して加工機10の加工空間11と連通しているため、加工空間11内において発生している加工排気が、吸引ダクト30を通して空気浄化部21における浄化部ケーシング21aの第一室21b内に吸引される。
【0044】
第一室21bに吸引された加工排気は、第一フィルタ21hおよび第二フィルタ21iを通って、前板23aの中心の開口から吸気ファン23内に吸い込まれる。この際に、加工排気に含まれているミストを含む微粒子の多くが第一フィルタ21hや第二フィルタ21iにより捕捉されて除去される。そして、吸気ファン23に吸い込まれた加工排気は、複数のフィン23cの間を通って、吸気ファン23の半径方向外方へ放出される。この際に、第一フィルタ21hおよび第二フィルタ21iを通過した微粒子が、複数のフィン23cに植設されている無数の捕捉ワイヤ23dに捕捉されて除去される。また、回転する吸気ファン23の遠心力により切削液Cのミストが、吸気ファン23が収容されている空間の内壁に当接して除去される。更に、フィン23c同士の間では、空気(加工排気)の流速度が速くなることで温度が低下するため、加工排気に含まれている気化した液体(切削液Cの水蒸気)が凝縮して液体となり、水蒸気が除去される。
【0045】
このように、加工排気が空気浄化部21の第一フィルタ21h、第二フィルタ21i、および吸気ファン23(無数の捕捉ワイヤ23d)を通ることで、浄化されて浄化空気が生成される。また、第一フィルタ21hおよび第二フィルタ21iに捕捉された切削液Cや、吸気ファン23が収容されている空間の内壁に当接した切削液Cは、それぞれ下方へ流下して浄化部ケーシング21aの下面の排液口21lから受皿部27に受けられ、ドレイン配管28を通って切削液タンク50の第一タンク51aへ送られる。
【0046】
吸気ファン23から放出された浄化空気は、モータブラケット21jの貫通孔21kおよび第二室21cを通り、浄化空気排出口21fから対面している浄化空気取入口22bを通って空気冷却部22の冷却部ケーシング22a内に進入して、熱交換部22dに送られる。空気冷却部22の熱交換部22dでは、内部を通っている冷却水配管25内に、17℃~23℃の20℃前後の冷却水が流通しているため、通過する空気(浄化空気)の温度を8℃~12℃低下させることができる。なお、本実施形態では、冷却水配管25内を流通する冷却水は、熱交換部22dに対して下部から入って上部から出るように流れている。また、冷却水としては、地下水、冷却塔により冷却された水、などを使用することができる。
【0047】
また、浄化空気が熱交換部22dを通る際には、浄化空気に含まれている気化した切削液Cなどの液体が、熱交換部22dにおいて結露し、切削液Cの水蒸気などの気化した液体が更に除去される。熱交換部22dにおいて結露した液体は、下方へ流下して冷却部ケーシング22aの底部からドレイン配管28を通って切削液タンク50の第一タンク51aへ送られる。
【0048】
このように、空気冷却部22では、空気浄化部21で生成された浄化空気を更に浄化した上で、冷却して浄化冷却空気を生成することができる。従って、空気清浄機20では、加工機10からの加工排気を工場内に排出させる前に吸引して、浄化・冷却することができ、加工排気による工場内の温度上昇を抑制することができる。そして、空気清浄機20において生成された浄化冷却空気は、冷却部ケーシング22aの浄化冷却空気排出口22cから冷風ダクト60のダクト本管61内に送られ、ダクト本管61からそれぞれのダクト支管62を通って空冷温調機40や制御盤70などに送られる。
【0049】
本実施形態の空気清浄機20では、一定時間ごとに洗浄液配管26を通して複数のノズル26aから洗浄液が、第一フィルタ21hおよび熱交換部22dに噴射され、第一フィルタ21hおよび熱交換部22dに付着した汚れが洗浄される。洗浄した後の排液は、浄化部ケーシング21aの下方の受皿部27や冷却部ケーシング22aの底部に流下し、ドレイン配管28を通って切削液タンク50の第一タンク51aへ送られる。なお、洗浄液としては、地下水、工業用水、第二タンク51bや第三タンク51cに貯留されているクリーンな切削液C、熱交換部22dにおいて使用された冷却水、などを使用することができる。
【0050】
また、空気清浄機20では、上述したように、加工排気に含まれる切削液Cの水蒸気も除去することができるため、以下のような利点を有している。詳述すると、加工機10として、加工対象のワークを温水(例えば、温度の高い切削液C)で洗浄するタイプの場合、常温の水(例えば、常温の切削液C)で洗浄するタイプに比較して、短時間でワークを洗浄することができる。そして、ワークの洗浄に温水を使用する場合、加工機から水蒸気が排出されて工場内に立ち込めるため、加工機にダクトを設けて水蒸気を屋外に排出させていた。そのため、ダクトの設置に大掛かりな工事が必要であると共に、工場内のレイアウトを変える場合、ダクトも設置し直す必要があり、面倒で手間がかかる問題があった。これに対して、本実施形態の空気清浄機20は、水蒸気も除去できるため、吸引ダクト30を通して加工機10から加工排気と一緒に水蒸気を吸引することで、工場内において水蒸気が立ち込めることはなく、水蒸気を屋外に排出させるためのダクトを設置する必要はない。従って、水蒸気を排出するためのダクトの設置にかかるコストを低減させることができる。なお、空気清浄機20において除去された水蒸気は、液体となってドレイン配管28を通り、切削液タンク50に回収された後に、浄化されて再び洗浄などに使用される。
【0051】
一方、加工機10から切粉と一緒に排出された温度の高い汚れた切削液Cは、図示しないチップコンベアにより切粉が除去された上で、戻配管52aを通って切削液タンク50の第一タンク51aに送られる。これにより、第一タンク51aには、高い温度の汚れた切削液Cが貯留される。また、第一タンク51aには、ドレイン配管28を通して空気清浄機20からの排液が貯留される。この第一タンク51aでは、汚れた切削液Cに含まれている比重の軽い不純物が浮上して水面付近に溜まることとなる。そして、第一タンク51aの底部では、第二タンク51bと連通しているため、その底部を通して不純物が除かれたクリーンな切削液Cが第二タンク51bへ流入する。これにより、第二タンク51bにクリーンな切削液Cが貯留される。
【0052】
第二タンク51bに貯留されたクリーンな切削液Cは、第三ポンプ55により第三タンク51cへ送られて貯留される。この第三タンク51cには空冷温調機40の熱交換器の部位が挿入されているため、第三タンク51c内の切削液Cは空冷温調機40によって常温よりも低い温度(例えば、15℃~23℃)に冷却される。そして、第三ポンプ55により切削液Cが送られてくることで第三タンク51cが満杯になると、冷却されたクリーンな切削液Cがオーバーフローして第二タンク51bへ流入し、その冷却された切削液Cにより第二タンク51b内の切削液Cの温度が低下する。従って、本実施形態では、第三ポンプ55による第三タンク51cへの切削液Cの送り量を制御することで、第二タンク51b内の切削液Cの温度を調整している。
【0053】
この第二タンク51bは、第一タンク51aと第三タンク51cとの間に設けられているため、第二タンク51bに貯留されている切削液Cの温度は、第一タンク51aに近いほど常温よりも高く、第三タンク51cに近付くほど常温よりも低い。そして、本実施形態では、第二タンク51bにおいて、第一タンク51aから近い順に第二送配管52c、第一送配管52b、第三送配管52d、を配置している。従って、第二タンク51bの中央付近に貯留されている常温に近い温度(例えば、23℃~27℃)の切削液Cは、第一送配管52bを介して第一ポンプ53により汲み上げられて、加工機10の加工部位に供給される。これにより、加工機10の加工部位において、常温に近い状態でワークを加工させることができ、加工精度のバラツキを低減させることができる。
【0054】
一方、第二タンク51bにおける第一タンク51aの近くに貯留されている常温よりも高い温度(例えば、37℃~43℃)の切削液Cは、第二送配管52cを介して第二ポンプ54により汲み上げられ、切粉を流すための洗浄液として加工機10に供給される。なお、本実施形態では、常温よりも高い温度の洗浄液を加工機10に供給しているが、当該洗浄液はワークや加工部位に対して熱影響を与えないため、ワークの加工精度が悪化することはない。従って、第二タンク51b全体の切削液Cを常温まで冷却しなくても済み、空冷温調機40にかかる負荷を軽減させることができる。
【0055】
切削液タンク50において、第三タンク51c内の切削液Cを冷却している空冷温調機40では、冷媒を空冷するための空気を取り入れる空気取入口41に、冷風ダクト60におけるダクト支管62の第一支管62aの先端の開口が対面している。これにより、冷風ダクト60を通して空気清浄機20から送られてきた浄化冷却空気は、空気取入口41から導入されてコンデンサにおいて冷媒を冷却して暖められた後に、空気排出口42から工場内に排出される。この際に、空冷温調機40のコンデンサには冷却された浄化冷却空気が通るため、コンデンサを通って空気排出口42から排出される排気温度は従来よりも低くなる。従って、空冷温調機40から工場内に排出される排気温度を従来よりも8℃~12℃低下させることができ、工場内の温度上昇を抑制させることができると共に、空冷温調機40の負荷を軽減させることができる。
【0056】
ところで、本実施形態の工場内環境改善システムでは、空気清浄機20から冷風ダクト60に供給された浄化冷却空気を、第一支管62aを通して空冷温調機40へ供給する他に、第二支管62bを通して制御盤70に供給することが可能であり、制御盤70内を冷却することができる。また、第三支管62cを通して浄化冷却空気をスポットクーラー80の吸気口へ供給することも可能であり、スポットクーラー80の負荷を軽減させることができる。更に、第四支管62dを通して先端の吹出口64から浄化冷却空気を工場内に吹き出させることができ、工場内を冷却することができる。
【0057】
なお、空冷温調機40、制御盤70、スポットクーラー80、工場内、などにおけるそれぞれの温度に応じて、それぞれのダクト支管62に設けられているダンパ63を自動または手動で操作して浄化冷却空気の流量を調整するようにしても良い。
【0058】
このように、本実施形態の工場内環境改善システムによれば、加工機10の加工空間11内における切削液Cのミストを含んだ加工排気を、吸引ダクト30を通して空気清浄機20の空気浄化部21に吸引し、空気浄化部21により加工排気に含まれる微粒子を除去して浄化した上で、空気冷却部22により冷却している。これにより、加工機10からの加工排気が工場内に排出されることはなく、加工排気の熱により工場内の温度が上昇することはない。また、加工機10からの加工排気が工場内に排出されないため、加工排気が工場内で拡散して工場内の空気が汚染されることはなく、工場内をクリーンな作業環境にすることができ、作業者の健康に対する加工排気からのミストや粉塵による影響を低減させることができる。
【0059】
そして、空気清浄機20により加工排気を浄化・冷却して生成した浄化冷却空気を、冷風ダクト60を通して空冷温調機40の空気取入口41に導入しているため、空冷温調機40内において加工排気に含まれていた微粒子が付着することはなく、空冷温調機40の負荷の増加を抑制して熱効率を高めることができる。更に、空冷温調機40の空気排出口42からは、清浄で従来よりも温度の低い排気を工場内に排出させることができ、工場内の温度上昇を抑制させることができると共に、COの排出量を削減することができる。
【0060】
また、空気清浄機20からの浄化冷却空気を、冷風ダクト60を介して制御盤70に供給しているため、制御盤70における半導体の高温異常の発生を抑制させることができ、高温異常によるチョコ停を低減させて生産効率を向上させることができる。また、制御盤70から工場内に放出される熱を、従来よりも低下させることができる。
【0061】
また、空気清浄機20からの浄化冷却空気を、冷風ダクト60を介してスポットクーラー80の吸気口へ供給しているため、スポットクーラー80の排気口82から工場内に排出される排気温度を従来よりも低下させることができ、工場内の温度上昇を抑制させることができる。
【0062】
更に、上述したように、工場内の温度上昇および空気汚染を抑制することができるため、空調設備やミストコレクタを増設する必要はなく省エネルギー化を促進することができると共に、工場内における作業環境を改善することができる。また、工場内の空気汚染を抑制することができるため、空調設備、空冷温調機40、スポットクーラー80、などに備えられているフィルタの目詰まりを低減させることができ、それらにかかる負荷やランニングコストを軽減させて省エネ効果を発揮させることができる。
【0063】
また、工場内の温度上昇を抑制することができると共に、常温に冷却した切削液Cを加工部位に供給するようにしているため、加工機10において常温に近い温度でワークを加工することができ、常温検査時における加工精度のバラツキを低減させて生産性を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0065】
例えば、上記の実施形態では、一つの加工機10からの加工排気を一つの空気清浄機20により浄化・冷却するものを示したが、これに限定するものではなく、複数の加工機10からの加工排気を一つの空気清浄機20により浄化・冷却するようにしても良いし、一つの加工機10からの加工排気を複数の空気清浄機20により浄化・冷却するようにしても良い。
【0066】
また、上記の実施形態では、冷風ダクト60を通して一つの空冷温調機40に浄化冷却空気を供給するものを示したが、複数の空冷温調機40に供給するようにしても良い。また、冷風ダクト60を通して、複数の制御盤70や複数のスポットクーラー80に、浄化冷却空気を供給するようにしても良い。また、冷風ダクト60に、複数の第四支管62dおよび吹出口64を設けて、複数個所から工場内に浄化冷却空気を吹き出させても良い。
【0067】
更に、上記の実施形態では、空気清浄機20の空気冷却部22に供給される冷却水として、地下水、冷却塔により冷却された水、を使用するものを示したが、これに限定するものではなく、切削液タンク50内の冷却されたクリーンな切削液Cを冷却水として使用しても良い。これにより、地下水を汲み上げるための設備や冷却塔などを備える必要はなく、空気清浄機20と切削液タンク50との間の配管だけで済み、本実施形態の工場内環境システムにかかるコストを低減させることができる。
【0068】
また、上記の実施形態では、切削液タンク50の切削液Cを空冷温調機40のみで冷却するものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、冷却水配管25における空気冷却部22(熱交換部22d)よりも下流側の部位を、切削液タンク50の第一タンク51aに貯留されている汚れた切削液C内を通るようにしても良い。これにより、冷却水が熱交換部22dを通ることでその温度が上昇するが、加工機10からの汚れた切削液Cの温度よりも低いため、切削液Cの温度を低下させることができ、空冷温調機40の負荷を軽減させることができる。
【0069】
更に、上記の実施形態では、切削液タンク50として、加工機10から切削液Cが戻されるタンク(第一タンク51a)と、加工機10へ切削液Cを供給するタンク(第二タンク51b)と、切削液Cを冷却するためのタンク(第三タンク51c)と、の三つのタンクを備えたものを示したが、これに限定するものではなく、加工機10から戻されると共に加工機10に切削液Cを供給するタンクと、切削液Cを冷却するためのタンクと、の二つのタンクを備えたものとしても良い。
【符号の説明】
【0070】
10 加工機
11 加工空間
12 カバー
20 空気清浄機
21 空気浄化部
21e 吸気口
22 空気冷却部
30 吸引ダクト
40 空冷温調機
41 空気取入口
42 空気排出口
50 切削液タンク
60 冷風ダクト
C 切削液
図1
図2
図3
図4