(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113358
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】捕手用胸部プロテクター
(51)【国際特許分類】
A63B 71/12 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A63B71/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015676
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 晃輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 弥
(72)【発明者】
【氏名】笹森 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】吉川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 祐樹
(57)【要約】
【課題】衝突後のボールのエネルギーを十分に減少させることができる捕手用胸部プロテクターを提供する。
【解決手段】捕手用胸部プロテクター1は、基材2と、カバー材3と、緩衝材4とを備えている。カバー材3は、基材2に取り付けられている。緩衝材4は、基材2に取り付けられ、かつ基材2とカバー材3とに挟まれている。緩衝材4は、土台4aと、複数の突起4bとを含んでいる。複数の突起4bは、土台4aから突出する。土台4aは、第1面S1と、第2面S2とを有している。第1面S1は、基材2に向かい合う。第2面S2は、第1面S1に対して基材2と反対側に配置されかつカバー材3に向かい合う。複数の突起4bの各々は、第2面S2からカバー材3に向けて突出し、かつ互いに隙間をあけて配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に取り付けられたカバー材と、
前記基材に取り付けられ、かつ前記基材と前記カバー材とに挟まれた緩衝材とを備え、
前記緩衝材は、土台と、前記土台から突出する複数の突起とを含み、
前記土台は、前記基材に向かい合う第1面と、前記第1面に対して前記基材と反対側に配置されかつ前記カバー材に向かい合う第2面とを有し、
前記複数の突起の各々は、前記第2面から前記カバー材に向けて突出し、かつ互いに隙間をあけて配置されている、捕手用胸部プロテクター。
【請求項2】
前記複数の突起の各々は、円柱状、円錐台状、楕円柱または楕円錘台状に構成されている、請求項1に記載の捕手用胸部プロテクター。
【請求項3】
前記複数の突起の各々は、複数列に配置されており、
前記複数列の各々は、扇形状に配置されており、かつ互いに間隔をあけて配置されている、請求項2に記載の捕手用胸部プロテクター。
【請求項4】
前記複数列の各々は、2列毎に互いの間隔が広くなるように配置されている、請求項3に記載の捕手用胸部プロテクター。
【請求項5】
前記緩衝材は、互いに隙間をあけて配置された複数の部材を含み、
前記複数の部材の各々は、前記複数の突起を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載の捕手用胸部プロテクター。
【請求項6】
前記緩衝材は、第1層と、前記第1層に重ねられた第2層とを含み、
前記第1層は、前記カバー材に向かい合うように配置されており、かつ前記複数の突起を有しており、
前記第2層は、前記基材に向かい合うように配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の捕手用胸部プロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕手用胸部プロテクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球またはソフトボールでは、投手が投げたワンバウンドのボールを捕手が胸部プロテクターに当ててボールを止めることがある。たとえば、特開2009-273678号公報(特許文献1)には、投手が投げたワンバウンドのボールの動きを効果的に止めることを目的とする捕手用胸部プロテクターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に記載された捕手用胸部プロテクターでは、衝突後のボールのエネルギーを十分に減少させることができない。そのため、ボールを十分に止めることができない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は衝突後のボールのエネルギーを十分に減少させることができる捕手用胸部プロテクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の捕手用胸部プロテクターは、基材と、カバー材と、緩衝材とを備えている。カバー材は、基材に取り付けられている。緩衝材は、基材に取り付けられ、かつ基材とカバー材とに挟まれている。緩衝材は、土台と、複数の突起とを含んでいる。複数の突起は、土台から突出する。土台は、第1面と、第2面とを有する。第1面は、基材に向かい合う。第2面は、第1面に対して基材と反対側に配置されかつカバー材に向かい合う。複数の突起の各々は、第2面からカバー材に向けて突出し、かつ互いに隙間をあけて配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の捕手用胸部プロテクターによれば、衝突後のボールのエネルギーを十分に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの構成を概略的に示す正面図である。
【
図2】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの構成を概略的に示す背面図である。
【
図3】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の配置を概略的に示す正面図である。
【
図6】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の変形例1の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図7】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の変形例2の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図8】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の変形例3の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図9】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の変形例4の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図10】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の変形例5の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図11】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の変形例6の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図12】実施の形態に係る捕手用胸部プロテクターの緩衝材の配置を概略的に示す断面図である。
【
図13】実施例1および比較例の測定方法を説明するための模式図である。
【
図14】衝突後のボールの回転数の計算方法を説明するための模式図である。
【
図15】実施例1および比較例の測定結果を示すグラフである。
【
図16】実施例2~6の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、特に言及しない限り、以下の図面において同一または対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0010】
図1~
図3を参照して、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の構成について説明する。
【0011】
図1および
図2に示されるように、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1は、本体部11と、隆起部12と、ベルト部13とを含んでいる。本体部11は、胸腹部11aと、肩部11bとを含んでいる。胸腹部11aは、捕手の胸腹を覆うように構成されている。肩部11bは、捕手の肩を覆うように構成されている。隆起部12は、本体部11から捕手用胸部プロテクター1の正面側に隆起するように構成されている。隆起部12は、複数の領域に分離されている。つまり、隆起部12は、複数の隆起部分12aを含んでいる。ベルト部13は、胸腹部11aの上端部および左右端部に取り付けられている。
【0012】
図1および
図3に示されるように、捕手用胸部プロテクター1は、基材2と、カバー材3と、緩衝材4とを備えている。基材2は、本体部11の基礎となる部分である。基材2は、平面視において本体部11の外形を構成している。基材2は、カバー材3よりも大きな厚みを有している。カバー材3は、基材2に取り付けられている。カバー材3は、基材2を覆うように構成されている。カバー材3は、緩衝材4を覆うように構成されている。緩衝材4は、基材2に取り付けられている。緩衝材4は、基材2とカバー材3とに挟まれている。緩衝材4は、基材2とカバー材3との間に配置されている。緩衝材4は衝撃を吸収可能に構成されている。緩衝材4は変形可能に構成されている。緩衝材4の材料は、例えばEVA(Ethylen-Vinyl Acetate)である。
【0013】
図3および
図4を参照して、緩衝材4は、土台4aと、複数の突起4bとを含んでいる。土台4aは、第1面S1と、第2面S2とを有している。第1面S1は土台4aの背面側に配置されている。第1面S1は、基材2に向かい合っている。第1面S1は、平面状に構成されている。第2面S2は土台4aの正面側に配置されている。第2面S2は、第1面S1に対して基材2と反対側に配置されている。第2面S2は、カバー材3に向かい合っている。第2面S2は、平面状に構成されている。
【0014】
土台4aには複数の貫通孔Hが設けられている。複数の貫通孔Hの各々は、第1面S1と第2面S2とを貫通している。複数の貫通孔Hの各々は、土台4aの正面側から見たときに、複数の突起4bの各々の間にそれぞれ配置されている。
【0015】
複数の突起4bは、土台4aから正面側に突出している。複数の突起4bの各々は、第2面S2からカバー材3に向けて突出する。複数の突起4bの各々は、互いに隙間をあけて配置されている。
【0016】
図3および
図5を参照して、複数の突起4bの各々は同じ形状に構成されている。複数の突起4bの各々は、土台4aの正面側から見たときに横長の六角形状に構成されている。複数の突起4bの各々は、中央の矩形部分から両端の三角形部分の頂点に向けて高さが低くなるように構成されている。複数の突起4bの各々は、上下方向(縦方向)に等間隔で並ぶように配置されている。上下方向(縦方向)において、複数の突起4bの隣り合う突起4b同士は、矩形部分の短辺の寸法で離れて配置されている。複数の突起4bの各々は、左右方向(横方向)に等間隔で並ぶように配置されている。左右方向(横方向)において、複数の突起4bの隣り合う突起4b同士は、矩形部分の長辺の寸法で離れて配置されている。
【0017】
図1および
図3を参照して、緩衝材4は、複数の部材40を含んでいる。複数の部材40は、互いに隙間をあけて配置されている。複数の部材40の各々は、複数の突起4bを有している。複数の部材40の各々は、複数の隆起部分12aの各々に配置されている。
【0018】
本実施の形態では、土台4aおよび複数の突起4bを含む緩衝材4は、胸腹部11aの腹部の隆起部12のみに配置されている。つまり、土台4aおよび複数の突起4bを含む緩衝材4は、胸腹部11aの胸部および肩部11bの隆起部12に配置されていない。なお、土台4aおよび複数の突起4bを含む緩衝材4は、胸腹部11aの胸部および肩部11bの隆起部12に配置されていてもよい。
【0019】
続いて、
図6~
図11を参照して、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の緩衝材4の変形例について説明する。
【0020】
図6に示されるように、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の緩衝材4の変形例1では、複数の突起4bの各々は、円柱状に構成されている。複数の突起4bの各々は、複数列に配置されている。複数列の隣り合う列同士では、複数の突起4bの各々は千鳥状に配置されている。つまり、複数列の隣り合う列同士では、複数の突起4bの各々は互いにずれて配置されていている。複数の突起4bの各々の直径は例えば10mmである。複数の突起4bの各々の高さは例えば10mmである。複数の突起4bの各々の中心同士の距離は例えば15mmである。
【0021】
図7に示されるように、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の緩衝材4の変形例2では、複数の突起4bの各々は、円柱状に構成されている。複数の突起4bの各々は、複数列に配置されている。複数列の各々は扇形状に配置されている。複数列の各々は互いに間隔をあけて配置されている。複数の突起4bの各々の直径は例えば10mmである。複数の突起4bの各々の高さは例えば10mmである。複数の突起4bの各々の中心同士の距離は例えば15mmである。
【0022】
図8に示されるように、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の緩衝材4の変形例3では、複数の突起4bの各々は、円錐台状に構成されている。複数の突起4bの各々は、複数列に配置されている。複数列の隣り合う列同士では、複数の突起4bの各々は千鳥状に配置されている。つまり、複数列の隣り合う列同士では、複数の突起4bの各々は互いにずれて配置されていている。複数の突起4bの各々の上面の直径は例えば5mmである。複数の突起4bの各々の底面の直径は例えば10mmである。複数の突起4bの各々の高さは例えば10mmである。複数の突起4bの各々の中心同士の距離は例えば15mmである。複数の突起4bの各々では、底面より2mmの高さの側面から底面端部より2mmの外側の位置に向かって曲面状に裾野が設けられている。
【0023】
図9に示されるように、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の緩衝材4の変形例4では、複数の突起4bの各々は、円錐台状に構成されている。複数の突起4bの各々は、複数列に配置されている。複数列の各々は扇形状に配置されている。複数列の各々は互いに間隔をあけて配置されている。複数の突起4bの各々の上面の直径は例えば5mmである。複数の突起4bの各々の底面の直径は例えば10mmである。複数の突起4bの各々の高さは例えば10mmである。複数の突起4bの各々の中心同士の距離は例えば15mmである。複数の突起4bの各々では、底面より2mmの高さの側面から底面端部より2mmの外側の位置に向かって曲面状に裾野が設けられている。
【0024】
図10に示されるように、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の緩衝材4の変形例5では、複数の突起4bの各々は、変形例4よりも大きな高さ寸法を有している。複数の突起4bの各々は、円錐台状に構成されている。複数の突起4bの各々は、複数列に配置されている。複数列の各々は扇形状に配置されている。複数列の各々は互いに間隔をあけて配置されている。複数の突起4bの各々の上面の直径は例えば5mmである。複数の突起4bの各々の底面の直径は例えば10mmである。複数の突起4bの各々の高さは例えば15mmである。複数の突起4bの各々の中心同士の距離は例えば15mmである。複数の突起4bの各々では、底面より2mmの高さの側面から底面端部より2mmの外側の位置に向かって曲面状に裾野が設けられている。
【0025】
図11に示されるように、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の緩衝材4の変形例6では、複数の突起4bの各々は、円錐台状に構成されている。複数の突起4bの各々は、複数列に配置されている。複数列の各々は扇形状に配置されている。複数列の各々は互いに間隔をあけて配置されている。複数列の各々は、2列毎に互いの間隔が広くなるように配置されている。複数の突起4bの各々の上面の直径は例えば5mmである。複数の突起4bの各々の底面の直径は例えば10mmである。複数の突起4bの各々の高さは例えば10mmである。複数の突起4bの各々の中心同士の距離は例えば15mmである。複数の突起4bの各々では、底面より2mmの高さの側面から底面端部より2mmの外側の位置に向かって曲面状に裾野が設けられている。
【0026】
また、複数の突起4bの各々は、楕円柱または楕円錘台状に構成されていてもよい。
図12を参照して、緩衝材4は、2層に構成されていてもよい。緩衝材4は、第1層41と、第1層に重ねられた第2層42とを含んでいる。第1層41は、カバー材3に向かい合うように配置されている。第1層41は、複数の突起4bを有している。第2層42は、基材2に向かい合うように配置されている。第2層42は、第1層41と同じ投影面積を有している。第2層42は、突起を有していない。第1層41は、ボールのスピンを抑制する機能を有している。第2層42は、低反発である。また、第2層42は、緩衝効果を高める部材である。
【0027】
次に、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1の作用効果について説明する。
衝突後のボールのエネルギーは次の式1に基づいて算出される。式1の符号は次の通りである。Eはエネルギー総量(J)である。Iは慣性モーメント(kg・m2)である。ωは角速度(rad/s)である。Mは質量(kg)である。vは速度(m/s)である。gは重力加速度(m/s2)である。zは高さ(m)である。
【0028】
E=(1/2)Iω2+(1/2)Mv2+Mgz (1)
ボールの角速度ωとボールの回転数Nとは次の式2で示す関係にある。
【0029】
N=ω×60/2π (2)
つまり、ボールの角速度ωとボールの回転数Nとは比例関係にある。したがって、ボールの角速度ωが減少するとボールの回転数Nが減少する。また、ボールの回転数Nが減少するとボールのエネルギーEが減少する。
【0030】
実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1によれば、複数の突起4bの各々は、第2面S2からカバー材3に向けて突出し、かつ互いに隙間をあけて配置されている。
【0031】
緩衝材4の突起4bが無い場合には、緩衝材4が見かけ上全面で接触していても実際には浮いている部分が生じるため、真実接触面積が小さくなる。なお、真実接触面積とは、見かけの接触面積のなかで本当に接触している微細な接触面積のことである。これに対して、実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1では、複数の突起4bが独立しているため、ボールの周縁部に多くの突起4bが接触することができる。
【0032】
また、突起4bのボールの回転方向に対して前側の角がボールに接触する。この部分は圧力が高いため、ボールに引っかかることにより摩擦係数が高くなる。
【0033】
したがって、ボールの角速度および回転数を減少させることができる。このため、ボールのエネルギーを十分に減少させることができる。よって、ボールを十分に止めることができる。
【0034】
実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1によれば、複数の突起4bの各々は、円柱状、円錐台状、楕円柱または楕円錘台状に構成されている。このため、複数の突起4bの各々の全周でボールと接触することが可能である。したがって、複数の突起4bの各々の全周にわたってボールのエネルギーを十分に減少させることができる。
【0035】
実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1によれば、複数列の各々は、扇形状に配置されており、かつ互いに間隔をあけて配置されている。このため、衝突後のボールを扇形の中心に向けて集めることができる。
【0036】
実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1によれば、複数列の各々は、2列毎に互いの間隔が広くなるように配置されている。このため、衝突後のボールを扇形の中心に向けて集めることができる。
【0037】
実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1によれば、複数の部材40の各々は、複数の突起4bを有している。このため、複数の部材40の各々が複数の隆起部分12aに配置されることにより、複数の隆起部分12aの各々に複数の突起4bを配置することができる。
【0038】
実施の形態に係る捕手用胸部プロテクター1によれば、緩衝材4は、第1層41と、第1層41に重ねられた第2層42とを含んでいる。このため、第1層41と第2層42に異なる材料を用いることができる。また、第1層41は、カバー材3に向かい合うように配置されており、かつ複数の突起4bを有している。このため、ボールの角速度および回転数を減少させることができる。
【実施例0039】
本発明の実施例について比較例と比較して説明する。実施例1~6は、本発明の実施例である。比較例は、本発明の実施例に対する比較例である。
【0040】
図13および
図14を参照して、比較例および実施例1の実験について説明する。
プロテクターに当たるときの条件を球速約60km/h、回転数約4000rpmに設定した。ボールをカーペットにワンバウンドさせ、ワンバウンドさせたボールを捕手用胸部プロテクターに衝突させた。衝突後のボールの回転数を計測した。衝突後のボールの回転数が捕手用胸部プロテクターがなかったときのボールの回転数(計算値)に対してどの程度軽減したかを検証した。
【0041】
衝突後のボール回転数(計算値)は、次の式3および式4に基づいて算出された。各式の符号は次の通りである。ω1は衝突前のボールの角速度である。ω2は衝突後のボールの角速度である。exは摩擦係数である。vx1はx方向の衝突前のボールの速度である。rはボールの半径である。Nは衝突後のボール回転数である。なお、x方向は水平方向であり、z方向は垂直方向である。
【0042】
ω
2=((5(1+e
x)v
x1+2(2-5e
x)rω
1))/7r (3)
N=ω
2×60/2π (4)
図15を参照して、実施例1および比較例の衝突後のボールの回転数を検証した。
図15は、衝突後のボールの回転数の減少率(spin reduction)を示している。衝突後のボールの回転数の減少率(spin reduction)は、計測値を計算値で割ったものである。衝突後のボールの回転数の減少率(spin reduction)の算出式は次の式5に基づいて算出された。
【0043】
spin reduction(%)=(1-(回転数(計測値)/回転数(計算値)))×100 (5)
実施例1は、上記の実施の形態の構造を備えている。比較例は、一般的な捕手用胸部プロテクターである。比較例では、実施例1の緩衝材の複数の突起が設けられていない。実施例1では、比較例に比べて衝突後のボールの回転数が減少した。
【0044】
図16を参照して、実施例2~6の衝突後のボールの回転数を検証した。
図16は、衝突後のボールの回転数の減少率(spin reduction)および衝突後のボールの速度の減少率(speed reduction)を示している。実施例2~6では、実施例1の捕手用胸部プロテクターの代わりに緩衝材のみを用いた。緩衝材は縦20cmおよび横20cmの正方形に構成されている。
【0045】
実施例2は上記の実施の形態の変形例1の構造を備えている。実施例3は上記の実施の形態の変形例2の構造を備えている。実施例4は実施の形態の変形例6の構造を備えている。実施例5は実施の形態の変形例5の構造を備えている。実施例6は実施の形態の変形例4の構造を備えている。実施例2~6の中で実施例2は衝突後のボールの回転数の減少率が最も大きかった。つまり、実施例2は衝突後のボールの回転数が最も減少した。実施例2~6の中で実施例5は衝突後のボールの速度の減少率が最も大きかった。つまり、実施例5は衝突後のボールの速度が最も減少した。実施例5は、衝突後のボールの回転数の減少率および衝突後のボールの速度の減少率の増加を両立することができた。
【0046】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
1 捕手用胸部プロテクター、2 基材、3 カバー材、4 緩衝材、4a 土台、4b 突起、11 本体部、12 隆起部、13 ベルト部、40 部材、S1 第1面、S2 第2面。