(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113363
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/17 20060101AFI20230808BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20230808BHJP
C07C 69/736 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08G59/17
C08F299/02
C07C69/736 CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015688
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】武田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】久永 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】横山 優香
(72)【発明者】
【氏名】安井 達哉
【テーマコード(参考)】
4H006
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006BJ50
4H006BN10
4H006BP30
4H006KC14
4J036AD08
4J036CA21
4J127AA01
4J127BA051
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD181
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF301
4J127BF30X
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG101
4J127BG10Z
4J127BG121
4J127BG12Z
4J127BG17Z
4J127CA01
4J127EA13
4J127FA01
(57)【要約】
【課題】柔軟性に優れ、硬化収縮による反りを抑制することができる硬化物を得ることができるエポキシ(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
[化1]
(一般式(1)中、Xは炭化水素に由来する炭素数が2~10である2価の連結基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素数が10~18の炭化水素基であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭化水素に由来する炭素数が2~10である2価の連結基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素数が10~18の炭化水素基であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、炭素数が12~16である請求項1に記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)中、Xに連結する2つのアリール基は、それぞれカルダノール水素添加物に由来する請求項1又は2に記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、酸素原子(O1又はO2)に対してメタ位である請求項1~3の何れか一項に記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、Xに対してパラ位である請求項1~4の何れか一項に記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項6】
前記一般式(1)中、O1及び/又はO2は、Xに対してオルト位である請求項1~5の何れか一項に記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項7】
前記一般式(1)中、Xは、炭素数が3~7である請求項1~6の何れか一項に記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のエポキシ(メタ)アクリレート化合物又はそれを含む組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノール化合物は、ポリカーボネート樹脂やアクリレート樹脂等の熱可塑性樹脂の原料、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の原料の他、硬化剤、酸化防止剤、顕色剤等、殺菌剤、防かび剤、難燃剤等の添加剤として広く使用されている有用な化合物である。
そのため、ビスフェノール化合物の製造方法について様々な研究が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、バイオマス由来化合物(例えばカルダノール等)をビスフェノール化合物の原料として用いることが開示されており、カルダノールから誘導される化合物を用いて合成した特定の構造を有するビスフェノール化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、カルダノールから誘導される化合物を原料として用いたビスフェノール化合物がポリアクリレート等の原料として用いられることは開示されているが、ポリアクリレートの構造や物性等については十分に検討がされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、柔軟性に優れ、硬化収縮による反りを抑制することができる硬化物を得ることができるエポキシ(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【0008】
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭化水素に由来する炭素数が2~10である2価の連結基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素数が10~18の炭化水素基であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。)
【0009】
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物において、上記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、炭素数が12~16であることが好ましい。
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物において、Xに連結する2つのアリール基は、それぞれカルダノール水素添加物に由来することが好ましい。
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物において、上記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、酸素原子(O1又はO2)に対してメタ位であることが好ましい。
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物において、上記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、Xに対してパラ位であることが好ましい。
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物において、上記一般式(1)中、O1及び/又はO2は、Xに対してオルト位であることが好ましい。
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物において、上記一般式(1)中、Xは、炭素数が3~7であることが好ましい。
本発明の硬化物は、上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物又はそれを含む組成物を硬化してなる硬化物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、柔軟性に優れ、硬化収縮による反りを抑制することができる硬化物を得ることができるエポキシ(メタ)アクリレート化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<エポキシ(メタ)アクリレート化合物>
本発明は、下記一般式(1)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【0012】
【化2】
(一般式(1)中、Xは炭化水素に由来する炭素数が2~10である2価の連結基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素数が10~18の炭化水素基であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。)
【0013】
なお、本明細書において、「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を反応させて得られるものであり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味するものである。
【0014】
上記一般式(1)中、Xは炭化水素に由来する炭素数が2~10である2価の連結基である。
上記炭素数が2~10である2価の連結基としては、直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、また環状構造を持っていてもよい。具体的にはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキリデン基等が挙げられる。
なかでも、対応するアルデヒドやケトンの反応性の観点から、炭素数が3~7のアルキレン基であることが好ましい。
なお、上記炭素数が2~10である2価の連結基は、連結基中に酸素原子、窒素原子等の炭素以外の分子を含んでもよい。
上記炭素数が2~10である2価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシ置換アルキル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立して、炭素数が10~18の炭化水素基である。
上記炭素数が10~18の炭化水素基としては、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。また、上記炭素数が10~18の炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。なかでも、上記炭素数が10~18のアルキル基であることが好ましく、エポキシ(メタ)アクリレート化合物の硬化物の柔軟性と反りの抑制の観点から、炭素数が11~17のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が12~16のアルキル基であることが更に好ましい。
【0016】
なかでも、Xに連結する2つのアリール基は、エポキシ(メタ)アクリレート化合物の硬化物の柔軟性と反りの抑制及び対応する原材料の入手可能性の観点から、それぞれカルダノール水素添加物に由来することが特に好ましい。
上記カルダノール水素添加物に由来する構造としては、例えば、R1及びR2の炭素数が15であり、水素数が25~31の炭化水素基であるカルダノール構造を有するもの等が挙げられるが、上記水素数が31のアルキル基であることが最も好ましい。
【0017】
上記一般式(1)中、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。
活性エネルギー線や熱による硬化性の観点から、R3及びR4は水素原子であることが好ましい。
【0018】
上記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、酸素原子(O1又はO2)に対してオルト位、メタ位又はパラ位の何れであってもよいが、対応する原材料の入手可能性の観点から、メタ位であることが好ましい。
R1は、O1に対してメタ位であり、R2は、O2に対してメタ位であることがより好ましい。
【0019】
上記一般式(1)中、R1及び/又はR2は、Xに対してオルト位、メタ位又はパラ位の何れであってもよいが、対応するアルデヒドやケトンとフェノール化合物との反応選択性を利用する観点から、パラ位であることが好ましい。
R1及びR2は、Xに対してパラ位であることがより好ましい。
【0020】
上記一般式(1)中、O1及び/又はO2は、Xに対してオルト位、メタ位又はパラ位の何れであってもよいが、対応するアルデヒドやケトンとフェノール化合物との反応選択性を利用する観点から、オルト位であることが好ましい。
O1及びO2は、Xに対してオルト位であることがより好ましい。
【0021】
<エポキシ(メタ)アクリレート化合物の製造方法>
本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、例えば、下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸とを反応させる方法等により製造することができる。
【0022】
【化3】
(一般式(2)中、Xは炭化水素に由来する炭素数が2~10である2価の連結基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素数が10~18の炭化水素基である。)
【0023】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応では、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物1モルに対して、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が1.0~3.0モルであることが好ましく、1.5~2.5モルであることより好ましい。
【0024】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応では、触媒を用いることが好ましい。
上記触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物、テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物等が挙げられる。
なかでも、反応系への溶解性が高いことと、それによる触媒活性の観点から、トリフェニルホスフィンが好ましい。
これらは単独であっても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記触媒は、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物1モルに対して、0.001~0.1モルであることが好ましく、0.005~0.05モルであることより好ましい。
【0026】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応では、重合禁止剤を用いることが好ましい。
上記重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、カテコール、tert-ブチルカテコール、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール系化合物や、ハイドロキノン、アルキル置換ハイドロキノン等のキノン系化合物、フェノチアジン、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン系化合物、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、マレイン酸オクチル等のカルボン酸アルキルエステル系化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0027】
上記重合禁止剤は、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物1モルに対して、0.001~0.1モルであることが好ましく、0.005~0.05モルであることより好ましい。
【0028】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応では、溶媒を用いてもよい。
上記溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、MIBK、MEK等のケトン系溶媒、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0029】
上記溶媒を用いる場合、その使用量は、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物100質量部に対して、例えば、1000質量部程度であることが好ましい。
【0030】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応では、反応温度が80~140℃であることが好ましい。
また、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応では、反応時間が1~24時間であることが好ましい。
【0031】
上記一般式(1)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が合成されたことは、赤外吸収スペクトルや、ゲルろ過クロマトグラフィーにより確認することができる。
【0032】
上記赤外吸収スペクトルにより確認する方法としては、例えば、Thremo Fisher Scientific社製「Nicolet iN10MX」を用いて、ATR法により、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物とアクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応生成物の赤外吸収スペクトルを測定し、910cm-1付近のエポキシ基に由来するピークの消失、810cm-1付近のアクリル基に由来するピークの生起、3200~3600cm-1の水酸基に由来するピークの生起を確認すればよい。
【0033】
上記ゲルろ過クロマトグラフィーにより確認する方法としては、例えば、Waters社製「alliance」及びカラム(東ソー株式会社製「TSKgel SuperHZ3000」、「TSKgel SuperHZ4000」)を用いて、テトラヒドロフランを展開溶媒として流量0.5 mL/分、40℃にてゲルろ過クロマトグラフィーを行い、RI検出器(Waters社製「2414 Refractive Index Detector」)によって、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物に対応するピークの消失と、上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物に対応するピークの生起を確認すればよい。
【0034】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応に用いる装置としては特に限定されず、公知の反応装置を用いることができる。
【0035】
<エポキシ化合物の製造方法>
続いて、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物を合成する方法について説明する。
【0036】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物を合成するには、例えば、下記一般式(3)で表される化合物を準備する。
【0037】
【化4】
(一般式(3)中、R
aは、上記一般式(2)中のR
1又はR
2と同じ置換基である。)
【0038】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物としては、例えば、カルダノールから誘導されるアルキル置換モノフェノールを水素添加したものが好ましい。
上記カルダノールは、カシューナッツ殻液由来の成分であり、廃棄物として扱われていたカシューナッツ殻を有効利用することができる。
【0039】
次いで、上記一般式(3)の二量体である下記一般式(4)で表される化合物を作製する。
【0040】
【化5】
(一般式(4)中、R
aは、上記一般式(2)中のR
1又はR
2と同じ置換基であり、X
aは、上記一般式(2)中のXと同じ置換基である。)
【0041】
上記一般式(4)で表される化合物は、例えば、上記一般式(3)で表される化合物を触媒の存在下でアルデヒドにより架橋反応させることにより得ることができる。
【0042】
上記アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-トルアルデヒド、クミンアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アルデヒド化合物は、炭素数が2~10であれば直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、また環状構造を持っていてもよい。
【0043】
上記アルデヒドの使用量は、上記一般式(3)で表される化合物1モルに対して0.3~0.7モルが好ましく、また0.4~0.6モルが更に好ましい。
【0044】
上記触媒としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸触媒、塩酸、硫酸等の無機酸触媒、リンタングステン酸のほかに、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等のヘテロポリ酸が好ましく挙げられる。
上記触媒は単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。
【0045】
上記触媒の使用量は、上記一般式(3)で表される化合物1モルに対して0.001~1モルであることが好ましく、0.01~0.05モルであることがより好ましい。
【0046】
上記一般式(4)で表される化合物を得る反応では、必要に応じて溶剤を使用することができる。
上記溶剤としては、上記一般式(3)との反応性を有するものでなければ特に制限されないが、上記一般式(3)で表される化合物を容易に溶解させる点ではアルコール類、非プロトン性極性溶媒、芳香族炭化水素類を溶剤として用いるのが好ましい。
【0047】
上記溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が好ましく挙げられるが、これらに限定されない。
上記溶剤は単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。
【0048】
上記溶剤を使用する場合の使用量は特に制限されないが、例えば、上記一般式(3)で表される化合物100質量部に対し10~500質量部を使用することができる。
【0049】
上記一般式(4)で表される化合物を得る反応の反応温度は、10~150℃であることが好ましく、30~130℃であることがより好ましく、50~120℃であることが更に好ましい。
【0050】
上記一般式(4)で表される化合物を得る反応の反応時間は、0.5~20時間であることが好ましいが、上記一般式(4)で表される化合物を得る反応に用いる化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。
【0051】
上記一般式(4)で表される化合物を得る反応終了後、公知の手法にて触媒のクエンチを行う。上記酸性触媒を用いた場合、塩基性化合物で中和してもよいし、水で洗浄してもよい。
上記塩基性化合物としては特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、トリポリリン酸5ナトリウム等のリン酸塩、イオン交換樹脂、アルミナ等の塩基性固体、アンモニア等が好ましく挙げられる。
この際、上記塩基性化合物を均一に分散させるために、水溶液として徐々に滴下することが好ましい。
【0052】
上記一般式(4)で表される化合物を得る反応のクエンチ終了後、上記一般式(4)で表される化合物を取り出す場合には、水層からヘキサン等の溶剤を用いて抽出を行う。合わせた有機層を硫酸ナトリウムにより脱水し、硫酸ナトリウムをろ過で取り除いた。続いて溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、一般式(4)で表される化合物が得られる。
【0053】
その後、上記一般式(4)で表される化合物を溶剤中において、エピハロヒドリンと反応させ、エポキシ化することにより、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物が得られる。
【0054】
上記エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。
なかでも、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。
【0055】
上記エピハロヒドリンの使用量は、上記一般式(4)で表される化合物の水酸基1モルに対し2~100モルであり、経済性を考慮すると2~50モルであることが好ましい。
【0056】
上記エポキシ化反応は、塩基性触媒の存在下でエピハロヒドリンを付加させる反応と、次いで生成した1,2-ハロヒドリンエーテル基をアルカリ金属酸化物の存在下で閉環させてエポキシ化する反応からなる。
【0057】
上記塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物や、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩が挙げられる。
上記アルカリ金属酸化物又はアンモニウム塩は、固形物をそのまま使用しても、あるいはその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、該アルカリ金属水酸化物又はアンモニウム塩の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下または常圧下で連続的に留出させた水及びエピハロヒドリンの混合液から分液により水を除去し、エピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0058】
上記塩基性触媒の使用量は、上記一般式(4)で表される化合物の水酸基1モルに対して0.05~3.0モルであることが好ましく、0.1~2.0モルであることがより好ましく、0.15~1.0モルであることが更に好ましく、0.2~0.5モルであることが特に好ましい。
【0059】
上記エピハロヒドリン付加反応の反応温度としては、40~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。
【0060】
上記エピハロヒドリン付加反応の反応温度としては、0.5~10時間であることが好ましく、1~8時間であることがより好ましい。
【0061】
上記アルカリ金属酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
上記アルカリ金属酸化物は、固形物をそのまま使用しても、あるいはその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下または常圧下で連続的に留出させた水及びエピハロヒドリンの混合液から分液により水を除去し、エピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0062】
上記アルカリ金属酸化物の使用量は、上記一般式(4)で表される化合物の水酸基1モルに対して0.5~15.0モルであることが好ましく、1.0~10.0モルであることがより好ましく、3.0~8.0モルであることが更に好ましく、4.0~6.0モルであることが特に好ましい。
【0063】
上記エポキシ化反応の反応温度としては、-30~30℃であることが好ましく、-20~10℃であることがより好ましい。
【0064】
上記エポキシ化反応の反応時間としては、0.5~20時間であることが好ましく、1~10時間であることがより好ましい。
【0065】
上記エポキシ化反応終了後、公知の手法にて触媒のクエンチを行う。上記塩基性触媒を用いた場合、酸性化合物で中和してもよいし、水で洗浄してもよい。
上記酸性化合物としては特に限定されないが、塩酸が好ましく挙げられる。
【0066】
上記エポキシ化反応のクエンチ終了後、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物を取り出す場合には、水層から酢酸エチル等の溶剤を用いて抽出を行う。合わせた有機層を硫酸ナトリウムにより脱水し、硫酸ナトリウムをろ過で取り除いた。続いて溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得ることができる。
上記粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物が得られる。
【0067】
上記エポキシ化反応終了後、生成した塩を濾過、水洗等により除去し、更に加熱減圧下で溶剤を留去することにより上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物を得てもよい。
【0068】
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物又はそれを含む組成物を硬化してなる硬化物である。
本発明の硬化物は、従来公知の方法を用いて上記本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物又は本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物を含む組成物を硬化することにより得ることができる。
例えば、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物、及び、必要により光重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤を、必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して樹脂組成物を得て、その樹脂組成物をポッティング、溶融後(液状の場合は溶融無しに)注型あるいはトランスファー成型機等を用いて成型し、さらに80~200℃で2~10時間加熱する方法や、活性エネルギー線を照射する方法等により本発明の硬化物を得ることができる。
また、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物に加えて、他の(メタ)アクリレート化合物又はアクリル樹脂を混合した樹脂組成物を用いて硬化物を得てもよい。
【0069】
上記光重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、トリアジン系化合物、芳香族ケトン系化合物、芳香族オニウム塩系化合物、有機過酸化物、チオキサントン系化合物、チオフェニル系化合物、アントラセン系化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、ケトオキシムエステル系化合物、ボレート系化合物、アジニウム系化合物、メタロセン系化合物、活性エステル系化合物、ハロゲン化炭化水素系化合物、アルキルアミン系化合物、ヨードニウム塩系化合物及びスルフォニウム塩系化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
上記光重合開始剤の含有量は、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましい。
【0070】
上記硬化剤は、エポキシ(メタ)アクリレート化合物と硬化反応を生じることができる化合物であれば、特に制限されない。硬化剤の具体例としては、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記硬化剤の含有量は、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましい。
【0071】
上記樹脂組成物は、必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶剤に溶解させて、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ-ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成型することにより、本発明の硬化物とすることもできる。
この際の溶剤は、上記樹脂組成物と上記溶剤の混合物中で10~70質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましい。
また、上記樹脂組成物は、液状組成物としてもよく、例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有する硬化物を得ることもできる。
【0072】
上記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0073】
上記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、10~5,000mJ/cm2であることが好ましく、50~1,000mJ/cm2であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止または抑制ができることから好ましい。
【0074】
本発明の硬化物は、切断時間が10sec以上であることが好ましく、15sec以上がより好ましく、20sec以上であることが更に好ましい。
【0075】
本発明の硬化物は、切断時の力が5N以下であることが好ましく、3N以下がより好ましく、2N以下であることが更に好ましく、1N以下であることが特に好ましい。
【0076】
本発明の硬化物は、切断時引張強さが10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下がより好ましく、3MPa以下であることが更に好ましく、2MPa以下であることが特に好ましい。
【0077】
本発明の硬化物は、切断時伸びが5%以上であることが好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。
【0078】
なお、切断時間、切断時の力、切断時引張強さ、及び、切断時伸びの測定は、試験片の作製と引張試験の片方又は両方において、JIS K-6251:2017に準じて行うことができる。試験片の作製としては、例えば、上記JIS規格に準拠したダンベル試験片7号形を作製し、引張試験としては、例えば、株式会社レスカ製Bonding Tester PTR1102等を用いて、標準温度下(27±2℃)、引張速度1mm/secの条件で行うことができる。
【0079】
本発明の硬化物は、縦125mm×横135mmのフィルム上に塗布・硬化した膜厚200μmの硬化物を平坦な机の上に置いた際の4辺の浮いた高さを測定した平均値が、1mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。
上記試験片は、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物を1質量部、光重合開始剤を0.1質量部混合し、真空脱気後、ポリプロピレンフィルム(縦125mm×横135mm)上に膜厚200μmで塗布し、水銀ランプを用い、ランプ強度120W、コンベア速度40m/分の条件で硬化物を作製したものである。
【0080】
本発明の硬化物は、JIS K 5600-5-4:1999に基づいて測定した鉛筆硬度が6B以下であることが好ましく、4B以下であることがより好ましく、2B以下であることが更に好ましい。
上記鉛筆硬度は、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物を1質量部、光重合開始剤を0.1質量部混合し、真空脱気後、スライドガラス(縦125mm×横135mm)上に膜厚200μmで塗布し、水銀ランプを用い、ランプ強度120W、コンベア速度40m/分の条件で作製した硬化物について測定した鉛筆硬度である。
【0081】
本発明の硬化物は、上記範囲の切断時間、切断時の力、切断時引張強さ及び切断時伸び、並びに、反りの抑制性及び鉛筆硬度を有するので柔軟性に優れ、硬化収縮による反りを抑制することができる。
【実施例0082】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。
【0083】
(実施例1)
<一般式(2)で表されるエポキシ化合物の合成>
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながらカルダノール水素添加物100質量部を量りとり、p-トルエンスルホン酸1.6質量部、プロピオンアルデヒド6質量部を加えた。その後、反応溶液を100℃に加熱し、還流しながら3時間攪拌を行った。反応温度を室温に戻し、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。水層をヘキサンで3回抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムにより脱水した。硫酸ナトリウムをろ過にて取り除いた後、溶媒をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、上記一般式(4)においてRaが直鎖のC15H31であり、Xaが直鎖のC3H6で表されるビスフェノール型化合物35質量部を得た。得られたビスフェノール型化合物の1H-NMRスペクトルを測定した。
1H NMR(製品名「ECX300」、日本電子社製、300MHz,CDCl3):δ=7.17(d,2H),6.71(d,2H),6.58(s,2H),4.24(t,1H), 2.44(t,4H),2.13(quin,2H),1.50(quin,4H),1.25(m,48H),0.87(t+t,6H+3H)
【0084】
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら上記ビスフェノール型化合物100質量部を量り取り、エピクロロヒドリン560質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド13質量部、水3質量部を加えた。反応溶液を80℃にまで昇温し、還流しながら4時間攪拌を行った。続いて反応溶液を10℃にまで冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液125質量部を少量ずつ添加した後、10℃で10時間反応を行った。反応温度を室温に戻し、塩酸で中和した。水層を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムにより脱水した。硫酸ナトリウムをろ過にて取り除いた後、溶媒をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、上記一般式(2)においてXが直鎖のC3H6、R1及びR2が直鎖のC15H31で表されるエポキシ化合物85質量部を得た。得られたエポキシ化合物の1H-NMRスペクトルを測定した。
1H NMR(製品名「ECX300」、日本電子社製、300MHz,CDCl3):δ=7.05(d,2H),6.71(d,2h),6.60(s,2H),4.60(t,1H),3.88-4.12(m,4H),3.26(quin,2H),2.85-2.63(m,4H),2.57(t,4H),1.95(quin,2H),1.50(quin,4H),1.25(m,48H),0.90(t+t,6H+3H)
【0085】
<一般式(1)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物の合成>
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコを窒素置換した後、上記エポキシ化合物1質量部を量りとり、アクリル酸0.18質量部、トリフェニルホスフィン0.004質量部、ハイドロキノン0.002質量部を加えた。次いで、反応溶液を120℃に加熱し4時間攪拌を行った。
その後、室温まで冷却し、上記一般式(1)においてR1及びR2が直鎖のC15H31であり、Xが直鎖のC3H6であり、R3及びR4が水素原子であるエポキシ(メタ)アクリレート化合物を得た。
上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物が得られたことは、赤外吸収スペクトル及びゲルろ過クロマトグラフィーにより確認した。
得られたエポキシ(メタ)アクリレート化合物を後述する硬化物の物性を測定する試料として用いた。
【0086】
赤外吸収スペクトルでは、Thremo Fisher Scientific社製「Nicolet iN10MX」を用いて、ATR法により、上記エポキシ化合物と、上記反応生成物の赤外吸収スペクトルを測定し、910cm-1のエポキシ基に由来するピークの消失、810cm-1のアクリル基に由来するピークの生起、3200~3600cm-1の水酸基に由来するピークの生起を確認した。
【0087】
ゲルろ過クロマトグラフィーでは、Waters社製「alliance」及びカラム(東ソー株式会社製「TSKgel SuperHZ3000」、「TSKgel SuperHZ4000」)を用いて、テトラヒドロフランを展開溶媒として流量0.5mL/分、40℃にてゲルろ過クロマトグラフィーを行い、RI検出器(Waters社製「2414 Refractive Index Detector」)によって、上記エポキシ化合物に対応する保持時間12.09分付近のピークの消失と、上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物に対応する保持時間11.87分付近のピークの生起を確認した。
【0088】
(実施例2)
一般式(2)で表されるエポキシ化合物の合成において、プロピオンアルデヒドに代えて、ヘキシルアルデヒドを用い、上記一般式(2)中、Xが直鎖のC6H12で表されるエポキシ化合物を合成したこと以外は実施例1と同様にして、上記一般式(1)においてR1及びR2が直鎖のC15H31であり、Xが直鎖のC6H12であり、R3及びR4が水素原子であるエポキシ(メタ)アクリレート化合物を得た。
【0089】
(比較例1)
比較用の試料として、ビスフェノールA型のエポキシアクリレート(商品名「Qualicure GM62R4E」、ビスフェノールAのEO4モル付加体のジアクリレート、Qualipoly Chemical社製)を準備した。
【0090】
(比較例2)
比較用の試料として、ビスフェノールF型のエポキシアクリレート(商品名「BFEA-100」、ビスフェノールFのジアクリレート、ケーエスエム社製)を準備した。
【0091】
<硬化物の物性>
(引張試験)
実施例1及び比較例1~2で得られた試料を1質量部、光重合開始剤としてヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Runtec社製「ランテキュア1104」)を0.1質量部混合し、真空脱気後、ポリプロピレンフィルム(積水成型工業社製「ポリセームPC-8162」、縦125mm×横135mm)上に膜厚200μmで塗布した。
その後、アイグラフィックス社製「UBX041-3LX1」及び水銀ランプを用い、ランプ強度120W、コンベア速度40m/分の条件で硬化物を作製した。
得られた硬化物からJIS K-6251:2017に準じてダンベル試験片7号形を作製した。
その後、株式会社レスカ製「Bonding Tester PTR1102」を用い、標準温度下(27±2℃)、引張速度1mm/secの条件で引張試験を実施した。
【0092】
(硬化収縮)
実施例1及び比較例1~2で得られた試料を1質量部、上記光重合開始剤を0.1質量部混合し、真空脱気後、上記ポリプロピレンフィルム(縦125mm×横135mm)上に膜厚200μmで塗布し、水銀ランプを用い、ランプ強度120W、コンベア速度40m/分の条件で硬化物を作製した。
作製した硬化物(縦125mm×横135mm、膜厚200μm)を平坦な机の上に置き、4辺の浮いた高さを測定して平均値を算出し、以下の基準で評価した。
-評価基準-
○:硬化収縮による硬化物の反りによって浮いた高さの平均値が1mm以下であった。
△:硬化収縮による硬化物の反りによって浮いた高さの平均値が1mmを超えて2mm以下であった。
×:硬化収縮による硬化物の反りによって浮いた高さの平均値が2mmを超えた。
【0093】
(鉛筆硬度)
実施例1及び比較例1~2で得られた試料を1質量部、上記光重合開始剤を0.1質量部を混合し、真空脱気後、スライドガラス(縦125mm×横135mm)上に膜厚200μmで塗布し、水銀ランプを用い、ランプ強度120W、コンベア速度40m/分の条件で硬化物を作製した。
作製した硬化物について、JIS K 5600-5-4:1999に基づいて鉛筆硬度を測定した。
【0094】
【0095】
実施例1の結果から、本発明のエポキシ(メタ)アクリレート化合物の硬化物は、柔軟性に優れ、硬化収縮による反りを抑制することができることが確認された。