(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113379
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20230808BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015715
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大熊 健允
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE08
5E087GG15
5E087JJ09
5E087LL12
5E087QQ01
5E087RR04
(57)【要約】
【課題】小型化を図る。
【解決手段】コネクタは、端子収容室15を有するハウジング10と、ハウジング10の後方から端子収容室15に挿入される端子金具30と、端子収容室15を構成する周壁部11に形成され、端子金具30を抜止めするランス16と、ランス16が端子金具30から離隔する方向へ弾性変形するときに、ランス16の撓み量を一定範囲に抑える過度撓み規制部27と、を備え、ランス16は、周壁部11の内周面11Bと外周面11Aとに露出した状態で配置され、過度撓み規制部27は、周壁部11の厚さの範囲内に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングの後方から前記端子収容室に挿入される端子金具と、
前記端子収容室を構成する周壁部に形成され、前記端子金具を抜止めするランスと、
前記ランスが前記端子金具から離隔する方向へ弾性変形するときに、前記ランスの撓み量を一定範囲に抑える過度撓み規制部と、を備え、
前記ランスは、前記周壁部の内周面と外周面とに露出した状態で配置され、
前記過度撓み規制部は、前記周壁部の厚さの範囲内に配置されているコネクタ。
【請求項2】
前記ランスは、幅狭部と、前記幅狭部よりも幅寸法の大きい幅広部とを、前記ランスの撓み方向に連ねた形状をなし、
前記幅広部のうち前記幅狭部から幅方向へ突出した部位が、前記過度撓み規制部に突き当たることによって前記ランスの過度の撓みを規制する当接部としての機能を有している請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記幅広部が、前記端子金具に対して抜止め状態に係止する係止突起としての機能を有している請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ランスは、前記端子金具から離隔する方向へ弾性変形するときに、前記ランスの後端を支点として姿勢を傾けるようになっており、
前記ランスが弾性変形してない自由状態において、前記当接部の前端における前記過度撓み規制部との間隔が、前記当接部の後端における前記過度撓み規制部との間隔よりも大きく設定されている請求項2又は請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ランスを前方から見た正面視において、前記周壁部が円筒形をなし、
前記幅広部が、正面視において、円弧形をなし、
前記幅狭部には、直線状の治具当て部が形成されている請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記周壁部の外周面のうち前記ランスの後端から後方へ離隔した位置に、シールリングが配置されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シールリングを装着したハウジングと、ハウジングのキャビティに挿入される端子金具を備えたコネクタが開示されている。キャビティを構成する周壁部には、弾性変形可能なランスが形成されている。キャビティに挿入された端子金具は、ランスの係止作用によって抜止される。端子金具をキャビティから抜き取る際には、治具を用いてランスを撓ませ、端子金具に対するランスの係止を解除する。ハウジングには、ランスに対して、ランスの撓み許容空間を空けて対向する支持板が形成されている。治具を用いてランスを撓ませたときに、ランスが支持板に当たることによって、ランスの過度の撓みが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタは、ランスの過度撓みを規制するための支持板が、撓み許容空間を空けてランスと対向し、周壁部を覆うように配置されている。そのため、コネクタの全体が大型化するという問題がある。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
端子収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングの後方から前記端子収容室に挿入される端子金具と、
前記端子収容室を構成する周壁部に形成され、前記端子金具を抜止めするランスと、
前記ランスが前記端子金具から離隔する方向へ弾性変形するときに、前記ランスの撓み量を一定範囲に抑える過度撓み規制部と、を備え、
前記ランスは、前記周壁部の内周面と外周面とに露出した状態で配置され、
前記過度撓み規制部は、前記周壁部の厚さの範囲内に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1のコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、ハウジングを水平に切断した状態をあらわす斜視図である。
【
図4】
図4は、ハウジングの部分拡大正面図である。
【
図5】
図5は、ランスが過度撓み規制部に当接した状態をあらわす部分拡大正面図である。
【
図9】
図9は、ランスが過度撓み規制部に当接した状態をあらわす
図3のY-Y線相当部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)端子収容室を有するハウジングと、前記ハウジングの後方から前記端子収容室に挿入される端子金具と、前記端子収容室を構成する周壁部に形成され、前記端子金具を抜止めするランスと、前記ランスが前記端子金具から離隔する方向へ弾性変形するときに、前記ランスの撓み量を一定範囲に抑える過度撓み規制部と、を備え、前記ランスは、前記周壁部の内周面と外周面とに露出した状態で配置され、前記過度撓み規制部は、前記周壁部の厚さの範囲内に配置されている。本開示によれば、過度撓み規制部が周壁部の厚さの範囲内に配置されているので、過度撓み規制部が周壁部を覆うように配置されているものに比べると、小型化を図ることができる。
【0010】
(2)前記ランスは、幅狭部と、前記幅狭部よりも幅寸法の大きい幅広部とを、前記ランスの撓み方向に連ねた形状をなし、前記幅広部のうち前記幅狭部から幅方向へ突出した部位が、前記過度撓み規制部に突き当たることによって前記ランスの過度の撓みを規制する当接部としての機能を有していることが好ましい。この構成によれば、ランスのうち幅広部と幅狭部が並ぶ領域は、厚さ寸法が大きく剛性が高いので、幅広部だけで構成される薄肉のランスに比べると、端子金具を抜止する機能の信頼性に優れている。
【0011】
(3)(2)において、前記幅広部が、前記端子金具に対して抜止め状態に係止する係止突起としての機能を有していることが好ましい。この構成によれば、係止突起と当接部とを異なる部位として形成する場合に比べると、ランスの形状を簡素化することができる。
【0012】
(4)(2)又は(3)において、前記ランスは、前記端子金具から離隔する方向へ弾性変形するときに、前記ランスの後端を支点として姿勢を傾けるようになっており、前記ランスが弾性変形してない自由状態において、前記当接部の前端における前記過度撓み規制部との間隔が、前記当接部の後端における前記過度撓み規制部との間隔よりも大きく設定されていることが好ましい。この構成によれば、ランスの端子金具から離隔する方向への弾性変形量を大きく確保できるので、端子金具に対するランスの係止代を大きくして、ランスによる保持力を高めることができる。
【0013】
(5)(2)~(4)において、前記ランスを前方から見た正面視において、前記周壁部が円筒形をなし、前記幅広部が、正面視において円弧形をなし、前記幅狭部には、直線状の治具当て部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、治具当て部に治具を引っ掛けたときに、治具の向きや位置が安定するので、ランスを弾性変形させる操作を行い易い。
【0014】
(6)前記周壁部の外周面のうち前記ランスの後端から後方へ離隔した位置に、シールリングが配置されていることが好ましい。この構成によれば、シールリングが、周壁部よりも外周側に形成されている壁部の外周面に配置されているものに比べると、小型化を図ることができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のコネクタを、
図1~
図9を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、
図1,2,7~9におけるX軸の正方向を前方と定義する。上下の方向については、
図1,2,7~9におけるZ軸の正方向を上方と定義する。
【0016】
本実施例1のコネクタは、高速通信に用いられ、シールド機能と防水機能とを有している。コネクタは、ハウジング10と、端子金具30と、シールリング33とを組み付けて構成されている。
【0017】
端子金具30は、内導体(図示省略)と、内導体を包囲する誘電体(図示省略)と、誘電体を包囲する外導体(図示省略)とを備えたシールド端子として機能するものである。外導体は、全体として円筒形をなす。コネクタを前方から見た正面視において、端子金具30の外形形状、即ち外導体の外周形状は、円形である。外導体の外周面には、係止孔31が形成されている。端子金具30の後端部は、同軸ケーブル32の前端部に接続されている。
【0018】
ハウジング10は、合成樹脂製の単一部品である。
図2,3,7に示すように、ハウジング10は、円筒形の周壁部11と、周壁部11を包囲する筒形嵌合部12と、支持部13とを有する。周壁部11の外周面11Aにおける後端に近い部位と、筒形嵌合部12の内周面における後端に近い部位は、支持部13を介して繋がっている。
【0019】
周壁部11の外周面11Aの正面視形状は円形である。周壁部11の外周面11Aのうち、支持部13より前方で、且つ支持部13に隣接する領域は、シール面14としての機能を有する。シール面14には、シールリング33が装着されている。周壁部11と筒形嵌合部12との間の筒状空間には、相手側コネクタ(図示省略)のフード部(図示省略)が嵌合されるようになっている。フード部が嵌合された状態では、シールリング33がシール面14とフード部の内周面とに密着することによって、ハウジング10と相手側コネクタとの間が液密状にシールされる。
【0020】
周壁部11の内部空間は、端子金具30を収容するための端子収容室15として機能する。端子金具30は、ハウジング10の後方から端子収容室15内に挿入される。周壁部11には、端子収容室15に挿入された端子金具30を抜止めするためのランス16が形成されている。ランス16は、周壁部11の一部を構成する部位であり、シール面14よりも前方の領域のみに配置されている。周壁部11のうちランス16よりも前方の領域は、ランス16を金型成形する際に生じた型抜き空間17として切り欠かれている。型抜き空間17には、ランス16を端子金具30から外すための治具Jが、ハウジング10の前方から差し込まれるようになっている。
【0021】
ランス16は、前方へ片持ち状に延出した形状をなす。ランス16は、ランス16の後端部を支点として径方向外側へ弾性変形し得るようになっている。ランス16を周方向に見た周方向視において、ランス16が径方向外方へ弾性変形するときに、ランス16の姿勢は、ランス16の前端部が端子収容室15から遠ざかるような斜め姿勢となる。
【0022】
ランス16の正面視形状は、ランス16の幅方向(周壁部11と同心の周方向)を通る仮想対称軸(図示省略)に関して対称な形状である。ランス16は、幅狭部18と幅広部19とを有している。幅狭部18は、前後方向に細長い形状をなし、ランス16の全長に亘って形成されている。幅狭部18の後端は周壁部11に繋がっている。幅狭部18のうち端子収容室15とは反対側の外面は、周壁部11の外周面11Aにおいて露出している。
【0023】
幅狭部18の前端面には、ランス16を周方向に見た周方向視において、段差状をなす治具当て部20が形成されている。治具当て部20は、幅狭部18の前端面のうち、径方向外側の位置から前方へ突出した形状である。治具当て部20の外面は、幅狭部18の外面(ランス16の外面)に対して面一状に連なっている。治具当て部20の内面は、治具当て面21として機能する。正面視において、治具当て部20の幅方向中央を通る径方向の仮想線(図示省略)を設定したときに、治具当て面21は、この仮想線に対して直角な平面からなる。
【0024】
幅広部19の前後方向の形成範囲は、ランス16の全長のうち前端部(治具当て部20)のみを除いた領域である。幅広部19の後端は周壁部11に連なっている。幅広部19の幅寸法(周方向の寸法)は、幅狭部18の幅寸法(周方向の寸法)よりも大きく設定されている。幅狭部18の全体と、幅広部19のうち幅方向中央部は、径方向に連なっている。幅広部19は、幅狭部18よりも径方向内側に位置する。
【0025】
幅広部19の前端部には、1つの係止突起22と一対の当接部23とが形成されている。係止突起22は、幅広部19の内面から径方向内側、即ち端子収容室15の内部へ突出している。係止突起22は、幅広部19の幅方向全領域に亘って形成されている。係止突起22の内面の正面視形状は、周壁部11と外周面11Aと同心で且つ周壁部11の外周面11Aよりも曲率半径の小さい円弧形をなす。幅広部19の内面(端子収容室15に臨む面)のうち、係止突起22よりも後方の領域は、周壁部11の内周面11Bに露出して端子収容室15内に臨んでいる。
【0026】
一対の当接部23は、幅方向(周方向)において、幅狭部18の幅方向外側面よりも、幅方向外方へ張り出している。一対の当接部23と、係止突起22の幅方向両端部は、径方向に連なっている。当接部23は、係止突起22よりも径方向外側に位置し、且つ周壁部11の外周面11Aよりも径方向内側に位置する。
図8,9に示すように、ランス16を周方向に見た周方向視において、当接部23の外面は、屈曲した形状をなす。
図8に示すように、当接部23の前端23Fは、当接部23の後端23Rよりも径方向内側(
図8における上側)に位置する。
【0027】
図4,5に示すように、周壁部11には、ランス16を収容するための収容空間24が形成されている。収容空間24は、ランス16を幅方向(周方向)両側から挟むように配されたスリット状空間25を含む。収容空間24は、周壁部11の外周面11Aと内周面11Bとに開口している。収容空間24の前端は型抜き空間17に連通している。周壁部11は、収容空間24に臨み、ランス16の幅方向外側面と対向する一対の対向面26を有する。
【0028】
周壁部11には、幅方向(周方向)に間隔を空けた一対の過度撓み規制部27が形成されている。一対の過度撓み規制部27は、一対の対向面26から、ランス16の両外側面に対して周方向に接近するように突出している。過度撓み規制部27は、前後方向(ランス16の周壁部11からの延出方向)へ細長く延びていて、スリット状空間25内に進出している。リブ状に突出している。一対の過度撓み規制部27は、一対の当接部23よりも径方向外側に位置している。過度撓み規制部27と当接部23は、径方向に並ぶように配置されている。
【0029】
正面視において、過度撓み規制部27の径方向の形成範囲は、周壁部11の外周面11Aから、周壁部11の内周面11Bよりも外側の位置に至る範囲のみである。即ち、過度撓み規制部27は、周壁部11の径方向の厚さの範囲内のみに形成されている。ランス16が弾性変形していない状態では、当接部23は、過度撓み規制部27よりも径方向内側へ離隔した位置に配置される。
図8に示すように、ランス16が弾性変形していない状態において、当接部23の前端23Fと過度撓み規制部27との間の径方向の間隔を、前端側間隔LFと定義し、当接部23の後端23Rと過度撓み規制部27との間の径方向の間隔を、後端側間隔LRと定義する。前端側間隔LFは、後端側間隔LRよりも大きく設定されている。
【0030】
図9に示すように、ランス16が端子金具30から離隔する方向へ弾性変形すると、当接部23は過度撓み規制部27に接近する。当接部23が過度撓み規制部27に突き当たると、ランス16はそれ以上の弾性変形を規制される。このとき、当接部23の前端23Fと後端23Rが過度撓み規制部27に突き当たる。一対の当接部23と一対の過度撓み規制部27は、ランス16が径方向外方へ弾性変形したときに、ランス16の弾性変形量を弾性限度の範囲内に収めるための機能を有する部位である。
【0031】
端子収容室15に端子金具30を挿入する過程では、端子金具30が係止突起22と干渉するので、ランス16が径方向外方へ弾性変形する。このときのランス16の弾性変形量は、当接部23が過度撓み規制部27に当接しない程度の量である。端子金具30が端子収容室15内における正規の挿入位置に到達すると、ランス16が弾性復帰して、係止突起22が端子金具30の係止孔31に係止する。この係止作用によって、端子金具30が抜止される。
【0032】
ランス16によって抜止されている端子金具30を、ハウジング10の後方へ抜き取る際には、ハウジング10の前方からマイナスドライバーのような治具Jを型抜き空間17に挿入し、治具Jの先端部を治具当て面21に当接させる。そして、
図9に示すように、治具Jの先端部によってランス16を径方向外方(解除方向)へ弾性変形させる。ランス16の弾性変形によって、係止突起22が係止孔31から解離するので、ランス16による抜止め作用が解除される。この後は、同軸ケーブル32を引っ張れば、端子金具30を端子収容室15から抜き取ることができる。
【0033】
治具Jによってランス16を解除方向へ弾性変形させるときに、ランス16の弾性変形量が必要以上に大きくなった場合には、一対の当接部23が一対の過度撓み規制部27に突き当たる。当接部23が過度撓み規制部27に突き当たると、ランス16は、それ以上の弾性変形を規制される。このときのランス16の弾性変形量は、ランス16の弾性限度の範囲内であるから、ランス16は塑性変形しない。よって、治具Jをランス16から離脱させれば、ランス16は端子金具30を抜止めし得る位置まで弾性復帰する。
【0034】
本実施例1のコネクタは、端子収容室15を有するハウジング10と、端子金具30と、ランス16と、過度撓み規制部27とを有する。端子金具30は、ハウジング10の後方から端子収容室15に挿入される。ランス16は、端子収容室15を構成する周壁部11に形成されており、端子金具30を抜止めする機能を有する。過度撓み規制部27は、ランス16が端子金具30から離隔する方向へ弾性変形するときに、ランス16の撓み量を一定範囲に抑える機能を有する。
【0035】
ランス16は、周壁部11の内周面11Bと外周面11Aとに露出した状態で配置されている。過度撓み規制部27は、周壁部11の厚さの範囲内のみに配置されている。本実施例1のコネクタは、過度撓み規制部27が周壁部11を覆うように配置されているものに比べると、小型化を図ることができる。
【0036】
ランス16は、幅狭部18と、幅狭部18よりも幅寸法の大きい幅広部19とを有する。ランス16は、幅狭部18と幅広部19をランス16の撓み方向(径方向)に連ねた形状をなす。幅広部19のうち幅狭部18から幅方向(周方向)へ突出した部位は、当接部23として機能する。当接部23は、過度撓み規制部27に突き当たることによってランス16の過度の撓みを規制する機能を有する。ランス16のうち幅広部19と幅狭部18が並ぶ領域は、ランス16の厚さ寸法が大きくなるので、ランス16の剛性が高くなっている。したがって、幅広部だけで構成された薄肉のランスに比べると、本実施例1のランス16は、端子金具30を抜止する機能の信頼性に優れている。
【0037】
幅広部19は、端子金具30に対して抜止め状態に係止する係止突起22としての機能を有している。係止突起22と当接部23とを異なる部位として形成する場合に比べると、本実施例1のコネクタは、ランス16の形状を簡素化することができる。
【0038】
ランス16は、端子金具30から離隔する方向へ弾性変形するときに、ランス16の後端を支点として姿勢を傾けるようになっている。ランス16が弾性変形してない自由状態において、当接部23の前端23Fにおける過度撓み規制部27との間隔(前端側間隔LF)が、当接部23の後端23Rにおける過度撓み規制部27との間隔(後端側間隔LR)よりも大きく設定されている。この構成によれば、ランス16が端子金具30から離隔する方向へ弾性変形するときの、ランス16の弾性変形量を大きく確保できる。これにより、端子金具30に対するランス16の係止代を大きくして、ランス16による保持力を高めることができる。
【0039】
ランス16を前方から見た正面視において、周壁部11が円筒形をなしている。幅広部19(係止突起22)の正面視形状は、円弧形である。幅狭部18には、ランス16を端子金具30から解離させるための治具Jを引っ掛ける治具当て部20が形成されている。治具当て部20には、正面視において直線状をなす平面状の治具当て面21が形成されている。この構成によれば、治具当て部20に治具Jを引っ掛けたときに、治具Jの向きや位置が安定するので、ランス16を弾性変形させる操作を行い易い。
【0040】
周壁部11の外周面11Aのうちランス16の後端から後方へ離隔した位置に、シールリング33が配置されている。この構成によれば、シールリング33が、周壁部11よりも外周側に形成されている壁部の外周面に配置されているものに比べると、小型化を図ることができる。
【0041】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれることが意図される。
ランスは、幅狭部を有しない偏平な形状でもよい。
端子金具に係止される係止突起を、幅広部とは別の部位に配置してもよい。
係止突起と当接部を、前後方向において異なる位置に配置してもよい。
治具当て部は、湾曲した形状でもよい。
端子金具は、内導体と誘電体と外導体を有するシールド端子ではなく、非シールドタイプの端子金具であってもよい。
端子収容室と端子金具の断面形状は、円形に限らず、方形でもよい。
シールリングは、周壁部よりも外周側に形成された壁部の外周面に配置してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…ハウジング
11…周壁部
11A…周壁部の外周面
11B…周壁部の内周面
12…筒形嵌合部
13…支持部
14…シール面
15…端子収容室
16…ランス
17…型抜き空間
18…幅狭部
19…幅広部
20…治具当て部
21…治具当て面
22…係止突起
23…当接部
23F…当接部の前端
23R…当接部の後端
24…収容空間
25…スリット状空間
26…対向面
27…過度撓み規制部
30…端子金具
31…係止孔
32…同軸ケーブル
33…シールリング
J…治具
LF…前端側間隔(当接部の前端における過度撓み規制部との間隔)
LR…後端側間隔(当接部の後端における過度撓み規制部との間隔)