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  • 特開-流路開閉装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113392
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】流路開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/36 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
E02B7/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015733
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】北島 主計
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019BA03
2D019BA21
(57)【要約】
【課題】設計の複雑化を抑制して潤滑油の温度の変化に対応できる流路開閉装置を提供する。
【解決手段】駆動源11、駆動源11の動作を制御する制御手段12、及び、駆動源11の回転力を外部の可動体Gに伝える動力伝達機構13を備え、可動体Gを動かして水路を開閉する流路開閉装置10において、駆動源11は、トルクの大きさが異なる第1、第2のモータ14、15を具備し、動力伝達機構13は、第1のモータ14の回転力が入力される太陽歯車21、第2のモータ15の回転力が入力される内歯車22、及び、可動体Gに向けて回転力を出力する遊星キャリア23が設けられた遊星歯車手段17を有し、制御手段12は、第1のモータ14を作動し第2のモータ15を停止する第1の状態と、第1のモータ14を停止し第2のモータ15を作動する第2の状態とを切り替えて、可動体Gを昇降するトルクの大きさを調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源、該駆動源の動作を制御する制御手段、及び、該駆動源の回転力を外部の可動体に伝える動力伝達機構を備え、該可動体を動かして水路を開閉する流路開閉装置において、
前記駆動源は、トルクの大きさが異なる第1、第2のモータを具備し、
前記動力伝達機構は、前記第1のモータの回転力が入力される太陽歯車、前記第2のモータの回転力が入力される内歯車、及び、前記可動体に向けて回転力を出力する遊星キャリアが設けられた遊星歯車手段を有し、
前記制御手段は、前記第1のモータを作動し前記第2のモータを停止する第1の状態と、前記第1のモータを停止し前記第2のモータを作動する第2の状態とを切り替えて、前記可動体を昇降するトルクの大きさを調整することを特徴とする流路開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の流路開閉装置において、該流路開閉装置の温度、該流路開閉装置が設置された雰囲気の温度、又は、該流路開閉装置の近傍に設けられた物体の温度を計測する温度センサを更に備え、前記制御手段は、前記温度センサの計測温度に応じて、前記第1、第2の状態を切り替えることを特徴とする流路開閉装置。
【請求項3】
請求項1記載の流路開閉装置において、前記制御手段には、操作されて前記第1、第2の状態を切り替える被操作部が設けられていることを特徴とする流路開閉装置。
【請求項4】
請求項1記載の流路開閉装置において、前記制御手段は、カレンダー機能を有し、検知している日付に応じて前記第1、第2の状態を切り替えることを特徴とする流路開閉装置。
【請求項5】
請求項1記載の流路開閉装置において、前記第1、第2のモータに供給される電気エネルギーの大きさを検出する電気量検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記電気量検出手段が検出する電気エネルギーの大きさに応じて、前記第1、第2の状態を切り替えることを特徴とする流路開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を開閉する流路開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流路開閉装置は、特許文献1、2に記載されているように、モータを備え、モータを作動させて可動体を昇降又は回動させて、水やガス等の流体が流れる流路を開閉する。可動体とは水門に設けられた昇降式の扉体や水道管に設けられた回動式の弁体等であり、流路を開閉する際には可動体を所定範囲のトルクで動かす必要がある。可動体を動かすためのトルクが不足する場合、モータに過度な負担が生じてモータの焼損等が生じ、同トルクが過剰な場合、可動体の損傷等が発生する。そのため、従来、可動体を動かすための適切なトルクの大きさを計算し、その大きさのトルクを発生するように流路開閉装置を設計する。
【0003】
また、流路開閉装置はギア等の部材によって構成された動力伝達機構を有し、モータの回転力は動力伝達機構を介して可動体に伝えられる。流路開閉装置を構成するギア等の部材には焼付けの防止等を目的とした潤滑油が塗布されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-171557号公報
【特許文献2】特開2018-112216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、潤滑油の粘度は気温の上昇により低下し気温の低下により上昇することから、気温が高い場合、流路開閉装置から可動体に与えられるトルクは大きくなり、気温が低い場合、可動体に与えられるトルクは小さくなる。従って、流路開閉装置が設置される環境によっては、時期や時間帯により、可動体に与えられるトルクが許容範囲を上回ったり、下回ったりするという現象が生じ得る。
【0006】
この現象から生じるモータの焼損等を防ぐ解決策として、出力トルクが異なる2つのモータ、及び、2つのモータのうち、可動体に回転力を与えられる状態にするモータを選択するクラッチを設けることが考えられる。
しかしながら、この場合、流路開閉装置を構成する部品点数が多くなり、設計が複雑化するという問題が生じる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、設計の複雑化を抑制して潤滑油の温度の変化に対応できる流路開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る流路開閉装置は、駆動源、該駆動源の動作を制御する制御手段、及び、該駆動源の回転力を外部の可動体に伝える動力伝達機構を備え、該可動体を動かして水路を開閉する流路開閉装置において、前記駆動源は、トルクの大きさが異なる第1、第2のモータを具備し、前記動力伝達機構は、前記第1のモータの回転力が入力される太陽歯車、前記第2のモータの回転力が入力される内歯車、及び、前記可動体に向けて回転力を出力する遊星キャリアが設けられた遊星歯車手段を有し、前記制御手段は、前記第1のモータを作動し前記第2のモータを停止する第1の状態と、前記第1のモータを停止し前記第2のモータを作動する第2の状態とを切り替えて、前記可動体を昇降するトルクの大きさを調整する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る流路開閉装置は、駆動源が、トルクの大きさが異なる第1、第2のモータを具備し、動力伝達機構は、第1のモータの回転力が入力される太陽歯車、第2のモータの回転力が入力される内歯車、及び、可動体に向けて回転力を出力する遊星キャリアが設けられた遊星歯車手段を有し、制御手段は、第1のモータを作動し第2のモータを停止する第1の状態と、第1のモータを停止し第2のモータを作動する第2の状態とを切り替えて、可動体を昇降するトルクの大きさを調整するので、クラッチ等を設けることなく(即ち、設計の複雑化を抑制して)潤滑油の温度の変化に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る流路開閉装置の説明図である。
図2】第1の状態により可動体を上昇させる様子を示す説明図である。
図3】第2の状態により可動体を上昇させる様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る流路開閉装置10は、駆動源11、駆動源11の動作を制御する制御手段12、及び、駆動源11の回転力を外部の可動体Gに伝える動力伝達機構13を備え、可動体Gを動かして水路を開閉する装置である。以下、詳細に説明する。
【0011】
駆動源11は、図1に示すように、図示しない外部電源に接続された、トルク(回転モーメント)の大きさが異なるモータ14(第1のモータ)及びモータ15(第2のモータ)を具備している。本実施形態において、モータ14、15はそれぞれブレーキ機能を有し、モータ14、15の回転速度は変えられず、モータ14は、モータ15が発生させるトルクより大きいトルクを発生させる。モータ14、15の種類(例えば、交流モータか直流モータか)は特に限定されない。モータ14、15には、CPUやメモリ等を有して構成される制御手段12が接続されている。
【0012】
動力伝達機構13は、モータ14の出力軸16が接続された遊星歯車手段17と、モータ15の出力軸18が接続されたギア19と、ギア19及び遊星歯車手段17の間に配された増速機20を有している。遊星歯車手段17には、モータ14の回転力が入力される太陽歯車21と、モータ15の回転力がギア19及び増速機20を介して入力される内歯車22と、太陽歯車21及び内歯車22の各回転力が与えられる遊星キャリア23が設けられている。
【0013】
内歯車22は外周歯24及び内周歯25を具備し、増速機20はギア19に噛み合ったギア26及び内歯車22の外周歯24に噛み合ったギア27を備えている。ギア27はギア26に比べて、半径が大きく、歯数が多く、ギア26、27は同軸上で一体的に回転する。
遊星キャリア23はそれぞれ内歯車22の内周歯25に噛み合った複数の遊星歯車28及び出力軸29を有している。各遊星歯車28は太陽歯車21にも噛み合っている。
【0014】
動力伝達機構13は、更に、出力軸29に連結されたギア30、ギア30に噛み合ったギア31及びギア31と一体的に回転するスプロケット32を有している。スプロケット32には、可動体Gに連結されたチェーン33が掛け渡されている。可動体Gは、スプロケット32がギア31と共に同軸上で回転することにより上昇して水路を開き、あるいは、下降して水路を閉じる。
【0015】
ギア19、26、27、30、31、太陽歯車21、内歯車22及び遊星歯車28等には潤滑油が塗布されている。
制御手段12は、モータ14、15に指令信号を送って、モータ14、15の動作を制御する。制御手段12には、流路開閉装置10が設置された雰囲気の温度を計測する温度センサ34が接続されている。
【0016】
制御手段12は、温度センサ34の計測温度を検出でき、温度センサ34の計測温度が予め定めたT℃以下であれば、モータ14を作動しモータ15をモータ15のブレーキで停止する第1の状態にして、可動体Gを昇降させる。第1の状態では、図2に示すように、モータ15の出力軸18がロックされて、内歯車22がギア19及び増速機20と共に静止し、モータ14の出力軸16が回転して、太陽歯車21が回転する。太陽歯車21の回転によって、遊星歯車28が太陽歯車21を中心に公転して、出力軸29が回転し、ギア30、31と共にスプロケット32が回転し、可動体Gが昇降する。
【0017】
一方、温度センサ34の計測温度がT℃を超えていれば、制御手段12は、モータ15を作動しモータ14をモータ14のブレーキで停止する第2の状態にして、可動体Gを昇降させる。第2の状態では、図3に示すように、モータ14の出力軸16がロックされて、太陽歯車21が静止し、モータ15の出力軸18が回転して、ギア19、増速機20及び内歯車22が回転する。内歯車22の回転によって、遊星歯車28が太陽歯車21を中心に公転して、出力軸29、ギア30、31と共にスプロケット32が回転し、可動体Gが昇降する。よって、遊星キャリア23は可動体Gに向けてモータ14の回転力又はモータ15の回転力を出力する。
【0018】
このように、制御手段12が、温度センサ34の計測温度に応じて、第1、第2の状態を切り替えて可動体Gを昇降させるのは、気温の上昇又は低下によりギア19、26、27、30、31等に塗布されている潤滑油の粘性が変化しても、可動体Gを昇降するためのトルクの大きさを所定範囲に収めるためである。従って、制御手段12は、第1、第2の状態とを切り替えて、可動体Gを昇降するトルクの大きさを調整することとなる。
【0019】
ここで、増速機20は、モータ15の回転力を増速して内歯車22に伝えて回転速度を調整するものである。モータ14の作動により可動体Gを昇降する場合と、モータ15の作動により可動体Gを昇降する場合とで、可動体Gの昇降速度が等しくなるようにするために、増速機20を設ける代わりに、モータ14の回転力を減速して太陽歯車21に伝える減速機を設けて回転速度を調整してもよい。なお、第1、第2のモータに回転数を調節できるサーボモータ等を採用する場合、増速機や減速機は不要である。
【0020】
本実施の形態において、温度センサ34は流路開閉装置10が設置された雰囲気の温度を計測するように設計されているが、温度センサ34が流路開閉装置10の近傍に設けられた物体(例えば、流路開閉装置10の近傍に配した容器内に収められた潤滑油)の温度や、流路開閉装置10(例えば、遊星歯車手段17等を収めた図示しない筺体)の温度を計測するように設計してもよい。
【0021】
また、温度センサ34を採用する代わりに、外部電源からモータ14、15に供給される電気エネルギーの大きさ(例えば、電流値や電圧値の大きさ)を検出する電気量検出手段を採用してもよい。この場合、制御手段は、電気量検出手段が検出する電気エネルギーの大きさに応じて、第1、第2の状態を切り替えることとなる。
【0022】
更に、温度センサ34や電気量検出手段を採用せず、制御手段に、人により操作されて第1、第2の状態を切り替える被操作部(例えば、スイッチ)を設けてもよいし、制御手段が、カレンダー機能を有し、検知している日付に応じて第1、第2の状態を切り替える(例えば、検知している日付が11月になるタイミングで第2の状態を第1の状態に切り替え、同日付が4月になるタイミングで第1の状態を第2の状態に切り替える)ように設計してもよい。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、第1、第2のモータにブレーキ機能を有さないモータを採用することができる。第1、第2のモータがブレーキ機能を有さない場合、例えば、第1、第2のモータの出力軸をロックするブレーキ手段を設ければよい。
また、流路開閉装置は弁体を回動するものであってもよい。
そして、第1のモータが発生させるトルクが第2のモータが発生させるトルクより小さくてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10:流路開閉装置、11:駆動源、12:制御手段、13:動力伝達機構、14、15:モータ、16:出力軸、17:遊星歯車手段、18:出力軸、19:ギア、20:増速機、21:太陽歯車、22:内歯車、23:遊星キャリア、24:外周歯、25:内周歯、26、27:ギア、28:遊星歯車、29:出力軸、30、31:ギア、32:スプロケット、33:チェーン、34:温度センサ、G:可動体
図1
図2
図3