(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113397
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23H 7/36 20060101AFI20230808BHJP
B23H 1/10 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B23H7/36 C
B23H1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015739
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊東 世史弘
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB05
3C059EB02
(57)【要約】
【課題】フィルタの交換作業時間を短縮可能な加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物Wを加工液に浸漬した状態で加工する加工装置10において、濾過用のフィルタが内側に設けられたケース11と、被加工物Wの加工により生じた加工屑を含有する加工液をケース11に送ってケース11を通過させるポンプ12と、ケース11に気体を送り込んでフィルタに含まれている加工液をケース11外に流出させるガス注入手段29と、気体がケース11に送り込まれる際に、ポンプ12を停止する制御手段とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工液に浸漬した状態で加工する加工装置において、
濾過用のフィルタが内側に設けられたケースと、
前記被加工物の加工により生じた加工屑を含有する前記加工液を前記ケースに送って該ケースを通過させるポンプと、
前記ケースに気体を送り込んで前記フィルタに含まれている前記加工液を該ケース外に流出させるガス注入手段と、
前記気体が前記ケースに送り込まれる際に、前記ポンプを停止する制御手段とを備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置において、一端部が前記ケースに接続され前記加工屑を含有する前記加工液が該ケースに向けて流れる第1の管に、一端部が前記ガス注入手段に連結された第2の管の他端部が接続されていることを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項2記載の加工装置において、前記ガス注入手段は、前記気体を圧縮状態で収容する容器を有し、前記第2の管又は前記容器には、開状態となって、該容器内の前記気体が前記ケースに送られるようにする開閉弁が設けられていることを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタで濾過される加工液に被加工物を浸漬させて加工を行う加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物が加工槽内で加工液に浸漬されるワイヤ放電加工装置では、特許文献1、2に記載されているように、被加工物の安定的な加工のために、加工液の非抵抗値を高く保つ必要がある。加工液の非抵抗値は被加工物の加工により発生する加工屑によって低下することから、加工槽から加工液を取得して加工槽に戻す循環流路に、加工液から加工屑を取り除くフィルタが設けられている。
【0003】
加工液はフィルタが内側に設けられたケースに流入してフィルタで濾過され、ケースに形成された孔からケース外に出て、加工槽に送られ再利用される。フィルタに捕捉された加工屑が多くなって濾過圧力が所定値に達すると、ケース内のフィルタは人によって新しいフィルタに交換される。フィルタはケース内の加工液を含んで重くなっているため、ケースへの加工液の流入を停止してケース内の加工液を自重でケース外に流出させた後に、フィルタをケースから取り出して交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-4117号公報
【特許文献2】特開2007-276021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、単位時間にフィルタを通過してケース外に流出する加工液は少量であることから、ケース内の加工液がフィルタをケースから取り出せる量まで減少するのには時間を要し、結果として、加工作業の遅延を招くという問題を招来させる。この問題は、ワイヤ放電加工装置に限定されず、加工液中で非加工物を加工する加工装置であって、加工液をフィルタにより濾過する加工装置全般にも共通する。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、フィルタの交換作業時間を短縮可能な加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る加工装置は、被加工物を加工液に浸漬した状態で加工する加工装置において、濾過用のフィルタが内側に設けられたケースと、前記被加工物の加工により生じた加工屑を含有する前記加工液を前記ケースに送って該ケースを通過させるポンプと、前記ケースに気体を送り込んで前記フィルタに含まれている前記加工液を該ケース外に流出させるガス注入手段と、前記気体が前記ケースに送り込まれる際に、前記ポンプを停止する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る加工装置は、ケースに気体を送り込んでフィルタに含まれている加工液をケース外に流出させるガス注入手段と、気体がケースに送り込まれる際に、ポンプを停止する制御手段とを備えるので、フィルタに含まれている加工液をケース外に早く流出させることができ、フィルタの交換作業時間を短縮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る加工装置の説明図である。
【
図3】被加工物を加工する際の様子を示す説明図である。
【
図4】ケースに気体を送り込む様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る加工装置10は、被加工物Wを加工液に浸漬した状態で加工する装置であって、図示しない濾過用のフィルタが内側に設けられたケース11と、被加工物Wの加工により生じた加工屑を含有する加工液をケース11に送ってケース11を通過させるポンプ12を備えている。以下、詳細に説明する。
【0010】
本実施の形態において、加工装置10は、
図1に示すように、放電作用によって被加工物Wを加工するワイヤ放電加工装置であり、加工液(本実施の形態では、水)を貯留可能な加工槽13を有し、加工槽13内の加工液中に浸漬された被加工物Wを、上ヘッド14及び下ヘッド15により張設されたワイヤ状の電極Eを用いて加工する。被加工物Wは、金属物であり、図示しない部材に固定されて、上ヘッド14及び下ヘッド15間に配される。被加工物Wの加工により発生する加工屑は、加工槽13内の加工液に含有される。
【0011】
加工槽13を支持する支持台16の近傍には、加工槽13から加工屑を含んだ加工液が供給される汚液槽17が配置され、汚液槽17から加工液が送られる清液槽18が汚液槽17に近接して配置されている。加工槽13には、
図1、
図2に示すように、加工槽13内の加工液の貯留量を検出する水位センサ19と、加工槽13の一部を開放するシャッタ20が設けられ、水位センサ19及びシャッタ20はCPUやメモリ等から構成できる制御手段21に接続されている。
【0012】
制御手段21は、水位センサ19により加工槽13内の加工液の貯留量が予め定められた量に達したのを検出すると、指令信号を発信してシャッタ20を開き、
図3に示すように、加工槽13内の加工屑を含有した加工液が汚液槽17に送られるようにする。開かれたシャッタ20は、所定時間経過後、制御手段21からの指令信号の送信により閉じられ、加工槽13から汚液槽17への加工液の流入を止める。
【0013】
また、清液槽18の中心の上方には、
図1に示すように、清液槽18に貯留可能な加工液の最高水位より高い位置に図示しない部材に載置されたケース11が設けられている。本実施の形態において、ケース11は、円柱状であり、側壁部には多数の貫通孔が形成されている。汚液槽17内には、ケース11の上部に一端部が接続され、ポンプ12及び逆止弁22が設けられた第1の管の一例である管23の他端部が配されている。本実施の形態では、管23の一端部がカプリングによってケース11に連結されている。
【0014】
ポンプ12は、
図2に示すように、制御手段21に接続され、制御手段21より指令信号が送信されて作動する。ポンプ12の作動により、
図3に示すように、汚液槽17内の加工屑を含有する加工液が管23経由でケース11の上部に送られる。よって、管23は加工屑を含有する加工液がケース11に向けて流れるものである。ケース11の上部に送られた加工液は、ケース11に流入しケース11内のフィルタを通過して濾過された後、ケース11に形成された多数の貫通孔からケース11外に出て清液槽18内に蓄えられる。従って、清液槽18内には、フィルタにより加工屑が取り除かれた加工液(再利用可能な状態)が入っている。
【0015】
清液槽18内には、
図1に示すように、上ヘッド14に取り付けられた図示しないノズルに一端部が接続されポンプ24が設けられた管25の他端部と、一端部が加工槽13内に位置しポンプ26が設けられた管27の他端部とが配されている。ポンプ24、26は、
図2に示すように、制御手段21に接続されている。ポンプ24は、制御手段21からの指令信号の送信により作動して、
図3に示すように、清液槽18内の加工液を管25経由でノズルに送る。
【0016】
ノズルに送られた加工液は、ノズル(上ヘッド14近傍)から被加工物Wの加工部に向けて吹き出され、加工により発生した加工屑を被加工物Wの加工部(加工中の箇所)から取り除く。ポンプ26は、制御手段21からの指令信号の送信により作動して、清液槽18内の加工液を管27経由で加工槽13に送る。汚液槽17から管23を介して清液槽18に流入する加工液の量が、清液槽18から出て管25、27経由で加工槽13に流入する加工液の量より多く、清液槽18内の加工液が所定の量に達すると、清液槽18から加工液が溢れ出て汚液槽17内に流入する。
【0017】
また、加工装置10は、
図1に示すように、ケース11に気体(本実施の形態では、空気)を送り込むガス注入手段29を備えている。ガス注入手段29は、大気中の空気を取り込んで圧縮するコンプレッサ30と、コンプレッサ30に接続されコンプレッサ30で圧縮された空気が充填された容器(ボンベ)30aを有している。即ち、容器30aは空気を圧縮状態で収容している。管23には、一端部が容器30aに連結され、開閉弁31が設けられた第2の管の一例である管32の他端部が接続されている。
【0018】
開閉弁31は、
図2に示すように、制御手段21に接続されている。開閉弁31には、容器30a内の空気が管32及び管23の一部を経由してケース11に送られる開状態と、容器30a内の空気がケース11に送られない閉状態とがあり、制御手段21は指令信号の送信によって開閉弁31の開状態及び閉状態を切り替える。よって、開閉弁31は、開状態となって、容器30a内の空気がケース11に送られるようにする。逆止弁22は、容器30a内の空気がケース11に送られる際に、その空気がポンプ12に送られるのを防止する。
【0019】
被加工物Wを加工する際には、まず、空の加工槽13内の所定の位置に被加工物Wが固定される。次に、制御手段21が開閉弁31を閉状態にし、ポンプ26を作動させて、上ヘッド14、下ヘッド15及び被加工物Wが加工液に浸漬するまで、加工液を清液槽18から加工槽13に移送する。加工槽13内に所定量の加工液が蓄えられると、制御手段21がポンプ24を作動させノズルから加工液を噴出させた状態にし、被加工物Wの加工が開始される。
【0020】
被加工物Wの加工中、ポンプ12、24、26は作動し、開閉弁31は閉状態になっている。加工屑が混入した加工槽13内の加工液は、
図3に示すように、シャッタ20が開いて汚液槽17に流入し、管23経由でケース11に送られ、フィルタで濾過された後に、清液槽18に入り、管25、27経由で加工槽13に送られる。被加工物Wの加工中、ケース11内は加工液で充填され、ケース11内のフィルタは加工液を含んだ状態が続く。
【0021】
ここで、管23には、
図2、
図3に示すように、制御手段21に接続され、管23内の圧力を計測する圧力センサ33が設けられている。管23内の圧力は、フィルタに捕捉されている加工屑の量の増加に伴って上昇する。制御手段21は、管23内の圧力が所定値まで上昇したことを圧力センサ33の計測値により検出すると、
図4に示すように、ポンプ12、24、26を停止させ、制御手段21に接続されたモニタ34(
図2参照)にフィルタ交換のメッセージを表示させ、開閉弁31を開いて、容器30a内の空気が管32及び管23の一部を経由してケース11内に送られるようにする。
【0022】
ケース11内に空気が送られることによって、フィルタに含まれている加工液を含むケース11内の加工液のほとんどが、短時間(例えば、10秒以内)でケース11外に押し出される。よって、本実施の形態では、容器30aがケース11に空気を送り込んでフィルタに含まれている加工液をケース11外に流出させ、制御手段21は空気がケース11に送り込まれる際にポンプ12を停止する。
【0023】
本実施の形態のようにケース11に空気を送り込むことによって、ケース11に空気を送り込まない場合に比べ、ケース11内の加工液がケース11外に短時間で流出し、フィルタの交換作業を早く完了することができ、その結果、被加工物Wの加工作業を早く再開することが可能となる。
【0024】
ここまで説明した加工装置10は、管23(第1の管)に管32(第2の管)が接続されているが、
図5に示す変形例に係る加工装置50のように、第2の管の一例である管51を第1の管の一例である管52に接続せず、直接ケース11に接続するようにしてもよい。なお、加工装置50において加工装置10と同様の構成については、
図5で同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、加工液は油で合ってもよいし、ガス注入手段からケースに送られる気体は不活性ガスであってもよい。
また、ガス注入手段は気体用ポンプを有していてもよい。
更に、開閉弁は第2の管ではなくガス注入手段の容器に設けてもよく、開閉弁は人が手動で開状態及び閉状態を切り替えるようにしてもよい。
【0026】
そして、空の加工槽への加工液の供給は、清液槽からではなく汚液槽から行うようにしてもよい。
また、フィルタを収容したケースを、通常時(被加工物が加工している時を含む)、清液槽内の加工液に浸漬させて使用し、フィルタ交換のタイミングで清液槽内の加工液から引き上げるようにしてもよい。この場合、ケースを清液槽内の加工液から引き上げた後、ケースに気体が送り込まれ、フィルタ交換がなされる。
【符号の説明】
【0027】
10:加工装置、11:ケース、12:ポンプ、13:加工槽、14:上ヘッド、15:下ヘッド、16:支持台、17:汚液槽、18:清液槽、19:水位センサ、20:シャッタ、21:制御手段、22:逆止弁、23:管、24:ポンプ、25:管、26:ポンプ、27:管、29:ガス注入手段、30:コンプレッサ、30a:容器、31:開閉弁、32:管、33:圧力センサ、34:モニタ、50:加工装置、51、52:管、E:電極、W:被加工物