(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113401
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】KODA含有肥料の製造方法およびKODA含有肥料
(51)【国際特許分類】
C05F 11/10 20060101AFI20230808BHJP
C12P 7/04 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/13 20060101ALN20230808BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20230808BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C05F11/10
C12P7/04
C12N1/13
C12N1/19
C12N1/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015745
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 壮輔
(72)【発明者】
【氏名】高谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 美恵
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H061
【Fターム(参考)】
4B064AC02
4B064AD02
4B064CA08
4B064CA19
4B064CB11
4B064DA11
4B065AA26X
4B065AA72X
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA49
4H061AA01
4H061AA02
4H061CC41
4H061DD12
4H061EE66
4H061EE68
(57)【要約】
【課題】 KODA含有肥料の製造効率を高める技術を提供すること。
【解決手段】 KODA含有肥料の製造方法は、(a)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子を外来遺伝子として含む第1形質転換微生物と、アレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む第2形質転換微生物との組み合わせ、および(b)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子およびアレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む形質転換微生物からなる群より選択される酵素供給微生物に由来する9-リポキシゲナーゼおよびアレンオキシドシンターゼの存在下で、α-リノレン酸供給源に由来するα-リノレン酸を反応させて、KODAを生産することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子を外来遺伝子として含む第1形質転換微生物と、アレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む第2形質転換微生物との組み合わせ、および
(b)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子およびアレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む形質転換微生物
からなる群より選択される酵素供給微生物に由来する9-リポキシゲナーゼおよびアレンオキシドシンターゼの存在下で、α-リノレン酸供給源に由来するα-リノレン酸を反応させて、KODAを生産することを含む、KODA含有肥料の製造方法。
【請求項2】
前記反応が、前記酵素供給微生物と前記α-リノレン酸供給源とを土壌中で混合し、前記土壌中において、前記酵素供給微生物に由来する9-リポキシゲナーゼおよびアレンオキシドシンターゼの存在下で、前記α-リノレン酸供給源に由来するα-リノレン酸を反応させることにより行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素供給微生物が藻類である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記α-リノレン酸供給源が植物である請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記α-リノレン酸供給源が廃棄植物である請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の方法により製造されるKODA含有肥料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、KODA含有肥料の製造方法およびKODA含有肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
KODA(9,10-α-ケトールリノレン酸)は、花芽形成促進作用などの植物成長調整作用を有する植物ホルモンとして知られている(特許文献1)。また、KODAは、様々な生育環境ストレスや環境変動に対する耐性を植物に付与する生理活性物質であることが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
KODAは、植物で生合成されるが、その生合成量は極めて少ないことが報告されている(非特許文献2)。KODAの生産量を高めるため、KODA生産性の高いアオウキクサ株をスクリーニングにより取得したことが報告されている(特許文献1)。しかし、アオウキクサ株を水耕栽培して培養液を回収することによりKODAを生産した場合、単位面積当たりの生産量が小さい上に、細胞からKODAを抽出する必要があり、手間と生産コストがかかる。また、KODAを化学的に合成する方法も報告されているが、多くの反応ステップを経る必要があり、最終的な収率が0.81%と非常に低い(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Haque et al., KODA, an α-ketol derivative of linolenic acid provides wide recovery ability of wheat against various abiotic stresses, Biocatalysis and Agricultural Biotechnology (2016) Vol.7, 65-75
【非特許文献2】Suzuki et al., Endogenous α-ketol linolenic acid levels in short day-induced cotyledons are closely related to flower induction in Pharbitis nil, Plant Cell Physiology (2003) Vol.44, No.1, 35-43
【非特許文献3】Yokokawa et al., Total Synthesis of α-ketol derivative of linolenic acid (KODA), a flower-inducing factor in Lemna paucicostata, Chemistry Letters (2003) Vol.32, No.9, 844-845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、KODA含有肥料の製造効率を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によると、
(a)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子を外来遺伝子として含む第1形質転換微生物と、アレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む第2形質転換微生物との組み合わせ、および
(b)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子およびアレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む形質転換微生物
からなる群より選択される酵素供給微生物に由来する9-リポキシゲナーゼおよびアレンオキシドシンターゼの存在下で、α-リノレン酸供給源に由来するα-リノレン酸を反応させて、KODAを生産することを含む、KODA含有肥料の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第2側面によると、上記方法により製造されるKODA含有肥料が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、KODA含有肥料の製造効率を高める技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、α-リノレン酸からKODAを合成する反応経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0012】
好ましい実施形態によれば、KODA含有肥料の製造方法は、
(a)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子を外来遺伝子として含む第1形質転換微生物と、アレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む第2形質転換微生物との組み合わせ、および
(b)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子およびアレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む形質転換微生物
からなる群より選択される酵素供給微生物と、
α-リノレン酸供給源と
を土壌中で混合し、土壌中において、酵素供給微生物に由来する9-リポキシゲナーゼおよびアレンオキシドシンターゼの存在下で、α-リノレン酸供給源に由来するα-リノレン酸を反応させて、土壌中にKODAを生産することを含む。
【0013】
以下の説明では、まず、「酵素供給微生物」および「α-リノレン酸供給源」について説明し、その後、「混合および反応の工程」について説明する。
【0014】
(酵素供給微生物)
酵素供給微生物は、
(a)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子を外来遺伝子として含む第1形質転換微生物と、アレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む第2形質転換微生物との組み合わせ、および
(b)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子およびアレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む形質転換微生物
からなる群より選択される。
「酵素供給微生物」は、α-リノレン酸を合成しない微生物であることが好ましい。すなわち、「酵素供給微生物」は、α-リノレン酸を合成する微生物を除くことが好ましい。微生物が、α-リノレン酸を合成する微生物またはα-リノレン酸を合成しない微生物の何れに該当するかは、ガスクロマトグラフを用いた脂質解析により確認することができる。α-リノレン酸は、生体膜構成脂質の一つであるため、微生物がα-リノレン酸を合成しない場合、生体膜構成に変化を及ぼすことがない。そのため、α-リノレン酸を合成しない微生物は、微生物の生育に影響を及ぼすことなく、外来遺伝子(すなわち、9-lox遺伝子および/またはaox遺伝子)を発現させることが可能となる点で優れている。
【0015】
好ましい酵素供給微生物は、藻類である。すなわち、好ましい酵素供給微生物は、
(a)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子を外来遺伝子として含む第1形質転換藻類と、アレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む第2形質転換藻類との組み合わせ、および
(b)9-リポキシゲナーゼをコードする9-lox遺伝子およびアレンオキシドシンターゼをコードするaox遺伝子を外来遺伝子として含む形質転換藻類
からなる群より選択される。上述のとおり、上記の「好ましい酵素供給微生物」は、α-リノレン酸を合成しない藻類であることが好ましい。すなわち、上記の「好ましい酵素供給微生物」は、α-リノレン酸を合成する藻類を除くことが好ましい。
【0016】
好ましい酵素供給微生物である「藻類」は、微細藻類を指す。微細藻類は、例えば、光合成真核生物であって、単細胞生物又はその群体である。微細藻類は、例えば、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtti)及びボトリオコッカス(Botryococcus)などの単細胞緑藻、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon merolae)などの単細胞紅藻、フェオダクチラム(Phaeodactylum)などの珪藻、又は、それらの群体である。微細藻類は真核生物でなくてもよく、光合成を行う原核生物、例えば、シアノバクテリアなどのバクテリアであってもよい。
【0017】
酵素供給微生物は、藻類に限定されるものではなく、例えば大腸菌、枯草菌、酵母などでも構わない。ただし、藻類は、炭素固定が可能であるため、藻類を使用することで、培養コストの削減が可能である。また、藻類を使用することで、製造される肥料を緑肥とすることができる。
【0018】
酵素供給微生物は、宿主微生物に外来遺伝子(すなわち、9-lox遺伝子および/またはaox遺伝子)を組み込むことにより準備することができる。
【0019】
「9-lox遺伝子」は、高等植物(例えばアオウキクサ(Lemna paucicostata))由来の9-lox遺伝子を使用することができる。また、「aox遺伝子」は、高等植物(例えばアオウキクサ(Lemna paucicostata))由来のaox遺伝子を使用することができる。アオウキクサ由来の9-lox遺伝子およびaox遺伝子の塩基配列は、特許文献1(国際公開第2011/11841号)に記載されている。
【0020】
外来遺伝子の宿主微生物への組込みは、外来遺伝子を、発現用コンストラクト(すなわち、発現ベクター)にクローニングし、得られた組換えベクターを遺伝子組換え技術を用いて宿主微生物へ導入することにより行うことができる。発現用コンストラクトに含まれているプロモーターは、外来遺伝子の恒常的な発現を誘導するプロモーターであってもよいし、外来遺伝子の条件特異的な発現を誘導するプロモーター(例えば、温度感受性プロモーターや栄養応答性プロモーターなど)であってもよい。後者のプロモーターの場合、外来遺伝子が発現する期間を限定することができるため、微生物の増殖への影響を最小限に抑えることができる。
【0021】
酵素供給微生物として、「(a)9-lox遺伝子を外来遺伝子として含む第1形質転換微生物とaox遺伝子を外来遺伝子として含む第2形質転換微生物との組み合わせ」を使用する場合、第1形質転換微生物および第2形質転換微生物は、9-lox遺伝子およびaox遺伝子が同じ発現量となるように準備することが好ましい。例えば、第1形質転換微生物および第2形質転換微生物は、同一の発現用コンストラクトを使用して、外来遺伝子が同一のプロモーターの制御下に配置されるように準備することが好ましい。
【0022】
第1形質転換微生物における9-lox遺伝子の発現量および第2形質転換微生物におけるaox遺伝子の発現量は、イムノブロット解析などにより確認することができる。第1形質転換微生物における9-lox遺伝子の発現量および第2形質転換微生物におけるaox遺伝子の発現量が、イムノブロット解析などにより異なることが認められた場合は、使用する細胞量を補正し、遺伝子発現により産生される2つの酵素がほぼ同じ分子数で存在するように調整することが望ましい。
【0023】
酵素供給微生物として、「(b)9-lox遺伝子およびaox遺伝子を外来遺伝子として含む形質転換微生物」を使用する場合、形質転換微生物は、9-lox遺伝子およびaox遺伝子が同じ発現量となるように準備することが好ましい。例えば、形質転換微生物は、9-lox遺伝子およびaox遺伝子を、1つのプロモーターの制御下に配置して同じ発現量で転写されるように準備することが好ましい。
【0024】
(α-リノレン酸供給源)
α-リノレン酸供給源は、好ましくは植物であり、より好ましくは廃棄植物である。植物は、α-リノレン酸を含有していれば、植物体全体であってもよいし、植物の器官や組織など、植物体の一部であってもよい。
【0025】
廃棄植物としては、例えば、農作物(例えば、とうもろこし、トマト、ホウレンソウなどの野菜)を収穫、出荷した後に残る植物部位や、出荷できない農作物、雑草などが使用できる。その中でも、組織が柔らかい葉の部分を使用することが好ましい。例えば、野菜収穫後の残余葉などを使用することが好ましい。
【0026】
α-リノレン酸供給源は、植物に限定されるものではなく、α-リノレン酸を供給できるものであれば構わない。植物を使用することで、製造される肥料を緑肥とすることができる。また、廃棄植物を使用することで、KODA含有肥料の製造コストを削減することが可能である。
【0027】
(混合および反応の工程)
酵素供給微生物とα-リノレン酸供給源とを土壌中で混合し、土壌中において、酵素供給微生物に由来する9-リポキシゲナーゼおよびアレンオキシドシンターゼの存在下で、α-リノレン酸供給源に由来するα-リノレン酸を反応させて、土壌中にKODAを生産する。
【0028】
この工程では、土壌中の微生物が、酵素供給微生物を分解し、土壌中に9-リポキシゲナーゼ(9-LOX)およびアレンオキシドシンターゼ(AOS)が供給される。加えて、この工程では、土壌中の微生物が、α-リノレン酸を含むα-リノレン酸供給源を分解し、土壌中にα-リノレン酸が供給される。その結果、土壌中でKODAの合成が起こる。
【0029】
α-リノレン酸からKODAを合成する反応経路を
図1に示す。
図1に示すとおり、α-リノレン酸は、9-リポキシゲナーゼ(9-LOX)の作用により9-ヒドロペルオキシリノレン酸に変換され、これは、アレンオキシドシンターゼ(AOS)の作用により9,10-アレンオキシドに変換され、これは、自動変換されて9,10-α-ケトールリノレン酸(KODA)が合成される。
【0030】
土壌としては、好ましくは、農作物を生育させるために使用される土壌、より好ましくは、農作物を生育させるために使用される栄養に富んだ土壌が使用される。
【0031】
混合工程は、例えば、100質量部の土壌に、0.1~10質量部の酵素供給微生物(好ましくは酵素供給藻類)と、0.5~50質量部のα-リノレン酸供給源(好ましくは植物、より好ましくは廃棄植物)とを添加し、それを混合することにより行うことができる。酵素供給微生物(好ましくは酵素供給藻類)とα-リノレン酸供給源(好ましくは植物、より好ましくは廃棄植物)との質量比は、特に制限されないが、例えば1:5とすることができる。
【0032】
反応工程は、例えば、得られた混合物を、屋内または屋根付きの屋外において、大気温度(例えば0~30℃)の下で、土壌中にKODAが生産されるのに必要な期間にわたって放置することにより行うことができる。反応工程は、例えば1~14日間にわたって行うことができる。
【0033】
反応条件は、土壌中の微生物が、酵素供給微生物およびα-リノレン酸供給源を好気的に分解するのに適した条件や、KODA合成酵素(9-LOXおよびAOS)が働くのに適した条件を採用することができる。
【0034】
反応工程の間に、土壌は、定期的に撹拌することが好ましい。例えば1~3日間隔で、土壌を撹拌することが好ましい。これにより、土壌中の好気性微生物に酸素が供給され、その結果、土壌中の好気性微生物による酵素供給微生物およびα-リノレン酸供給源の分解を促進することができる。
【0035】
また、反応工程の間に、土壌の含水率を調整するために、土壌に定期的に水分を添加することが好ましい。土壌の含水率は、一般的な堆肥化反応で採用される含水率、例えば5~50質量%となるように調整することが好ましい。ここで含水率は、湿潤基準の値(すなわち、水分の質量を、水分を含む土壌の全質量で除した値)を指す。
【0036】
なお、好ましい実施形態では、酵素供給微生物とα-リノレン酸供給源とを土壌中で混合しているが、酵素供給微生物から、KODA合成酵素を含む内容物を抽出し、得られた抽出物を酵素供給微生物の代わりに使用してもよいし、および/または、α-リノレン酸供給源から、α-リノレン酸を含む内容物を抽出し、得られた抽出物をα-リノレン酸供給源の代わりに使用してもよい。
【0037】
(KODA含有肥料)
上記方法により土壌中にKODAが生産され、その結果、KODA含有肥料が製造される。すなわち、別の側面によれば、上記方法により製造されるKODA含有肥料が提供される。上記方法により製造されるKODA含有肥料は、土壌と、KODAと、酵素供給微生物の分解物と、α-リノレン酸供給源の分解物とを含む。
【0038】
上記方法において酵素供給微生物として藻類を使用した場合、KODA含有肥料は、土壌と、KODAと、藻類の分解物と、α-リノレン酸供給源の分解物とを含む。また、上記方法においてα-リノレン酸供給源として植物(好ましくは、廃棄植物)を使用した場合、KODA含有肥料は、土壌と、KODAと、酵素供給微生物の分解物と、植物(好ましくは、廃棄植物)の分解物とを含む。また、上記方法において酵素供給微生物として藻類を使用し、かつ、α-リノレン酸供給源として植物(好ましくは、廃棄植物)を使用した場合、KODA含有肥料は、土壌と、KODAと、藻類の分解物と、植物(好ましくは、廃棄植物)の分解物とを含む。
【0039】
(効果)
本発明のKODA含有肥料の製造方法によれば、酵素供給微生物に由来するKODA合成酵素(9-LOXおよびAOS)と、α-リノレン酸供給源に由来するKODA合成基質(α-リノレン酸)とを反応させて、
図1に示す3つの反応ステップを経るだけでKODA含有肥料を製造できるため、安価かつ簡便にKODA含有肥料を製造することができる。また、本発明の方法は、
図1に示す3つの反応ステップを経るだけでKODAを生産することができるため、KODAを多量に含む肥料を製造することができる。したがって、本発明の方法は、KODA含有肥料の製造効率が高い点で優れている。
【0040】
好ましい実施形態によれば、KODA含有肥料の製造方法は、酵素供給微生物と、α-リノレン酸供給源とを土壌中で混合する。好ましい実施形態では、土壌中の微生物の分解作用により、酵素供給微生物(好ましくは藻類)からKODA合成酵素(9-LOXおよびAOS)が土壌中に供給され、土壌中の微生物の分解作用により、α-リノレン酸供給源(好ましくは植物、より好ましくは廃棄植物)からKODA合成基質(α-リノレン酸)が土壌中に供給される。このため、藻類細胞や植物細胞の破砕操作や、酵素や基質の抽出操作や精製操作をすることなく、KODA含有肥料を製造することが可能である。したがって、好ましい実施形態によれば、より安価かつより簡便にKODA含有肥料を製造することができる。
【0041】
KODA含有肥料は、農業分野で使用されることが想定されるため、低コストで簡便に製造しなければ、実用化は難しい。上述のとおり、本発明の方法は、安価かつ簡便にKODA含有肥料を製造することができるため、実用化に適している。
【0042】
また、好ましい実施形態において酵素供給微生物として藻類を使用した場合、KODA含有肥料は、藻類の分解物(これは、窒素やリンなどの栄養源を含む)を含むことができるため、栄養価が更に高まった肥料(緑肥)を製造することができる。また、酵素供給微生物として藻類を使用した場合、酵素供給微生物を準備するにあたり、藻類の培養に炭素源を必要としないため、培養コストを抑えることができる。
【0043】
また、好ましい実施形態においてα-リノレン酸供給源として植物を使用した場合、KODA含有肥料は、植物の分解物(これは、窒素やリンなどの栄養源を含む)を含むことができるため、栄養価が更に高まった肥料(緑肥)を製造することができる。特に、α-リノレン酸供給源として廃棄植物を使用した場合、α-リノレン酸供給源を準備するにあたり、植物を生産する必要がなく、KODA含有肥料の生産コストを大幅に削減することが可能である。