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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113407
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B60C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015753
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】栗山 ひかる
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC47
3D131GA01
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】新たな視覚効果の生じる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、サイドウォール面10に装飾領域11が設けられ、プロファイル面に対する傾斜の異なる3種類の平面21、22、23が装飾領域11に敷き詰められ、3種類の平面21、22、23のうち2種類の平面21、22、23が第1方向に並んでペアを形成し、組み合わせの異なる複数種類のペアが第2方向に並び、第2方向に隣接するペアの間で、第1方向に並ぶ2つの平面21、22、23の境界が第1方向にずれていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール面に装飾領域が設けられた空気入りタイヤにおいて、
プロファイル面に対する傾斜の異なる3種類の平面が前記装飾領域に敷き詰められ、
3種類の前記平面のうち2種類の前記平面が第1方向に並んでペアを形成し、
組み合わせの異なる複数種類の前記ペアが第2方向に並び、
前記第2方向に隣接する前記ペアの間で、前記第1方向に並ぶ2つの前記平面の境界が前記第1方向にずれていることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1方向に並ぶ2つの前記平面の前記境界を通り前記第2方向に延びる線上において、前記第2方向に隣接する前記平面の間に段差が形成された、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
少なくとも一部の前記ペアにおいて、前記第1方向に並び前記ペアを構成する2つの前記平面の境界に段差が形成された、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記平面がタイヤ径方向に長い長方形である、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記装飾領域がタイヤ周方向に1周する帯状領域であり、複数の前記平面が前記帯状領域に敷き詰められた、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記装飾領域が所定の形の領域であり、前記所定の形の領域の内側に複数の前記平面が敷き詰められた、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記装飾領域の全体が前記サイドウォール面のプロファイル面よりも凹んでいる、請求項1~6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1方向がタイヤ径方向であり、前記第2方向がタイヤ周方向である、請求項1~7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹凸からなる模様がサイドウォール面に設けられた空気入りタイヤが知られている。凹凸からなる模様の多くは、直線状に延びる多数の凸条が等間隔に並んだものである。また、同じ形の立体形状部分が多数並べられた模様も知られている。例えば、特許文献1に開示されている模様は、多数の四角錐の部分がそれぞれ基準面に対する凹面として設けられて出来たものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-273505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、美しい模様の提案は頻繁になされているが、今までにない視覚効果を生じさせるような画期的な模様はあまり提案されていない。
【0005】
そこで本発明は、新たな視覚効果の生じる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空気入りタイヤは、サイドウォール面に装飾領域が設けられた空気入りタイヤにおいて、プロファイル面に対する傾斜の異なる3種類の平面が前記装飾領域に敷き詰められ、3種類の前記平面のうち2種類の前記平面が第1方向に並んでペアを形成し、組み合わせの異なる複数種類の前記ペアが第2方向に並び、前記第2方向に隣接する前記ペアの間で、前記第1方向に並ぶ2つの前記平面の境界が前記第1方向にずれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の特徴のため、実施形態の空気入りタイヤから新たな視覚効果が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】空気入りタイヤの軸方向の半断面図。
図2】サイドウォール面をタイヤ軸方向から見た図。
図3】装飾領域の一部の斜視図。
図4図3の中の1つの集合体を示す図。
図5図4のD-D線での断面図。
図6図4のE-E線での断面図。
図7図4のF-F線での断面図。
図8図4のG-G線での断面図。
図9】装飾領域のタイヤ径方向端近傍の断面図。
図10】変更例のペアの断面図。
図11】変更例のペアの断面図。
図12】変更例の装飾領域のタイヤ径方向端近傍の断面図。
図13】変更例の装飾領域のタイヤ径方向端近傍の断面図。
図14】変更例の装飾領域のタイヤ径方向端近傍の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に実施形態の空気入りタイヤ1の断面構造が示されている。なお図1に示されているのはタイヤ軸方向の半分のみであり、実際の空気入りタイヤ1は中心線Cに対してほぼ左右対称になっている。タイヤ軸方向を図1に矢印Aで、タイヤ径方向を図1及び図2に矢印Bで、タイヤ周方向を図2に矢印Rで、それぞれ示す。
【0010】
空気入りタイヤ1では、タイヤ軸方向両側にビード部9が設けられている。ビード部9は、円形に巻かれた鋼線からなるビードコア9aと、ビードコア9aの径方向外側に設けられたゴム製のビードフィラー9bとからなる。
【0011】
タイヤ軸方向両側のビード部9には1枚又は2枚のカーカスプライ2が架け渡されている。カーカスプライ2はタイヤ周方向に直交する方向に並べられた多数のプライコードがゴムで被覆されたシート状の部材である。カーカスプライ2は、タイヤ軸方向両側のビード部9の間で空気入りタイヤ1の骨格形状を形成するとともに、ビード部9の周りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返され巻き上げられることによりビード部9を包んでいる。また、カーカスプライ2の折り返し部分2aのタイヤ軸方向外側の場所には、ラバーチェーファー3が設けられている。
【0012】
また、カーカスプライ2のタイヤ径方向外側には複数枚のベルト4が設けられ、ベルト4のタイヤ径方向外側にはベルト補強層5が設けられている。ベルト4はスチール製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層5は有機繊維製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層5のタイヤ径方向外側にはトレッドゴム6が設けられている。トレッドゴム6には多数の溝が設けられてトレッドパターンが形成されている。
【0013】
また、カーカスプライ2のタイヤ軸方向両側にはサイドウォールゴム7が設けられている。トレッドゴム6とサイドウォールゴム7とはバットレスにおいて重なっているが、トレッドゴム6とサイドウォールゴム7のいずれがタイヤ表面側に重なっていても良い。サイドウォールゴム7のタイヤ径方向内側の部分はビード部9の近くにまで延びており、ラバーチェーファー3の一部に被さっている。
【0014】
サイドウォールゴム7とラバーチェーファー3とのタイヤ表面における境界には、高さ1mm程度の小突起であるリムライン8が形成されている。リムライン8はタイヤ周方向に1周している。なお、リムライン8の代わりに、リムライン8と同じ場所において断面が略三角形になるように突出したリムプロテクターが設けられても良い。タイヤ径方向に、リムライン8又はリムプロテクターからトレッド端までの範囲をサイドウォール面10とする。
【0015】
ここでトレッド端とは、正規リムに装着され正規内圧が付与され正規荷重が負荷されたときの、トレッドゴム6の路面との接触面のタイヤ軸方向端のことである。ここで、正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA及びETRTOであれば“Measuring Rim”である。また、正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤやライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。乗用車用タイヤの場合の正規内圧は、通常180kPaであるが、“Extra Load”又は“Reinforced”と記載されたタイヤの場合は220kPaである。また、正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば “LOAD CAPACITY”である。また、タイヤが乗用車用の場合の正規荷重は、前記の各荷重の88%に相当する荷重である。また、タイヤがレーシングカート用の場合、正規荷重は392Nである。
【0016】
また、カーカスプライ2の内側には空気の透過性の低いゴムからなるシート状のインナーライナーが貼り付けられている。これらの部材の他にも、タイヤの機能上の必要に応じて、ベルト下パッドやチェーハー等の部材が設けられている。
【0017】
図1及び図2のように、タイヤ軸方向両側のサイドウォール面10の少なくとも一方に、装飾領域11が設けられている。装飾領域11は、タイヤ回転軸を中心とする円環の形である。装飾領域11は、小径の円形の内径側線12と、大径の円形の外径側線13とに挟まれた、一定幅の帯状領域である。内径側線12及び外径側線13は、タイヤ表面に凹、凸又は段差によって形成された線であっても良いし、実際には存在しない仮想的な線であっても良い。
【0018】
装飾領域11は、空気入りタイヤ1の最大幅の位置からトレッド端までの範囲の一部を占めている。ここで、空気入りタイヤ1の最大幅の位置とは、正規リムに装着され正規内圧が付与され正規荷重が負荷された状態での、タイヤ軸方向一方のサイドウォール面10の表面からタイヤ軸方向他方のサイドウォール面10の表面までのタイヤ軸方向の長さが一番長い位置のことである。装飾領域11の幅(タイヤ径方向の長さ)は、例えば5mm以上50mm以下である。
【0019】
また、装飾領域11は、サイドウォール面10の表面に段差が現れやすい場所を含む形で設けられていても良い。サイドウォール面10の表面に段差が現れやすい場所とは、典型的にはタイヤ構成部材の端の場所である。そのような典型的な場所として、トレッドゴム6とサイドウォールゴム7との界面がタイヤ表面に現れている場所、カーカスプライ2の巻き上げ端(カーカスプライ2の折り返し部分2aの端)のタイヤ軸方向の場所、等がある。
【0020】
このような装飾領域11の全体に、図3に示されるように3種類の平面21、22、23が敷き詰められている。3種類の平面21、22、23は、サイドウォール面10のプロファイル面に対する傾斜の有無及び傾斜の方向が異なる。第1平面21は、プロファイル面に平行な平面である。また、第2平面22は、プロファイル面に対して第1方向一方側で高く、第1方向他方側で低くなるように傾斜した平面である。また、第3平面23は、プロファイル面に対して第1方向一方側で低く、第1方向他方側で高くなるように傾斜した平面である。
【0021】
本実施形態において、第1方向がタイヤ径方向、第1方向一方側がタイヤ径方向内側(図3図9におけるB1側)、第1方向他方側がタイヤ径方向外側(図3図9におけるB2側)である。なお、後述する第2方向はタイヤ周方向(図3及び図4におけるR方向)である。
【0022】
ここで、サイドウォール面10のプロファイル面とは、装飾等としての凹凸がない場合のタイヤ表面のことである。プロファイル面は、装飾領域11のタイヤ径方向両側の凹凸のない領域を滑らかに連結する1つの曲面である。
【0023】
また、プロファイル面に対する平面21、22、23の傾斜方向とは、厳密には、プロファイル面の法線(ただし平面21、22、23の中心位置を通る法線である)に対して垂直な面に対する、平面21、22、23の傾斜方向のことである。
【0024】
第2平面22及び第3平面23のプロファイル面に対する傾斜角度は、10°以上30°以下が好ましい。また、第2平面22及び第3平面23の低い方の辺から高い方の辺までの、プロファイル面に垂直な方向の高さ(参考のためこの高さを図9に符号Hで示す)は、2mm以上4mm以下が好ましい。
【0025】
3種類の平面21、22、23は、プロファイル面に垂直な方向から見て、全て同じ形状及び大きさの長方形である。本実施形態において、平面21、22、23はタイヤ径方向に長い長方形である。長方形の短辺と長辺の比は1:1~1:20が好ましい。なお前記の比が1:1の長方形は正方形である。また、プロファイル面に垂直な方向から見たときの平面21、22、23の面積は例えば3mm以上7mmである。
【0026】
なお、3種類の平面21、22、23は一見して長方形だと認識できれば良く、各部分の長さや角度が数値的に厳密に長方形の定義を満たしていなくても良い。例えば、長方形の対向する2つの辺の間には若干の誤差があっても良い。対向する2つの辺の長さの差は、いずれか一方の長さの10%以内が好ましい。また、内角にも90°に対して若干の誤差があっても良い。
【0027】
全ての平面21、22、23は、プロファイル面に対する凹の中に設けられている。そして、図9に示されるように、装飾領域11は、その全体がプロファイル面20よりも凹んでいる。プロファイル面20に平行な第1平面21は、装飾領域11の底面となっている。傾斜している第2平面22及び第3平面23は、低い方の辺が装飾領域11の底面の位置にあり、高い方の辺が装飾領域11の底面より高くプロファイル面20より低い位置にある。
【0028】
このような3種類の平面21、22、23によって装飾領域11に凹凸が形成されている。第2平面22及び第3平面23における高い方の辺の近傍が凹凸の凸であり、第1平面21が凹凸の凹である。
【0029】
装飾領域11における3種類の平面21、22、23の配置には規則性がある。まず、3種類の平面21、22、23のうち2種類が第1方向であるタイヤ径方向に並んでペアを形成している。ペアを構成する2種類の平面21、22、23は接触している。
【0030】
本実施形態においては図4図8に示される4種類のペアが存在する。4種類のペアとは、タイヤ径方向外側B2の第2平面22とタイヤ径方向内側B1の第1平面21との第1ペア(図4及び図5参照)、タイヤ径方向外側B2の第3平面23とタイヤ径方向内側B1の第2平面22との第2ペア(図4及び図6参照)、タイヤ径方向外側B2の第3平面23とタイヤ径方向内側B1の第1平面21との第3ペア(図4及び図7参照)、及び、タイヤ径方向外側B2の第1平面21とタイヤ径方向内側B1の第3平面23との第4ペア(図4及び図8参照)である。
【0031】
図4図5及び図8に示されるように、第1ペア及び第4ペアにおいては、ペアを構成する2つの平面21、22、23の境界に段差が形成されている。また、第2ペア及び第3ペアにおいては、ペアを構成する2つの平面21、22、23の境界が屈曲している。以下の説明において、ペアを構成する2つの平面の境界のことを「ペア内境界」とする。
【0032】
このような4種類のペアが第2方向であるタイヤ周方向Rに並んでいる。並び順は、第1ペア~第4ペアの順である。隣接するペア同士は接触している。4種類のペアが集まることにより1つの集合体が形成されている。図4に示されている部分の全体が1つの集合体である。複数の集合体が装飾領域11に隙間なく敷き詰められている。
【0033】
図4に示されるように、タイヤ周方向Rに隣接する2組のペアの間で、ペア内境界24の位置が、タイヤ径方向(B1、B2方向)にずれている。タイヤ径方向へのずれの距離は、平面21、22、23のタイヤ径方向の長さの半分である。そのため、タイヤ周方向Rの奇数番目のペア(第1ペア及び第3ペア)におけるペア内境界24が1本の線上に並び、タイヤ周方向Rの偶数番目のペア(第2ペア及び第4ペア)におけるペア内境界24が別の1本の線上に並ぶ。このようにペア内境界24が通る線のことを基準線L(図4参照)とする。基準線Lはタイヤ周方向Rに延びる仮想の線である。
【0034】
ペア内境界24がこのようにずれているため、タイヤ周方向Rに隣接する2つの平面21、22、23は、1つの平面21、22、23のタイヤ径方向の長さの半分、タイヤ径方向(B1、B2方向)にずれている。
【0035】
あるペアのペア内境界24を通る基準線Lは、タイヤ周方向Rに隣接する別のペアの平面21、22、23のタイヤ径方向の中心位置を通っている。このような基準線L上において、タイヤ周方向Rに隣接する平面21、22、23の間に段差が形成されている。例えば図5に示されるように、第1ペアのペア内境界24(第2平面22の端でもある)は、タイヤ周方向Rに隣接する第2ペアの第2平面22より高い位置にある。そして、第1ペアのペア内境界24と第2ペアの第2平面22との間に段差が形成されている。これと同様に、図4及び図6図8に示されるように、第2ペアと第3ペアの間、第3ペアと第4ペアの間、及び第4ペアと第1ペアの間においても、タイヤ周方向Rに隣接する平面21、22、23の間に段差が形成されている。
【0036】
図示されていないが、サイドウォール面10における装飾領域11の外側には、標章等が設けられていても良い。標章等は凹凸によって描かれる。
【0037】
このような装飾領域11は、空気入りタイヤ1の加硫成型時に金型によって形成することができる。加硫成型に使用される金型の成型面には、それぞれ複数の平面21、22、23の形が形成されている。
【0038】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤ1では、プロファイル面に対する傾斜の異なる3種類の平面21、22、23が装飾領域11に敷き詰められている。そして、そのうち2種類の平面21、22、23がタイヤ径方向に並んでペアを形成し、組み合わせの異なる複数種類のペアがタイヤ周方向Rに並んでいる。さらに、タイヤ周方向Rに隣接するペアの間で、ペア内境界24(タイヤ径方向に並ぶ2つの平面21、22、23の境界)がタイヤ径方向にずれている。そのため、空気入りタイヤ1から新たな視覚効果が生じる。
【0039】
詳細には、3種類の平面21、22、23は、傾斜が異なるため、それぞれ異なる方向へ光を反射させることとなる。そして、2種類の平面21、22、23がペアを形成していること、組み合わせの異なる複数種類のペアがタイヤ周方向Rに並んでいること、及び、タイヤ周方向Rに隣接する2組のペアの間でペア内境界24がタイヤ径方向にずれていることから、所定範囲内にある多数の平面21、22、23から様々な方向に向かって光が反射されることとなる。そのため、水面(水面も多方向に光を反射させる)のような複雑な輝きが装飾領域11から生じることになり、新たな視覚効果が生じる。
【0040】
また、平面21、22、23によって装飾領域11に凹凸が形成されるため、装飾領域11が立体的に見える。立体的に見えることにより装飾領域11の視認性が高まる。
【0041】
また、一般的に、空気入りタイヤ1に内圧を付与するいわゆるインフレートのときに、タイヤ径方向に延びる筋状の凹みがサイドウォール面に生じることが知られている。しかし、本実施形態のサイドウォール面10には3種類の平面21、22、23からなる凹凸が形成されているため、そのような筋状の凹みが目立たなくなる。
【0042】
ここで、ペアを形成するために2種類の平面21、22、23が並ぶ方向がタイヤ径方向であることにより、空気入りタイヤ1を斜め上から見たときの各平面21、22、23の明暗が明確になり、装飾領域11からより複雑な輝きが生じる。
【0043】
また、ペア内境界24を通りタイヤ周方向Rに延びる基準線L上において、タイヤ周方向Rに隣接する平面21、22、23の間に段差が形成されているため、タイヤ周方向Rに隣接する平面21、22、23からの光の反射の仕方が異なることとなる。また、段差では光が反射されにくい。これらのことから、タイヤ周方向Rに並ぶ複数のペアの領域で複雑な光の反射が生じることとなり、特有の美感が生じる。
【0044】
また、第1ペア及び第4ペアにおいては、ペアを構成する2つの平面(タイヤ径方向に並ぶ2つの平面)の境界に段差が形成されており、その段差では光が反射されにくい。そのため、第1ペア及び第4ペアを含む装飾領域11では複雑な光の反射が生じることとなり特有の美感が生じる。
【0045】
また、それぞれの平面21、22、23がタイヤ径方向に長い長方形であるため、空気入りタイヤ1を斜め上から見たときに装飾領域11がより輝いて見える。また、平面21、22、23が曲面であるプロファイル面に沿いつつタイヤ径方向に並び、かつタイヤ径方向に長い長方形であることにより、インフレートのときに生じるタイヤ径方向に延びる筋状の凹みが目立ちにくい。
【0046】
また、装飾領域11がタイヤ周方向Rに1周する帯状領域であり、その帯状領域に平面21、22、23が敷き詰められているため、サイドウォール面10の周方向の全体から美感が生じる。
【0047】
また、装飾領域11の全体がサイドウォール面10のプロファイル面よりも凹んでいるため、平面21、22、23が縁石等に当たりにくく欠損しにくい。
【0048】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲は以上の実施形態に限定されない。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。以下では複数の変更例について説明するが、上記実施形態に対して、複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、複数の変更例のうちいずれか2つ以上を矛盾の生じない範囲で組み合わせて適用しても良い。
【0049】
<変更例1>
装飾領域は円環以外の所定の形の領域であっても良い。所定の形として、標章、デザイン化された文字の形、図形等が挙げられる。そのような所定の形の領域に、上記実施形態と同様にそれぞれ複数の平面21、22、23が敷き詰められる。これにより標章等が美しく見える。
【0050】
<変更例2>
上記実施形態の第1ペア~第4ペア以外のペアもあり得る。具体的には、タイヤ径方向外側B2の第1平面21とタイヤ径方向内側B1の第2平面22とのペア(図10)及びタイヤ径方向外側B2の第2平面22とタイヤ径方向内側B1の第3平面23とのペア(図11)もあり得る。
【0051】
<変更例3>
1つの装飾領域に含まれるペアの種類は、上記実施形態のような4種類に限定されない。ペアの種類が複数種類であり、異なる種類のペア同士が第2方向(例えばタイヤ周方向)に隣接していれば良い。例えば、ペアとして、上記実施形態の第1ペア~第4ペアのうちいずれか2種類のみが存在していても良い。
【0052】
<変更例4>
上記実施形態とは逆に、第1方向がタイヤ周方向、第2方向がタイヤ径方向であっても良い。その場合、傾斜の異なる2種類の平面が第1方向であるタイヤ周方向に並んでペアを形成し、そのようなペアが第2方向であるタイヤ径方向に並ぶことになる。そして、タイヤ径方向に隣接するペアの間で、ペア内境界(タイヤ周方向に並ぶ2つの平面の境界)がタイヤ周方向にずれることになる。この変更例の場合も、各平面がタイヤ径方向に長い長方形であることが好ましい。
【0053】
<変更例5>
各平面はタイヤ周方向に長い長方形であっても良い。
【0054】
<変更例6>
各平面のプロファイル面からの高さは限定されない。図12に示されるように、第2平面22及び第3平面23の低い方の辺がプロファイル面20より低い位置にあり、高い方の辺がプロファイル面20より高い位置にあっても良い。この場合、平面21、22、23が形成する凹凸の凸がプロファイル面20より高く突出して光が当たりやすくなり、凹がプロファイル面20より凹んで光が当たりにくくなる。そのため、明暗のコントラストが強く出る。
【0055】
また、図13に示されるように、第1平面21がプロファイル面20と同じ高さにあっても良い。また、図14に示されるように、全ての平面21、22、23がプロファイル面20より高くなっていても良い。
【符号の説明】
【0056】
1…空気入りタイヤ、2…カーカスプライ、2a…折り返し部分、3…ラバーチェーファー、4…ベルト、5…ベルト補強層、6…トレッドゴム、7…サイドウォールゴム、8…リムライン、9…ビード部、9a…ビードコア、9b…ビードフィラー、10…サイドウォール面、11…装飾領域、12…内径側線、13…外径側線、20…プロファイル面、21…第1平面、22…第2平面、23…第3平面、24…ペア内境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14