(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113415
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20230808BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20230808BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20230808BHJP
G01N 30/04 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G01N30/86 J
G01N30/02 Z
G01N30/06 C
G01N30/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015772
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】湯川 大輝
(57)【要約】
【課題】適切な条件で試料を測定することが可能な分析システムを提供する。
【解決手段】試料供給部により供給された試料が検出器により検出される。標準試料の濃度と標準試料の検出強度との関係を示す検量線が検量線取得部3により取得される。検出器により出力された試料の検出強度が設定されたしきい値より大きいか否かが判定部5により判定される。試料の検出強度がしきい値より大きい場合、当該検出強度としきい値とに基づいて試料の希釈率が決定部6により決定される。試料の検出強度がしきい値以下である場合、当該検出強度と検量線取得部3により取得された検量線とに基づいて試料の濃度が処理部により定量される。試料は、決定部6により決定された希釈率で試料供給部により希釈されて供給される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を供給する試料供給部と、
前記試料供給部により供給された試料を検出し、試料の検出強度を出力する検出部と、
標準試料の濃度と標準試料の検出強度との関係を示す検量線を取得する検量線取得部と、
前記検出部により出力された試料の検出強度が設定されたしきい値より大きいか否かを判定する判定部と、
試料の検出強度が前記しきい値より大きい場合、当該検出強度と前記しきい値とに基づいて試料の希釈率を決定する決定部と、
試料の検出強度が前記しきい値以下である場合、当該検出強度と前記検量線取得部により取得された検量線とに基づいて試料の濃度を定量する処理部とを備え、
前記試料供給部は、前記決定部により決定された前記希釈率で試料を希釈して供給する、分析システム。
【請求項2】
前記検量線取得部により取得された検量線における標準試料の検出強度の最大値に基づいて前記しきい値を設定する設定部をさらに備える、請求項1記載の分析システム。
【請求項3】
前記しきい値の指定を受け付け、受け付けられた前記しきい値を設定する設定部をさらに備える、請求項1記載の分析システム。
【請求項4】
前記決定部は、試料の検出強度に対する前記しきい値の比を前記希釈率として決定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の分析システム。
【請求項5】
試料の第1の分析シーケンスを示す第1のバッチファイルを取得するバッチ取得部と、
前記第1の分析シーケンスに従って前記試料供給部および前記検出部の動作を制御する測定実行部とをさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の分析システム。
【請求項6】
前記測定実行部は、前記第1の分析シーケンス中に、前記判定部により試料の検出強度が前記しきい値より大きいと判定されるごとに、当該試料を前記決定部により決定された前記希釈率で希釈して供給するように前記試料供給部を制御し、前記試料供給部により希釈されて供給された試料を検出するように前記検出部を制御する、請求項5記載の分析システム。
【請求項7】
前記第1の分析シーケンスにおいて、前記判定部によりいずれかの試料の検出強度がしきい値より大きいと判定された場合、当該試料の第2の分析シーケンスを示す第2のバッチファイルを生成するバッチ生成部をさらに備え、
前記測定実行部は、前記第1の分析シーケンスの終了後に、前記第2の分析シーケンスに従って、検出強度が前記しきい値より大きいと判定された試料を、前記決定部により決定された前記希釈率で希釈して供給するように前記試料供給部を制御し、前記試料供給部により希釈されて供給された試料を検出するように前記検出部を制御する、請求項5記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ等の分析装置を用いた試料の測定においては、既知の濃度を有する複数の試料(標準試料)が検出されることにより、標準試料の濃度と、標準試料の検出強度との関係を示す検量線が生成される。また、未知の濃度を有する試料(未知試料)が検出される。標準試料を用いて生成された検量線と、未知試料の検出強度とに基づいて、未知試料の濃度が定量される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析装置における試料の測定には比較的長い作業時間を要するので、測定担当者の負担が大きい。そのため、近年、分析業界では、アルバイトワーカ等の単純労働者に測定を担当させることが増加している。この場合、分析装置の管理者は、分析装置を操作することなく、分析担当者が取得した測定結果を検討することにより試料の分析を行うことができる。
【0005】
しかしながら、測定担当者は分析装置についての知識を十分に有していないため、分析装置において適切な条件で試料が測定された否かを判断できないことが多い。適切な条件で試料が測定されなかった場合、試料を正確に分析することができない。そこで、適切な条件で試料を測定することが可能な分析システムを開発することが求められる。
【0006】
本発明の目的は、適切な条件で試料を測定することが可能な分析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、試料を供給する試料供給部と、前記試料供給部により供給された試料を検出し、試料の検出強度を出力する検出部と、標準試料の濃度と標準試料の検出強度との関係を示す検量線を取得する検量線取得部と、前記検出部により出力された試料の検出強度が設定されたしきい値より大きいか否かを判定する判定部と、試料の検出強度が前記しきい値より大きい場合、当該検出強度と前記しきい値とに基づいて試料の希釈率を決定する決定部と、試料の検出強度が前記しきい値以下である場合、当該検出強度と前記検量線取得部により取得された検量線とに基づいて試料の濃度を定量する処理部とを備え、前記試料供給部は、前記決定部により決定された前記希釈率で試料を希釈して供給する、分析システムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、適切な条件で試料を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る分析システムの構成を示す図である。
【
図4】参考例における試料の定量処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図2の分析制御部による試料の定量処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図2の分析制御部による試料の定量処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】変形例における分析制御部の構成を示す図である。
【
図8】変形例における試料の定量処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】変形例における試料の定量処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)分析システムの構成
以下、本発明の一実施の形態に係る分析システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る分析システムの構成を示す図である。
図1に示すように、分析システム300は、制御装置100および分析装置200を備える。
【0011】
制御装置100は、例えばパーソナルコンピュータであり、CPU(中央演算処理装置)110、RAM(ランダムアクセスメモリ)120、ROM(リードオンリメモリ)130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F(インターフェイス)170およびバス180により構成される。CPU110、RAM120、ROM130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F170はバス180に接続される。
【0012】
RAM120は、例えば揮発性メモリからなり、CPU110の作業領域として用いられる。ROM130は、例えば不揮発性メモリからなる。ROM130にはシステムプログラムが記憶される。CPU110、RAM120およびROM130により分析制御部10が構成される。分析制御部10の詳細については後述する。
【0013】
記憶部140は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含む。記憶部140には、試料の分析シーケンスを示すバッチファイルおよび分析装置200の制御プログラム等が記憶される。バッチファイルまたは制御プログラム等は、記憶部140とは異なる記憶媒体に記憶されていてもよい。CPU110が記憶部140等に記憶された制御プログラムをRAM120上で実行することにより、バッチファイルに従う試料の定量処理が行われる。
【0014】
操作部150は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部160は、液晶表示部等の表示デバイスである。分析システム300の使用者は、操作部150を操作することにより制御装置100に各種指定を行うことができる。表示部160は、試料の測定により得られた検量線またはクロマトグラム等の分析結果を表示可能である。入出力I/F170は、分析装置200に接続される。
【0015】
本例では、分析装置200は液体クロマトグラフであり、移動相供給部210、試料供給部220、分離カラム230および検出器240を含む。移動相供給部210は、例えば送液ポンプを含み、水溶液または有機溶媒等の移動相を圧送する。移動相供給部210は、複数の送液ポンプおよびグラジエントミキサを含み、移動相のグラジエント送液を行ってもよい。
【0016】
試料供給部220は、例えばオートサンプラであり、移動相供給部210により供給された移動相とともに試料を分離カラム230に供給する。試料は、既知の濃度を有する標準試料と、未知の濃度を有する未知試料とを含む。また、試料供給部220に試料の希釈率が設定されている場合には、試料供給部220は、試料を供給する際に、移動相と同一の成分を有する希釈液を用いて、設定された希釈率で試料を希釈する。
【0017】
分離カラム230は、図示しないカラム恒温槽の内部に収容され、所定の一定温度に調整される。分離カラム230は、導入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。検出器240は、例えばPDA(フォトダイオードアレイ)またはUV(紫外線)検出器である。検出器240は、質量分析計であってもよい。検出器240は、分離カラム230により分離された試料の成分を検出し、検出強度を出力する。
【0018】
(2)制御装置の構成
図2は、
図1の分析制御部10の構成を示す図である。
図2に示すように、分析制御部10は、機能部として、バッチ取得部1、測定実行部2、検量線取得部3、設定部4、判定部5、決定部6および処理部7を含む。
図1のCPU110が記憶部140等に記憶された制御プログラムを実行することにより、分析制御部10の機能部が実現される。分析制御部10の機能部の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0019】
バッチ取得部1は、操作部150からの指定に基づいて、記憶部140等に記憶されたバッチファイルを取得する。使用者は、操作部150を操作することにより、試料の測定に用いる所望のバッチファイルをバッチ取得部1に指定することができる。測定実行部2は、バッチ取得部1により取得されたバッチファイルに従って、分析装置200の移動相供給部210、試料供給部220、分離カラム230(カラム恒温槽)および検出器240の動作を制御する。
【0020】
検量線取得部3は標準試料の濃度と標準試料の検出強度との関係を示す検量線を取得する。
図3は、検量線の一例を示す図である。
図3において、横軸は標準試料の濃度を示し、縦軸は標準試料の検出強度を示す。本例では、分析装置200において、バッチファイルにより示される分析シーケンスに従って、複数の標準試料が検出器240により順次検出される。検量線取得部3は、検出器240から出力される各標準試料の検出強度と、各標準試料の濃度とに基づいて
図3の検量線を生成する。
【0021】
設定部4は、試料の検出強度についてのしきい値を設定する。本例では、設定部4は、検量線取得部3により取得された
図3の検量線における標準試料の検出強度の最大値に基づいてしきい値を設定する。この場合、試料を適切に希釈するためのしきい値を容易に設定することができる。例えば、しきい値は、標準試料の検出強度の最大値であってもよいし、標準試料の検出強度の最大値よりも所定量だけ小さい値であってもよいし、標準試料の検出強度の最大値の所定割合だけ小さい値であってもよい。
【0022】
あるいは、
図2に一点鎖線で示すように、設定部4は、設定すべきしきい値の指定を操作部150から受け付けてもよい。この場合、使用者は、操作部150を操作することにより任意のしきい値を設定部4に指定することができる。この構成においては、検量線取得部3により取得された
図3の検量線における標準試料の検出強度の最小値以上でかつ最大値以下の値がしきい値として指定されることが好ましい。
【0023】
分析装置200において、バッチファイルにより示される分析シーケンスに従って、未知試料が検出器240により検出される。判定部5は、検出器240により出力された未知試料の検出強度を取得する。また、判定部5は、取得された未知試料の検出強度が設定部4により設定されたしきい値より大きいか否かを判定する。
【0024】
決定部6は、判定部5により未知試料の検出強度がしきい値より大きいと判定された場合、当該検出強度としきい値とに基づいて未知試料の希釈率を決定する。本例では、未知試料の検出強度に対するしきい値の比が希釈率として決定される。この場合、未知試料を容易にかつ適切に希釈することができる。決定部6は、決定された希釈率を分析装置200の試料供給部220に設定する。これにより、試料供給部220は、設定された希釈率で未知試料を希釈して供給することとなる。
【0025】
処理部7は、判定部5により未知試料の検出強度がしきい値以下であると判定された場合、当該検出強度と検量線取得部3により取得された検量線とに基づいて、未知試料の濃度を定量する。また、処理部7は、分析装置200の分離カラム230における未知試料の保持時間と、未知試料の検出強度とに基づいてクロマトグラムをさらに生成してもよい。
【0026】
(3)参考例
図4は、参考例における試料の定量処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。以下、
図1の分析システム300、
図2の分析制御部10および
図4のフローチャートを用いて参考例における試料の定量処理の一例を説明する。
【0027】
まず、バッチ取得部1は、バッチファイルが指定されたか否かを判定する(ステップS1)。バッチファイルが指定されない場合、バッチ取得部1はバッチファイルが指定されるまで待機する。バッチファイルが指定された場合、バッチ取得部1は、指定されたバッチファイルを記憶部140等から取得する(ステップS2)。その後、ステップS2で取得されたバッチファイルが示すステップS3~S15の分析シーケンスが順次実行される。
【0028】
具体的には、測定実行部2は、第1の濃度を有する第1の標準試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS3)。これにより、分析装置200において、移動相供給部210は移動相を供給し、試料供給部220は移動相供給部210により供給された移動相とともに第1の標準試料を分離カラム230に供給する。検出器240は、分離カラム230を通過した第1の標準試料を検出し、検出強度を出力する。
【0029】
同様に、測定実行部2は、第2の濃度を有する第2の標準試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS4)。測定実行部2は、第3の濃度を有する第3の標準試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS5)。測定実行部2は、第4の濃度を有する第4の標準試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS6)。検量線取得部3は、ステップS3~S6で検出器240によりそれぞれ出力された第1~第4の標準試料の検出強度と、第1~第4の濃度とに基づいて、
図3の検量線を取得する(ステップS7)。
【0030】
次に、測定実行部2は、第1の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS8)。この場合、分析装置200において、移動相供給部210は移動相を供給し、試料供給部220は移動相供給部210により供給された移動相とともに第1の未知試料を分離カラム230に供給する。検出器240は、分離カラム230を通過した第1の未知試料を検出し、検出強度を出力する。続いて、処理部7は、ステップS7で取得された検量線と、ステップS8で検出器240により出力された第1の未知試料の検出強度とに基づいて、第1の未知試料の濃度を定量する(ステップS9)。
【0031】
同様に、測定実行部2は、第2の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS10)。処理部7は、検量線と、ステップS10で出力された第2の未知試料の検出強度とに基づいて、第2の未知試料の濃度を定量する(ステップS11)。
【0032】
また、測定実行部2は、第3の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS12)。処理部7は、検量線と、ステップS12で出力された第3の未知試料の検出強度とに基づいて、第3の未知試料の濃度を定量する(ステップS13)。
【0033】
さらに、測定実行部2は、第4の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS14)。処理部7は、検量線と、ステップS14で出力された第4の未知試料の検出強度とに基づいて、第4の未知試料の濃度を定量し(ステップS15)、試料の定量処理を終了する。
【0034】
上記の定量処理によれば、第1~第4の未知試料の濃度を定量することができる。しかしながら、ステップS8,S10,S12,S14で出力された第1~第4の未知試料の検出強度がステップS7で取得された
図3の検量線における標準試料の検出強度の最小値と最大値との間にあるとは限らない。第1~第4の未知試料の検出強度が標準試料の検出強度の最大値よりも大きい場合、検量線の直線性が担保されない。そのため、ステップS9,S11,S13,S15で第1~第4の未知試料の濃度を正確に定量することができない。
【0035】
(4)定量処理
図5および
図6は、
図2の分析制御部10による試料の定量処理の一例を示すフローチャートである。
図5の定量処理は、
図1のCPU110が記憶部140等に記憶された制御プログラムをRAM120上で実行することにより行われる。以下、
図1の分析システム300、
図2の分析制御部10ならびに
図5および
図6のフローチャートを用いて本実施の形態における試料の定量処理の一例を説明する。
【0036】
本実施の形態における定量処理では、まず、
図4のステップS1,S2とそれぞれ同様のステップS1,S2が実行される。これにより、ステップS2で取得されたバッチファイルが示すステップS3~S15の分析シーケンスが実行される。ここで、本実施の形態においては、バッチファイルが示す分析シーケンス中に以下のステップS7a、ステップS8a,8b、ステップS10a,10b、ステップS12a,12bおよびステップS14a,14bが適宜実行される。
【0037】
具体的には、ステップS2の後、
図4のステップS3~S7とそれぞれ同様のステップS3~S7が順次実行される。ステップS7の後、設定部4は、ステップS7で取得された検量線における標準試料の検出強度の最大値に基づいて、試料の検出強度についてのしきい値を設定する(ステップS7a)。なお、設定部4は、操作部150を通して使用者により指定された値を試料の検出強度についてのしきい値として設定してもよい。この場合、ステップS7aは、ステップS7より前の時点で実行されてもよい。
【0038】
次に、測定実行部2は、
図4のステップS8と同様に、第1の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS8)。判定部5は、ステップS8で検出器240により出力された第1の未知試料の検出強度がステップS7aで設定されたしきい値より大きいか否かを判定する(ステップS8a)。
【0039】
第1の未知試料の検出強度がしきい値より大きい場合、決定部6は、当該検出強度としきい値とに基づいて第1の未知試料の希釈率を決定し(ステップS8b)、ステップS8に戻る。これにより、ステップS8bで決定された希釈率が分析装置200の試料供給部220に設定される。また、ステップS8において、希釈された第1の未知試料が再度測定される。この際に測定される試料の量は、希釈前に測定される試料の量と同じである。第1の未知試料の検出強度がしきい値以下になるまで、ステップS8~S8bが繰り返される。
【0040】
ステップS8aで、第1の未知試料の検出強度がしきい値以下である場合、処理部7は、
図4のステップS9と同様に、ステップS7で取得された検量線と、ステップS8で検出器240により出力された第1の未知試料の検出強度とに基づいて、第1の未知試料の濃度を定量する(ステップS9)。
【0041】
同様に、測定実行部2は、第2の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS10)。判定部5は、ステップS10で検出器240により出力された第2の未知試料の検出強度がステップS7aで設定されたしきい値より大きいか否かを判定する(ステップS10a)。
【0042】
第2の未知試料の検出強度がしきい値より大きい場合、決定部6は、当該検出強度としきい値とに基づいて第2の未知試料の希釈率を決定し(ステップS10b)、ステップS10に戻る。第2の未知試料の検出強度がしきい値以下である場合、処理部7は、ステップS7で取得された検量線と、ステップS10で検出器240により出力された第2の未知試料の検出強度とに基づいて、第2の未知試料の濃度を定量する(ステップS11)。
【0043】
測定実行部2は、第3の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS12)。判定部5は、ステップS12で検出器240により出力された第3の未知試料の検出強度がステップS7aで設定されたしきい値より大きいか否かを判定する(ステップS12a)。
【0044】
第3の未知試料の検出強度がしきい値より大きい場合、決定部6は、当該検出強度としきい値とに基づいて第3の未知試料の希釈率を決定し(ステップS12b)、ステップS12に戻る。第3の未知試料の検出強度がしきい値以下である場合、処理部7は、ステップS7で取得された検量線と、ステップS12で検出器240により出力された第3の未知試料の検出強度とに基づいて、第3の未知試料の濃度を定量する(ステップS13)。
【0045】
測定実行部2は、第4の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS14)。判定部5は、ステップS14で検出器240により出力された第4の未知試料の検出強度がステップS7aで設定されたしきい値より大きいか否かを判定する(ステップS14a)。
【0046】
第4の未知試料の検出強度がしきい値より大きい場合、決定部6は、当該検出強度としきい値とに基づいて第4の未知試料の希釈率を決定(ステップS14b)し、ステップS14に戻る。第4の未知試料の検出強度がしきい値以下である場合、処理部7は、ステップS7で取得された検量線と、ステップS14で検出器240により出力された第4の未知試料の検出強度とに基づいて、第4の未知試料の濃度を定量し(ステップS15)、試料の定量処理を終了する。
【0047】
(5)変形例
図7は、変形例における分析制御部10の構成を示す図である。
図7に示すように、分析制御部10は、機能部として、バッチ生成部8をさらに含む。バッチ生成部8は、バッチファイルにより示される分析シーケンスにおいて、いずれかの未知試料の検出強度がしきい値より大きいと判定部5により判定された場合、当該未知試料の分析シーケンスを示す新たなバッチファイルを生成する。バッチ生成部8により新たに生成されたバッチファイルは、バッチ取得部1により取得されたバッチファイルに紐づけされる。
【0048】
測定実行部2は、バッチ取得部1により取得されたバッチファイルが示す分析シーケンスに従って分析装置200の動作を制御する。当該分析シーケンスの終了後、バッチ生成部8により新たなバッチファイルが生成された場合、測定実行部2は、新たに生成されたバッチファイルに従って分析装置200の動作を制御する。
【0049】
図8および
図9は、変形例における試料の定量処理の一例を示すフローチャートである。以下、
図1の分析システム300、
図7の分析制御部10ならびに
図8および
図9のフローチャートを用いて変形例における試料の定量処理の一例を説明する。
【0050】
変形例における定量処理では、まず、
図4のステップS1,S2とそれぞれ同様のステップS1,S2が実行される。これにより、ステップS2で取得されたバッチファイルが示すステップS3~S15の分析シーケンスが実行される。ここで、変形例においては、ステップS2で取得されたバッチファイルが示す分析シーケンスの終了後、以下のステップS16以降の処理が実行される。
【0051】
具体的には、ステップS15の後、設定部4は、ステップS7で取得された検量線における標準試料の検出強度の最大値に基づいて、試料の検出強度についてのしきい値を設定する(ステップS16)。ステップS16は、ステップS15より前の時点で実行されてもよい。また、設定部4は、操作部150を通して使用者により指定された値を試料の検出強度についてのしきい値として設定してもよい。この場合、ステップS16は、ステップS7より前の時点で実行されてもよい。
【0052】
次に、判定部5は、ステップS8,S10,S12,S14で検出器240により出力されたいずれかの未知試料の検出強度がステップS16で設定されたしきい値より大きいか否かを判定する(ステップS17)。全部の未知試料の検出強度がしきい値以下である場合、判定部5は、試料の定量処理を終了する。いずれかの未知試料の検出強度がしきい値より大きい場合、バッチ生成部8は、当該未知試料の分析シーケンスを示す新たなバッチファイルを生成する(ステップS18)。ステップS18で生成された新たなバッチファイルは、ステップS2で取得されたバッチファイルと紐づけられる。
【0053】
本例では、第1および第4の未知試料の検出強度がしきい値より大きいと判定されたとする。この場合、決定部6は、ステップS8で出力された第1の未知試料の検出強度としきい値とに基づいて第1の未知試料の希釈率を決定する(ステップS19)。これにより、ステップS19で決定された希釈率が分析装置200の試料供給部220に設定される。続いて、測定実行部2は、ステップS18で生成された新たなバッチファイルが示す分析シーケンスに従って、第1の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS20)。
【0054】
この場合、分析装置200において、移動相供給部210は移動相を供給し、試料供給部220は移動相供給部210により供給された移動相とともに第1の未知試料を設定された希釈率で希釈して分離カラム230に供給する。検出器240は、分離カラム230を通過した第1の未知試料を検出し、検出強度を出力する。その後、処理部7は、ステップS7で取得された検量線と、ステップS20で検出器240により出力された第1の未知試料の検出強度とに基づいて、第1の未知試料の濃度を定量する(ステップS21)。
【0055】
同様に、決定部6は、ステップS14で出力された第4の未知試料の検出強度としきい値とに基づいて第4の未知試料の希釈率を決定する(ステップS22)。続いて、測定実行部2は、ステップS18で生成された新たなバッチファイルが示す分析シーケンスに従って、第4の未知試料を測定するように分析装置200の動作を制御する(ステップS23)。その後、処理部7は、検量線と、ステップS23で出力された第4の未知試料の検出強度とに基づいて、第4の未知試料の濃度を定量する(ステップS24)。
【0056】
次に、判定部5は、ステップS20,S23で検出器240により出力されたいずれかの未知試料の検出強度がステップS16で設定されたしきい値より大きいか否かを判定する(ステップS25)。全部の未知試料の検出強度がしきい値以下である場合、判定部5は、試料の定量処理を終了する。いずれかの未知試料の検出強度がしきい値より大きい場合、バッチ生成部8は、ステップS18と同様に、当該未知試料の分析シーケンスを示す新たなバッチファイルを生成する(ステップS26)。以降、全部の未知試料の検出強度がしきい値以下となるまで、ステップS19~S25と同様の処理が繰り返される。
【0057】
(6)効果
試料供給部220により供給された未知試料の濃度が比較的高い場合には、検出器240により出力される未知試料の検出強度が過剰に大きくなることがある。本実施の形態に係る分析システム300においては、このような場合、当該検出強度としきい値とに基づいて未知試料の希釈率が決定部6により決定される。また、未知試料は、決定された希釈率で試料供給部220により希釈されて供給される。
【0058】
この構成によれば、検出器240により出力される未知試料の検出強度が低減される。したがって、検量線取得部3により取得された検量線の直線性が担保される範囲の検出強度を用いて、試料の濃度を定量することが容易になる。その結果、測定担当者が分析装置200についての知識を十分に有していない場合でも、適切な条件で未知試料を測定することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、試料の分析シーケンスを示すバッチファイルがバッチ取得部1により取得され、当該分析シーケンスに従って分析装置200の動作が測定実行部2により制御される。この場合、バッチファイルに基づいて、試料を容易に測定することができる。
【0060】
ここで、
図5および
図6の定量処理では、分析シーケンス中に、判定部5により未知試料の検出強度がしきい値より大きいと判定されるごとに、当該未知試料を決定部6により決定された希釈率で希釈して供給するように試料供給部220が制御される。また、試料供給部220により希釈されて供給された未知試料を検出するように検出器240が制御される。
【0061】
この定量処理によれば、分析シーケンス中にいずれかの未知試料の検出強度が過剰に大きくなった場合、分析シーケンス中に当該未知試料の希釈が行われる。これにより、分析シーケンス中に各未知試料を適切な条件で測定することができる。
【0062】
一方、
図8および
図9の定量処理では、分析シーケンスにおいて、判定部5によりいずれかの未知試料の検出強度がしきい値より大きいと判定された場合、当該未知試料の分析シーケンスを示す新たなバッチファイルがバッチ生成部8により生成される。先の分析シーケンスの終了後に、新たなバッチファイルが示す分析シーケンスに従って、検出強度がしきい値より大きいと判定された試料を、決定部6により決定された希釈率で希釈して供給するように試料供給部220が制御される。また、試料供給部220により希釈されて供給された試料を検出するように検出器240が制御される。
【0063】
この定量処理によれば、先の分析シーケンス中にいずれかの試料の検出強度が過剰に大きくなった場合、先の分析シーケンスの終了後に当該試料の希釈が行われる。これにより、先の分析シーケンスにおいて検出強度が過剰に大きくなった試料を新たなバッチファイルが示す分析シーケンス中に適切な条件で測定することができる。
【0064】
(7)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、検量線取得部3はバッチファイルにより示される分析シーケンスに従う標準試料の測定に基づいて検量線を取得するが、実施の形態はこれに限定されない。記憶部140等に検量線が記憶されている場合には、検量線取得部3は、記憶部140等から検量線を取得してもよい。
【0065】
(b)上記実施の形態において、分析制御部10は設定部4を含むが、実施の形態はこれに限定されない。試料の検出強度についてのしきい値が予め設定されている場合には、分析制御部10は設定部4を含まなくてもよい。
【0066】
(c)上記実施の形態において、決定部6は未知試料の検出強度に対するしきい値の比を試料の希釈率として決定するが、実施の形態はこれに限定されない。決定部6は、検出強度としきい値とに基づく他の演算を行うことにより試料の希釈率を決定してもよい。
【0067】
(8)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0068】
(第1項)一態様に係る分析システムは、
試料を供給する試料供給部と、
前記試料供給部により供給された試料を検出し、試料の検出強度を出力する検出部と、
標準試料の濃度と標準試料の検出強度との関係を示す検量線を取得する検量線取得部と、
前記検出部により出力された試料の検出強度が設定されたしきい値より大きいか否かを判定する判定部と、
試料の検出強度が前記しきい値より大きい場合、当該検出強度と前記しきい値とに基づいて試料の希釈率を決定する決定部と、
試料の検出強度が前記しきい値以下である場合、当該検出強度と前記検量線取得部により取得された検量線とに基づいて試料の濃度を定量する処理部とを備え、
前記試料供給部は、前記決定部により決定された前記希釈率で試料を希釈して供給してもよい。
【0069】
この分析システムにおいては、試料供給部により供給された試料の濃度が比較的高いことにより、検出器により出力される試料の検出強度が過剰に大きくなった場合、当該検出強度としきい値とに基づいて試料の希釈率が決定部により決定される。また、試料は、決定された希釈率で試料供給部により希釈されて供給される。そのため、検出器により出力される試料の検出強度が低減される。したがって、検量線取得部により取得された検量線の直線性が担保される範囲の検出強度を用いて、試料の濃度を定量することが容易になる。その結果、適切な条件で試料を測定することができる。
【0070】
(第2項)第1項に記載の分析システムは、
前記検量線取得部により取得された検量線における標準試料の検出強度の最大値に基づいて前記しきい値を設定する設定部をさらに備えてもよい。
【0071】
この場合、試料を適切に希釈するためのしきい値を容易に設定することができる。
【0072】
(第3項)第1項に記載の分析システムは、
前記しきい値の指定を受け付け、受け付けられた前記しきい値を設定する設定部をさらに備えてもよい。
【0073】
この場合、任意のしきい値を設定することができる。
【0074】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の分析システムにおいて、
前記決定部は、試料の検出強度に対する前記しきい値の比を前記希釈率として決定してもよい。
【0075】
この場合、試料を容易にかつ適切に希釈することができる。
【0076】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の分析システムは、
試料の第1の分析シーケンスを示す第1のバッチファイルを取得するバッチ取得部と、
前記第1の分析シーケンスに従って前記試料供給部および前記検出部の動作を制御する測定実行部とをさらに備えてもよい。
【0077】
この場合、第1のバッチファイルに基づいて、試料を容易に測定することができる。
【0078】
(第6項)第5項に記載の分析システムにおいて、
前記測定実行部は、前記第1の分析シーケンス中に、前記判定部により試料の検出強度が前記しきい値より大きいと判定されるごとに、当該試料を前記決定部により決定された前記希釈率で希釈して供給するように前記試料供給部を制御し、前記試料供給部により希釈されて供給された試料を検出するように前記検出部を制御してもよい。
【0079】
この構成によれば、第1の分析シーケンス中にいずれかの試料の検出強度が過剰に大きくなった場合、第1の分析シーケンス中に当該試料の希釈が行われる。これにより、第1の分析シーケンス中に各試料を適切な条件で測定することができる。
【0080】
(第7項)第5項に記載の分析システムは、
前記第1の分析シーケンスにおいて、前記判定部によりいずれかの試料の検出強度がしきい値より大きいと判定された場合、当該試料の第2の分析シーケンスを示す第2のバッチファイルを生成するバッチ生成部をさらに備え、
前記測定実行部は、前記第1の分析シーケンスの終了後に、前記第2の分析シーケンスに従って、検出強度が前記しきい値より大きいと判定された試料を、前記決定部により決定された前記希釈率で希釈して供給するように前記試料供給部を制御し、前記試料供給部により希釈されて供給された試料を検出するように前記検出部を制御してもよい。
【0081】
この構成によれば、第1の分析シーケンス中にいずれかの試料の検出強度が過剰に大きくなった場合、第1の分析シーケンスの終了後に当該試料の希釈が行われる。これにより、第1の分析シーケンスにおいて検出強度が過剰に大きくなった試料を第2の分析シーケンス中に適切な条件で測定することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…バッチ取得部,2…測定実行部,3…検量線取得部,4…設定部,5…判定部,6…決定部,7…処理部,8…バッチ生成部,10…分析制御部,100…制御装置,110…CPU,120…RAM,130…ROM,140…記憶部,150…操作部,160…表示部,170…入出力I/F,180…バス,200…分析装置,210…移動相供給部,220…試料供給部,230…分離カラム,240…検出器,300…分析システム