(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113437
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20230808BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230808BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20230808BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230808BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20230808BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20230808BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20230808BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20230808BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230808BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230808BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20230808BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20230808BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20230808BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/00 P
H02J7/10 L
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/27
B60L1/00 L
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/633
H01M10/663
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015811
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】青木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】丹波 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【テーマコード(参考)】
5G503
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB02
5G503CB11
5G503DA07
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA09
5H125BC19
5H125BC25
5H125BE05
5H125CD07
5H125CD09
5H125DD03
5H125EE25
(57)【要約】
【課題】外気温度が低温になっているときであっても、バッテリーに対する充電を能率よく行えるようにすることが要望されていた。
【解決手段】車体を走行駆動可能な電動モータMと、電動モータMに駆動用電力を供給するとともに、外部の給電装置により充電可能なバッテリー4と、給電装置側の給電用コネクタ36が接続可能な接続部37と、給電装置KDによる充電状態を制御する制御装置34と、バッテリー4の温度を検出する温度検出手段40と、が備えられ、制御装置34は、温度検出手段40にて検出されるバッテリー4の温度が設定温度以下であれば、バッテリー4に対する充電に先立って、バッテリー4が目標温度に上昇するまでバッテリー4を温める昇温制御を実行するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を走行駆動可能な電動モータと、
前記電動モータに駆動用電力を供給するとともに、外部の給電装置により充電可能なバッテリーと、
前記給電装置側の給電用コネクタが接続可能な接続部と、
前記給電装置による充電状態を制御する制御装置と、
前記バッテリーの温度を検出する温度検出手段と、が備えられ、
前記制御装置は、前記温度検出手段にて検出される前記バッテリーの温度が設定温度以下であれば、前記バッテリーに対する充電に先立って、前記バッテリーが目標温度に上昇するまで前記バッテリーを温める昇温制御を実行するように構成されている電動作業車。
【請求項2】
前記制御装置が、前記昇温制御として、前記電動モータを回転駆動させる請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記電動モータの動力により駆動され、外部装置に動力を出力可能な動力取出し軸が備えられ、
前記制御装置が、前記昇温制御として、前記電動モータの動力により前記動力取出し軸を回転駆動させる請求項2に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記電動モータの動力を変速して車体走行装置に伝達する静油圧式無段変速装置が備えられ、
前記制御装置が、前記昇温制御として、前記電動モータの動力により前記静油圧式無段変速装置を作動させる請求項2又は3に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記バッテリーからの直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給するインバータと、
前記電動モータ及び前記インバータに設けられた冷却用経路を通して通流する冷媒を冷却するラジエータと、
前記ラジエータに送風する送風ファンと、が備えられ、
前記制御装置が、前記昇温制御として、前記送風ファンを作動させて、前記ラジエータを通過した冷却風を前記バッテリーに向けて通風させる請求項1から4のいずれか1項に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を走行駆動可能な電動モータと、電動モータに駆動用電力を供給するバッテリーとを備えた電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動作業車では、例えば、特許文献1に記載されるように、バッテリーの電力が消費されると、接続用コネクタを介して接続された外部の給電装置から充電が行われる。そして、充電を行う際には、外部の給電装置が接続され、充電開始が指令されると、すぐに充電が行われるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記バッテリーとしては、例えば大容量のリチウムイオンバッテリー等が用いられる。このようなバッテリーは、温度による影響を受け易く、温度が低いほど充電時にバッテリーに流すことができる最大充電電流が小さいという特性を有している。
【0005】
ところで、電動作業車が寒冷地において使用される場合においては、バッテリーに対する充電作業を開始する際に、外気温度が、例えば氷点下10度以下というような低温になっている場合がある。このように低温の環境においては、バッテリーに流すことができる最大充電電流が常温である場合に比べて小さい電流値に抑制される。
【0006】
従来では、外気温度が低温になっているときに、充電を行う場合には、外部の給電装置が接続され、充電開始が指令されると、すぐに充電作業が行われるので、充電電流が少なくなって充電に長い時間が必要となっていた。
【0007】
そこで、外気温度が低温になっているときであっても、バッテリーに対する充電を能率よく行えるようにすることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電動作業車の特徴構成は、車体を走行駆動可能な電動モータと、前記電動モータに駆動用電力を供給するとともに、外部の給電装置により充電可能なバッテリーと、前記給電装置側の給電用コネクタが接続可能な接続部と、前記給電装置による充電状態を制御する制御装置と、前記バッテリーの温度を検出する温度検出手段と、が備えられ、前記制御装置は、前記温度検出手段にて検出される前記バッテリーの温度が設定温度以下であれば、前記バッテリーに対する充電に先立って、前記バッテリーが目標温度に上昇するまで前記バッテリーを温める昇温制御を実行するように構成されている点にある。
【0009】
本発明によれば、バッテリーの温度が設定温度以下であるときに、バッテリーへの充電を行う場合には、制御装置は、充電に先立って、バッテリーが目標温度に上昇するまでバッテリーを温める昇温制御を実行する。
【0010】
昇温制御を実行することによってバッテリーの温度が目標温度以上まで上昇したのちに、給電装置による充電状態を制御してバッテリーに対する充電を行う。このようにバッテリーの温度が上昇することにより、バッテリーに流すことができる最大充電電流が低温状態であるときに比べて大きくなる。
【0011】
従って、外気温度が低温になっているときであっても、充電を開始した直後から大きな充電電流を流すことができるので、満充電にまで充電するための所要時間が短くなり、バッテリーに対する充電を能率よく行うことができる。
【0012】
本発明においては、前記制御装置が、前記昇温制御として、前記電動モータを回転駆動させると好適である。
【0013】
本構成によれば、制御装置はバッテリーから駆動用電力を電動モータに供給して、電動モータを回転駆動させる。このとき電動モータを駆動するためにバッテリーから駆動用の電流が流れるので、電流が流れることにより発生するジュール熱によってバッテリーの温度を上昇させることができる。
【0014】
本発明においては、前記電動モータの動力により駆動され、外部装置に動力を出力可能な動力取出し軸が備えられ、前記制御装置が、前記昇温制御として、前記電動モータの動力により前記動力取出し軸を回転駆動させると好適である。
【0015】
本構成によれば、電動モータを回転させるだけでなく、電動モータの動力により動力取出し軸を回転駆動させるので、バッテリーから電動モータに供給する駆動用の電流が電動モータだけを駆動するときよりも大きく、発生する熱量が大になり、バッテリーの温度上昇を早めることができる。
【0016】
本発明においては、前記電動モータの動力を変速して車体走行装置に伝達する静油圧式無段変速装置が備えられ、前記制御装置が、前記昇温制御として、前記電動モータの動力により前記静油圧式無段変速装置を作動させると好適である。
【0017】
本構成によれば、電動モータを回転させるだけでなく、電動モータの動力により静油圧式無段変速装置を作動させるので、バッテリーから電動モータに供給する駆動用の電流が電動モータだけを駆動するときよりも大きくなり、発生する熱量が大になり、バッテリーの温度上昇を早めることができる。
【0018】
本発明においては、前記バッテリーからの直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給するインバータと、前記電動モータ及び前記インバータに設けられた冷却用経路を通して通流する冷媒を冷却するラジエータと、前記ラジエータに送風する送風ファンと、が備えられ、前記制御装置が、前記昇温制御として、前記送風ファンを作動させて、前記ラジエータを通過した冷却風を前記バッテリーに向けて通風させると好適である。
【0019】
電動作業車が作業を実行するときは、バッテリーからの直流電力をインバータにより交流電力に変換して電動モータに供給して、電動モータが駆動される。このとき、電動モータやインバータにおいては電流が流れることにより熱が発生する。そこで、電動モータ及びインバータに設けられた冷却用経路を通して冷媒が通流するラジエータに送風ファンによる送風を行い、電動モータやインバータの温度を低減させる。
【0020】
外気温度が低いときにおいて、上記したような作業が行われたのち時間間隔をあけてバッテリーに充電を行う場合、外気温度の影響によりバッテリーの温度が低下することがある。
【0021】
そこで、本構成によれば、ラジエータ内において加熱されたまま残っている冷媒の熱を利用してバッテリーを加熱して温度上昇させるようにした。
【0022】
従って、作業時にインバータや電動モータにて発生する熱を有効に利用してバッテリーを温度上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0025】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本発明に係る電動作業車の一例としてのトラクタについて説明する。
図1に示すように、トラクタは、車体走行装置としての左右の前車輪10及び左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0026】
トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。
【0027】
カバー部材12は、機体前部に配置されている。そして、運転部3は、カバー部材12の後方に設けられている。言い換えれば、カバー部材12は、運転部3の前方に配置されている。
【0028】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。オペレータは、運転座席31に着座可能である。これにより、オペレータは、運転部3に搭乗可能である。ステアリングホイール32の操作によって、左右の前車輪10は操向操作される。オペレータは、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0029】
トラクタは、走行用バッテリー4を備えている。カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りに揺動可能に構成されている。これにより、カバー部材12は、開閉可能に構成されている。カバー部材12が閉状態であるとき、走行用バッテリー4は、カバー部材12に覆われている。
【0030】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14及び電動モータMを備えている。走行用バッテリー4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、走行用バッテリー4からの直流電力を交流電力に変換して電動モータMへ供給する。そして、電動モータMは、インバータ14から供給される交流電力により駆動する。
【0031】
図2及び
図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速装置15及びトランスミッション16を備えている。
図3に示すように、静油圧式無段変速装置15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0032】
油圧ポンプ15aは、電動モータMからの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。尚、静油圧式無段変速装置15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が変速されるように構成されている。静油圧式無段変速装置15は、変速比を無段階に変更可能に構成されている。
【0033】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0034】
図2及び
図3に示すように、トラクタは、動力取り出し軸としてのミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。電動モータMから出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。
【0035】
ミッドPTO軸17又はリヤPTO軸18に外部装置としての作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17又はリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。例えば、
図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
【0036】
〔モータの制御に係る構成〕
図4に示すように、電動モータMの制御に係る構成は、アクセル装置33と、電動モータMの作動を制御する制御装置34と、インバータ14と、を備えている。アクセル装置33は、ステアリングホイール32の近傍に備えられている。アクセル装置33は、図示はしないが、揺動操作可能なレバーと、レバーの揺動操作によって操作されるポテンショメータとを備えている。アクセル装置33は制御装置34と接続されている。制御装置34は、信号用ハーネス35を介してインバータ14と接続されている。制御装置34は、アクセル装置33の指令に応じて、インバータ14に指令するように構成されている。インバータ14は、制御装置34の指令に応じて、走行用バッテリー4から電動モータMに供給される電力を調整して電動モータMの出力を制御するように構成されている。
【0037】
〔充電に係る構成〕
図4に示すように、走行用バッテリー4は外部の給電装置KDにより充電可能である。トラクタには、給電装置KDの給電用コネクタ36が接続可能な充電用接続部37が備えられている。充電用接続部37は、カバー部材12の内部に備えられ、カバー部材12を揺動開放すると、外方に露出する。制御装置34は、電動モータMの作動を制御するとともに、給電装置KDによる充電状態を制御する。
【0038】
充電用接続部37は、一般的に使用される標準的な規格に準拠したものである。給電用コネクタ36が充電用接続部37に接続された状態で、電力供給線39を介して走行用バッテリー4に対する充電が行われる。走行用バッテリー4は、電力供給線39を介して高電圧(例えば、数十ボルト~数百ボルト)の電力をインバータ14、走行用電動モータMに供給する。
【0039】
走行用バッテリー4は、例えば、リチウムイオンバッテリーを用いて構成され、図示はしないが、低電圧の小型の単位電池(セル)を多数積層した状態で構成され、外側が収納ケースによって密閉状態で覆われて収納されている。従って、バッテリー内部に熱が籠り易く、内部温度が上昇すると温度が低下し難い。そこで、走行用バッテリー4には内部温度を検出する温度検出手段としての温度センサ40が備えられている。温度センサ40の検出情報は制御装置34に入力されている。
【0040】
トラクタには、走行用バッテリー4の他に、制御装置34及びその他の電装品に電力を供給する電装品用バッテリー41が備えられている。電装品用バッテリー41は、電装品を駆動するために低電圧(12ボルト)の電力を供給する。電装品用バッテリー41は、DC/DCコンバータ42を介して走行用バッテリー4から供給される電力にて充電される。
【0041】
運転部3に、制御装置34を動作可能状態と非作動状態とに切り換え可能な始動指令手段としての切換操作部44が備えられている。切換操作部44は、持ち運び可能な操作キー45が差し込み装着可能な被装着部としての差し込み部46と、手動にて押し操作可能な押しボタン式のスイッチ47とを備えている。操作キー45が差し込み部46に差し込み装着された状態で、スイッチ47が押し操作されることにより、制御装置34を非作動状態から動作可能状態に切り換えることができる。操作キー45は、一般的な車両用のキーと同様に、当該作業車でのみ識別可能な鍵として機能するものである。
【0042】
操作パネル43には、例えば、車体の走行状態、作業状態、バッテリーの情報(充電量や温度)等を表示するメータパネル48が備えられている。メータパネル48は、制御装置34に接続され、制御装置34にて作動が制御されている。
【0043】
制御装置34、インバータ14、走行用バッテリー4(温度センサ40も含む)、DC/DCコンバータ42、メータパネル48、及び、充電用接続部37等は、CAN(Controller Area Network)方式の信号用ハーネス35を介してデータを通信可能に接続されている。制御装置34は、充電通信用ハーネス49を介して充電用接続部37との間で通信が行われ、給電用コネクタ36が充電用接続部37に接続されているか否かについての情報、及び、作業車側で必要とされる充電電流の情報等が伝達される。充電用接続部37と給電装置KDとの間でも信号が通信可能に構成されている。又、制御装置34に切換操作部44の操作情報が入力される。
【0044】
〔充電のための制御〕
制御装置34は、給電用コネクタ36が充電用接続部37に接続されている状態で、動作可能状態に切り換えられると、充電モードに切り換わる。そして、充電モードにおいて、給電装置KDにより走行用バッテリー4への充電を行うように構成されている。
【0045】
そして、制御装置34は、温度センサ40にて検出される走行用バッテリー4の温度が設定温度Ts以下であれば、走行用バッテリー4に対する充電に先立って、走行用バッテリー4が目標温度Tmに上昇するまで走行用バッテリー4を温める昇温制御を実行するように構成されている。
【0046】
以下、
図5のフローチャートを参照しながら制御装置34の具体的な充電制御について説明する。
【0047】
走行用バッテリー4に対して充電を行う場合には、作業者が給電装置KDの給電用コネクタ36を充電用接続部37に接続する。次に、運転部3に備えられた切換操作部44において、操作キー45を差し込み部46に差し込み装着し、且つ、スイッチ47を押し操作する。制御装置34が、そのことを判別すると、充電モードに切り換わる(ステップ♯01、♯02、♯03)。
【0048】
充電モードになると、温度センサ40にて検出される走行用バッテリー4の内部温度Txが設定温度Ts以下であるか否かを判別する(ステップ♯04)。このとき、走行用バッテリー4の内部温度Txが設定温度Tsより高温であれば、すぐに、充電作動を開始し(ステップ♯08)、走行用バッテリー4の温度Txが設定温度Ts以下であれば、走行用バッテリー4に対する充電に先立って、電動モータMを回転駆動させることにより走行用バッテリー4を温める(ステップ♯05)。
【0049】
すなわち、電動モータMに駆動用電流を供給することにより、走行用バッテリー4の内部抵抗を電流が流れることによりジュール熱が発生して、走行用バッテリー4の温度が上昇する。設定温度Tsとしては、これ以上下がると、供給可能な電流値が非常に小さい値になるような温度、例えば、氷点下の低い温度に設定される。ステップ♯05の処理が昇温制御に対応する。
【0050】
上述したように、電動モータMの動力は、静油圧式無段変速装置15、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18に伝達される構成となっており、ステップ♯05において電動モータMを回転駆動させると、電動モータMの動力により静油圧式無段変速装置15を回転駆動させるとともに、電動モータMの動力によりミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を回転駆動させることになる。
【0051】
電動モータMに駆動用電流を供給して走行用バッテリー4を温める動作は、走行用バッテリー4の温度が目標温度Tm以上に上昇するまで継続する(ステップ♯06)。走行用バッテリー4の温度が目標温度Tm以上にまで上昇すると、電動モータMの作動を停止し(ステップ♯07)、給電装置KDから走行用バッテリー4に対する充電を開始する(ステップ♯08)。
【0052】
目標温度Tmとしては、供給可能な電流値が充電を効率よく行うことが可能な温度であればよい。すなわち、設定温度Tsと同じ温度に設定してもよいが、設定温度Tsより低い温度でもよく、設定温度Tsより高い温度でもよい。
【0053】
充電作動を開始したのちは、走行用バッテリー4が満充電状態にまで充電されると、充電作動を停止する(ステップ♯09、♯10)。
【0054】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、昇温制御において、電動モータMの動力により静油圧式無段変速装置15を回転駆動させ、且つ、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18に動力を伝達する構成としたが、この構成に代えて、電動モータMの動力により静油圧式無段変速装置15を回転駆動させ、且つ、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18に動力を伝達しない構成としてもよい。又、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を回転駆動させ、且つ、静油圧式無段変速装置15に動力を伝達しない構成としてもよい。さらに、電動モータMを回転駆動させる構成とし、静油圧式無段変速装置15、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18の夫々に動力を伝達しない構成としてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、昇温制御として、電動モータMを回転駆動させる構成としたが、この構成に代えて、あるいは、その構成に加えて、次のような構成としてもよい。
【0056】
すなわち、電動モータM及びインバータ14に設けられた冷却用経路を通して通流する冷媒を冷却するラジエータ50と、ラジエータ50に送風する送風ファン51と、が備えられ、制御装置34が、昇温制御として、送風ファン51を作動させて、ラジエータ50を通過した冷却風を走行用バッテリー4に向けて通風させる構成としてもよい。
【0057】
この作業車には、電動モータM、インバータ14、DC/DCコンバータ42等を冷却する冷却機構が備えられている。冷却機構は、
図6に示すように、ラジエータ50と、電動ポンプ52と、冷媒循環路53とを備える。電動モータM、インバータ14、DC/DCコンバータ42においては、ケーシング内に冷却用経路が形成され、それらが管路にて接続されて、冷媒循環路53が構成されている。電動ポンプ52にて冷媒を循環させて、熱を吸収した冷媒がラジエータ50にて送風ファン51による冷却作用を受けて冷却される。送風ファン51による風はオイルクーラ54にも作用する。オイルクーラ54は静油圧式無段変速装置15等の作動油を冷却する。
【0058】
そして、ラジエータ50及びオイルクーラ54は、走行用バッテリー4の前方に備えられ、送風ファン51による風は、ラジエータ50及びオイルクーラ54を通過したのち、走行用バッテリー4に向けて流動するように構成されている。
【0059】
外気温度が低温である場合、作業が行われたのちに走行用バッテリー4の温度が低下しないように、送風ファン51を作動させることで、ラジエータ50を通過した冷却風(冷媒によって加熱された温風)を走行用バッテリー4に向けて通風させ、冷媒の熱を利用して走行用バッテリー4を昇温させることができる。
【0060】
(3)上記実施形態では、昇温制御として、電動モータMを回転駆動させる構成としたが、この構成に代えて、あるいは、その構成に加えて、走行用バッテリー4の近くに、走行用バッテリー4を温めることが可能な専用の加熱手段(ヒータ等)を備えて、昇温制御として、加熱手段を作動させる構成としてもよい。
【0061】
(4)上記実施形態では、制御装置34は、給電用コネクタ36が充電用接続部37に接続されている状態で、動作可能状態に切り換えられると、充電モードに切り換わる構成としたが、この構成に代えて、制御装置34が予め動作可能状態に切り換えられたのちに、給電用コネクタ36が充電用接続部37に接続されると、充電モードに切り換わる構成としてもよい。
【0062】
(5)上記実施形態では、走行用バッテリー4が、外側が収納ケースにより密閉状態で覆われる構成としたが、このような構成に代えて、外側が開放された型式のバッテリーを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、トラクタに限らず、田植機、コンバイン、建設機械等、種々の電動作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
4 バッテリー
10 前車輪(車体走行装置)
11 後車輪(車体走行装置)
14 インバータ
17 ミッドPTO軸(動力取り出し軸)
18 リアPTO軸(動力取り出し軸)
34 制御装置
37 接続部
50 ラジエータ
51 送風ファン
M 電動モータ