(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113461
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20230808BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20230808BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02M7/12 U
H01F30/10 C
H01F30/12 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015853
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰訓
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA07
5H006CB01
5H006CC05
(57)【要約】
【課題】 多相の電圧を生成する変圧器を小型にすることが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】 変圧器1は、三相電源3が接続される1次側の第1巻線11と、2次側を構成してそれぞれ異なる三相電力を生成する第2巻線12及び第3巻線13とを有し、第1巻線11、第2巻線12はスター結線され、第3巻線13の3つの巻線は第2巻線12の中性点Qからそれぞれ73%の位置から分岐して形成され、分岐後の第3巻線13は、第2巻線12の73%の巻数で分岐基の第2巻線12とは異なる相の鉄心4にそれぞれ巻回されて三相を生成し、第2巻線12の各相の出力と合わせて6相の電圧が2次側から出力され、全波整流回路2で整流後は12相の正極波形となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器を使用して三相電力を多相電力に変換し、変換した多相電力を整流手段で整流して直流変換する電力変換装置であって、
前記変圧器は、三相電源が接続される1次側の第1巻線と、2次側を構成してそれぞれ異なる三相電力を生成する第2巻線及び第3巻線とが、相毎に異なる脚を有する共通の鉄心に巻回され、
前記第1巻線はデルタ結線或いはスター結線の何れかで結線される一方、前記第2巻線はスター結線されると共に、前記第3巻線の3つの巻線は前記第2巻線の個々の巻線の中性点から73%の位置からそれぞれ分岐して形成され、
分岐後の前記第3巻線は、前記第2巻線の73%の巻数で分岐基の前記第2巻線とは異なる相の鉄心にそれぞれ巻回されて三相を生成し、前記第2巻線の各相の出力と合わせて6相の電流が2次側から出力されることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電力を変圧器を使用して多相電力に変換した後、直流に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より高電圧の直流電力を得るために、三相交流を変圧器と整流器を使用して直流に変換する電力変換装置がある。
例えば特許文献1では、スター結線された1次巻線とスター結線された2次巻線とデルタ結線された3次巻線を備えた変圧器を使用し、1次巻線に三相交流電源を接続し、2次巻線と3次巻線とで計12相の電圧を生成して整流し、直流電力を生成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている電力変換装置の変圧器は、上述したように2次側にスター結線とデルタ結線の2つの巻線を設けることで12相の電圧を生成し、三相交流をそのまま整流する場合に比べてリップルの小さい電圧を得ることを可能とし、平滑化するための設備を簡素化できた。
しかしながら、変圧器2次側のデルタ結線、3次側のスター結線の2つの巻線は何れも同様の巻数であり巻回数も多いため、コアを小さくできず変圧器が大型なものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、多相の電圧を生成する変圧器を小型にすることが可能な電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、変圧器を使用して三相電力を多相電力に変換し、変換した多相電力を整流手段で整流して直流変換する電力変換装置であって、変圧器は、三相電源が接続される1次側の第1巻線と、2次側を構成してそれぞれ異なる三相電力を生成する第2巻線及び第3巻線とが、相毎に異なる脚を有する共通の鉄心に巻回され、第1巻線はデルタ結線或いはスター結線の何れかで結線される一方、第2巻線はスター結線されると共に、第3巻線の3つの巻線は第2巻線の個々の巻線の中性点から73%の位置からそれぞれ分岐して形成され、分岐後の第3巻線は、第2巻線の73%の巻数で分岐基の第2巻線とは異なる相の鉄心にそれぞれ巻回されて三相を生成し、第2巻線の各相の出力と合わせて6相の電流が2次側から出力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第3巻線は第2巻線の途中から分岐して形成されるため、巻線の一部を第2巻線に肩代わりさせることができ巻数を削減できる。よって、変圧器全体の巻数を削減でき小型化が可能となる。
また、第3巻線は第2巻線の中性点から73%の位置で分岐され、第2巻線の73%の巻数で分岐基の第2巻線とは異なる相の鉄心にそれぞれ巻回されることで、第2巻線と第3巻線とで、全波整流後の波形を30度位相がズレた全12相の波形にすることが可能であり、リップルの小さい直流を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
【
図2】
図1の変圧器の各相の電圧のベクトル説明図であり、(a)は1次巻線の相電圧、(b)は2次巻線である第2巻線及び第3巻線の相電圧を示している。
【
図3】2次側の線間電圧の説明図であり、(a)はベクトル図、(b)は波形図を示している。
【
図4】電力変換装置の他の形態を示す変圧器の結線説明図である。
【
図5】
図4の変圧器の2次側各相の電圧のベクトル図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る電力変換装置の一例を示す回路図であり、三相電源3から供給される三相電力を多相に変換する変圧器1と、変圧器1の2次側出力を整流する整流手段としての全波整流回路2とを有している。
変圧器1は、1次側巻線L1を構成する第1巻線11、2次側巻線L2を構成する第2巻線12、第3巻線13の3つの巻線を有し、何れも三相電力に対応するための3つの巻回部(11a~11c、12a~12c、13a~13c)を有し、何れもスター結線されている。但し、第3巻線13は、後述するように一部が第2巻線12と共通となっている。尚、三相をR相、S相、T相とし、
図1では左からR相、S相、T相として説明する。
【0010】
第1巻線11のR1,S1,T1の3端子(1次側端子)に三相電源3の各相が接続されている。また、第2巻線12は3つの出力端子(2次側端子)R2,S2,T2を備え、第3巻線13は3つの出力端子(2次側端子)R3,S3,T3を備え、それぞれ三相電力を出力する。
【0011】
各巻線が巻回される鉄心4は、三相電力を形成するための3本の脚4a~4cを有し、各巻線11,12,13の巻回部(11a~11c、12a~12c、13a~13c)は、この3本の脚4a~4cに相毎に巻回されている。
但し、第3巻線13は、第2巻線12の途中から分岐して形成されている。正確には、中性点Qから73%の位置で分岐され、分岐基の第2巻線12とは異なる相の鉄心脚に巻回して形成されている。
【0012】
具体的に、第3巻線13のR相の巻線13aは、第2巻線12のT相の巻線12cから分岐され、第3巻線13のS相の巻線13bは、第2巻線12のR相の巻線12aから分岐されている。そして、第3巻線13のT相の巻線13cは、第2巻線12のS相の巻線12bから分岐されている。
そして、第3巻線13は第2巻線12に比べて巻回数が少なく、第2巻線12と第3巻線13とは後述する理由により1:(√3-1)の比、即ち第3巻線13は第2巻線12に対して約73%の巻数で巻回されている。
【0013】
図2は、このように構成された変圧器1の各相に発生する電圧のベクトル図であり、(a)は1次側巻線L1の各相の電圧、(b)は2次側巻線L2の各相の電圧を示している。1次側(第1巻線11)のR相電圧V
R1、S相の電圧V
S1、T相の電圧V
T1、また2次側の第2巻線12のR相電圧V
R2、S相の電圧V
S2、T相の電圧V
T2は、互いに120度の位相差を有している。
一方3次巻線13のR相電圧V
R3、S相の電圧V
S3、T相の電圧V
T3は、第3巻線の各巻線が第2巻線から分岐されているため、
図2に示すように中性点Qは第2巻線12と共通となり、この第3巻線13は全体でスター結線となっている。
【0014】
更に、
図2(b)に示すように、第2巻線12から出力される三相の電圧V
R2、V
S2、V
T2、は1次側巻線L1と同相の電圧を生成するが、第3巻線13により生成される電圧V
R3、V
S3、V
T3は、第2巻線12の個々の相に対して120度進んだ電圧(或いは120度遅れた電圧)が生成される。
そして、第3巻線13単体の出力は、第2巻線12との巻線比により、出力される電圧は第2巻線12の73%となる。
【0015】
図3は、R2端子を基準にした場合のT2,T3端子に発生する電圧(端子間電圧)の説明図であり、(a)はベクトル図、(b)は波形図を示している。
この
図3を参照して、第3巻線13の第2巻線12の分岐位置73%、及び第2巻線に対する巻数比1:0.73とする理由を説明する。
図3では、R2-T3端子間電圧V
R1-T3の大きさが、R2-T2端子間電圧V
R2-T2の大きさに等しく且つ30度の位相差を有していることを示している。このような電圧を発生させるには、
図3に示すように第3巻線13の中性点Q-T3端子間電圧e
T3が、R2端子と180度の位相差があり、且つ発生電圧が第2巻線12に対して√3-1倍、即ち73%の大きさである必要がある。
そのために、第2巻線12に肩代わりさせている電圧のベクトルe
S2と、第3巻線13で発生する電圧V
S2-T3の絶対値を等しく、且つ大きさを第2巻線12の相電圧に対して73%としている。
【0016】
この結果、
図3に示すように、R2端子を基準にしたT2端子、T3端子の電圧は、絶対値が等しく、位相は30度ずれた波形となる。同様に、S2端子を基準としたR2,R3端子の電圧、T2を基準としたS2,S3端子の電圧も、互いに絶対値が等しく、位相は30度ずれた波形としている。
【0017】
このように生成された端子間電圧により、180度の位相の中で、それぞれ30度づつずれた位相の6波形が生成される。そのため、これら生成された電圧を全波整流すると、360度の位相の中で30度ずつずれた12相の正極性波形を生成でき、リップルの小さい直流を得ることが可能となる。
そして、第3巻線13は第2巻線12の途中から分岐して形成されるため、巻線の一部を第2巻線12に肩代わりさせることができ、巻数を削減できる。よって、変圧器1全体の巻数を削減でき小型化が可能となる。
【0018】
図4は、電力変換装置の他の形態を示し、上記形態とは変圧器1の構成が異なっている。第2巻線12から分岐された第3巻線13の巻回先が上記形態とは異なり、第2巻線12のS相から分岐された第3巻線13はR相の脚4aに巻回され、第2巻線12のT相から分岐された第3巻線13はS相の脚4bに巻回され、第2巻線12のR相から分岐され第3巻線13はT相の脚4cに巻回されている。尚、第3巻線13の第2巻線12からの分岐位置、第3巻線の巻回数は上記形態と同様である。
【0019】
図5は
図4の結線の場合の2次側巻線L2のベクトル説明図である。
図5に示すように、上記形態とは第3巻線13により生成される電圧V
R3、V
S3、V
T3の大きさは同一であるが、位相が120度異なっている。
第3巻線13により生成される電圧が、このような電圧位相であっても良く、2次側で発生する線間電圧は上記形態と同様であり、例えばR2端子を基準にしたT2端子、T3端子の電圧は互いに絶対値が等しく、位相は30度ずれた波形となる。
そして整流後の波形は、12相の正極性波形にでき、リップルの小さい直流を得ることが可能となる。
【0020】
尚、上記実施形態では、1次側巻線11をスター結線としているが、デルタ結線しても良い。
【符号の説明】
【0021】
1・・変圧器、2・・全波整流回路(整流手段)、3・・三相電源、4・・鉄心、11・・第1巻線、12・・第2巻線、13・・第3巻線、L1・・1次側巻線、L2・・2次側巻線。