(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113494
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】横補剛構造及び梁連結金物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20230808BHJP
E04B 5/40 20060101ALI20230808BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
E04B1/24 F
E04B5/40 A
E04B1/58 504F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015908
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】牛米 歩
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA14
2E125AA32
2E125AB01
2E125AB05
2E125AC15
2E125AG04
2E125AG12
2E125BA54
2E125BA55
2E125BB16
2E125BB22
2E125BC02
2E125BD01
2E125BF06
2E125CA05
2E125CA06
2E125CA14
2E125CA72
2E125CA91
(57)【要約】
【課題】重量を低減することができるとともに、床下空間を広く確保することができ、管理の観点からも多くの労力を要しない、横補剛構造を提供する。
【解決手段】梁材2と、梁材2上に配置されたデッキプレート3と、梁材2とデッキプレート3との間に配置された方杖部材6と、方杖部材6の下端部6bを、梁材2の下側フランジ部12に連結させる梁連結金物1と、を備え、方杖部材6の上端部6bはデッキプレート3に連結され、方杖部材6の下端部6aは梁連結金物1を介して梁材2の下側フランジ部12に連結されており、梁連結金物1は、梁材2のウェブ部13を中心とした下側フランジ部12の両上面と両側面、及び下面を覆い、その支圧効果を生じさせる構成とされており、方杖部材6の下端部6aは梁連結金物1の下側フランジ部12の一方の上面を覆う部分で連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材と、
前記梁材上に配置されたデッキプレートと、
前記梁材と前記デッキプレートとの間に配置された方杖部材と、
前記方杖部材の下端部を、前記梁材の下側フランジ部に連結させる梁連結金物と、を備え、
前記方杖部材の上端部は前記デッキプレートに連結され、前記方杖部材の下端部は前記梁連結金物を介して前記梁材の前記下側フランジ部に連結されており、
前記梁連結金物は、前記梁材のウェブ部を中心とした前記下側フランジ部の両上面と両側面、及び下面を覆い、その支圧効果を生じさせる構成とされており、
前記方杖部材の下端部は前記梁連結金物の前記下側フランジ部の一方の上面を覆う部分で連結されていること
を特徴とする横補剛構造。
【請求項2】
前記梁連結金物は、前記梁材の下側フランジ部の上側に配置される上側プレート部材と前記梁材の下側フランジ部の下側に配置される下側プレート部材とのそれぞれの端部同士が接合されてなること
を特徴とする請求項1に記載の横補剛構造。
【請求項3】
前記上側プレート部材と前記下側プレート部材とは、それぞれの一方の端部が延設された延設部を有し、これら延設部は、水平方向から角度を持たせて折り曲げられ、締結部材で固定して連結された支圧機構とされていること
を特徴とする請求項2に記載の横補剛構造。
【請求項4】
前記方杖部材の下端部から入力され得る力に対して前記梁材の横座屈を抑制可能なように、前記上側プレート部材及び前記下側プレート部材それぞれの必要な板要素と、前記締結部材の必要な要素と、前記延設部における水平方向からの必要な角度と、が設定されていること
を特徴とする請求項3に記載の横補剛構造。
【請求項5】
前記梁材の前記下側フランジ部の上面と前記上側プレート部材との間に、両者の間隔を埋める厚さのスペーサーが設けられていること
を特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の横補剛構造。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の横補剛構造に用いられる前記梁連結金物であること
を特徴とする梁連結金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横補剛構造、及びこの横補剛構造に用いられる梁連結金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向に延びる梁材と、梁材上に配置されたデッキプレートと、を有する床構造として、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。この特許文献1に開示された従来技術では、大梁に対して、小梁が設けられている。さらに、この特許文献1に開示された従来技術では、大梁と小梁との間に孫梁を架け渡すことによって、梁材の横座屈などを抑制するための横補剛構造を実現している。
【0003】
また、例えば、特許文献2,3には、梁に高力ボルトを用いて接合部材を摩擦接合する従来技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-290684号公報
【特許文献2】特開2019-031890号公報
【特許文献3】特開2008-002268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術のように、一対の梁材間に孫梁のような横補剛材を架け渡した場合、当該横補剛材のスパンが長くなってしまうことにより、床構造全体の重量が大きくなるという問題が生じる。また、この特許文献1に開示された従来技術では、このような横補剛材が、床下空間において一対の梁材間に橋渡し形式で設けられるので、床下空間を通る配管やダクトの配置等に制約が生じる場合が想定されるという問題もある。
【0006】
また、特許文献2,3に開示された従来技術のような高力ボルトを用いた摩擦接合とする場合、力学的に摩擦接合を成立させるためには、赤錆やブラスト処理等の摩擦面処理を要し一定のすべり係数を確保する必要があり、管理の観点から多くの労力を要するという問題がある。
【0007】
また、特許文献3に開示された従来技術のような接合部材を組み合わせで構成する場合、接合部材の組み合わせる構成要素の曲げ耐力や剛性が小さいため、構造強度が必要な部位では構成要素の板厚が過大となってしまい、その分、梁の重量が大きくなってしまい、ひいては、床構造全体の重量が大きくなるという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、重量を低減することができるとともに、床下空間を広く確保することができ、管理の観点からも多くの労力を要しない、横補剛構造、及びこの横補剛構造に用いられる梁連結金物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る横補剛構造は、梁材と、前記梁材上に配置されたデッキプレートと、前記梁材と前記デッキプレートとの間に配置された方杖部材と、前記方杖部材の下端部を、前記梁材の下側フランジ部に連結させる梁連結金物と、を備え、前記方杖部材の上端部は前記デッキプレートに連結され、前記方杖部材の下端部は前記梁連結金物を介して前記梁材の前記下側フランジ部に連結されており、前記梁連結金物は、前記梁材のウェブ部を中心とした前記下側フランジ部の両上面と両側面、及び下面を覆い、その支圧効果を生じさせる構成とされており、前記方杖部材の下端部は前記梁連結金物の前記下側フランジ部の一方の上面を覆う部分で連結されていることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る横補剛構造は、第1発明において、前記梁連結金物は、前記梁材の下側フランジ部の上側に配置される上側プレート部材と前記梁材の下側フランジ部の下側に配置される下側プレート部材とのそれぞれの端部同士が接合されてなることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る横補剛構造は、第2発明において、前記上側プレート部材と前記下側プレート部材とは、それぞれの一方の端部が延設された延設部を有し、これら延設部は、水平方向から角度を持たせて折り曲げられ、締結部材で固定して連結された支圧機構とされていることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る横補剛構造は、第3発明において、前記方杖部材の下端部から入力され得る力に対して前記梁材の横座屈を抑制可能なように、前記上側プレート部材及び前記下側プレート部材それぞれの必要な板要素と、前記締結部材の必要な要素と、前記延設部における水平方向からの必要な角度と、が設定されていることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る横補剛構造は、第2発明~第4発明の何れかにおいて、前記梁材の前記下側フランジ部の上面と前記上側プレート部材との間に、両者の間隔を埋める厚さのスペーサーが設けられていることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る梁連結金物は、第1発明~第5発明の何れかに係る横補剛構造に用いられる前記梁連結金物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明~第5発明に係る横補剛構造によれば、一対の梁材間に孫梁のような横補剛材を架け渡す必要がなく、梁連結金物の板厚を過大とする必要もないので、重量を低減することができるとともに、床下空間を広く確保することができる。さらに、第1発明~第4発明に係る横補剛構造によれば、赤錆やブラスト処理等の摩擦面処理を必要としないので、管理の観点からも多くの労力を要しない。
【0016】
特に、第2発明に係る横補剛構造によれば、梁連結金物は、梁材の下側フランジ部の上側に配置される上側プレート部材と梁材の下側フランジ部の下側に配置される下側プレート部材とのそれぞれの端部同士が接合されてなるので、梁連結金物を梁材に容易に取り付けることができる。
【0017】
特に、第3発明に係る横補剛構造によれば、上側プレート部材と下側プレート部材とは、それぞれの一方の端部が延設された延設部を有し、これら延設部は、水平方向から角度を持たせて折り曲げられ、締結部材で固定して連結された支圧機構とされているので、摩擦面処理を必要としない支圧接合であるボルト接合とすることができる。
【0018】
特に、第4発明に係る横補剛構造によれば、方杖部材の下端部から入力され得る力に対して梁材の横座屈を抑制可能なように、上側プレート部材及び下側プレート部材それぞれの必要な板要素と、締結部材の必要な要素と、延設部における水平方向からの必要な角度と、が設定されているので、簡易な構成で、梁連結金物の板厚を過大にしなくて済む。
【0019】
特に、第5発明に係る横補剛構造によれば、梁材の下側フランジ部の上面と上側プレート部材との間に、両者の間隔を埋める厚さのスペーサーが設けられているので、梁材の下側フランジ部の板厚が異なる場合も、スペーサーが板厚調整の役割をするため、同一サイズの梁連結金物を用いることができる。
【0020】
第6発明に係る梁連結金物によれば、上述した第1発明~第5発明の何れかに係る横補剛構造の効果を奏するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造の概略構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造の概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の上部構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を斜め上から示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を正面下から示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を斜め下から示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を斜め横から示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を正面斜め上から示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を裏側斜め上から示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を裏側斜め下から示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態2に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態2に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を示す斜視図である。
【
図13】
図13(a)及び
図13(b)は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における梁連結金物付近の構造を示す模式図である。
【
図14】
図14(a)及び
図14(b)は、本発明の実施形態2に係る横補剛構造における梁連結金物付近の構造を示す模式図である。
【
図15】
図15(a)は、ボルトのみが引張降伏する際の模式図であり、
図15(b)は、梁材及びボルトがともに降伏する際の模式図であり、
図15(c)は、梁材のみが曲げ降伏する際の模式図である。
【
図16】
図16は、梁材と梁連結金物の上側プレート部材との関係性を示す模式図である。
【
図17】
図17(a)~
図17(c)は、せん断力に対する梁連結金物の上側プレート部材又はボルトの降伏パターンを示す模式図である。
【
図18】
図18(a)~
図18(f)は、延設部の角度毎の梁せいに対する梁連結金物の上側プレート部材の必要な板厚を示すグラフである。
【
図19】
図19(a)及び
図19(b)は、せん断力に対する梁連結金物の下側プレート部材又はボルトの降伏パターンを示す模式図である。
【
図20】
図20は、引張力に対する梁連結金物の下側プレート部材の軸降伏パターンを示す模式図である。
【
図21】
図21(a)~
図21(o)は、延設部の各角度において、下側プレート部材の板厚毎の梁せいに対する梁連結金物の下側プレート部材に設ける下側のリブの必要な板厚を示すグラフである。
【
図22】
図22(a)~
図22(o)は、延設部の各角度において、下側プレート部材の板厚毎の梁せいに対する梁連結金物の下側プレート部材に設ける下側のリブの必要な板厚を示すグラフである。
【
図23】
図23は、本発明のその他の実施形態に係る横補剛構造の概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
[実施形態1]
先ず、本発明の実施形態1に係る横補剛構造及び梁連結金物について説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造の概略構成を示す縦断面図である。
図2は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造の概略構成を示す平面図である。
図3は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の上部構造を示す斜視図である。
図4~
図10は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を示す斜視図である。
【0025】
本発明に係る横補剛構造100は、
図1及び
図2に示すように、梁材2と、梁材2上に配置されたデッキプレート3と、デッキプレート3に打設されたコンクリート4と、梁材2とデッキプレート3との間に配置された方杖部材6と、方杖部材6の下端部6bを、梁材2の下側フランジ部12に連結させる梁連結金物1と、を備えている。
【0026】
梁材2は、水平方向に延びる部材である。梁材2は、H型鋼によって構成されており、上端側で左右に広がる上側フランジ部11と、下端側で左右に広がる下側フランジ部12と、これらの間で上下方向に延びるウェブ部13と、を有している。そして、梁材2の上側フランジ部11、下側フランジ部12、及びウェブ部13は長さ方向に延びる。
【0027】
なお、各図中において、水平方向における一の方向をX軸方向とし、水平方向においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。この場合、
図2に示すように、横補剛構造100は、Y軸方向に延びる梁材2A,2Bと、X軸方向に延びる梁材2C,2Dと、を備える。梁材2A,2Bは、X軸方向に互いに離間した状態で対向するように配置されている。梁材2AはX軸方向の負側に配置され、梁材2BはX軸方向の正側に配置されている。梁材2C,2Dは、Y軸方向に互いに離間した状態で対向するように配置される。梁材2CはY軸方向の負側に配置され、梁材2DはY軸方向の正側に配置されている。梁材2Aと梁材2Cとの間には柱材7Aが設けられている。梁材2Aと梁材2Dとの間には柱材7Bが設けられている。梁材2Bと梁材2Cとの間には柱材7Cが設けられている。梁材2Bと梁材2Dとの間には柱材7Dが設けられている。
【0028】
また、この実施形態1では、X軸方向に対向する一対の梁材2A,2B間の中途位置に、Y軸方向に延びる補強用の梁材2E,2Fが設けられている。梁材2E,2Fは、X軸方向において他の梁材と離間した位置にて、梁材2C,2D間に架け渡されている。なお、梁材2C,2Dと梁材2Cとの接合部付近には、方杖部材8が設けられている。また、梁材2C,2Dと梁材2Dとの接合部付近にも、方杖部材8が設けられている。この方杖部材8は、上端部が梁材2E,2Fの下面に連結されている点以外は、後述の方杖部材6と同様な構造である。
【0029】
デッキプレート3は、梁材2上に配置される板状の部材である。デッキプレート3は、
図1に示すように、梁材2の上側フランジ部11の上面に配置される。また、デッキプレート3は、
図2に示すように、長方形をなしており、四方の辺部を梁材2A,2B,2C,2Dによって支持されている。さらに、デッキプレート3は、図示は省略したが、Y軸方向に山部と谷部とを交互に有している。山部は、谷部の底面から上方へ向かって突出するように設けられる。複数の山部は、互いにY軸方向に離間した状態で、X軸方向に互いに平行をなすように延びている。また、複数の谷部は、互いにY軸方向に離間した状態で互いに平行をなすように延びている。さらに、デッキプレート3は、図示しない上壁部と、底壁部3dと、側壁部3eと、を有している。なお、側壁部3eは、図示しない上壁部と底壁部3dとを連結する壁部である。この場合、図示しない上壁部、側壁部3eによって山部が構成される。底壁部3d、側壁部3eによって谷部が構成される(
図3を参照)。
【0030】
コンクリート4は、
図1に示すように、デッキプレート3の上面側に打設される。コンクリート4は、デッキプレート3の谷部の内部に充填された状態で、山部の上面よりも高い位置まで充填される。このように、デッキプレート3に対してコンクリート4が打設されることで、床スラブ10が構成されている。なお、
図2においては、コンクリート4の図示を省略した。
【0031】
方杖部材6は、梁材2とデッキプレート3との間に配置される部材である。方杖部材6の下端部6aは梁材2に連結され、方杖部材6の上端部6bはデッキプレート3に連結される。方杖部材6は、梁材2とデッキプレート3との間の角部付近において、斜め上方に直線状に延びる部材である。方杖部材6の下端部6aは、下側フランジ部12付近に連結されている。方杖部材6の下端部6aは、ウェブ部13よりもデッキプレート3側(
図1においてX軸方向の正側)の位置に連結される。方杖部材6の上端部6bは、デッキプレート3の下面のうち、梁材2から離間した位置に連結されている。これにより、デッキプレート3は、梁材2に対する横補剛材として機能することができる。また、方杖部材6は、デッキプレート3を補強することができる。
【0032】
この実施形態1では、方杖部材6は、
図2に示すように、梁材2AからX軸方向の正側に延びるように設けられている。また、方杖部材6は、梁材2Aには、Y軸方向に互いに離間するように、複数箇所(3箇所)に設けられている。方杖部材6は、梁材2BからX軸方向の負側に延びるように設けられている。また、方杖部材6は、梁材2Bには、Y軸方向に互いに離間するように、複数箇所(3箇所)に設けられている。
【0033】
図3及び
図4~
図10を用いて、方杖部材6の構造について更に詳細に説明する。
【0034】
一箇所の横補剛箇所には、
図3及び
図4~
図10に示すように、一対の方杖部材6A,6Bが設けられている。方杖部材6A,6Bは、コ字状の断面を有した状態で長さ方向に延びる鋼材である。方杖部材6A,6Bは、底壁部6cと、当該底壁部6cから立ち上がる一対の側壁部6d,6eを有している。方杖部材6Aの底壁部6cと方杖部材6Bの底壁部6cとは、互いにY軸方向に対向するように配置される。また、方杖部材6Aの側壁部6d,6eと、方杖部材6Bの側壁部6d,6eとは、Y軸方向において互いに反対側へ突出する。なお、方杖部材6A,6Bの断面形状は特に限定されるものではない。また、方杖部材6は必ずしも二つの部材から構成される必要もなく、構成材料の数量は適宜変更可能である。例えば、H型鋼等によって方杖部材6を構成してもよい。
【0035】
方杖部材6A,6Bの上端部6bは、
図3に示すように、上側連結金物20を介してデッキプレート3に連結される。この実施形態1においては、上側連結金物20は、ボルト21及びナット21aによってデッキプレート3に固定される。また、方杖部材6A,6Bの上端部6bは、ボルト22によって上側連結金物20に固定される。これによって、方杖部材6A,6Bの上端部6bは、ボルト22、上側連結金物20、ボルト21及びナット21aを介してデッキプレート3に連結される。
【0036】
上側連結金物20は、デッキプレート3に固定される本体部24と、方杖部材6A,6Bを固定する固定片26と、を有している。本体部24は、デッキプレート3の底壁部3dの下面に固定される板状の部材によって構成される。本体部24は、デッキプレート3の底壁部3dと平行をなすように広がる。デッキプレート3の底壁部3d及び本体部24には、ボルト21を挿通させるための貫通孔が形成されている。従って、各貫通孔にボルト21を挿通させて締結することで、本体部24は、デッキプレート3の底壁部3dに固定される。なお、ボルト21は、デッキプレート3の底壁部3dから上方へ延びるように配置される。これにより、コンクリート4が打設された際、
図1に示すように、ボルト21は床スラブ10と一体化する。
【0037】
固定片26は、本体部24の下面から下方へ向かって延びる板状の部材によって構成される。固定片26は、方杖部材6A,6Bの底壁部6cと平行をなすように広がる。方杖部材6Aの底壁部6cと方杖部材6Bの底壁部6cとは、固定片26を挟み込む。また、方杖部材6Aの底壁部6c、方杖部材6Bの底壁部6c、及び固定片26には、ボルト22を挿通するための貫通孔が形成されている。従って、各貫通孔にボルト22を挿通させて締結することで、方杖部材6Aの底壁部6c及び方杖部材6Bの底壁部6cは、固定片26を挟み込んだ状態で当該固定片26に固定される。
【0038】
方杖部材6A,6Bの下端部6aは、
図1及び
図4~
図10に示すように、後述の梁連結金物1の上側プレート部材1Aに設けられた上側のリブ1bに連結されている。具体的には、方杖部材6Aの底壁部6cと方杖部材6Bの底壁部6cとは、リブ1bを挟み込む。また、方杖部材6Aの底壁部6c、方杖部材6Bの底壁部6c、及びリブ1bには、ボルト17を挿通するための図示しない貫通孔が形成されている。これにより、各図示しない貫通孔にボルト17を挿通させてナット17aを螺合して締結することで、方杖部材6Aの底壁部6c及び方杖部材6Bの底壁部6cは、リブ1bを挟み込んだ状態でこのリブ1bに固定される。なお、ボルト17は、上下方向ではなく、この上下方向と直交する横方向に延びた状態で、方杖部材6A,6Bに挿入されるように設けられている。これにより、一本のボルト17を支点として方杖部材6A,6Bを回転させることができる。他方のボルト17に対する図示しない貫通孔は、このボルト17が相対移動できるように、長孔としてもよい。この場合、方杖部材6A,6Bを回転させることで、デッキプレート3に対する上端部6bの取付位置を調整することができる。
【0039】
梁連結金物1は、
図4~
図10に示すように、上側プレート部材1Aと下側プレート部材1Bとのそれぞれの端部同士が接合されてなる。すなわち、梁連結金物1は、梁材2のウェブ部13を中心とした下側フランジ部12の両上面と両側面、及び下面を覆い、その支圧効果によって、下側フランジ部12の変形を抑制する構成とされている。なお、この支圧効果とは、下側フランジ部12と梁連結金物1との接触反力に対して、梁連結金物1の板要素(上側プレート部材1A及び下側プレート部材1Bの板要素)の軸引張抵抗により下側フランジ部12の変形を抑制する効果を意味する。より具体的には、この梁連結金物1では、上側プレート部材1Aと下側プレート部材1Bとは、それぞれの一方の端部が延設された延設部1A-3と1B-2を有し、これら延設部1A-3,1B-2は、水平方向から角度θを持たせて折り曲げられ、ボルト16及びナット16aで固定して連結された支圧機構とされている(
図13(a)及び
図13(b)も参照)。
【0040】
上側プレート部材1Aは、梁材2のウェブ部13を中心とした下側フランジ部12の一方の上面を覆う部分1A-1と、梁材2の下側フランジ部12の一方の側面を覆う部分1A-2と、延設部1A-3と、を有している。そして、梁材2の下側フランジ部12のウェブ部13を中心とした一方の上面を覆う部分1A-1の中間部分には、上述した上側のリブ1bがX軸方向に延びるように略垂直に立設されている。なお、このリブ1bの形状は、図示した三角形状に限定されない。
【0041】
下側プレート部材1Bは、梁材2の下側フランジ部12の下面を覆う部分1B-1と、延設部1B-2と、梁材2の下側フランジ部12のウェブ部13を中心とした他方の側面を覆う部分1B-3と、梁材2の下側フランジ部12のウェブ部13を中心とした他方の上面を覆う部分1B-4と、を有している。そして、梁材2の下側フランジ部12の下面を覆う部分1B-1及び延設部1B-2の中間部分には、下側のリブ1cがX軸方向に延びるように略垂直に垂設されている。なお、このリブ1cの形状は、図示した三角形状に限定されない。また、このリブ1cは、複数設けてもよい。
【0042】
そして、この梁連結金物1では、方杖部材6の下端部6aから入力され得る力に対して梁材2の横座屈を抑制可能なように、上側プレート部材1A及び下側プレート部材1Bそれぞれの必要な板要素と、ボルト16及びナット16aの必要な要素と、延設部1A-3,1B-2における水平方向からの必要な角度θと、が設定されている。なお、具体的な詳細については、後述の実施例で説明する。
【0043】
以上説明した本発明の実施形態1に係る横補剛構造100によれば、
図1に二点鎖線で示したように、一対の梁材2間に孫梁のような横補剛材80を架け渡す必要がなく、梁連結金物1の板厚を過大とする必要もないので、重量を低減することができるとともに、床下空間SPを広く確保することができる。さらに、この実施形態1に係る横補剛構造100によれば、赤錆やブラスト処理等の摩擦面処理を必要としないので、管理の観点からも多くの労力を要しない。
【0044】
また、この実施形態1に係る横補剛構造100によれば、梁連結金物1は、梁材2の下側フランジ部12の上側に配置される上側プレート部材1Aと梁材2の下側フランジ部12の下側に配置される下側プレート部材1Bとのそれぞれの端部同士が接合されてなるので、梁連結金物1を梁材2に容易に取り付けることができる。
【0045】
また、この実施形態1に係る横補剛構造100によれば、上側プレート部材1Aと下側プレート部材1Bとは、それぞれの一方の端部が延設された延設部1A-3,1B-2を有し、これら延設部1A-3,1B-2は、水平方向から角度θを持たせて折り曲げられ、ボルト16及びナット16aで固定して連結された支圧機構とされているので、摩擦面処理を必要としない支圧接合であるボルト接合とすることができる。
【0046】
さらに、この実施形態1に係る横補剛構造100によれば、方杖部材6の下端部6aから入力され得る力に対して梁材2の横座屈を抑制可能なように、上側プレート部材1A及び下側プレート部材1Bそれぞれの必要な板要素と、ボルト16及びナット16aの必要な要素と、延設部1A-3,1B-2における水平方向からの必要な角度θと、が設定されているので、簡易な構成で、梁連結金物1の板厚を過大にしなくて済む。
【0047】
また、この実施形態1に係る梁連結金物1によれば、上述したこの実施形態1に係る横補剛構造100の効果を奏するようにすることができる。
【0048】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2に係る横補剛構造について説明する。
【0049】
図11は、本発明の実施形態2に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を示す斜視図である。
図12は、本発明の実施形態2に係る横補剛構造における方杖部材付近の下部構造を示す斜視図である。
【0050】
この実施形態2に係る横補剛構造が、上述の実施形態1に係る横補剛構造100と相違する点は、梁材2の下側フランジ部12の上面と上側プレート部材1Aとの間に、両者の間隔を埋める厚さのスペーサー18が設けられていることなので、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0051】
この実施形態2に係る横補剛構造は、
図11及び
図12に示すように、梁材2の下側フランジ部12の上面と上側プレート部材1Aとの間に、両者の間隔を埋める厚さのスペーサー18が設けられ、このスペーサー18は、ワッシャー14を介して、ボルト15により、上側プレート部材1Aに固定されている。
【0052】
このため、本発明の実施形態2に係る横補剛構造によれば、梁材2の下側フランジ部12の上面と上側プレート部材1Aとの間に、両者の間隔を埋める厚さのスペーサー18が設けられているので、梁材2の下側フランジ部12の板厚が異なる場合も、スペーサー18が板厚調整の役割をするため、同一サイズの梁連結金物1を用いることができる。
【0053】
[実施例]
次に、
図13~
図22を用いて、本発明の実施例に係る横補剛構造について説明する。
【0054】
図13(a)及び
図13(b)は、本発明の実施形態1に係る横補剛構造における梁連結金物付近の構造を示す模式図である。
図14(a)及び
図14(b)は、本発明の実施形態2に係る横補剛構造における梁連結金物付近の構造を示す模式図である。
【0055】
先ず、上側プレート部材1A又はボルト16が降伏するパターンは、
図15(a)に示すように、ボルト16のみが引張降伏する際と、
図15(b)に示すように、上側プレート部材1A及びボルト16がともに降伏する際と、
図15(c)に示すように、上側プレート部材1Aのみが曲げ降伏する際と、に大別される。なお、
図16は、梁材2と梁連結金物1の上側プレート部材1Aとの関係性を示す模式図である。
【0056】
ここで、
図16の模式図を用い、梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16の軸方向力に対する設計は、
図15(a)~
図15(c)に示した3パターンを考慮し、各々のパターンに対して、降伏耐力と最大耐力を作用する軸方向力以上確保するように設計する。但し、上述のように曲げ加工を施していることから、上側プレート部材1Aの断面係数は通常の平らなものと異なり、やや大きくなり、下側フランジ部12の板厚は考慮せず、算定する。
【0057】
また、
図17(a)~
図17(c)を用い、梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16のせん断力に対する設計は、せん断力に対する梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16の降伏パターンを考慮し、各々のパターンに対して、降伏耐力と最大耐力を作用するせん断力以上確保するように行う。具体的には、
図17(a)に示すボルト16のせん断降伏、
図17(b)に示す上側プレート部材1Aの有効断面降伏、及び
図17(c)に示す上側プレート部材1Aの端抜けを考慮する。
【0058】
より具体的には、以下の(式1)及び(式2)で示す保有耐力接合を満足することを確認する。
【0059】
軸方向力:min{Nu1,Nu2,Nu3} ≧ α×min{Ny1,Ny2,Ny3}(式1)
但し、Nu1,Nu2,Nu3は、梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16が保有する軸方向力であり、Ny1,Ny2,Ny3は、梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16が降伏する際の軸方向力である。なお、αは、接合部係数である。
【0060】
せん断力:min{Qu1,Qu2,Qu3} ≧ α×min{Qy1,Qy2,Qy3}(式2)
但し、Qu1,Qu2,Qu3は、梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16が保有するせん断力であり、Qy1,Qy2,Qy3は、梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16が降伏する際のせん断力である。なお、αは、接合部係数である。
【0061】
次に、梁連結金物1の延設部1A-3,1B-2の角度θ毎の梁材2の梁せいに対する梁連結金物1の上側プレート部材1Aの必要な板厚を算出したところ、
図18(a)~
図18(f)に示すグラフとなった。なお、
図18(a)~
図18(c)では、梁材2に、梁幅200mmの細幅系列のものを用い、
図18(d)~
図18(f)では、梁材2に、梁幅300mmの中幅系列のものを用いた。また、ボルト16は、
図18(a)では径12mm、
図18(b)では径16mm、
図18(c)では径20mm、
図18(d)では径12mm、
図18(e)では径16mm、
図18(f)では径20mmのものをそれぞれ用いた。
【0062】
すなわち、上側プレート部材1Aについて、以下のような詳細なことが分かった。
【0063】
(上側プレート部材1Aの板厚t1算定結果)
上述の検討より算出した上側プレート部材1Aの必要な板厚は、以下の通りであった。
細幅系列において,ボルト16の径φを問わず曲げ角度θに反比例して上側プレート部材(エンドプレート)1Aの板厚t1が増加する傾向が確認できる。また、ボルト16の径φが大きいほど曲げ角度θの影響は小さくなり、上側プレート部材1Aの板厚t1が2mm付近に収束する傾向が確認できる。ボルト16の径がφ=12mmの場合、上側プレート部材1Aの板厚t1が薄板(t1≦4.5mm)の範囲に収まるのは曲げ角度θが75°以上のときである。ボルト17の径がφ=16 mm及び20mmの場合,全ての範囲で上側プレート部材1Aの板厚t1が薄板(t1≦4.5mm)の範囲に収まることが確認できる。
中幅系列において、ボルト16の径φを問わず曲げ角度θ=30°を極大値として上側プレート部材1Aの板厚t1が減少する傾向が確認できる。また、ボルト16の径φが大きいほど曲げ角度θの影響は小さくなり、細幅系列ほど顕著ではないものの上側プレート部材1Aの板厚t1が2mm付近に収束する傾向が確認できる。ボルト16の径がφ=12 mmの場合、上側プレート部材1Aの板厚t1が薄板(t1≦4.5mm)の範囲に収まるのは曲げ角度θが75°以上のときである。ただし,梁せいBが700mm程度を超えると上側プレート部材1Aの板厚t1を問わず保有耐力接合条件を満足せず適用範囲外となる。ボルト16の径がφ=16mmの場合、上側プレート部材1Aの板厚t1が薄板(t1≦4.5mm)の範囲に収まるのは曲げ角度θが90°のときである。ボルト16の径がφ=20 mmの場合、上側プレート部材1Aの板厚t1が薄板(t1≦4.5mm)の範囲に収まるのは曲げ角度θが15°及び75°以上のときである。
以上より、上側プレート部材1Aの板厚最適化条件は,ボルト16の径φを問わず、以下の範囲で全ての梁せいBに対して上側プレート部材1Aの板厚t1(薄板t≦4.5mmの範囲内)を決定する。
・細幅系列:ボルト16の径φ=12 mmのとき、曲げ角度θ=75°以上の範囲
ボルト16の径φ=16 mmのとき、曲げ角度θは全ての範囲
ボルト16の径φ=20 mmのとき、曲げ角度θは全ての範囲
・中幅系列:ボルト16の径φ=12 mmのとき、曲げ角度θ=75°以上の範囲(保有耐力接合を満足しない範囲は除外)
ボルト16の径φ=16 mmのとき、曲げ角度θ=90°
ボルト16の径φ=20 mmのとき、曲げ角度θ=15°、θ=75°以上の範囲
但し、梁せいBが小さい範囲では上記の曲げ角度θ以外の範囲でも上側プレート部材1Aの板厚t1を薄板の範囲で設計可能であり、例えば、中幅系列において、梁せいB=700mm以下に限定する場合は、以下の板厚最適化条件となる。
・中幅系列:ボルト16の径φ=12mmのとき、曲げ角度θ=75°以上の範囲(保有耐力接合を満足しない範囲は除外)
ボルト16の径φ=16mmのとき、曲げ角度θ=60°
ボルト16の径φ=20mmのとき、曲げ角度θ=15°、θ=45°以上の範囲
【0064】
次に、軸方向力に対する梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16が降伏するパターンは、
図19(a)に示すボルト17が引張降伏するパターンと、
図19(b)に示す延設部1B-2の曲げ変形で降伏するパターンと、の2パターンがある。
【0065】
ここで、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16の軸方向力に対する設計は、
図19(a)及び
図19(b)に示した2パターンを考慮し、各々のパターンに対して、降伏耐力と最大耐力を作用する軸方向力以上確保するように設計する。なお、
図19(b)に示したパターンは、薄板である下側プレート部材1Bの曲げ剛性と曲げ耐力を増大させるために曲げ角度θを調整し、下側のリブ1cの高さを確保することで断面性能を確保する。
【0066】
また、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16の引張力に対する設計は、
図20に示すように、支圧により下側プレート部材1Bには引張力が生じる。
図20に示した引張力による降伏パターンに対して、降伏耐力と最大耐力を作用する軸方向力の分力以上確保するように行う。
【0067】
また、梁連結金物1の上側プレート部材1A又はボルト16のせん断力に対する設計は、下側プレート部材1B又はボルト16のせん断力に対する設計と同様である。
【0068】
より具体的には、以下の(式3)、(式4)及び(式5)で示す保有耐力接合を満足することを確認する。
【0069】
軸方向力:min{Nu1,Nu2} ≧ α×min{Ny1,Ny2}(式3)
但し、Nu1,Nu2は、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16が保有する軸方向力であり、Ny1,Ny2は、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16が降伏する際の軸方向力である。なお、αは、接合部係数である。
【0070】
軸方向分力:Tu1 ≧ α×Ty1(式4)
但し、Tu1は、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16が保有する軸方向分力であり、Ty1は、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16が降伏する際の軸方向分力である。なお、αは、接合部係数である。
【0071】
せん断力:min{Qu1,Qu2,Qu3} ≧ α×min{Qy1,Qy2,Qy3}(式5)
但し、Qu1,Qu2,Qu3は、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16が保有するせん断力であり、Qy1,Qy2,Qy3は、梁連結金物1の下側プレート部材1B又はボルト16が降伏する際のせん断力である。なお、αは、接合部係数である。
【0072】
次に、梁連結金物1の延設部1A-3,1B-2の角度θ毎の梁材2の梁せいに対する梁連結金物1の下側プレート部材1B及びリブ1cの必要な板厚を算出したところ、
図21(a)~
図21(o)及び
図22(a)~
図22(o)に示すグラフとなった。なお、
図21(a)~
図21(o)では、梁材2に、梁幅200mmの細幅系列のものを用い、ボルト16は、
図21(a)~
図21(e)では径12mm、
図21(f)~
図21(j)では径16mm、
図21(k)~
図21(o)では径20mmのものをそれぞれ用いた。また、
図22(a)~
図22(o)では、梁材2に、梁幅300mmの中幅系列のものを用い、ボルト16は、
図22(a)~
図22(e)では径12mm、
図22(f)~
図22(j)では径16mm、
図22(k)~
図22(o)では径20mmのものをそれぞれ用いた。
【0073】
すなわち、下側プレート部材1Bについて、以下のような詳細なことが分かった。
【0074】
(下側プレート部材1Bの板厚t2及びリブ1cの板厚tr算定結果)
上述の検討より算出した下側プレート部材1Bの必要な板厚t2及びリブ1cの必要な板厚trは、以下の通りであった。
細幅系列において、曲げ角度θ=45°以上の場合、下側プレート部材1Bの板厚t2及びボルト16の径φを問わずリブ1cの板厚trは概ね梁せいBに比例して増加していることが確認できる。曲げ角度が30°の場合、下側プレート部材1Bの板厚t2の増加に伴いリブ1cの板厚trは増加しており、概ね梁せいBに比例して増加していることが確認できる。また、全ての曲げ角度θ共通で、ボルト16の径φの増加に伴いリブ1cの板厚trはわずかに減少することが確認できる。よって、曲げ角度θ=30°以下の範囲で梁せいBの増加に伴うリブ1cの板厚trの感度が高いため,細幅系列では曲げ角度θ=45°以上の範囲で下側プレート部材1Bの板厚t2及び必要リブ1cの板厚trを最適化できる。
中幅系列においても、細幅系列と同様の変化傾向を示しているが、曲げ角度θ=45°以下の範囲で梁せいBの増加に伴うリブ1cの板厚trの感度が高いため、中幅系列では曲げ角度θ=60°以上の範囲で下側プレート部材1Bの板厚t2及び必要なリブ1cの板厚trを最適化できる。
以上より、下側プレート部材1Bの板厚最適化条件は、ボルト16の径φを問わず、以下の範囲で全て梁せいBに対して下側プレート部材1Bの必要な板厚t2及び必要なリブ1cの板厚trを決定する。
・細幅系列:曲げ角度θ=45°以上の範囲
・中幅系列:曲げ角度θ=60°以上の範囲
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0076】
例えば、上述した実施形態1,2に係る横補剛構造では、梁連結金物1を、上側プレート部材1Aと下側プレート部材1Bとに分割したものを用いたが、これに限定されず、
図23に示すように、予め一体化した梁連結金物1を用いて実施してもよい。
【符号の説明】
【0077】
100 横補剛構造
1 梁連結金物
2 梁材
12 梁材の下側フランジ部
13 梁材のウェブ部
3 デッキプレート
6 方杖部材
6a 方杖部材の下端部
6b 方杖部材の上端部
1A 上側プレート部材
1A-3 上側プレート部材の延設部
1B 下側プレート部材
1B-2 下側プレート部材の延設部
16 ボルト(締結部材)
16a ナット(締結部材)
θ 角度