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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113503
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ロボットおよびロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20230808BHJP
   H01L 21/677 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
B25J9/10 A
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015927
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】芝田 武士
(72)【発明者】
【氏名】小野 良太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 淳一
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS24
3C707AS25
3C707BS15
3C707CV07
3C707CW07
3C707DS01
3C707DS02
3C707ES17
3C707EV02
3C707HS27
3C707HT02
3C707HT24
3C707KS05
3C707KS10
3C707KS21
3C707KV01
3C707KV11
3C707KW06
3C707KX05
3C707KX19
3C707LT13
3C707MT04
3C707NS13
5F131AA02
5F131CA02
5F131CA18
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB43
5F131DB52
5F131DB93
5F131DD03
5F131DD43
5F131DD76
5F131KA24
5F131KA52
5F131KB30
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】単にロボットアームの熱膨張に起因する影響を補正するだけの場合に比べて、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することが可能なロボットを提供する。
【解決手段】ロボット100は、ロボットアーム10と、ギア431と、軸部44とを含み、ロボットアーム10を駆動する駆動機構40と、ロボットアーム10の温度を検出する温度センサ50と、温度センサ50の検出結果に基づいて、ロボットアーム10と、ギア431および軸部44との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部30と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
ギアと、軸部とを含み、前記ロボットアームを駆動する駆動機構と、
前記ロボットアームの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記ロボットアームと、前記ギアおよび前記軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部と、を備える、ロボット。
【請求項2】
前記制御部は、熱膨張に起因する前記ギア間のバックラッシの変化、および、熱膨張に起因する前記軸部のねじり剛性の低下の少なくとも一方による、前記ロボットアームの回転のずれ量を補正する、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度センサの検出結果と、前記ロボットアームと前記ギアとの熱膨張係数とに基づいて、前記ギア間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する、請求項1または請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記ロボットアームと前記ギアとは、互いに異なる熱膨張係数の材料により形成されており、
前記制御部は、前記温度センサの検出結果と、前記ロボットアームと前記ギアとの熱膨張係数の差とに基づいて、前記ギア間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する、請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記ギアは、出力ギアと、複数の入力ギアとを有し、
前記制御部は、前記出力ギアと、前記複数の入力ギアのうちの最も前記出力ギア側の入力ギアとの間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記温度センサの検出結果と、前記駆動機構の動作トルクとに基づいて、熱膨張に起因する前記軸部のねじり剛性の低下の影響を補正する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項7】
前記ロボットアームの先端に配置される基板保持ハンドをさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項8】
クリーンルームに配置されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項9】
真空環境下に配置されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項10】
前記軸部は、回動軸と、前記回動軸が挿入される軸受けとを含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項11】
ロボットアームと、
動力伝達部と、軸部とを含み、前記ロボットアームを駆動する駆動機構と、
前記ロボットアームの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記ロボットアームと、前記動力伝達部および前記軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部と、を備える、ロボット。
【請求項12】
ギアと軸部とを含む駆動機構によりロボットアームを駆動することと、
温度センサにより前記ロボットアームの温度を検出することと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記ロボットアームと、前記ギアおよび前記軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正することと、を備える、ロボットの制御方法。
【請求項13】
熱膨張に起因する影響を補正することは、熱膨張に起因する前記ギア間のバックラッシの変化、および、熱膨張に起因する前記軸部のねじり剛性の低下の少なくとも一方による、前記ロボットアームの回転のずれ量を補正することを含む、請求項12に記載のロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ロボットおよびロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアームを備えるロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ロボットアームを備えるロボットが開示されている。このロボットでは、ロボットアームを動作させると、モータおよび歯車減速装置が発熱する。このため、このロボットでは、温度変化によるロボットアームのリンクの長さ変化が補正されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6398204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたロボットでは、温度変化によるロボットアームのリンクの熱膨張に起因する長さ変化が補正されているだけであるため、ロボットアーム以外の部分の熱膨張に起因する影響が十分に補正されない。この場合、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、単にロボットアームの熱膨張に起因する影響を補正するだけの場合に比べて、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することが可能なロボットおよびロボットの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示の第1の局面によるロボットは、ロボットアームと、ギアと、軸部とを含み、ロボットアームを駆動する駆動機構と、ロボットアームの温度を検出する温度センサと、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、ギアおよび軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部と、を備える。
【0008】
この開示の第1の局面によるロボットは、上記のように、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、ギアおよび軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部を設ける。これにより、ロボットアームの熱膨張に起因する影響だけでなく、ギアおよび軸部の少なくとも一方の熱膨張に起因する影響も補正することができる。その結果、単にロボットアームの熱膨張に起因する影響を補正するだけの場合に比べて、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することができる。
【0009】
この開示の第2の局面によるロボットは、ロボットアームと、動力伝達部と、軸部とを含み、ロボットアームを駆動する駆動機構と、ロボットアームの温度を検出する温度センサと、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、動力伝達部および軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部と、を備える。
【0010】
この開示の第2の局面によるロボットは、上記のように、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、動力伝達部および軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部を設ける。これにより、ロボットアームの熱膨張に起因する影響だけでなく、動力伝達部および軸部の少なくとも一方の熱膨張に起因する影響も補正することができる。その結果、単にロボットアームの熱膨張に起因する影響を補正するだけの場合に比べて、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することができる。
【0011】
この開示の第3の局面によるロボットの制御方法は、ギアと軸部とを含む駆動機構によりロボットアームを駆動することと、温度センサによりロボットアームの温度を検出することと、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、ギアおよび軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正することと、を備える。
【0012】
この開示の第3の局面によるロボットの制御方法は、上記のように、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、ギアおよび軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正する。これにより、ロボットアームの熱膨張に起因する影響だけでなく、ギアおよび軸部の少なくとも一方の熱膨張に起因する影響も補正することができる。その結果、単にロボットアームの熱膨張に起因する影響を補正するだけの場合に比べて、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
単にロボットアームの熱膨張に起因する影響を補正するだけの場合に比べて、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態によるロボットの構成を示す図である。
図2】一実施形態によるロボットの構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態による駆動機構の構成を示す図である。
図4】ロボットアームとギアの熱膨張に起因する影響を説明するための図である。
図5】軸部の熱膨張に起因する影響を説明するための図である。
図6】一実施形態によるロボットの基板位置ずれ補正を説明するための図である。
図7】一実施形態によるロボットの熱膨張の影響の補正処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(ロボットの構成)
図1から図6までを参照して、一実施形態によるロボット100の構成について説明する。図1に示すように、ロボット100は、基板搬送ロボットである。ロボット100は、クリーンルーム200に配置されている。また、ロボット100は、真空環境下に配置されている。具体的には、ロボット100は、真空室201内に配置されている。
【0017】
ロボット100は、ロボットアーム10と、ロボットアーム10の先端に配置される基板保持ハンド20と、制御部30とを備える。基板保持ハンド20は、基板Wを保持する。具体的には、基板保持ハンド20は、摩擦力により基板Wを保持するパッシブハンドである。基板Wは、たとえば、半導体ウェハである。半導体ウェハは、処理室202において所定の処理が行われる。
【0018】
ロボットアーム10は、水平多関節ロボットアームである。ロボットアーム10は、第1アーム部11と、第2アーム部12とを含む。第1アーム部11の一方端部は、第1関節JT1を介してベース部13に接続されている。第2アーム部12の一方端部は、第2関節JT2を介して第1アーム部11の他方端部に接続されている。第2アーム部12の他方端部には、第3関節JT3を介して基板保持ハンド20が接続されている。
【0019】
第1関節JT1は、ベース部13に対して第1アーム部11を、上下方向に延びる第1回転軸線A1周りに回転させる。第2関節JT2は、第1アーム部11に対して第2アーム部12を、上下方向に延びる第2回転軸線A2周りに回転させる。第3関節JT3は、第2アーム部12に対して基板保持ハンド20を、上下方向に延びる第3回転軸線A3周りに回転させる。
【0020】
第1関節JT1、第2関節JT2および第3関節JT3の各関節には、図2に示すように、ロボットアーム10を駆動する駆動機構40が設けられている。第1関節JT1の駆動機構40は、第1アーム部11に配置され、第2関節JT2の駆動機構40は、第1アーム部11に配置され、第3関節JT3の駆動機構40は、第2アーム部12に配置されている。なお、駆動機構40の配置はこれに限定されない。
【0021】
駆動機構40は、サーボモータからなるモータ41と、モータ41の出力軸の回転位置を検出する位置センサ42と、モータ41の駆動力を伝達する動力伝達部43と、動力伝達部43からの駆動力により、第1アーム部11、第2アーム部12および基板保持ハンド20などの対象を回転させる軸部44とを含む。
【0022】
図3に示すように、動力伝達部43は、ギア431を含む。ギア431は、出力ギア431aと、複数の入力ギア431b、431cとを有する。入力ギア431cは、ベベルギアであり、入力側がモータ41に接続され、出力側が入力ギア431bに接続されている。入力ギア431bは、ベベルギアであり、入力側が入力ギア431cに接続され、出力側が出力ギア431aに接続されている。出力ギア431aは、ヘリカルギアであり、入力側が入力ギア431bに接続され、出力側が軸部44の後述する回動軸441に接続されている。
【0023】
また、軸部44は、回動軸441と、回動軸441が挿入される軸受け442とを含む。回動軸441は、入力側が出力ギア431aに接続され、出力側が第1アーム部11、第2アーム部12および基板保持ハンド20などの対象に接続されている。回動軸441が回転されることにより、対象が回転される。軸受け442は、回動軸441を回動可能に支持する。軸受け442は、第1アーム部11および第2アーム部12などのハウジング443に取り付けられている。なお、動力伝達部43および軸部44は、図3の構成に限定されない。
【0024】
また、図2に示すように、ロボットアーム10には、ロボットアーム10の温度を検出する温度センサ50が設けられている。温度センサ50は、第1アーム部11と第2アーム部12との各々に設けられている。具体的には、温度センサ50は、第1アーム部11の先端部と根元部とに配置されている。また、温度センサ50は、第2アーム部12の先端部と根元部とに配置されている。温度センサ50は、たとえば、熱電対である。温度センサ50は、第1アーム部11と第2アーム部12との内表面に配置されている。
【0025】
制御部30は、所定のプログラムを実行することにより、ロボットアーム10の動作を制御する。制御部30は、第1関節JT1、第2関節JT2および第3関節JT3の各関節に設けられたモータ41に供給する電力を制御することにより、ロボットアーム10の動作を制御する。
【0026】
ここで、ロボットアーム10を動作させていると、モータ41の熱などに起因してロボットアーム10が熱膨張する。ロボットアーム10が熱膨張すると、熱膨張に起因して目標位置に対する位置誤差が発生する。
【0027】
また、図4に示すように、ロボットアーム10が熱膨張すると、ロボットアーム10とギア431との熱膨張量の違いに起因して、ギア431の中心点間の距離D1が変化し、ギア431間のバックラッシが変化する。ロボットアーム10の熱膨張量がギア431の熱膨張量よりも大きい場合、ギア431の中心点間の距離D1が広がり、ギア431間のバックラッシが増加する。ギア431間のバックラッシが変化すると、バックラッシの変化に起因して角度誤差が発生するため、目標位置に対する位置誤差が発生する。なお、図4では、便宜上、ロボットアーム10、入力ギア431bおよび出力ギア431aを簡略化して図示している。
【0028】
また、図5に示すように、軸部44においても熱膨張の影響が発生する。すなわち、モータ41の熱などに起因して軸受け442が熱膨張すると、軸受け442の予圧が抜けて、軸部44のねじり剛性が低下する。また、熱によって回動軸441やハウジング443の物性が変化することに起因して、軸部44のねじり剛性が低下する。軸部44のねじり剛性が低下すると、軸部44のねじり剛性の低下に起因して角度誤差が発生するため、目標位置に対する位置誤差が発生する。
【0029】
ここで、本実施形態では、制御部30は、温度センサ50の検出結果に基づいて、ロボットアーム10と、動力伝達部43および軸部44との、熱膨張に起因する影響を補正する。すなわち、制御部30は、温度センサ50の検出結果に基づいて、ロボットアーム10と、ギア431および軸部44との、熱膨張に起因する影響を補正する。制御部30は、熱膨張に起因するロボットアーム10の長さの変化によるロボットアーム10の位置ずれを補正する。制御部30は、ロボットアーム10の熱膨張に起因するギア431間のバックラッシの変化、および、熱膨張に起因する軸部44のねじり剛性の低下による、ロボットアーム10の回転のずれ量を補正する。
【0030】
また、本実施形態では、制御部30は、温度センサ50の検出結果と、ロボットアーム10とギア431との熱膨張係数とに基づいて、ギア431間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する。
【0031】
また、本実施形態では、ロボットアーム10とギア431とは、互いに異なる熱膨張係数の材料により形成されている。ロボットアーム10の第1アーム部11と第2アーム部12とは、アルミニウムにより形成されている。ギア431の出力ギア431aと入力ギア431b、431cとは、鉄により形成されている。また、アルミニウムの熱膨張係数は、鉄の熱膨張係数よりも大きい。制御部30は、温度センサ50の検出結果と、ロボットアーム10とギア431との熱膨張係数の差とに基づいて、ギア431間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する。
【0032】
また、本実施形態では、制御部30は、出力ギア431aと、複数の入力ギア431b、431cのうちの最も出力ギア431a側の入力ギア431bとの間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する。入力ギア431b、431c間のバックラッシの熱膨張に起因する影響は、出力ギア431aと入力ギア431bとの間のバックラッシの熱膨張に起因する影響に比べて小さいため、制御部30は、入力ギア431b、431c間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正しない。
【0033】
また、本実施形態では、制御部30は、温度センサ50の検出結果と、駆動機構40の動作トルクとに基づいて、熱膨張に起因する軸部44のねじり剛性の低下の影響を補正する。なお、補正の詳細については、後述する。
【0034】
ここで、図6を参照して、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれ補正について説明する。
【0035】
図6に示すように、基板Wの基板保持ハンド20での位置が基板搬送中などにずれる場合がある。基板搬送中の基板Wの位置ずれは、基板保持ハンド20が摩擦力だけで基板Wを保持するパッシブハンドの場合に発生しやすい。このため、処理室202の近傍に、位置ずれ検出装置60が設けられている。
【0036】
位置ずれ検出装置60は、第1センサ61と、第2センサ62とを備える。第1センサ61および第2センサ62は、非接触式のセンサである。第1センサ61および第2センサ62としては、反射型センサや透過型センサを使用することができる。
【0037】
第1センサ61および第2センサ62は、基板Wが処理室202へ搬送される途中において、基板Wの外縁の通過を検出する。第1センサ61および第2センサ62の検出結果は、制御部30に入力される。制御部30は、第1センサ61および第2センサ62が基板Wの外縁の通過を検出したタイミングでの基板保持ハンド20の中心位置を、たとえば、各関節の位置センサ42によって取得する。
【0038】
基板Wが経路に沿って搬送される過程で、第1センサ61は、基板Wの外縁の通過を2回検出する。1回目の検出が図6左側に、2回目の検出が図6右側に、それぞれ示されている。2回の通過タイミングにおいて、制御部30は、基板保持ハンド20の中心位置をそれぞれ算出する。
【0039】
ここで、2つの基板保持ハンド20の中心20aを中心として、基板Wの直径と等しい直径の仮想円C1、C2を考える。仮想円C1は、1回目の検出に基づく仮想円であり、仮想円C2は、2回目の検出に基づく仮想円である。図6右側には、1回目の検出に基づく仮想円C1が、2回目の検出に基づく仮想円C2とともに描かれている。
【0040】
仮想円C1、C2の交点は図6右側に示すように2つ存在するが、2つの交点のうち、第1センサ61に近い側の交点に着目する。この交点の位置は、公知の幾何学的な計算により容易に求めることができる。制御部30は、着目した交点と、第1センサ61の位置とのずれを表す平面ベクトルを取得する。この平面ベクトルは、図6右側に白抜き矢印で示されている。このずれは、基板保持ハンド20の中心20aと、基板Wの中心Waと、の位置ずれと等しいと考えることができる。
【0041】
第2センサ62による基板Wの位置ずれの検出は、第1センサ61の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。制御部30は、第1センサ61の検出結果から得られた平面ベクトルと、第2センサ62の検出結果から得られた平面ベクトルとの平均値を取得し、取得した平均値を、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれの補正量として、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれを補正する。平均値の取得により、基板保持ハンド20に対する基板Wの位置ずれを精度良く取得することができる。なお、第1センサ61および第2センサ62のうちの一方を省略してもよい。
【0042】
ここで、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれの補正を行う場合、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれの補正量にも、熱膨張に起因する影響が含まれる。このため、制御部30は、目標位置での熱膨張に起因する影響だけでなく、この補正量に含まれる熱膨張に起因する影響についても補正する。以下では、数式を用いて、この点について説明する。
【0043】
まず、ロボットアーム10の熱膨張に起因する影響について説明する。熱膨張後の第1アーム部11と第2アーム部12との長さは、以下の式(1)、(2)により表される。制御部30は、以下の式(1)、(2)に基づいて、ロボットアーム10の熱膨張に起因する影響を補正可能である。
【数1】
ここで、
L'X1:熱膨張後の第1アーム部11の長さ[mm]
L'X2:熱膨張後の第2アーム部12の長さ[mm]
X1:熱膨張前の基準温度での第1アーム部11の長さ[mm]
X2:熱膨張前の基準温度での第2アーム部12の長さ[mm]
Al:第1アーム部11と第2アーム部12との熱膨張係数[/10K]
L1 root:第1アーム部11の根元部の基準温度[℃]
L1 tip:第1アーム部11の先端部の基準温度[℃]
U1 root:第2アーム部12の根元部の基準温度[℃]
U1 tip:第2アーム部12の先端部の基準温度[℃]
L2 root:第1アーム部11の根元部の温度センサ50の検出温度[℃]
L2 tip:第1アーム部11の先端部の温度センサ50の検出温度[℃]
U2 root:第2アーム部12の根元部の温度センサ50の検出温度[℃]
U2 tip:第2アーム部12の先端部の温度センサ50の検出温度[℃]
である。
【0044】
L1 root、TL1 tip、TU1 root、TU1 tipは、予め決められている。TL2 root、TL2 tip、TU2 root、TU2 tipは、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれ補正時などの所定のタイミングで、温度センサ50から取得される。
【0045】
次に、ギア431間のバックラッシの熱膨張に起因する影響について説明する。単位温度当たりの出力ギア431aと入力ギア431bとの中心点間の距離の変化量は、以下の式(3)により表される。
【数2】
ここで、
r JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの中心点間の距離の変化量[mm/K]
JT*:熱膨張前の基準温度での各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの中心点間の距離[mm]
Al:第1アーム部11と第2アーム部12との熱膨張係数[/10K]
Fe:出力ギア431aと入力ギア431bとの熱膨張係数[/10K]
である。
【0046】
また、単位温度当たりの出力ギア431aと入力ギア431bとの法線方向のバックラッシの変化量は、以下の式(4)により表される。
【数3】
ここで、
n JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの法線方向のバックラッシの変化量[mm/K]
r JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの中心点間の距離の変化量[mm/K]
αJT*:各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの圧力角[deg]
である。
【0047】
また、単位温度当たりの出力ギア431aと入力ギア431bとの円周方向のバックラッシの変化量は、以下の式(5)により表される。
【数4】
ここで、
t JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの円周方向のバックラッシの変化量[mm/K]
n JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの法線方向のバックラッシの変化量[mm/K]
αJT*:各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの圧力角[deg]
βJT*:各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとのねじれ角[deg]
である。
【0048】
また、単位温度当たりの出力ギア431aと入力ギア431bとのバックラッシの角度変化量は、以下の式(6)により表される。
【数5】
ここで、
θ JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとのバックラッシの角度変化量[deg/K]
t JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの円周方向のバックラッシの変化量[mm/K]
JT*:各関節の出力ギア431aのピッチ円直径[mm]
である。
【0049】
また、熱膨張による出力ギア431aと入力ギア431bとの間のバックラッシの角度変化量は、以下の式(7)、(8)、(9)により表される。制御部30は、以下の式(7)、(8)、(9)に基づいて、出力ギア431aと入力ギア431bとの間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正可能である。すなわち、制御部30は、回転のずれ量を表すθ [JT*,***,port]により、出力ギア431aと入力ギア431bとの間のバックラッシによる、ロボットアーム10の回転のずれ量を補正可能である。
【数6】
ここで、
θ [JT*,***,port]:熱膨張による各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの間のバックラッシの角度変化量[deg]
θ JT*:単位温度当たりの各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとのバックラッシの角度変化量[deg/K]
d [JT*,***,port]:各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとのバックラッシの影響方向[1or-1]
L1 root:第1アーム部11の根元部の基準温度[℃]
L1 tip:第1アーム部11の先端部の基準温度[℃]
U1 tip:第2アーム部12の先端部の基準温度[℃]
L2 root:第1アーム部11の根元部の温度センサ50の検出温度[℃]
L2 tip:第1アーム部11の先端部の温度センサ50の検出温度[℃]
U2 tip:第2アーム部12の先端部の温度センサ50の検出温度[℃]
である。
【0050】
なお、***は、tip、rootまたはteachである。tipは、ロボットアーム10が、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれ補正時の、1回目の検出時の姿勢の状態であることを表す。rootは、ロボットアーム10が、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれ補正時の、2回目の検出時の姿勢の状態であることを表す。teachは、ロボットアーム10が、教示位置である目標位置での姿勢の状態であることを表す。また、portは、処理室202などのロボットアーム10のアクセス先を表す。すなわち、式(7)、(8)、(9)は、ロボットアーム10が所定のアクセス先にアクセスする場合において、tip、rootまたはteachなどのロボットアーム10の姿勢ごとに、バックラッシの角度変化量を求めることを意味している。
【0051】
また、Jd [JT*,***,port]は、バックラッシの影響方向を意味しており、1または-1の値をとり得る。Jd [JT*,***,port]は、たとえば、バックラッシの影響方向が時計回りの場合に1となり、反時計回りの場合に-1となる。Jd [JT*,***,port]は、ロボットアーム10のアクセス先であるportと、tip、rootまたはteachなどのロボットアーム10の姿勢とに基づいて、決定される。
【0052】
次に、軸部44の熱膨張に起因する影響について説明する。熱膨張による軸部44のねじり剛性低下による角度変化量は、以下の式(10)、(11)、(12)により表される。制御部30は、以下の式(10)、(11)、(12)に基づいて、軸部44の熱膨張に起因する影響を補正可能である。すなわち、制御部30は、回転のずれ量を表すθτ [JT*,***,port]により、軸部44のねじり剛性の低下による、ロボットアーム10の回転のずれ量を補正可能である。
【数7】
ここで、
θτ [JT*,***,port]:熱膨張による各関節の軸部44のねじり剛性低下による角度変化量[deg]
τ [JT*,***,port]:各関節の駆動機構40の動作トルク[Nm]
JT*:各関節の軸部44の基準温度でのねじり剛性[Nm/deg]
ΔGJT*:単位温度当たりの各関節の軸部44のねじり剛性の変化量[Nm/(deg・K)]
L1 root:第1アーム部11の根元部の基準温度[℃]
L1 tip:第1アーム部11の先端部の基準温度[℃]
U1 tip:第2アーム部12の先端部の基準温度[℃]
L2 root:第1アーム部11の根元部の温度センサ50の検出温度[℃]
L2 tip:第1アーム部11の先端部の温度センサ50の検出温度[℃]
U2 tip:第2アーム部12の先端部の温度センサ50の検出温度[℃]
である。
【0053】
なお、***およびportは、上記説明した通りである。すなわち、式(10)、(11)、(12)は、ロボットアーム10が所定のアクセス先にアクセスする場合において、tip、rootまたはteachなどのロボットアーム10の姿勢ごとに、ねじり剛性低下による角度変化量を求めることを意味している。
【0054】
また、GJT*はおよびΔGJT*は、実験などにより求めることができる。たとえば、モータ41の回転を固定した状態で、作業者がロボットアーム10にトルクを加えて、ロボットアーム10の回転角度を計測すると、トルクと回転角度との関係を取得可能であるため、軸部44のねじり剛性を取得可能である。また、ロボットアーム10の温度を変えながら、軸部44のねじり剛性を取得すれば、温度とねじり剛性との関係を取得可能であるため、単位温度当たりの軸部44のねじり剛性の変化量を取得可能である。
【0055】
また、熱膨張に起因する影響を含む各関節の最終角度は、以下の式(13)により表される。
【数8】
ここで、
θ [JT*,***,port]:熱膨張に起因する影響を含む各関節の最終角度[deg]
θ[JT*,***,port]:熱膨張に起因する影響を含まない場合の各関節の角度[deg]
θ [JT*,***,port]:熱膨張による各関節の出力ギア431aと入力ギア431bとの間のバックラッシの角度変化量[deg]
θτ [JT*,***,port]:熱膨張による各関節の軸部44のねじり剛性低下による角度変化量[deg]
である。
【0056】
また、熱膨張に起因する影響のX方向およびY方向の補正量は、以下の式(14)、(15)により表される。制御部30は、式(14)、(15)に基づいて、ロボットアーム10と、出力ギア431aと入力ギア431bとの間のバックラッシおよび軸部44の熱膨張に起因する影響を補正可能である。
【数9】
ここで、
off [port]:熱膨張に起因する影響のX方向の補正量
off [port]:熱膨張に起因する影響のY方向の補正量
X:θ[JT1,***,port]、θ[JT2,***,port]、θ[JT3,***,port]、LX1、LX2、L(基板保持ハンド20の長さ)によるX方向の順変換座標
X':θL[JT1,***,port]、θL[JT2,***,port]、θL[JT3,***,port]、L'X1、L'X2、LによるX方向の順変換座標
Y:θ[JT1,***,port]、θ[JT2,***,port]、θ[JT3,***,port]、LX1、LX2、LによるY方向の順変換座標
Y':θL[JT1,***,port]、θL[JT2,***,port]、θL[JT3,***,port]、L'X1、L'X2、LによるY方向の順変換座標
である。
【0057】
なお、Xoff [port]およびYoff [port]のうち、tipおよびrootで表される部分が、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれの補正量に含まれる、熱膨張に起因する影響の補正量を表している。また、Xoff [port]およびYoff [port]のうち、teachで表される部分が、目標位置での熱膨張に起因する影響の補正量を表している。このため、制御部30は、Xoff [port]およびYoff [port]に基づいて、目標位置での熱膨張に起因する影響と、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれの補正量に含まれる熱膨張に起因する影響とを補正可能である。
【0058】
また、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれの補正を行う必要がない場合には、Xoff [port]およびYoff [port]のうち、tipおよびrootで表される部分は求める必要がない。この場合、Xoff [port]およびYoff [port]のうち、teachで表される部分のみを取得し、目標位置での熱膨張に起因する影響を補正すればよい。基板保持ハンド20がパッシブハンド以外のハンドの場合など、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれを考慮する必要がない場合には、このように補正すればよい。
【0059】
図7を参照して、本実施形態のロボット100による熱膨張の影響の補正処理をフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
ステップS101において、温度センサ50によりロボットアーム10の温度が検出され、温度センサ50の検出結果が制御部30により取得される。そして、ステップS102において、温度センサ50の検出結果に基づいて、制御部30により、熱膨張の影響の補正量が取得される。すなわち、上記式(1)~(15)に基づいて、制御部30により、Xoff [port]およびYoff [port]が取得される。そして、ステップS103において、熱膨張の影響の補正量に基づいて、制御部30により、熱膨張の影響が補正される。すなわち、Xoff [port]およびYoff [port]が、基板Wの基板保持ハンド20での位置ずれが補正された目標位置に加えられることにより、制御部30により、熱膨張の影響が補正される。
【0061】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、上記のように、ロボット100は、ロボットアーム10と、ギア431と、軸部44とを含み、ロボットアーム10を駆動する駆動機構40と、ロボットアーム10の温度を検出する温度センサ50と、温度センサ50の検出結果に基づいて、ロボットアーム10と、ギア431および軸部44との、熱膨張に起因する影響を補正する制御部30と、を備える。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット100の制御方法は、ギア431と軸部44とを含む駆動機構40によりロボットアーム10を駆動することと、温度センサ50によりロボットアーム10の温度を検出することと、温度センサ50の検出結果に基づいて、ロボットアーム10と、ギア431および軸部44との、熱膨張に起因する影響を補正することと、を備える。
【0063】
これにより、ロボットアーム10の熱膨張に起因する影響だけでなく、ギア431および軸部44の熱膨張に起因する影響も補正することができる。その結果、単にロボットアーム10の熱膨張に起因する影響を補正するだけの場合に比べて、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、熱膨張に起因するギア431間のバックラッシの変化、および、熱膨張に起因する軸部44のねじり剛性の低下による、ロボットアーム10の回転のずれ量を補正する。これにより、熱膨張に起因するギア431間のバックラッシの変化、および、熱膨張に起因する軸部44のねじり剛性の低下により、ロボットアーム10の回転のずれ量が発生した場合にも、ロボットアーム10の回転のずれ量を補正することにより、温度変化に対して安定した位置決め精度を容易に確保することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、温度センサ50の検出結果と、ロボットアーム10とギア431との熱膨張係数とに基づいて、ギア431間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する。これにより、ロボットアーム10とギア431との熱膨張の程度が異なることにより、ギア431間のバックラッシが変化する場合にも、ギア431間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を容易に補正することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、ロボットアーム10とギア431とは、互いに異なる熱膨張係数の材料により形成されている。制御部30は、温度センサ50の検出結果と、ロボットアーム10とギア431との熱膨張係数の差とに基づいて、ギア431間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する。これにより、ロボットアーム10とギア431との熱膨張係数の差に起因して、ロボットアーム10とギア431との熱膨張の程度が異なりやすいことにより、ギア431間のバックラッシが変化しやすい場合に、ギア431間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を容易に補正することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、ギア431は、出力ギア431aと、複数の入力ギア431b、431cとを有する。制御部30は、出力ギア431aと、複数の入力ギア431b、431cのうちの最も出力ギア431a側の入力ギア431bとの間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する。これにより、バックラッシの変化量が大きい、出力ギア431aと最も出力ギア431a側の入力ギア431bとの間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正することができるので、バックラッシの熱膨張に起因する影響を効果的に補正することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、温度センサ50の検出結果と、駆動機構40の動作トルクとに基づいて、熱膨張に起因する軸部44のねじり剛性の低下の影響を補正する。これにより、温度による軸部44のねじり剛性の低下と、駆動機構40の動作トルクによる軸部44の変形とを考慮して、熱膨張に起因する軸部44のねじり剛性の低下の影響を容易に補正することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット100は、ロボットアーム10の先端に配置される基板保持ハンド20を備える。これにより、比較的高い位置決め精度が要求される、基板保持ハンド20により基板を搬送するロボット100において、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット100は、クリーンルーム200に配置されている。これにより、繰り返しの動作を多く行う場合がある、クリーンルーム200に配置されたロボット100において、温度変化に対して安定した位置決め精度を確保することができる。すなわち、温度変化に対して安定した繰り返し精度を確保することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット100は、真空環境下に配置されている。これにより、放熱が発生しにくく、温度上昇が発生しやすい真空環境下で使用されるロボット100において、熱膨張に起因する影響を補正することができるので、温度変化に対して安定した位置決め精度を効果的に確保することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、軸部44は、回動軸441と、回動軸441が挿入される軸受け442とを含む。これにより、回動軸441と軸受け442とを含む軸部44の熱膨張に起因する影響を補正することができる。
【0073】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0074】
たとえば、上記実施形態では、ロボットアームが水平多関節ロボットアームである例を示したが、本開示はこれに限られない。ロボットアームが垂直多関節ロボットアームであってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ロボットアームの先端に基板保持ハンドが1つ配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。ロボットアームの先端に基板保持ハンドが2つ以上配置されてもよい。また、ロボットアームの先端に基板保持ハンド以外のハンドが配置されてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、基板保持ハンドがパッシブハンドである例を示したが、本開示はこれに限られない。基板保持ハンドがパッシブハンド以外のハンドであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ロボットがクリーンルームに配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。ロボットがクリーンルーム以外に配置されてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ロボットが真空環境下に配置される真空ロボットである例を示したが、本開示はこれに限られない。ロボットが大気環境下に配置される大気ロボットであってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、制御部が、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、ギアおよび軸部との、熱膨張に起因する影響を補正する例を示したが、本開示はこれに限られない。制御部が、温度センサの検出結果に基づいて、ロボットアームと、ギアおよび軸部の少なくとも一方との、熱膨張に起因する影響を補正してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、動力伝達部が、ギアを含むギア動力伝達部である例を示したが、本開示はこれに限られない。動力伝達部が、プーリと、プーリに巻き掛けられたベルトとを含むベルトプーリ動力伝達部であってもよい。この場合にも、ベルト自体が熱膨張して伸びたり、ロボットアームの熱膨張に起因してプーリ間の距離が広がることによりベルトが伸びたりするため、熱膨張に起因する影響を補正する必要がある。制御部は、たとえば、温度センサの検出結果と、ロボットアーム、ベルトおよびプーリの熱膨張係数に基づいて、ベルトプーリ動力伝達部の熱膨張に起因する影響を補正可能である。
【0081】
また、上記実施形態では、温度センサが、ロボットアームの内表面に配置された熱電対である例を示したが、本開示はこれに限られない。温度センサが、ロボットアームの内表面以外に配置されていてもよいし、熱電対以外であってもよい。たとえば、温度センサが、駆動機構のモータのエンコーダに設けられた温度センサであってもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ロボットアームとギアとが、互いに異なる熱膨張係数の材料により形成されており、制御部が、温度センサの検出結果と、ロボットアームとギアとの熱膨張係数の差とに基づいて、ギア間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する例を示したが、本開示はこれに限られない。ロボットアームとギアとが、互いに同じ熱膨張係数の材料により形成されていてもよい。この場合にも、ロボットアームとギアとで熱分布が異なる場合には、ロボットアームとギアとで熱膨張量が異なるため、上記実施形態で説明した角度誤差が発生するおそれがある。この場合、ロボットアームとギアとの温度を各々検出し、ロボットアームの温度検出結果と、ギアの温度検出結果と、ロボットアームの熱膨張係数と、ギアの熱膨張係数とに基づいて、ギア間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、ロボットアームがアルミニウムにより形成され、ギアが鉄により形成される例を示したが、本開示はこれに限られない。ロボットアームとギアはどのような材料で形成されてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ギアが、出力ギアと、複数の入力ギアとを有する例を示したが、本開示はこれに限られない。ギアが、出力ギアと、1つの入力ギアとを有していてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、制御部が、出力ギアと、複数の入力ギアのうちの最も出力ギア側の入力ギアとの間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正する例を示したが、本開示はこれに限られない。制御部が、出力ギアと入力ギアとの間のバックラッシだけでなく、入力ギア間のバックラッシの熱膨張に起因する影響を補正してもよい。
【0086】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0087】
10 ロボットアーム
20 基板保持ハンド
30 制御部
40 駆動機構
43 動力伝達部
44 軸部
50 温度センサ
100 ロボット
200 クリーンルーム
431 ギア
431a 出力ギア
431b、431c 入力ギア
441 回動軸
442 軸受け
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7