(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113509
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】運行管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/04 20060101AFI20230808BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230808BHJP
B64C 27/04 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
G08G5/04 A
B64C39/02
B64C27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015939
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 満
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴廣
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA26
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF13
5H181LL01
5H181LL04
5H181MB04
(57)【要約】
【課題】運行中に発生する諸事象に対応して運行経路を安全且つ空間効率良く最適化することが可能な運行管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】運行管理システム6は、垂直離着陸機のような機体の飛行を管理する運行管理システムである。運行管理システム6は、機体が通過する予定の位置及び時刻の系列として表される当該機体の4D経路を計画する4D経路計画部8を備える。運行管理システム6は、他機体の進入を許容しない当該機体の専有空間として、当該機体を包含し当該移動体と共に移動する移動専有空間と、移動専有空間を包含し4D経路に沿う固定専有空間とを設計する専有空間設計部9を備える。4D経路計画部8は、当該機体の飛行中、移動専有空間と固定専有空間との位置関係に基づいて、4D経路を再計画する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の運行を管理する運行管理システムであって、
前記移動体が通過する予定の位置及び時刻の系列として表される前記移動体の運行経路を計画する経路計画部と、
他移動体の進入を許容しない前記移動体の専有空間として、前記移動体を包含し前記移動体と共に移動する移動専有空間と、前記移動専有空間を包含し前記運行経路に沿う固定専有空間とを設計する専有空間設計部と、を備え、
前記経路計画部は、前記移動体の運行中、前記移動専有空間と前記固定専有空間との位置関係に基づいて前記運行経路を再計画する
ことを特徴とする運行管理システム。
【請求項2】
前記専有空間設計部は、
前記移動専有空間を設計する移動専有空間設計部と、
前記固定専有空間を設計する固定専有空間設計部と、
前記移動専有空間を画定する境界面と前記固定専有空間を画定する境界面との両者が干渉するか否かを判定する空間干渉判定部と、を有し、
前記固定専有空間設計部は、前記両者が干渉すると判定された場合、前記固定専有空間を修正し、
前記経路計画部は、修正された前記固定専有空間に応じて前記運行経路を再計画する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項3】
前記固定専有空間設計部は、前記両者が干渉すると判定された場合、前記移動体の周辺の前記他移動体の前記固定専有空間を修正し、
前記経路計画部は、修正された前記他移動体の前記固定専有空間に応じて前記他移動体の前記運行経路を再計画する
ことを特徴とする請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項4】
前記両者が干渉すると判定され、且つ、前記両者の干渉を解消するよう前記固定専有空間を修正できない場合、前記運行経路に沿って運行するよう前記移動体に警告を送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項5】
前記移動体が前記運行経路の始点から終点に到達するまでの間に所定周期で前記移動体の位置情報を取得し、前記位置情報の取得毎に、前記運行経路を再計画する必要があるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項6】
前記固定専有空間設計部は、前記移動体が前記移動体自身の判断によって障害物を迂回しても前記両者が干渉しないよう、前記固定専有空間を設計する
ことを特徴とする請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項7】
前記移動体及び前記他移動体のそれぞれは、飛行体であり、
前記専有空間設計部は、前記運行管理システムの管理地域内の各地点において予測される風況を示す風況情報に基づいて、前記固定専有空間及び前記移動専有空間の少なくとも1つを設計する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項8】
前記専有空間設計部は、前記移動体の位置計測誤差、及び、前記移動体との通信品質の少なくとも1つに基づいて、前記固定専有空間及び前記移動専有空間の少なくとも1つを設計する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項9】
前記移動体及び前記他移動体のそれぞれは、飛行体であり、
前記専有空間設計部は、前記飛行体の飛行の妨げとなる気象エリア、飛翔物及び地上構造物、並びに、前記飛行体の飛行禁止エリア、の少なくとも1つに対して、前記飛行体の進入を許容しない専有空間を設計する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項10】
前記移動専有空間及び前記固定専有空間の情報を前記移動体に送信し、
前記移動体は、送信された前記情報に基づいて前記移動専有空間及び前記固定専有空間を認識し、認識された前記移動専有空間及び前記固定専有空間に基づいて前記運行経路を計画する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン等の垂直離着陸が可能な航空機(「機体」とも称する)の社会利用に注目が集まっている。
【0003】
垂直離着陸機は、従来の固定翼機が必要な滑走路が不要で離着陸場のコンパクト化が可能という利点がある。電動化された垂直離着陸機においては、エンジン駆動のヘリコプタに比べて静粛性が高く、駆動時に温暖化ガスを出さず、整備コストが安い等の利点がある。垂直離着陸機では、航続距離の延伸のために有翼の垂直離着陸機の開発や、ハイブリッドシステムを動力源とする垂直離着陸機の開発等が、精力的に進められている。
【0004】
このような特徴を有する垂直離着陸機は、空中を利用した人や物の立体的な輸送を可能にし、利用者に輸送の大幅な時間短縮と利便性をもたらすことが期待されている。他方、人や物の輸送のようなアプリケーションでは、経済的成立性から、運行台数増が求められ、これには空間効率の良い運行による運行密度の向上が課題である。また航空機を安定・安全に運行するには、高い技能と専門知識が必要で、運行台数増には人的リソース不足が課題となる。これを解消するために、垂直離着陸機やその運行に係るシステムは、自動・自律化が望まれている。このような観点から、複数の航空機を、同時に、安全に、空間効率良く、且つ、自動で離着陸が可能な離着陸ポート並びに離着陸運行管理システムが必要となる。
【0005】
垂直離着陸機を空間効率良く、且つ、衝突なく安全に離着陸させるために、運行管理システムは、簡単には、機体間の近接許容距離(各機体間の相対距離に関する許容値)を短く設定した上で、各機体の始点から終点までの運行経路を、各機体間の距離が全ての時刻において近接許容距離以上となるように計画し、各機体に提供できればよい。
【0006】
但し、例えば天候不良による強風や、他機体から発生するダウンウォッシュ(風の吹きおろし)の影響等によって、機体の姿勢及び飛行位置が乱される場合がある。よって、運行管理システムは、近接許容距離がこれら外環境のリスクを考慮した十分な長さを有するように運行経路を計画する必要がある。また、運行管理システムは、鳥等の飛行上の妨げとなる飛翔物(「障害物」とも称する)が存在する場合には、機体と障害物との衝突リスクを考慮した運行経路を計画する必要がある。また、運行管理システムは、原子力発電所等の重要施設や住宅地等の人口密集地区の上空といった飛行禁止エリアが存在する場合には、これらのエリアを迂回するような運行経路を計画する必要がある。
【0007】
このような機体のリスクや飛行空域の制約を考慮した機体の運行経路を計画する航空管制装置の例として、特許文献1が挙げられる。
【0008】
特許文献1に記載の航空管制装置は、管理地域を複数エリアに(メッシュ状に)分割し、各エリアに地形情報、気象情報、障害物、及び、他機体の飛行予定の有無等の情報を紐づけ、各エリアの飛行可能/禁止を時間管理する。特許文献1に記載の航空管制装置は、飛行可能なエリアを繋ぎ合わせることで対象機体の飛行経路を自動的に計画する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の航空管制装置は、運行経路の計画時点において各エリアに紐付けられた情報に基づいて機体の運行経路を計画し、運行経路を見直すのは緊急事態の発生時点に緊急着陸させる場合だけである。すなわち、特許文献1に記載の航空管制装置は、機体の運行中、緊急事態の発生時点以外に運行経路を見直すものではない。よって、特許文献1に記載の航空管制装置は、運行中に発生した諸事象に対応して運行経路を安全且つ空間効率良く最適化する点において改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、運行中に発生する諸事象に対応して運行経路を安全且つ空間効率良く最適化することが可能な運行管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の運行管理システムは、移動体の運行を管理する運行管理システムであって、前記移動体が通過する予定の位置及び時刻の系列として表される前記移動体の運行経路を計画する経路計画部と、他移動体の進入を許容しない前記移動体の専有空間として、前記移動体を包含し前記移動体と共に移動する移動専有空間と、前記移動専有空間を包含し前記運行経路に沿う固定専有空間とを設計する専有空間設計部と、を備え、前記経路計画部は、前記移動体の運行中、前記移動専有空間と前記固定専有空間との位置関係に基づいて前記運行経路を再計画することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運行中に発生する諸事象に対応して運行経路を安全且つ空間効率良く最適化することが可能な運行管理システムを提供することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の運行管理システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図3】固定専有空間を楕円体状とし、移動専有空間を円柱状とした場合を示す図。
【
図5】複数の固定専有空間を連結する前の様子を説明する図。
【
図6】複数の固定専有空間を連結した後の様子を説明する図。
【
図7】固定専有空間と移動専有空間との関係を説明する図。
【
図8】固定専有空間を円柱状とし、移動専有空間を球状とした例を示す図。
【
図9】固定専有空間を球状とし、移動専有空間を球状とした例を示す図。
【
図10】各機体の4D経路の軌道が交差する場合を示す図。
【
図12】運行管理システムが管理する管理地域を説明する図。
【
図15】経路計画装置の警告発報機能を説明するブロック図。
【
図16】管理物体に対して設計される専有空間の一例を示す図。
【
図17】管理物体に対して設計される専有空間の一例を示す図。
【
図18】管理物体に対して設計される専有空間の一例を示す図。
【
図19】管理物体に対して設計される専有空間の一例を示す図。
【
図20】運行管理システムによって行われる処理のフローチャート。
【
図22】実施形態2の運行管理システムの構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0016】
本発明の運行管理システムは、垂直離着陸機等の航空機をはじめとする飛行体の他、宇宙船又は潜水艇のような3次元の移動自由度を有する移動体にも適用することができる。更には、本発明の運行管理システムは、自動車、ロボット又は鉄道といった地上を走行する移動体にも適用することができる。本発明の運行管理システムが適用される移動体は、移動体に搭乗した操縦者、又は、移動体に搭乗していない遠隔操縦者の操縦に基づいて移動する移動体であってもよいし、自律的に移動する移動体であってもよい。本実施形態では、運行管理システムが、飛行体である垂直離着陸機に適用された例について説明する。
【0017】
[実施形態1]
図1~
図21を用いて、実施形態1の運行管理システム6について説明する。
図1は、実施形態1の運行管理システム6の構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示す運行管理システム6は、複数の機体(垂直離着陸機又は固定翼機)の離着陸の運行管理及び管制を行う。本実施形態では、運行管理システム6は、複数の機体の一例として機体A及び機体Bを対象とする。運行管理システム6は、各機体A,Bの飛行目的に合わせて4D経路4,4bを計画・提供する経路計画装置7を備え、各機体A,Bの誘導を行う。
【0019】
4D経路とは、機体が通過する予定の位置及び時刻の系列として表される機体の運行経路である。すなわち、4D経路は、機体が通過する予定の位置を示す3次元座標の時系列データ群として表される。具体的には、4D経路は、当該3次元座標及び時刻から成る4次元ベクトルの系列として表される。なお、説明の便宜上、4D経路を単に経路とも称する場合がある。
【0020】
また、運行管理システム6は、運行管理システム6の管理地域内の各地点における風況(風向、風速及び気圧等)を予測する風況予測装置10を備える。経路計画装置7は、風況予測装置10から提供される風況情報12を活用して、4D経路4,4bを計画する。
【0021】
また、運行管理システム6は、各機体A,Bから各機体A,Bの位置情報5,5bを常時取得する。経路計画装置7は、各機体A,Bの位置情報5,5bに基づいて4D経路4,4bを計画する。運行管理システム6は、各機体A,Bが計測した位置情報5,5bを取得するのではなく、運行管理システム6が位置情報5,5bを計測する装置を備えていてもよい。運行管理システム6が位置情報5,5bを計測する装置としては、例えば、LiDAR、レーダ又はステレオカメラ等の計測装置が挙げられる。
【0022】
なお、運行管理システム6のハードウェア構成は、
図1に示す構成に特に限定されない。例えば、経路計画装置7は、いわゆる航空管制装置の一部として構成されてもよい。風況予測装置10は、運行管理システム6の外部に設けられてもよい。この場合、運行管理システム6は、風況予測装置10から送信された風況情報12を取得する風況情報取得部を備えることができる。
【0023】
また、運行管理システム6は、各機体A,Bの速度を、取得された位置情報5,5bの微分で算出でき、位置情報5,5bの計測に付随して把握することができる。以下の説明においては、各機体A,Bの速度の計測に関しては、特に明示していない。運行管理システム6は、各機体A,Bの位置計測誤差に起因する速度の計測誤差が問題となる場合、各機体A,Bから、位置情報5,5bと併せて速度情報を取得することができる。
【0024】
また、運行管理システム6は、各機体A,Bの姿勢角情報を各機体A,Bから取得し、姿勢角情報を含む4D経路4,4bを計画し、これを各機体A,Bに提供する構成であってもよい。これにより、運行管理システム6は、各機体A,Bの取り得る姿勢角を考慮した4D経路4,4bを計画することができる。以下の説明においては、各機体A,Bの姿勢角の計測に関しては、特に明示していないが、計画される4D経路は各機体A,Bの姿勢角情報を含むものと考えてもよい。
【0025】
経路計画装置7は、4D経路計画部8と、専有空間設計部9と、を備える。4D経路計画部8及び専有空間設計部9は、通信インターフェース11を介して互いに情報を共有する構成を備える。
【0026】
専有空間設計部9は、固定専有空間設計部13と、移動専有空間設計部14と、空間干渉判定部15を、を有する。固定専有空間設計部13、移動専有空間設計部14及び空間干渉判定部15は、互いに情報を共有する構成を備える。空間干渉判定部15は、4D経路計画部8に対して、4D経路4,4bの再計画を指示する構成を備える。
【0027】
運行管理システム6は、自身の管理地域内の各機体を運行管理の対象とし、経路計画装置7は、管理地域内の各機体に対して各々4D経路を計画・提供する。各機体A,Bが管理地域内にある場合、経路計画装置7は、4D経路計画部8により計画された4D経路4,4bを、通信装置17を介して、各機体A,Bにそれぞれ送信する。各機体A,Bは、提供された4D経路4,4bに沿って飛行する。
【0028】
4D経路計画部8は、専有空間設計部9により設計された各機体A,Bの固定専有空間1,1bに基づいて、各機体A,Bの飛行目的が達成されるよう、始点から終点まで延びる4D経路4,4bを計画する。固定専有空間1,1bは、各機体A,Bに紐付けられた3次元空間である。
【0029】
図2は、機体Aが飛行する様子を説明する図である。
図3は、機体Aの固定専有空間1を楕円体状とし、移動専有空間2を円柱状とした場合を示す図である。
【0030】
図2において、機体Aの飛行目的は、地面29上の離着陸ポート28への着陸である。すなわち、機体Aの飛行目的は、現在位置の始点26から離着陸ポート上の終点27への移動である。始点26から終点27への4D経路4が、経路計画装置7から提供された場合において、機体Aは、この4D経路4に沿って移動することで、飛行目的を達成できる。
図2において、4D経路4は、3次元座標及び時刻から成る4次元ベクトル21の系列として表されることを意味している。なお、始点26及び終点27についても、4D経路4の端点であるので、3次元座標及び時刻から成る4次元ベクトルであることに注意する。
【0031】
図2において、機体Aに紐付けられた空間が機体Aの固定専有空間1である。
図1の固定専有空間設計部13は、各機体A,Bの固定専有空間1,1bを設計する。
図1の移動専有空間設計部14は、各機体A,Bの移動専有空間2,2bを設計する。各機体A,Bの4D経路4,4bは、これらに基づき、4D経路計画部8にて計画される。
【0032】
次に、固定専有空間1、移動専有空間2及び4D経路4の関係について説明する。
固定専有空間1及び移動専有空間2のそれぞれは、他機体の進入を許容しない機体Aの専有空間である。移動専有空間2は、機体Aを包含し機体Aと共に移動する空間である。固定専有空間1は、移動専有空間2を包含し4D経路4に沿う空間である。
【0033】
まず、移動専有空間2について説明する。移動専有空間2は、次のように定義される。
定義(d1) 移動専有空間2は、機体Aの重心を常に空間内に保持する。
定義(d2) 移動専有空間2を画定する境界面(表面)上の任意の点と機体Aの重心との距離LMは、常に次式(1)の関係にある。
LM=Ra+DM ・・・(1)
【0034】
但し、Raは、機体Aの重心と機体Aの部位との距離の最大値である。DMは、ゼロより大きい正数、すなわちDM>0である。式(1)は、機体Aの重心を中心とする半径Raの球体の内部に機体Aの全ての部位が包含され、この球体は移動専有空間2に内包され、DMは半径Raの球体表面と移動専有空間2の境界面(表面)との距離を規定するものであることを意味している。
【0035】
DMは、厳密には移動専有空間2の表面上のあらゆる点で必要とされる。移動専有空間2と機体Aとの関係は、DMの集合により{DM(si)|si⊂Si}で与えられる。但し、siは、移動専有空間2の境界面Si上の任意の点である。DM(si)は、移動専有空間2の境界面上の点siと、半径Raの球体表面との距離を規定する正数である。DMは、簡単には、移動専有空間2と機体Aとの位置関係を規定するものである。したがって、本実施形態では、便宜的に移動専有空間2と機体Aとの位置関係を、DMとも称する場合がある。
【0036】
時刻t0から時刻t1(t0<t1)までに機体Aが座標p0から座標p1まで移動するとする。時刻t0から時刻t1の間でDMが不変の場合は、定義(d1)及び(d2)によれば、移動専有空間2は、機体Aの重心と移動専有空間2の境界面上の点との距離を維持したまま、移動専有空間2の形状を変えずに、機体Aと共に移動する。
【0037】
移動専有空間2のDMは、必ずしも固定値である必要はなく、より有効な運行経路を計画するために、機体Aの性能、位置、速度、及び、その位置での風況等の気象状況に基づいて、可変としてもよい(時々刻々と変化してもよい)。
【0038】
結果的に、定義(d1)及び(d2)によれば、移動専有空間2は、機体Aの移動に合わせて移動する空間である。なお、説明の簡単化のために、式(1)では、機体Aを包含する半径Raの球体を定義しているが、他にも機体Aの全ての部位を包含する更にコンパクトな空間を定義した上で、式(1)の関係を与えてもよい。
【0039】
次に、
図4~
図6を用いて、4D経路4と固定専有空間1との関係について説明する。
図4は、部分4D経路41を説明する図である。
図5は、複数の固定専有空間1A,1Bを連結する前の様子を説明する図である。
図6は、複数の固定専有空間1A,1Bを連結した後の様子を説明する図である。
【0040】
部分4D経路41は、4D経路4の一部を構成する。部分4D経路41は、
図4に示すように、3次元座標及び時刻から成る4次元ベクトル21の系列として表される。連結始点42及び連結終点43は、部分4D経路41の各端点である。
【0041】
固定専有空間1は、部分4D経路41の全ての点(全ての4次元ベクトル21)を、固定専有空間1を画定する境界面(表面)に接触しない状態で、部分4D経路41を包含するものとする。
【0042】
4D経路4は、
図5及び
図6に示すように、固定専有空間1Aに包含される部分4D経路41Aの連結終点43Aと、固定専有空間1Bに包含される部分4D経路41Bの連結始点42Bとを連結することによって構成されるものとする。すなわち、
図6に示すように、4D経路4は、固定専有空間1Aと固定専有空間1Bとの連なりとしての、空間の系列によって構成される。
図5及び
図6では、固定専有空間1Aの部分4D経路41Aと、固定専有空間1Bの部分4D経路41Bとを連結させる例を示しているが、4D経路4を構成する固定専有空間1及び部分4D経路41の数は、特に限定されず、3以上であってもよい。すなわち、4D経路4は、固定専有空間1の時系列として構成されるものである。
【0043】
次に、
図7を用いて、固定専有空間1と移動専有空間2との関係を説明する。
図7は、固定専有空間1と移動専有空間2との関係を説明する図である。
【0044】
固定専有空間1と移動専有空間2との関係は、機体Aの重心が部分4D経路41上にある場合、固定専有空間1が移動専有空間2の全てを包含する関係であるとする。具体的には、固定専有空間1及び移動専有空間2が閉包であるとし、固定専有空間1と移動専有空間2との関係は、次のように定義される。
定義(d3) 移動専有空間2を画定する境界面(表面)上の全ての点は、固定専有空間1の内点である。
定義(d4) 移動専有空間2を画定する境界面(表面)上の任意の点を重心とする半径LE>0の球(閉球)の表面は、固定専有空間1の境界面)に対して1点以上をもって接触する。
【0045】
定義(d3)及び(d4)によれば、
図7に示す移動専有空間2の境界面上の球71の半径LEがゼロになる場合に、固定専有空間1の境界面と移動専有空間2の境界面とは接触している(すなわち干渉している)と判断される。定義(d3)が満たされない場合には、固定専有空間1は移動専有空間2の全てを包含しておらず、移動専有空間2は固定専有空間1と重複しない部分(空間)があると判断される。
【0046】
定義(d3)及び(d4)によれば、固定専有空間1は、機体Aの重心が部分4D経路41上にある場合に、球の半径がLE>0であるように移動専有空間2を包含する空間である。すなわち、機体Aの重心が部分4D経路41上にある場合は、固定専有空間1の境界面と移動専有空間2の境界面とが接触することなく、移動専有空間2は完全に固定専有空間1の内側に位置するものとする。LEの定義によれば、LEは簡単には固定専有空間1の境界面と移動専有空間2の境界面との距離である。但し、厳密には、LEは、移動専有空間2の境界面上のあらゆるところで定義される。よって、固定専有空間1の境界面と移動専有空間2の境界面との距離は、LEの集合として規定されるものであることに注意する。すなわち、固定専有空間1の境界面と移動専有空間2の境界面との距離は、集合{LE(si)>0|si⊂Si}で規定される。
【0047】
固定専有空間1と部分4D経路41との位置関係は、機体Aの重心が部分4D経路41上にある場合に固定専有空間1の境界面と移動専有空間2の境界面とが接触せずに固定専有空間1が移動専有空間2を包含する関係にあることを介して、
図7に示すように、間接的に制約・決定されるものである。
【0048】
上記のような、固定専有空間1、移動専有空間2及び4D経路4の関係によれば、固定専有空間1及び移動専有空間2の形状は、
図8及び
図9に例示するように、特に限定されない。
図8は、固定専有空間1を円柱状81とし、移動専有空間2を球状82とした例を示す図である。
図9は、固定専有空間1を球状91とし、移動専有空間2を球状92とした例を示す図である。
【0049】
すなわち、固定専有空間1及び移動専有空間2の各形状は、球、立方体又は直方体等の凸空間を形成する形状であってもよいし、非凸空間を形成する形状であってもよい。言い換えると、固定専有空間1及び移動専有空間2の各形状は、3次元空間を形成することができる立体形状であれば何でもよい。
【0050】
図9は、固定専有空間1及び移動専有空間2が何れも球状を成すシンプルな例を示している。
図9の例では、移動専有空間92の境界面と機体Aの重心との距離LMは、シンプルに半径94である。固定専有空間91と移動専有空間92との距離LEは、最近距離95で代表することができる(LEを集合とみなす場合、最近距離95はMIN{LE})。また、固定専有空間91の球体中心は部分4D経路41上に位置するものとして、固定専有空間91と部分4D経路41の位置関係を簡単化することができる。これにより、運行管理システム6は、固定専有空間1及び移動専有空間2を設計する際の演算量を低減するができるので、4D経路4を計画する際の演算量を低減することができる。
【0051】
上記ように定義された固定専有空間1及び部分4D経路41に基づいて、4D経路計画部8は、各機体A,Bの4D経路4,4bを、固定専有空間1,1bの連結を介して、すなわち、固定専有空間1,1bの時系列を介して生成する。4D経路計画部8は、各機体A,Bの固定専有空間1,1bが、運行計画の全時刻で重複の無いような4D経路4,4bを計画することができる。よって、4D経路計画部8は、各機体A,B同士の衝突リスク(異常接近リスクを含む)が無い安全な4D経路4,4bを計画して各機体A,Bに提供することができる。
【0052】
加えて、4D経路計画部8は、
図10を用いて説明するように、空間効率の良い4D経路4,4bを計画することができる。
図10は、各機体A,Bの4D経路4,4bの軌道104,105が交差する場合を示す図である。
【0053】
4D経路4の軌道104とは、4D経路4を構成する各4次元ベクトル21の3次元座標を時刻順に繋いだ線である。4D経路4の軌道104は、各4次元ベクトル21の時刻を除いた3次元ベクトルの系列として構成される。4D経路4の軌道104は、機体Aの移動方向101に沿って延びる。4D経路4bの軌道105は、4D経路4bを構成する各4次元ベクトルの3次元座標を時刻順に繋いだ線であり、機体Bの移動方向102に沿って延びる。
【0054】
図10では、機体Aの4D経路4の軌道104と、機体Bの4D経路4bの軌道105とが、交点103において交差する。この場合であっても、4D経路計画部8は、固定専有空間1,1bの時系列として4D経路4,4bを設計するので、全時刻において各機体A,Bの一方が他方の固定専有空間に進入しないような4D経路4,4bを計画することができる。すなわち、4D経路計画部8は、機体Bが交点103を通過し交点103から十分離れた後に機体Aが交点103を通過するように、各機体A,Bの4D経路4,4bを固定専有空間1,1bの時系列として計画すればよい。例えば、4D経路計画部8は、機体Aが交点103を通過する時刻での機体Aの固定専有空間1が、当該時刻での機体Bの固定専有空間1bと重複しないように、4D経路4,4bを計画する。これにより、4D経路計画部8は、4D経路4,4bの軌道104,105が交差することを許容しつつ各機体A,B同士の衝突リスクが無い安全な4D経路4,4bを設計することができる。よって、4D経路計画部8は、軌道104,105が交差しないように経路を設計する従来の手法と比べて、空間効率の良い4D経路4,4bを計画することができる。
【0055】
次に、
図11及び
図12を用いて、固定専有空間設計部13により設計される固定専有空間1,1bの設計思想について説明する。
図11は、固定専有空間1,1bの設計思想を説明する図である。
図12は、運行管理システム6が管理する管理地域1201を説明する図である。
【0056】
図11では、機体Aが球状の移動専有空間2に完全に包含され、部分4D経路41上を移動し、部分4D経路41上の何れの位置にあっても、移動専有空間2のサイズ(体積)及び形状が変化しないものとする。
図11において、固定専有空間1102は、部分4D経路41を包含する。固定専有空間1102は、機体Aが部分4D経路41上の何れの位置にあっても、機体Aの移動専有空間2を包含している。
【0057】
図11に示す固定専有空間1102のサイズ及び形状は、風況と通信品質とを考慮したサイズ及び形状となっている。通信品質とは、運行管理システム6の通信装置17と機体Aとの通信の品質である。管理地域内の各地点では、風況や電波の伝播し易さが異なる場合がある。よって、固定専有空間設計部13は、風況と通信品質とを考慮して、固定専有空間1102のサイズ及び形状を設計する。
【0058】
図11において、部分4D経路41上の点群1104は、強風エリア1101内に存在している。これは、点群1104の示す3次元座標及び時刻においては、部分4D経路41が強風エリア1101内にあることを意味する。したがって、機体Aが点群1104を通過する際には、機体Aは強風エリア1101内にあり、強風に曝されることを意味する。この際、機体Aは場合によっては部分4D経路41上から逸脱するリスクがある。このような場合であっても移動専有空間2が固定専有空間1102に包含されるよう、固定専有空間設計部13は、点群1104周辺における固定専有空間1102のサイズを大きくした形状に設計する。これにより、仮に点群1104周辺において機体Aが部分4D経路41上から逸脱しても、移動専有空間2が固定専有空間1102に包含されるので、他の機体との衝突リスクが無い安全な4D経路4の設計が可能となる。
【0059】
また、
図11では、機体Aが点群1105を通過する際には、機体Aと運行管理システム6との通信が途絶する場合を想定している。この場合、固定専有空間設計部13は、機体Aの移動方向に沿って固定専有空間1102のサイズを大きくして、固定専有空間1102を通信品質マージン1103が設けられた形状に設計する。したがって、仮に点群1105周辺において通信途絶が発生しても、機体Aは部分4D経路41上を飛行することで、移動専有空間2が固定専有空間1102に包含され得る。このことは、たとえ通信途絶が発生しても、機体Aが部分4D経路41上を飛行することで、他機体との衝突リスクが無い安全な4D経路4の計画が可能であることを意味する。
【0060】
なお、機体Aの部分4D経路41からの逸脱(すなわち4D経路4からの逸脱)とは、時間的な遅れ/進みを含む。すなわち、機体Aが部分4D経路41上の或る点(3次元座標及び時刻)に、設計された時刻から遅れて到達した場合や、設計された時刻よりも早く到達した場合も、部分4D経路41からの逸脱である。通信品質マージン1103のような、移動方向に沿って固定専有空間1102の形状を大きくしてマージンを確保することは、通信途絶以外の要因における機体Aの時間的な遅れ/進みを許容する役割を果たす。したがって、このようなマージン確保によれば、仮に機体Aが部分4D経路41に対して、何かしらの要因で時間的な遅れ/進みが生じた場合であっても、移動専有空間2が固定専有空間1102に包含されるので、他機体との衝突リスクが無い安全な4D経路4の計画が可能となる。
【0061】
図12では、管理地域1201が半径1202で与えられているとする。ここで、運行管理システム6が存在を把握できている物体を、管理物体と定義する。運行管理システム6が存在を把握できていない物体を、非管理物体と定義する。複数の機体A,Bの4D経路4,4bを計画するにあたり、運行管理システム6が飛行の妨げとなる管理地域1201内の大小様々な障害物1206(例えば鳥又は小型ドローン等)を全て把握することは非現実的である。すなわち、管理地域1201内には、飛行の妨げとなる非管理物体が存在し得る。
【0062】
固定専有空間設計部13は、機体A及び機体Bのそれぞれが非管理物体を検知し自身の判断によって非管理物体を迂回して経路逸脱しても、固定専有空間1,1bの各境界面と移動専有空間2,2bの各境界面とがそれぞれ接触(干渉)しないよう、固定専有空間1,1bを設計する。すなわち、このように設計された固定専有空間1,1bを連結して4D経路4,4bを計画することにより、運行管理システム6は、管理地域1201内に存在し得る非管理物体を各機体A,B自身の判断によって迂回し得る自由度を許容する4D経路4,4bを計画することができる。
図3の例では、非管理物体である障害物31を迂回するために、機体Aは、機体A自身の判断によって4D経路4から逸脱する経路32を計画することができる。この経路32は、機体Aによる非管理物体の検知性能、及び、機体Aの運動性能に依存して計画される。よって、固定専有空間設計部13は、各機体A,Bにおける非管理物体の検知性能、及び、各機体A,Bの運動性能を考慮して、固定専有空間1,1bを設計する。このように、運行管理システム6は、管理地域1201内に非管理物体が存在し得ることが考慮された4D経路4,4bを計画することができる。
【0063】
次に、
図13を用いて、移動専有空間設計部14により設計される移動専有空間2,2bの設計思想について説明する。
図13は、移動専有空間2,2bの設計思想を説明する図である。
【0064】
図13は、各機体A,Bの固定専有空間1,1bと移動専有空間2,2bとを、
図9に示したように各々球体とする場合を示したものである。4D経路計画部8は、各機体A,B体の固定専有空間1、1bが互いに重複しないように4D経路4,4bを計画し、これにより、
図10に示したように空間効率の良い4D経路4,4bを計画することができる。よって、4D経路計画部8は、各機体A,Bの固定専有空間1,1bの境界面が、
図13のように互いに接触するような4D経路4,4bを計画することができる。
【0065】
図13では、機体Aの固定専有空間1301の境界面と、機体Bの固定専有空間1301bの境界面とが接点1307で接触するように4D経路4,4bが設計されている。機体Aの移動専有空間1302の半径1303をRaA、機体Bの移動専有空間1302bの半径1303bをRaBとする。また、
図13は、機体A及び機体Bが各々、運行管理システム6が提供した4D経路4及び4D経路4bから諸事象で逸脱して経路1305,1305bを飛行している例を示している。
図13は、機体Aの移動専有空間1302の境界面が、固定専有空間1301の境界面に接点1304で接触し、機体Bの移動専有空間1302bの境界面が、固定専有空間1301bの境界面に接点1304bで接触している例を示している。
【0066】
このような場合であっても、各機体A,Bの移動専有空間1302,1302bが自身の固定専有空間1301,1301bに包含される場合は、両機体間距離1306は、(RaA+RaB)以下になることはない。すなわち、各機体A,Bの固定専有空間1301,1301bが互いに重複することなく、且つ、各機体A,Bの移動専有空間1302,1302bが自身の固定専有空間1301,1301bに包含される場合、各機体A,Bに設けた移動専有空間1302,1302bが他機体との衝突を回避するための安全マージンとなる。この安全マージンは、
図13の場合は簡単にはRaA+RaBとして与えられる。RaA+RaBは、上記の近接許容距離に相当し得る。したがって、このような移動専有空間1302,1302bを包含する固定専有空間1301,1301bを基に4D経路4,4bを計画する4D経路計画部8は、各機体A,Bが諸事象で4D経路4,4bを逸脱する場合であっても、各機体A,B同士の衝突リスクが無い安全な4D経路4,4bを計画することができる。
【0067】
次に、
図14及び
図15を用いて、4D経路4,4bの再計画機能について説明する。経路計画装置7は、より柔軟に、リアルタイム且つ動的に4D経路4,4bを計画できるよう、固定専有空間1,1bを修正して4D経路4,4bの再計画を行う。
図14は、4D経路4,4bの再計画機能を説明する図である。
図15は、経路計画装置7の警告発報機能を説明するブロック図である。
【0068】
図14において、機体Aの移動専有空間1302が固定専有空間1301に包含されなくなる事態を回避するため、経路計画装置7は、固定専有空間1301を次のように修正して、4D経路4を再計画する。すなわち、固定専有空間設計部13は、機体Aの移動専有空間1302の境界面が固定専有空間1301の境界面に接触する(干渉する)と、両者の境界面の接触(干渉)が解消するよう、機体Aの固定専有空間1301を固定専有空間1402のように修正する。そして、4D経路計画部8は、修正された固定専有空間1402に応じて新たに4D経路1401を再計画する。これにより、機体Aが諸事象で4D経路4から逸脱しても、移動専有空間1302が固定専有空間1301に包含されなくなる事態が回避され得る。したがって、このような再計画が行える場合、4D経路計画部8は、各機体A,Bが諸事象で4D経路4,4bを逸脱する場合であっても、各機体A,B同士の衝突リスクが無い安全な4D経路4,4bを計画することができる。
【0069】
なお、4D経路4,4bの再計画機能に関して、固定専有空間設計部13は、再計画の対象である機体だけでなく、周辺の他機体の固定専有空間を修正することができる。そして、4D経路計画部8は、修正された他機体の固定専有空間に応じて他機体の4D経路を再計画することができる。これにより、経路計画装置7は、自機体の固定専有空間を修正することが難しい程に他機体と接近した状況であっても、他機体の4D経路を再計画することができるので、管理下の機体全体の4D経路に対して安全且つ空間効率の良い4D経路を計画することができる。
【0070】
このような再計画を行うか否かの判定は、
図1の空間干渉判定部15が行う。空間干渉判定部15は、固定専有空間設計部13及び移動専有空間設計部14から各機体A,Bの固定専有空間1,1b及び移動専有空間2,2bの各サイズ及び各形状の情報を取得する。空間干渉判定部15は、機体Aの位置情報5に基づいて、機体Aの固定専有空間1の境界面と移動専有空間2の境界面との両者が接触する(干渉する)か否かを判定する。空間干渉判定部15は、機体Bの位置情報5bに基づいて、機体Bの固定専有空間1bの境界面と移動専有空間2bの境界面との両者が接触するか否かを判定する。
【0071】
各機体A,Bにおいて、両者が接触すると判定された場合、空間干渉判定部15は、固定専有空間設計部13に固定専有空間1,1bの修正を指示すると共に、4D経路計画部8に4D経路4,4bの再計画を指示する。固定専有空間設計部13及び4D経路計画部8は、空間干渉判定部15からの指示を受けて、固定専有空間1,1bの修正、及び、4D経路4,4bの再計画を行う。
【0072】
なお、上述の境界面の接触判定に関して、移動専有空間2,2bが特定の形状の場合に限り、移動専有空間2,2bを、各機体A,Bの重心の移動に伴うものと定義しなくてもよい場合がある点に注意する。例えば、
図9のように固定専有空間91と移動専有空間92が何れも球状で回転に対して形状が不変であるような場合、機体Aの重心を固定専有空間91の重心と同じくする機体Aの移動に伴わない半径93-半径94の球体(空間)を定義し、この球体の内部を飛行する機体Aの重心が当該球体の境界面に接触するか否かをもって、移動専有空間92を、機体Aの重心の移動に伴うものと同等の境界面の接触判定が可能である。このように、移動専有空間2,2bは、その空間の形状に制約されない一般化された上位の概念である。
【0073】
4D経路4,4bの再計画機能は、固定専有空間1,1bのサイズを無駄のないコンパクトなものにする利点を提供する。再計画を認めない場合、4D経路4,4bの計画初期段階から固定専有空間1,1bのサイズを大きくせざるを得ないからである。したがって、4D経路4,4bの再計画機能は、空間効率の良い4D経路4,4bを計画することができる点に貢献することができる。
【0074】
しかしながら、4D経路4,4bの再計画を常に行えるわけではない。
図13は、
図14に示すような再計画が難しい状況の一例である。このような状況を鑑みて、経路計画装置7は、
図15に示すように、4D経路4,4bに沿って飛行するよう各機体A,Bに警告1501,1501bを送信する警告発報機能を有する。各機体A,Bの警告報知部1502,1502bは、警告1501,1501bを報知して、4D経路4,4bへの復帰を促す。これにより、各機体A,Bは、4D経路4,4bから逸脱する自由度を有しながらも、運行管理システム6から提供された4D経路4,4bに沿って飛行することができる。
【0075】
空間干渉判定部15は、固定専有空間1,1bの境界面と移動専有空間2,2bの境界面との両者が接触すると判定され、且つ、4D経路4,4bの再計画ができない(両者の干渉を解消するよう固定専有空間1,1bを修正できない)場合、警告1501,1501bを各機体A,Bに送信する。4D経路4,4bの再計画を行うことが可能であるか否かの判定(可否判定)は、各機体A,Bの位置情報5,5bと、固定専有空間1,1b及び移動専有空間2,2bの各サイズ及び各形状の情報と、に基づき行われる。この再計画の可否判定は、例えば、
図13のように、固定専有空間1,1bの隣接状況や、各機体A,Bの4D経路4,4bからの逸脱量を、判定基準として行われる。
【0076】
4D経路計画部8は、4D経路4,4bを計画するにあたり、固定専有空間1,1bの情報が必要である。4D経路4,4bは、固定専有空間1,1bに包含される部分4D経路の連結で構成され、結果として、固定専有空間1,1bの時系列として設計されるからである。また、固定専有空間1,1bは、移動専有空間2,2bを包含する。更に、固定専有空間1,1bのサイズ及び形状は、移動専有空間2,2bのサイズ及び形状に依存する。したがって、4D経路計画部8は、4D経路4,4bを計画するにあたり、固定専有空間設計部13及び移動専有空間設計部14から固定専有空間1,1b及び移動専有空間2,2bの情報を取得する必要がある。
【0077】
固定専有空間1,1bは、可能な限り大きく設計できれば望ましいが、固定専有空間のサイズを極端に大きく設計すると空間効率が犠牲になり、結果として運行効率の低下に繋がる。運行効率とは、離着陸可能な地上の一機体のための所定のエリア(複数存在してもよい)に対して、単位時間当たりに何回の離着陸ができるかを示すスカラ値とする。仮に、離着陸回数で利用者のペイメントが発生するとすれば、運行管理システム6には、ビジネス観点から運行効率の向上が要求される。すなわち、4D経路4,4bには空間効率の良さが求められる。
【0078】
移動専有空間2,2bのサイズ及び形状は、移動専有空間2,2bの役割から、想定される不確実性によって決定される。各機体A,Bの運行に係る不確実性としては、各機体A,Bの位置計測誤差、各機体A,Bとの通信品質、及び、4D経路4,4bへの追従誤差の問題が挙げられる。位置計測誤差の問題は、各機体A,Bの位置計測に生じる誤差が拡大したり、位置計測の信頼性(3σ又は6σ等)が低下したりする問題である。通信品質の問題は、各機体A,Bと運行管理システム6との通信が遅延したり、途絶したりする問題である。4D経路4,4bへの追従誤差の問題は、各機体A,B自体の性能と、風況等の外環境とに依存する問題である。移動専有空間2,2bは、これらの不確実性が存在しても、各機体A,Bが他機体との衝突リスクが無い安全な距離を確保できるように設計される。なお、固定専有空間1,1bも同様に、これらの不確実性が存在しても、他機体との衝突リスクが無い安全な4D経路4,4bを計画可能なように設計される。
【0079】
図1の風況予測装置10は、管理地域1201内の各地点の風況を所定時間未来まで予測し、風況情報12を専有空間設計部9に随時提供する。風況等の外環境に依存する4D経路4,4bへの追従精度は、各地点の風況とその地点を通過する時刻に依存している。したがって、移動専有空間設計部14が風況情報12に基づき4D経路4,4bへの追従精度を考慮して移動専有空間2,2bを設計するには、4D経路4,4b若しくは部分4D経路が与えられる必要がある。また、固定専有空間設計部13が4D経路4,4bへの追従精度を考慮して固定専有空間1,1bを設計するには、4D経路4,4b若しくは部分4D経路が与えられる必要がある。また、通信品質は、管理地域1201内の各地点でばらつきがある場合も想定される。このような観点から、固定専有空間設計部13が通信品質を考慮して固定専有空間1,1bを設計するには、4D経路4,4b若しくは部分4D経路が与えられる必要がある。
【0080】
したがって、
図1の経路計画装置7は、4D経路計画部8と専有空間設計部9とで互いに必要な情報を共有しつつ、固定専有空間1,1b及び移動専有空間2,2bの設計と、4D経路4,4bの計画とを反復して行う。これにより、経路計画装置7は、安全且つ空間効率の良い4D経路4,4bを計画して各機体A,Bに提供することができる。
【0081】
4D経路4,4bの再計画は、空間干渉判定部15からの指示を受けた場合に行われることに限定されない。
図12に示すように、管理地域1201内に新たな機体Cが進入した場合や、管理地域1201内の機体Dが管理地域1201外に退出した場合にも行われ得る。また、4D経路4,4bの再計画を行う必要があるか否かの判定(要否判定)は、所定周期で定期的に行われてもよい。すなわち、経路計画装置7は、各機体A,Bが4D経路4,4bの始点から終点に到達するまでの間に所定周期で4D経路4,4bの位置情報5,5bを取得し、位置情報5,5bの取得毎に、4D経路4,4bを再計画する必要があるか否かを判定してもよい。これにより、経路計画装置7は、安全且つ空間効率の良い4D経路4,4bをリアルタイム且つ動的に計画し易くすることができ、常に最適な4D経路4,4bを各機体A,Bに提供することができる。なお、既に提供された4D経路4,4bに沿って各機体A,Bが飛行しているのであれば、4D経路4,4bの再計画を高頻度で行う必要はない。
【0082】
次に、
図16~
図19を用いて、管理物体に対して設計される専有空間1610について説明する。
図16~
図19は、管理物体に対して設計される専有空間1610の一例を示す図である。
【0083】
ここまでは、他機体との衝突リスク、及び、非管理物体との衝突リスクを考慮した安全な4D経路4,4bの計画について説明してきたが、経路計画装置7は、管理物体との衝突リスクを考慮した安全な4D経路4,4bを計画することができる。具体的には、専有空間設計部9は、各機体A,Bの飛行の妨げとなる管理物体に対して、各機体A,Bの進入を許容しない専有空間1610を設計する。各機体A,Bの固定専有空間1,1bと各管理物体に対して設計される専有空間1610とは、全時刻において互いに重複しないように設計される。
【0084】
管理物体としては、例えば、
図16に示すように、各機体A,Bの視程を奪う雲が存在するエリアのような飛行の妨げとなる気象エリア1601や、鳥の群れ等の飛翔物1602が挙げられる。
図16では、専有空間設計部9は、気象エリア1601及び飛翔物1602のそれぞれに対して専有空間1610を設計する。これにより、4D経路計画部8は、気象エリア1601による経路逸脱や飛翔物1602との衝突リスクを考慮して、4D経路4,4bを計画することができる。なお、管理物体であるか非管理物体かは、これらを観測し、これらの存在を把握する運行管理システム6の観測装置の性能に依存している点に注意する。
【0085】
また、管理物体としては、例えば、
図17に示すように、電波塔又は高層ビルのような、各機体A,Bの飛行の妨げとなる地上構造物1701が挙げられる。
図17では、専有空間設計部9は、地上構造物1701に対して専有空間1610を設計する。これにより、4D経路計画部8は、地上構造物1701との衝突リスクを考慮して4D経路4,4bを計画することができる。
【0086】
また、管理物体としては、例えば、
図18に示すような、原子力発電所等の重要施設や住宅地等の人口密集地区の上空といった飛行禁止エリア1801が挙げられる。
図18では、専有空間設計部9は、飛行禁止エリア1801に対して専有空間1610を設計する。これにより、4D経路計画部8は、飛行禁止エリア1801への進入回避を考慮して4D経路4,4bを計画することができる。飛行禁止エリア1801への墜落による被害や、騒音被害が回避され得る。
【0087】
また、管理物体として、例えば、
図19に示すような、山間部に存在する鉄塔1901及び電線1902が挙げられる。
図19では、専有空間設計部9は、鉄塔1901及び電線1902のそれぞれに対して専有空間1610を設計する。すなわち、専有空間設計部9は、電線1902のような空中に跨る管理物体に対しても専有空間1610を設計することができる。これにより、4D経路計画部8は、鉄塔1901及び電線1902との衝突リスクを考慮して4D経路4,4bを計画することができる。
【0088】
ここまで説明したように、運行管理システム6は、管理下の他機体又は管理物体との衝突リスクが無い安全且つ空間効率の良い4D経路を、リアルタイム且つ動的に、自動計画することができる。しかも、運行管理システム6は、各機体自身の判断による非管理物体の迂回に起因する経路逸脱や、風況等の外環境に起因する経路逸脱や、位置計測誤差等に起因する経路逸脱等を許容するロバスト性の高い4D経路を計画することができる。
【0089】
また、運行管理システム6のような航空機の離着陸場に適用され得る運行管理システムは、現実的な課題として、管理対象の航空機を垂直離着陸機に限定する場合であっても、管理地域内を固定翼機が飛行することを想定する必要がある。これは、固定翼機が運行管理システムの管理地域内を通過する場合が想定されるためである。垂直離着陸機と固定翼機とを管理下におく場合、航空機特有の課題として、これら機体がその場で待機したり、飛行を停止したりすることを前提として4D経路を計画することができるわけではない。すなわち、初期の経路計画の段階、及び、その後の再計画の段階の何れにおいても、機体のその場での待機又は飛行停止を極力選択することの無い中長期の時刻までを想定した4D経路を計画することが重要である。
【0090】
運行管理システム6は、固定専有空間の連結によって、始点から終点まで飛行する機体の飛行目的を達成し得る中長期の4D経路を計画することができるので、その場での待機ができない固定翼機を管理下とする場合でも、機体のその場での待機又は飛行停止を極力選択することの無い4D経路を、リアルタイム且つ動的に、自動で計画することができる。
【0091】
また、運行管理システム6は、特許文献1のように運行管理システム6の管理地域を複数エリアに分割し、各エリアの飛行可能/禁止を管理するものではない。運行管理システム6は、飛行可能/禁止の判断が分割されたエリア毎で離散的なものにならず、離散的に分割されたエリアの境界面での取り扱いが困難となる問題が発生せず、きめ細かい4D経路を容易に計画することができる。
【0092】
なお、運行管理システム6は、固定専有空間及び移動専有空間の設計と、4D経路の計画とを反復して行う際に、所定の評価項目又は所定の制約を設けて、これらを満たすように4D経路を計画してもよい。例えば、運行管理システム6は、運行効率向上の観点から、4D経路の経路長の低減量、又は、始点から終点までの移動時間の低減量等を、所定の評価項目として設けてもよい。また、例えば、運行管理システム6は、機体の乗り心地の観点から、4D経路の曲率を所定値以下にすること等を、所定の制約として設けてもよい。
【0093】
次に、
図20及び
図21を用いて、運行管理システム6によって行われる処理の流れについて説明する。
図20は、運行管理システム6によって行われる処理のフローチャートである。
図21は、
図20に続いて行われる処理のフローチャートである。
【0094】
ステップS2001において、運行管理システム6は、管理下の各機体の機体情報、各機体の運行情報、並びに、管理地域及び管理物体の観測情報を取得する。機体情報は、機体の寸法及び性能(非管理物体の検知性能及び運動性能を含む)の情報、並びに、位置計測性能(位置計測誤差)の情報等を含む。運行情報は、各機体の始点、経由地点及び終点(通過時刻を含む)の情報等を含む。観測情報は、管理物体の位置及び大きさ等の情報、並びに、各機体との通信品質の情報を含む。
【0095】
ステップS2002において、運行管理システム6は、各機体の位置情報を取得する。
【0096】
ステップS2003において、運行管理システム6は、取得された各種情報に基づいて、部分4D経路を各機体に対して設計する。そして、運行管理システム6は、部分4D経路上に重心がある機体を包含する移動専有空間を、各機体に対して設計する。更に、運行管理システム6は、管理物体に対する専有空間を設計する。そして、運行管理システム6は、移動専有空間(及び部分4D経路)を包含する固定専有空間を、各機体に対して設計する。
【0097】
ステップS2004において、運行管理システム6は、管理物体に対する専有空間と各機体の固定専有空間とが全時刻において重複しないように、固定専有空間の連結によって、始点から終点までの4D経路を各機体に対して計画する。
【0098】
ステップS2005において、運行管理システム6は、管理地域内の各地点において予測される風況を示す風況情報を取得する。
【0099】
ステップS2006において、運行管理システム6は、取得された風況情報に基づいて、部分4D経路、移動専有空間、及び、固定専有空間の少なくとも1つを修正する。また、通信品質等の地点に依存する不確実性が存在する場合、これらも考慮して、部分4D経路、移動専有空間、及び、固定専有空間の少なくとも1つを修正する。運行管理システム6は、管理物体に対する専有空間と各機体の固定専有空間とが全時刻において重複せず、且つ、4D経路に対して所定の評価項目又は所定の制約を設けられている場合は、これらを満たすように、部分4D経路、移動専有空間、及び、固定専有空間の修正を反復継続する。そして、運行管理システム6は、4D経路を各機体に対して再計画する。
【0100】
ステップS2007において、運行管理システム6は、再計画された4D経路を各機体に対して送信する。各機体は、運行管理システム6から送信された4D経路に沿って飛行することができる。
【0101】
ステップS2008において、運行管理システム6は、管理地域内の機体に増減があるか否かを判定する。機体の増減が有る場合、運行管理システム6は、ステップS2001に移行する。これにより、運行管理システム6は、管理地域内に新たな機体が進入した場合や、管理地域内の機体が管理地域外に退出した場合にも、これに対応した4D経路を再計画することができる。機体の増減が無い場合、運行管理システム6は、ステップS2009に移行する。
【0102】
ステップS2009において、運行管理システム6は、各機体の位置情報を取得する。
【0103】
ステップS2010において、運行管理システム6は、各機体が終点に着陸したか否かを判定する。各機体が終点に着陸した場合、運行管理システム6は、
図20及び
図21に示す本処理を終了する。各機体が終点に着陸していない場合、運行管理システム6は、終点に着陸していない機体、すなわち飛行中の機体を対象としてステップS2011に移行する。
【0104】
ステップS2011において、運行管理システム6は、4D経路から逸脱した機体が存在するか否かを判定する。経路逸脱した機体が存在しない場合、飛行中の機体を対象としてステップS2008に移行する。経路逸脱した機体が存在する場合、運行管理システム6は、4D経路から逸脱した機体に対して、移動専有空間の境界面と固定専有空間の境界面との両者が接触する機体が存在するか否かを判定する。これにより、運行管理システム6は、両者が干渉する機体が存在するか否かを判定する。両者が干渉する機体が存在する場合、運行管理システム6は、両者が干渉する機体を対象としてステップS2012に移行する。両者が干渉する機体が存在しない場合、運行管理システム6は、飛行中の機体を対象としてステップS2008に移行する。
【0105】
ステップS2012において、運行管理システム6は、4D経路の再計画が可能である機体が存在するか否か判定する。4D経路の再計画が可能な機体が存在する場合、運行管理システム6は、4D経路の再計画が可能な機体を対象としてステップS2001に移行する。4D経路の再計画が可能な機体が存在しない場合、運行管理システム6は、4D経路の再計画が不可能な機体を対象としてステップS2013に移行する。
【0106】
ステップS2013において、運行管理システム6は、4D経路の再計画が不可能な機体に対して、4D経路に沿って飛行するよう警告を送信する。その後、運行管理システム6は、飛行中の機体を対象としてステップS2008に移行する。
【0107】
以上のように、本実施形態の運行管理システム6は、垂直離着陸機のような機体の飛行を管理する運行管理システムである。運行管理システム6は、機体が通過する予定の位置及び時刻の系列として表される当該機体の4D経路を計画する4D経路計画部8を備える。運行管理システム6は、他機体の進入を許容しない当該機体の専有空間として、当該機体を包含し当該移動体と共に移動する移動専有空間と、移動専有空間を包含し4D経路に沿う固定専有空間とを設計する専有空間設計部9を備える。4D経路計画部8は、当該機体の飛行中、移動専有空間と固定専有空間との位置関係に基づいて、4D経路を再計画する。
【0108】
これにより、本実施形態の運行管理システム6は、移動専有空間及び固定専有空間という二重の専有空間が機体に対して設けられているので、機体の経路逸脱を許容しつつ他機体との衝突リスクの無い安全な4D経路を計画することができる。しかも、運行管理システム6は、機体の飛行中に4D経路を再計画することができるので、飛行中に様々な事象が発生しても、これに対応できる安全な4D経路を随時計画し、機体に提供することができる。同時に、運行管理システム6は、機体が通過する予定の位置だけでなく通過する時刻を考慮して4D経路を計画するので、他機体の4D経路の軌道と交差する4D経路を許容することができ、空間効率の良い4D経路を計画することができる。しかも、運行管理システム6は、機体の飛行中に4D経路を再計画することができるので、機体の飛行中に様々な事象が発生しても、これに対応した空間効率が良い4D経路を随時計画し、機体に提供することができる。よって、本実施形態によれば、運行中に発生する諸事象に対応して運行経路を安全且つ空間効率良く最適化することが可能な運行管理システム6を提供することができる。
【0109】
また、本実施形態の専有空間設計部9は、移動専有空間を設計する移動専有空間設計部14と、固定専有空間を設計する固定専有空間設計部13と、移動専有空間を画定する境界面と固定専有空間を画定する境界面との両者が干渉するか否かを判定する空間干渉判定部15と、を有する。固定専有空間設計部13は、両者が干渉すると判定された場合、両者の干渉を解消するよう固定専有空間を修正する。4D経路計画部8は、修正された固定専有空間に応じて4D経路を再計画する。
【0110】
これにより、本実施形態の運行管理システム6は、比較的簡単な手法によって衝突リスクの無い4D経路を確実に再計画することができるので、安全且つ空間効率の良い4D経路を確実且つ容易に計画し、機体に提供することができる。
【0111】
[実施形態2]
図22を用いて、実施形態2の運行管理システム6について説明する。実施形態2の運行管理システム6において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
図22は、実施形態2の運行管理システム6の構成の一例を示すブロック図である。
【0112】
実施形態1の運行管理システム6は、固定専有空間及び移動専有空間に基づいて各機体の4D経路を計画し、4D経路を各機体に送信していた。実施形態1の運行管理システム6は、各機体自身が固定専有空間及び移動専有空間を認識する必要がなく、各機体の離着陸の運行管理を行うことができる。これは、運行管理システム6が、様々なスペックの機体の離着陸の運行管理を行う上で、固定専有空間及び移動専有空間を認識する機能を、各機体に要求しないという点において有効である。
【0113】
ところで、運行管理システム6の立場からすれば、各機体においては提供した4D経路を遵守した飛行が望ましく、また、固定専有空間の境界面と移動専有空間の境界面との干渉を契機として、4D経路を再設計することが頻繁に行われる状況は避けたい。このような理由から、実施形態2の運行管理システム6は、
図22に示すように構成されていてもよい。
【0114】
すなわち、実施形態2の運行管理システム6は、経路計画装置7が、各機体A,Bに対して警告1501,1501bをそれぞれ発報する機能に加えて、固定専有空間及び移動専有空間を示す情報2201,2201bを各機体A,Bにそれぞれ送信する機能を備える。実施形態2の各機体A,Bは、運行管理システム6から送信された情報2201,2201bから固定専有空間1,1b及び移動専有空間2,2bを認識する専有空間認識部2202,2202bを備える。そして、実施形態2の各機体A,Bは、認識された移動専有空間2,2b及び固定専有空間1,1bに基づいて経路を計画することができる。具体的には、実施形態2の各機体A,Bは、各機体A,B自身の判断によって、認識された移動専有空間2,2bが固定専有空間1,1bに包含される範囲内を限度として、運行管理システム6から送信された4D経路4,4bから逸脱する経路を計画することができる。これにより、実施形態2の運行管理システム6は、各機体A,Bが4D経路4,4bから逸脱する自由度を実施形態1よりも高めることができ、4D経路4,4bを再計画する頻度を低減することができる。
【0115】
なお、実施形態2において、運行管理システム6の管理下の全ての機体が専有空間認識部を備える必要はない。実施形態2の運行管理システム6は、専有空間認識部を備える機体にだけ、固定専有空間及び移動専有空間を示す情報を送信する。このような構成であっても、実施形態2の運行管理システム6は、4D経路を再計画する頻度を低減することができる。
【0116】
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0117】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0118】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1,1b…固定専有空間、2,2b…移動専有空間、4,4b…4D経路(運行経路)、5,5b…位置情報、6…運行管理システム、8…4D経路計画部(経路計画部)、9…専有空間設計部、12…風況情報、13…固定専有空間設計部、14…移動専有空間設計部、15…空間干渉判定部、1501,1501b…警告、1601…気象エリア、1602…飛翔物、1610…専有空間、1701…地上構造物、1801…飛行禁止エリア、A,B…機体(移動体)