(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113537
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】二枚貝開殻装置
(51)【国際特許分類】
A22C 29/04 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A22C29/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022027250
(22)【出願日】2022-02-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】504018633
【氏名又は名称】シンセメック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗林 宏光
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011MC02
4B011MC03
(57)【要約】
【課題】帆立貝等の二枚貝を人手などで簡便に載置して一方の貝殻と貝柱との結合部を連続的に切断して開殻する装置を提供する。
【解決手段】一方の貝殻面を下にして台板9に対して固定した位置に設けたストッパー11に貝の水平方向位置を規制した状態で台板9上面の三本の突起10の上に貝を載せ、押さえ部材12と突起10とで挟み込むように貝を固定し、上下方向に進退可能な切断手段17により貝殻の縁部を切断し開口部を形成する。その後、ナイフ13を開口部から挿入し、ナイフ13が下側となる貝殻内面に付勢しならが進退することで貝柱3と貝殻の結合部を切断し、開殻作業を行う。開殻後の貝は、押さえ部材12が後退した後、固定台板9を端部のヒンジ25を中心に回転させることで貝が排出される。また、上記の開殻装置を鉛直方向軸を中心にして連続的に回転するテーブル30の円周上に複数配置することにより連続的な開殻処理が可能となる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚貝のどちらか一方の貝殻面を下にし、貝殻の縁部の一部を固定台上に結合されているストッパーの直立した面に押し当てた状態で、下となる面を所定の間隔で離れた位置に直立した状態で台板上に固定された三本の突起で支持することで貝を安定的に台上に載置し、貝に対し突起と反対側に設けられた伸縮駆動手段で駆動される押さえ部材により貝を突起方向に押圧して固定することを特徴とする貝固定台。
【請求項2】
請求項1の固定台に固定された貝殻の面に対して上下方向に昇降する昇降駆動手段とその可動部に固定された切断手段と切断駆動手段が付加されたことを特徴とする貝殻切断装置。
【請求項3】
請求項2の貝殻切断装置に進退移動可能な板状のナイフとそれを貝殻切断後の開口部付近に位置決めする機構を付加し、進退駆動手段の非移動部に固定された請求項2の固定台に固定された貝側に下るような勾配を有するガイドと板状の部材端部にローラーが固定された押さえ部材とで隙間を形成し、ナイフをその隙間の拘束を受けながら移動させることで貝の開口部からナイフを貝内に挿入し、ナイフ先端を貝殻内面を滑らせながら進行させることで貝柱と貝殻の結合部を切断することを特徴とする開殻装置。
【請求項4】
請求項3の開殻装置に対して貝を支持する突起が固定されている台板の一端を回転自在なヒンジとし、台板の貝が支持されている面の反対面側に伸縮駆動手段を設け、その伸縮により伸縮駆動手段の可動部端に固定された押上部材を介して台板を押し上げることで台板の傾斜を変化させ載置状態の貝を台板上から排出することを特徴とする開殻装置。
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4の開殻装置を回転テーブルの円周上に複数配置し、連続回転状態で回転テーブルが設置されている床上の一部において人手などで最寄りの開殻装置の支持台上に貝を載置して、テーブルの回転中に当該貝の貝殻縁部の切断から貝柱と貝殻との接合部の切断までの処理を連続的に行うことを特徴とする連続開殻装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帆立貝等の二枚貝を人手などで簡便に載置して一方の貝殻と貝柱との結合部を切断して開殻する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二枚貝を代表するホタテ貝は、貝殻を外したむき身から貝柱を分離し、それを生のままもしくは冷凍した状態で流通している。多くの水産加工現場では貝柱の分離は手作業で行われており、多人数の熟練した作業員により大量の貝の処理が行われている。その作業においては、貝殻から身を外す作業に熟練が必要であることから、これまでに多くの貝殻から身を外す装置の開発が行われてきている。
【0003】
文献1、文献2では、貝殻の端部を切断し身と貝殻の結合部分を薄い板状のもので切断する方法が開示されている。
【0004】
文献3では、閉じている貝殻の外部から貝殻面に熱を加えて身と貝殻の結合部分を剥離させる方法が開示されている。
【0005】
文献4では、一方の貝殻を分離した後の他方の貝殻に残留する生食に用いる可食部を分離する装置に関する発明の中で、貝殻を載置して一時的に固定する方法と可食部分と貝殻の結合部分を薄い板状のもので切断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】平2-14014 特許公報
【特許文献2】特許第6866544号 特許公報
【特許文献3】特許第4436009号 特許公報
【特許文献4】特許第6736474号 特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1と特許文献2に示された開殻方法では、ターンテーブル上の所定の位置への原料貝の載置や貝先端の切断および貝柱と貝殻の結合部分の切断などの作業が間欠的なテーブルの停止期間中に行われることから処理に時間がかかり、且つ装置が複雑になるという課題があった。更に特許文献1のものは貝の載置においては、接触面となる貝殻面の曲面形状に対応したくぼみに載せることで貝の支持を行うことから、自然物である貝殻形状がバラツクことで支持が不安定となり貝柱と貝殻の結合部の切断が不良となる課題があった。更に、特許文献1の開殻方式では薄い板状の刃物で貝柱と貝殻との結合部の切断が行われているが、その刃物はエアーシリンダの可動部に直結されており、貝内面への接触は刃物の押し込みと刃物自体の弾性を利用しており、刃物を適正な角度で貝柱の根元に押し込むためにはある程度の剛性が与えられているため、刃物の弾性による刃先の貝殻内面への追従性が犠牲となり、その結果、貝柱の貝殻内面への残存が多くなる課題がある。
【0008】
また、特許文献3に示された開殻方法は、貝殻の外部からの加熱による身と貝殻の結合部分を分離することによるもので、自然生物である貝の厚さにはバラツキがあり貝柱などに熱変性を起こさないよう熱の加減を細やかに調節することが困難であり想定以上の熱変性が避けられないという課題があった。更にこの開殻装置のものは特許文献1同様、貝の載置においては、接触面となる貝殻面の形状に対応したくぼみに載せることで貝の支持を行うことから、自然物である貝殻形状がバラツクことで支持が不安定となる課題があった。
【0009】
また、特許文献4には加工時の貝の一時固定方法が提案されているが、板に設けられた孔に下となる貝殻面をはめ当て、その上で上方から貝殻を押さえて固定する方法であり、孔と貝殻面とのすき間が生じることは貝殻が自然物であるが故に避けがたく貝の板孔への接触が不完全となり、ナイフの上下方向の反りの拘束がないために生じるナイフ先端の貝殻内面への追従性不良も加わり、可食部の切断分離精度がでないという課題があった。
【0010】
また、帆立貝から貝柱を分離する水産加工現場では、少人数で効率良く貝柱を分離できる調整箇所が少なく故障による装置停止が少ない安定した生産が保証される装置が望まれている。
【0011】
また、多くの水産加工現場において行われている手作業による開殻作業では、鮮度が良く貝柱の収縮力により強く閉まった貝に工具を挿入して貝柱と貝殻との結合部分を切断することができるようになるにはかなりの熟練を要し、未熟練な作業者においては分離される貝柱の一部が貝殻側にのこり歩留が悪くなることがよくある。
【0012】
本発明は、現場作業の要求に応えることを最終目標に前記の従来技術の課題を解決するためになされたものであって、人手などで原料貝を所定の位置に置くことを前提として構造を簡素化したもので、確実な開殻作業を連続的に行うことにより処理能力を確保するとともに、故障が発生した場合でも生産が全停止することを避けることを実現する装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明の固定台は、台の基本部材となる台板と所定の間隔で離れた位置に直立した状態で当該台板の上面に固定された三本の突起と貝載置の水平方向の位置を規制する方向に直立した面を持つストッパーと突起上に載置された貝を伸縮駆動手段の可動部に固定された押さえ部材と突起で挟み込むように貝を固定する伸縮駆動手段と押さえ部材からなることを特徴とする。なお、本発明の固定台において貝を支持する3本の突起の高さを調整可能なものとすることで、載置する貝の処理内容に適するように貝の傾きの設定が可能となる。
【0014】
第2の発明の貝殻切断装置は、前記固定台の上方に上下方向に昇降可能な移動機構を具備し、その可動部に切断手段と切断駆動手段が固定され、切断手段が第1の発明の固定台に固定された貝に対して接触することにより貝の先端部分を切断することが可能となっていることを特徴とする。
【0015】
第3の発明の開殻装置は、第2の発明の切断装置に前後に移動することが可能な伸縮駆動手段と板状のナイフ、及びナイフの移動を拘束するガイドと押さえ部材、ナイフを貝殻切断後の開口部付近に位置決めする機構を付加し、ナイフを伸縮移動手段の可動部に固定し、進退駆動手段の非移動部に固定された第2の発明の固定台に固定された貝側に下るような勾配を有するガイドと板状の部材端部にローラーが固定された押さえ部材とで隙間を形成し、ナイフをその隙間の拘束を受けながら移動させることで、ナイフを前記切断装置により貝の先端部分に形成される開口部から前傾した姿勢で挿入し、ナイフが下側となる貝殻内面に付勢しならが進退することで貝柱と貝殻の結合部の切断が可能となることを特徴とする。
【0016】
第4の発明の開殻装置は、貝を支持する突起が固定された台板の端部に回転自在なヒンジを設け、その軸を装置の構造枠に固定した支柱材で受け別途構造枠に固定された伸縮駆動手段の可動部に設けた押上部材で台板の貝の載置面と反対側の面を押し上げることで台板の傾斜を変化さることが可能となることを特徴とする。
【0017】
第5の発明の連続開殻装置は、第3もしくは第4の発明の開殻装置を鉛直方向の軸を中心にして連続的に回転するテーブルの円周上に複数配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明の貝殻固定台は、貝の一方の貝殻面を3点で支持することにより全ての突起が貝殻面に確実に当たることとなり、板の前後方向の規制と相まって、一般に使われている貝殻曲面よりも一回小さな凹型や中央部が抜けたリング状の孔による支持に対して安定性が優れる。また、平面を規定する最小限の3点分の支持部材のみの単純な構成となり、障害物の少ない空間が増え、手置き時の載置性も良くなる。また、貝殻切断などの貝が外力を受ける場合においては押さえ部材が貝を突起とで貝を挟み込むように貝を固定することで、外力に耐え得る貝の強固な一時固定が可能となる。更に、貝の一時固定は伸縮駆動手段の操作により押さえ部材を後退させることで容易に解除できる。なお、3つの支持突起の高さは固定後に行う処理に応じて高さを設定することで支持物の傾きを自在に調整することが可能となる。
【0019】
第2の発明の貝殻切断装置は、第1の発明により強固に一時固定された原貝を昇降駆動手段により切断手段を貝の上方から装置のフレームに固定されているガイドに倣って下降させて貝殻の縁部を安定な状態で効率的に切断することが可能となる。
【0020】
第3の発明の開殻装置によれば、押さえ部材や切断手段が上昇した障害物が少ない状態で人手により容易に原貝を固定台に置くことができ、載置された貝は押さえ部材で一時固定された後、切断手段が下降して安定した固定状態で貝殻縁部を切断して開口部を形成することが可能となる。また、貝縁部に開口部が形成された後、その位置で、ナイフ押さえとナイフガイドにより形成される隙間による拘束を受けながら弾性的な板状のナイフがその隙間を貝方向に前傾した貝柱と貝殻との結合界面近傍の切断にとって適した角度を保たれた状態で下となった貝殻内面に挿入され、ナイフ先端が貝殻内面に接した後ナイフ自体の弾性で貝殻内面上を滑らせながらナイフを進退させることで貝柱と貝殻の結合部の貝柱を極力残さない切断ができ、安定した開殻が可能となる。なお、貝柱と貝殻の結合部の切断においては、ナイフの貝に対する挿入角度を得るために3つの支持突起の高さ設定による貝の姿勢調整が重要となる。
【0021】
第4の発明の開殻装置によれば、伸縮駆動手段により駆動された押上部材により台板の下から急速に押し上げて台板の傾斜を変化させ第3の発明の効果により貝柱と貝殻の結合部の切断が完了した開殻された貝を安定的に台板上から排出することができ、落下位置付近に開殻貝を受ける容器を置くことで開殻貝の収集も容易となる。
【0022】
第5の発明によれば、第3もしくは第4の発明の開殻装置が連続回転するテーブル上に複数台固定されており、テーブルの土台となるフレームが固定されてる床の特定の位置から人手などで貝を回転しているテーブル上の開殻装置の固定台上に貝を載置するだけで、押さえ部材により貝が一時固定された後、テーブルの回転と同時に一連の開殻処理を進行させることができる。また、開殻処理済の貝が排出される位置付近に開殻貝を受け止める容器を設置することで貝を載置位置で目の前に来る開殻装置に次々貝を載せるだけで貝の開殻を連続的行うことが可能となる。更に、同じ処理を行う同一の装置を複数台配置することで、一部の開殻装置が故障しても残りの装置で生産能力が落ちることになっても残りの正常な開殻装置で生産を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】食用の二枚貝を代表するホタテ貝の外観の特徴を示す図である。
【
図2】ホタテ貝の内部構造を示す上貝を下にした場合の構造図である。
【
図3】本発明における第1発明の一実施例に係る貝固定台の構成・構造を示す図である。
【
図4】本発明における第1発明の一実施例に係る上貝殻を下にした場合の突起による貝の支持状態を示す図である。
【
図5】本発明における第1発明の一実施形態に係る上貝殻を下にした場合のストッパーによる貝の載置時の水平方向の規制状態を示す図である。
【
図6】本発明における第1発明、第2発明、第3発明、第4発明における一実施形に係る貝の載置から開殻処理までの行う開殻装置の構造を示す図である。
【
図7】本発明における第4発明における一実施形態に係る開殻装置の載置から開殻までの一連の動作を示す図である。
【
図8】本発明における第2発明の一実施形態に係る上貝殻を下にした場合の貝切断装置の貝殻切断状況を示す図である。
【
図9】本発明における第3発明の一実施形態に係る上貝殻を下にした場合の貝柱と貝殻の結合部の切断状況示す図である。
【
図11】本発明における第3発明の一実施形態に係る上貝殻を下にした場合の貝柱貝殻との接合部切断時ナイフの付勢方法を示す図である。
【
図12】本発明における第4発明の一実施形態に係る開殻貝排出機構を示す図である。
【
図13】本発明における第5発明の一実施形態に係る連続開殻装置の構成・構造を示す図である。
【
図14】本発明における第5発明の一実施形態に係る連続開殻装置の連続処理の流れを示す図である。
【
図15】本発明における第5発明の一実施形態に係る連続開殻装置動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明1の一実施形態について、
図1と
図2に示すホタテ貝を対象として
図3と
図4および
図5を用いて説明する。
図3に示すように本発明の貝固定台は、所定の間隔で離れた位置に直立した状態で台板9の上面に固定された三本の突起10と当該台に水平方向の位置を規制する方向に直立した面を有するストッパー11と載置された貝1の上部に配置される押さえ部材12と押さえ部材12が可動部に固定された伸縮駆動手段23により構成される。固定の手順としては、
図4に示すように平坦な面を有する上貝殻2Aを突起10に当てるように貝1を載せ、水平方向に対しては
図5に示すように貝端部をストッパー11の直立面に当て移動を規制し、載置を確立する。その上で載置された貝1を突起10とで挟み込むように押さえ部材12を押し付けることで貝1を台板9上に固定する。なお、突起10は固定後の処理に合わせて長さが可変となるものを用いて貝の姿勢を調整しても良く、押さえ部材12は固定時の貝との接触における衝撃を緩和し接触状況をより良くするためにもその接触部は樹脂材のような柔軟な材料でできている方が望ましい。本説明では、貝柱と貝殻との結合部の切断処理を考慮してより平坦な上貝殻2Aを下側にするようにしているが、下貝殻2Bを下にするように固定しても良い。
【0025】
次に本発明2の一実施形態について、ホタテ貝を対象として
図6と
図7および
図8を用いて説明する。本発明の貝殻切断装置は、発明1の固定台と切断手段17と切断手段17を動作させる切断駆動手段18および切断に係る機構を上下方向に昇降する昇降駆動手段22、昇降の案内をする機構(ロッド21,ガイド20)より構成される。本装置により発明1の固定方法で固定された貝の上部から昇降手段22により切断駆動手段18により動作される切断手段17が上ベース16側に固定されたガイド20と切断駆動手段18側に固定されてたロッド21との摺動により切断手段17が固定台上の貝1に接近し、貝殻を切断する。この時、ホタテ貝の場合は貝柱3の存在位置が貝殻の中央ではなく貝殻の中心軸に対して上貝殻2Aを下にし、身の方から蝶つがい8側を手前側にして下となる貝を見ると必ず右方向に寄っている。そのため、本発明の装置では貝の突起10への載置時、貝1をストッパー11の規制面に対して蝶つがい部を手前にして貝を角度を付けて置くことにより、貝殻のカットラインが
図8のC-Cのようになり、開口部からの切断工具となるナイフ13の貝柱3までの挿入が容易となる。なお、切断手段17としては回転刃が想定される。
【0026】
次に本発明3の一実施形態について、
図7と
図9および
図10、
図11を用いて説明する。本発明の開殻装置は、発明2の貝殻切断装置とナイフ13とナイフを出し入れする伸縮駆動手段19およびナイフ13の貝1の開口への侵入角度を規制するナイフガイド28とナイフ押さえ29から構成される。なお、この実施形態ではナイフガイド28が載置されている側に前傾斜した平面を持つ台形状のブロックであり、ナイフ押さえ29は弾力性を有する薄板状の支持部材端部に回転自在なローラーが固定されたものとなっている。また、伸縮駆動手段19は切断駆動手段18と同じフレームに固定されており切断手段17の昇降に伴い高さが変化する。本実施形態においては、前段階で貝殻切断装置により形成された開口部の高さに合うようにナイフ13の高さが位置決めされた後、伸縮駆動手段19の可動部の伸長によりナイフ13を押し出し、固定台により固定されている貝の開口部にナイフ13を挿入する。この時、ナイフ13はナイフガイド28とナイフ押さえ29のすき間によりナイフ13の姿勢や移動が拘束され、この拘束下でナイフ13の下側の面がナイフ自体の弾性を利用して上貝殻2Aの内面に常に接触するようにナイフ13を進行させることができ、ナイフ12を貝内面上で滑らせながら押し込むことにより上貝殻2Aと貝柱3との結合を貝殻と貝柱の結合面近傍で切断することができる。なお、貝の固定において、
図11に示すように開口側の突起10の高さを後方のものより低くすることで貝の開口側への前傾姿勢固定が可能となりナイフ13の貝に対する挿入角度を貝柱切断における適正な角度とすることが可能となる。また、本実施形態で使用するナイフ13には
図10に示すように貝の形状や内臓構造の特性に合わせて種々の形状が考えられる。
【0027】
次に本発明4の一実施形態について、
図6と
図7と
図12を用いて説明する。本発明の開殻装置は、発明3の開殻装置の固定台における台板9の固定を台板9の一端を回転自在なヒンジ25を設け、装置の下ベース14側に固定されている支柱材24に対して回転自在なものとし、台板9の貝1を載置する面の逆側(下面)を支柱材24と同じように下ベース14に固定される伸縮駆動手段26により押上部材27を押し上げることで台板9の傾斜を変化させることができるようにしたもので、押さえ部材12を後退させて貝1の固定を解除した後、台板9の傾斜を急変させることで開殻後の貝を飛び出させることができる。この効果を本発明の第3発明に加えることにより、
図7に示す、(1)から(7)までの貝の載置から開殻処理、排出までの一連の作業を安定して行うことが可能となる。
【0028】
次に本発明5の一実施形態について、
図13と
図14および
図15を用いて説明する。本発明の連続開殻装置は、発明4の開殻装置を回転駆動手段31により回転するテーブル30の円周上に複数配置し、
図14や
図15に示すように連続回転状態で回転テーブルのフレーム32が固定されている設置床上の一部(I位置)において人手などで貝1を開殻装置の支持台上に載置して、回転を継続しながら当該貝の貝殻切断から開殻までの処理を連続的に進行させることができる。
図14を用いて連続的処理方法について詳細に説明すると、図上の原料貝載置位置(I位置)の正面に貝殻装置が到達した時に処理を行う貝1を人手などで装置に載置すると、その装置は回転テーブル30の回転している間も開殻の一連の処理を継続し、例えばO位置直前で貝殻処理が完了するとO位置で貝1の排出を行う。その後、貝1が載っていない貝殻装置がI位置の作業者Hの正面に到達する。回転テーブル30上には複数の貝殻装置(
図14ではP~Wまでの8台)が装備されているので、作業者が目前の装置に貝1を載せることで連続的な開殻が実現できる。また、開殻貝を排出する位置(O位置)に開殻貝回収ボックスBを設置することで容易に処理が終わった貝1を回収することができる。更に、本実施形態では、同じ処理を行う同一の装置を複数台配置することで、一部の開殻装置が故障しても残りの装置で生産能力が落ちることになっても生産を継続できることとなり、全体として故障による生産停止というリスクを大きく抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 貝
2A 上貝殻
2B 下貝殻
3 貝柱
4 外とう膜
5 えら
6 精巣(卵巣)
7 中腸腺
8 靭帯(蝶つがい)
9 台板
10 突起
11 ストッパー
12 押さえ部材
13 ナイフ
14 下ベース
15 支柱
16 上ベース
17 切断手段
18 切断駆動手段
19 伸縮駆動手段
20 ガイド
21 ロッド
22 昇降駆動手段
23 伸縮駆動手段
24 支柱材
25 ヒンジ
26 伸縮駆動手段
27 押上部材
28 ナイフガイド
29 ナイフ押さえ
30 テーブル
31 回転駆動手段
32 フレーム
33 制御盤
34 安全柵
C-C 貝殻カットライン
H 作業者
B 開殻貝回収ボックス
I 原料貝載置位置
O 開殻貝回収位置
(1)開殻装置の貝載置前状態
(2)開殻装置の貝載置状態
(3)開殻装置の貝固定状態
(4)開殻装置の貝殻切断状態
(5)開殻装置の貝柱切断状態
(6)開殻装置の貝固定解除状態
(7)開殻装置の開殻貝の排出状態
P 連続開殻装置の人の貝の載置位置にある開殻装置
Q Pの位置の次の開殻装置
R Qの位置の次の開殻装置
S Rの位置の次の開殻装置
T Sの位置の次の開殻装置
U Tの位置の次の開殻装置
V 開殻貝の回収位置にある開殻装置(Uの位置の次の位置)
W Vの位置の次の開殻装置
【手続補正書】
【提出日】2022-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
二枚貝のどちらか一方の貝殻面を下にし、貝殻の縁部の一部を固定台上に結合されているストッパーの直立した面に押し当てた状態で、貝殻の下となる面を所定の間隔で離れた位置に直立した状態で台板上に固定された三本の突起で支持することで貝を安定的に台板上に載置し、貝に対し突起と反対側に設けられた伸縮駆動手段で駆動される押さえ部材により貝を突起方向に押圧して固定することを特徴とする貝固定台。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4の開殻装置を回転テーブルの円周上に複数配置し、回転テーブルが連続回転している状態で回転テーブル上の開殻装置の台板上に載置された貝に対して、テーブルの回転中に当該貝の貝殻縁部の切断から貝柱と貝殻との接合部の切断までの処理が連続的に行われることを特徴とする連続開殻装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
第1の発明の貝殻固定台は、貝の一方の貝殻面を3点で支持することによ り全ての突起が貝殻面に確実に当たることとなり、板の前後方向の規制と相まって、一般に使われている貝殻曲面よりも一回小さな凹型や中央部が抜けたリング状の孔による支持に対して安定性が優れる。また、平面を規定する最小限の3点分の支持部材のみの単純な構成となり、障害物の少ない空間が増え、手置き時の載置性も良くなる。また、貝殻切断などの貝が外力を受ける場合においては押さえ部材が貝を突起とで貝を挟み込むように貝を固定することで、外力に耐え得る貝の強固な一時固定が可能となる。更に、貝の一時固定は伸縮駆動手段の操作により押さえ部材を後退させることで容易に解除できる。